JP7064374B2 - 電子写真用ベルトおよび電子写真画像形成装置 - Google Patents
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Description
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
該カーボンブラックは、表面に有機化合物由来の凸部を有し、
該基層は、該熱可塑性樹脂と該カーボンブラックとを含む樹脂混合物の円筒押出成形物であり、該円筒押出成形物の断面を、0.01nm/pixel以上、1nm/pixel以下の解像度、かつ最低階調が0より大きく、最高階調が255未満とする条件にて透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、TEM画像を得て、さらに、該TEM画像から、該カーボンブラックが占める面積比率が50%以上である、一辺が100nmである正方形領域を抽出し、該正方形領域内における、該カーボンブラックに起因する、該正方形領域を構成する各ピクセルの階調情報を頻度分布化した階調分布において最低階調側から1頻度%を構成する複数個のピクセルのうち、互いに隣接してなるピクセル群の面積が10nm2以上である電子写真用ベルトが提供される。
従って、TEM画像において、暗い領域が観察されるカーボンブラックは、表面に微細な凸部を有しているものと考えられる。すなわち、透過電子が、カーボンブラックを通過するとき、凸形状のある部分を透過する場合は、凸部を有しない部分を透過する場合に比べて、カーボンブラック内の通過距離が長くなるため、透過電子量は少なくなり画像は暗くなり、その結果、TEM画像上に明暗差として表れているものと考えられる。
熱可塑性樹脂とカーボンブラックからなる樹脂組成物をチューブ状に溶融押出しする際、一般に溶融状態の熱可塑性樹脂はカーボンブラックにより流動抵抗を受ける。このとき、カーボンブラック周囲の熱可塑性樹脂は流動抵抗による乱流状態となり、樹脂の流れは一様でなくなる。そのため、外乱である温度による影響が樹脂組成物に対して不均一に作用し、得られるチューブ状成形物には膜厚ムラが発生する。
<熱可塑性樹脂>
用い得る熱可塑性樹脂は特に限定されない。しかし、用途が電子写真装置に搭載される中間転写ベルトの場合、熱可塑性樹脂としては、以下に挙げられる樹脂が用いられる。
本態様に係るカーボンブラック302は、例えば、市販されているカーボンブラックに対して後述する処理を施すことによって、表面に有機化合物由来の微細な凸部を形成する処理を施したものである。
本明細書において、処理を施す前のカーボンブラックを、「原料カーボンブラック」という場合がある。また、処理後の、表面に微細な凸部を有するカーボンブラックを「処理済カーボンブラック」または、単に「カーボンブラック」という場合がある。
ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック。
これらの中でも、不純物が少なく、前記熱可塑性樹脂とともにフィルム形状に成形した時に、異物不良の頻度が少なく、また、所望の導電性を得やすいアセチレンブラックが好ましい。アセチレンブラックとしては、具体的には、「デンカブラック」シリーズ(電気化学工業株式会社製)、「三菱導電フィラー」シリーズ(三菱化学株式会社製)、「バルカン」シリーズ(キャボット社製)、「プリンテックス」シリーズ(デグッサ社製)、「SRF」(旭カーボン社製)が挙げられる。
原料カーボンブラックの表面に微細な凸部を形成して、本態様に係るカーボンブラック302とするための処理方法について説明する。
原料カーボンブラックの表面に微細な凸部を形成する処理は、カーボンブラックの表面に有機物を付着させる第一の工程と、付着させた有機物を焼成させる第二の工程からなる。
原料カーボンブラックの表面に有機物を付着させる工程は、原料カーボンブラックを固体粉末状態のままで有機物と混合しても良いが、表面に有機物を均等に付着させることが困難であるため、液中で行うことが好ましい。ここでは液中で、原料カーボンブラックの表面に有機物を付着させる工程を説明する。
用いることができる溶媒は、水あるいは有機溶媒が用いられるが、取り扱い容易性や環境負荷性を考慮して水が好ましい。原料カーボンブラックの分散状態を良好にするために一般的な分散剤を使用しても良い。
用いられる分散剤は1種類である必要は無く、複数の分散剤を併用しても良い。
また、カーボンブラックと有機物の質量比を0.1以上とすることで、カーボンブラックに対する有機物の量が適度となるため、原料カーボンブラックの表面に付着できず浮遊する量を抑制できる。また後の工程での効率が悪くなる。また、質量比を20以下とすることで、原料カーボンブラックの処理をより効率的に行うことができる。
第二の工程は、第一の工程で得られた、原料カーボンブラック表面に有機物が付着した原料カーボンブラック分散液より、溶媒を除去して、得られた固形分を焼成させる工程である。
