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JP7091189B2 - 作業車両用の自動走行システム - Google Patents

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Description

本発明は、衛星測位システムを利用して作業車両を目標経路に従って自動走行させる作業車両用の自動走行システムに関する。
従来、衛星測位システムを利用して作業車両を目標経路に従って自動走行させるものとしては、作業車両(自律走行作業車両)を、作業地(圃場)に応じて生成された目標経路(走行経路)に沿って往復走行させるとともに、作業車両が作業地における外縁側の旋回領域(枕地旋回領域)に入ると、制御装置が変速手段を作動させて作業車両の車速を旋回速度(枕地旋回速度)まで減速させることで、旋回領域においては作業車両を旋回速度で旋回走行させるように構成された作業車両の制御装置がある(例えば特許文献1参照)。
国際公開第2015/147108号公報
通常、トラクタなどの作業車両を自動走行させる場合に使用する目標経路には、作業地内に区分けされた走行領域において並列に配置される複数の並列経路と、走行領域の外縁側に配置されて複数の並列経路を走行順に接続する複数の旋回経路とが含まれている。そして、各並列経路には、走行領域の中央側に設定された作業領域において作業車両を作業走行させる作業経路と、走行領域の外縁側に設定された旋回領域において、作業車両が作業経路から旋回経路に至るまでの間、作業車両を作業停止状態で走行させる非作業経路とが含まれている。
特許文献1に記載の作業車両の制御装置においては、例えば、作業効率の向上を図るために目標経路に含まれた作業経路における作業車両の車速を速くすると、作業車両が旋回領域に入ってから作業車両の車速を旋回速度まで低下させるのに必要な制動距離が長くなる。そのため、作業地における旋回領域が広くなるとともに作業領域が狭くなる。作業領域は、作業車両が自動走行しながら作業を行う領域であることから、作業領域が狭くなると、作業地内においてユーザが作業車両を手動走行させながら作業を行う領域が広くなり、ユーザにかかる負担が大きくなる。
そこで、ユーザにかかる負担を小さくするために作業領域を広くすることが考えられるが、この場合には、旋回領域が狭くなるとともに、作業車両が旋回領域に入ってから作業車両の車速を旋回速度まで低下させるのに必要な制動距離が短くなる。そのため、作業領域における作業車両の車速が遅くなり、作業効率の低下を招くことになる。又、作業領域を広くしつつ作業経路における作業車両の車速を速くすると、作業車両が旋回領域に入ってから旋回走行(枕地旋回)を開始するまでの間において、作業車両の車速を旋回速度まで低下させることができなくなる。その結果、作業車両が旋回走行時に作業地からはみ出して畦などの他物に接触する不都合を招く虞がある。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業地内の作業領域を広くしながら、作業領域における作業車両の車速を速くして作業効率の向上を図れるようにする点にある。
本発明の第1特徴構成は、作業車両用の自動走行システムにおいて、
作業車両の車速を制御する車速制御部と、
作業地内に区分けされた走行領域に応じて生成された目標経路を記憶する記憶部と、
衛星測位システムを利用して前記作業車両を前記目標経路に従って自動走行させる自動走行制御部とを有し、
前記目標経路には、前記走行領域において並列に配置される複数の並列経路と、前記走行領域の外縁部に配置されて複数の前記並列経路を走行順に接続する複数の旋回経路とが含まれており、
前記自動走行制御部は、前記作業車両が前記並列経路を自動走行しているときに、前記作業車両の進行方向における前記作業車両から前記作業地の外周縁までの離隔距離を測定する離隔距離測定部を有し、
前記車速制御部は、前記離隔距離に応じて前記作業車両の車速を制限する車速制限部を有している点にある。
本構成によれば、作業車両が並列経路を自動走行しているときは、車速制限部が、作業地内に設定される作業領域や旋回領域に関係なく、離隔距離測定部によって測定される離隔距離に応じて作業車両の車速を制限する。
具体的には、往復経路を走行する作業車両が進行方向に位置する作業地の外縁から大きく離れている間は、離隔距離測定部によって測定される離隔距離が長くなることから、車速制限部は、その離隔距離に応じて往復経路における作業車両の制限速度を速くする。つまり、作業車両の車速を速くすることによる作業効率の向上を図ることができる。
そして、往復経路を走行する作業車両が進行方向に位置する作業地の外周縁に近づいてくると、離隔距離測定部によって測定される離隔距離が短くなることから、車速制限部は、その離隔距離に応じて、作業車両の制動距離が離隔距離よりも短くなるように往復経路における作業車両の制限速度を遅くする。つまり、作業地内に設定される作業領域や旋回領域に関係なく、作業車両が作業地の外周縁に近づいたときは、車速制限部が、そのときの離隔距離に応じて、作業地の外周縁までの間において作業車両を制動停止させることが可能な制限速度を設定して作業車両の車速を低下させる。これにより、自動走行制御部が、並列経路に従って作業車両を作業地の外周縁付近で走行停止させるときや、作業車両を旋回経路に従って旋回走行させるときに、作業車両が作業地からはみ出すことを防止することができ、そのはみ出しに起因して作業車両が畦などの他物に接触する虞を回避することができる。
つまり、作業地内において作業車両が自動走行しながら作業を行う作業領域を広くしつつ、作業領域における作業車両の車速を速くすることができる。その結果、ユーザにかかる負担を軽減することができるとともに、作業効率の向上を図ることができる。
本発明の第2特徴構成は、
前記目標経路には、前記作業車両が前記並列経路を自動走行するときの目標車速が含まれており、
