まず、第一の実施形態を、図1〜図11を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の冷蔵庫の正面外形図である。図2は、冷蔵庫の庫内の構成を表す図1におけるX−X縦断面図である。図3は、冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図であり、冷気ダクトや吹き出し口の配置などを示す図である。図4は、本実施形態の冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を表す図である。図5は、冷蔵庫の放熱パイプの配設位置を表す図である。図10は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの冷媒状態を表す。
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫本体1は、上方から、冷蔵室2,製氷室3及び上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6を有する。なお、製氷室3と上段冷凍室4は,冷蔵室2と下段冷凍室5との間に左右に並べて設けている。一例として、冷蔵室2及び野菜室6は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3,上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開き(いわゆるフレンチ型)の冷蔵室扉2a,2bを備えている。製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを備えている。また、各扉の貯蔵室側の面には、各扉の外縁に沿うようにシール部材(図示せず)を設けており、各扉の閉鎖時、貯蔵室内への外気の侵入、及び貯蔵室からの冷気漏れを抑制する。
また、冷蔵庫本体1は、各貯蔵室に設けた扉の開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示せず)と、各扉が開放していると判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知するアラーム(図示せず)と、冷蔵室2の温度設定や上段冷凍室4や下段冷凍室5の温度設定をする温度設定器等(図示せず)を備えている。
図2に示すように、冷蔵庫本体1の庫外と庫内は、内箱1aと外箱1bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。また、冷蔵庫本体1の断熱箱体10は複数の真空断熱材25を実装している。
冷蔵庫本体1は、上側断熱仕切壁51により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが断熱的に隔てられ、下側断熱仕切壁52により、下段冷凍室5と野菜室6とが断熱的に隔てられている。また、図5に示すように、下段冷凍室5の上部には、横仕切部53を設けている。横仕切部53は、製氷室3及び上段冷凍室4と、下段冷凍室5とを上下方向に仕切っている。また、横仕切部53の上部には、製氷室3と上段冷凍室4との間を左右方向に仕切る縦仕切部54を設けている。
横仕切部53は、下側断熱仕切壁52前面及び左右側壁前面とともに、下段冷凍室扉5aの貯蔵室側の面に設けたシール部材(図示せず)を受けて、下段冷凍室5と下段冷凍室扉5aとの間での気体の移動を抑制する。また、製氷室扉3a及び上段冷凍室扉4aの貯蔵室側の面に設けたシール部材(図示せず)は、横仕切部53,縦仕切部54,上側断熱仕切壁51及び冷蔵庫本体1の左右側壁前面と接することで、各貯蔵室と各扉との間での気体の移動をそれぞれ抑制する。
なお、製氷室3,上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、いずれも冷凍温度帯なので、横仕切部53及び縦仕切部54は、各扉のシール部材を受けるために、少なくとも冷蔵庫本体1の前側にあればよい(図2参照)。すなわち、冷凍温度帯の各貯蔵室間で気体の移動があってもよく、断熱区画しない場合であってもよい。一方、上段冷凍室4を温度切替室とする場合は、断熱区画する必要があるため、横仕切部53及び縦仕切部54は、冷蔵庫本体1の前側から後壁まで延在させる。
冷蔵室扉2a,2bの貯蔵室内側には、複数の扉ポケット32が備えられている(図2参照)。また、冷蔵室2は複数の棚36が設けられている。棚36により、冷蔵室2は縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
