JP7001082B2 - 非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、及び非水系電解質二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
極活物質及びこれを用いた非水系電解質二次電池に関するものである。
ウムイオン二次電池の内部短絡時の熱安定性を改良することを目的として、LiaNi1-x-y-zCoxMyNbzOb(ただし、MはMn、FeおよびAlよりからなる1種以上の元素、1.0≦a≦1.1、0.1≦x≦0.3、0≦y≦0.1、0.01≦z≦0.05、2≦b≦2.2)で示されるリチウムとニッケルとコバルトと元素Mとニオブと酸素からなる少なくとも二種類以上の化合物で構成される組成を有する粒子からなり、該粒子が略球形状であってその表面近傍または内部に上記組成よりもニオブ濃度の高い少なくとも一種類以上の化合物を含有する略球殻層を有し、初回放電時に正極電位が2Vから1.5Vの範囲内でα[mAh/g]の放電容量を示し、そのX線回折における層状結晶構造の(003)面の半値幅をβ[deg]としたとき、αおよびβがそれぞれ80≦α≦150および0.15≦β≦0.20の条件を同時に満たす非水系二次電池用正極活物質が提案されている。
さらに、特許文献3では、大容量を有し、かつ充電時の熱安定性を向上させることを目的として、組成式LixNiaMnbCocM1dM2eO2(ただし、M1は、Al、Ti及びMgからなる群から選択される少なくとも一種類以上の元素であり、M2は、Mo、W及びNbからなる群から選択される少なくとも一種類以上の元素であり、0.2≦x≦1.2、0.6≦a≦0.8、0.05≦b≦0.3、0.05≦c≦0.3、0.02≦d≦0.04、0.02≦e≦0.06、a+b+c+d+e=1.0である。)で表される正極活物質が提案されている。
以上のことから、湿式工程でのNb添加は、安全面や作業工数の観点あるいはコスト面の課題があるといえる。
さらに、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、簡便かつ安全であり工業的規模での生産に適したものであり、コスト面からも工業上極めて有用である。
また、上記(C)焼成工程後に、スラリー中に含まれる水1Lに対するリチウム遷移金属複合酸化物の量(g)を100~2000g/Lとして水洗することが好ましい。
さらに、(B)混合工程で用いるリチウム化合物は水分率が5質量%以下の水酸化リチウムであることが好ましい。
以下、非水系電解質二次電池用正極活物質の各製造工程、得られる正極活物質及び非水系電解質二次電池等について、詳細に説明をする。
(A)晶析工程
本発明に用いられるニッケル含有水酸化物は、一般式Ni1-a’-b’Coa’Mb’(OH)2(但し、MはMn、V、Mg、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の添加元素であり、0.03≦a’≦0.35、0≦b’≦0.10である。)で表される。
また、前記ニッケル含有水酸化物は、一次粒子から構成された二次粒子からなることが好ましい。
コバルトの含有量を示すaは、0.03≦a’≦0.35であり、0.05≦a’≦0.35であることが好ましく、0.07≦a’≦0.20であることがより好ましい。また、添加元素Mの含有量を示すbは、0≦b’≦0.10であり、0.01≦b’≦0.07であることが好ましい。
まず、反応槽内の少なくともニッケル(Ni)とコバルト(Co)を含む混合水溶液に、アルカリ水溶液を加えて反応水溶液とする。次に、反応水溶液を一定速度にて撹拌してpHを制御することにより、反応槽内にニッケル含有水酸化物を共沈殿させ晶析させる。
ここで、混合水溶液は、ニッケル及びコバルトの硫酸塩溶液、硝酸塩溶液、塩化物溶液を用いることができる。
アルカリ水溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
前記混合水溶液に含まれる金属元素の組成と得られるニッケル含有水酸化物に含まれる金属元素の組成は一致する。したがって、目的とするニッケル含有水酸化物の金属元素の組成と同じになるように混合水溶液の金属元素の組成を調製することができる。
錯化剤は、特に限定されず、水溶液中でニッケルイオン、コバルトイオンと結合して錯体を形成可能なものであればよく、例えば、アンモニウムイオン供給体が挙げられる。アンモニウムイオン供給体としては、とくに限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを使用することができる。
反応槽のpHが11を超えて晶析すると、前記ニッケル含有水酸化物が細かい粒子となり、濾過性も悪くなり、球状粒子が得られない場合がある。一方、pHが10よりも小さいと前記ニッケル含有水酸化物の生成速度が著しく遅くなり、濾液中にNiが残留し、Niの沈殿量が目的組成からずれて目的の比率の混合水酸化物が得られなくなることがある。
また、前記反応水溶液の温度が60℃超であると、Niの溶解度が上がり、Niの沈殿量が目的組成からずれ、共沈にならない現象を回避できる。一方、前記反応水溶液の温度が80℃を越えると、水の蒸発量が多いためにスラリー濃度が高くなり、Niの溶解度が
低下する上、濾液中に硫酸ナトリウム等の結晶が発生し、不純物濃度が上昇する等、正極材の充放電容量が低下する可能性が生じる。