前記車速制限部は、前記離隔距離よりも設定距離だけ短い比較制動距離を演算し、前記目標車速に応じた前記作業車両の制動距離が前記比較制動距離よりも短い間は、前記作業車両の車速が前記目標車速に維持されるように前記作業車両の車速を制限する第1車速制限処理を行い、前記目標車速に応じた前記作業車両の制動距離が前記比較制動距離と同じになったときは、前記作業車両の制動距離が前記比較制動距離に維持されるように、前記離隔距離の減少に応じて前記作業車両の車速を前記目標車速から低下させる第2車速制限処理を行う点にある。
本構成によれば、車速制限部は、離隔距離が長くて目標車速に応じた作業車両の制動距離が比較制動距離よりも短くなる間は、第1車速制限処理を行うことで作業車両の車速を目標車速に制限する。これにより、作業車両の車速が不必要に速くなることに起因して、燃費が悪くなることや、目標経路に従って作業車両を自動走行させるときに目標経路に対する作業車両の追従性が低下する虞を回避することができる。
そして、車速制限部は、離隔距離が短くなって目標車速に応じた作業車両の制動距離が比較制動距離と同じになったときは、第2車速制限処理を行うことで、作業車両の制動距離が、離隔距離の減少に応じて短くなる比較制動距離に維持されるように、作業車両の車速を制限する。これにより、作業車両が作業地の外周縁に接近したときや旋回経路に達したときには、作業車両の車速を十分に低下させておくことができる。その結果、自動走行制御部が、並列経路に従って作業車両を作業地の外周縁付近で走行停止させるときや、作業車両を旋回経路に従って旋回走行させるときに、作業車両が作業地からはみ出して畦などの他物に接触する虞をより確実に回避することができる。
本発明の第3特徴構成は、
前記記憶部には、前記作業車両の旋回半径と、前記作業車両の作業幅と、前記作業地の外周縁と前記走行領域との間に設定されたマージン幅と、前記並列経路と前記旋回経路との各接続地点とが記憶され、
前記離隔距離測定部は、前記衛星測位システムを利用して取得した前記並列経路における前記作業車両の現在位置、及び、前記記憶部に記憶された前記並列経路における終端側の前記接続地点と、前記作業車両の旋回半径と、前記作業車両の作業幅と、前記マージン幅とに基づいて前記離隔距離を測定する点にある。
本構成によれば、例えば、離隔距離測定部は、作業車両が並列経路を自動走行する前の段階において、作業車両の旋回半径と、作業車両の作業幅の半分の長さと、作業地のマージン幅とを足し合わせて、並列経路における終端側の接続地点から作業地の外周縁までの固定離隔距離を演算して記憶部に記憶する。そして、離隔距離測定部は、作業車両が並列経路を自動走行している間は、作業車両の現在位置と並列経路における終端側の接続地点とから、それらの間の未走行距離を演算し、この未走行距離に前述した固定離隔距離を足し合わせることで、前述した離隔距離を測定する。
つまり、離隔距離測定部は、衛星測位システムを利用して取得する並列経路における作業車両の現在位置に応じて変化する未走行距離と、記憶部に記憶された固定値である固定離隔距離とに基づいて離隔距離を測定することになる。これにより、離隔距離の測定に要する演算負荷を軽減することができ、結果、離隔距離を迅速に精度良く測定することができる。
本発明の第4特徴構成は、
前記記憶部には、前記衛星測位システムを利用して取得した前記作業地における複数の形状特定地点と、複数の前記形状特定地点を繋いで前記作業地の形状を特定する形状特定線とが記憶され、
前記離隔距離測定部は、前記衛星測位システムを利用して取得した前記並列経路における前記作業車両の現在位置から、前記作業車両の進行方向における前記並列経路の延長線上に位置する形状特定線までの距離を前記離隔距離として測定する点にある。
本構成によれば、離隔距離測定部は、衛星測位システムを利用して作業地の形状を特定するときに取得した形状特定線を利用しながら、離隔距離を比較的簡単に測定することができる。
本発明の第5特徴構成は、
前記作業車両には、前記作業車両の進行方向に存在する測距対象物までの距離を測定する距離センサが備えられ、
前記離隔距離測定部は、前記距離センサの測定結果に基づいて前記離隔距離を測定する点にある。
本構成によれば、衛星測位システムを利用することなく、距離センサの測定結果に基づいて離隔距離を精度良く測定することができる。
作業車両用の自動走行システムの概略構成を示す図 作業車両用の自動走行システムの概略構成を示すブロック図 目標経路生成部により生成される目標経路の一例を示す図 目標経路生成制御のフローチャート 離隔距離測定部による離隔距離の測定に関する説明図 離隔距離と車速との関係を示すグラフ 離隔距離測定部による離隔距離の測定と車速制限部による比較制動距離の測定に関する説明図 離隔距離と上限速度との関係を示すグラフ 車速制限制御のフローチャート 別実施形態での離隔距離測定部による離隔距離の測定に関する説明図
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを、作業車両の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本発明に係る作業車両用の自動走行システムは、トラクタ以外の、例えば乗用草刈機、乗用田植機、コンバイン、ホイールローダ、除雪車、などの乗用作業車両、及び、無人草刈機などの無人作業車両に適用することができる。
図3に示すように、この実施形態で例示するトラクタ1は、作業車両用の自動走行システムによって作業地の一例である圃場Aなどにおいて自動走行可能に構成されている。図1~2に示すように、自動走行システムは、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末3、などを備えている。携帯通信端末3には、自動走行に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示部(例えば液晶パネル)4などを有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、その後部に3点リンク機構5を介して、作業装置の一例であるロータリ耕耘装置6が昇降可能かつローリング可能に連結されている。これにより、このトラクタ1はロータリ耕耘仕様に構成されている。
なお、トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置6に代えて、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、散布装置、草刈装置、などの各種の作業装置を連結することができる。
