JP7009897B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
このようなスタッドレスタイヤの製造に用いられるゴム組成物として、例えば、特許文献1には、天然ゴムとブタジエンゴムと熱膨張性マイクロカプセルとを含有するゴム組成物が開示されている。
このようななか、本発明者らが特許文献1の実施例を参考にゴム組成物を調製したところ、将来のさらなる特性向上の要求まで考慮すると、全ての特性についてそのような高いレベルの要求に応えられるものが必ずしも得られないことが明らかになった。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
上記変性ブタジエンポリマーが、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上10,000未満であり、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマーであり、
上記ジエン系ゴムと上記変性ブタジエンポリマーと上記未変性ポリマーとの平均ガラス転移温度が、-50℃以下であり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴムと上記変性ブタジエンポリマーと上記未変性ポリマーとの合計100質量部に対して、30~200質量部であり、
上記変性ブタジエンポリマーと上記未変性ポリマーとの合計の含有量が、上記シリカの含有量に対して、1.0~25.0質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記シリカのCTAB吸着比表面積が、150~300m2/gである、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) さらにシランカップリング剤を含有し、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤ。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有される各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、重量平均分子量が100,000以上のジエン系ゴムと、変性ブタジエンポリマーと、重量平均分子量が25,000以上100,000未満の未変性ポリマーと、シリカとを含有する。
ここで、上記変性ブタジエンポリマーは、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上10,000未満であり、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマーである。
また、上記ジエン系ゴムと上記変性ブタジエンポリマーと上記未変性ポリマーとの平均ガラス転移温度は、-50℃以下である。
また、上記シリカの含有量は、上記ジエン系ゴムと上記変性ブタジエンポリマーと上記未変性ポリマーとの合計100質量部に対して、30~200質量部である。
また、上記変性ブタジエンポリマーと上記未変性ポリマーとの合計の含有量は、上記シリカの含有量に対して、1.0~25.0質量%である。
ここで、本発明者らの検討の結果、変性ブタジエンポリマーのサイズ(重量平均分子量、分子量分布)とシリカの分散性との間に臨界性が見られることが分かっている。これは、変性ブタジエンポリマーのサイズが特定の範囲にある場合にシリカ同士の凝集体の隙間に極めて介入し易くなるためと推測される。このように本発明ではサイズが特定の範囲にある変性ブタジエンポリマーを用いるため、極めて高いシリカ分散性が達成されるものと考えられる。
また、本発明の組成物に含有される特定の未変性ポリマーは、シリカ同士の凝集体の隙間に入り込んだ上記ブタジエンポリマーとジエン系ゴムとを繋ぐ役割を有し、シリカの分散性をさらに高める役割を有するものと推測される。
このように本発明の組成物はシリカの分散性が極めて高いため、結果として、タイヤにしたときに優れた氷上性能及びウェット性能を示すものと考えられる。
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、重量平均分子量が100,000以上のジエン系ゴムである。
ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
上記ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、天然ゴム(NR)又はブタジエンゴム(BR)を含むのが好ましく、天然ゴム(NR)及びブタジエンゴム(BR)を含むのがより好ましい。
上記BRは変性BRであることが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アルキルシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基(特に、アルコキシシリル基)及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を末端に有するのが好ましく、ヒドロカルビルオキシシリル基(特に、アルコキシシリル基)を末端に有するのがより好ましい。
ヒドロカルビルオキシシリル基(特に、アルコキシシリル基)を末端に有する変性BRは、本発明の効果がより優れる理由から、後述する変性共役ジエン系重合体であることがより好ましい。
本明細書における変性共役ジエン系重合体は、シス-1,4-結合(1,4-シス構造)の含有量(シス-1,4-結合含有量)が75モル%以上であるブタジエンゴムの活性末端を少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなる変性共役ジエン系重合体である。
ここで、ヒドロカルビルオキシシラン化合物とは、ヒドロカルビルオキシ基(-OR:ここでRは炭化水素基またはアリール基)を有するシラン化合物である。
上述のとおり、上記ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、天然ゴム(NR)及びブタジエンゴム(BR)を含むのが好ましい。
この場合、ジエン系ゴム中の天然ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、10~80質量%であることが好ましく、20~65質量%であることがより好ましい。
また、ジエン系ゴム中のブタジエンゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。
上述のとおり、本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、重量平均分子量が100,000以上のジエン系ゴムである。
上記ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる理由から、100,000~10,000,000であることが好ましく、300,000~3,000,000であることがより好ましい。