反応槽内において、反応水溶液中のアンモニア濃度は、好ましくは3~25g/Lの範囲内で一定値に保持する。アンモニア濃度が3g/L未満であると、金属イオンの溶解度を一定に保持することができないため、形状及び粒径が整った板状の水酸化物一次粒子が形成されず、ゲル状の核が生成しやすいため粒度分布も広がりやすい。一方、アンモニア濃度が25g/Lを越えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎ、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増えて、組成のずれなどが起きやすくなる。
そして定常状態になった後に沈殿物を採取し、濾過、水洗してニッケル含有水酸化物を得る。あるいは、混合水溶液とアルカリ水溶液、場合によってはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を連続的に供給して反応槽からオーバーフローさせて沈殿物を採取し、濾過、水洗してニッケル含有水酸化物を得ることもできる。
前記ニッケル含有水酸化物に、M=Mn、V,Mg、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の添加元素(以下、「添加元素M」ともいう。)を配合する方法としては、晶析工程の生産性を高める観点から、上記ニッケルとコバルトを含む混合水溶液に添加元素Mを含む水溶液を添加し、ニッケル含有水酸化物(添加元素Mを含む)を共沈させる方法が好ましい。
金属元素Mは、Mn、V,Mg、Ti及びAlの中から選択される少なくとも1種の元素であり、熱安定性や保存特性改善及び電池特性等を改善するために任意に添加することができる。
被覆方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、1)ニッケル及びコバルトを含む混合水溶液(ただし、添加元素Mを除く)にアルカリ水溶液を加えて晶析させたニッケル含有水酸化物に、添加元素Mを被覆する方法、または、2)ニッケル、コバルト及び添加元素Mの一部を含む混合水溶液を作製し、ニッケル含有水酸化物(添加元素Mを含む)を共沈させ、さらに共沈物に添加元素Mを被覆してMの含有量を調整する方法が挙げられる。
ニッケル含有水酸化物を純水に分散させ、スラリーとする。このスラリーに狙いの被覆量見合いのMを含有する溶液を混合し、所定のpHになるように酸を滴下し、調整する。このとき酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などを用いるとよい。所定の時間混合した後に、
ろ過・乾燥を行い、Mが被覆されたニッケル含有水酸化物を得る。Mを被覆する別の方法としては、Mの化合物を含む溶液をスプレードライや含浸させる方法をとってもよい。
なお、ここでは混合工程にてNb化合物を固相添加するため、Nbコートは行わない。
混合工程は、上記晶析工程で得られたニッケル含有水酸化物とニオブ化合物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る工程である。
また、ニッケル含有水酸化物を晶析させる際に、ニオブ含有溶液を添加して共沈殿させることによりニオブを添加する方法も用いられているが、晶析時にニオブ含有溶液を添加すると、微細なニオブ水酸化物が生成するため、ニッケル含有水酸化物が微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態となり、二次粒子内部にニッケル塩などの金属塩に由来する不純物が増加し、晶析後の洗浄によっても不純物を低減することが困難となる。特に、ニッケルとコバルトの混合水溶液に含まれる金属塩として硫酸塩を用いると、得られるリチウム遷移金属複合酸化物に含有される硫酸根を低減することが困難となる。また、ニッケル含有水酸化物は、一次粒子が微細で結晶性が低いため、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶子径も微細になってしまう。
また、混合工程に用いるニッケル含有水酸化物の粒径としては、5~20μm程度が好ましく、10~15μmがより好ましい。
なお、平均粒径は、体積基準平均径(MV)として、レーザー散乱回折法により測定した値である。
なお、無水水酸化リチウムの水分率は、水酸化リチウム一水和物の水分含有量を100%とした場合の割合(重量)である。
さらに、ニッケル含有水酸化物とリチウム化合物とニオブ化合物とを混合後、そのまま焼成工程中に上記乾燥工程に相当する温度・時間を設けて無水化することもできる。
なお、混合後に乾燥工程を加えた際の無水水酸化リチウムの水分率は、混合前の水酸化リチウムを乾燥工程と同様の条件で乾燥させた後、水分率を測定することで求めることができる。
リチウム混合物は、焼成前に十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合には、個々の粒子間でLi/Meがばらつき、十分な電池特性が得られない間等の問題が生じる可能性がある。
少する。したがって、水洗を行う場合には、Li/Meの減少分を見越してニッケル含有水酸化物とリチウム化合物とニオブ化合物を混合することが好ましい。Li/Meの減少分は、焼成条件や水洗条件により変動するが、0.05~0.1程度であり、予備試験として少量の正極活物質を製造することにより減少分を確認することができる。
焼成工程は、前記混合工程で得られたリチウム混合物を酸化雰囲気中700~820℃、好ましくは700~800℃で焼成して、リチウム遷移金属複合酸化物を得る工程である。
また、焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とし、とくに、酸素濃度が18~100容量%の雰囲気とすることがより好ましい。すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。これは、酸素濃度が18容量%未満であると、十分に酸化できず、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶性が十分でない状態になる可能性があるからである。とくに電池特性を考慮すると、酸素気流中で行うことが好ましい。
