本発明に係る冷蔵庫の実施例について説明する。まず,実施例に係る冷蔵庫の構成を図1~図5を参照しながら説明する。図1は実施例に係る冷蔵庫の正面図,図2は図1のA-A断面図,図3は図2のB-B断面図,図4は実施例に係る冷蔵庫の風路構成を示す模式図,図5は実施例に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を表す概略図である。冷蔵庫1の断熱箱体10は,前方に開口しており,上方から冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),左右に並設された製氷室3と上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)の順に貯蔵室を形成している。以下では,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5は,まとめて冷凍室7(冷凍温度帯室)と呼ぶ。
冷蔵室2の前方の開口は,左右に分割された回転式の冷蔵室扉2a,2bにより開閉され,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6の前方の開口は,引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aによってそれぞれ開閉される。冷蔵室扉2a,2bの庫内側外周には,シール部材として冷蔵室パッキン95a,95b(第一シール部材),製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5aの庫内側外周には,シール部材として冷凍室パッキン96a,96b,96c(第二シール部材),野菜室6の扉である野菜室扉6aの庫内側外周には,シール部材として野菜室パッキン97(第三シール部材)をそれぞれ備えており,各扉を閉じた際に,断熱箱体10の前縁部と接触することにより庫内外の空気の流通を抑制するようにしている。冷蔵室パッキン95a,95bの周長はそれぞれ2271mm,2441mmであり冷蔵室パッキン95a,95bの全周長(第一シール部材の周長)は4712mmである。冷凍室パッキン96a,96b,96cの周長は,それぞれ976mm,1416mm,2087mmであり,冷凍室パッキン96a,96b,96cの全周長(第二シール部材の周長)は4209mmである。また,野菜室パッキン97の周長(第三シール部材の周長)は2107mmである。なお,冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aの開閉状態は,各扉と断熱箱体10の前縁部との近接状態を検知する図示しない扉センサによって検知される。
冷蔵庫1と扉2a,2bを固定するために扉ヒンジ(図示せず)は冷蔵室2上部及び下部に設けてあり,上部の扉ヒンジは扉ヒンジカバー16で覆われている。また,扉2aには庫内の温度設定の操作を行う操作部99を設けている。
冷蔵室2の温度と,冷凍室7の温度は,操作部99を介してユーザーが維持温度レベルを選択できるようになっている。具体的には,冷蔵室2と冷凍室7の維持温度レベルの設定はそれぞれ「強」「中」「弱」の3段階に設定できるようになっており,冷蔵室2は「強」では約2℃,「中」では約4℃,「弱」では約6℃に維持され,冷凍室7は「強」では約-22℃,「中」では約-20℃,「弱」では約-18℃に維持される。なお,野菜室6は平均的に7℃程度に維持される。
冷蔵庫1の幅WはW=685mm(図1参照),奥行きDはD=738mm(図2参照),高さHはH=1833mm(図1参照)であり,断熱箱体10の開口部における冷蔵室高さ寸法HRはHR=787mm,冷凍室高さ寸法HFはHF=482mm,野菜室高さ寸法HVはHV=334mmである(図2参照)。JISC9801-3:2015に基づく全定格内容積は602Lであり,内訳は冷蔵室2の定格内容積(冷蔵室定格内容積)は308Lであり全定格内容積の51.2%,冷凍室7の定格内容積(冷凍室定格内容積)は180Lであり29.9%(全定格内容積の28%以上),野菜室6の定格内容積(野菜室定格内容積)は114Lであり全定格内容積の18.9%である。
図2に示すように,外箱10aと内箱10bとの間に発泡断熱材(例えば発泡ウレタン)を充填して形成される断熱箱体10により,冷蔵庫1の庫外と庫内は隔てられている。断熱箱体10には発泡断熱材に加えて複数の真空断熱材36を,鋼板製の外箱10aと合成樹脂製の内箱10bとの間に実装している。冷蔵室2と,上段冷凍室4及び製氷室3は断熱仕切壁28(空気流通遮断手段)によって隔てられ,下段冷凍室5と野菜室6は断熱仕切壁29によって隔てられている。また,製氷室3,上段冷凍室4,及び下段冷凍室5の各貯蔵室の前面側には,扉3a,4a,5aの隙間を介した庫内外の空気の流通を防ぐために,断熱仕切壁30を設けている。
冷蔵室2の扉2a,2bの庫内側には上方に開口した複数の扉ポケット33a,33b,33cと,複数の棚34a,34b,34c,34dを設け,複数の貯蔵スペースに区画されている。なお,最上部の扉ポケット33aの開口高さ(図2中の破線)は最上段の棚34aよりも高い位置に設けられている。冷凍室7及び野菜室6には,それぞれ扉3a,4a,5a,6aと一体に引き出される製氷室容器(図示せず),上段冷凍室容器4b,下段冷凍室容器5b,野菜室容器6bを備えている。野菜室容器6bは,上下2段に分かれており,下段側の前方には飲料のボトル類を収納できるボトル収納スペース6cを備えている。ボトル収納スペース6cの高さ寸法は,1.5Lや2Lの飲料のボトルを立てて収納できるように305mm以上確保している(本実施例では315mm)。また,飲料用のボトルを収納可能なことは,カタログや取扱説明書,広告媒体等の文面,図,写真,映像を通じてユーザーに周知される。
断熱仕切壁28の上方には,冷蔵室2の温度帯より低めに設定可能なチルドルーム35を設けている。チルドルーム35は,ユーザーが操作部99を介して設定温度を選択することができる。具体的には,冷蔵温度帯の約0~3℃に維持する「温度レベル1」と,冷凍温度帯の約-3~0℃に維持する「温度レベル2」の何れかに設定することができる。
また,チルドルーム35の左側方には製氷水タンク(図示せず)を備えている。製氷水タンクの背部には給水ポンプ(図示せず)が備えられている。また,製氷水タンクと給水ポンプ,給水ポンプから断熱仕切壁28を通って製氷室3内の製氷皿(図示せず)の上部に至るまでは給水配管(図示せず)で接続されており,給水ポンプの駆動によって製氷水タンクから製氷皿に水を供給できるようになっている。製氷皿は離氷機構(図示せず)と接続されており,離氷機構の作動によって製氷皿から氷が製氷室容器に落下するようになっている。ユーザーは操作部99を介して自動製氷機能のON/OFFを選択することができ,自動製氷機能をONにした場合には,製氷水タンク内の水が給水ポンプの駆動によって定期的に製氷皿に給水され,所定時間経過後自動的に離氷機構が作動して,製氷室容器に氷が落下する。
冷蔵室2の略背部には冷蔵用蒸発器室8aを備えており,冷蔵用蒸発器室8a内には,フィンチューブ式熱交換器である冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)が収納されている。冷蔵用蒸発器14aの上方には冷蔵用ファン9a(第一送風機)を備えている。また,冷蔵室2背部の幅方向の略中心には冷蔵室送風路11を備えており,冷蔵室送風路11の上部には,吹き出す空気を上方に指向させる指向手段を備えた冷蔵室吐出口11aを備えている。なお,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室吐出口11aの指向手段として,冷蔵室吐出口11aの開口面を上方に向けている。冷蔵室吐出口11aから上方に向けて吹き出された冷却空気は,図2中に矢印で示すように冷蔵室2の天井面を沿って流れて冷蔵室2の前方の領域に到達し,棚34a,34b,34cの前方に生じる扉ポケット33a,33b,33cとの隙間を流れ,棚34cと棚34dの間の空間の左後方に設けられた開口92(図3参照)を介してチルドルーム35の後方空間に入り,冷蔵用蒸発器室8aの下部前面,下部左側面,下部右前面に設けられた冷蔵室戻り風路15a,15b,15c(図3参照)から冷蔵用蒸発器室8aに戻る。また,棚34cと棚34dの間の空間を流れた空気の一部は,棚34cと棚34dの間の空間の右後方に設けられた冷蔵室戻り風路15d(図3参照)から冷蔵用蒸発器室8aに戻る。なお,冷蔵室戻り風路15cの一部には,冷蔵室2を流れる空気と接するように脱臭部材91(一例としてオープンセル構造脱臭部材)を備えている。
冷凍室7の略背部には冷凍用蒸発器室8bを備えており,冷凍用蒸発器室8b内には,フィンチューブ式熱交換器である冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)が収納されている。冷凍用蒸発器14bの上方には冷凍用ファン9bを備えている。また,冷凍室7の背部には冷凍室送風路12を備えており,冷凍用ファン9b(第二送風機)の前方の冷凍室送風路12には複数の冷凍室吐出口12aを備えている。冷凍室用蒸発器室8bの下部前方には冷凍室7に送られた空気が戻る冷凍室戻り風路17(図2及び図3参照)を備えている。
野菜室6への風路となる野菜室送風路13は,冷凍室送風路12の右下方から分岐形成され,断熱仕切壁29を通過している。野菜室送風路13の出口となる野菜室吐出口13aは,野菜室6背部右上の断熱仕切壁29下面の高さと略一致するように設けられ,下方に開口している。野菜室送風路13には,野菜室6の冷却制御手段である野菜室ダンパ19を備えている(図3参照)。野菜室6と冷凍室7の間の断熱仕切壁29の左下部前方には,野菜室戻り流入口18aを備えており,断熱仕切壁29内を通過する野菜室戻り風路18を介して冷凍用蒸発器室8bの下部前方に設けられた野菜室戻り流出口18bに至る流路が形成されている。
次に,本実施例に係る冷蔵庫の風路構成について図4を参照しながら説明する。冷蔵用蒸発器14aと熱交換して低温になった空気は,冷蔵用ファン9aを駆動することにより,冷蔵室送風路11,冷蔵室吐出口11aを介して冷蔵室2に送風され,冷蔵室2内を冷却する。冷蔵室2に送られた空気は,冷蔵室戻り風路15a,15b,15c及び15d(図3参照)から冷蔵用蒸発器室8aに戻る。以下,この冷蔵用蒸発器室8aから冷蔵室2を流れて冷蔵用蒸発器室8aに戻る風路を冷蔵風路111(第一風路)と呼ぶ。また,冷凍用蒸発器14bと熱交換して低温になった空気は,冷凍用ファン9bを駆動することにより,冷凍室送風路12,冷凍室吐出口12aを介して冷凍室7に送風され,冷凍室7内を冷却する。冷凍室7に送られた空気は,冷凍室戻り風路17から冷凍用蒸発器室8bに戻る。また,野菜室ダンパ19が開放状態の場合には,冷凍室送風路12に流入した冷却空気の一部が野菜室送風路13を流れ,野菜室吐出口13aを介して野菜室6に至り,野菜室6内を冷却する。野菜室6に送られた空気は,野菜室戻り風路18を流れて冷凍用蒸発器室8bに戻る。以下,この冷凍用蒸発器室8bから冷凍室7を流れて冷凍用蒸発器室8bに戻る風路と,冷凍用蒸発器室8bから野菜室6を流れて冷凍用蒸発器室8bに戻る風路を冷凍野菜風路112(第二風路)と呼ぶ。
本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用ファン9aは翼径が100mmの遠心ファン(後向きファン)であり,冷凍用ファン9bは翼径が110mmの軸流ファン(プロペラファン)である。遠心ファンは軸方向から吸込んだ空気を90度転向して径方向に吹き出す特性を有する。一方,軸流ファンは軸方向から吸込んだ空気を軸方向に吹き出す特性を有する。したがって,軸方向に吸込んだ流れを90度転向させる風路では,遠心ファンが実装性に優れ,軸方向に吸込んだ流れを軸方向に吹き出す風路では軸流ファンが実装性に優れる。従って,冷蔵用ファン9aとしては,前方から吸込んだ空気を,90度転向して上方の冷蔵室送風路11に吹き出す構成となるため,遠心ファンである後向きファンを採用し,冷凍用ファン9bとしては,後方から吸込んだ空気を前方の冷凍室送風路12に吹き出す構成となるために,軸流ファンであるプロペラファンを採用してスペース効率が高い冷蔵庫としている。
図2及び図3に示すように,冷蔵室2,冷凍室7,野菜室6の庫内背面側には,冷蔵室温度センサ41(第一負荷検知手段),冷凍室温度センサ42(第二負荷検知手段),野菜室温度センサ43を備え,それぞれ冷蔵室2,冷凍室7,野菜室6の温度を検知している。また,冷蔵用蒸発器14aの上部には冷蔵用蒸発器温度センサ40a,冷凍用蒸発器14bの上部には冷凍用蒸発器温度センサ40bを備え,冷蔵用蒸発器14a,及び冷凍用蒸発器14bの温度を検知している。また,冷蔵庫1の天井部の扉ヒンジカバー16の内部には,外気(庫外空気)の温度,湿度を検知する外気温湿度センサ37を備え,扉2a,2b,3a,4a,5a,6aには,開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(不図示)を備えている。
また,冷凍用蒸発器室8bの下部には,冷凍用蒸発器14bを加熱する除霜ヒータ21を備えている。除霜ヒータ21は,例えば50W~200Wの電気ヒータで,本実施例では150Wのラジアントヒータを設けている。冷凍用蒸発器14bの除霜時に発生した除霜水(融解水)は,冷凍用蒸発器室8bの下部に備えた樋23bに流下し,排水口22b,冷凍用排水管27bを介して冷蔵庫1の後方(背面側)下部に設けられた機械室39に至り,機械室39内に設置された圧縮機24の上部の蒸発皿32に排出される。
また,冷蔵用蒸発器14aの除霜方法については後述するが,冷蔵用蒸発器14aの除霜時に発生した除霜水は,冷蔵用蒸発器室8aの下部に備えた樋23aに流下し,排水口22a,冷蔵用排水管27aを介して圧縮機24の上部に備えた蒸発皿32に排出される。
