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JP7067499B2 - インダクタおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インダクタおよびその製造方法に関する。
樹脂材料および金属粉の複合材料からなる素体にコイルを埋設した電子部品が知られている。
米国特許出願公開第2017/0309394号明細書
磁性粉と樹脂を含む複合材料からなる素体にコイルを内蔵してなるインダクタは、複合材料の比透磁率が低いため、素体の外に磁束が漏れる、漏れ磁束が問題となる。漏れ磁束はインダクタから放射される放射ノイズの原因なので、抑制する方法として、素体に金属ケースの外装を設け、漏れ磁束を金属ケースで渦電流として消費する構造(例えば、特許文献1参照)が知られている。しかし、金属ケースの外装を設けると、素子の外形が増大するという課題がある。本発明は、漏れ磁束の少ない小型化可能なインダクタを提供することを目的とする。
本発明のインダクタは、金属磁性粉および樹脂を含む素体と、巻回部と巻回部の両端に引き出された一対の引き出し部とで構成され、素体に埋設されるコイルと、引き出し部のそれぞれに電気的に接続する一対の外部端子と、コイルの巻軸と交差する素体の面上に配置される導体層とを備える。導体層は、素体の表面付近の金属磁性粉が相互に融着してなる第1金属層と、第1金属層上にめっきされてなる第2金属層とを含み、第1金属層の電気抵抗率よりも第2金属層の電気抵抗率が低い。
発明によれば、漏れ磁束の少ない小型化可能なインダクタを提供できる。
実施例1のインダクタの概略部分透過斜視図である。 図1に示すインダクタの概略部分透過斜視図である。 図1に示すインダクタの導体層の形成方法を説明する模式断面図である。 図1に示すインダクタの導体層に発生する渦電流の分布を示す斜視図である。 実施例2のインダクタの概略部分透過斜視図である。 実施例3のインダクタの概略部分透過斜視図である。 実施例4のインダクタの概略斜部分透過視図である。 図7に示すインダクタにおける磁界ノイズ分布を示す図である。 導体層を有さないインダクタにおける磁界ノイズ分布を示す図である。 実施例5のインダクタの概略部分透過斜視図である。 実施例6のインダクタの概略部分透過斜視図である。
本実施形態に係るインダクタは、金属磁性粉および樹脂を含む素体と、巻回部と前記巻回部の両端に引き出された一対の引き出し部とで構成され、素体に埋設されるコイルと、引き出し部のそれぞれに電気的に接続する一対の外部端子と、コイルの巻軸と交差する素体の面上に配置される導体層とを備える。導体層は、素体の表面付近の金属磁性粉が相互に融着してなる第1金属層と、第1金属層上にめっきされてなる第2金属層とを含み、第1金属層の電気抵抗率よりも第2金属層の電気抵抗率が低い。
第1金属層は、素体より内側に形成されていてもよい。これにより、漏れ磁束をより低減できる。
導体層は、コイルの巻軸方向から見て、コイルの巻回部の少なくとも一部を被覆して配置されていてもよい。これにより、漏れ磁束をより低減できる。
導体層は、コイルの巻軸方向から見て、コイルの巻回部の外周部よりも内側に配置されていてもよい。これにより、漏れ磁束をより低減できる。
導体層は、コイルの巻軸方向から見て、コイルの巻回部の外周部と内周部の間に配置される環状導体層を含んでいてもよい。これにより、漏れ磁束の抑制とインダクタの特性低下の抑制を両立できる。
導体層は、互いに交差しない複数の環状導体層を含んでいてもよい。これにより、漏れ磁束の抑制とインダクタの特性低下の抑制を両立できる。
複数の環状導体層は、互いに電気的に接続されていてもよい。これにより、導体層形成の生産性がより向上する。
導体層は、実装される基板のグランドと接続されるグランド端子と電気的に接続されていてもよい。これにより、電界ノイズをより効果的に抑制できる。
インダクタは、導体層を被覆する絶縁層を更に備えていてもよい。これにより、導体層の酸化が抑制されて信頼性がより向上する。
