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JP7010540B2 - 無線lanアクセスポイント、送信ビームフォーミング制御方法および送信ビームフォーミング制御プログラム - Google Patents

無線lanアクセスポイント、送信ビームフォーミング制御方法および送信ビームフォーミング制御プログラム Download PDF

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JP7010540B2 JP2020027912A JP2020027912A JP7010540B2 JP 7010540 B2 JP7010540 B2 JP 7010540B2 JP 2020027912 A JP2020027912 A JP 2020027912A JP 2020027912 A JP2020027912 A JP 2020027912A JP 7010540 B2 JP7010540 B2 JP 7010540B2
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Description

本発明は、無線LANクライアント端末側のユーザが必要とするスループット値が得られる状況にあるか否かに応じて、送信ビームフォーミング制御を行うか否かを決定することが可能な無線LANアクセスポイント、送信ビームフォーミング制御方法および送信ビームフォーミング制御プログラムに関する。
現状の無線LANルータ等の無線LANアクセスポイントにおいては、無線LANクライアント端末に対して送信する無線電波に関する送信ビームフォーミング(Transmit-Beam-Forming:TxBF)技術を用いた通信制御方式を採用することが可能な機能を備えている。そして、例えば、特許文献1の特開2016-46644号公報「無線伝送装置および送信方向制御方法」や特許文献2の特開2017-153031号公報「分散アンテナを用いた無線基地局および分散アンテナ制御方法」にも記載されているように、無線LANアクセスポイントの制御プログラムにより、無線LANクライアント端末周辺の電波環境に応じて、送信ビームフォーミング制御の対象とするクライアント端末を決定することにより、最適な電波の送信方向を決めるまでの時間を短縮することを優先させるような制御が行なわれている。
すなわち、無線LANアクセスポイントにおいて、送信ビームフォーミング制御がなされる対象となる無線LANクライアント端末を決定する際に、例えば無線LANクライアント端末から受け取る電波強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator、SIR:Signal to Interference Ratio)が弱いクライアント端末を優先して選択するようにしている。言い換えると、無線LANクライアント端末側のユーザの意思とは関係なく、無線LANクライアント端末周辺の電波環境に応じてビームフォーミングのON/OFFの如何が選択されるようにしている。その結果、送信ビームフォーミング制御が不要なクライアント端末に対しても、送信ビームフォーミング制御がなされてしまう場合が生じてしまう。
特開2016-46644号公報 特開2017-153031号公報
前述したように、本発明に関連する前記特許文献1、2のような現状の技術においては、無線LANアクセスポイントは、無線LANクライアント端末との間の送信ビームフォーミング機能として、例えば、送信ビームフォーミングの対象とするクライアント端末数の上限を2台までに限定し、クライアント端末から受け取る電波強度(RSSI等)の弱い順に優先して、送信ビームフォーミング制御を行うクライアント端末を選択するといった制御が行われている。
このため、無線LANクライアント端末側のユーザの意思とは関係なく、各無線LANクライアント端末周辺の電波環境に応じて送信ビームフォーミング制御のON/OFFの如何が選択されることになる。つまり、無線LANクライアント端末において必要とするスループット値の如何には一切関係なく、送信ビームフォーミング制御の必要がない状態にある無線LANクライアント端末に対しても、無駄な送信ビームフォーミング制御を行うような場合も生じる。
言い換えると、無線LANアクセスポイントにおいて送信ビームフォーミング制御が適用される無線LANクライアント端末が、各無線LANクライアント端末周辺の電波環境に応じて自動的に選択されていたため、無線LANクライアント端末側のユーザの好みに応じた選択を行うことができないといった問題があった。
(本発明の目的)
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、無線LANクライアント端末において必要とするスループット値の如何には一切関係なく、送信ビームフォーミング制御の必要がない状態にある無線LANクライアント端末に対しても、無駄な送信ビームフォーミング制御を行ってしまうという課題を解決する無線LANアクセスポイント、送信ビームフォーミング制御方法および送信ビームフォーミング制御プログラムを提供することを、その目的としている。
前述の課題を解決するため、本発明による無線LANアクセスポイント、送信ビームフォーミング制御方法および送信ビームフォーミング制御プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
(1)本発明による無線LANアクセスポイントは、
無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントであって、
各前記無線LANクライアント端末ごとに、必要とするスループット値を必要スループット値としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルを備え、
無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値を超えている値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すことを特徴とする。
(2)また、本発明による無線LANアクセスポイントは、
無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントであって、
各前記無線LANクライアント端末ごとに、必要とするスループット値の下限値から上限値までの範囲を必要スループット値範囲としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルを備え、
無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値範囲の範囲外の値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すことも特徴とする。
(3)本発明による送信ビームフォーミング制御方法は、
無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントにおける送信ビームフォーミング制御方法であって、
前記無線LANアクセスポイントは、
各前記無線LANクライアント端末ごとに、必要とするスループット値を必要スループット値としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルを備え、
無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値を超えている値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すように制御することを特徴とする。
(4)また、本発明による送信ビームフォーミング制御方法は、
無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントにおける送信ビームフォーミング制御方法であって、
前記無線LANアクセスポイントは、
各前記無線LANクライアント端末ごとに、必要とするスループット値の下限値から上限値までの範囲を必要スループット値範囲としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルを備え、
無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値範囲の範囲外の値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すように制御することも特徴とする。
(5)本発明による送信ビームフォーミング制御プログラムは、
無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントにおいて前記送信ビームフォーミングの制御をコンピュータによって実行する送信ビームフォーミング制御プログラムであって、
前記無線LANアクセスポイントは、
各前記無線LANクライアント端末ごとに、必要とするスループット値を必要スループット値としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルをプログラムによりアクセスすることが可能なメモリ内に備え、
無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値を超えている値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すように制御することを特徴とする。
(6)また、本発明による送信ビームフォーミング制御プログラムは、
無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントにおいて前記送信ビームフォーミングの制御をコンピュータによって実行する送信ビームフォーミング制御プログラムであって、
前記無線LANアクセスポイントは、