図2に示すように、上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉と一体に前後方向に移動する収納容器3b,4b,5b,6bがそれぞれ設けられている。そして、製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a及び野菜室扉6aは、それぞれ図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器3b,4b,5b,6bが引き出せるようになっている。
図2及び図3に示すように、本実施形態の冷蔵庫は、冷却手段として蒸発器7を備えている。蒸発器7(一例として、フィンチューブ型熱交換器)は、下段冷凍室5の略背部に備えられた蒸発器収納室8内に設けられている。また、蒸発器収納室8内であって蒸発器7の上方には、送風手段として庫内送風機9(一例として、プロペラファン)が設けられている。蒸発器7と熱交換して冷やされた空気(以下、蒸発器7で熱交換した低温の空気を「冷気」と称する)は、庫内送風機9によって冷蔵室送風ダクト11,冷凍室送風ダクト12を介して、冷蔵室2,野菜室6,上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3の各貯蔵室へそれぞれ送られる。各貯蔵室への送風は、冷蔵温度帯室への送風量を制御する第一の送風量制御手段(冷蔵室ダンパ20)と、冷凍温度帯室への送風量を制御する第二の送風量制御手段(冷凍室ダンパ50)とにより制御される。
ちなみに、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6への各送風ダクトは、図3に破線で示すように冷蔵庫本体1の各貯蔵室の背面側に設けられている。
具体的には、冷蔵室ダンパ20が開状態、冷凍室ダンパ50が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に送られる。
なお、冷蔵室2を冷却した冷気は、冷蔵室2の下部に設けられた冷蔵室戻り口2dから冷蔵室戻りダクト16を経て、下段断熱仕切壁52の下部右奥側に設けた野菜室吹き出し口6cから野菜室6へ送風される。
野菜室6からの戻り冷気は、下側断熱仕切壁52の下部前方に設けられた野菜室戻りダクト入口18bから野菜室戻りダクト18を経て、野菜室戻りダクト出口18aから蒸発器収納室8の下部に戻る。
なお、別の構成として、冷蔵室戻りダクト16を野菜室6へ連通せずに、蒸発器収納室8の正面から見て、右側下部に戻す構成としてもよい。この場合の一例として、冷蔵室戻りダクト16の前方投影位置に野菜室送風ダクト(図示せず)を配置して、蒸発器7で熱交換した冷気を、野菜室吹き出し口6cから野菜室6へ直接送風する。
図2に示すように、蒸発器収納室8前方には、各貯蔵室と蒸発器収納室8との間を仕切る仕切部材13が設けられている。仕切部材13には、吹き出し口3c,4c,5cが形成されており、冷凍室ダンパ50が開状態のとき、蒸発器7で熱交換された冷気が庫内送風機9により図示省略の製氷室送風ダクトや冷凍室送風ダクト12を経て吹き出し口3c,4cからそれぞれ製氷室3,上段冷凍室4へ送風される。また、冷凍室送風ダクト12を経て吹き出し口5cから下段冷凍室5へ送風される。
一般に、周囲温度に対して低温の冷気は、上方から下方に向かう下降流を形成する。よって、貯蔵室の上方により多くの冷気を供給することで、下降流の作用で貯蔵室内を良好に冷却できる。本実施形態では、冷凍室ダンパ50を設けているが、これを庫内送風機9の上方に設置することで、庫内送風機9からの送風をスムーズに製氷室3や上段冷凍室4に送風できるように配慮している。製氷室3,上段冷凍室4及び下段冷凍室5が連通した構成とすれば、下降流による冷却効果を高めることができる。
仕切部材13には、下段冷凍室5の奥下部の位置に冷凍室戻り口17が設けられており、上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3を冷却した冷気は、冷凍室戻り口17を介して蒸発器収納室8に流入する。なお、冷凍室戻り口17は蒸発器7の幅とほぼ等しい幅寸法である。
次に、本実施形態における冷凍サイクルについて、図4,図5、及び、適宜図2を参照しながら説明する。図4に示すように、冷媒を圧縮する圧縮機24と、圧縮機24から送られた冷媒を放熱する放熱手段40と、放熱手段40から送られた冷媒を減圧する減圧手段であるキャピラリチューブ43と、キャピラリチューブ43から送られた冷媒が蒸発して空気を冷却する冷却手段である蒸発器7とが、冷媒が流れる管で順次接続されている。