図1~2に示すように、トラクタ1には、駆動可能で操舵可能な左右の前輪10、駆動可能な左右の後輪11、搭乗式の運転部12を形成するキャビン13、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)14、エンジン14からの動力を変速する変速ユニット15、左右の前輪10を操舵する全油圧式のパワーステアリングユニット16、左右の後輪11を制動するブレーキユニット17、ロータリ耕耘装置6への伝動を断続する電子油圧制御式の作業クラッチユニット19、ロータリ耕耘装置6を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動ユニット20、ロータリ耕耘装置6をロール方向に駆動する電子油圧制御式のローリング駆動ユニット21、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを検出する各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器23、トラクタ1の現在位置p0や現在方位などを測定する測位ユニット24、及び、各種の制御部を有する車載制御ユニット40、などが備えられている。
なお、エンジン14には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。パワーステアリングユニット16は電動モータを備えた電動式であってもよい。
運転部12には、アクセルレバーや変速レバーなどの操作レバー類、及び、アクセルペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル類、などとともに、図1に示す手動操舵用のステアリングホイール30と、搭乗者用の座席31と、各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の液晶モニタ32とが備えられている。
図2に示すように、変速ユニット15には、エンジン14からの動力を変速する電子制御式の無段変速装置36、及び、無段変速装置36による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置37、などが含まれている。無段変速装置36には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI-HMT(Integrated Hydro-static Mechanical Transmission)が採用されている。前後進切換装置37には、前進動力断続用の油圧クラッチと、後進動力断続用の油圧クラッチと、それらに対するオイルの流れを制御する電磁バルブとが含まれている。
なお、無段変速装置36には、I-HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置、又は、ベルト式無段変速装置、などを採用してもよい。又、変速ユニット15には、無段変速装置36の代わりに、複数の変速用の油圧クラッチとそれらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁バルブとを有する電子油圧制御式の有段変速装置が含まれていてもよい。
図示は省略するが、ブレーキユニット17には、左右の後輪11を個別に制動する左右のブレーキ、運転部12に備えられた左右のブレーキペダルの踏み込み操作に連動して左右のブレーキを作動させるフットブレーキ系、運転部12に備えられたパーキングレバーの操作に連動して左右のブレーキを作動させるパーキングブレーキ系、及び、左右の前輪10の設定角度以上の操舵に連動して旋回内側のブレーキを作動させる旋回ブレーキ系、などが含まれている。
図2に示すように、車載制御ユニット40には、エンジン14に関する制御を行うエンジン制御部41、トラクタ1の車速Vや前後進の切り換えに関する制御を行う車速制御部42、ステアリングに関する制御を行うステアリング制御部43、ロータリ耕耘装置6などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部44、液晶モニタ32などによる表示や報知に関する制御を行う表示制御部45、自動走行に関する制御を行う自動走行制御部46、及び、作業地内に区分けされた走行領域に応じて生成された自動走行用の目標経路などを記憶する不揮発性の車載記憶部47、などが含まれている。各制御部41~46は、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部41~46は、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。
車両状態検出機器23は、トラクタ1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。車両状態検出機器23には、アクセルレバーの操作位置を検出するアクセルセンサ、変速レバーの操作位置を検出する変速用の第1位置センサ、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出する前後進切り換え用の第2位置センサ、エンジン14の出力回転数を検出する回転センサ、トラクタ1の車速Vを検出する車速センサ、及び、前輪10の操舵角を検出する舵角センサ、などが含まれている。
エンジン制御部41は、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルレバーの操作位置に応じた回転数に維持するエンジン回転数維持制御、などを実行する。
車速制御部42は、第1位置センサからの検出情報と車速センサからの検出情報などに基づいて、トラクタ1の車速Vが変速レバーの操作位置に応じた速度に変更されるように無段変速装置36の作動を制御する車速制御、及び、第2位置センサからの検出情報に基づいて前後進切換装置37の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御、などを実行する。車速制御には、変速レバーが零速位置に操作された場合に、無段変速装置36を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。