各前記無線LANクライアント端末ごとに、必要とするスループット値の下限値から上限値までの範囲を必要スループット値範囲としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルをプログラムによりアクセスすることが可能なメモリ内に備え、
無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値範囲の範囲外の値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すように制御することも特徴とする。
本発明の無線LANアクセスポイント、送信ビームフォーミング制御方法および送信ビームフォーミング制御プログラムによれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
本発明においては、送信ビームフォーミング機能を有する無線LANアクセスポイントが、無線LANクライアント端末との間で無線通信を行う場合に、ユーザが必要と想定している必要スループット値よりも大きいスループット値が得られているか、あるいは、必要スループット値範囲の範囲外のスループット値になっている無線LANクライアント端末に対しては、送信ビームフォーミングを実施しないように制御している。而して、ユーザが不必要とするレベルのスループット値になっている無線LANクライアント端末については送信ビームフォーミングを実施しないように制御するので、送信ビームフォーミング用として使用される無線帯域を抑制して、無線通信におけるデータパケットの占有率を大きくすることができ、無線データ通信自体の通信効率を向上させ、スループットを改善することができるとともに、さらに、無線LANアクセスポイントの制御部の負荷も軽減することができる。
本発明に係る無線LANアクセスポイントの内部構成の一例を示すブロック構成図である。 図1に示す無線LANアクセスポイントが送信ビームフォーミング制御に対応していない場合について説明するための模式図である。 図1に示す無線LANアクセスポイントの3個のアンテナすなわち第1アンテナ、第2アンテナ、第3アンテナそれぞれからクライアント端末に向かって送信される無線電波の位相が完全に一致している場合の合成波の振幅値を示す模式図である。 図1に示す無線LANアクセスポイントの3個のアンテナすなわち第1アンテナ、第2アンテナ、第3アンテナそれぞれからクライアント端末に向かって送信される無線電波が第2アンテナだけ180度位相がずれている場合の合成波の振幅値を示す模式図である。 図1に示す無線LANアクセスポイントとクライアント端末との間において実施される送信ビームフォーミングの制御シーケンスの一例を示すシーケンスチャートである。 図1に示した無線LANアクセスポイントの第1の実施例における内部構成を示すブロック構成図である。 本発明の第1の実施例として図6に示した無線LANアクセスポイントの動作の一例を説明するためのフローチャートである。 図1に示した無線LANアクセスポイントの第2の実施例における内部構成を示すブロック構成図である。 本発明の第2の実施例として図8に示した無線LANアクセスポイントの動作の一例を説明するためのフローチャートでる。 図1に示した無線LANアクセスポイントの第3の実施例における内部構成を示すブロック構成図である。 本発明の第3の実施例として図10に示した無線LANアクセスポイントの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
以下、本発明による無線LANアクセスポイント、送信ビームフォーミング制御方法および送信ビームフォーミング制御プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による無線LANアクセスポイントおよび送信ビームフォーミング制御方法について説明するが、かかる送信ビームフォーミング制御方法をコンピュータにより実行可能な送信ビームフォーミング制御プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、送信ビームフォーミング制御プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
<本発明の特徴>
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、送信ビームフォーミング(Transmit-Beam-Forming:TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント(無線LANルータ等の無線LAN親機)と、無線LANクライアント端末との間の無線通信において、無線LANアクセスポイントが複数の無線LANクライアント端末と同時に無線通信を行う場合に、無線LANクライアント端末側のユーザからの要求条件に応じて当該無線LANクライアント端末との間の送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定するか否かを決定することを主要な特徴とし、而して、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の必要がない無線LANクライアント端末に対しては、無駄な処理をしないようにするとともに、無線LAN通信における無線データ通信の安定性を向上させることを可能にしている。
さらに説明すると、本発明においては、無線LANクライアント端末ごとに、無線LANクライアント端末のユーザが必要とするスループット値を無線LANアクセスポイントにあらかじめ設定登録することにより、無線LANアクセスポイントは、各無線LANクライアント端末の現在のスループット値を、各無線LANクライアント端末において必要とするスループット値と比較した結果に応じて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON/OFFを選択する機能を有している。つまり、無線LANクライアント端末のユーザが望む必要スループット値が確保された状態にある無線LANクライアント端末については、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の対象から外す機能を有している。而して、不必要な送信ビームフォーミング(TxBF)制御を行わないことにより、データ送信効率の向上を図ることができるとともに、周辺の電波環境が良い場所に無線LANクライアント端末が存在するか否かに関係なく、当該無線LANクライアント端末のユーザの要求条件に応じて、無線LANアクセスポイント送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON/OFFを切り替えることができる。
<本発明の実施形態>
次に、本発明に係る無線LANアクセスポイントの実施形態について説明する。図1は、本発明に係る無線LANアクセスポイントの内部構成の一例を示すブロック構成図である。図1に示す無線LANアクセスポイント1は、送信ビームフォーミング(Transmit-Beam-Forming:TxBF)機能を有する無線LANルータ等の無線LAN親機のことであり、制御部1a、メモリ1b、無線回路1c、複数個(図1の例においては3個)のアンテナすなわち第1アンテナ1dと第2アンテナ1eと第3アンテナ1f、LANポート1g、WANポート1hを、少なくとも含んで構成されている。
無線LANアクセスポイント1は、無線回路1cおよび複数個のアンテナ(図1の場合は第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1f)を用いて、無線通信領域内に存在するPC(Personal Computer)やスマートフォン等の無線LAN子機すなわち無線LANクライアント端末(図1の場合は無線LANクライアント端末2、無線LANクライアント端末3、無線LANクライアント端末4、等)と無線通信を行う。なお、以下の本実施形態の説明においては、無線LANクライアント端末を単に「クライアント端末」と略して記載することもある。
また、無線LANアクセスポイント1は、WANポート1hによりインターネット10と接続し、LANポート1gによりユーザPC(Personal Computer)20等の端末と有線接続することも可能である。ここで、制御部1aは、ユーザが、ユーザPC20を介して、クライアント端末2、クライアント端末3、クライアント端末4、…等の各クライアント端末毎に必要とするスループット値を入力して設定することが可能となっており、入力された各クライアント端末毎の必要スループット値情報はメモリ1bに保存される。
そして、無線LANアクセスポイント1は、無線回路1cおよび複数個のアンテナ(すなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1f)を用いて、クライアント端末2、クライアント端末3、クライアント端末4、…等の各クライアント端末と無線通信を行う際に、制御部1aが、各クライアント端末との間の現在のスループット値を測定するとともに、メモリ1bに保存されている各クライアント端末毎の必要スループット値情報を参照して、クライアント端末のうち、現在のスループット値が必要スループット値に達しているクライアント端末に対しては、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しない状態で無線通信を行うように制御する。
図1に示す例においては、クライアント端末2、クライアント端末3、クライアント端末4のうち、クライアント端末4は、現在のスループット値が必要スループット値に達している状態にあるので、送信ビームフォーミング制御を実施することなく無線通信を行い、これに対して、クライアント端末2、クライアント端末3は、現在のスループット値が必要スループット値に達していない状態にあるので、送信ビームフォーミング制御を実施しながら無線通信を行う場合を例示している。