本実施形態に係るインダクタの製造方法は、巻回部と巻回部の両端に引き出された一対の引き出し部とで構成されたコイルを、金属磁性粉および樹脂を含む複合材料に埋設して素体を形成することと、前記コイルの巻軸と交差する素体の表面に、金属磁性粉が素体の表面付近において溶融されて相互に融着してなる第1金属層を設けることと、前記第1金属層の上に第2の金属層を形成することとを含む。これにより、漏れ磁束の少ない小型化可能なインダクタを得られる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、インダクタを例示するものであって、本発明は、以下に示すインダクタに限定されない。なお特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に限定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。実施例2以降では実施例1と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
(実施例1)
実施例1のインダクタ100を図1から図4を参照して説明する。図1は実施例1のインダクタ100の内部構造を例示する概略部分透過斜視図であり、図2はインダクタの外形を示す概略部分透過斜視図である。
図1および図2に示すように、インダクタ100は、金属磁性粉および樹脂を含む素体10と、素体10に埋設されるコイル20と、コイル20の両端にそれぞれに電気的に接続する一対の外部端子30と、素体10の表面に配置される導体層40とを備える。素体10は、コイル20の巻軸と交差する実装面側の底面と、底面に対向する上面と、底面および上面に隣接する4つの側面とを有する。コイル20は巻回部21と巻回部21の両端に引き出された一対の引き出し部22を有する。インダクタ100では、導体層40は、コイル20の巻軸と交差する実装面側とは反対側の素体の上面と、2つの対向する側面上とに配置される。導体層が配置されない別の2つの対向する側面からは、引き出し部22の端面が露出し、引き出し部22と電気的に接続する外部端子30が設けられる。外部端子30は素体10の側面から底面にまで延在する。インダクタ100では、外部端子30は素体10の側面全体と底面の一部に設けられ、図2には底面に設けられる外部端子30が部分透過図として示され、図1では省略されている。外部端子30は、例えば、導体層40と同様にして形成でき、導体層40と同時に形成されてもよい。
素体10は、例えば、コイル20が埋設された複合材料に圧力をかけて形成される。素体10を形成する複合材料は、例えば、金属磁性粉と樹脂等の結着剤とを含む。金属磁性粉には、例えば、鉄(Fe)、Fe-Si系、Fe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、Fe-Ni-Al系、Fe-Cr-Al系等の鉄系の金属磁性粉、鉄を含まない組成系の金属磁性粉、鉄を含む他の組成系の金属磁性粉、アモルファス状態の金属磁性粉、表面がガラス等の絶縁体で被覆される金属磁性粉、表面を改質した金属磁性粉、ナノレベルの微小な金属磁性粉等を用いることができる。また、結着剤には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられる。
コイル20は、絶縁被覆を有する断面矩形の導体(以下、平角線ともいう)が単方向の巻軸に沿ってエッジワイズ巻きされて形成される。絶縁被覆は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂を含む。コイル20は、実装面側の素体10の底面および上面に、巻軸を交差させて素体10に内蔵される。
導体層40は、素体10を構成する複合材料に含まれる金属磁性粉が、素体の表面付近において溶融されて相互に融着してなる第1金属層と、第1金属層をめっきのシード層として形成され、素体10の表面上に配置される第2金属層とを含む。インダクタ100では、素体10の上面および側面に配置される導体層は、それぞれ矩形状をなして、上面から側面に連続した3面に配置される。また、インダクタ100では、導体層40は、素体10の引き出し部22の端面が露出する側面間の幅よりも狭い幅で形成されている。