焼成に用いられる炉は、特に限定されるものではなく、大気ないしは酸素気流中でリチウム混合物を焼成できるものであればよいが、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の炉をいずれも用いることができる。
水洗工程は、上記リチウム遷移金属複合酸化物を、水1Lに対して100~2000g/Lの割合でスラリーとし、水洗する工程である。
上記焼成工程によって得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、そのままの状態でも正極活物質として用いられるが、粒子表面の余剰リチウムを除去することにより、電解液と接触可能な表面積が増加して充放電容量を向上させることができるため、焼成後に水洗工程を行うことが好ましい。また、粒子表面に形成された脆弱部も十分に除去されるため、電解液との接触が増加して充放電容量を向上させることができる。
さらに、余剰リチウムは、非水系二次電池内において副反応を引き起こしガス発生による電池の膨張などの原因となるため、安全性向上の観点からも水洗工程を行うことが好ましい。
上記スラリーの固液分離時の粒子表面に残存する付着水は少ないことが好ましい。付着水が多いと液中に溶解したリチウムが再析出し、乾燥後リチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面に存在するリチウム量が増加する。
濾過方法としては、通常用いられる方法でよく、例えば、吸引濾過機、フィルタープレス、遠心機等を用いることができる。
乾燥の時間としては、特に限定されないが、好ましくは2~24時間である。
本発明に係る非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式LidNi1-a-b-cCoaMbNbcO2(但し、Mは、Mn、V、Mg、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.03≦a≦0.35、0≦b≦0.10、0.001≦c≦0.05、0.95≦d≦1.20である。)で表され、多結晶構造の粒子で構成されたリチウム遷移金属複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質であって、透過
型電子顕微鏡のEDX測定により前記粒子内で観察されるニオブ化合物の最大径が200nm以下であり、結晶子径が10~180nmであり、硫酸根含有量が0.2質量%以下であることを特徴とする。
さらに、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子内では、透過型電子顕微鏡のEDX測定により観察される異相が認められない、すなわちニオブ化合物の最大径(最大長さ)が200nm以下である。粗大なニオブ化合物の生成を抑制することで、高い電池容量を得ることができる。
さらに、結晶粒界と粒内のNb濃度の比(結晶粒界/粒内)が4倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。結晶粒界と粒内のNb濃度の比は、透過型電子顕微鏡のEDX測定結果より求めることができる。Nb濃度の比を小さくすることにより、少量添加でも上記熱分解反応の抑制効果を高めることができる。
なお、上記リチウム遷移金属複合酸化物の各成分の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)法による定量分析により測定することができる。
ここで、リチウム遷移金属複合酸化物に含有される硫酸根は、晶析時の金属塩に由来し、例えば、前記金属塩として硫酸塩を用いた場合には、pHが低くなると硫酸根含有量が
増加する傾向にあるため、pHを適正に調整して、十分に水洗することで、硫酸根量を上記範囲とすることができる。なお、硫酸塩を用いることは、水溶液中の金属濃度を高めて生産性を高め、かつ環境負荷を低減することに有効である。
本発明の製造方法においては、Nb化合物を固相添加することで、Nbをコートする際の硫酸混入を防止して硫酸根含有量を低減することができる。また、混合工程で用いられるニオブ化合物から混入する硫黄化合物を排除することでも硫酸根量の低減が可能である。
結晶子径は、晶析条件、焼成温度、焼成時間等を調整することにより、上記範囲とすることができる。すなわち、晶析条件によりニッケル含有水酸化物の結晶性を高くすれば、また、焼成温度を高くすれば結晶子径を大きくすることができる。
なお、結晶子径は、X線回折(XRD)における(003)面のピークから計算される値である。
本発明の非水系電解質二次電池の実施形態について、構成要素ごとにそれぞれ詳しく説明する。本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極、非水電解液等、一般のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素から構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、下記実施形態をはじめとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
正極を形成する正極合材およびそれを構成する各材料について説明する。本発明の粉末状の正極活物質と、導電材、結着剤とを混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材中のそれぞれの混合比も、リチウム二次電池の性能を決定する重要な要素となる。
溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量%とした場合、一般のリチウム二次電池の正極と同様、それぞれ、正極活物質の含有量を60~95質量%、導電材の含有量を1~20質量%、結着剤の含有量を1~20質量%とすることが望ましい。
また、結着剤(バインダー)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを用いることができる。必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。
溶剤としては、具体的にはN-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には電気二重層容量を増加させるために活性炭を添加することができる。
負極には、金属リチウム、リチウム合金等、また、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これら活物質および結着剤を分散させる溶剤としてはN-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
正極と負極との間にはセパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な穴を多数有する膜を用いることができる。
(4)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2等、およびそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル補足剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
以上説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明に係るリチウム二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極をセパレータを介して積層させて電極体とし、この電極体に上記非水電解液を含浸させる。正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、並びに負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を集電用リード等を用いて接続する。以上の構成のものを電池ケースに密閉して電池を完成させることができる。
ニッケル:コバルト:アルミニウムのモル比が81.5:15.0:3.5となるように、硫酸ニッケル、硫酸コバルトの混合水溶液、アルミン酸ソーダ水溶液、25質量%水酸化ナトリウム溶液および25質量%アンモニア水を反応槽に同時に添加し、pHを液温25℃基準で11.8に、反応温度を50℃に、アンモニア濃度を10g/Lに保ち、共沈法によって球状の二次粒子からなるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を形成した。反応槽内が安定した後、オーバーフロー口から水酸化物スラリーを回収し、濾過、水洗後乾燥してニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物(ニッケル含有水酸化物:Ni0.815Co0.15Al0.035(OH)2)を得た。(晶析工程)
次に、リチウム化合物である水酸化リチウムを150℃-12hで真空乾燥することで無水水酸化リチウム(水分率0.4質量%)を作製した。水分率は、前記真空乾燥後の無水水酸化リチウムをさらに200℃で8時間真空乾燥し、乾燥前後の質量変化から、200℃真空乾燥後の水分率を0質量%とし、化学量論的な水酸化リチウム一水和物の水分量を100質量%として相対的な数値として求めた。
上記ニッケル含有水酸化物と、無水水酸化リチウムと、ナノグラインディングジェットミルにて粉砕した平均粒径0.6μmのニオブ酸粉末(Nb2O5・xH2O)とを、Li/Meが1.10、ニオブ添加量cが0.01になるようにそれぞれ秤量した後、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて、ニッケル含有水酸化物の形骸が維持される程度の強さで十分に混合してリチウム混合物を得た。(混合工程)
このリチウム混合物をマグネシア製の焼成容器に挿入し、密閉式電気炉を用いて、流量6L/分の酸素気流中で昇温速度2.77℃/分で500℃まで昇温して500℃で3時間保持した。その後、同様の昇温速度で780℃まで昇温して12時間保持した後、室温まで炉冷し、リチウム遷移金属複合酸化物を得た。(焼成工程)
得られたリチウム遷移金属複合酸化物をスラリー濃度が1500g/Lとなるように純水と混合してスラリーを作製し、スターラーを用いて30分水洗した後にろ過した。ろ過後、真空乾燥機を用いて210℃で14時間保持して室温まで冷却して、正極活物質を得た。(水洗工程)
得られた正極活物質の断面を透過型電子顕微鏡により観察したところ、異相は認められず、EDX分析により、ニオブは正極活物質粒子内に均一に分布しており、結晶粒界と粒内のNb濃度比(結晶粒界のNb濃度/粒内のNb濃度)は3以下であることが確認された。また、正極活物質の結晶子径は81nmであり、平均粒径は12.5μmであった。
得られた正極活物質の組成をICP法により分析したが、その結果を表1に示す。