圧縮機24は、図2に示すように、冷蔵庫本体1の下部後方に設けた機械室19に設置されている。
図4に示すように、放熱手段40は、機械室19(図2参照)内に配設された凝縮器40a(一例としてフィンチューブ型熱交換器),放熱パイプ40b,40c,40dを有する。放熱パイプ40bは、外箱1aと内箱1bとの間であって、外箱1a面に接するように配置している。外箱1aは一般的に鋼板製であるため、放熱パイプ40bからの熱は、主として外箱1aを伝わって庫外に放熱する。これにより、貯蔵室の温度上昇を抑制して庫外に放熱することができる。また、機械室19内には庫外送風機26が配設されており(図2中には不図示)、庫外送風機26を稼働させることで、凝縮器40aの放熱を促進することができるようになっている。
図5に示すように放熱パイプ40b(図5中に短波線で表示)は、断熱箱体10の両側面,天井面,背面に配設されている。
また、放熱パイプ40c(図5中に太い実線で表示)は、断熱箱体10の上側断熱仕切壁51,下側断熱仕切壁52,横仕切部53及び縦仕切部54のそれぞれの内部前方に配置されている。これらの仕切壁(仕切部)は、貯蔵室に接しているため低温であるが、前方部は各貯蔵室の開口縁となるので、外気に接触しやすい。そのため、前方の開口縁表面において、飽和水蒸気量に達して結露が生じるおそれがある。そこで、冷蔵庫本体1の断熱箱体10前方開口縁(特に、上側断熱仕切壁51,下側断熱仕切壁52,横仕切部53及び縦仕切部54の前方部)への結露防止のために、放熱パイプ40cが配置されている。
放熱パイプ40cは、図5において、野菜室6開口部右下(a)から上方に向かい、上段冷凍室4開口部右上(b)から、上側断熱仕切壁51に入り、製氷室3開口部左上(c)で折り返して、上段冷凍室開口部右上(d)で再び折り返す。製氷室3開口部左上(e)に達したら、製氷室3開口部左側を下方に向かい、製氷室3開口部左下(f)から、横仕切部53に入り、製氷室3開口部右下(g)から縦仕切部54に入り、縦仕切部54の上部で折り返して、上段冷凍室4開口部左下(製氷室3開口部右下)(h)から再び横仕切部53に入る。続いて、上段冷凍室4開口部右下(i)で折り返して、製氷室3開口部左下(j)に達したら、下段冷凍室5開口部の左側を下方に向かい、下段冷凍室5開口部左下(k)から、下側断熱仕切壁52に入り、下段冷凍室5開口部右下(l)で折り返して、下段冷凍室5開口部左下(m)に達したら、野菜室6開口部左側,下側を通り、野菜室6開口部右下(m)から断熱箱体10の右側面に入る。
放熱パイプ40cの下流側(出口側)には、放熱パイプ40d(図5中に長破線で表示)が設けられている。放熱パイプ40dは、放熱パイプ40bと同様に、外箱1aと内箱1bとの間であって、外箱1a面に接するように配置している。
図5に示すとおり、放熱パイプ40dの出口側(放熱手段40の出口側)は、機械室19に入り、図4に示す通りドライヤ41(機械室19内に配設)に接続される。ドライヤ41は、冷媒中の水分を乾燥吸湿するためのものであり、管60内が凍結して詰まり、冷媒が循環しなくなることを防ぐ。
図4に示すとおり、ドライヤの下流側には、冷媒流量調整手段としての弁42(本実施形態の冷蔵庫本体1では二方弁)が設けられている。なお、蒸発器7から圧縮機24に向かう管70の一部である管70a部は、キャピラリチューブ43と近接又は接触させており、キャピラリチューブ43内の熱が、管70a内の冷媒に移動するようにしてある。また、結露防止用の放熱パイプ40cは、図5に示すように、特に温度差が大きくなる冷凍温度帯の貯蔵室の前方開口縁に重点的に配設されている。
図2に示すとおり、蒸発器収納室8の下方には、除霜ヒータ22が備えられている。蒸発器7及びその周辺の蒸発器収納室8の壁に成長した霜は、除霜ヒータ22に通電して加熱することで溶かされる(除霜運転制御の詳細は後述)。霜が融解することで生じた除霜水は、図2に示す蒸発器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、排水管27を介して機械室19に配された蒸発皿21に達する。そして、機械室19内に配設される圧縮機24及び凝縮器40a(図2中に図示せず)の発熱により蒸発させられる。
また、図3に示すように、蒸発器7の正面から見て左上部には、蒸発器7に取り付けられた蒸発器温度センサ35、冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34がそれぞれ備えられており、それぞれ蒸発器7の温度(以下「蒸発器温度」と称する)、冷蔵室2の温度(以下「冷蔵室温度」と称する)、下段冷凍室5の温度(以下「冷凍室温度」と称する)を検知する。