測位ユニット24は、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置p0と現在方位とを測定する衛星航法装置25、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタ1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)26、などを有している。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)などがある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、図1に示すように、圃場周辺の既知位置には、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局73が設置されている。
図1~2に示すように、トラクタ1と基準局73とのそれぞれには、GPS衛星74(図1参照)から送信された電波を受信するGPSアンテナ75,76、及び、トラクタ1と基準局73との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール77,78、などが備えられている。これにより、測位ユニット24の衛星航法装置25は、トラクタ側のGPSアンテナ75がGPS衛星74からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側のGPSアンテナ76がGPS衛星74からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の現在位置p0及び現在方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット24は、衛星航法装置25と慣性計測装置26とを有することにより、トラクタ1の現在位置p0、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
このトラクタ1において、測位ユニット24の慣性計測装置26、GPSアンテナ75、及び、通信モジュール77は、図1に示すアンテナユニット79に含まれている。アンテナユニット79は、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。
図2に示すように、携帯通信端末3には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット80、及び、トラクタ側の通信モジュール77との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール90、などが備えられている。端末制御ユニット80には、表示部4の作動を制御する表示制御部81、自動走行用の目標経路Pを生成する目標経路生成部82、及び、目標経路生成部82が生成した目標経路Pなどを記憶する不揮発性の端末記憶部83、などが含まれている。端末記憶部83には、目標経路Pの生成に使用する各種の情報として、トラクタ1の旋回半径Rや作業幅W1などの車体情報、及び、圃場Aの形状や大きさなどの圃場情報、などが記憶されている。圃場情報には、圃場Aの形状や大きさなどを特定するために、トラクタ1を圃場Aの外周縁に沿って走行させたときに衛星測位システムを利用して取得した圃場Aにおける複数の形状特定地点(形状特定座標)となる4つの角部地点Ap1~Ap4(図10参照)、及び、それらの角部地点Ap1~Ap4を繋いで圃場Aの形状や大きさなどを特定する形状特定線AL(図10参照)、などが含まれている。
図3~4に示すように、目標経路生成部82は、車体情報に含まれたトラクタ1の旋回半径Rや作業幅W1、及び、圃場情報に含まれた圃場Aの形状や大きさ、などに基づいて目標経路Pを生成する目標経路生成制御を実行する。
具体的には、図3に示すように、例えば矩形状の圃場Aにおいて、自動走行の開始地点p1と終了地点p2とが設定され、トラクタ1の作業走行方向が圃場Aの短辺に沿う方向に設定されている場合は、図3~4に示すように、目標経路生成部82は、先ず、圃場Aを、圃場Aの外周縁に隣接するマージン領域A1と、マージン領域A1の内側に位置する走行領域A2とに区分けする第1区分け処理(図4のステップ#1)を行う。
次に、目標経路生成部82は、トラクタ1の旋回半径Rや作業幅W1などに基づいて、第1区分け処理で区分けした走行領域A2に、圃場Aの長辺に沿う方向に作業幅W1に応じた一定間隔をあけて並列に配置される複数の並列経路P1を生成する並列経路生成処理(図4のステップ#2)と、走行領域A2における各長辺側の外縁部に配置されて複数の並列経路P1を走行順に接続する複数の旋回経路P2を生成する旋回経路生成処理(図4のステップ#3)とを行う。
そして、第1区分け処理で区分けした走行領域A2を、走行領域A2における各長辺側の外縁部に設定される一対の非作業領域A2aと、一対の非作業領域A2aの間に設定される作業領域A2bとに区分けする第2区分け処理(図4のステップ#4)を行うとともに、並列経路生成処理で生成した各並列経路P1を、一対の非作業領域A2aに含まれる非作業経路P1aと、作業領域A2bに含まれる作業経路P1bとに区分けする経路区分け処理(図4のステップ#5)を行う。
これにより、目標経路生成部82は、図3に示す圃場Aにおいてトラクタ1を自動走行させるのに適した目標経路Pを生成することができる。
図3、図5、図7に示す目標経路Pにおいて、各非作業経路P1aと各旋回経路P2は、トラクタ1が耕耘作業を行わずに自動走行する経路であり、前述した各作業経路P1bは、トラクタ1が耕耘作業を行いながら自動走行する経路である。そして、各作業経路P1bの始端地点p3は、トラクタ1が耕耘作業を開始する作業開始地点であり、各作業経路P1bの終端地点p4は、トラクタ1が耕耘作業を停止する作業停止地点である。又、各非作業経路P1aは、トラクタ1が旋回経路P2にて旋回走行する前の作業停止地点p4と、トラクタ1が旋回経路P2にて旋回走行した後の作業開始地点p3とを、トラクタ1の作業走行方向で揃えるための位置合せ経路である。そして、各非作業経路P1aの長さL1は、トラクタ1におけるロータリ耕耘装置6の位置関係を含むトラクタ1の車体情報に基づいて決定される。