導体層の形成方法について図3を参照して説明する。図3(A)は素体10の表面付近を模式的に示す模式断面図である。素体10は、絶縁体層12で被覆された金属磁性粒子11を含む金属磁性粉と、樹脂13とを含む複合材料を加圧成形して形成される。図3(A)では、金属磁性粉は、平均粒径、粒度分布が互いに異なる少なくとも2種類の金属磁性粒子11の集合体である。金属磁性粉は、単一の平均粒子径、粒度分布を有する金属磁性粒子11の集合体であってもよい。金属磁性粉が平均粒子径の異なる金属磁性粒子11を含むことで、素体10に含まれる金属磁性粉の密度を大きくできる。
図3(B)では、素体10の表面に、例えば、図中の矢印方向にレーザービームを照射して素体10の表面付近に第1金属層14を形成する。素体10の表面にレーザービームを照射することで、素体10の表面およびその付近の樹脂13の一部と、表面およびその付近に存在する金属磁性粒子11の周囲に設けられる絶縁体層12の一部が除去される。また、レーザービームにより金属磁性粒子11の表面が溶融されて、金属磁性粒子11どうしが相互に融着して第1金属層14が形成される。つまり、金属磁性粒子11と第1金属層14の組成は略等しい。第1金属層14は素体10の最表面よりも内側に形成され、その表面は素体10の外部に露出する。第1金属層14は、金属磁性粒子11が部分的に相互に融着して形成されるため、連続性が不完全となる場合があり、また、厚みも薄い。そのため、第1金属層14の電気抵抗率は比較的大きくなる場合がある。例えば、金属磁性粉に鉄を用いた複合材料の上に、幅0.25mm、開口端の間隔0.5mmの環の一部が欠落したC字形状に形成した第1金属層の電気抵抗は、φ9mmの場合に約14Ω、φ5mmの場合に約8Ωであった。
図3(C)では、素体10から表面を露出して形成される第1金属層14上に、めっき法で第2金属層16を形成して導体層40を形成する。第2金属層16は、第1金属層14をシード層としてめっきを成長させることで形成されるため、第1金属層14よりも低い電気抵抗率を有する。例えば、金属磁性粉に鉄を用いた複合材料の上に、幅0.25mm、開口端の間隔0.5mmのC字形状に第1金属層を形成し、さらに、厚み52μmの銅めっきした導体層電気抵抗は、φ9mmの場合に約36mΩ、φ5mmの場合に約20mΩであった。なお、第2金属層は、素体10から突出していてもよい。
インダクタの素体表面に配置される導体層が含む第1金属層では、電気抵抗率が比較的大きいため渦電流の発生が抑制される。一方、第2金属層は電気抵抗率が比較的低いため、導体層に発生する渦電流の殆どは第2金属層を流れると考えられる。したがって、導体層における実質的な導体部分は素体の表面上のみに形成されることになる。導体層が実質的に素体の表面上に形成されることで、インダクタの漏れ磁束を低減しつつ、渦電流損失を低減できる。
上記した実施例では、素体の3面の略全面に導体層を形成するため、レーザービーム照射では効率的な製造が困難になる場合がある。効率的に製造するためには、導体層の面積をなるべく小さくすることが好ましい。図4は、実施例1のインダクタ100のコイル20に、1MHz/5Aの電流を流した場合に導体層40に発生する渦電流の分布をシミュレーションした結果である。なお、シミュレーションは、コイルの外径を9mm、内径を5mmとして、ムラタソフトウエア社製の有限要素法解析ソフトウエアFemtet(登録商標)を用いて実施した。図4では、コイルの巻軸方向からの平面視で、コイル20の巻回部21の環状の領域に、渦電流が集中して発生している。したがって、シミュレーションで得られる渦電流の分布に対応させて、素体の上面に環状に導体層を形成するだけで、主たる漏れ磁束の抑制が可能になる。
(実施例2)