ここで、本発明における送信ビームフォーミング(TxBF)制御の効果をより理解し易くするために、図2、図3、図4、図5を用いて、図1に示すクライアント端末2、クライアント端末3に対して実施する無線LANアクセスポイント1における送信ビームフォーミング制御の仕組みについて簡単に説明する。
図2は、図1に示す無線LANアクセスポイント1が送信ビームフォーミング制御に対応していない場合について説明するための模式図である。ここで、図2(A)は、無線LANアクセスポイント1の第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2、クライアント端末3それぞれに向けて送信される無線電波の電波強度を模式的に示し、図2(B)は、無線LANアクセスポイント1とクライアント端末2、クライアント端末3との間の距離と、電波強度、無線スループットとの関係を示している。
図2(B)に示すように、無線LANアクセスポイント1の第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからの無線距離が遠くなればなるほど、電波強度は徐々に弱くなるため、それに応じて、無線スループットも徐々に小さくなってくる。つまり、図2(A)に示すように、無線LANアクセスポイント1の第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれから離れるにしたがって、無線電波の振幅は徐々に減衰していき、或る程度離れた位置に存在するクライアント端末2、クライアント端末3のそれぞれには、減衰した無線電波が到達することになり、必要スループット値に達しないほど減衰してしまうと、受信電波から正しく信号を抽出することができない可能性が生じる。かかる現象は公知の事実であるので、ここでの更なる説明は割愛する。
そこで、無線LANアクセスポイント1は、前述したように、クライアント端末2、クライアント端末3の方向に向かう無線電波に対しては送信ビームフォーミングを実施して無線電波を送信するように制御する。ここで用いる送信ビームフォーミングとは、無線LANアクセスポイント1から或る程度離れた距離に存在するクライアント端末2、クライアント端末3の位置において必要スループット値以上になるように、クライアント端末2、クライアント端末3の方向に向かう無線電波の電波強度を大きくすることにより、無線スループットを改善する技術のことである。
次に、送信ビームフォーミングの仕組みについては、図3、図4、図5を用いてさらに詳しく説明する。図3は、図1に示す無線LANアクセスポイント1の3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2に向かって送信される無線電波の位相が完全に一致している場合の合成波の振幅値を示す模式図である。図3(A)は、3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2において同じ振幅Aの無線電波が送信されてくる様子を示し、図3(B)は、図3(A)の3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからの無線電波の合成波のクライアント端末2における振幅値の様子(送信ビームフォーミングの良好な効果として振幅値が3倍の3Aになっている様子)を示している。
なお、図3(A)において、無線LANアクセスポイント1の3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからアンテナ1個のクライアント端末2に向かって送信される3個の無線電波は、同一のデータを送信することになる。また、図3(A)に示すように、3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2に向かって送信される無線電波の位相は完全に一致しているので、各無線電波を合成する合成波に関しては、各無線電波の山と山、谷と谷とが互いに合成されることによって、振幅値を増幅するようになり、図3(B)に示すように、3倍の山と3倍の谷となって、合成波の振幅は3倍の3Aになる。したがって、クライアント端末2においては、電波強度として3倍の振幅の無線電波を受信することになり、無線スループットの値が必要スループット値以上に達する良好な結果が得られる状態になる。
また、図4は、図1に示す無線LANアクセスポイント1の3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2に向かって送信される無線電波が第2アンテナ1eだけ180度位相がずれている場合の合成波の振幅値を示す模式図である。図4(A)は、図3(A)と同様、3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2において同じ振幅Aの無線電波が送信されてくる様子を示し、また、図4(B)は、図3(B)と同様、図4(A)の3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからの無線電波の合成波のクライアント端末2における振幅値の様子(送信ビームフォーミングの効果が得られない場合として振幅値がAのままになっている様子)を示している。
図4(A)に示すように、図3(A)の場合とは異なり、3個のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2に向かって送信される無線電波は、第2アンテナ1eからの無線電波の位相が他のアンテナからの無線電波と180度ずれている。したがって、各無線電波を合成する合成波に関しては、第2アンテナ1eからの無線電波の山と他のアンテナから無線電波の谷、第2アンテナ1eからの無線電波の谷と他のアンテナから無線電波の山とが互いに合成されることによって、振幅値を抑え込むようになり、図4(B)に示すように、合成波の振幅は1個のアンテナの場合と同様のAになる。その結果、クライアント端末2においては、電波強度として1個のアンテナからの場合と同じ振幅の無線電波を受信することになり、送信ビームフォーミングの効果が得られず、無線スループット値が必要スループット値に達しない状態になってしまう可能性が高くなる。
つまり、本発明における送信ビームフォーミングとは、無線LANアクセスポイント1の複数個のアンテナそれぞれから送信される各無線電波の位相を調整して、クライアント端末の位置において各無線電波の互いの電波強度を強め合い、各無線電波を合成した合成波の振幅を増幅するように制御することによって、クライアント端末におけるスループット値を向上させることを可能にする技術のことである。
図5は、図1に示す無線LANアクセスポイント1とクライアント端末2、クライアント端末3との間において実施される送信ビームフォーミングの制御シーケンスの一例を示すシーケンスチャートであり、送信ビームフォーミングを効果的に実施するために、無線LANアクセスポイント1からの無線電波がクライアント端末2、クライアント端末3に到達するまでの無線電波環境を無線LANアクセスポイント1が取得する制御シーケンスの一例を示している。
図5のシーケンスチャートにおいて、まず、無線LANアクセスポイント1は、送信ビームフォーミング制御の実施を必要とするクライアント端末が存在しているか否かを確認する。その確認結果として、クライアント端末2がビームフォーミング制御の実施対象のクライアント端末として抽出されると、無線LANアクセスポイント1は、クライアント端末2に対して、無線電波の経路を推定するためのサウンディングパケットを送信する(シーケンスSeq1)。クライアント端末2は、無線LANアクセスポイント1からのサウンディングパケットを受信すると、該サウンディングパケットを受信したことを示す確認用のACKを、無線LANアクセスポイント1に対して返送するとともに(シーケンスSeq2)、無線LANアクセスポイント1において送信用の無線電波に関する最適な位相調整を行ってもらうための伝送路情報としてCSI(Channel State Information)フィードバックパケットを、無線LANアクセスポイント1に対して返送する(シーケンスSeq3)。
無線LANアクセスポイント1は、クライアント端末2から送信されてきたCSIフィードバックパケットを用いて、複数のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末2に向かって送信される送信用の無線電波に関する最適な位相調整を行い、位相調整された送信用無線電波を用いてクライアント端末2向けのデータパケットを送信する(シーケンスSeq4)。
しかる後、無線LANアクセスポイント1は、ビームフォーミング制御の実施対象のクライアント端末が、クライアント端末2の他に存在しているか否かを確認する。クライアント端末2以外に、ビームフォーミング制御の実施対象のクライアント端末として、クライアント端末3が抽出されると、無線LANアクセスポイント1は、クライアント端末2に対する場合と同様のシーケンスをクライアント端末3に対して繰り返す。
すなわち、無線LANアクセスポイント1は、クライアント端末3に対して、無線電波の経路を推定するためのサウンディングパケットを送信する(シーケンスSeq5)。クライアント端末3は、無線LANアクセスポイント1からのサウンディングパケットを受信すると、該サウンディングパケットを受信したことを示す確認用のACKを、無線LANアクセスポイント1に対して返送するとともに(シーケンスSeq6)、無線LANアクセスポイント1において送信用の無線電波に関する最適な位相調整を行ってもらうための伝送路情報としてCSI(Channel State Information)フィードバックパケットを、無線LANアクセスポイント1に対して返送する(シーケンスSeq7)。