機械室39内には,上述の圧縮機24,蒸発皿32とともに,フィンチューブ式熱交換器である庫外放熱器50a,庫外ファン26を備えている。庫外ファン26の駆動により圧縮機24,庫外放熱器50a蒸発皿32に空気が流れ,圧縮機24と庫外放熱器50aからの放熱が促進され,省エネルギー性能を高めるとともに,蒸発皿32に通風することで,蒸発皿32に溜まった除霜水の蒸発を促進して溢水を抑制し,信頼性を高めている。
図3に示すように,樋23aには,樋23aにおいて凍結した除霜水を融解させる樋ヒータ101を備えている。また,冷蔵用排水管27aには排水管上部ヒータ102及び排水管下部ヒータ103を備えている。なお,樋ヒータ101,排水管上部ヒータ102,排水管下部ヒータ103は,何れも除霜ヒータ21よりも容量が低いヒータであり,本実施例では樋ヒータ101を6W,排水管上部ヒータ102を3W,排水管下部ヒータ103を1Wとしている。
ここで,冷蔵用ファン9aを駆動すると,冷蔵用蒸発器室8aの右上に設けられた冷蔵室戻り口15bを介して,冷蔵室2からの戻り空気を樋23aに向けて下方に流し,樋23aを加熱して温度を上げるようにしている。これにより,樋23aにおいて凍結した除霜水を融解させる樋ヒータ101の加熱量を低減する効果が得られ,省エネルギー性能を高めることができる。
また,排水管27a下部は,冷凍室7及び冷凍用蒸発器室8bよりも外箱10aに近接させている。これにより,排水管27aにおいて凍結した除霜水を融解させる排水管下部ヒータ103の加熱量を低減することができ,省エネルギー性能が高くなる。
冷蔵庫1の天井部(図2参照)には,制御装置の一部であるCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板31を配置している。制御基板31は,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43,蒸発器温度センサ40a,40b等と接続され,前述のCPUは,これらの出力値や操作部99の設定,前述のROMに予め記録されたプログラム等を基に,圧縮機24や冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9bのON/OFFや回転速度制御,除霜ヒータ21,樋ヒータ101,排水管上部ヒータ102,排水管下部ヒータ103,及び,後述する三方弁52の制御等を行っている。
図5は,実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクル(冷媒流路)である。本実施例の冷蔵庫1では,圧縮機24(押除量9.2cc),冷媒の放熱を行う庫外放熱器50aと壁面放熱配管50b,断熱仕切壁28,29,30の前縁部への結露を抑制する結露抑制配管50c(庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを放熱手段と呼ぶ),冷媒流制御手段である三方弁52,冷媒を減圧させる減圧手段である冷蔵用キャピラリチューブ53a,冷凍用キャピラリチューブ53b,冷媒と庫内の空気を熱交換させて,庫内の熱を吸熱する冷蔵用蒸発器14a,及び,冷凍用蒸発器14bを備えている。また,三方弁52の上流には,冷凍サイクル中の水分を除去するドライヤ51を備え,冷蔵用蒸発器14aの下流と,冷凍用蒸発器14bの下流には,それぞれ液冷媒が圧縮機24に流入するのを防止する冷蔵用気液分離器54a,冷凍用気液分離器54bを備えている。さらに冷凍用気液分離器54bの下流には逆止弁56を備えている。これらの構成要素を冷媒配管により接続することで冷凍サイクルを構成している。なお本実施例の冷蔵庫においては,冷蔵用蒸発器14a及び冷凍用蒸発器14bの温度を,圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9bの回転速度によって調整するため,圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9bを蒸発器温度調整手段と呼ぶ。また,冷媒には可燃性冷媒のイソブタンを用いており,冷媒量封入量は88gである。
三方弁52は,流出口52aと,流出口52bを備えており,流出口52aを開放状態,流出口52bを閉鎖状態として,冷蔵用キャピラリチューブ53a側に冷媒を流す状態1(冷蔵モード),流出口52aを閉鎖状態,流出口52bを開放状態として,冷凍用キャピラリチューブ53b側に冷媒を流す状態2(冷凍モード),及び,流出口52a,52bの何れも閉鎖状態とする状態3(全閉モード)を備えた冷媒流制御弁である。
三方弁52が状態1(冷蔵モード)に制御されている場合,圧縮機24から吐出した冷媒は,庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを流れて放熱し,ドライヤ51を介して三方弁52に至る。三方弁52は状態1(流出口52aが開放状態,流出口52bが閉鎖状態)となっているため,続いて,冷媒は冷蔵用キャピラリチューブ53aを流れて減圧され冷蔵用蒸発器14aに至り,冷蔵室2の戻り空気と熱交換する。冷蔵用蒸発器14aを出た冷媒は,冷蔵用気液分離器54aを通り,キャピラリチューブ53aとの接触部57aを流れることでキャピラリチューブ53a内を流れる冷媒と熱交換した後に圧縮機24に戻る。
三方弁52が状態2(冷凍モード)に制御されている場合,圧縮機24から吐出した冷媒は,庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを流れて放熱し,ドライヤ51を介して三方弁52に至る。三方弁52は状態2(流出口52aが閉鎖状態,流出口52bが開放状態)となっているため,続いて,冷媒は冷凍用キャピラリチューブ53bを流れて減圧されて低温化し,冷凍用蒸発器14bで,冷凍室7の戻り空気及び野菜室6の戻り空気(野菜室ダンパ19が開放状態の場合)と熱交換する。冷凍用蒸発器14bを出た冷媒は,冷凍用気液分離器54bを通り,キャピラリチューブ53bとの接触部57bを流れることでキャピラリチューブ53b内を流れる冷媒と熱交換した後に圧縮機24に戻る。
三方弁52が状態3(全閉モード)に制御されている場合,圧縮機24を駆動すると,冷蔵用キャピラリチューブ53a,冷凍用キャピラリチューブ53bから冷媒が供給されない状態となるため,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒,または,冷凍用蒸発器14b内の冷媒が放熱手段側に回収される(詳細は後述)。
本実施例の冷蔵庫は,三方弁52を状態1(冷蔵モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態,冷凍用ファン9bを停止状態とすることで冷蔵室2を冷却する「冷蔵運転」,三方弁52を状態2(冷凍モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,野菜室ダンパ19を開放状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態,または停止状態,冷凍用ファン9bを駆動状態とすることで冷凍室7と野菜室6を冷却する「冷凍野菜運転」,三方弁52を状態2(冷凍モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,野菜室ダンパ19を閉鎖状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態または停止状態,冷凍用ファン9bを駆動状態とすることで冷凍室7を冷却する「冷凍運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態として,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒,または,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する「冷媒回収運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)として圧縮機24を停止状態,冷蔵用ファン9aを停止状態,冷凍用ファン9bを停止状態とする「運転停止」,三方弁52を状態2(冷凍モード)且つ圧縮機24を駆動状態に制御,または,三方弁52を状態3(全閉モード)且つ圧縮機24を停止状態に制御して,冷蔵用蒸発器14aに冷媒が流れない状態として冷蔵用ファンを駆動状態として,冷蔵用蒸発器14aの表面に成長した霜や蒸発器自体の蓄冷熱で冷蔵室2を冷却しつつ冷蔵用蒸発器14aの除霜を行う「冷蔵用蒸発器除霜運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)として圧縮機24を停止状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態または停止状態,冷凍用ファン9bを停止状態,除霜ヒータ21を通電状態とすることで,冷凍用蒸発器14bの除霜を行う「冷凍用蒸発器除霜運転」の各運転を適宜実施することで,冷蔵庫1の庫内各貯蔵室を冷却する。
冷凍用蒸発器除霜運転が行われる間隔(除霜間隔)は,最長96時間(最長除霜間隔)と最短12時間(最短除霜間隔)の間で可変される。具体的には,外気温湿度センサ37が検知する外気温湿度,扉3a,4a,5a,6aの開閉回数,冷凍運転及び冷凍野菜運転中の圧縮機回転速度,冷凍用蒸発器温度センサ40bが検知する冷凍用蒸発器温度に基づいて除霜間隔が判定され,外気の温度が高い,外気の湿度が高い,冷凍室扉開閉回数が多い,冷凍運転及び冷凍野菜運転時の圧縮機回転速度が高い,冷凍運転及び冷凍野菜運転時の冷凍用蒸発器温度の最低到達温度が低いほど間隔が短くなる。このように冷凍用蒸発器除霜運転の間隔を可変させることで,冷凍用蒸発器14bに霜が成長した場合に,適切なタイミングで冷凍用蒸発器除霜運転を実施できるので,霜が過度に成長して冷凍用蒸発器の熱交換効率が大きく低下することを抑制し,良好な実用冷却性能を発揮できるようにしている。また,最長除霜間隔を設定することで,定期的に確実な冷凍用蒸発器除霜運転が行われるようにしている。これにより,特に冷凍用蒸発器14b以外の冷凍用蒸発器室8bの壁面等への意図しない霜の成長を抑制でき,信頼性を高めている。また,冷凍用蒸発器除霜運転中は,冷凍室7を冷却できないため冷凍室7の温度が上昇する。本実施例の冷蔵庫では,最短除霜間隔を設けることで,除霜間隔が短くなりすぎることを防ぎ,冷凍室7の温度が除霜運転によって頻繁に上昇しないようにして,冷凍食品が解けるといった不具合が生じ難い冷蔵庫としている。
なお,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を放熱手段側に回収する際には,冷蔵用ファン9aを駆動し,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する際には,冷凍用ファン9bを駆動して,冷媒回収運転中も冷蔵室2と冷凍室7の冷却を行う(詳細は後述)。そこで,冷蔵室2の冷却が行われる運転状態となる「冷蔵運転」と冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を回収する冷媒回収運転の総称を「冷蔵室冷却運転」,冷凍室7の冷却が行われる運転状態となる「冷凍野菜運転」,「冷凍運転」と冷凍用蒸発器14b内の冷媒を回収する冷媒回収運転の総称を「冷凍室冷却運転」と呼ぶ。
図6は本実施例に係る冷蔵庫の蒸発器を示す図であり,図6(a)は冷蔵用蒸発器14a,図6(b)は冷凍用蒸発器である。図6(a)に示すように,冷蔵用蒸発器14aはアルミニウム製の冷媒パイプ97aに,アルミニウム製のフィン98aが取り付けられたフィンチューブ式の熱交換器である。冷蔵用キャピラリチューブ53a(図5参照)によって減圧され,低温低圧となった冷媒が冷媒パイプ97a内を流れ,冷蔵用蒸発器14aの下部前方から流入する冷蔵室2からの戻り空気(図2または図3参照)とフィン98aや冷媒パイプ97aの表面を介して熱交換する。フィン98aは高さ方向に3段に分割されており,各段には前後2列の冷媒パイプ97aが設けられている。冷媒は,冷蔵用蒸発器14aの上部後方の冷媒パイプ97aから流入し,冷蔵用蒸発器14aの右側方を下に向かい,フィン98aの1段目後方に流入する。その後,2段目後方,3段目後方,3段目前方,2段目前方,1段目前方の順に流れて,1段目右側から流出する。冷蔵用蒸発器14aの右側方には,冷媒パイプ97aに接続された冷蔵用気液分離器54aが備えられており,液冷媒とガス冷媒が分離されるようになっている。また,冷蔵用蒸発器14aの上部後方の冷媒パイプには冷蔵用蒸発器温度センサ40aが図示しないセンサホルダによって取り付けられている。冷蔵用蒸発器14aにおいて主要な熱交換が行われるフィン98aが設置されている部分(フィン設置部)の幅WRevp=300mm,奥行きDRevp=60mm,高さHRevp=88mmであり,フィン設置部の占有容積(冷蔵用蒸発器容積)VRevp=1.486Lである。また,フィンピッチPfRevp=3mmである。フィン設置部のフィン98a及び冷媒パイプ97aの空気と接する表面積(空気側伝熱面積)ARevpは0.993m2である。