更に、冷蔵庫本体1は、冷蔵庫の設置した周囲の温湿度環境(外気温度,外気湿度)を検知する図示しない外気温度センサと外気湿度センサを備えている。なお、野菜室6にも野菜室温度センサ33aが配置してある。なお、冷蔵室温度センサ33,野菜室温度センサ33a,冷凍室温度センサ34は、各貯蔵室への吹き出し冷気が直接当たらない場所に設置することで、検知精度を高めている。
次に、図10を参照しながら、本実施形態の冷蔵庫本体1の冷却運転中における冷媒の状態を説明する。圧縮機24は、状態aの低圧ガスを圧縮して状態bの高温高圧ガスにして、放熱手段40に冷媒を送り出す。放熱手段40は、図4に示す通り、上流側から、凝縮器40aと放熱パイプ40b〜40dで構成されているので、圧縮機24から吐出された高温高圧ガスは、まず、凝縮器40aに流入する。凝縮器40aで冷媒は冷却されて次第に温度が低下して飽和に達し(状態c)、凝縮器40aの出口においては二相の状態dとなり、放熱パイプ40bに流入する。放熱パイプ40bでは、二相域であるため温度は一定だが、放熱されて比エンタルピは減少し、放熱パイプ40b出口では状態eとなる。続いて、結露防止用に配設された放熱パイプ40cに流入する。放熱パイプ40cは貯蔵室に接しているため庫内に多くの熱を放熱して状態fに達して完全に液化し、放熱パイプ40cの出口は液域(状態g)となる。続いて、放熱パイプ40dを流れて状態hとなる。
ドライヤ41,開放状態の弁42を通って、キャピラリチューブ43に流入するが、キャピラリチューブ43では、減圧されて温度が低下し、低温低圧の二相状態(状態i)となって蒸発器7に流入する。蒸発器7では、液冷媒が蒸発して、蒸発器7の出口ではほぼガス化する(状態j)。本実施形態の冷蔵庫では、蒸発器7出口の低温ガス冷媒と、キャピラリチューブ43を流れる冷媒とを熱交換させるようにしている(図4参照)。このため、蒸発器7出口の冷媒(状態j)は、加熱されて状態aになり圧縮機24に吸いこまれる。一方で、蒸発器入口の冷媒の状態は、キャピラリチューブ入口における状態hからエンタルピが減少して状態iとなる(一般的な冷凍サイクルではキャピラリチューブ入口と蒸発器入口は等エンタルピ(状態i′))。
冷蔵庫本体1の天井壁上面側にはCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御装置である制御基板31が配置されている(図2参照)。制御基板31は、前記した外気温度センサ,外気湿度センサ,蒸発器温度センサ35,冷蔵室温度センサ33,野菜室温度センサ33a,各貯蔵室扉の開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ、冷蔵室2内壁に設けられた図示しない温度設定器、下段冷凍室5内壁に設けられた図示しない温度設定器等と接続する。前記ROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機24のON/OFFや、弁42,冷蔵室ダンパ20及び冷凍室ダンパ50を個別に稼働する図示省略のそれぞれのアクチュエータの制御、庫内送風機9のON/OFF制御や回転速度制御、前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
次に、本実施形態の冷蔵庫における冷却運転の制御について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は本実施形態の冷蔵庫の冷却運転中の制御を表す制御フローチャートである。また、図7は本実施形態の冷蔵庫の除霜運転中の制御を表す制御フローチャートである。制御は、制御基板31(図2参照)のCPUがROMに格納されたプログラムを実行することによって行われる。
図6に示すように、冷蔵庫本体1は電源投入により運転が開始され(スタート)、冷蔵庫本体1の各貯蔵室が冷却される。ユーザーが各貯蔵室扉の開閉を行う、或いは冷蔵庫周囲温度環境が変化して熱負荷が変化するといったことがなければ、基本的に一定の運転パターンを繰り返す。すなわち、安定冷却運転を行う。図6では、この安定冷却運転状態に至るまでの制御過程は省略している。なお、本実施形態の冷蔵庫の安定冷却運転時には、温度変化の少ない野菜室6の温度に基づく制御は行わないので、野菜室6に関する説明は省略する。
安定冷却運転時は、一定の運転パターン(運転サイクル)を繰り返すが、ここでは冷蔵運転が実施されている状態からの制御を説明する(ステップS101)。