無線LANアクセスポイント1は、クライアント端末3から送信されてきたCSIフィードバックパケットを用いて、複数のアンテナすなわち第1アンテナ1d、第2アンテナ1e、第3アンテナ1fそれぞれからクライアント端末3に向かって送信される送信用の無線電波に関する最適な位相調整を行い、位相調整された送信用無線電波を用いてクライアント端末3向けのデータパケットを送信する(シーケンスSeq8)。
無線LANアクセスポイント1は、以上のような制御シーケンスを、あらかじめ定めた周期で定期的に繰り返すことにより、送信ビームフォーミング制御を効果的に実施することができ、クライアント端末との間の無線通信の効率を向上させることが可能になる。なお、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の実施対象となるクライアント端末が存在する限り、かかる制御を定期的に繰り返す結果として、データ通信用の時間の中から送信ビームフォーミング(TxBF)実施のための位相調整用の時間を占有してしまう。さらに、位相調整のための計算に無線LANアクセスポイント1の制御部1aにおいて多くの処理を必要とする。したがって、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を必要とするクライアント端末の数が多くなればなるほど、送信データのスループット値が小さくなってしまい、かつ、無線LANアクセスポイント1の制御部1aの負荷が重くなってくるという負の側面が発生してしまう。以下に、かかる負の側面を軽減するために、不必要な送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定して、該当するクライアント端末を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外すことを可能にする実施例について説明する。
<第1の実施例>
次に、図1に示した無線LANアクセスポイント1の具体的な実施例について説明する。まず、第1の実施例として、図1に示した無線LANアクセスポイント1に、周辺に存在する各無線LANクライアント端末ごとのそれぞれにおいて、送信ビームフォーミング(Transmit-Beam-Forming:TxBF)制御の対象とすべき状態にあるか否かを判定するために、各無線LANクライアント端末それぞれが必要とする必要スループット値をあらかじめ登録している場合について説明する。
(第1の実施例の構成例)
図6は、図1に示した無線LANアクセスポイント1の第1の実施例における内部構成を示すブロック構成図であり、送信ビームフォーミング(TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント1のメモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bに、クライアント端末ごとの送信ビームフォーミング(TxBF)制御をON/OFFさせる契機となる必要スループット値に関する情報が、ユーザの要求条件に応じてあらかじめ設定登録されている様子を示している。
また、図6においては、無線LANアクセスポイント1の無線回路1c、複数のアンテナすなわち第1アンテナ1dと第2アンテナ1eと第3アンテナ1fとを介して無線通信する無線LANクライアント端末として、スマートフォン12、スマートフォン13、PC14の3台が存在している場合を示している。さらに、スマートフォン12、スマートフォン13、PC14の3台それぞれの無線LANクライアント端末において必要とする必要スループット値が、ユーザPC20を介して、無線LANアクセスポイント1のメモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bにあらかじめ設定登録されている。
つまり、制御部1aの制御により、LANポート1gに接続されたユーザPC20を介して、メモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bに、各無線LANクライアント端末のMACアドレスと該MACアドレスが割り付けられた無線LANクライアント端末のユーザが必要と想定している必要スループット値とをあらかじめ登録することが可能な構成になっている。
例えば、図6に示す必要スループット値登録テーブル11bへの登録例においては、スマートフォン12は、符号12b1に示すように、MACアドレスが111111であり、必要とする必要スループット値が10Mbpsである旨が登録されている。また、スマートフォン13は、符号13b1に示すように、MACアドレスが222222であり、必要とする必要スループット値が5Mbpsである旨が登録されている。また、PC14は、符号14b1に示すように、MACアドレスが333333であり、必要とする必要スループット値が40Mbpsである旨が登録されている。
また、図6の無線通信環境下においては、スマートフォン12は、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、20Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値として必要スループット値登録テーブル11bに登録している10Mbpsを超えるスループット値となっている。また、スマートフォン13についても、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、15Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値として必要スループット値登録テーブル11bに登録している5Mbpsを超えるスループット値となっている。したがって、スマートフォン12、スマートフォン13のいずれも、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の実施は不要な状態にあると判定されて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定して、スマートフォン12、スマートフォン13を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外す。
これに対して、PC14については、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、35Mbpsの速度で現在無線通信を行っているが、必要スループット値として必要スループット値登録テーブル11bに登録している40Mbpsに達していないスループット値になっている。このため、PC14については、送信信ビームフォーミング(TxBF)制御の実施が必要な状態にあると判定されて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をON状態に設定して、PC14を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象とする。
(第1の実施例の動作の説明)
次に、第1の実施例として図6に示した無線LANアクセスポイント1の動作について、図7のフローチャートを参照しながら、その一例を詳細に説明する。図7は、本発明の第1の実施例として図6に示した無線LANアクセスポイント1の動作の一例を説明するためのフローチャートであり、送信ビームフォーミング(TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント1が、無線通信相手のクライアント端末が必要とする必要スループット値に達している状態にあるか否かを応じて、当該クライアント端末に対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON/OFFを設定する動作の一例を説明している。
なお、無線LANアクセスポイント1のメモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bには、前述したように、各クライアント端末ごとにそれぞれにおいて必要とする必要スループット値があらかじめ設定登録されている。
図7のフローチャートにおいて、まず、無線LANアクセスポイント1は、デフォルト値として、全てのクライアント端末に対して送信ビームフォーミング(TxBF)制御をONの状態にあらかじめ設定して、いずれのクライアント端末に対しても通信中においては送信ビームフォーミング(TxBF)を実施する状態にしている(ステップS1)。次に、無線LANアクセスポイント1は、周辺に存在する各クライアント端末について、当該無線LANアクセスポイント1とデータ通信中のクライアント端末であるか否かを順次判定する(ステップS2)。データ通信中のクライアント端末ではなかった場合には(ステップS2のNO)、ステップS2に戻って、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
一方、データ通信中のクライアント端末であった場合には(ステップS2のYES)、当該クライアント端末のMACアドレスを取得する(ステップS3)。しかる後、無線LANアクセスポイント1は、取得したクライアント端末のMACアドレスが、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに存在しているか否かを確認する(ステップS4)。取得したクライアント端末のMACアドレスが、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに存在していなかった場合には(ステップS4のNO)、当該クライアント端末に関しては、デフォルト値としてあらかじめ設定しているように、送信ビートフォーミング(TxBF)制御をONの状態のまま、送信ビートフォーミング(TxBF)によるデータ通信を行うことにして、ステップS2に戻って、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