図6(b)は冷凍用蒸発器14bであり,アルミニウム製の冷媒パイプ97bに,アルミニウム製のフィン98bが取り付けられたフィンチューブ式の熱交換器である。冷凍用キャピラリチューブ53b(図5参照)によって減圧され,低温低圧となった冷媒が冷媒パイプ97b内を流れ,冷凍用蒸発器14bの下部前方から流入する冷凍室7,野菜室6からの戻り空気(図2または図3参照)とフィン98bや冷媒パイプ97bの表面を介して熱交換する。フィン98bは冷凍用蒸発器14bの高さ方向に5段に分割されており,各段には前後2列の冷媒パイプ97bが設けられている。冷媒は,冷蔵用蒸発器14aの上部前方の冷媒パイプ97bから流入し,フィン98aの5段目前方に流入する。その後,4段目前方,3段目前方,2段目前方,1段目前方,1段目後方,2段目後方,3段目後方,4段目後方,5段目後方の順に流れて,5段目後方の左上から流出する。冷凍用蒸発器14bの左上方には,冷媒パイプ97bに接続された冷凍用気液分離器54bが鉛直線に対して所定角度(15度)傾斜して備えられており,液冷媒とガス冷媒が分離されるようになっている。また,冷凍用蒸発器14aの上部前方の冷媒パイプには冷凍用蒸発器温度センサ40bが図示しないセンサホルダによって取り付けられている。冷凍用蒸発器14bにおいて主要な熱交換が行われるフィン98bが設置されている部分(フィン設置部)の幅は,1段目~4段目はWFevp1=345mm,5段目はWFevp2=300mm,奥行きDFevp=60mm,また,1段目~4段目の高さHevp1=118mm,5段目の高さHevp1=30mmである。これらから定まるフィン設置部の占有容積(冷凍用蒸発器容積)VFevp=2.983Lであり,冷凍室7の定格内容積180Lの3%以下となる。このように冷凍用蒸発器容積を冷凍室7の定格内容積の3%以下とすることで,冷凍室7の定格内容積を全定格内容積の28%以上に大容量化できる。また,フィンピッチPfFevp=5mmであり,フィン設置部のフィン98b及び冷媒パイプ97bの空気と接する表面積(空気側伝熱面積)AFevp=1.146m2である。
図6に示す冷蔵用蒸発器14a,及び,冷凍用蒸発器14bの単位容積あたりの空気側伝熱面積はそれぞれARevp/VRevp=0.673m2/L,AFevp/VFevp=0.384m2/Lであり,0.25m2/L以上,0.96m2/L以下の値となる。一般に,霜は蒸発器の空気側伝熱面に成長するため,蒸発器容積に対して空気側伝熱面積を大きくすると,霜が成長した場合に流路が閉塞されやすくなる。このため,霜の成長が多い場合は熱交換性能の低下が起きやすくなるが,霜の成長が少ない場合は熱交換性能が高い蒸発器となる。一方,蒸発器容積に対して空気側伝熱面積を小さくすると,霜が成長しても流路が霜で閉塞され難く熱交換性能を維持しやすくなるが,空気側伝熱面積が小さくなるので,霜の成長が少ない場合,単位容積あたりの熱交換性能が低くなる。そこで,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用蒸発器14a,及び,冷凍用蒸発器14bの単位容積あたりの空気側伝熱面積を,0.25m2/L以上,0.96m2/L以下とすることで,霜の成長が多い場合と,霜の成長が少ない場合の性能が両立されるようにしている。
以上で,本実施例に係る冷蔵庫の構成を説明したが,次に本実施例に係る冷蔵庫の制御について説明する。図7は,本実施例に係る冷蔵庫の通常運転状態における制御を表すフローチャートである。図8は,本実施例に係る冷蔵庫の高負荷状態における制御を表すフローチャートである。図9は本実施例に係る冷蔵庫の通常運転状態における制御を表すタイムチャートである。図10は本実施例に係る冷蔵庫の高負荷状態における制御を表すタイムチャートである。
図7に示すように,本実施例の冷蔵庫は電源投入により運転が開始され(スタート),冷蔵庫1の各貯蔵室が冷却される。ユーザーが各貯蔵室扉の開閉を行う,或いは冷蔵庫周囲の温度環境の変化等の要因による負荷変動がない通常運転状態(通常運転モード)においては,基本的に一定の運転パターンを繰り返す状態(以下,安定冷却運転と呼ぶ)となる。図5では,電源投入から安定冷却運転に至るまでの制御過程は省略している。
安定冷却運転では,一定の運転パターン(運転サイクル)を繰り返すが,ここでは冷蔵室2を冷却する運転モードである冷蔵運転が開始される状態からの制御を説明する。冷蔵運転は,三方弁52を状態1(冷蔵モード)とし,圧縮機24を速度1(800min-1)で駆動,冷蔵用ファン9aを速度2(1500min-1)で駆動,冷凍用ファン9bを停止,野菜室ダンパ19を閉鎖することで開始する(ステップS101)。続いて,庫内が高負荷になっているかが判定される(ステップS102)。本実施例の冷蔵庫では,冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,高負荷判定温度TF_high(=-10℃)以上(TF≧TF_high),または,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが,高負荷判定温度TR_high(=10℃)以上(TR≧TR_high)の場合にステップS102が成立する。ステップS102が成立した場合の制御は後述する。
このとき,圧縮機24及び冷蔵用ファン9aは,冷蔵運転時の冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度をTRevp_ave,冷蔵室2の維持温度をTF_keep,冷凍室7の維持温度をTF_keep,冷蔵室維持温度TR_keepと冷蔵運転時の冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度TRevp_aveの差をΔT(=TR_keep-TRevp_ave),蒸発器温度に対する冷凍サイクル理論成績係数をCOPthとした場合に,TRevp_ave≧0.5×(TR_keep+TF_keep), d2(COPth)/dTRevp_ave
2 - d2(ΔT-1)/dTRevp_ave
2≧0 を満足するように選定している。
ステップS102が成立しない場合(No)は,続いて冷蔵運転終了条件が成立しているかが判定される(ステップS103)。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが,冷蔵運転終了温度TRoff(=2.5℃)以下(TR≦TRoff)の場合にステップS103が成立する。ステップS103が成立しない場合(No),再びステップS102の判定に戻る。
ステップS103が成立した場合(Yes),次に冷凍野菜運転開始条件が成立しているかが判定される(ステップS104)。本実施例の冷蔵庫では,冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,冷凍野菜運転開始温度TF_on(=-18℃)以上(TF≧TF_on)の場合にステップS104が成立する。
ステップS104が成立した場合(成立しない場合(No)は後述),次に圧縮機24の駆動回転速度を維持して,三方弁52を状態3(全閉モード)とし,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行う(ステップS105)。このとき,冷蔵用ファン9aは駆動を継続し,冷媒回収運転中も冷蔵室2の冷却を行う。
続いて冷蔵用蒸発器除霜運転を実施するかが判定される(ステップS106)。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室2の下部に備えたチルドルーム35の設定が,冷蔵温度帯の約0~3℃に維持する「温度レベル1」が選択されている場合にはステップS106が成立(Yes)し,冷凍温度帯の約-3~0℃に維持する「温度レベル2」が選択されている場合には,ステップS106が否成立(No)となる。ステップS106が成立した場合(Yes),冷蔵用ファン9aを速度1(900min-1)として,冷蔵用蒸発器除霜運転が開始され(ステップS107),ステップS106が否成立(No)の場合,冷蔵用ファン9aが停止される(ステップS108)。
次に冷凍野菜運転が開始される(ステップS109)。冷凍野菜運転は,三方弁52を状態2(冷凍モード)とし,圧縮機24を速度2(1400min-1),冷凍用ファン9bを速度1(1200min-1)で駆動し,野菜室ダンパ19を開放した状態で行われる。
続いて,庫内が高負荷になっているかが判定される(ステップS110)。本実施例の冷蔵庫では,冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,高負荷判定温度TF_high(=-10℃)以上(TF≧TF_high),または,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが,高負荷判定温度TR_high(=10℃)以上(TR≧TR_high)の場合にステップS110が成立する(ステップS102と同様の判定)。ステップS110が成立した場合の制御は後述する。
ステップS110が成立しない場合(No),次に野菜室冷却終了条件が成立しているかが判定される(ステップS111)。本実施例の冷蔵庫では,野菜室温度センサ43が検知する野菜室温度TVが,野菜室冷却終了温度TV_off(=4℃)以下(TV≦TV_off)の場合にステップS111が成立する。ステップS111が成立した場合(Yes),野菜室ダンパ19が閉鎖されて冷凍野菜運転が終了し,冷凍室7を冷却する冷凍運転に移行する。
ステップS111が成立しない場合(No),続いて冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件が成立しているかが判定される(ステップS113)。冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件は,冷蔵用蒸発器温度TR_evpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度TRD_off(=2℃)以上(TR_evp≧TRD_off)の場合に成立する。ステップS113が成立した場合(Yes),冷蔵用ファン9aが停止されて(ステップS114),「冷蔵用蒸発器除霜運転」が終了する。
ステップS113が成立しない場合(No),続いて冷凍運転終了条件が成立しているかが判定される(ステップS115)。本実施例の冷蔵庫では,野菜室ダンパ19が閉鎖状態,且つ,冷凍室温度TFが冷凍運転終了温度TF_off(=-22.5℃)以下(TF≧TF_off)の場合にステップS115が成立する。ステップS115が成立しない場合(No),ステップS110の判定に戻る。
ステップS115が成立した場合,次に冷蔵運転開始条件が成立しているかが判定される(ステップS116)。本実施例の冷蔵庫では,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが,冷蔵運転開始温度TR_on(=5.5℃)以上(TR≧TR_on)の場合にステップS116が成立する。
ステップS116が成立した場合,(成立しない場合(No)は後述),圧縮機24の駆動回転速度を維持して,三方弁52を状態3(全閉モード)とし,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行う(ステップS117)。このとき,冷凍用ファン9bは駆動を継続し,冷媒回収運転中も冷凍室7の冷却を行う。
ステップS104が成立しない場合(No),続いて冷蔵用蒸発器除霜運転を実施するかが判定される(ステップS201)。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室2の下部に備えたチルドルーム35の設定が,冷蔵温度帯の約0~3℃に維持する「温度レベル1」が選択されている場合にはステップS106が成立(Yes)し,冷凍温度帯の約-3~0℃に維持する「温度レベル2」が選択されている場合には,ステップS106が否成立(No)となる(ステップS106と同様の判定)。ステップS201が成立した場合(Yes),冷蔵用ファン9aを速度1(900min-1)として,冷蔵用蒸発器除霜運転が開始され(ステップS202),ステップS106が否成立(No)の場合,冷蔵用ファン9aが停止されて(ステップS203),三方弁52を状態3(全閉モード)として,圧縮機24が停止,冷凍用ファン9bが停止される(ステップS118)。また,ステップS116が成立しない場合(No)も,三方弁52を状態3(全閉モード)として,圧縮機24が停止,冷凍用ファン9bが停止される(ステップS118)。
続いて,庫内が高負荷になっているかが判定される(ステップS119)。本実施例の冷蔵庫では,冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,高負荷判定温度TF_high(=-10℃)以上(TF≧TF_high),または,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが,高負荷判定温度TR_high(=10℃)以上(TR≧TR_high)の場合にステップS119が成立する(ステップS102,110と同様の判定)。ステップS119が成立した場合の制御は後述する。
ステップS119が成立しない場合(No),次に冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件が成立しているかが判定される(ステップS120)。冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件は,冷蔵用蒸発器温度TR_evpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度TRD_off(=2℃)以上(TR_evp≧TRD_off)の場合に成立する(ステップS113と同様の判定)。ステップS120が成立した場合(Yes),冷蔵用ファン9aが停止されて(ステップS121),「冷蔵用蒸発器除霜運転終了」が終了する。