又、目標経路Pにおける各並列経路P1と各旋回経路P2との各接続地点p5,p6のうち、各並列経路P1における終端側の接続地点p5はトラクタ1の旋回開始地点であり、各並列経路P1における始端側の接続地点p6はトラクタ1の旋回終了地点である。
そして、前述した各作業経路P1bの始端地点p3と終端地点p4、目標経路Pにおける各並列経路P1と各旋回経路P2との各接続地点p5,p6、及び、各非作業経路P1aの長さL1、などは端末記憶部83に記憶される目標経路Pに含まれている。
図3、図5、図7に示す圃場Aにおいて、前述したマージン領域A1は、トラクタ1が走行領域A2の外周部を自動走行するときに、ロータリ耕耘装置6などが圃場Aに隣接する畦などの他物に接触することを防止するために、圃場Aの外周縁と走行領域A2との間に確保された領域である。そして、マージン領域A1における圃場Aの外周縁と走行領域A2との間の距離は、圃場情報の一つであるマージン幅W2として端末記憶部83に記憶されている。
又、前述した各非作業領域A2aは、トラクタ1が圃場Aの畦際において現在の作業経路P1bから次の作業経路P1bに旋回移動するための畦際旋回領域である。そして、前述した非作業経路(位置合せ経路)P1aの長さL1と、トラクタ1の旋回半径Rと、トラクタ1における作業幅W1の半分の長さW1/2とを足し合わせた距離が、非作業領域(畦際旋回領域)A2aにおけるマージン領域A1と作業領域A2bとの間の畦際旋回幅W3であり、この畦際旋回幅W3は、圃場情報の一つとして端末記憶部83に記憶されている。
なお、図3、図5、図7に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部82は、トラクタ1の機種や作業の種類などに応じて異なる車体情報、及び、圃場Aに応じて異なる圃場Aの形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
目標経路Pは、車体情報や圃場情報などに関連付けされた状態で端末記憶部83に記憶されており、携帯通信端末3の表示部4にて表示することができる。目標経路Pには、各並列経路P3におけるトラクタ1の目標車速として設定された第1車速V1(図6参照)、各旋回経路P2bにおけるトラクタ1の目標車速として設定された第2車速V2(図6参照)、各並列経路P1における前輪操舵角、及び、各旋回経路P2bにおける前輪操舵角、などが含まれている。
端末制御ユニット80は、車載制御ユニット40からの送信要求指令に応じて、端末記憶部83に記憶されている車体情報と圃場情報と目標経路Pなどを車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した車体情報と圃場情報と目標経路Pなどを車載記憶部47に記憶する。目標経路Pの送信に関しては、例えば、端末制御ユニット80が、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、目標経路Pの全てを端末記憶部83から車載制御ユニット40に一挙に送信するようにしてもよい。又、例えば、端末制御ユニット80が、目標経路Pを所定距離ごとの複数の分割経路情報に分割して、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階からトラクタ1の走行距離が所定距離に達するごとに、トラクタ1の走行順位に応じた所定数の分割経路情報を端末記憶部83から車載制御ユニット40に逐次送信するようにしてもよい。
車載制御ユニット40において、自動走行制御部46には、車両状態検出機器23に含まれた各種のセンサやスイッチなどからの検出情報が、車速制御部42やステアリング制御部43などを介して入力されている。これにより、自動走行制御部46は、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを監視することができる。
自動走行制御部46は、トラクタ1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた状態において、搭乗者や車外の管理者などのユーザによって携帯通信端末3の表示部4が操作されて自動走行の開始が指令された場合に、測位ユニット24にてトラクタ1の現在位置p0や現在方位などを取得しながら目標経路Pに従ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
自動走行制御部46による自動走行制御には、エンジン14に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部41に送信するエンジン用自動制御処理、トラクタ1の車速Vや前後進の切り換えに関する自動走行用の制御指令を車速制御部42に送信する車速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部43に送信するステアリング用自動制御処理、及び、ロータリ耕耘装置6などの作業装置に関する自動走行用の制御指令を作業装置制御部44に送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
自動走行制御部46は、エンジン用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた設定回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部41に送信する。エンジン制御部41は、自動走行制御部46から送信されたエンジン14に関する各種の制御指令に応じてエンジン回転数を自動で変更するエンジン回転数変更制御、などを実行する。