また、観察倍率は、取得画像の1辺が100nm未満になってしまうと観察領域への電子線ダメージが多くなってしまい適切な画像が得られにくくなる可能性がある。さらに、解像度は、1ピクセルあたりの長さが1nmより大きくなると、本来観察すべき処理済カーボンブラックの存在する領域が認識され難くなる。一方、1ピクセルあたりの長さが、0.01nmより小さくなると、画像サイズが非常に大きくなる。
電子写真用ベルトは、次のようにして製造することができる。熱可塑性樹脂と表面処理を施したカーボンブラックを溶融混練して、ペレット形状の電子写真用導電性樹脂組成物を作製する工程と、このペレット形状の電子写真用導電性樹脂組成物を単軸の押出機で溶融化し、押出機先端に配置された円筒状スリットから、該溶融化物を押出し、押出された樹脂組成物を円筒状の冷却マンドレルによって冷却し、所定の長さで切断する工程とにより製造できる。
図4に示す電子写真画像形成装置100は、カラー電子写真画像形成装置(カラーレーザープリンタ)である。この電子写真画像形成装置には、中間転写体である中間転写ベルト7の平坦部分に沿って、その移動方向に順にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ユニットPy、Pm、Pc、Pkが配設されている。ここで、1Y、1M、1C、1Kはそれぞれ電子写真感光体、2Y、2M、2C、2Kはそれぞれ帯電ローラ、3Y、3M、3C、3Kはそれぞれレーザー露光装置、4Y、4M、4C、4Kはそれぞれ現像器、5Y、5M、5C、5Kはそれぞれ1次転写ローラを示す。各画像形成ユニットの基本的な構成は同一であるので、画像形成ユニットの詳細については、イエロー画像形成ユニットPyについてのみ説明する。
また、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
<電子写真用ベルトの作製>
水100質量部に対して、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(三洋化成工業(株)製、商品名:「ナロアクティー」)を10質量部添加し、溶解させた後に、原料カーボンブラック(電気化学工業(株)製、商品名:「デンカブラック」)を15質量部添加した。このとき水100質量部に対して、原料カーボンブラックの質量部をA,界面活性剤の質量部をBとしたときの比「A/B」は1.5である。
ビーズミル(アイメックス(株)製、商品名:「アルファミル」)にて撹拌し、原料カーボンブラック分散液を得た。この原料カーボンブラック分散液を、スプレードライヤー(ヤマト科学(株)製、商品名:「スプレードライヤーL-8i」)を用いて水分を除去し固形分を得た。得られた固形分を高温炉(ヤマト科学(株)製、商品名:「恒温乾燥機DR200」)にて、温度400℃で5時間焼成し、処理済カーボンブラックを得た。
<評価1:電子写真用ベルトの膜厚/膜厚ムラ評価>
得られた電子写真用ベルトの膜厚は、デジタル膜厚計(サンコー電子(株)製、商品名:「デュアルタイプ膜厚計SWT-9000/FN325」)を用いて評価した。膜厚測定点は、電子写真用ベルトの幅方向に均等に6分割される端部を除く各位置に対して、ある位相を基準に周方向に10°ごとに位相をずらした35箇所とし、電子写真用ベルト面上の複数の膜厚測定点での最大値、最小値の差分を、膜厚ムラとして評価した。
得られた電子写真用ベルト中の処理済カーボンブラック表面の観察評価を、前述の通り実施した。そして、1nm/ピクセル以下、0.01nm/ピクセル以上の解像度、かつ最低階調が0より大きく、最高階調が255未満とする条件で、該円筒押出成形物の断面を観察したTEM画像のうち、該カーボンブラックが占める面積比率が50%以上である100nm×100nmの領域において、該カーボンブラックに起因する、最低階調側から1頻度%を構成する複数個のピクセルのうち、互いに隣接してなるピクセル群の面積を求めた。
得られた電子写真用ベルトの表面性は、ベルト表面における異物の数を目視により計測し、ベルト20本のうち、1個以上の異物が発生した電子写真用ベルトの本数を、下記の基準で評価した。
ランク「AA」:0本;
ランク「A」:1本以上5本未満;
ランク「C」:5本以上。
得られた電子写真用ベルト表面のマルテンス硬度を、フィッシャー・インスツルメンツ社製の薄膜硬度計:ピコデンターHM500を使い測定した。約1cm角にカットした電子写真用ベルトサンプルの測定面の裏側をスライドガラスに瞬間接着剤で接着させたものを、バーコビッチ型ダイアモンド圧子を使用して測定した。測定条件は、押し込み速度は1mN/sec、押し込み深さは2μm、保持時間を5sec、測定点は1mm以上離れた間隔で20点とし、その平均値を表面硬度とした。
作製した電子写真用ベルトを、複写機(キヤノン(株)製、商品名:「IR-ADVANCE C5051」)の中間転写ユニットに、中間転写ベルトとして装着し、画質試験を行った。初期の印刷試験は、温度15℃、湿度10%RHの環境下で、A4サイズ用紙(キヤノン(株)製、商品名:「GF-600」(坪量60g/m2))を用いて、同じ画像を20枚出力したフルカラー画像により行った。印刷した20枚の画像に対して、色ムラ、白抜け等の画質不良である濃度ムラが発生しているか否かを目視で確認し、以下の基準で評価した。