実施例2のインダクタ110について、図5を参照して説明する。図5はインダクタ110の概略部分透過斜視図であり、素体10に内蔵されるコイルは図示が省略されている。インダクタ110では、導体層40aが、素体10の上面に、環状導体層として配置され、側面には導体層が配置されないこと以外はインダクタ100と同様に構成される。
インダクタ110では、コイルの巻軸方向から見て、環状に形成される導体層40aが、コイルの巻回部21と略一致して配置されている。導体層40aがコイルから発生する漏れ磁束の強い領域にのみ配置されることで、充分な漏れ磁束低減効果を得るとともに、導体層40aの面積を小さくして良好な生産性の導体層を形成できる。
本発明のインダクタでは、導体層が実質的に素体の表面上に配置される。これにより、インダクタの漏れ磁束を低減しつつ、渦電流損失を低減できる理由は、例えば、以下のように説明できる。
漏れ磁束はインダクタの素体表面からのコイルの巻軸の方向へ所定の距離離れた平面の磁束密度を測定し、その平面内の最大磁束密度で評価できる。つまり、最大磁束密度の値が小さいことは、インダクタから放射される漏れ磁束が小さいことを意味する。一方、渦電流損失は直接測定することができない。しかし、コイルから発生する磁束が導体層と交差すると、導体層に渦電流が生じる。この渦電流により、コイルから発生する元の磁束とは逆向きの2次磁束が生じる。コイルから発生する磁束は、渦電流によって生じる2次磁束によって一部が相殺されるので、インダクタンス値が低下する。渦電流が大きいほどインダクタンス値が低下するので、インダクタンス値の変化率で、渦電流損失の大きさを間接的に評価できる。つまり、インダクタンス値の変化率が小さいことは、渦電流損失が小さいことを意味する。
そこで、インダクタ110のような環状の導体層を有するインダクタについて、導体層の形成位置と、最大磁束密度Bmaxおよびインダクタンス値との関係をシミュレーションにより評価した。結果を表1に示す。シミュレーションは、コイルの巻回部の内径を5mm、外径を9mmとし、導体層をコイルの巻軸方向から見てコイルの巻回部上に重複して配置される厚み50μmの環状とし、導体層が配置される位置を、素体の表面上から、素体表面から150μmの深さにまで50μm毎に変化させて実施した。ここでコイルに流れる電流は1MHz/5Aとした。また、最大磁束密度は、素体上面からのコイルの巻軸方向への距離が0.5mmの平面と1.0mmの平面について最大磁束密度を算出した。表1は、導体層40aが形成されていないインダクタを比較例とし、比較例のインダクタンス値Lを基準(100%)としたインダクタンス値Lの変化率(%)と、比較例のインダクタの最大磁束密度を基準(100%)とした最大磁束密度Bmaxの相対値(%)を示す。なお、シミュレーションは、Femtetを用いて実施した。
Figure 0007067499000001
表1から、最大磁束密度Bmaxは、環状導体層を素体内に埋め込む深さによらず減少していることがわかる。したがって、導体層を設けることによりインダクタの漏れ磁束を低減できる。一方、インダクタンス値Lの変化率の絶対値は、環状導体層を素体内に埋め込む深さに応じて、顕著に増加していることがわかる。これは、環状導体層が素体内に埋設されると、環状導体層のインダクタンスが大きくなることに加えて、コイルの巻回部と環状導体層との間の磁気結合が大きくなり、その結果、渦電流損失が大きくなるためと考えられる。したがって、素体表面により近い位置に導体層を設けることにより渦電流損失を低減できる。
(実施例3)
実施例3のインダクタ120について、図6を参照して説明する。図6はインダクタ120の概略部分透過斜視図である。インダクタ120では、素体10の上面に、コイルの巻回部の外径と略一致する外径を有する円盤状の導体層40bが配置され、素体10の側面には導体層が配置されないこと以外はインダクタ100と同様に構成される。
インダクタ120では、コイルの巻軸方向から見て、円盤状の導体層40bの外周部が、素体10に埋設されるコイルの巻回部の外周部と略一致して配置されている。導体層40bがコイルから発生する漏れ磁束の強い領域にのみ配置されることで、充分な漏れ磁束低減効果を得るとともに、導体層40bの面積を小さくしてさらに良好な生産性の導体層を形成できる。