ステップS120が成立しない場合(No),続いて冷凍野菜運転開始条件が成立しているかが判定される(ステップS122)。本実施例の冷蔵庫では,冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,冷凍野菜運転開始温度TF_on(=-18℃)以上(TF≧TF_on)の場合にステップS122が成立する(ステップS104と同様の判定)。ステップS122が成立した場合(Yes),次に冷媒回収運転実施要否が判定される(ステップS123)。本実施例の冷蔵庫では,ステップS118による圧縮機24停止の直前の運転が冷蔵運転の場合にステップS123が成立する。ステップS123が成立した場合(Yes),三方弁52を状態3(全閉モード)とし,直前の冷蔵運転における回転速度で圧縮機24を駆動して,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を実施し(ステップS124),冷凍野菜運転を開始する(ステップS109)。ステップS123が成立しない場合(No),冷媒回収運転を実施せずに冷凍野菜運転を開始する(ステップS109)。
ステップS122が成立しない場合(No),続いて冷蔵運転開始条件が成立しているかが判定される(ステップS125)。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが,冷蔵運転開始温度TR_on(=5.5℃)以上(TR≧TR_on)の場合にステップS116が成立する(ステップS116と同様の判定)。
ステップS125が成立した場合,次に冷媒回収運転実施要否が判定される(ステップS126)。本実施例の冷蔵庫では,ステップS118による圧縮機24停止の直前の運転が冷凍運転の場合にステップS126が成立する。ステップS126が成立した場合(Yes),三方弁52を状態3(全閉モード)とし,直前の冷凍運転における回転速度で圧縮機24を駆動して,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行い(ステップS127),冷蔵運転を開始する(ステップS101)。ステップS126が成立しない場合(No)は,冷媒回収運転を実施せずに冷蔵運転を開始する(ステップS101)。
なお,以上の説明における冷蔵運転開始温度TR_on(=5.5℃),冷蔵運転終了温度TR_off(=2.5℃),冷凍野菜運転開始温度TF_on(=-18℃),冷凍運転終了温度TF_off(=-22.5℃)は,冷蔵室2の維持温度レベルが「中」,冷凍室7の維持温度レベルが「中」に設定されている場合の例であり,設定された維持温度レベルに応じて可変する。
次に冷蔵庫1の庫内が高負荷になっている場合の制御について図8を参照しながら説明する。図8に示す制御には,図7のステップS102,S110,S119において,冷蔵庫1の庫内が高負荷になっていると判定された場合(各ステップにおける判定がYes)に移行する。庫内が高負荷になっていると判定されると,続いて冷蔵室2が高負荷であるか(ステップS301),冷凍室7が高負荷であるかの判定(ステップS302)が行われる。冷蔵室2が高負荷で,冷凍室7が高負荷になっていない場合は,ステップS301がNoとなり,次に冷媒回収運転の要否が判定される(ステップS501)。
本実施例の冷蔵庫では,図7のステップS102,S110,S119の何れかが成立した時点における運転が冷蔵運転の場合にステップS501が成立する。ステップS501が成立した場合(Yes),三方弁52を状態3(全閉モード)とし,直前の冷蔵運転における回転速度で圧縮機24を駆動して,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行い(ステップS502),続いて「高負荷モード冷凍野菜運転」が選択される(ステップS503)。ステップS501が成立しない場合(No)は,冷媒回収運転を実施せずに「高負荷モード冷凍野菜/冷凍運転」が選択される(ステップS503)。本実施例の冷蔵庫では,「高負荷モード冷凍野菜/冷凍運転」が選択された場合,冷凍野菜運転または冷凍運転が実施される際の回転速度として,圧縮機24は速度4(3600min-1),冷凍用ファン9bは速度2(2000min-1)に設定される。なお,冷蔵運転,冷蔵用蒸発器除霜運転が実施される際の圧縮機24,冷蔵用ファン9aの回転速度は通常運転モードと同じ回転速度が選択される。
冷凍室7が高負荷で(ステップS301がYes),冷蔵室2が高負荷になっていない場合は,ステップS302がNoとなり,次に冷媒回収運転の要否が判定される(ステップS401)。
本実施例の冷蔵庫では,図7のステップS102,S110,S119の何れかが成立した時点における運転が冷凍野菜運転または冷凍運転の場合にステップS401が成立する。ステップS401が成立した場合(Yes),三方弁52を状態3(全閉モード)とし,直前の冷凍野菜運転または冷凍運転における回転速度で圧縮機24を駆動して,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行い(ステップS402),続いて「高負荷モード冷蔵運転」が選択される(ステップS403)。ステップS401が成立しない場合(No)は,冷媒回収運転を実施せずに「高負荷モード冷蔵運転」が選択される(ステップS403)。本実施例の冷蔵庫では,「高負荷モード冷蔵運転」が選択された場合,圧縮機24は速度3(2500min-1),冷蔵用ファン9aは速度3(2000min-1)に回転速度が設定される。なお,冷凍野菜運転,冷凍運転,冷蔵用蒸発器除霜運転が実施される際の圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9bの回転速度は通常運転モードと同じ回転速度が選択される。
冷凍室7と冷蔵室2が共に高負荷(ステップS301とステップS302がYes)の場合,次に冷媒回収運転の要否が判定される(ステップS303)。本実施例の冷蔵庫では,図7のステップS102,S110,S119の何れかが成立した時点における運転が冷蔵運転の場合にステップS303が成立する。ステップS303が成立した場合(Yes),三方弁52を状態3(全閉モード)とし,直前の冷蔵運転における回転速度で圧縮機24を駆動して,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行い(ステップS304),続いて「過負荷モード」が選択される(ステップS305)。本実施例の冷蔵庫では,「過負荷モード」が選択された場合,冷蔵運転が実施される際の回転速度として,圧縮機24は速度3(2500min-1),冷蔵用ファン9aは速度3(2000min-1),冷凍野菜運転または冷凍運転が実施される際の回転速度として,圧縮機24は速度4(3600min-1),冷凍用ファン9bは速度2(2000min-1)に設定される。なお,冷蔵用蒸発器除霜運転が実施される際の冷蔵用ファン9aの回転速度は通常運転モードと同じ回転速度が選択される。
ステップS305において「過負荷モード」が選択されると,三方弁52を状態2(冷凍モード)とし,圧縮機24を速度4(3600min-1),冷凍用ファン9bを速度2(2000min-1)で駆動し,野菜室ダンパ19を開放して冷凍野菜運転が開始され(ステップS306),続いて冷蔵用ファン9aを速度1(900min-1)で駆動して,冷蔵用蒸発器除霜運転が実施される。
次に野菜室冷却終了条件が成立しているかが判定される(ステップS308)。本実施例の冷蔵庫では,野菜室温度センサ43が検知する野菜室温度TVが,野菜室冷却終了温度TV_off(=6℃)以下(TV≦TV_off)の場合にステップS307が成立する。ステップS308が成立した場合(Yes),野菜室ダンパ19が閉鎖されて冷凍野菜運転が終了し,冷凍室7を冷却する冷凍運転に移行する(ステップS309)。
ステップS308が成立しない場合(No),続いて冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件が成立しているかが判定される(ステップS310)。冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件は,冷蔵用蒸発器温度TR_evpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度TRD_off(=2℃)以上(TR_evp≧TRD_off)の場合に成立する。ステップS310が成立した場合(Yes),冷蔵用ファン9aが停止されて,冷蔵用蒸発器除霜運転が終了する(ステップS311)。
ステップS310が成立しない場合(No),続いて冷凍野菜運転,または,冷凍運転終了条件が成立しているかが判定される(ステップS312)。本実施例の冷蔵庫では,野菜室ダンパ19が閉鎖状態,且つ,冷凍室温度TFが冷凍運転終了温度TF_off(=-22.5℃)以下(TF≧TF_off)の場合,または,冷凍野菜運転,または,冷凍運転の継続時間が所定値(42.5分)に到達した場合にステップS312が成立する。ステップS312が成立しない場合(No),ステップS308の判定に戻る。
ステップS312が成立した場合(Yes),三方弁52を状態3(全閉モード)とし,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行う(ステップS313)。このとき,冷凍用ファン9bは駆動を継続する。
続いて通常運転モードに移行するかの判定が行われる(ステップS314)。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが冷蔵運転開始温度TR_on(=5.5℃)以下(TR≦T_on),冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,冷凍野菜運転開始温度TF_on(=-18℃)以下(TR≦TF_on)が同時に満たされている場合にステップS314が成立し(Yes),通常運転モードに戻る(図7のステップS101)
ステップS314が成立しない場合(No),続いて冷蔵運転が行われる(ステップS315)。冷蔵運転は,三方弁52を状態1(冷蔵モード)とし,圧縮機24を速度3(2500min-1)で駆動,冷蔵用ファン9aを速度3(2000 min-1)で駆動,冷凍用ファン9bを停止,野菜室ダンパ19を閉鎖することで開始する。
次に,冷凍室7が高負荷であるかが判定される(ステップS316)。本実施例の冷蔵庫では,冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,高負荷判定温度TF_high(=-10℃)以上(TF≧TF_high)の場合にステップS316が成立する(Yes)。ステップS316が成立した場合(Yes)は,冷媒回収運転が行われ(ステップS304),過負荷モードに移行する(ステップS305)。なお,冷蔵運転が開始されてから所定時間(5分)が経過するまでは,ステップS316の判定はスキップされる。
ステップS316が成立しない場合(No)は,冷蔵運転終了条件が成立しているかの判定(ステップS317)に移行する。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度TRが冷蔵運転終了温度TR_off(=2.5℃)以下(TR≦TR_off)の場合,または,過負荷モードにおいて冷蔵運転の継続時間が所定値(20.5分)に到達した場合にステップS317が成立する。ステップS317が成立しない場合(No)は,再びステップS316の判定に戻り,ステップS317が成立した場合(Yes)は,三方弁52を状態3(全閉モード)とし,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行う(ステップS318)。このとき,冷蔵用ファン9aは駆動を継続する。
続いて通常運転モードに移行するかの判定が行われる(ステップS319)。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが冷蔵運転開始温度TR_on(=5.5℃)以下(TR≦TR_on),冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,冷凍野菜運転開始温度TF_on(=-18℃)以下(TR≦TF_on)が同時に満たされている場合にステップS318が成立し(Yes),通常運転モードに戻る(図7のステップS109)。
また,ステップS403で「高負荷モード冷蔵運転」が選択された場合は,ステップS315に移行して冷蔵運転が開始され,ステップS503で「高負荷モード冷凍野菜/冷凍運転」が選択された場合は,ステップS306に移行して冷凍野菜運転が開始され,以降は上述の制御フローに従って制御がなされる。
なお本実施例の冷蔵庫では,ステップS105,ステップS301における冷媒回収運転は,圧縮機24が速度1(800min-1),冷蔵用ファン9aが速度2(1500min-1)で駆動している場合は2分間,圧縮機24が速度3(2500min-1),冷蔵用ファン9aが速度3(2000min-1)で駆動している場は1.5分間実施する。また,ステップS112,ステップS302における冷媒回収運転は,圧縮機24が速度2(1400min-1),冷凍用ファン9bが速度1(1200min-1)で駆動している場合は2.5分間,圧縮機24が速度4(1400min-1),冷凍用ファン9bが速度2(2000min-1)で駆動している場合は1.5分間実施する。
通常運転モードにおける冷蔵運転中の冷蔵用ファン9aの回転速度(速度2=1500min-1)での冷蔵室2の循環風量は0.52m3/minである。また,冷蔵用蒸発器除霜運転中の冷蔵用ファン9aの回転速度(速度1=900min-1)での冷蔵室2の循環風量は0.31m3/minである。
通常運転モードにおける冷凍用ファン9bの回転速度(速度1=1200min-1)での冷凍室7の循環風量は野菜室ダンパ19が開放された状態(冷凍野菜運転中)では0.55m3/min,野菜室ダンパ19が閉鎖された状態(冷凍運転中)では0.6m3/minであり,野菜室ダンパ19が開放された状態(冷凍野菜運転中)の野菜室6の循環風量は0.07m3/minである。
