JP7011024B2 - 液式鉛蓄電池 - Google Patents
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Description
特許文献1には、充電時に発生する気体による電解液の攪拌作用をより有効に利用して、成層化を抑制するために、極板群を収容する収容空間とは別に、収容空間の上部および下部に連通する連通流路を設けることが記載されている。これにより、充電時に、極板群により発生する気体の上昇に伴う電解液の上方向への流れが収容空間内で発生し、これに対応する下方向への流れが連通流路内で発生するため、電槽内で電解液の対流が効果的に発生することで、電解液の攪拌作用を高めて成層化を抑制することができると記載されている。
しかし、特許文献1および2には、充放電時の極板の電位分布と電解液の攪拌作用との関係についての記載はない。
(1)正極集電体および正極合剤を有する正極板を備えた液式鉛蓄電池である。正極集電体は、長方形の格子状基板および前記格子状基板に連続する耳を有し、格子状基板に正極合剤が保持されている。格子状基板は、格子状基板を成す長方形の一辺に沿う上部骨と、上部骨に接続されて上部骨より下方に存在する複数本の中骨と、を有する。耳は、上部骨の一辺の中心から一方にずれた位置から上側に突出する。
なお、上述の「直線に近似でき」とは、複数のプロットを最小二乗法で直線回帰した場合の相関係数ρの絶対値|ρ|が0.90以上であることを意味する。また、「傾きが異なる二本の直線」とは、二本の直線の傾きa1,a2(a1>a2)の比(a1/a2)が1.3以上であることを意味する。
第一実施形態および第二実施形態の液式鉛蓄電池は、モノブロックタイプの電槽と、蓋と、六個の極板群とを有する。電槽は、隔壁により六個のセル室に区画されている。六個のセル室は電槽の長手方向に沿って配列されている。各セル室に一つの極板群が配置されている。各セル室に電解液が注入されている。
各極板群は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、正極板および負極板との間に配置されたセパレータと、からなる積層体を有する。
正極極柱および負極極柱は、セル配列方向の両端のセル室に配置された正極ストラップおよび負極ストラップに、小片部を介して形成されている。
図1に示すように、第一実施形態の正極集電体1は、長方形の格子状基板11と格子状基板11に連続する耳12とを有し、格子状基板11に正極合剤が保持されている。格子状基板11は、格子状基板11を成す長方形の一辺に沿う上部骨111と、上部骨111に接続されて上部骨111より下方に存在する複数本の中骨112と、を有する。耳12は、上部骨111の一辺の中心から一方(図1の右側)にずれた位置から上側に突出している。
正極集電体1は、打ち抜き法、エキスパンド法、重力鋳造法などの通常の方法で得ることができる。
図3に示すように、第二実施形態の正極集電体1Aは、長方形の格子状基板11Aと格子状基板11Aに連続する耳12とを有し、格子状基板11Aに正極合剤が保持されている。格子状基板11Aは、格子状基板11Aを成す長方形の一辺に沿う上部骨111と、上部骨111に接続されて上部骨111より下方に存在する複数本の中骨と、を有する。中骨の太さは上下方向の中間位置で変化し、中間位置よりも上側(上部骨111側)の中骨112aは、中間位置よりも下側の中骨112bの太さよりも細い。
耳12は、上部骨111の一辺の中心から一方(図3の右側)にずれた位置から上側に突出している。
正極集電体1Aは、打ち抜き法、エキスパンド法、重力鋳造法などの通常の方法で得ることができる。
上述のように、第一実施形態および第二実施形態の液式鉛蓄電池において、正極合剤の正極活物質の多孔度が、35%以上55%以下である。なお、この値は、充電率が100%の状態の液式鉛蓄電池の正極板を完全乾燥させたものから分離した正極合剤を、分析して測定した値である。
正極活物質の多孔度は、例えば、以下の方法で調整できる。
正極活物質の多孔度は化成時の温度によって調整でき、化成温度が高いほど多孔度は小さくなるため、電槽化成の際に化成時の温度を、正極活物質の多孔度が35%以上55%以下となるように、適宜調整する。
また、正極合剤の正極活物質の多孔度は、例えば、水銀圧入法により測定することができる。
液式鉛蓄電池が有する正極集電体の比A/Bが小さいほど、充電時に正極板の下部が上部よりも分極しやすくなるため、下部からのガス発生が促進されることで、部分充電状態であっても電解液の攪拌作用が得られる。しかし、比A/Bが0.35未満の場合、正極集電体の下部から耳に至る経路の抵抗値が上部から耳に至る経路の抵抗値よりも著しく大きいため、正極板の下部での充放電反応が進行しにくくなる。よって、下部から発生するガスの量が、部分充電状態での電解液攪拌作用を得るためには不十分となる。
正極集電体の比A/Bが0.55よりも大きい液式鉛蓄電池では、正極板全体で充放電反応が進行しにくくなるため、ガスの発生量が部分充電状態での電解液攪拌作用を得るためには不十分となる。
液式鉛蓄電池においては、充電時に電解液中の水が電気分解されてガスが発生する。正極集電体が0.35≦A/B≦0.55を満たしていても正極活物質の多孔度が30%である液式鉛蓄電池では、35%以上55%以下であるものと比較して、正極活物質と電解液との接触面積が小さくなり、部分充電状態において正極板上で発生するガスの量が少なくなるため、電解液の成層化抑制効果が低下する。
また、正極集電体が0.35≦A/B≦0.55を満たしていて正極活物質の多孔度が60%である液式鉛蓄電池では、35%以上55%以下であるものと比較して、正極活物質の軟化が進み易く、正極活物質の脱落を招き、寿命性能が低下するおそれがある。
本発明の第二態様としては、液式鉛蓄電池の正極板を構成する正極集電体の設計方法が挙げられる。この設計方法は下記の構成(a)~(c)を有する。
(a)正極集電体は、長方形の格子状基板と格子状基板に連続する耳とを有し、格子状基板に正極合剤が保持され、格子状基板は、長方形の一辺に沿う上部骨と、上部骨に接続されて前記上部骨より下方に存在する複数本の中骨と、を有し、耳は、上部骨の一辺の中心から一方にずれた位置から上側に突出する。
(b)正極集電体を長方形の一方の側の角を通る対角線に沿って切断して生じる分割体のうち耳が存在する分割体を、耳の上部骨との境界線上の中心点Pを通り上部骨に垂直な基準線により、第一の部分と第二の部分に区分する。