得られた正極活物質の初期容量評価は以下のようにして行った。活物質粉末70質量%にアセチレンブラック20質量%及びPTFE10質量%を混合し、ここから150mgを取り出してペレットを作製し正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液(富山薬品工業製)を用いた。露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、図2に示すような2032型のコイン電池を作製した。
作製した電池は24時間程度放置し、開路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
サイクル特性の評価は次のようにして行った。各電池に対し、温度25℃にて、1Cのレートで4.4Vまで(充電電圧は要確認)CC充電し、10分間休止した後、同じレートで3.0VまでCC放電し、10分間休止する、という充放電サイクルを、200サイクル繰り返した。1サイクル目および200サイクル目の放電容量を測定し、1サイクル目2C放電容量に対する、200サイクル目2C放電容量の百分率を容量維持率(%)として求めた。
正極の安全性の評価は、上記と同様な方法で作製した2032型のコイン電池をカットオフ電圧4.5VまでCCCV充電(定電流-定電圧充電。まず、充電が、定電流で動作し、それから定電圧で充電を終了するという2つのフェーズの充電過程を用いる充電)した後、短絡しないように注意しながら解体して正極を取り出した。この電極を3.0mg計り取り、電解液を1.3mg加えて、アルミニウム製測定容器に封入し、示差走査熱量計(DSC)PTC-10A(Rigaku社製)を用いて昇温速度10℃/minで室温から300℃まで発熱挙動を測定し、得られた最大発熱ピーク高さを安全性の評価とした。正極活物質の評価結果を表1にまとめて示す。
無水水酸化リチウムの水分率を3.0質量%とした以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。実施例1と同様に透過型電子顕微鏡による観察において異相は認められなかった。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。
リチウム化合物を水酸化リチウム(水分率99.7質量%)とした以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。実施例1と同様に透過型電子顕微鏡による観察において異相は認められなかった。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。
ニオブ添加量cを0.005とした以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。実施例1と同様に透過型電子顕微鏡による観察において異相は認められなかった。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。
ニオブ添加量cを0.001とした以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。実施例1と同様に透過型電子顕微鏡による観察において異相は認められなかった。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を600℃で12時間酸化焙焼したニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を混合工程で用いた以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。
得られた正極活物質の断面を透過型電子顕微鏡により観察したところ、結晶粒界に最大長さ200nmを超える異相が認められ、EDX分析により、異相はニオブ化合物であることが確認された。
ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を600℃で12時間酸化焙焼したニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を混合工程で用いたこととリチウム化合物として水酸
化リチウム(水分率99.7質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。得られた正極活物質の断面を透過型電子顕微鏡により観察したところ、比較例1と同様の異相が確認された。
ニオブ化合物を添加しないこと以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。得られた正極活物質の評価結果を表1それぞれ示す。
晶析工程で得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を純水と混合したスラリーに、ニオブ酸(Nb2O5・xH2O)を苛性カリに溶解させて作製したニオブ塩溶液(30g/L)を、硫酸とともにpHを8.0に調製しながら滴下することにより、Nbコートのニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物(以下、「Nbコートの水酸化ニッケル」ともいう。)を調製し、混合工程においてニオブ化合物を混合せず、上記Nbコートの水酸化ニッケル(Nb量cは0.01)を用いたこと、リチウム化合物を水酸化リチウム(水分率99.7質量%)としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。
晶析工程において、ニオブ酸(Nb2O5・xH2O)を苛性カリに溶解させて作製したニオブ塩溶液(72g/L)を添加してニッケルコバルトアルミニウムニオブ複合水酸化物を調製し、混合工程においてニオブ化合物を混合せず、上記ニッケルコバルトアルミニウムニオブ複合水酸化物(Nb量cは0.01)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。得られた正極活物質の評価結果を表1にそれぞれ示す。