(実施例4)
実施例4のインダクタ130について、図7から図9を参照して説明する。図7はインダクタ130の概略部分透過斜視図である。インダクタ130では、素体10の上面に、コイルの巻回部の内周部上と略一致する環状の導体層40cと、コイルの巻回部の外周部上と略一致する環状の導体層40dが配置され、素体10の側面には導体層が配置されないこと以外はインダクタ100と同様に構成される。また、インダクタ130は、インダクタ110における1つの環状の導体層40aを、コイルの巻回部の内周部上に設けられる環状の導体層40cと、外周部上に設けられる環状の導体層40dに分割して配置し、導体層40cと40dの間には導体層を配置しないこと以外は、インダクタ110と同様に構成される。
インダクタ130では、コイルの巻軸方向から見て、環状の導体層40cの内径が、素体10に埋設されるコイルの巻回部の内径と略一致している。また、環状の導体層40dの外径が、素体10に埋設されるコイルの巻回部の外径と略一致している。導体層40cおよび40dはコイルの巻軸を中心とする同心円として配置される。導体層40cおよび40dがコイルから発生する漏れ磁束が特に強い領域にのみ配置されることで、導体層の面積を小さくしつつ、充分な漏れ磁束低減効果を得られる。導体層40cの幅は、例えば、コイルの巻回部の内径が5mm、外径が9mmの場合に0.25mm程度で形成される。
図8および図9は、インダクタから発生する磁界ノイズの実際の測定結果を示すグラフである。図8は、実施例4のインダクタ130の測定結果であり、図9は比較のための環状の導体層を有さないインダクタの測定結果である。なお、測定は、1MHz駆動のDC-DCコンバータにインダクタを実装し、インダクタの上面から1mm離れた平面内の磁界ノイズによる励起電圧の分布を、EMIテスタ装置(株式会社ペリテック、EMV-100)を用いて測定することで行った。図8および図9において、X軸とY軸はインダクタ上のコイルの巻軸からの相対位置を示し、縦軸は励起電圧を示す。なお、測定に用いたインダクタにおいて、コイルの巻回部の内径は5mm、外径は9mmであり、環状の導体層40cおよび40dの幅はそれぞれ0.25mmであった。
図9に示すように、比較のための環状の導体層を有さないインダクタの励起電圧の最大値は、約53dBμVであった。一方、図8に示すように、実施例4のインダクタ130の励起電圧の最大値は約48.1dBμVであり、励起電圧の差は4.9dBμVであった。すなわち、同心円として配置される環状の2つの導体層により、磁界ノイズの約44%を抑制することができた。
(実施例5)
実施例5のインダクタ140について、図10を参照して説明する。図10はインダクタ140の概略部分透過斜視図である。インダクタ140では、素体10の上面に、コイルの巻回部の内周部上と略一致する環状の導体層40cと、コイルの巻回部の外周部上と略一致する環状の導体層40dが配置され、導体層40cと導体層40dとが、接続導体42で互いに電気的に接続されること、ならびに素体10の側面には導体層が配置されないこと以外はインダクタ100と同様に構成される。また、インダクタ140は、インダクタ130における導体層40cと導体層40dとが、接続導体42で互いに電気的に接続されること以外はインダクタ130と同様に構成される。
インダクタ140では、コイルの巻軸方向から見て、環状の導体層40cが、その内周部を素体10に埋設されるコイルの巻回部の内周部と略一致させて配置される。また、リング形状の導体層40dの外周部を素体10に埋設されるコイルの巻回部の外周部と略一致させて配置される。導体層40cおよび40dはコイルの巻軸を中心とする同心円として配置され、接続導体42で互いに電気的に接続される。接続導体42は、例えば、導体層40cおよび40dと同様にして形成することができ、導体層40cおよび40dと同時に形成されてもよい。