(c)x軸およびy軸が共に線形目盛である座標平面に、第二の部分よりも面積が大きい第一の部分における、複数本の中骨の各切断面Cnと中心点Pとの間の各抵抗値Rnをy座標、各切断面Cnの中心点と中心点Pとの各距離Xnをx座標としてなされる全てのプロットが、x=Hを交点として傾きが異なる二本の直線に近似でき、x<Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Aと、x≧Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Bと、による比A/Bが、0.35以上0.55以下となるようにする。
実施形態の液式鉛蓄電池と同じ構造の液式鉛蓄電池として、サンプルNo.1~No.35の液式鉛蓄電池を作製した。
サンプルNo.1~No.35の液式鉛蓄電池はD23型のISS車用液式鉛蓄電池である。
サンプルNo.1~No.7は、正極集電体の格子状基板の形状が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.8~No.11は、正極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.1と同じである。サンプルNo.1およびNo.8~No.11は、正極活物質の多孔度が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.12~No.15は、正極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.2と同じである。サンプルNo.2およびNo.12~No.15は、正極活物質の多孔度が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.16~No.19は、正極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.3と同じである。サンプルNo.3およびNo.16~No.19は、正極活物質の多孔度が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.20~No.23は、正極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.4と同じである。サンプルNo.4およびNo.20~No.23は、正極活物質の多孔度が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.24~No.27は、正極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.5と同じである。サンプルNo.5およびNo.24~No.27は、正極活物質の多孔度が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.28~No.31は、正極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.6と同じである。サンプルNo.6およびNo.28~No.31は、正極活物質の多孔度が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.32~No.35は、正極集電体の格子状基板の形状がサンプルNo.7と同じである。サンプルNo.7およびNo.32~No.35は、正極活物質の多孔度が異なるが、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
サンプルNo.1およびNo.8~No.11の液式鉛蓄電池は、図1に示す形状の正極集電体1を有し、寸法S1=115.0mm、寸法S2=110.0mm、寸法S3=100.0mm、寸法S4=45.0mm、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が1.05mm2である。
先ず、帯状の鉛合金シート(複数枚の正極集電体1に対応する大きさ)に対する打ち抜き加工工程、格子状基板11への正極活物質ペーストの充填工程、予熱乾燥工程、熟成乾燥工程、および切断工程を行うことにより、図1の正極集電体1を有する化成前の正極板を作製した。各工程は通常の方法で行った。
次に、得られた化成前の負極板をポリエチレン製の袋状セパレータに入れたものを7枚と、得られた化成前の正極板6枚を、交互に積層して積層体を得た。次に、COS(キャストオンストラップ)方式の鋳造装置を用いて、各積層体の正極板および負極板にストラップと中間極柱と端子極柱を形成することで、極板群を得た。
その後、通常の方法で電槽化成を行うことで、電槽化成後の比重を1.285(20℃換算値)とした。なお、電槽化成後の液式鉛蓄電池の充電率が100%になるように、化成条件を設定した。
また、電槽化成の際に、化成時の温度を調整することにより、正極活物質の多孔度が、サンプルNo.1で40%、No.8で30%、No.9で35%、No.10で55%、No.11で60%となるようにした。
このようにしてサンプルNo.1およびサンプルNo.8~No.11の液式鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.2およびNo.12~No.15の液式鉛蓄電池は、図1に示す形状の正極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が1.00mm2である。それ以外の点については、サンプルNo.2はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.12はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.13はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.14はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.15はサンプルNo.11と同じである。
用いた正極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8~No.11と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、サンプルNo.2およびNo.12~No.15の液式鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.3およびNo.16~No.19の液式鉛蓄電池は、図1に示す形状の正極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.95mm2である。それ以外の点については、サンプルNo.3はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.16はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.17はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.18はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.19はサンプルNo.11と同じである。