これに対して、取得したクライアント端末のMACアドレスが、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに存在していた場合には(ステップS4のYES)、データ通信中の状態にある当該クライアント端末の現在のスループット値を取得する(ステップS5)。しかる後、無線LANアクセスポイント1は、取得した当該クライアント端末の現在のスループット値が、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている当該クライアント端末の必要スループット値よりも大きい値か否かを確認する(ステップS6)。
取得した当該クライアント端末の現在のスループット値が、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている当該クライアント端末の必要スループット値よりも大きくなかった場合には(ステップS6のNO)、データ通信中の状態にある当該クライアント端末に関しては、デフォルト値としてあらかじめ設定しているように、送信ビートフォーミング(TxBF)制御をONの状態のまま維持し、送信ビートフォーミング(TxBF)によるデータ通信を行う状態に設定する(ステップS8)。しかる後、ステップS2に戻って、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
これに対して、取得した当該クライアント端末の現在のスループット値が、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている当該クライアント端末の必要スループット値よりも大きかった場合には(ステップS6のYES)、データ通信中の状態にある当該クライアント端末に関しては、既に十分なスループット値が得られている状態にあるので、送信ビートフォーミング(TxBF)制御をONからOFFの状態に切り替えて、送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外し、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施することなくデータ通信を行う状態に設定する(ステップS7)。しかる後、ステップS2に戻って、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
(第1の実施例の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本第1の実施例においては、以下のような効果を奏することができる。
本第1の実施例においては、無線LANクライアント端末ごとに、各ユーザが必要と想定している必要スループット値を、無線LANアクセスポイント1のメモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bにあらかじめ設定登録しておき、無線LANクライアント端末の実際のデータ通信中の状態におけるスループット値として、あらかじめ設定登録している必要スループット値よりも大きい値が得られている無線LANクライアント端末に対しては、無線LANアクセスポイント1は、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外し、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しないように制御している。
つまり、本第1の実施例においては、送信ビームフォーミング(TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント1が、無線LANクライアント端末との間で無線通信を行う場合に、ユーザが必要と想定している必要スループット値よりも大きいスループット値が得られている無線LANクライアント端末に対しては、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しないように制御している。而して、ユーザが不必要とするレベルのスループット値になっている無線LANクライアント端末については送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しないように制御するので、送信ビームフォーミング(TxBF)用として使用される無線帯域を抑制して、無線通信におけるデータパケットの占有率を大きくすることができ、無線データ通信自体の通信効率を向上させ、スループットを改善することができるとともに、さらに、無線LANアクセスポイント1の制御部1aの負荷も軽減することができる。
<第2の実施例>
次に、第2の実施例として、図1に示した無線LANアクセスポイント1に、周辺に存在する各無線LANクライアント端末ごとのそれぞれにおいて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の対象とすべき状態にあるか否かを判定するために、各無線LANクライアント端末それぞれが必要とする必要スループット値を下限値から上限値までの範囲としてあらかじめ登録している場合について説明する。
(第2の実施例の構成例)
図8は、図1に示した無線LANアクセスポイント1の第2の実施例における内部構成を示すブロック構成図であり、送信ビームフォーミング(TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント1のメモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bに、クライアント端末ごとの送信ビームフォーミング(TxBF)制御をON/OFFさせる契機となる必要スループット値に関する情報が、下限値から上限値までの範囲として、ユーザの要求条件に応じてあらかじめ設定登録されている様子を示している。
また、図8においては、無線LANアクセスポイント1の無線回路1c、複数のアンテナすなわち第1アンテナ1dと第2アンテナ1eと第3アンテナ1fとを介して無線通信する無線LANクライアント端末として、図6の場合と同様、スマートフォン12、スマートフォン13、PC14の3台が存在している場合を示している。さらに、スマートフォン12、スマートフォン13、PC14の3台それぞれの無線LANクライアント端末において必要とする必要スループット値が、下限値から上限値までの範囲として、ユーザPC20を介して、無線LANアクセスポイント1のメモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bにあらかじめ設定登録されている。
つまり、制御部1aの制御により、LANポート1gに接続されたユーザPC20を介して、メモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bに、各無線LANクライアント端末のMACアドレスと該MACアドレスが割り付けられた無線LANクライアント端末のユーザが必要と想定している必要スループット値の範囲とをあらかじめ登録することが可能な構成になっている。
例えば、図8に示す必要スループット値登録テーブル11bへの登録例においては、スマートフォン12は、符号12b2に示すように、MACアドレスが111111であり、必要とする必要スループット値の範囲が3~10Mbpsの範囲である旨が登録されている。また、スマートフォン13は、符号13b2に示すように、MACアドレスが222222であり、必要とする必要スループット値の範囲が2~5Mbpsの範囲である旨が登録されている。また、PC14は、符号14b2に示すように、MACアドレスが333333であり、必要とする必要スループット値の範囲が5~40Mbpsの範囲である旨が登録されている。
また、図8の無線通信環境下においては、スマートフォン12は、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、2Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値の範囲として必要スループット値登録テーブル11bに登録している3~10Mbpsの範囲から外れたスループット値(必要スループット値の範囲を下回った値)となっている。また、スマートフォン13については、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、15Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値の範囲として必要スループット値登録テーブル11bに登録している2~5Mbpsの範囲から外れたスループット値(必要スループット値の範囲を上回った値)となっている。
したがって、スマートフォン12、スマートフォン13のいずれも、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の実施は不要な状態にあると判定されて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定して、スマートフォン12、スマートフォン13を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外す。なお、スマートフォン12の場合は、現在のスループット値が2Mbpsと、必要スループット値の範囲を下回って、低い値となっており、無線LANアクセスポイント1からの距離が離れ過ぎていて、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施したとしても電波強度の改善による効果を期待することができないくらい無線電波の振幅が小さい状態になっているものと判定して、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定して、当該スマートフォン12を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外すことにする。