導体層40cおよび40dに含まれる第2金属層は、例えば、電気めっきによって形成される。インダクタ130ではめっきされる第1金属層が複数に分かれているため、電気めっきの生産性が低下する場合がある。インダクタ140では、接続導体42で接続された複数の第1金属層を介して電気的に接続される。そのため、バレルめっき方式では金属ボールとめっき部との接触機会を増やすことができ、めっき部に電極を接続してめっきする方式では接続箇所を1ヶ所で済ませることができ、第2金属層を効率よく形成できる。なお、環状の導体層に渦電流が流れても、導体層間は電気的にフローティングになるため、漏れ磁束の低減効果への影響はない。
(実施例6)
実施例6のインダクタ150について、図11を参照して説明する。図11インダクタ150の概略部分透過斜視図である。インダクタ150では、素体10の上面に、コイルの巻回部の内周部上と略一致する環状の導体層40cと、コイルの巻回部の外周部上と略一致する環状の導体層40dが配置され、導体層と導体層40dが接続導体42で互いに電気的に接続されること、導体層40cと導体層40dとが接続導体44を介してグランド端子32に電気的に接続されること、ならびに素体10の側面には導体層が配置されないこと以外はインダクタ100と同様に構成される。また、インダクタ150は、インダクタ140における導体層40cと導体層40dとが、接続導体44を介してグランド端子32に電気的に接続されること以外はインダクタ140と同様に構成される。
インダクタ150では、インダクタが実装される基板上のグランドに接続されるグランド端子32が、素体10の底面と、底面に隣接し、コイルの端部が露出していない側面とに連続して配置される。グランド端子32は、例えば、導体層40cおよび40dと同様にして形成することができ、導体層40cおよび40dと同時に形成されてもよい。グランド端子32は、素体10の上面および側面に連続して配置される接続導体44を介して導体層40dと接続される。導体層40dは接続導体42を介して導体層40cと接続される。接続導体44は、例えば、導体層40cおよび40dと同様に形成することができ、導体層40cおよび40dと同時に形成してもよい。導体層40cおよび40dがグランドと接続されることで、漏れ磁束による電磁ノイズに加えて、電界ノイズを低減できる。
実施例1から4に示したインダクタ100から130について、インダクタンス値Lの変化率、およびインダクタの上表面からコイルの巻軸方向へ距離が0.5mmと1.0mmの平面について最大磁束密度Bmaxをシミュレーションにより評価した結果を表2に示す。素体に埋設されるコイルの巻回部は内径を5.0mm、外径を9.0mmとした。
実施例1のインダクタ100については、図2に示すように素体の上面および2つの側面をそれぞれ被覆する矩形状の導体層が、厚み50μmで連続して設けられている。実施例2のインダクタ110については、図5に示すように幅の広い1つの環状の導体層が、巻回部と一致し、厚み50μmで設けられている。実施例3のインダクタ120については、図6に示すように円盤状の導体層が、巻回部の外径と一致し、厚み50μmで設けられている。実施例4のインダクタ130については、図7に示すように2本の環状の導体層が、それぞれ、外側の導体層の外径が巻回部の外径と一致し、内側の導体層の内径が巻回部の内径と一致し、導体幅を0.25mmとして厚み50μmで設けられている。
表2においては、導体層が形成されていないインダクタを比較例とし、比較例のインダクタンス値Lを基準(100%)としたインダクタンス値Lの変化率(%)と、比較例のインダクタの最大磁束密度を基準(100%)とした最大磁束密度Bmaxの相対値(%)で示した。なお、シミュレーションは、コイル電流を1MHz/5Aとして、Femtetを用いて実施した。
Figure 0007067499000002