用いた正極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8~No.11と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、サンプルNo.3およびNo.16~No.19の液式鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.4およびNo.20~No.23の液式鉛蓄電池は、図1に示す形状の正極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.90mm2である。それ以外の点については、サンプルNo.4はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.20はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.21はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.22はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.23はサンプルNo.11と同じである。
用いた正極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8~No.11と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、サンプルNo.4およびNo.20~No.23の液式鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.5およびNo.24~No.27の液式鉛蓄電池は、図1に示す形状の正極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.85mm2である。それ以外の点については、サンプルNo.5はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.24はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.25はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.26はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.27はサンプルNo.11と同じである。
用いた正極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8~No.11と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、サンプルNo.5およびNo.24~No.27の液式鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.6およびNo.28~No.31の液式鉛蓄電池は、図1に示す形状の正極集電体1を有し、中骨112の太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.75mm2である。それ以外の点については、サンプルNo.6はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.28はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.29はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.30はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.31はサンプルNo.11と同じである。
用いた正極集電体の中骨112の太さが異なること以外はサンプルNo.1およびNo.8~No.11と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、サンプルNo.6およびNo.28~No.31の液式鉛蓄電池を得た。
サンプルNo.7およびNo.32~No.35の液式鉛蓄電池は、図3に示す形状の正極集電体1Aを有し、寸法S1=115.0mm、寸法S2=110.0mm、寸法S3=100.0mm、寸法S4=45.0mm、中骨112aの太さ(長手方向に垂直な断面積)が0.80mm2、中骨112bの太さ(長手方向に垂直な断面積)が1.20mm2である。
それ以外の点については、サンプルNo.7はサンプルNo.1と同じであり、サンプルNo.32はサンプルNo.8と同じであり、サンプルNo.33はサンプルNo.9と同じであり、サンプルNo.34はサンプルNo.10と同じであり、サンプルNo.35はサンプルNo.11と同じである。
図3の正極集電体1Aを用いた以外はサンプルNo.1およびNo.8~No.11と同じ方法で、D23型のISS車用液式鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を行って、サンプルNo.7およびNo.32~No.35の液式鉛蓄電池を得た。
得られたサンプルNo.1~No.35の液式鉛蓄電池を解体し、サンプル毎に無作為に選択した正極板を取り出し、正極合剤の正極活物質の多孔度を以下の方法で調べた。
先ず、正極板を恒温器にて60℃で4時間以上乾燥(完全乾燥)させた後、正極基板から正極合剤を分離して、メノウ乳鉢ですりつぶして粉体にした。次いで、この粉体を篩にかけ、篩を通過した粉を正極合剤試料とした。次いで、得られた正極合剤試料を水銀ポロシメーター(島津製作所AutoPore IV 9500)にかけて、サンプル毎に正極活物質の多孔度を測定した。なお、圧入圧力は0.0138MPaから413.685MPaまでとした。