冷蔵運転は、「庫内送風機9を稼働、冷蔵室ダンパ20を開放、冷凍室ダンパ50を閉鎖、圧縮機24を低回転(本実施形態では1200min-1)で稼働、弁42を開放」の状態で、冷蔵温度帯室(冷蔵室2,野菜室6)の冷却を実施する運転である。冷蔵運転が実施されている状態では、冷凍室温度が予め設定されている冷凍室上限温度TF4より低いか否か(ステップS102)が判定され、ステップS102が満足された場合(Yes)(ステップS102が満足されない場合(No)は後述)、冷蔵室温度<冷蔵室下限温度TR1の判定に移る(ステップS103)。ステップS103が満足されない場合(No)には、再びステップS102に戻る。なお、本実施形態の冷蔵庫では、TF4=−16℃,TR1=1.5℃である。
ステップS103において、冷蔵室温度<冷蔵室下限温度TR1が満足された場合(Yes)、蒸発器温度調整運転が実施される(ステップS104)。蒸発器温度調整運転とは「庫内送風機9を停止、冷蔵室ダンパ20を閉鎖、冷凍室ダンパ50を開放、圧縮機24を高回転(本実施形態では1900min-1)で稼働、弁42を開放」の状態で、冷蔵運転中に温度が高くなっていた蒸発器7とその周辺の熱を、送風は行わずに吸熱するための運転である。
次に、時間t1が経過したか否か(ステップS105)が判定される。本実施形態では、t1=2分であり、2分間で、蒸発器7の温度が冷凍室60を冷却できる程度にまで下がる。ステップS105が満足された場合(Yes)、続いて冷凍運転が開始される(ステップS106)。冷凍運転とは、「庫内送風機9を稼働、冷蔵室ダンパ20を閉鎖、冷凍室ダンパ50を開放、圧縮機24を高回転(本実施形態では1900min-1)で稼働、弁42を開放」の状態で、冷凍温度帯室(上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3)の冷却を実施する運転である。
冷凍運転が実施されている状態では、冷蔵室温度が予め設定されている冷蔵室上限温度TR2より低いか否か(ステップS107)が判定され、ステップS107が満足された場合(Yes)(ステップS107が満足されない場合(No)は後述)、冷凍室温度が庫外送風機停止温度TF2より低いか否かの判定に移る(ステップS108)。ステップS108が満足されない場合(No)には、再びステップS107に戻る。なお、本実施形態の冷蔵庫では、TR2=6℃,TF2=−19.5℃である。
ステップS108が満足された場合(Yes)、庫外送風機26が停止される(ステップS109)。次に冷凍室温度が圧縮機停止温度TF1より低いか否かが判定され(ステップS110)、ステップS110が満足された場合(Yes)、除霜すべき条件となっているか否かが判定される(ステップS111)。本実施形態の冷蔵庫では、TF1=−21℃であり,除霜すべき条件か否かは、圧縮機24の積算運転時間,外気温度,扉開閉の回数に基づいて判定される。
ステップS111が満足されていない場合(No)(ステップS111が満足された場合(Yes)は後述)、冷蔵室温度が冷蔵室上限温度TR1より低いか否かが判定される(ステップS112)。ステップS112が満足された場合(Yes)(ステップS112が満足されない場合(No)は後述)、弁42が閉鎖状態となる(ステップS113)。ステップS113によって、弁42が閉じられるが、圧縮機24は稼働しているので、蒸発器7内の冷媒を放熱手段40内に移動させることができる。このように「弁42を閉鎖状態、圧縮機24を稼働状態」に制御することで、放熱手段40内の冷媒を増加させる運転を「冷媒調整運転100」と称する。
時間t2が経過した後に(ステップS114)、圧縮機24が停止する(ステップS115)。本実施形態の冷蔵庫では、t2=2分であり、2分間冷媒調整運転100を実施することで、結露防止用の放熱パイプ40c内が液冷媒で満たされる。ちなみに、本実施形態の冷蔵庫本体1の冷媒(イソブタン)は88g封入してあり、放熱手段40c内を全て液冷媒で満たすために必要な冷媒量約50gより十分多い量としている。