自動走行制御部46は、車速用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた目標車速に基づいて無段変速装置36の変速操作を指示する変速操作指令、及び、目標経路Pに含まれたトラクタ1の進行方向などに基づいて前後進切換装置37の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、などを車速制御部42に送信する。車速制御部42は、自動走行制御部46から送信された無段変速装置36や前後進切換装置37などに関する各種の制御指令に応じて、無段変速装置36の作動を自動で制御する自動車速制御、及び、前後進切換装置37の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、などを実行する。自動車速制御には、例えば、目標経路Pに含まれた目標車速が零速である場合に、無段変速装置36を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる自動減速停止処理などが含まれている。
自動走行制御部46は、ステアリング用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪10の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部43に送信する。ステアリング制御部43は、自動走行制御部46から送信された操舵指令に応じて、パワーステアリングユニット16の作動を制御して左右の前輪10を操舵する自動操舵制御、及び、左右の前輪10が設定角度以上に操舵された場合に、ブレーキユニット17を作動させて旋回内側のブレーキを作動させる自動ブレーキ旋回制御、などを実行する。
自動走行制御部46は、作業用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた作業開始地点p3に基づいてロータリ耕耘装置6の作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標経路Pに含まれた作業停止地点p4に基づいてロータリ耕耘装置6の非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、自動走行制御部46から送信されたロータリ耕耘装置6に関する各種の制御指令に応じて、昇降駆動ユニット20と作業クラッチユニット19の作動を制御して、ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降させて作動させる自動作業開始制御、及び、ロータリ耕耘装置6を停止させて非作業高さまで上昇させる自動作業停止制御、などを実行する。又、作業装置制御部44は、ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降させて作動させた作業状態においては、ロータリ耕耘装置6による耕耘深さを検出する耕深センサの検出に基づいて、昇降駆動ユニット20の作動を制御してロータリ耕耘装置6による耕耘深さを設定深さに維持する自動耕深維持制御、及び、トラクタ1のロール角を検出する傾斜センサと慣性計測装置26の加速度センサの検出とに基づいて、ローリング駆動ユニット21の作動を制御してロータリ耕耘装置6のロール方向での傾斜姿勢を設定姿勢(例えば水平姿勢)に維持する自動ロール角維持制御を実行する。
つまり、前述した自動走行ユニット2には、パワーステアリングユニット16、ブレーキユニット17、作業クラッチユニット19、昇降駆動ユニット20、ローリング駆動ユニット21、車両状態検出機器23、測位ユニット24、車載制御ユニット40、及び、通信モジュール77、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタ1を目標経路Pに従って精度よく自動走行させることができるとともに、ロータリ耕耘装置6による耕耘を適正に行うことができる。
図2、図5、図7に示すように、自動走行制御部46は、自動走行制御によってトラクタ1が並列経路P1を自動走行しているときに、トラクタ1の進行方向におけるトラクタ1の前端から圃場Aの外周縁までの離隔距離D1を測定する離隔距離測定部46Aを有している。車速制御部42は、離隔距離測定部46Aが測定した離隔距離D1に応じてトラクタ1の車速Vを制限する車速制限部42Aを有している。車載記憶部47に記憶された車体情報には、トラクタ1の平面視におけるトラクタ1の前端からGPSアンテナ75の取り付け位置までの前後長さL2と、トラクタ1の車速Vと制動距離との関係を示すマップとが含まれている。
図5、図7に示すように、離隔距離測定部46Aは、衛星測位システムを利用して取得した並列経路P1におけるトラクタ1の現在位置p0、及び、車載記憶部47に記憶された並列経路P1における終端側の接続地点p5と、トラクタ1の旋回半径Rと、トラクタ1の作業幅W1と、圃場Aのマージン幅W2と、トラクタ1の前端からGPSアンテナ75の取り付け位置までの前後長さL2とに基づいて離隔距離D1を測定する。
具体的には、離隔距離測定部46Aは、自動走行制御によってトラクタ1が並列経路P1を自動走行する前の段階において、トラクタ1の旋回半径Rと、トラクタ1における作業幅W1の半分の長さW1/2と、圃場Aのマージン幅W2とを足し合わせて、並列経路P1における終端側の接続地点p5から圃場Aの外周縁までの固定離隔距離D3を演算して車載記憶部47に記憶する。そして、離隔距離測定部46Aは、自動走行制御によってトラクタ1が並列経路P1を自動走行している間は、前述したトラクタ1の現在位置p0と並列経路P1における終端側の接続地点p5とから、それらの間の未走行距離D4を演算し、この未走行距離D4に固定離隔距離D3を足し合わせたものから前述した前後長さL2を差し引くことで、前述した離隔距離D1を測定する。
つまり、離隔距離測定部46Aは、衛星測位システムを利用して取得する並列経路P1におけるトラクタ1の現在位置p0に応じて変化する未走行距離D4と、車載記憶部47に記憶された固定値である前述した固定離隔距離D3と前後長さL2とに基づいて離隔距離D1を測定することになる。これにより、離隔距離D1の測定に要する演算負荷を軽減することができ、結果、離隔距離D1を迅速に精度良く測定することができる。