また、本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果がより優れる理由から、50,000~5,000,000であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。
なお、ジエン系ゴムに含まれる少なくとも1種のジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることが好ましく、ジエン系ゴムに含まれるすべてのジエン系ゴムのMw及び/又はMnが上記範囲に含まれることがより好ましい。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
上述のとおり、本発明の組成物は、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上10,000未満であり、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマー(以下、「特定変性ブタジエンポリマー」とも言う)を含有する。
上述のとおり、特定変性ブタジエンポリマーは、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(特定官能基)を末端に有する。なお、特定官能基は少なくとも1つの末端に有すればよい。
特定官能基は窒素原子及びケイ素原子を含む官能基であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR2:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
上記式(M)中、Lは、2価の有機基を表す。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
複数あるR1は同一であっても異なっていてもよい。
2価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6~18)、-O-、-S-、-SO2-、-N(R)-(R:アルキル基)、-CO-、-NH-、-COO-、-CONH-、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基(-CmH2mO-:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
Lは、本発明の効果がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1~10)であることが好ましい。
nは、本発明の効果がより優れる理由から、2であることが好ましい。
mは、本発明の効果がより優れる理由から、1であることが好ましい。
上述のとおり、特定変性ブタジエンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000以上10,000未満である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5,000以上10,000未満であることが好ましい。
特定変性ブタジエンポリマーの数平均分子量は特定変性ブタジエンポリマーの重量平均分子量及び分子量分布が特定の範囲にあれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000以上10,000未満であることが好ましく、5,000以上10,000未満であることがより好ましい。
上述のとおり、特定変性ブタジエンポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は2.0以下である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1.7以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。
下限は特に制限されないが、通常、1.0以上である。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
(ビニル構造)
特定変性ブタジエンポリマーにおいて、ビニル構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~50モル%であることが好ましく、20~40モル%であることがより好ましい。
ここで、ビニル構造の割合とは、ブタジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
特定変性ブタジエンポリマーにおいて、1,4-トランス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~70モル%であることが好ましく、30~50モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-トランス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
特定変性ブタジエンポリマーにおいて、1,4-シス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~50モル%であることが好ましく、20~40モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-シス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
特定変性ブタジエンポリマーのガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、-100~-60℃であることが好ましく、-90~-70℃であることがより好ましく、-85~-75℃であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
特定変性ブタジエンポリマーの粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~10,000mPa・sであることが好ましく、3,000~6,000mPa・sであることがより好ましい。
また、特定変性ブタジエンポリマーを変性する前のブタジエンポリマーの粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、500~5,000mPa・sであることが好ましく、1,500~3,000mPa・sであることがより好ましい。
また、特定変性ブタジエンポリマーの粘度は、本発明の効果がより優れる理由から、変性前のブタジエンポリマーの粘度に対して、150~240%であることが好ましい。以下、変性前の特定変性ブタジエンポリマーに対する変性後の特性変性BRの粘度を「粘度(変性後/変性前)」とも言う。
なお、本明細書において、粘度は、JIS K5600-2-3に準じて、コーンプレート型粘度計を用いて測定したものとする。