表2から、実施例4、実施例2、実施例3、実施例1のインダクタの順で漏れ磁束の低減効果が向上し、Lの変化率の絶対値が上昇していることがわかる。また、導体層をインダクタ素子の表面に配置する場合、漏れ磁束の低減効果と渦電流損失の抑制とを両立することが困難であることがわかる。つまり、種々の導体層のパターンから、インダクタに求められる漏れ磁束と電力損失の特性に応じて導体層のパターンを選択すればよい。また、同じ導体層の形状であっても、第2金属層の厚みを調整することによって、第2金属層の電気抵抗率を調整し、漏れ磁束の低減効果と渦電流損失の抑制とのバランスを調整することもできる。
上記した実施例では、コイルとして導体がエッジワイズ巻きされてなる円形の巻回部を有するコイルを用いたが、巻回部の形状は、楕円形、矩形、トラック形、長円形など、その他の形状を用いてもよい。巻回方式はエッジワイズ巻に限らず、α巻きなどその他の巻回方式であってもよく、また、導体パターンを積層してコイルを形成してもよい。
図5および図6では、導体層の外形は円形状であるが、コイルの巻回部の形状に対応させて、楕円形、矩形、トラック形、長円形等であってもよい。
図7、図10および図11では、導体層として、2本のリング状の導体層を用いたが、リング状の導体層の数は2本より多くてもよい。
導体層の上に絶縁層をさらに設けてもよい。絶縁層により、導体層の酸化を防止する効果のほか、コイル導体の端末とのショート防止の効果も得られる。
上記した実施例では、素体の上面に導体層が設けられるが、素体の実装面側の底面に導体層をさらに設けてもよい。一般的に、基板に実装されるインダクタでは、基板のインダクタ周辺または裏面に導体パターンが存在するため漏れ磁束が遮断される。しかし、導体パターンが少ない等の場合には、素体の底面にも導体層を設けることで、インダクタの底面から放射する漏れ磁束を低減できる。
100 インダクタ
10 素体
20 コイル
21 巻回部
22 引き出し部
30 外部端子
32 グランド端子
40 導体層

Claims (7)

  1. 金属磁性粉および樹脂を含む素体と、巻回部と前記巻回部の両端に引き出された一対の引き出し部とで構成され、前記素体に埋設されるコイルと、前記引き出し部のそれぞれに電気的に接続する一対の外部端子と、前記コイルの巻軸と交差する前記素体の面上に配置される導体層とを備え、
    前記導体層は、前記素体の表面付近の金属磁性粉が相互に融着してなる第1金属層と、前記第1金属層上にめっきされてなる第2金属層とを含み、
    前記第1金属層の電気抵抗率よりも前記第2金属層の電気抵抗率が低く、
    前記導体層は、前記コイルの巻軸方向から見て、前記巻回部の外周部と内周部の間に配置される環状導体を含み、
    前記導体層は、互いに交差せず、且つ互いに電気的に接続される複数の環状導体層を含むインダクタ。
  2. 前記第1金属層は、前記素体より内側に形成されている、請求項1に記載のインダクタ。
  3. 前記導体層は、前記コイルの巻軸方向から見て、前記巻回部の少なくとも一部を被覆して配置される請求項1または請求項2に記載のインダクタ。
  4. 前記導体層は、前記コイルの巻軸方向から見て、前記巻回部の外周部よりも内側に配置される請求項1から請求項3のいずれかに記載のインダクタ。
  5. 実装される基板のグランドと接続されるグランド端子をさらに備え、前記導体層は前記グランド端子と電気的に接続される請求項1から請求項のいずれかに記載のインダクタ。
  6. 前記導体層を被覆する絶縁層をさらに備える請求項1から請求項のいずれかに記載のインダクタ。
  7. 巻回部と前記巻回部の両端に引き出された一対の引き出し部とで構成されたコイルを、金属磁性粉および樹脂を含む複合材料に埋設して素体を形成することと、
    前記コイルの巻軸と交差する素体の表面に、前記金属磁性粉が素体の表面付近において溶融されて相互に融着してなる第1金属層を設けることと、
    前記第1金属層の上に第2の金属層を形成することと、
    を含む、請求項1に記載されたインダクタの製造方法。
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