続いて、霜蓄冷熱運転が実施される(ステップS116)。霜蓄冷熱運転とは、「庫内送風機9を稼働、冷蔵室ダンパ20を開放、冷凍室ダンパ50を閉鎖、圧縮機24を停止、弁42を閉鎖」として、主に蒸発器7の霜の蓄冷熱で冷蔵温度帯室(冷蔵室2,野菜室6)を冷却する運転である。霜蓄冷熱運転中には、庫内送風機停止条件が満足されているか否か(ステップS117)、及び、冷凍室温度が圧縮機起動温度TF3より高いか否か(ステップS118)が判定される。ステップS117が満足された場合(Yes)、庫内送風機9が停止され(ステップS204)、ステップS118に移る。ステップS118が満足されていない場合(No)は、ステップS117に戻る。なお、本実施形態の冷蔵庫では、霜蓄冷熱運転中に、冷蔵室温度が0.5℃より低くなった場合、または、蒸発器温度が0.5℃より高くなった場合に、庫内送風機停止条件が満足される。これらの条件で庫内送風機を停止することで、冷蔵室が冷え過ぎる、あるいは、霜が解けたために冷蔵室を冷やす能力がなくなっている状態で冷蔵室に送風を続けることがなくなる。また、本実施形態の冷蔵庫では、TF3=−19℃である。
ステップS118が満足された場合(Yes)、続いて、弁42が開放、庫外送風機26が起動され(ステップS119)、再び冷蔵運転が実施される(ステップS101)。以上が本実施形態の冷蔵庫の安定冷却運転時の一連の運転サイクルとなる。
なお、本実施形態の冷蔵庫では、ステップS102において、冷凍室温度が冷凍室上限温度TF4より低いか否かを判定している。例えば、下段冷凍室扉5aの開閉があって、冷凍室温度が過度に上昇した場合、ステップS102が満足されず(No)、冷蔵冷凍運転が実施される(ステップS201)。冷蔵冷凍運転とは、「庫内送風機9を稼働、冷蔵室ダンパ20を開放、冷凍室ダンパ50を開放、圧縮機24を高回転(本実施形態では1900min-1)で稼働、弁42を開放」の状態で、冷蔵温度帯室(冷蔵室2,野菜室6)と冷凍温度帯室(製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5)を同時に冷却する運転である。冷蔵冷凍運転中には、冷蔵室温度が冷蔵室下限温度TR1より低いか否かが判定され(ステップS202)、ステップS202が満足された場合、続いて、ステップS106に移る。このように、冷蔵運転中に、冷凍室温度が扉の開閉などで過度に温度上昇した場合には、素早く冷却が行えるようにしている。
本実施形態の冷蔵庫では、ステップS107において、冷蔵室温度が冷蔵室上限温度TR2より低いか否かを判定している。例えば、冷蔵室扉2aの開閉があって、冷蔵室温度が過度に上昇した場合、ステップS107が満足されず(No)、冷蔵冷凍運転が実施される(ステップS203)。冷蔵冷凍運転中には、冷蔵室温度が冷蔵室下限温度TR1より低いか否かが判定され(ステップS202)、ステップS202が満足された場合、続いて、ステップS106に移る。このように、冷凍運転中に、冷蔵室温度が扉の開閉などで過度に温度上昇した場合には、素早く冷却が行えるようにしている。
また、本実施形態の冷蔵庫では、ステップS112において、冷蔵室温度が冷蔵室上限温度TR2より低いか否かを判定しており、ステップS112が満足されない場合(No)、冷蔵運転を実施するようにしている(ステップS101)。このようにすることで、冷蔵室温度が過度に高い場合には、圧縮機24を停止せずに、冷蔵温度帯室の冷却をおこなうようにしている。
次に、ステップS111において除霜条件が満足された場合(Yes)について、図7を参照しながら説明する。
ステップS111が満足された場合(Yes)、続いて、冷蔵室ダンパ20が開放、冷凍室ダンパ50が閉鎖され(ステップS301)、圧縮機24が停止する(ステップS302)。したがって、「庫内送風機9を稼働、庫内送風機9を停止、冷蔵室ダンパ20を開放、冷凍室ダンパ50を閉鎖、圧縮機24を停止、弁42を開放」の状態となる。このように、弁42が開放状態で、圧縮機24を停止すると、放熱手段40内の冷媒は高圧になっているので、キャピラリチューブ43を介して低圧になっている蒸発器7に冷媒が移動する。このように「弁42を開放状態、圧縮機24を停止状態」に制御することで、放熱手段40内の冷媒を減少させる運転を「冷媒調整運転200」と称する。
時間t3が経過した後に(ステップS303)、弁42が閉鎖される(ステップS304)。本実施形態の冷蔵庫では、t3=2分であり、2分間冷媒調整運転200を実施することで、放熱手段40内の冷媒が蒸発器7に移動することで減少し、放熱パイプ40c内はほぼガス冷媒のみ、放熱パイプ40d内は約50%(容積割合)が液冷媒の状態となる。
続いて、時間t4が経過した後に(ステップS305)、除霜ヒータが通電状態となる(ステップS306)。本実施形態の冷蔵庫では、t4=8分である。