特定変性ブタジエンポリマーを製造する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。分子量及び分子量分布を特定の範囲する方法は特に制限されないが、開始剤とモノマーと停止剤との量比、反応温度、及び、開始剤を添加する速度などを調整する方法などが挙げられる。
上記有機リチウム化合物は特に制限されないが、その具体例としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
有機リチウム化合物を用いてブタジエンを重合する方法は特定に制限されないが、ブタジエンを含有する有機溶媒溶液に上述した有機リチウム化合物を加え、0~120℃(好ましくは30~100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
本発明の方法では、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤(以下、「特定求電子剤」とも言う)を用いてブタジエンの重合を停止する。特定求電子剤を用いて重合を停止することで、上述した特定官能基を末端に有する変性ブタジエンポリマーが得られる。
特定求電子剤は窒素原子及びケイ素原子を含む化合物であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR2:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。2価の有機基の具体例及び好適な態様は、上述した式(M)中のLと同じである。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を示すと考えられる。
本発明の組成物において、特定変性ブタジエンポリマーの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、1.0~10.0質量%であることが好ましい。
また、特定変性ブタジエンポリマーの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましい。
上述のとおり、本発明の組成物は、重量平均分子量(Mw)が25,000以上100,000未満の未変性ポリマー(以下、「特定未変性ポリマー」とも言う)を含有する。
特定未変性ポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、Mwが25,000以上100,000未満の未変性ブタジエンゴム(未変性BR)であることが好ましい。
特定未変性ポリマーのMwは、本発明の効果がより優れる理由から、50,000以下であることが好ましい。
特定未変性ポリマーは、本発明の効果がより優れる理由から、液状であることが好ましい。
本発明の組成物において、特定未変性ポリマーの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、1.0~10.0質量%であることが好ましい。
また、特定未変性ポリマーの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましい。
上述したジエン系ゴムと上述した変性ブタジエンポリマーと上述した未変性ポリマーとの平均ガラス転移温度(平均Tg)は、-50℃以下である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、-60℃以下であることが好ましく、-70℃以下であることがより好ましく、-80℃以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、-105℃以上であることが好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。ジエン系ゴムが油展品であるときは、ガラス転移温度は、油展成分(オイル)を含まない状態におけるジエン系ゴムのガラス転移温度とする。また、平均ガラス転移温度(平均Tg)とは、各ジエン系ゴムのガラス転移温度に各ジエン系ゴムの質量分率を乗じた合計(ガラス転移温度の加重平均値)であり、すべてのジエン系ゴムの質量分率の合計を1とする。
本発明の組成物に含有されるシリカは特に制限されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100~400m2/gであることが好ましく、150~300m2/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値とする。
本発明の組成物において、シリカの含有量は、上述したジエン系ゴムと上述した特定変性ブタジエンポリマーと上述した特定未変性ポリマーとの合計100質量部に対して、30~200質量部である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、30~100質量部であることが好ましく、50~100質量部であることがより好ましい。
上述した特定変性ブタジエンポリマーと上述した特定未変性ポリマーとの合計の含有量は、上述したシリカの含有量に対して、1.0~25.0質量%である。以下、シリカの含有量に対する、特定変性ブタジエンポリマーと特定未変性ポリマーとの合計の含有量を、「液状ポリマー/シリカ」とも表す。
液状ポリマー/シリカは、本発明の効果がより優れる理由から、10.0~20.0質量%であることが好ましい。
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、シランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシ基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~160℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
本発明の組成物は、上述のとおり、タイヤにしたときに氷上性能に優れるため、スタッドレスタイヤ用として特に有用である。
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表す空気入りタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
(1)触媒の調製
乾燥・窒素置換された、ゴム栓付き容積約100mlのガラス瓶に、以下の順番に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56M)0.59ml、メチルアルミノキサンMAO(東ソーアクゾ製PMAO)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23M)10.32ml、水素化ジイソブチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.90M)7.77mlを投入し、室温で2分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.95M)1.45mlを加えて、室温で時折撹拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.011M(モル/リットル)であった。