高負荷モード,または,過負荷モードにおける冷蔵運転中の冷蔵用ファン9aの回転速度(速度3=2000min-1)における冷蔵室2の循環風量は0.52m3/minである。また,高負荷モードにおける冷凍用ファン9bの回転速度(速度2=2000min-1)での冷凍室7の循環風量は野菜室ダンパ19が開放された状態(冷凍野菜運転中)では0.92m3/min,野菜室ダンパ19が閉鎖された状態(冷凍運転中)では1.0m3/minであり,野菜室ダンパ19が開放された状態(冷凍野菜運転中)の野菜室6の循環風量は0.12m3/minである。
図9は本実施例に係る冷蔵庫を,32℃,相対湿度70%の環境下に設置し,通常運転モードによる安定冷却運転が行われている状態を表すタイムチャートである。なお冷蔵室2の維持温度レベルは「中」,冷凍室7の維持温度レベルは「中」,チルドルーム35は「温度レベル1」に設定されている。
経過時間t0は冷蔵室2を冷却する冷蔵運転が開始(図7のステップS101)された経過時間である。通常運転モードにおける冷蔵運転では,三方弁52が状態1(冷蔵モード)に制御され,圧縮機24が速度1(800min-1)で駆動されて冷蔵用蒸発器14aに冷媒が供給されることで,冷蔵用蒸発器14aの温度が低下している。この状態で冷蔵用ファン9aが速度2(1500min-1)で駆動されることで,冷蔵用蒸発器14aを通過して低温になった空気が冷蔵室吐出口11a(図2参照)から冷蔵室2内に吹き出し,冷蔵室2が冷却されて温度が低下している。
ここで,冷蔵運転中の冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度は-6℃であり,後述する冷凍運転中の冷凍用蒸発器14bの時間平均温度の-24℃よりも高くしている。一般に蒸発器温度(蒸発温度)が高い方が,冷凍サイクル成績係数(圧縮機24の入力に対する吸熱量の割合)が高く,省エネルギー性能が高い。冷凍室7は冷凍温度に維持するために冷凍用蒸発器14bの温度を低温にする必要があるが,冷蔵室2は冷蔵温度に維持すれば良いので,冷蔵用蒸発器14aの温度を高めるように冷蔵用ファン9a及び圧縮機24の回転速度を制御して,省エネルギー性能を向上している。経過時間t1で冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが冷蔵運転終了温度TR_offまで低下したことで,冷蔵運転から冷媒回収運転に切換わっている(図7のステップS104,S105)。冷媒回収運転では三方弁52が状態3(全閉モード)に制御され,圧縮機24が速度1(800min-1),冷蔵用ファン9aが速度2(1500min-1)で駆動されて,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒が2分間回収される(ΔTA1=2min)。これにより,次の冷凍野菜運転及び冷凍運転での冷媒不足による冷却効率低下を抑制することができる。なお,このとき冷蔵用ファン9aが駆動されることで,冷蔵用蒸発器14a内の残留冷媒が冷蔵室2の冷却に活用されるとともに,冷蔵室2内の空気による加熱で,冷蔵用蒸発器14a内の圧力低下が緩和される。これにより,圧縮機24の吸込冷媒の比体積増加が抑制され,比較的短い時間で多くの冷媒を回収できるようになり,冷却効率を高めることができる。
冷媒回収運転が終わると(経過時間t2),冷蔵用蒸発器除霜運転を実施するかが判定され,ここではチルドルーム35の設定が「温度レベル1」となっているため,冷蔵用ファン9aが速度1(900min-1)で駆動されて冷蔵用蒸発器除霜運転が行われている(図7のステップS106,S107)。これにより冷蔵用蒸発器14aの温度が上昇するとともに,霜や冷蔵用蒸発器14aの蓄冷熱による冷却効果によって,冷蔵室2の温度上昇が緩和される。また経過時間t2で冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが,冷凍野菜運転開始温度TF_on以上となっていることから冷凍野菜運転が開始され,野菜室6が冷却され野菜室温度TVが低下している。冷凍野菜運転では,三方弁52が状態2(冷凍モード)に制御され,圧縮機24が速度2(1400min-1)で駆動されて冷凍用蒸発器14bに冷媒が供給されて,冷凍用蒸発器14bが低温になる。この状態で野菜室ダンパ19が開放され,冷凍用ファン9bが速度1(1200min-1)で駆動されることで,冷凍用蒸発器14bを通過して低温になった空気で冷凍室7と野菜室6が冷却される。
経過時間t3で野菜室温度センサ43が検知する野菜室温度TVが野菜室冷却終了温度TV_offに到達したことにより,野菜室ダンパ19が閉鎖され,冷凍運転に移行している(図7のステップS111,S112)。
続いて経過時間t4に冷蔵用蒸発器温度センサ40aが検知する冷蔵用蒸発器14aの温度TRevpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度TRD_offに到達したことにより,冷蔵用ファン9aが停止され,冷蔵用蒸発器除霜運転が終了している(図7のステップS113,S114)。
経過時間t5で冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFが冷凍運転終了温度TF_offに到達し,且つ,野菜室ダンパ19が閉鎖されていることから,冷凍運転が終了している(図7のステップS115)。このとき冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRが冷蔵運転開始温度TR_on以上に達していることから,冷蔵運転開始条件が成立し(図7のステップS116),冷媒回収運転が行われている(図7のステップS117)。冷媒回収運転では,三方弁52が状態3(全閉モード)に制御され,圧縮機24が速度2(1400min-1),冷凍用ファン9bが速度1(1200min-1)で駆動されて,冷凍用蒸発器14b内の冷媒が1.5分間回収される(ΔtB1=1.5min)。これにより,次の冷蔵運転での冷媒不足による冷却効率低下を抑制することができる。なお,このとき冷凍用ファン9bを駆動することで,冷凍用蒸発器14b内の残留冷媒を冷凍室7の冷却に活用するとともに,冷凍室7内の空気による加熱で,冷凍用蒸発器14b内の圧力低下が緩和される。これにより圧縮機24の吸込冷媒の比体積増加が抑制され,比較的短い時間で多くの冷媒を回収できるようになり,冷却効率を高めることができる。
冷凍室7が冷却される運転は,冷凍野菜運転(t2~t3),冷凍運転(t3~t5),冷媒回収運転(t5~t6)であり,これらの運転が行われている間の冷凍用蒸発器14bの時間平均温度は約-24℃となるように,冷凍用ファン9b及び圧縮機24が制御されている。また,冷蔵用ファン9aが駆動状態となっている冷凍運転、冷媒回収運転及び冷蔵用蒸発器除霜運転が行われている間の冷蔵室吐出空気温度の時間平均値は,-1.5℃であり,冷凍室維持温度TF_keep(-20℃)と冷蔵室維持温度TR_keep(4℃)の算術平均値(-8℃)より高い温度となっている。
冷媒回収運転が終了した経過時間t6より再び,冷蔵運転が開始され(図7のステップS101),以後周期的に上述の運転が繰り返され,冷蔵室2は約4℃,冷凍室7は約-20℃,野菜室は約7℃に維持される。
図10は本実施例に係る冷蔵庫を,32℃の環境下に設置しJISC9801-3:2015に定められた負荷冷却試験を実施した際の運転状態を表すタイムチャートである。冷蔵庫では,扉の開閉等が行われない状態で,安定して冷却運転が行われる状態だけでなく,食品等の実用的な負荷が投入された際に良好に冷却されることが重要となる。一般的な冷蔵庫の使われ方を十分考慮した上で,JISC9801-3:2015には実用的な負荷(以下,実用負荷と呼ぶ)が投入された場合を想定した「負荷冷却試験」が規定されており、実用負荷として,外気温度と等温の水を用い,冷蔵温度帯室(冷蔵室と野菜室)の定格内容積1Lあたり12g,冷凍度帯室(冷凍室)の定格内容積1Lあたり4gの水をそれぞれ冷蔵室と冷凍室に投入することが定められている。
安定冷却運転における冷凍運転(図9参照)が行われている状態の経過時間t0において,JISC9801-3:2015に定められた手順に従って冷蔵室2の扉2aを1分間開放し,冷蔵温度帯室(冷蔵室2と野菜室6)の実用負荷として32℃の水5064g(冷蔵温度帯室(冷蔵室2及び野菜室6)の定格内容積422L分の負荷)を500mLペットボトルに封入して冷蔵室2内の所定位置に設置している。続いて,冷凍室7(下段冷凍室5)の扉5aを1分間開放し,32℃の水720g(冷凍温度帯室(冷凍室7)の定格内容積180L分の負荷)を冷凍室7(下段冷凍室5)内の所定位置に設置している。
これにより,まず冷蔵室温度TRが上昇し,冷蔵室高負荷判定温度TR_highを超えたために,冷蔵室2が高負荷であると判定される(図7のステップS110)。この時点では,冷蔵室温度TRは冷蔵室高負荷判定温度TR_highを超えて高負荷と判定されるが,冷凍室温度TFは高負荷判定温度TF_highに達していない。したがって,図8のステップS301は成立するが(Yes),ステップS302は成立しない(No)ため,次に冷媒回収運転の要否が判定される(図8のステップS401)。ステップS110の判定がなされた際の運転モードが冷凍運転となるため,ここでは冷媒回収運転要と判定され(図8のステップ401がYes),圧縮機24が速度2(1400min-1),冷凍用ファン9bが速度1(1200min-1)で駆動された状態で,冷凍用蒸発器14b内の冷媒が2.5分間(ΔtA2=2.5min)回収される冷媒回収運転が行われている(図8のステップS402)。このとき,冷凍用ファン9bが駆動されることで,冷凍用蒸発器14b内の残留冷媒の吸熱作用によって冷凍室7が冷却される(冷凍室冷却運転(F))。
経過時間t0’で冷媒回収運転が終了し,続いて,三方弁52が状態1(冷蔵モード)に制御され,圧縮機24が速度3(2500min-1),冷蔵用ファン9aが速度3(2000min-1)で駆動され,冷凍用ファン9bは停止状態となる高負荷モード冷蔵運転が行われている(図8のステップS403,S315)。
冷凍室7(下段冷凍室5)に投入した実用負荷によって,冷凍室温度TFが上昇して高負荷判定温度TF_highを超えるが,冷蔵運転移行後5分経過するまでは,図8に示すステップS316が成立しないため,高負荷モード冷蔵運転が継続される。
経過時間t1で冷蔵運転移行条件成立後の最低経過時間である5分が経過したことによって,図8に示すステップS316が成立し(Yes),冷媒回収運転(図8のステップS304)を経て,経過時間t1において過負荷モードに移行している(図8のステップS305)。このときの冷媒回収運転では,三方弁52が状態3(全閉モード)に制御され,圧縮機24が速度3(2500min-1),冷蔵用ファン9aが速度3(2000min-1)で駆動されて,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒が1.5分間回収される(ΔtB2=1.5min)。この冷媒回収運転は経過時間t1’で完了する。冷媒回収運転中に,冷蔵用ファン9aが駆動されることで,冷蔵用蒸発器14a内の残留冷媒の吸熱作用によって冷蔵室2が冷却される。
この経過時間t0’から経過時間t1’に至るまでは,冷蔵室が冷却される運転状態(冷蔵室冷却運転(R))となる。
経過時間t1から過負荷モードとなり,冷凍室7を冷却する冷凍野菜運転が開始される(図8のステップS306)。過負荷モードの冷凍野菜運転は,三方弁が状態2(冷凍モード)に制御され,圧縮機24が速度4(3600min-1),冷凍用ファン9bが速度2(2000min-1)で駆動され,野菜室ダンパ19が開放された状態で行われる。この運転により冷凍室7及び野菜室6が冷却される。また,このとき冷蔵用ファン9aが速度1(900min-1)で駆動されることで,冷蔵用蒸発器除霜運転が実施される(図8のステップS307)。経過時間t2において,冷蔵用蒸発器温度センサ40aが検知する冷蔵用蒸発器14aの温度TRevpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度TRD_offに到達したことにより,冷蔵用ファン9aが停止され,冷蔵用蒸発器除霜運転が終了している(図8のステップS310,S311)。
経過時間t3において,野菜室温度センサ43が検知する野菜室温度TVが,野菜室冷却終了温度TV_off以下(TV≦TV_off)に到達したことによって野菜室ダンパ19が閉鎖され冷凍運転に移行している(図8のステップS308,S309)。
経過時間t4において,過負荷モードの冷凍野菜運転開始からの経過時間が所定値(42.5min)に到達したため,冷凍野菜/冷凍運転終了条件が成立し(図8のステップS312),冷凍運転が終了され,冷媒回収運転に移行している。このときの冷媒回収運転は,三方弁52が状態3(全閉モード)に制御され,圧縮機24が速度4(3600min-1),冷凍用ファン9bが速度2(2000min-1)で駆動されて,冷凍用蒸発器14b内の冷媒が1.5分間回収される(ΔtC2=1.5min)。この冷媒回収運転は経過時間t4’で完了する。冷媒回収運転中に,冷凍用ファン9bが駆動されることで,冷凍用蒸発器14b内の残留冷媒の吸熱作用によって冷凍室7が冷却される。以上から,以上から,経過時間t1’~t4’は冷凍室7が冷却される運転(冷凍室冷却運転(F))となる。
続いて,通常運転モードへの移行が判定されるが(図8のステップS312),経過時間t4’においては冷蔵室温度TR,冷凍室温度TFともに冷蔵運転開始温度TR_on及び冷凍野菜運転開始温度TF_onより高いため成立せず,過負荷モードの冷蔵運転に移行する(図8のステップS315)。これにより,三方弁52が状態1(冷蔵モード)に制御され,圧縮機24が速度3(2500min-1),冷蔵用ファン9aが速度3(2000min-1)で駆動され,冷凍用ファン9bは停止状態となる過負荷モードの冷蔵運転が行われている(図8のステップS315,S315)。