上記多孔度の測定のために正極合剤を分離した正極集電体のうち、サンプルNo.1~No.7の正極集電体を洗浄した。この洗浄されたサンプルNo.1~No.7の各正極集電体1,1Aを、それぞれ図1および図3に示す対角線Dに沿って鋏で切断することにより、図2および図4に示す、耳が存在する分割体2,2Aを得た。耳が存在する分割体2において、基準線Kにより区分された第一の部分21は、中骨112の切断面を13個有する。耳が存在する分割体2Aにおいて、基準線Kにより区分された第一の部分21Aは、中骨112a,112bの切断面を合計で13個有する。
また、図6~図10に示すように、サンプルNo.2~No.6では、それぞれ全てのプロットが、x=H(X9とX10との間の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1~X9での各抵抗値(三回測定の平均値)R1~R9の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X10~X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表9~表13に示す。
さらに図11に示すように、サンプルNo.7では、全てのプロットが、x=H(X10の値)を交点として傾きが異なる二本の直線T1,T2に近似できた。次に、x<Hとなる各距離X1~X9での各抵抗値(三回測定の平均値)R1~R9の平均値Aと、x≧Hとなる各距離X10~X13での各抵抗値(三回測定の平均値)Rnの平均値Bを算出し、これらの算出値から比A/Bを算出した。その結果を表14に示す。
[試験および評価]
得られたサンプルNo.1~No.35の液式鉛蓄電池について、EUCARパワーアシストプロファイルによる寿命試験を実施した。この試験の1サイクルの充放電パターンを図12に示す。C2は2時間率容量である。この充放電パターンでは部分充電状態での深い放電がある。
また、この寿命試験を100サイクル行った後に、電解液の比重を電槽の上部と下部で光学比重計を用いて測定し、これらの測定値から上下の比重差を算出した。
これらの試験の結果を、各サンプルの格子状基板の構成とともに表15および表16に示す。表15は、正極合剤の正極活物質の多孔度が同じ40%で正極集電体の抵抗値の比A/Bが異なるサンプルNo.1~No.7について、上下比重差と寿命試験の結果をまとめたものである。表16は、サンプルNo.1~No.35の全試験結果を、抵抗値の比A/Bが同じで正極合剤の正極活物質の多孔度が異なる場合の違いが分かるようにまとめたものである。
表15の結果から、0.35≦A/B≦0.55を満たす正極集電体を備え、正極合剤の正極活物質の多孔度が40%である液式鉛蓄電池は、部分充電状態で使用される場合に電解液の成層化が抑制されて、寿命を長くできることが確認できた。
0.35≦A/B≦0.55を満たし、かつ正極活物質の多孔度が35%以上55%以下であるサンプルNo.2~No.5、No.7、No.13、No.14、No.17、No.18、No.21、No.22、No.25、No.26、No.33およびNo.34の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.005~0.030と小さく、寿命も16000~22000サイクルと長かった。
これに対して、0.35≦A/B≦0.55を満たさないサンプルNo.1およびNo.8~No.11とサンプルNo.6およびNo.28~No.31の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.035~0.080と大きく、寿命は7500~9900サイクルと短かった。
また、0.35≦A/B≦0.55を満たすが、正極活物質の多孔度が30%であるサンプルNo.12、No.16、No.20、No.24およびNo.32の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差が0.035~0.055と大きく、寿命は9400~9900サイクルであった。さらに、0.35≦A/B≦0.55を満たすが、正極活物質の多孔度が60%であるサンプルNo.15、No.19、No.23、No.27およびNo.35の液式鉛蓄電池は、電解液の上下比重差は0.004~0.008と小さかったが、寿命は9600~9900サイクルであった。
先ず、0.35≦A/B≦0.55を満たしていても正極活物質の多孔度が30%である液式鉛蓄電池では、部分充電状態において正極板上で発生するガスの量が、電解液が十分に攪拌されるために必要な量とならず、成層化の抑制効果が不十分になったため、電解液の上下比重差も大きく、寿命向上効果もさほど得られなかったと考えられる。次に、0.35≦A/B≦0.55を満たしていて正極活物質の多孔度が60%である液式鉛蓄電池では、正極活物質の軟化が進み、正極活物質の脱落を招いたため、寿命向上効果はさほど得られなかったと考えられる。
1A 正極集電体
11 格子状基板
11A 格子状基板
12 耳
111 上部骨
112 中骨
112a 中骨
112b 中骨
2 耳が存在する分割体
2A 耳が存在する分割体
21 第一の部分
21A 第一の部分
22 第二の部分
22A 第二の部分
Claims (1)
- 正極集電体および正極合剤を有する正極板を備えた液式鉛蓄電池であって、
前記正極集電体は、長方形の格子状基板および前記格子状基板に連続する耳を有し、
前記格子状基板に前記正極合剤が保持され、
前記格子状基板は、前記長方形の一辺に沿う上部骨と、前記上部骨に接続されて前記上部骨より下方に存在する複数本の中骨と、を有し、
前記耳は、前記上部骨の前記一辺の中心から一方にずれた位置から上側に突出し、
前記正極集電体を前記長方形の前記一方の側の角を通る対角線に沿って切断して生じる分割体のうち前記耳が存在する分割体は、前記耳の前記上部骨との境界線上の中心点Pを通り前記上部骨に垂直な基準線により、第一の部分と第二の部分に区分され、前記第一の部分は前記第二の部分よりも面積が大きく、
x軸およびy軸が共に線形目盛である座標平面に、前記第一の部分における、前記複数本の中骨の各切断面Cnと前記中心点Pとの間の各抵抗値Rnをy座標、前記各切断面Cnの中心点と前記中心点Pとの各距離Xnをx座標としてなされた全てのプロットが、x=Hを交点として傾きが異なる二本の直線に近似でき、
x<Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Aと、x≧Hとなる各距離Xnでの各抵抗値Rnの平均値Bと、による比A/Bが、0.35以上0.55以下であって、
前記正極合剤の正極活物質の多孔度が35%以上55%以下であることを特徴とする液式鉛蓄電池。
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