乾燥・窒素置換された、ゴム栓付き容積約900mlのガラス瓶に、乾燥精製された1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及び乾燥シクロヘキサンを各々装入し、1,3-ブタジエン12.5質量%のシクロヘキサン溶液が400g投入された状態とした。次に、上記(1)において調製した触媒溶液2.28ml(ネオジム換算0.025mmol)を投入し、50℃温水浴中で1.0時間重合を行い、中間重合体を製造した。得られた重合体のミクロ構造は、シス-1,4-結合含有量95.5モル%、トランス-1,4-結合含有量3.9モル%、ビニル結合含有量0.6モル%であつた。これらのミクロ構造(シス-1,4-結合含有量、トランス-1,4-結合含有量、ビニル結合含有量)は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によって求めた。
第1次変性剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPMOS)のヘキサン溶液(1.0M)として、GPMOSがネオジムに対して23.5モル当量になるよう上記(2)で得た重合液に投入し、50℃で60分間処理することにより、第1次の変性を行った。
続いて、縮合促進剤として、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ(BEHAS)のシクロヘキサン溶液(1.01M)を1.76ml(70.5eq/Nd相当)と、イオン交換水32μl(70.5eq/Nd相当)を投入し、50℃温水浴中で1.0時間処理した。その後、重合系に老化防止剤2,2-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)のイソプロパノール5%溶液2mlを加えて反応の停止を行い、更に微量のNS-5を含むイソプロパノール中で再沈殿を行い、ドラム乾燥することにより変性共役ジエン系重合体を得た。得られた変性共役ジエン系重合体は上述した変性共役ジエン系重合体に該当する。得られた変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度ML1+4(100℃)を、(有)東洋精機製作所製のRLM-01型テスターを用いて100℃で測定したところ、93であった。変性後のミクロ構造も中間重合体のミクロ構造と同様であった。
下記のとおり、特定変性ブタジエンポリマー1及び2を製造した。
n-BuLi(n-ブチルリチウム)(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),27mL,43.2mmol)を、1,3-ブタジエン(205g,3786mmol)及び2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(2.96kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(以下構造)(15g,137mmol)を投入し、重合を停止した。
n-BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),50mL,80mmol)を、1,3-ブタジエン(198g,3667mmol)及び2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(2.96kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(30g,137mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性ブタジエンポリマー(特定変性ブタジエンポリマー2)(182g,Mn=4,100,Mw=4,400,Mw/Mn=1.1)を92%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=31/45/24と見積もられた。また、Tgは-83℃であった。また、粘度(変性後/変性前)は196%であった。
下記表1に示される成分を、下記表1に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、150℃のバンバリーミキサーで2分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄及び加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で、170℃で10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を作製した。そして、得られた加硫ゴム試験片について、以下の評価を行った。
得られた加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムにはりつけ、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて、測定温度:-1.5℃、荷重:5.5kg/cm3、ドラム回転速度:25km/時間の条件で、氷上摩擦係数を測定した。
結果を表1に示す。結果は基準例の氷上摩擦係数を100とする指数で表した。指数が大きいほどゴムと氷との摩擦力が大きく、タイヤにしたときに氷上性能に優れる。実用上103以上であることが好ましい。
得られた加硫ゴム試験片について、JIS K6394:2007に準じ、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件でtanδ(0℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は基準例のtanδ(0℃)を100とする指数で表した。指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときにウェット性能に優れる。実用上、101以上であることが好ましい。
なお、特定変性ブタジエンポリマー1及び2は、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上10,000未満であり、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマーであるため、上述した「特定変性ブタジエンポリマー」に該当する。
また、特定未変性ポリマー、及び、BR4(BRX5000)に含まれる未変性BRは、重量平均分子量が25,000以上100,000未満の未変性ポリマーであるため、上述した「特定未変性ポリマー」に該当する。一方、比較未変性ポリマーは、重量平均分子量が25,000未満の未変性ポリマーであるため、上述した「特定未変性ポリマー」に該当しない。
また、NR及びBR1~4のMwは100,000以上である。
・BR1(BR1220):Nipol BR1220(BR、Mw:49万、Tg:-105℃、日本ゼオン社製)
・BR2:下記のとおり製造した変性ブタジエンゴム(変性BR、末端にポリオルガノシロキサン基を有する、Mw:510,000、Tg:-105℃)