経過時間t5において過負荷モードの冷蔵運転の継続時間が所定値(20.5min)に到達したことにより,冷蔵運転終了条件が成立し(図8のステップS317),冷媒回収運転に移行している(図8のステップS318)。このときの冷媒回収運転は,三方弁52が状態3(全閉モード)に制御され,圧縮機24が速度3(2500min-1),冷蔵用ファン9aが速度3(2000min-1)で駆動されて,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒が1.5分間回収される。この冷媒回収運転は経過時間t5’で完了する(経過時間t1~t1’で実施される冷媒回収運転と同様の制御)。以上から,経過時間t4’~t5’は冷蔵室2が冷却される運転(冷蔵室冷却運転(R))となる。
以後は経過時間t1’~t5’と同様の制御により冷蔵室2,冷凍室7,野菜室6の冷却が行われている。具体的には,経過時間t5~t8,t9~t12,t13~t17が冷凍室冷却運転,経過時間t8~t9,t12~t13,t17~t19が冷蔵室冷却運転となる。また,t5~t6,t9~t10,t13~t14には冷蔵用蒸発器除霜運転が実施されている。
実用負荷が十分冷却されたか否かは、冷蔵室温度TRが冷蔵室維持温度TRkeep+1℃以下,冷凍室温度TFが冷凍室維持温度TFkeep+1℃以下にまで冷却されたか否かで判定できる。冷蔵室維持温度TRkeep+1℃以下と冷凍室維持温度TFkeep+1℃以下は同時に満たしていなくてもよい。本明細書では、冷蔵室2に負荷が投入された時点から、冷蔵室2と冷凍室7に投入された実用負荷が十分に冷却されたとみなせる状態に至るまでを負荷冷却区間と呼ぶ。本実施例の冷蔵庫では、図10に示すt16で冷凍室温度TFが冷凍室維持温度TF_keep+1℃に到達し、t18で冷蔵室温度TRが冷蔵室維持温度TR_keep+1℃に到達しているので、実用負荷が冷蔵室2に投入されたt0から、冷蔵室2と冷凍室7の実用負荷が十分に冷却されたとみなせるt18までが負荷冷却区間となる。
ここで、本実施例の冷蔵庫では、冷蔵室2と冷凍室7に投入された実用負荷の冷却状態は、冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度TRと、冷凍室温度センサ42が検知する冷凍室温度TFにより判別できるようにしているが、より確実に実用負荷の冷却状態を判別するために、JISC9801-1:2015に定められた方法で冷蔵室2と,冷凍室7を代表する温度を測定し、その温度に基づいて実用負荷の冷却状態を判別してもよい。
経過時間t19においては,通常運転モードに移行するかの判定が行われ(図8のステップS319),冷蔵室温度TRが冷蔵運転開始温度TR_on以下(TR≦TR_on),冷凍室温度TFが冷凍野菜運転開始温度TF_on以下(TR≦TF_on)を同時に満たしているので,過負荷モードが終了し(図8のステップS319がYes),t19以降は通常運転モードによる冷却が行われている。
このように,t0において冷蔵室2と冷凍室7に実用負荷を投入することによって,冷蔵室2と冷凍室7の何れも負荷が高い状態となるため過負荷モードとなり,冷蔵室2が冷却される運転(冷蔵室冷却運転)と,冷凍室7が冷却される運転(冷凍室冷却運転)が交互に行われ,t18で実用負荷が十分に冷却され,通常モードに戻っている。
t1718で実用負荷が十分に冷却されるまでに,冷凍室温度TFは,t1においてTF1(=-7℃),t5’においてTF2(=-11℃),t9においてTF3(=-14℃),t13においてTF4(=-16.5℃)の極大値を取るが,各極大値は漸次低下している(TF1>TF2>TF3>TF4)。
また,負荷冷却区間(t0~t18)の運転において,冷蔵室2が冷却される冷蔵室冷却運転(t0’~t1’,t4’~t5’,t8~t9,t12~t13,t17~t18)における冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度TRevp_aveは-6.0℃,冷凍室7が冷却される冷凍室冷却運転(t0~t0’,t1’~t4’,t5’~t8,t9~t12,t13~t17)における冷凍用蒸発器14bの時間平均温度TFevp_aveは-23.0℃であり,TRevp_ave>TFevp_aveとなっている。
さらに,負荷を投入した時点から,通常運転モードが再開されるまで(t0~t17)の運転における,冷蔵室冷却運転となる時間比率(t0~t17の運転におけるt0’~t1’,t4’~t5’,t8~t9,t12~t13,t16~t17の時間割合)RR=34%,冷凍室7が冷却される冷凍室野菜室冷却運転または冷凍室冷却運転となる時間比率(t0~t17の運転におけるt0~t0’,t1’~t4’,t5’~t8,t9~t12,t13~t16の時間割合)RF=66%であり両者の比RF/RR=1.94となる。一方,外気温度Tout (=32℃),冷蔵用蒸発器14aの空気側伝熱面積ARevp (=0.993m2),冷蔵用蒸発器14aの冷蔵室冷却運転中の時間平均温度をTRevp_ave (=-6.0℃),冷蔵室維持温度をTR_keep (=4.0℃),冷凍用蒸発器14bの空気側伝熱面積AFevp (=1.146m2),冷凍用蒸発器14bの冷凍室冷却運転中の時間平均温度をTFevp_ave (=-23.0℃,冷凍室維持温度をTF_keep (=-20℃),冷蔵温度帯室(冷蔵室及び野菜室)の定格内容積VR (=422L ),冷凍室定格内容積VF (=180L),水の比熱をCW(=4.186kJ/kg℃ ),氷の比熱をCi(=2.05kJ/kg℃ ),水の凝固潜熱LW (=333.6kJ/kg)として, {ARevp×(TR_keep-TRevp_ave)}/{AFevp×(TF_keep-TFevp_ave)}×{4×VF×(CW×Tout-Ci×TF_keep+LW)}/[12×VR×{CW×(Tout-TR_keep)}]を算出すると1.78となり,RF/RR(=1.94)の方が高くなっている。このように制御することで,大容量の冷凍室と,実用的な冷却性能の両立を図ることができる(詳細は後述)。
以上で,本実施例の冷蔵庫の構成と制御方法を説明したが,次に,本実施形態の冷蔵庫の奏する効果について説明する。
本実施例の冷蔵庫は,冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室)と,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)と,冷凍室7を備え,冷蔵室2の背部に冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)及び冷蔵用送風機9a(第一送風機)と,冷凍室7の背部に冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)及び冷凍用ファン9b(第二送風機)を備え,第一送風機の駆動により冷蔵用蒸発器14aと熱交換した冷却空気を冷蔵室2に流通させる冷蔵風路111(第一風路)と,冷凍用ファン9bの駆動により冷凍用蒸発器14bと熱交換した冷却空気を冷凍室7及び野菜室6に流通させる冷凍野菜風路112(第二風路)を備え,第一風路と第二風路の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備えている。これにより,野菜室と冷蔵室とを独立して冷却できるため,例えば野菜室に温度が高い食品を収納した,あるいは,食品等を挟み込むことにより野菜室扉と断熱箱体の間に隙間が生じているといった事由により野菜室の負荷が大きくなった場合においても,野菜室と一緒に冷蔵室を冷却する必要がなく,冷蔵室を過度に冷却することが抑制できるので,冷蔵室の冷却効率低下を防ぐことが可能である。また,特許文献1のように隔壁などを介して冷凍室の冷気で野菜室を間接的に冷却する構成と異なり,冷凍用蒸発器と熱交換した空気を野菜室に送風して冷却できるので,冷凍室を過度に低温に維持することによる冷凍室の冷却効率低下も防ぐことが可能である。すなわち,一部の貯蔵室の負荷を冷却するために,冷蔵庫全体としての冷却効率が低下するという問題が生じ難い冷蔵庫,すなわち,冷蔵庫全体としての冷却効率が高い冷蔵庫となる。
本実施例の冷蔵庫は,冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),冷凍室7,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)のうち,定格内容積が最大の冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室)に冷蔵用蒸発器14aと熱交換した冷却空気を冷蔵室2に流通させる冷蔵風路111(第一風路)と,冷凍用蒸発器14bと熱交換した冷却空気を冷凍室7及び野菜室6に流通させる冷凍野菜風路112(第二風路)を備え,冷蔵風路111と冷凍野菜風路112の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備えている。一般に,定格内容積が大きいほどユーザーはより多くの食品を収納することができるため,定格内容積が大きい貯蔵室は冷却負荷が大きくなる場合が多い。したがって,冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),冷凍室7,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)のうち,定格内容積が最大となる冷蔵室2に冷却空気を流す冷蔵風路111と,冷凍野菜風路112の間で空気が流通しないように空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を設けることで,定格内容積が最大の貯蔵室の負荷の影響によって,他の冷凍室や野菜室の食品等が温められてしまうといった事態が生じ難くすることができ,冷却効率が高い冷蔵庫となる。
本実施例の冷蔵庫は,最上段の貯蔵室である冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室)に冷却空気を流通させる冷蔵風路111(第一風路)と,冷蔵室2の下段に位置する冷凍室7と野菜室6に冷却空気を流通させる冷凍野菜風路112(第二風路)を備え,冷蔵風路111と冷凍野菜風路112の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備えている。一般に,冷蔵庫が設置される環境(例えばキッチン等)では,空調機等により積極的な空気の攪拌が行われていない場合には,上下方向の温度分布(温度成層)が形成され,上方ほど空気温度が高くなる傾向が生じる。したがって,最上部の貯蔵室は,扉の開閉操作時により温度が高い空気が流入しやすく,負荷が大きくなりやすい。そこで,本実施例の冷蔵庫は,最上段の貯蔵室である冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室)に冷却空気を流通させる冷蔵風路111と,その下部の貯蔵室である冷凍室7及び野菜室6に冷却空気を流通させる冷凍野菜風路112の間で空気が流通しないように空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備えることで,最上部の貯蔵室の負荷の影響によって,他の貯蔵室(冷凍室や野菜室)の食品等が温められてしまうといった事態が生じ難くすることができ,冷却効率が高い冷蔵庫となる。
なお本実施例の冷蔵庫のように,上方から冷蔵室(冷凍温度帯室),冷凍室(冷凍温度帯室),野菜室(冷蔵温度帯室)の順に配置する冷蔵庫においては,最上段の冷蔵室(冷凍温度帯室)と隣接する冷凍室は低温に維持される貯蔵室となるため,冷蔵室に流入した負荷の影響により冷凍室の食品等が温められてしまうといった事態が生じやすい。すなわち,冷蔵風路111と冷凍野菜風路112の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備えることは,上方から冷蔵室(冷凍温度帯室),冷凍室(冷凍温度帯室),野菜室(冷蔵温度帯室)の順に配置する冷蔵庫において特に有効となる。
本実施例の冷蔵庫は,シール部材(パッキン)の全周長が最大となる貯蔵室である冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室)に冷却空気を流通させる冷蔵風路111(第一風路)と,冷凍室7と野菜室6に冷却空気を流通させる冷凍野菜風路112(第二風路)を備え,冷蔵風路111と冷凍野菜風路112の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備えている。扉シール部は,食品や食品包装材の挟み込み等によって微小な隙間が生じ,外気と貯蔵室内空気の流入出が起きて負荷が大きくなることがある。扉と断熱箱体の間のシール長さが長い,すなわち,シール部材の全周長が長いほど,そのような事態が発生しやすくなるため,本実施例の冷蔵庫は,シール部材(パッキン)の全周長が最大となる貯蔵室である冷蔵室2に冷却空気を流通させる冷蔵風路111と,冷蔵室2の下段に位置する冷凍室7と野菜室6に冷却空気を流通させる冷凍野菜風路112の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備えることで,シール部材(パッキン)の全周長が最大となる貯蔵室の負荷の影響によって,他の貯蔵室(冷凍室や野菜室)の食品等が温められてしまうといった事態が生じ難くすることができ,冷却効率が高い冷蔵庫となる。