ステップS306によって、「庫内送風機9を稼働、冷蔵室ダンパ20を開放、冷凍室ダンパ50を閉鎖、圧縮機24を停止、弁42を閉鎖、除霜ヒータを通電」の状態となり、蒸発器温度がTevp1(本実施形態ではTevp1=1℃)より高いか否かが判定される(ステップS307)。ステップS307が満足されると(Yes)、弁42が開放され(ステップS308)、続いて冷凍室ダンパ50が開放、冷蔵室ダンパ20が閉鎖、庫内送風機9が停止される(ステップS309)。したがって、ステップS308とステップS309によって「庫内送風機9を停止、冷蔵室ダンパ20を閉鎖、冷凍室ダンパ50を開放、圧縮機24を停止、弁42を開放、除霜ヒータを通電」の状態となる。続いて蒸発器温度がTevp2(本実施形態ではTevp2=8℃)より高いか否かが判定される(ステップS310)。ステップS310が満足されると(Yes)、除霜ヒータ通電が停止され(ステップS311)、「庫内送風機9を停止、冷蔵室ダンパ20を閉鎖、冷凍室ダンパ50を開放、圧縮機24を停止、弁42を開放、除霜ヒータ非通電」の状態となる。
時間t5(本実施形態ではt5=5分)経過後(ステップS312)、圧縮機24が高回転(本実施形態では1900min-1)で起動する(ステップS313)。ステップS313によって「庫内送風機9を停止、冷蔵室ダンパ20を閉鎖、冷凍室ダンパ50を開放、圧縮機24を高回転で稼働、弁42を開放、除霜ヒータ非通電」の状態となり、時間t6(本実施形態ではt6=5分)経過後(ステップS314)、冷凍運転が実施される(図6のステップS106)。なお、t6を5分とすることで、除霜運転によって高温になった蒸発器7とその周辺温度が十分低下するので、蒸発器収納室8の空気で冷凍温度帯室が暖められる事態を回避できる。また、本実施形態では、「庫内送風機9を停止、冷蔵室ダンパ20を閉鎖、冷凍室ダンパ50を開放、圧縮機24を停止、弁42を開放、除霜ヒータ非通電」の状態で、5分間保持するようにしている(t5を5分としている)が、このようにすることで、蒸発器7に残っている融解水、及び、樋23内の融解水が排水管27を介して十分排水することができる。
次に、図8及び図9を参照しながら、本実施形態の冷蔵庫を外気温度が30℃、相対湿度70%の環境に設置した際の冷却運転中と除霜運転中の結露防止用の放熱パイプ40cの温度の変化を説明する。
図8は,本実施形態の冷蔵庫の冷却運転中の放熱パイプ40cの温度と冷蔵室温度、冷凍室温度、蒸発器温度の変化と、庫内送風機9,庫外送風機26,冷蔵室ダンパ20,冷凍室ダンパ50,圧縮機24、及び弁42の制御状態を表すタイムチャートである。
図8に示すように、「庫内送風機9が稼働、庫外送風機26が稼働、冷蔵室ダンパ20が開放、冷凍室ダンパ50が閉鎖、圧縮機が稼働(低回転)、弁が開放」の状態で実施されている冷蔵運転は、経過時間tAにおいて、冷蔵室温度が冷蔵室下限温度TR1に達したため(図6におけるステップS103を満足した状態)、続いて「庫内送風機9が停止、庫外送風機26が稼働、冷蔵室ダンパ20が閉鎖、冷凍室ダンパ50が開放、圧縮機24が稼働(高回転)、弁42が開放、」の状態となって、蒸発器温度調整運転が実施されている(図6におけるステップS104)。tAから2分後の経過時間tBからは、「庫内送風機9が稼働、庫外送風機26が稼働、冷蔵室ダンパ20が閉鎖、冷凍室ダンパ50が開放、圧縮機24が稼働(高回転)、弁42が開放」の状態となって、冷凍運転が実施されている(図6におけるステップS106)。このように、冷蔵運転から冷凍運転に運転が切り替わっているが、冷蔵運転中よりも冷凍運転中の方が圧縮機は高回転となるために、結露防止用の放熱パイプ40cの温度が冷凍運転中の方が高くなっている(一般に圧縮機を高回転とすると凝縮温度が上昇する)。次に、経過時間tCで、冷凍室温度が、庫外送風機停止温度TF2に達したので、庫外送風機26が停止している(図6におけるステップS109)。これによって、凝縮器40aの放熱能力が低下して、凝縮温度が上昇する(一般に放熱手段の放熱能力が低くなると凝縮温度は上昇する)。したがって、結露防止用の放熱パイプ40cの温度が上昇している。続いて、経過時間tDで、冷凍室温度が圧縮機停止温度TF1に達したので、弁42が閉鎖され、「弁42が閉鎖状態、圧縮機24が稼働状態」の冷媒調整運転100が実施されている(図6におけるステップS113)。tDから2分後の経過時間tEまで冷媒調整運転100が実施され、これによって、結露防止用の放熱パイプ40cの中が高温の液冷媒で満たされる。続いて、「庫内送風機9が稼働、庫外送風機26が停止、冷蔵室ダンパが開放、冷凍室ダンパが閉鎖、圧縮機が停止、弁が閉鎖」の状態となって、霜蓄冷熱運転が実施されている。このとき、結露防止用の放熱パイプ40cの温度は、圧縮機が停止しているので、次第に低下するが、結露防止用の放熱パイプ40c内の高温の液冷媒の熱容量があるために、温度低下の速度は比較的遅い。次に、経過時間tFにおいて、冷凍室温度が圧縮機起動温度TF3に達したので、弁42が開放され、再び「庫内送風機9が稼働、庫外送風機26が稼働、冷蔵室ダンパ20が開放、冷凍室ダンパ50が閉鎖、圧縮機が稼働(低回転)、弁が開放」の状態の冷蔵運転が開始されている。