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン5670g、1,3-ブタジエン700gおよび、テトラメチルエチレンジアミン0.17mmolを仕込んだ後、n-ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3-ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加し、更に、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.33mmolを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから20分経過後、1,3-ブタジエン300gを30分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は80℃であった。連続添加終了後、更に15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、GPC分析の試料とした。その試料を用いて、重合体(活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に該当)のピークトップ分子量および分子量分布を測定したところ、それぞれ、「23万」および「1.04」であった。
少量の重合溶液をサンプリングした直後、重合溶液に、1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmol(重合に使用したn-ブチルリチウムの0.0345倍モルに相当)を40重量%シクロヘキサン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。
更に、その後、下記式(6)で表されるポリオルガノシロキサンA(mとkの数値は平均値)0.0382mmol(重合に使用したn-ブチルリチウムの0.00459倍モルに相当)を20重量%キシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。
その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加した。これにより、変性ブタジエンゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、ゴム成分100部あたり、老化防止剤として2,4-ビス(n-オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール0.2部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性ブタジエンゴムを得た。この変性ブタジエンゴムについて、重量平均分子量、分子量分布、カップリング率、ビニル結合含有量、および、ムーニー粘度を測定したところ、それぞれ、「51万」、「1.46」、「28%」、「11質量%」および「46」であった。
・BR4(BRX5000):Nipol BRX5000(ビニル成分を1重量%含有するプリブレンドブタジエンゴム、重量平均分子量が600,000であるポリブタジエン(BR)71質量%と重量平均分子量が50,000であるポリブタジエン(未変性BR)29質量%を溶媒シクロヘキサン中で混合したプリブレンド品、Tg:-105℃、日本ゼオン社製)
・CB:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製、窒素吸着比比表面積(N2SA)=90m2/g)
・シリカ:ZEOSIL 1165MP(ローディア社製、CTAB=155m2/g)
・シラン:Si69(ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド)
・特定変性ブタジエンポリマー1:上述のとおり製造された特定変性ブタジエンポリマー1
・特定変性ブタジエンポリマー2:上述のとおり製造された特定変性ブタジエンポリマー2
・特定未変性ポリマー:LBR305(未変性ブタジエンポリマー、Mw:26,000、Tg:-105℃、クラレ社製)
・比較未変性ポリマー:B3000(未変性ブタジエンポリマー、Mw:3,200、Tg:-105℃、日本曹達社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・熱膨張マイクロカプセル:マイクロスフェアF100(松本油脂社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・加硫促進剤1:ノクセラーCZ(大内新興化学社製)
・加硫促進剤2:ノクセラーD(大内新興化学社製)
・硫黄:油処理イオウ(軽井沢精錬所社製)
実施例1~3の対比から、特定変性ブタジエンポリマーのMwが5,000以上である実施例1及び3は、より優れたウェット性能を示した。なかでも、シリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して70質量部以下である実施例1は、より優れた氷上性能を示した。
実施例1と4と5との対比から、ジエン系ゴムが変性BRを含む実施例4及び5は、より優れた氷上性能及びウェット性能を示した。
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
Claims (4)
- 重量平均分子量が100,000以上のジエン系ゴムと、変性ブタジエンポリマーと、重量平均分子量が25,000以上100,000未満の未変性ブタジエンゴムと、シリカとを含有し、
前記変性ブタジエンポリマーが、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上10,000未満であり、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマーであり、
前記ジエン系ゴムと前記変性ブタジエンポリマーと前記未変性ブタジエンゴムとの平均ガラス転移温度が、-50℃以下であり、
前記シリカの含有量が、前記ジエン系ゴムと前記変性ブタジエンポリマーと前記未変性ブタジエンゴムとの合計100質量部に対して、30~200質量部であり、
前記変性ブタジエンポリマーと前記未変性ブタジエンゴムとの合計の含有量が、前記シリカの含有量に対して、1.0~25.0質量%である、タイヤ用ゴム組成物。 - 前記シリカのCTAB吸着比表面積が、150~300m2/gである、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- さらにシランカップリング剤を含有し、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。 - 請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤ。
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