本実施例の冷蔵庫は,安定冷却運転中において,冷蔵室2の維持温度をTR_keep(設定「中」の場合は約4℃),冷凍室7の維持温度をTF_keep(設定「中」の場合は約-20℃),冷蔵運転時の冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度をTRevp_aveとすると,以下の(式1)が満足されるように,蒸発器温度調整手段(圧縮機24及び冷蔵用ファン9a)の回転速度を制御している。
一般に,冷凍サイクルでは,冷却運転時の蒸発器の時間平均温度が高くなるように圧縮機と蒸発器に送風する送風機の回転速度を制御すると,冷凍サイクル成績係数が向上して冷却効率が高くなる。従って維持される温度が高い冷蔵室を冷却する際の蒸発器の時間平均温度を上げることが冷却効率向上に有効となる。しかしながら,冷蔵室を冷却する冷却空気が,冷凍室に流通する経路が存在する場合,低温に維持される冷凍室の温度が上昇してしまうため,冷蔵運転時の蒸発器の時間平均温度を十分高くすることができなかった。そこで,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵風路111と冷凍野菜風路112の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)を備え,且つ,圧縮機24及び冷蔵用ファン9aの回転速度を制御することで,冷蔵運転時の冷蔵用蒸発器の時間平均温度を十分高め,(式1)に示す関係を満足するようにして,冷却効率が高い冷蔵庫としている。なお,冷凍室が複数存在し,その維持温度が複数にわたる場合は,最も低温となる貯蔵室の温度を(式1)におけるTF_keepとすれば良い。
本実施例の冷蔵庫は,安定冷却運転中において,冷蔵室維持温度TR_keepと冷蔵運転時の冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度TRevp_aveの差をΔT(=TR_keep-TRevp_ave),蒸発器温度に対する冷凍サイクル理論成績係数をCOPthとした場合に,(式2)を満足するように蒸発器温度調整手段(圧縮機24及び冷蔵用ファン9a)を制御している。これにより,風量向上の有効性が高い範囲で効率よく冷却運転を実施することができる。
理由を図11及び図12を参照しながら説明する。図11(a)は,理論サイクル成績係数COPth(圧縮機効率100%時の成績係数)と冷蔵用蒸発器温度の関係及び,冷蔵室維持温度TR_keepと,蒸発器の温度Tevpの差の逆数ΔT-1(=1/(TR_keep-Tevp))を示すグラフである。また,図11(b)は,ΔT-1 と COPthの差を蒸発器温度Tevpで微分した関数(=d(COPth)/dTevp - d(ΔT-1)/dTevp)を表すグラフである。
ここで,図11(a)に示す理論成績係数COPthの求め方について図12を参照しながら説明する。図12は一般的な冷蔵庫の冷凍サイクルの動作状態を表すモリエル線図である。配管における圧力損失を無視し,低圧側(蒸発器側)における圧力は,蒸発器温度(蒸発温度)により定まる圧力で一定とすることで,圧縮機の吸い込み冷媒の状態(状態1)を定める。また,高圧側(凝縮器側)は,外気温度を凝縮温度(二相域の温度)として,凝縮温度により定まる圧力で一定とする。また,凝縮器出口(キャピラリチューブ入口)の冷媒状態を飽和液(状態3),蒸発器出口の冷媒状態を飽和蒸気(状態5),キャピラリチューブと蒸発器から圧縮機に至る配管と完全に熱交換(図4における接触部57aの作用)するものとして,圧縮機吸い込み冷媒の温度を凝縮器出口温度(状態1)とする。また,圧縮機の効率を100%(断熱圧縮)とすることで,圧縮機吐出の状態(状態2)が定まり,キャピラリチューブと蒸発器から圧縮機に至る配管と完全に熱交換するという仮定(図4中のΔh1=Δh2)から,蒸発器入口の冷媒状態(状態4)が定まる。これらにより,外気温度と,蒸発器温度を定めることで,冷媒物性に基づいて理論成績係数COPthを理論冷却能力Qthと理論圧縮動力Wthの比(COPth=Qth/Wth)として算出することができる。この理論成績係数COPthは,圧縮機の効率に依らない冷却効率を表す指標となる。なお,図11(a)に示す理論成績係数COPthはと蒸発器温度Tevpの関係は,冷媒をイソブタン,外気温度Tout=32℃として算出したものである。
また,良好な冷却を行うためには,蒸発器において所定の交換熱量を得る必要がある。温度効率(蒸発器入口空気温度と蒸発器出口空気温度の差を蒸発器流入空気温度と蒸発器温度との差で除した値)の変化を無視すると,所定交換熱量を得るための風量は,空気温度と,蒸発器温度の差の逆数に比例するという関係が導かれる。空気温度として冷蔵室維持温度TR_keepを用いることで,図11(a)に示すΔT-1が算出され,所定交換熱量を得るための風量の大小を表す指標となる。なお,図11(a)に示すΔT-1は冷蔵室維持温度TR_keepを4℃として算出している。
図11(a)に示すCOPthとΔT-1は,ともに蒸発器温度Tevpの上昇に対して単調に上昇しているが,両者の勾配は異なる。図11(b)は,COPthとΔT-1 の差を蒸発器温度Tevpで微分した関数であり,両者の勾配の差を表している。すなわち図11(b)のグラフにおいて,勾配が正となる範囲(蒸発器温度Tevpが約-1℃より低い範囲)においては,蒸発器温度Tevpの上昇に対するCOPthの増加率の方が,蒸発器温度Tevpの上昇に対するΔT-1の増加率よりも高く,COPthを向上させるように蒸発器温度Tevpを上昇させることが有利といえる。一方,勾配が負となる範囲(蒸発器温度Tevpが約-1℃より高い範囲)では,蒸発器温度Tevpの上昇に対するCOPthの増加率の方が,蒸発器温度Tevpの上昇に対するΔT-1の増加率より低いことを表しており,蒸発器温度Tevpを上げるために必要となる風量向上の有効性が低下しているといえる。すなわち,図11(b)のグラフが正の勾配の範囲となるように,d2(COPth)/dTevp
2 - d2(ΔT-1)/dTevp
2≧0となるように制御することが,風量向上の有効性が高い範囲で冷蔵庫を運転することになる。したがって,本実施例の冷蔵庫では,図11における蒸発器温度Tevpを,冷蔵運転時の冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度TRevp_aveとして,(式2)を満足するように制御することで,風量向上の有効性が高い範囲で効率よく冷却運転を実施するようにしている。
本実施例の冷蔵庫は,安定冷却運転中に,定格内容積が最大となる冷蔵室2の冷蔵用ファン9aの駆動時間が,冷凍用ファン9bの駆動時間より長くなる運転モードを備えている。これにより定格内容積が最大となる冷蔵室2を,温度ムラが少なく保存性の高い貯蔵室とすることができる。一般に送風手段の駆動により積極的な気流が生じている状態を強制対流と呼び,送風手段による送風が行われずに空気の温度差(密度差)によって生じる弱い気流を自然対流と呼ぶ。空間内に送風手段による強制対流を生じさせた場合は,空気が積極的に移動することで空間内の均温化が図られ,送風手段を停止した場合には,自然対流となり,空間内の空気の移動が生じ難いために温度ムラが形成されやすく,特に容積が大きい空間においては顕著になる。温度ムラが大きいと,食品を収納する場所によって食品の保存性が低下するという問題が生じやすくなる。そこで,本実施例の冷蔵庫では,定格内容積が最大となる冷蔵室2の冷蔵用ファン9aの駆動時間が,冷凍用ファン9bの駆動時間より長くなるように制御する運転モードを備えることで,冷蔵室2を,温度ムラが少なく保存性の高い貯蔵室としている。
また,本実施例の冷蔵庫は,高さ寸法が最大となる貯蔵室である冷蔵室2の冷蔵用ファン9aの駆動時間が,冷凍用ファン9bの駆動時間より長くなる運転モードを備えている。一般に温度分布は高さ寸法が大きい空間ほど大きくなりやすいため,本実施例の冷蔵庫では,高さ寸法が最大となる貯蔵室である冷蔵室2の冷蔵用ファン9aの駆動時間が,冷凍用ファン9bの駆動時間より長くなる運転モードを備えることで,冷蔵室2を,温度ムラが少なく保存性の高い貯蔵室としている。
本実施例の冷蔵庫は,冷蔵室背面に備えた冷蔵室送風路11の冷蔵室吐出口11aを上方に向けて開口させて(冷気指向手段),上方に指向した空気を吹き出すようにしている。一般に,貯蔵室に収納される食品が冷却空気の流れを阻害すると,貯蔵室内に温度ムラが出来る,あるいは,風路抵抗が増えて風量が減少するといった事態が生じて冷却効率が低下することがある。そこで,冷蔵室送風路11の主たる冷蔵室吐出口11aを上方に向けて開口させて(冷気指向手段),上方に指向した空気を吹き出させることで,冷却空気は図2中に矢印で示すように冷蔵室2の天井面を沿って前方に流れるので,多くの食品を冷蔵室2内に収納しても,食品によって冷却空気の流れが阻害されにくくなり,貯蔵室内に温度ムラが出来る,あるいは,風路抵抗が増えて風量が減少するといった事態が生じ難い冷却効率が高い冷蔵庫となる。なお,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室送風路11に設けられる開口は,上方に向けて開口させた冷蔵室吐出口11aのみとなっているが,他に前方や,側方に向けて吹き出す他の開口を設けても良い。この場合は,上方に向けて開口させた吐出口の開口面積(総面積)が,他の吐出口の開口面積の総和より大きくすることによって,上述の効果を得ることができる。
本実施例の冷蔵庫は,冷蔵室2の最上段に位置する棚34aよりも開口位置が高い扉ポケット33aを設け,冷蔵室背面に備えた冷蔵室送風路11の冷蔵室吐出口11aを上方に向けて開口させて(冷気指向手段),上方に指向した空気を吹き出させるようにしている。これにより,冷却空気は図2中に矢印で示すように冷蔵室2の天井面を沿って冷蔵室2の最上段に位置する棚34aよりも開口位置が高い扉ポケット33aに向けて流れるので,扉ポケット33aを良好に冷却することができる。
本実施例の冷蔵庫では,安定冷却運転中における冷蔵室維持温度(冷蔵室設定温度)TR_keepと,冷蔵室吐出口11aから吐出される冷蔵室吐出空気温度TR_inの差が,冷凍室維持温度TF_keep(冷蔵室設定温度)と冷蔵室維持温度(冷蔵室設定温度)TR_keepの算術平均値より高い温度となるように,蒸発器温度調整手段(圧縮機24,冷蔵用送風機9a)を制御している。一般に,温度が高い空間に低温空気を吹き出すと,密度が高い低温空気は重力の作用で下方に向けた力を受けるため,吹き出し口から離れた上方の領域には低温の空気が到達し難くなる。そこで,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室維持温度(冷蔵室設定温度)TR_keepと,冷蔵室吐出空気温度TR_inの差が,冷凍室維持温度TF_keep(冷蔵室設定温度)と冷蔵室維持温度(冷蔵室設定温度)TR_keepの算術平均値より高くなるように,蒸発器温度調整手段(圧縮機24,冷蔵用送風機9a)を制御することで,冷蔵室吐出口11aから吹き出した冷却空気が受ける重力の作用を軽減し,吐出口から離れた上方のスペース(例えば最上段の扉ポケット33a)を良好に冷却することができる。
本実施例の冷蔵庫は,冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室)と,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)と,冷凍室7を備え,冷蔵室2の背部に冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)及び冷蔵用送風機9a(第一送風機)と,冷凍室7の背部に冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)及び冷凍用ファン9b(第二送風機)を備え,第一送風機の駆動により冷蔵用蒸発器14aと熱交換した冷却空気を冷蔵室2に流通させる冷蔵風路111(第一風路)と,冷凍用ファン9bの駆動により冷凍用蒸発器14bと熱交換した冷却空気を冷凍室7及び野菜室6に流通させる冷凍野菜風路112(第二風路)を備え,第一風路と第二風路の間の空気の流通を遮断する空気流通遮断手段(断熱仕切壁28)と,冷蔵風路111を流れる空気と接する脱臭部材91を備えている。これにより,冷蔵室2内に臭気を発する食材等を収納した際に,臭気成分が冷却空気とともに他の貯蔵室(冷凍室7や野菜室6)に循環することを阻止できるので,冷蔵室2以外の貯蔵室(冷凍室7や野菜室6)の食材等への臭い移りを阻止できる。また,臭気成分を含む冷却空気が冷蔵風路111のみを循環し,他の貯蔵室に拡散しないため,より短時間で高い脱臭効果を得ることができる。
本実施例の冷蔵庫は,冷蔵風路111(第一風路)と,冷凍野菜風路112(第二風路)と,冷蔵風路111を流れる空気と接する脱臭部材91を備え,安定冷却運転中に,冷蔵室2の冷蔵用ファン9aの駆動時間が,冷凍用ファン9bの駆動時間より長くなる運転モードを備えている。冷蔵用ファン9aの駆動時には,脱臭部材91をより多くの空気が通過するため脱臭作用が高くなるため,冷蔵用ファン9aの駆動時間が,冷凍用ファン9bの駆動時間より長くなる運転モードを備えることにより,より脱臭作用が高い冷蔵庫とすることができる。
本実施例の冷蔵庫は,上方から冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),冷凍室7(冷凍温度帯室),野菜室(第二冷蔵温度帯室)の順に貯蔵室を備え,冷凍室7の背部に冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)を備え,冷凍用蒸発器14bの容積を冷凍室7の定格内容積の3%以下とし,冷凍室7の定格内容積を全定格内容積の28%以上とし,冷蔵温度帯室である冷蔵室2の背部に冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)を備えている。これにより,冷蔵庫中央部に大容量冷凍室を備えるとともに,良好な実用冷却性能を発揮する冷蔵庫を提供することができる。理由を以下で説明する。