これに対して、PC14については、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、35Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値の範囲として必要スループット値登録テーブル11bに登録している5~40Mbpsの範囲内のスループット値になっている。このため、PC14については、送信信ビームフォーミング(TxBF)制御の実施が必要な状態にあると判定されて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をON状態に設定して、PC14を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象とする。
(第2の実施例の動作の説明)
次に、第2の実施例として図8に示した無線LANアクセスポイント1の動作について、図9のフローチャートを参照しながら、その一例を詳細に説明する。図9は、本発明の第2の実施例として図8に示した無線LANアクセスポイント1の動作の一例を説明するためのフローチャートであり、送信ビームフォーミング(TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント1が、無線通信相手のクライアント端末が必要とする必要スループット値の範囲内にあるか否かを応じて、当該クライアント端末に対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON/OFFを設定する動作の一例を説明している。
なお、無線LANアクセスポイント1のメモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bには、前述したように、各クライアント端末ごとにそれぞれにおいて必要とする必要スループット値の範囲に関する情報があらかじめ設定登録されている。
また、図9のフローチャートにおいて、ステップS11~ステップS15、ステップS17およびステップS18のそれぞれは、第1の実施例として図7のフローチャートに示したステップS1~ステップS5、ステップS7およびステップS8のそれぞれと全く同様であり、ここでの重複する説明は割愛する。つまり、図9のフローチャートは、ハッチングを施して示したステップS16の動作が、図7のステップS6と異なっているだけであって、その他の各ステップは、図7のフローチャートの場合と全く同様であるので、以下には、ステップS16の動作について説明する。
図9のフローチャートのステップS16においては、無線LANアクセスポイント1は、ステップS15において取得した当該クライアント端末の現在のスループット値が、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている当該クライアント端末の必要スループット値の範囲外の値か否かを確認する(ステップS16)。
取得した当該クライアント端末の現在のスループット値が、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている当該クライアント端末の必要スループット値の範囲内であって、該必要スループット値の範囲外の値ではなかった場合には(ステップS16のNO)、データ通信中の状態にある当該クライアント端末に関しては、デフォルト値としてあらかじめ設定しているように、送信ビートフォーミング制御をONの状態のまま維持し、送信ビームフォーミング(TxBF)によるデータ通信を行う状態に設定する(ステップS18)。しかる後、ステップS12に戻って、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
これに対して、取得した当該クライアント端末の現在のスループット値が、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている当該クライアント端末の必要スループット値の範囲外の値であった場合には(ステップS16のYES)、データ通信中の状態にある当該クライアント端末に関しては、既に十分なスループット値が得られている状態にあるか、あるいは、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しても無駄なほど無線電波の振幅値が小さくなっている状態にあるので、送信ビートフォーミング制御をONからOFFの状態に切り替えて、当該クライアント端末を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外し、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施することなくデータ通信を行う状態に設定する(ステップS17)。しかる後、ステップS12に戻って、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
(第2の実施例の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本第2の実施例においては、以下のような効果を奏することができる。
本第2の実施例においては、各無線LANクライアント端末ごとに、必要スループット値として上限値と下限値との範囲を、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bにあらかじめ登録しておき、無線LANクライアント端末の実際のデータ通信中の状態におけるスループット値が、必要スループット値登録テーブル11bに登録されている必要スループット値の範囲内にあるか否かに応じて、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON/OFFを設定して、送信ビームフォーミング(TxBF)の対象とするか否かを決定するようにしている。つまり、無線LANクライアント端末の実際のデータ通信中の状態におけるスループット値が、必要スループット値の範囲を超えて大きい場合のみならず、必要スループット値の範囲を下回って小さい場合についても、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外し、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しないように制御している。
而して、既に十分なスループット値が得られている状態にある場合のみならず、無線LANアクセスポイント1からの距離が離れすぎていて、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しても電波強度の改善によるスループット値の向上を期待することができない場合についても、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定することになり、第1の実施例に比して、無線通信におけるデータ通信効率の更なる向上を図ることが可能になるとともに、さらに、無線LANアクセスポイント1の制御部1aの負荷もさらに軽減することができるという効果が得られる。
<第3の実施例>
次に、第3の実施例として、図1に示した無線LANアクセスポイント1に、周辺に存在する各無線LANクライアント端末ごとのそれぞれにおいて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の対象とすべき状態にあるか否かを判定するために、各無線LANクライアント端末それぞれが必要とする必要スループット値を下限値から上限値までの範囲としてあらかじめ登録するとともに、さらに、各無線LANクライアント端末それぞれに対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯についてもあらかじめ登録している場合について説明する。
(第3の実施例の構成例)
図10は、図1に示した無線LANアクセスポイント1の第3の実施例における内部構成を示すブロック構成図であり、送信ビームフォーミング(TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント1のメモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bに、クライアント端末ごとの送信ビームフォーミング(TxBF)制御をON/OFFさせる契機となる必要スループット値に関する情報が、下限値から上限値までの範囲として、ユーザの要求条件に応じてあらかじめ設定登録されるとともに、さらに、各無線LANクライアント端末それぞれに対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯についても、ユーザの要求条件に応じてあらかじめ設定登録されている様子を示している。
また、図10においては、無線LANアクセスポイント1の無線回路1c、複数のアンテナすなわち第1アンテナ1dと第2アンテナ1eと第3アンテナ1fとを介して無線通信する無線LANクライアント端末として、図6の場合と同様、スマートフォン12、スマートフォン13、PC14の3台が存在している場合を示している。さらに、スマートフォン12、スマートフォン13、PC14の3台それぞれの無線LANクライアント端末において必要とする必要スループット値が、図8の場合と同様、下限値から上限値までの範囲として、ユーザPC20を介して、無線LANアクセスポイント1のメモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bにあらかじめ設定登録される。さらに、図10においては、図8の場合にさらに追加して、スマートフォン12、スマートフォン13、PC14の3台それぞれの無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯についても、ユーザPC20を介して、無線LANアクセスポイント1のメモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bにあらかじめ設定登録されている。