ランク「A」:いずれの画像においても画像不良が認められない。
ランク「B」:いずれかの画像において画像不良が認められる。
ランク「A」:全ての印刷画像に濃度ムラは認められない。
ランク「B」:3枚以下の印刷画像において画像不良が認められる。
ランク「C」:4枚以上の印刷画像において画像不良が認められる。
評価結果を表2に示す。
下記表1-1、1-2、および1-3に記載の材料構成および配合割合で、実施例1と同様の製法で、実施例2~10および比較例1~5の導電性部材である電子写真用ベルトをそれぞれ作製した。実施例8においては、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンサルファイド(以下、PPS)を用いているため、溶融混練は温度290℃以上330℃以下で行った。実施例9においては、熱可塑性樹脂としてポリブチレンナフタレート(以下、PBN)を用いているため、溶融混練は温度250℃以上300℃以下で行った。実施例10においては、熱可塑性樹脂としてポリフッ化ビニリデン(以下、PVDF)を用いているため、溶融混練は温度180℃以上270℃以下で行った。
一方で、比較例1より比較例5に係る電子写真用ベルトでは、薄膜にすることで大きくなった膜厚ムラにより、画像不良が発生していることが確認された。
301 導電性基層
302 カーボンブラック
304 熱可塑性樹脂
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを含む導電性の基層を有する、エンドレスベルト形状の電子写真用ベルトであって、
該カーボンブラックは、表面に有機化合物由来の凸部を有し、
該基層は、該熱可塑性樹脂と該カーボンブラックとを含む樹脂混合物の円筒押出成形物であり、
該円筒押出成形物の断面を、0.01nm/pixel以上、1nm/pixel以下の解像度、かつ最低階調が0より大きく、最高階調が255未満とする条件にて透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、TEM画像を得て、さらに、該TEM画像から、該カーボンブラックが占める面積比率が50%以上である、一辺が100nmである正方形領域を抽出し、該正方形領域内における、該カーボンブラックに起因する、該正方形領域を構成する各ピクセルの階調情報を頻度分布化した階調分布において最低階調側から1頻度%を構成する複数個のピクセルのうち、互いに隣接してなるピクセル群の面積が10nm2以上であることを特徴とする電子写真用ベルト。 - 前記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン、もしくはポリフェニレンサルファイドである請求項1に記載の電子写真用ベルト。
- 前記基層の平均膜厚が、25μm以上100μm以下である請求項1または2に記載の電子写真用ベルト。
- 前記カーボンブラックが、原料カーボンブラックの表面に有機物を付着させ、該有機物を焼成することにより形成されたものである請求項1から3のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
- 前記原料カーボンブラックが、アセチレンブラックである請求項4に記載の電子写真用ベルト。
- 電子写真感光体と、
該電子写真感光体に形成された未定着のトナー像が1次転写される中間転写ベルトと、
該中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録媒体に2次転写させるための2次転写手段と、
を備えている電子写真画像形成装置であって、
該中間転写ベルトが、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子写真用ベルトである、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。 - 電子写真用ベルトの製造方法であって、
原料カーボンブラックの表面に有機物を付着させる工程と、
該有機物を表面に付着させた該原料カーボンブラックを、該有機物の熱分解開始温度以上、該原料カーボンブラックの分解温度以下の温度で焼成することによって、処理済みカーボンブラックを得る工程と、
該処理済みカーボンブラックと熱可塑性樹脂とを溶融混錬して導電性樹脂組成物を得る工程と、
該導電性樹脂組成物をチューブ状に溶融押出しする工程と、を有することを特徴とする電子写真用ベルトの製造方法。 - 前記有機物が、非イオン系界面活性剤である請求項7に記載の電子写真用ベルトの製造方法。
- 前記非イオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項8に記載の電子写真用ベルトの製造方法。
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