一般に冷凍温度帯室を冷却する蒸発器の表面には霜が成長する。蒸発器の表面に霜が成長すると,蒸発器を通過する流路が狭くなることによる通風抵抗増加や,蒸発器表面と空気の間の霜層に起因する熱抵抗増加が起き,蒸発器の熱交換性能が低下し,冷却効率が下がる。そこで,蒸発器の熱交換性能低下による不具合が生じないように除霜運転が行われる。ヒータ等の加熱手段によって蒸発器の温度を上げることで霜を解かす除霜運転中は,冷凍温度帯室の冷却を行うことができない。したがって,霜の成長による蒸発器の熱交換性能の低下が起こり易いと,頻繁に冷凍温度帯室の温度が上昇する除霜運転が行わることになる。すなわち,霜の成長による熱交換性能の低下が起こりにくくすることが冷凍温度帯室の安定した冷却性能を得るための課題となる。例えば,特許文献1に記載の冷蔵庫のように,冷凍室の後方の冷却室(蒸発器室)に,各貯蔵室を冷却する熱交換器である冷却器(蒸発器)を備えた冷蔵庫では,一般に,この課題に対して,蒸発器のサイズ(蒸発器容積)を十分大きくとることで,霜の成長による熱交換性能の低下を抑制するように設計がなされる。一方で,冷凍用蒸発器の容積を冷凍温度帯室の定格内容積の3%以下にすることができず,冷凍温度帯室の定格内容積を全定格内容積の28%以上に拡大できなかった。
一般に,空気温度が高い方が,空気が含む水分量が多く(絶対湿度が高く)なるため,冷凍温度帯室と冷蔵温度帯室を共通に冷却する蒸発器を備えた場合,冷凍温度帯室よりも維持温度が高い冷蔵温度帯室から,より多くの水分が蒸発器に到達して霜となる。そこで,本実施例の冷蔵庫では,冷凍室7の背部に冷凍用蒸発器14bを備えるとともに,冷蔵室2の背部に冷蔵用蒸発器14aを備える構成を採用することで,冷蔵庫中央部の冷凍室7の背部に設置される蒸発器を冷凍室7の定格内容積の3%以下に小型化して冷凍温度帯室の定格内容積を全定格内容積の28%以上に拡大しても,空気が含む水分量(絶対湿度)が多い冷蔵室2からの水分による霜の成長が生じないため,熱交換性能の低下が起こりにくい蒸発器となり,安定した冷却性能を発揮できる。
また,冷蔵温度帯室となる冷蔵室2と野菜室6のうち,定格内容積が大きい冷蔵温度帯室に第一蒸発器を設けるようにしている。これにより内容積が大きいために負荷が大きくなり易い冷蔵室2を効率よく冷却できるので,大容量冷凍室と,良好な実用冷却性能を両立した冷蔵庫となる。
本実施例の冷蔵庫では冷凍用蒸発器14bの空気側伝熱面積AFevpを,冷蔵用蒸発器14aの空気側伝熱面積ARevpより大きくしている。一般に,蒸発器の空気側伝熱面積を大きくすると,空気と冷媒の間の熱交換が促進されて,冷却能力が大きくなる。そこで,冷凍用蒸発器14bの空気側伝熱面積AFevpを,冷蔵用蒸発器14aの空気側伝熱面積ARevpより大きくして,冷凍室7を冷却する際の冷却能力をより高めることで,大容量冷凍室と,良好な実用冷却性能の両立を図っている。
本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用蒸発器14a,及び,冷凍用蒸発器14bの単位容積あたりの空気側伝熱面積はそれぞれARevp/VRevp=0.673m2/L,AFevp/VFevp=0.384m2/Lであり,0.25m2/L以上,0.96m2/L以下の値としている。一般に,霜は蒸発器の空気側伝熱面に成長するため,蒸発器容積に対して空気側伝熱面積を大きくすると,霜が成長した場合に流路が閉塞されやすくなる。このため,霜の成長が多い場合は熱交換性能の低下が起きやすくなるが,霜の成長が少ない場合は熱交換性能が高い蒸発器となる。一方,蒸発器容積に対して空気側伝熱面積を小さくすると,霜が成長しても流路が霜で閉塞され難く熱交換性能を維持しやすくなるが,空気側伝熱面積が小さくなるので,霜の成長が少ない場合,単位容積あたりの熱交換性能が低くなる。そこで,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用蒸発器14a,及び,冷凍用蒸発器14bの単位容積あたりの空気側伝熱面積を,0.25m2/L以上,0.96m2/L以下とすることで,霜の成長が多い場合と,霜の成長が少ない場合の性能が両立されるようにしている。
また,冷蔵用蒸発器14aの単位容積あたりの空気側伝熱面積(ARevp/VRevp)を,冷凍用蒸発器14bの単位容積あたりの空気側伝熱面積(AFevp/VFevp)よりも大きくしている(ARevp/VRevp > AFevp/VFevp)。冷凍用蒸発器14bに成長した霜は,除霜ヒータ21によって加熱される冷凍用蒸発器除霜運転で解かされ,冷凍用蒸発器除霜運転中は冷凍室7を冷却できない。一方,冷蔵用蒸発器14aに成長した霜は,冷蔵用蒸発器除霜運転により,冷蔵室2を冷却しながら解かすことができる。そこで,冷蔵用蒸発器14aの単位容積あたりの空気側伝熱面積を,冷凍用蒸発器14bの単位容積あたりの空気側伝熱面積よりも大きくすることで,冷凍用蒸発器14bの流路が霜によって閉塞され難くして,除霜運転の頻度が上がることにより冷凍室7の冷えが悪くなるといった不具合が生じないようにしている。
本実施例の冷蔵庫は,冷凍温度帯室と冷蔵温度帯室の双方に実用負荷が投入された際に,負荷を投入した時点から,実用負荷が十分冷却されるまでの間において,冷蔵室冷却運転時の冷蔵用蒸発器14aの時間平均温度TRevp_aveが,冷凍室冷却運転時の冷凍用蒸発器14bの時間平均温度TFevp_aveより高くなるように蒸発器温度調整手段(圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9b,野菜室ダンパ19)を制御している。一般に蒸発器温度(蒸発温度)が高い方が,冷凍サイクル成績係数(圧縮機24の入力に対する吸熱量の割合)が高く,省エネルギー性能が高くなる。冷凍室7は冷凍温度に維持するために冷凍用蒸発器14bの温度を低温にする必要があるが,冷蔵室2は冷蔵温度に維持すれば良いので,冷蔵用蒸発器の温度TRevpが冷凍用蒸発器の温度TFevpよりも高くなるように蒸発器温度調整手段(圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9b,野菜室ダンパ19)を制御して,省エネルギー性能を向上している。
本実施例の冷蔵庫は,冷凍温度帯室と冷蔵温度帯室の双方に実用負荷が投入された際に,冷凍室温度の最大値(最高到達温度)が0℃未満(図10のTF1<0)となるように,蒸発器温度調整手段(圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9b,野菜室ダンパ19)を制御している。これにより,実用負荷の投入によって冷凍温度帯室に収納された食品等が解けるといった不具合が発生することを回避しつつ,良好な実用冷却性能を得ることができる。
本実施例の冷蔵庫は,冷凍温度帯室と冷蔵温度帯室の双方に実用負荷が投入された際に,負荷を投入した時点から,実用負荷が十分冷却されるまでの実用負荷冷却区間において,冷凍室温度の複数の極大値が漸次低下するように蒸発器温度調整手段(圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9b,野菜室ダンパ19)を制御している。これにより,冷凍室の温度が上昇して,冷凍食品が解けるといった問題が発生し難く,実用冷却性能が高い冷蔵庫となる。
本実施例の冷蔵庫は,冷凍温度帯室と冷蔵温度帯室の双方に実用負荷が投入された際に,負荷を投入した時点から,実用負荷が十分冷却されるまでの実用負荷冷却区間において,冷蔵室冷却運転比率をRR,冷凍室冷却運転比率をRF,外気温度をTout (℃),冷蔵用蒸発器14aの空気側伝熱面積をARevp (m2),冷蔵用蒸発器14aの冷蔵運転中の時間平均温度をTRevp_ave (℃),冷蔵室維持温度をTR_keep (℃),冷凍用蒸発器14bの空気側伝熱面積をAFevp (m2),冷凍用蒸発器14bの冷凍室冷却運転中の時間平均温度をTFevp_ave (℃),冷凍室維持温度をTF_keep (℃),冷蔵室定格内容積をVR (L),冷凍室定格内容積をVF (L),水の比熱をCW (kJ/kg℃),氷の比熱をCi (kJ/kg℃),水の凝固潜熱をLW(kJ/kg)として,(式3)を満足するように,蒸発器温度調整手段(圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9b,野菜室ダンパ19)を制御している。
これにより,大容量冷凍室と,良好な実用冷却性能を両立した冷蔵庫となる。理由を以下で説明する。一般に,冷蔵庫では,断熱箱体の壁面を介した熱侵入だけでなく,ユーザーの扉開閉操作や,温度が高い食品等の投入といった非定常な負荷の増加が生じる。特に,冷蔵温度帯の貯蔵室と冷凍温度帯の貯蔵室を備えた冷蔵庫では,両方の貯蔵室に同時に多くの食品を投入するといった事態が発生した場合であっても速やかに所定の維持温度にまで冷却する必要がある。しかしながら,冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室では維持する温度帯が異なるため,一方の貯蔵室の冷えが悪い,あるいは,一方の貯蔵室のみ過度に冷えるといった事態が生じ易い。すなわち,冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室をバランスよく冷却することが課題となる。特に上方から冷蔵室,冷凍室,野菜室を備えた冷蔵庫において,冷凍室の背部に設置される蒸発器を,冷凍室の定格内容積の3%以下に小型化して,冷凍室定格内容積を全定格内容積の28%以上に大容量化すると,冷蔵室と冷凍室の負荷のバランスと,冷却能力のバランスが崩れ,一方の貯蔵室の冷えが悪い,あるいは,一方の貯蔵室のみ過度に冷えるという問題が顕在化して,良好な冷却性能を発揮できない事態が生じていた。そこで,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室2と冷凍室7に実用負荷が投入された場合には,(式3)を満足するように冷凍運転/冷凍野菜運転と,冷蔵運転を実施することで,大容量の冷凍室と,実用的な冷却性能の両立を図っている。
(式3)のAFevp×(TF_keep-TFevp_ave)は冷凍用蒸発器14bにおける交換熱量の大小の指標,ARevp×(TR_keep-TRevp_ave)は冷蔵用蒸発器14aにおける交換熱量の大小の指標,12×VR×{CW×(Tout-TR_keep)}は冷蔵室に投入される実用負荷の冷却に要する吸熱量(冷却負荷)の指標であり,4×VF×{CW×Tout-Ci×TF_keep+LW}は冷蔵室に投入される実用負荷の冷却に必要な吸熱量(冷却負荷)の指標である。すなわち,右辺からは冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器における交換熱量の比率と,実用負荷の冷却負荷の比率を考慮した最低限必要な冷凍室冷却(冷凍室野室冷却運転または冷凍室冷却運転)の冷蔵室冷却運転に対する比率が算出される。本実施例の冷蔵庫では,その比率より高くなるように冷凍室冷却運転を実施するように制御するので,冷蔵室と冷凍室に同時に多くの負荷が投入された場合であっても大容量の冷凍室と,実用的な冷却性能の両立を図ることができる。なお,(式3)の右辺の12×VR,及び,4×VFは,冷蔵温度帯室(冷凍室と野菜室)1Lあたり12g,冷凍温度帯室1Lあたり4gの水(初期温度は外気温度)をそれぞれ冷蔵室と冷凍室に投入することを意味しており,一般的な使われ方を考慮した上でJISC9801-3:2015に定められた負荷量となる。
また,本実施例の冷蔵庫においては,自動製氷機能を備えているため,ユーザーが自動製氷機能を使用することで負荷が変動することも想定される。この場合,製氷水タンクは冷蔵室2に設置されているため,冷蔵室2の負荷が増える。しかしながら,冷蔵温度帯に維持される冷蔵室2内では凍結に至らないため,顕熱のみの負荷となり,冷蔵室2から冷凍温度帯の製氷室3に給水されると,凍結するために顕熱に加えてと潜熱も負荷となる。したがって,冷蔵室2よりも冷凍室7の負荷が増えるため,(式1)に示すように制御することで冷凍温度帯室が優先的に冷却されるので,自動製氷機能を使用した場合においても,実用冷却性能を維持しやすくなる。
なお、(式1)及び(式3)における冷蔵室維持温度TRkeep及び冷凍室維持温度TFkeepには,JISC9801-1:2015に規定の方法に基づいて測定される安定冷却運転中の冷蔵室2及び冷凍室7の温度の時間平均値を用いればよい。また,冷蔵用蒸発器14a及び冷凍用蒸発器14bの時間平均温度(TRevp_ave、TFevp_ave)を算出するための冷蔵用蒸発器温度TRevp及び冷凍用蒸発器温度TFevpは,冷蔵用蒸発器14a及び冷凍用蒸発器14bの冷媒パイプ97a及び97bの流入部近傍の温度を測定して用いればよい。
以上が,本発明を実施する形態を示す実施例である。なお,本発明は前述した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,本実施例の冷蔵庫では,より確実に空気の流通を遮断するために空気流通遮断手段として断熱仕切壁28を採用しているが,空気の流通を阻止する作用が得られれば,仕切部材の一部にダンパを設けて,ダンパを閉鎖状態とすることで空気流通を遮断した状態を構成しても良い。また,本実施例の冷蔵庫では,蒸発器温度調整手段として圧縮機24,冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9bを用いているが,蒸発器温度の調整が行えれば,他の手段として放熱手段の放熱量を制御するファンや,絞り抵抗を可変させる膨張弁を蒸発器温度調整手段としても良い。すなわち前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。