つまり、制御部1aの制御により、LANポート1gに接続されたユーザPC20を介して、メモリ1bの必要スループット値登録テーブル11bに、各無線LANクライアント端末のMACアドレスと該MACアドレスが割り付けられた無線LANクライアント端末のユーザが必要と想定している必要スループット値の範囲との他に、さらに、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯すなわち送信ビームフォーミングOFF設定時間帯を追加してあらかじめ登録することが可能な構成になっている。
例えば、図10に示す必要スループット値登録テーブル11bへの登録例においては、スマートフォン12は、符号12b3に示すように、MACアドレスが111111であり、必要とする必要スループット値の範囲が3~10Mbpsの範囲であり、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定する送信ビームフォーミングOFF設定時間帯は無しの旨が登録されている。また、スマートフォン13は、符号13b3に示すように、MACアドレスが222222であり、必要とする必要スループット値の範囲が2~5Mbpsの範囲であり、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定する送信ビームフォーミングOFF設定時間帯は無しの旨が登録されている。また、PC14は、符号14b3に示すように、MACアドレスが333333であり、必要とする必要スループット値の範囲が5~40Mbpsの範囲であり、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定する送信ビームフォーミングOFF設定時間帯が21時~7時である旨が登録されている。
また、図10の無線通信環境下においては、スマートフォン12は、図8の場合と同様、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、2Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値の範囲として必要スループット値登録テーブル11bに登録している3~10Mbpsの範囲から外れたスループット値(必要スループット値の範囲を下回った値)となっている。また、スマートフォン13については、図8の場合と同様、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、15Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値の範囲として必要スループット値登録テーブル11bに登録している2~5Mbpsの範囲から外れたスループット値(必要スループット値の範囲を上回った値)となっている。
したがって、スマートフォン12、スマートフォン13のいずれも、図8の場合と同様、送信ビームフォーミング(TxBF)制御の実施は不要な状態にあると判定されて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をOFF状態に設定して、スマートフォン12、スマートフォン13を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外すことにする。
これに対して、PC14については、無線LANアクセスポイント1との間の無線通信におけるスループット値として、35Mbpsの速度で現在無線通信を行っていて、必要スループット値の範囲として必要スループット値登録テーブル11bに登録している5~40Mbpsの範囲内のスループット値になっている。このため、PC14については、送信信ビームフォーミング(TxBF)制御の実施が必要な状態にあると判定されて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をON状態に設定して、PC14を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象とする。ただし、PC14の場合は、前述したように、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する送信ビームフォーミングOFF設定時間帯が21時~7時である旨がメモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている。したがって、現在の時刻が21時~7時の時間帯の範囲内の時刻である間は、現在のスループット値の如何に関わらず、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定して、PC14を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外すことになる。
なお、図10における無線LANアクセスポイント1においては、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録される必要スループット値として、上限値と下限値との範囲を指定した必要スループット値の範囲を登録している例を示したが、第1の実施例として示した図6の場合と同様に、必要スループット値そのものを登録するようにしても勿論構わない。
(第3の実施例の動作の説明)
次に、第3の実施例として図10に示した無線LANアクセスポイント1の動作について、図11のフローチャートを参照しながら、その一例を詳細に説明する。図11は、本発明の第3の実施例として図10に示した無線LANアクセスポイント1の動作の一例を説明するためのフローチャートであり、送信ビームフォーミング(TxBF)機能を有する無線LANアクセスポイント1が、無線通信相手のクライアント端末が必要とする必要スループット値の範囲内にあるか否か、さらに、現在の時刻が、当該クライアント端末に対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当しているか否かを応じて、当該クライアント端末に対する送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON/OFFを設定する動作の一例を説明している。
なお、無線LANアクセスポイント1のメモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bには、前述したように、各クライアント端末ごとにそれぞれにおいて必要とする必要スループット値の範囲および送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する送信ビームフォーミングOFF設定時間帯に関する情報があらかじめ設定登録されている。
また、図11のフローチャートにおいて、ステップS21~ステップS28のそれぞれは、第2の実施例として図9のフローチャートに示したステップS11~ステップS18のそれぞれと全く同様であり、ここでの重複する説明は割愛する。つまり、図11のフローチャートは、ハッチングを施して示したステップS21A、ステップS21BおよびステップS26Aの各動作が、図9のフローチャートに対してさらに追加されている。その他のステップS21~ステップS28の各ステップについては、図9のフローチャートのステップS11~ステップS18と全く同様であるので、以下には、新たに追加されたステップS21A、ステップS21BおよびステップS26Aの各動作について説明する。
図11のフローチャートのステップS21Aは、ステップS21においてデフォルト値として全てのクライアント端末に対して送信ビームフォーミング(TxBF)制御がON状態に設定された後の動作である。かかる場合において、無線LANアクセスポイント1は、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bを参照して、現在の時刻が、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯の範囲内の時刻に該当しているMACアドレスのクライアント端末が登録されているか否かを確認する(ステップS21A)。
現在の時刻が、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯の範囲内の時刻に該当しているMACアドレスのクライアント端末が登録されていなかった場合には(ステップS21AのNO)、ステップS22に移行して、データ通信中のクライアント端末が存在しているか否かを確認する動作を行う。
これに対して、現在の時刻が、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯の範囲内の時刻に該当しているMACアドレスのクライアント端末が登録されていた場合には(ステップS21AのYES)、該当するMACアドレスを有するクライアント端末に関して、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に切り替えて、当該クライアント端末を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外す状態に設定する(ステップS21B)。しかる後、ステップS22に移行すると、単に、無線LANアクセスポイント1に帰属しているだけで、無線データ通信を行っていない状態にあるクライアント端末であった場合には(ステップS22のNO)、デフォルト値として設定していた送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON状態が、ステップS21Bの動作により、OFF状態に切り替えられているので、当該無線LANクライアント端末を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外すように設定されていることになる。