なお、離隔距離測定部46Aは、衛星測位システムを利用して並列経路P1におけるトラクタ1の現在位置p0を取得した段階において、トラクタ1の前端からGPSアンテナ75の取り付け位置までの前後長さL2に基づいて、トラクタ1の現在位置p0とトラクタ1の前端位置とのズレを補正するように構成されていてもよい。
又、離隔距離測定部46Aは、自動走行制御によってトラクタ1が並列経路P1を自動走行する前の段階において、トラクタ1の旋回半径Rと、トラクタ1における作業幅W1の半分の長さW1/2と、圃場Aのマージン幅W2とを足し合わせて得た固定離隔距離D3から、前述した前後長さL2を差し引いたものを、離隔距離測定用の固定値として演算して車載記憶部47に記憶させるように構成されていてもよい。この場合、離隔距離D1の測定に要する演算負荷の軽減を更に図ることができる。
車速制限部42Aは、自動走行制御によってトラクタ1が並列経路P1を自動走行している間は、離隔距離測定部46Aが測定した離隔距離D1に応じてトラクタ1の車速Vを制限する車速制限制御を実行する。
図9に示すフローチャートに基づいて、車速制限制御における車速制限部42Aの制御作動について説明すると、車速制限部42Aは、先ず、図7に示すように、離隔距離測定部46Aが測定した離隔距離D1に応じて、離隔距離D1よりも設定距離D5だけ短い比較制動距離D2を演算する制動距離演算処理(図9のステップ#10)を行う。ここで演算される比較制動距離D2は、図7に示すように、トラクタ1の現在位置p0が、トラクタ1の進行方向に位置する圃場Aの外周縁と並列経路P1との交点である走行限界位置p10に近づくに連れて短くなり、トラクタ1の前端位置が、走行限界位置p10から設定距離D5だけ圃場Aに入り込んだ走行制限位置p11に達したときに零になる。
次に、車速制限部42Aは、制動距離演算処理で得た比較制動距離D2と前述したマップとから、比較制動距離D2に応じたトラクタ1の車速Vを上限速度Vmaxとして設定する上限速度設定処理(図9のステップ#11)を行う。ここで設定される上限速度Vmaxは、図6、図8に示すように、トラクタ1の並列経路P1での自動走行に伴って離隔距離D1が短くなるほど遅くなり、トラクタ1の前端位置が走行制限位置p11に達したとき(図7参照)に零速になる。
又、車速制限部42Aは、上限速度設定処理にて設定した上限速度Vmaxと、並列経路P1におけるトラクタ1の目標車速である第1車速V1とを比較する比較処理(図9のステップ#12)を行う。
そして、図6に示すように、比較処理において上限速度Vmaxが第1車速V1に低下するまでの間は、第1車速V1に応じたトラクタ1の制動距離が比較制動距離D2よりも短くなることから、車速制限部42Aは、トラクタ1の車速Vが第1車速V1に維持されるようにトラクタ1の車速Vを制限する第1車速制限処理(図9のステップ#13)を行う。
又、図6に示すように、比較処理において上限速度Vmaxが第1車速V1まで低下したときは、第1車速V1に応じたトラクタ1の制動距離が比較制動距離D2と同じになることから、車速制限部42Aは、トラクタ1の制動距離が比較制動距離D2に維持されるように、離隔距離D1の減少に応じてトラクタ1の車速Vを第1車速V1から低下させる第2車速制限処理(図9のステップ#14)を行う。
その後、車速制限部42Aは、トラクタ1が並列経路P1における終端側の接続地点(旋回開始地点)p5に達したか否かを判定する判定処理(図9のステップ#15)を行う。
そして、車速制限部42Aは、判定処理においてトラクタ1の現在位置p0が接続地点(旋回開始地点)p5に達したと判定されるまでの間は第2車速制限処理を継続する。
又、車速制限部42Aは、判定処理においてトラクタ1の現在位置p0が接続地点(旋回開始地点)p5に達したと判定されたときに車速制限制御を終了する。これにより、第2車速制限処理によって離隔距離D1の減少に応じて低下していたトラクタ1の車速Vは、図6に示すように、トラクタ1の現在位置p0が接続地点(旋回開始地点)p5に達したときに、このときに得られる離隔距離D1に応じた車速で下げ止まる。
そして、車速制限部42Aが車速制限制御を終了すると、車速制御部42が自動車速制御を実行して、トラクタ1が旋回経路P2bを自動走行している間は、トラクタ1の車速Vを、旋回経路P2bにおけるトラクタ1の目標車速である第2車速V2(図6参照)に維持する。その後、トラクタ1が旋回経路P2bから並列経路P1に移動するのに伴って、トラクタ1の車速Vを第2車速V2から第1車速V1に変更するとともに、自動車速制御を終了して車速制限部42Aによる車速制限制御を実行させる。
つまり、トラクタ1が並列経路P1での自動走行を開始すると、離隔距離D1が長くて第1車速V1に応じたトラクタ1の制動距離が比較制動距離D2よりも短くなる間は、車速制限部42Aが第1車速制限処理を行ってトラクタ1の車速Vを第1車速V1に制限する。これにより、トラクタ1の車速Vが不必要に速くなることに起因して、燃費が悪くなることや、目標経路Pに従ってトラクタ1を自動走行させるときに目標経路Pに対するトラクタ1の追従性が低下する虞を回避することができる。
その後、離隔距離D1が短くなって第1車速V1に応じたトラクタ1の制動距離が比較制動距離D2と同じになると、車速制限部42Aが第2車速制限処理を行って、トラクタ1の制動距離が、離隔距離D1の減少に応じて短くなる比較制動距離D2に維持されるようにトラクタ1の車速Vを制限する。これにより、トラクタ1が圃場Aの外周縁に接近したときや旋回経路P2に達したときには、トラクタ1の車速Vを十分に低下させておくことができる。その結果、自動走行制御部46が、例えば、並列経路P1に従ってトラクタ1を圃場Aの外周縁付近で走行停止させるときや、トラクタ1を旋回経路P2に従って旋回走行させるときに、トラクタ1が圃場Aからはみ出して畦などの他物に接触する虞を回避することができる。
図1に示すように、トラクタ1には、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定して3次元画像を生成する前後2台のライダーセンサ(LiDAR Sensor:Light Detection and Ranging Sensor)100,101と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定する左右のソナーユニット102とを備えている。