表1に示すように、本発明の実施例1~5では、得られた正極活物質の初期放電容量がおおむね193mAh/gを超え、正極活物質として使用可能な材料であることがわかる。容量維持率についても、90~94%程度であり、優れたサイクル特性を有していることがわかる。また、DSC測定による最大発熱ピーク高さは4cal/sec/g以下であった。比較例3のニオブを加えていない従来の正極活物質と比較して発熱量が大幅に抑制されていることがわかる。
また、含有水分率が低い無水水酸化リチウムを用いた実施例1、2および4では、より初期放電容量、サイクル特性および最大発熱ピーク高さの改善がみられた。これは、水酸化リチウムを用いた実施例3に比べ、焼成が進みやすくなり、複合水酸化物やニオブとの反応性が高くなったためと考えられる。実施例5は、ニオブ添加量が少ないため、初期放電容量は高いが、最大発熱ピーク高さがやや高くなっている。
比較例1、2では、ニッケル含有酸化物を混合工程で用いているために、初期放電容量が約183~187mAh/gと低くなっていた。ニッケル含有酸化物を用いることで、ニオブ化合物との反応性が低下し、偏析したニオブ化合物が電気化学反応を阻害したためだと推察される(なお、偏析についてはFE-SEMに確認している)。
比較例4は、ニオブをニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物にコートしたものであり、初期放電容量が197mAh/gと高く、最大発熱ピーク高さも低いものの、硫酸根含有量が増加し、サイクル特性が本発明品に比べ劣っていた。
比較例5は、晶析時にニオブを添加したため、水酸化物粒子の構造が微細になり、硫酸根含有量が増加し、結晶子径も小さくなり、初期放電容量およびサイクル特性が本発明品に比べ劣っており、最大発熱ピーク高さも高いものとなった。
2 セパレータ(電解液含浸)
3 正極(評価用電極)
4 ガスケット
5 負極缶
6 正極缶
7 集電体
Claims (8)
- 一般式LidNi1-a-b-cCoaMbNbcO2(但し、Mは、Mn、V、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.03≦a≦0.35、0≦b≦0.10、0.001≦c≦0.05、0.95≦d≦1.20である。)で表され、多結晶構造の粒子で構成されたリチウム遷移金属複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、
少なくともニッケルとコバルトを含む混合水溶液にアルカリ水溶液を加えて晶析させ、一般式Ni1-a’-b’Coa’Mb’(OH)2(但し、Mは、Mn、V、Mg、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.03≦a’≦0.35、0≦b’≦0.10である。)で表されるニッケル含有水酸化物を得る晶析工程、
得られたニッケル含有水酸化物とリチウム化合物と平均粒径が0.1~10μmのニオブ化合物とを混合してリチウム混合物を得る混合工程および
該リチウム混合物を酸化雰囲気中700~820℃で焼成してリチウム遷移金属複合酸化物を得る焼成工程
を含み、
前記リチウム化合物が水酸化リチウムである、
ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記晶析工程において、少なくともニッケルとコバルトを含む混合水溶液に、アルカリ水溶液を加えて晶析させた後、Mを被覆することにより、前記ニッケル含有水酸化物を得ることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記水酸化リチウムが水分率5質量%以下の無水水酸化リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記焼成工程前に、前記混合工程により得られたリチウム混合物を乾燥し、リチウム混合物中の水酸化リチウムを水分率5質量%以下の無水水酸化リチウムとする乾燥工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記焼成工程後に、リチウム遷移金属複合酸化物を、水1Lに対して100~2000g/Lの割合でスラリーとし、水洗する水洗工程を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、透過型電子顕微鏡のEDX測定により前記粒子内で観察されるニオブ化合物の最大径が200nm以下であり、結晶子径が10~180nmであり、透過型電子顕微鏡のEDX測定により観察される結晶粒界と粒内のNb濃度の比(結晶粒界/粒内)が4倍以下であり、硫酸根含有量が0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記一般式において、MはMn、V、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 請求項1~7のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法で製造された非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて正極を得ることと、
前記正極、負極、及び、非水系電解質を用いて非水系電解質二次電池を得ることと、を備える、非水系電解質二次電池の製造方法。
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