次に、ステップS26Aの動作について説明する。ステップS26Aは、ステップS26において無線データ通信中の状態にあるクライアント端末の現在のスループット値が、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録されている当該クライアント端末の必要スループット値の範囲内であって、該必要スループット値の範囲外の値ではなかった場合(ステップS26のNO)の動作である。かかる場合において、無線LANアクセスポイント1は、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bを参照して、当該クライアント端末に関して、現在の時刻が、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯すなわち送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当しているか否かを確認する(ステップS26A)。
メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bの参照結果として、当該クライアント端末に関して、現在の時刻が、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯すなわち送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当していなかった場合には(ステップS26AのNO)、無線データ通信中の状態にある当該クライアント端末の現在のスループット値が必要スループット値の範囲内にあるので、デフォルト値としてあらかじめ設定しているように、送信ビートフォーミング(TxBF)制御をONの状態のまま維持し、送信ビームフォーミング(TxBF)によるデータ通信を行うことにする(ステップS28)。しかる後、ステップS21Aに戻って、現在の時刻が送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当するMACアドレスが必要スループット値登録テーブル11bに登録されているか否かを再確認した後、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
また、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bの参照結果として、当該クライアント端末に関して、現在の時刻が、送信ビームフォーミング(TxBF)を強制的にOFF状態に設定する時間帯すなわち送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当していた場合には(ステップS26AのYES)、無線データ通信中の状態にある当該クライアント端末の現在のスループット値が必要スループット値の範囲内であったとしても、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯であるので、送信ビートフォーミング(TxBF)制御をステップS21Bにおいて設定したOFF状態のまま維持し、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施することなくデータ通信を行うことにする(ステップS27)。しかる後、ステップS21Aに戻って、現在の時刻が送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当するMACアドレスが必要スループット値登録テーブル11bに登録されているか否かを再確認した後、次の順番のクライアント端末に関してデータ通信中か否かを判定する処理を行う。
なお、図11に示したフローチャートにおいては、第2の実施例として図9に示したフローチャートにステップS21A、ステップS21BおよびステップS26Aの3つのステップを追加した場合について説明したが、第1の実施例として図7に示したフローチャートに対して同様にステップS21A、ステップS21BおよびステップS26Aの3つのステップを追加するようにしても勿論構わない。
(第3の実施例の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本第3の実施例においては、以下のような効果を奏することができる。
本第3の実施例においては、必要スループット値(または必要スループット値の範囲)以外にさらに送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯すなわち送信ビームフォーミングOFF設定時間帯を追加してメモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに登録している。そして、実際の無線通信におけるスループット値と、必要スループット値登録テーブル11bに登録されている必要スループット値の範囲との比較結果のみならず、現在の時刻が、必要スループット値登録テーブル11bに登録されている送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当しているか否かに応じて、送信ビームフォーミング(TxBF)制御のON/OFFを設定するようにしている。つまり、無線LANクライアント端末の実際の無線通信におけるスループット値が、送信ビームフォーミング(TxBF)制御をON状態にすべき値であったとしても、現在の時刻が、送信ビームフォーミングOFF設定時間帯の範囲内の時刻に該当している場合には、現在のスループット値の如何に関係なく、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を送信ビームフォーミング(TxBF)の対象から外し、送信ビームフォーミング(TxBF)を実施しないように制御している。
而して、例えば、子供専用のクライアント端末の場合における深夜の時間帯のように、特定の時間帯においては使用されることが少ないクライアント端末に関しては、メモリ1b内の必要スループット値登録テーブル11bに、送信ビームフォーミング(TxBF)制御を強制的にOFF状態に設定する時間帯すなわち送信ビームフォーミングOFF設定時間帯を追加して登録することにより、登録した送信ビームフォーミングOFF設定時間帯に該当する時間帯においては、第1の実施例および第2の実施例に比して、無線通信におけるデータ通信効率の更なる向上を図ることが可能になるとともに、さらに、無線LANアクセスポイント1の制御部1aの負荷もさらに軽減することができるという効果が得られる。
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
1 無線LANアクセスポイント
1a 制御部
1b メモリ
1c 無線回路
1d 第1アンテナ
1e 第2アンテナ
1f 第3アンテナ
1g LANポート
1h WANポート
2 無線LANクライアント端末
3 無線LANクライアント端末
4 無線LANクライアント端末
10 インターネット
11b 必要スループット値登録テーブル
12 スマートフォン
13 スマートフォン
14 PC
20 ユーザPC(Personal Computer)

Claims (3)

  1. 複数の無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントであって、
    各前記無線LANクライアント端末ごとに、前記無線LANクライアント端末のユーザが必要とするスループット値を必要スループット値としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルを備え、
    無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値を超えている値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すことを特徴とする無線LANアクセスポイント。
  2. 複数の無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントにおける送信ビームフォーミング制御方法であって、
    前記無線LANアクセスポイントは、
    各前記無線LANクライアント端末ごとに、前記無線LANクライアント端末のユーザが必要とするスループット値を必要スループット値としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルを備え、
    無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値を超えている値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すように制御することを特徴とする送信ビームフォーミング制御方法。
  3. 複数の無線LANクライアント端末と無線通信を行う際に該無線LANクライアント端末に対して送信ビームフォーミングを行う機能を有する無線LANアクセスポイントにおいて前記送信ビームフォーミングの制御をコンピュータによって実行する送信ビームフォーミング制御プログラムであって、
    前記無線LANアクセスポイントは、
    各前記無線LANクライアント端末ごとに、前記無線LANクライアント端末のユーザが必要とするスループット値を必要スループット値としてあらかじめ設定登録する必要スループット値登録テーブルをプログラムによりアクセスすることが可能なメモリ内に備え、
    無線データ通信中の状態にある前記無線LANクライアント端末の現在のスループット値が、前記必要スループット値登録テーブルに登録されている前記必要スループット値を超えている値であった場合、当該無線LANクライアント端末に対する送信ビームフォーミング制御をOFF状態に設定して、当該無線LANクライアント端末を前記送信ビームフォーミングの対象から外すように制御することを特徴とする送信ビームフォーミング制御プログラム。
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