前後のライダーセンサ100,101のうち、前ライダーセンサ100は、前述したアンテナユニット79が配置されているキャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前ライダーセンサ100は、トラクタ1の前方側が測定範囲となるように設定されている。後ライダーセンサ101は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後ライダーセンサ101は、トラクタ1の後方側が測定範囲となるように設定されている。
左右のソナーユニット102は、キャビン13における左右両側部の下部側に配置された左右の乗降ステップに、小さい俯角を有する左右外向き姿勢で取り付けられている。これにより、左右のソナーユニット102は、トラクタ1の左右外方が測定範囲となるように設定された状態で前輪10と後輪11との間の比較的高い位置に配置されている。
前後のライダーセンサ100,101及び左右のソナーユニット102は、車載制御ユニット40の自動走行制御部46にCANを介して相互通信可能に接続されている。これにより、自動走行制御部46は、前後のライダーセンサ100,101及び左右のソナーユニット102からの情報に基づいて、トラクタ1の周囲を監視することができる。これにより、例えば、トラクタ1が圃場Aに隣接する畦などの他物に接近した場合や、トラクタ1に他の作業車などの他物が接近してきた場合には、自動走行制御部46は、そのときの状況を的確に把握することができ、そのときの状況に適した自動車速制御や自動操舵制御などを実行することができる。その結果、トラクタ1が他物に接触する虞を回避することができる。
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)作業車両1の構成に関する代表的な別実施形態は以下の通りである。
例えば、作業車両1は、左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、左右の前輪10及び左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
(2)離隔距離測定部46Aは、図10に示すように、衛星測位システムを利用して取得した並列経路P1におけるトラクタ1の現在位置p0と、車載記憶部47に記憶された作業地形状特定用の形状特定線ALとに基づいて、トラクタ1の現在位置p0から、トラクタ1の進行方向における並列経路P1の延長線上に位置する形状特定線ALまでの距離を離隔距離D1として測定するように構成されていてもよい。
(3)離隔距離測定部46Aは、距離センサの一例である前ライダーセンサ100の測定結果に基づいて離隔距離D1を測定するように構成されていてもよい。
なお、距離センサとしてステレオカメラなどを採用してもよい。
1 作業車両
42 車速制御部
46 自動走行制御部
46A 離隔距離測定部
42A 車速制限部
47 記憶部
100 距離センサ
A 作業地
A2 走行領域
Ap1 形状特定地点
Ap4 形状特定地点
AL 形状特定線
D1 離隔距離
D2 比較制動距離
D5 設定距離
P 目標経路
P1 並列経路
P2 旋回経路
R 旋回半径
V1 目標車速
W 作業幅
W2 マージン幅
p0 現在位置
p5 接続地点
p6 接続地点

Claims (4)

  1. 作業車両の車速を制御する車速制御部と、
    作業地内に区分けされた走行領域に生成された目標経路に従って前記作業車両を自動走行させる自動走行制御部とを有し、
    前記目標経路には、前記走行領域において並列に配置される複数の並列経路と、前記走行領域の外縁部に配置されて複数の前記並列経路を走行順に接続する複数の旋回経路とが含まれており、
    前記自動走行制御部は、前記作業車両が前記並列経路を自動走行しているときに、前記作業車両の進行方向における前記作業車両から前記作業地の外周縁までの離隔距離を測定する離隔距離測定部を有し、
    前記車速制御部は、前記離隔距離に応じて前記作業車両の車速を制限する車速制限部を有し
    前記車速制限部は、前記離隔距離よりも設定距離だけ短い距離を比較制動距離とする場合、前記作業車両が前記並列経路を自動走行するときの予め設定された目標車速に応じた前記作業車両の制動距離が前記比較制動距離よりも短い間は、前記作業車両の車速が前記目標車速に維持されるように前記作業車両の車速を制限する第1車速制限処理を行い、前記目標車速に応じた前記作業車両の制動距離が前記比較制動距離と同じになったときは、前記作業車両の制動距離が前記比較制動距離に維持されるように、前記離隔距離の減少に応じて前記作業車両の車速を前記目標車速から低下させる第2車速制限処理を行う作業車両用の自動走行システム。
  2. 記憶部には、前記作業車両の旋回半径と、前記作業車両の作業幅と、前記作業地の外周縁と前記走行領域との間に設定されたマージン幅と、前記並列経路と前記旋回経路との各接続地点とが記憶され、
    前記離隔距離測定部は、前記並列経路における前記作業車両の現在位置、及び、前記記憶部に記憶された前記並列経路における終端側の前記接続地点と、前記作業車両の旋回半径と、前記作業車両の作業幅と、前記マージン幅とに基づいて前記離隔距離を測定する請求項1に記載の作業車両用の自動走行システム。
  3. 記憶部には、前記作業地における複数の形状特定地点と、複数の前記形状特定地点を繋いで前記作業地の形状を特定する形状特定線とが記憶され、
    前記離隔距離測定部は、前記並列経路における前記作業車両の現在位置から、前記作業車両の進行方向における前記並列経路の延長線上に位置する形状特定線までの距離を前記離隔距離として測定する請求項1に記載の作業車両用の自動走行システム。
  4. 前記作業車両には、前記作業車両の進行方向に存在する測距対象物までの距離を測定する距離センサが備えられ、
    前記離隔距離測定部は、前記距離センサの測定結果に基づいて前記離隔距離を測定する請求項1に記載の作業車両用の自動走行システム。
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