比較のため、図8中には、冷凍運転中も圧縮機を高回転にせず、庫外送風機は圧縮機停止と同時に停止するようにして、弁は常に開放とした場合(図8中に破線で示す制御)の結露防止用の放熱パイプの温度を破線で示した。図8中に破線で示すように制御すると、圧縮機停止時に、結露防止用の放熱パイプの温度が低下してしまい、結露が発生しやすいことがわかる。なお、図8中に破線で示す結露防止用の放熱パイプの温度が、圧縮機停止直後に急激に低下する部分があるが、これは、高圧である放熱手段の配管内と低圧である蒸発器の間の差圧が、圧縮機停止によって解消する(高圧側から低圧側にキャピラリチューブを介して冷媒が流れて差圧が解消する)ため、放熱手段内の圧力が急激に低下して液冷媒が沸騰し、周囲から熱を奪うためである。
図9は、本実施形態の冷蔵庫の除霜運転中の放熱パイプ40cの温度と冷蔵室温度,冷凍室温度,蒸発器温度の変化と、庫内送風機9,庫外送風機26,冷蔵室ダンパ20,冷凍室ダンパ50,圧縮機24,弁42、及び除霜ヒータ22の制御状態を表すタイムチャートである。
図9に示すように、経過時間tGにおいて、冷凍室温度が圧縮機停止温度TF2に到達したので(図6におけるステップS110)、続いて、除霜条件が満足されているか否かが判定され(図6におけるステップS111)、ここでは、除霜条件が満足されたので(図6のステップS111がYes)、続いて除霜運転が実施される(図7のステップS301に移行)。除霜運転では、まず、冷蔵室ダンパ20が開放、冷凍室ダンパ50が閉鎖状態になり、圧縮機24が停止する。これにより、「庫内送風機9が稼働、庫外送風機26が停止、冷蔵室ダンパ20が開放、冷凍室ダンパ50が閉鎖、圧縮機が停止、弁42が開放、除霜ヒータ22が非通電」の状態となる。この状態では、除霜ヒータ22非通電の状態だが、冷蔵温度帯室に空気を循環させるので、冷蔵温度帯室の熱負荷で、霜を加熱している状態となる。したがって、蒸発器温度は上昇する。一方、冷蔵室温度は、霜で冷却されて低下し、冷凍室温度は、冷却がなされないので上昇する。また、この状態は、「弁42が開放状態、圧縮機24が停止状態」の冷媒調整運転200の状態であり、高圧側の放熱手段40から低圧側の蒸発器7にキャピラリチューブ43を介して冷媒が流れる。このとき放熱手段40内の圧力が急激に低下して液冷媒が沸騰し、結露防止用の放熱パイプ40cの温度が低下する。
tGから2分後の経過時間tHにおいて、弁42が閉じられ、「庫内送風機9が稼働、庫外送風機26が停止、冷蔵室ダンパ20が開放、冷凍室ダンパ50が閉鎖、圧縮機が停止、弁42が閉鎖、除霜ヒータ22が非通電」の状態となる。この状態においても、蒸発器温度は上昇し、冷蔵室温度は、霜で冷却されて低下し、冷凍室温度は、冷却がなされないので上昇する。また、高圧側の放熱手段40から低圧側の蒸発器7にキャピラリチューブ43を介して冷媒が流れることが、弁42を閉鎖することで阻止される。2分間冷媒調整運転200を実施したことで、結露防止用の放熱パイプ40c内の液冷媒はほぼなくなり、放熱パイプ40d内は約50%(容積割合)が液冷媒の状態となっている。なお、経過時間tHの直後に、結露防止用の放熱パイプ40cの温度が回復(上昇)しているが、これは、結露防止用の放熱パイプ40c内で、液冷媒がなくなったために起きる現象である。液冷媒がなくなると沸騰して周囲から熱が奪われることがなくなるので、結露防止用の放熱パイプ40cの温度が回復する。
続いて、8分後の経過時間tIにおいて、除霜ヒータ22への通電が開始し、「庫内送風機9が稼働、庫外送風機26が停止、冷蔵室ダンパ20が開放、冷凍室ダンパ50が閉鎖、圧縮機が停止、弁42が閉鎖、除霜ヒータ22が通電」の状態となる。この状態では、除霜ヒータ22通電の状態で、冷蔵温度帯室に空気を循環させているが、除霜ヒータ22の通電量は、冷蔵室を冷却できる範囲(冷蔵室温度が維持または低下する範囲)としている(具体的には本実施形態では除霜ヒータ22の通電量を150Wとしている)。したがって、霜は、冷蔵温度帯室の熱負荷と除霜ヒータで加熱される状態となり、蒸発器温度は上昇する。一方、冷蔵室温度は、霜で冷却されて維持され(霜は0℃で融解するため、0℃以上で維持される)、冷凍室温度は、冷却がなされないので上昇する。また、放熱パイプ40d内に残った液冷媒は、庫外の熱によって加熱されて蒸発して、蒸発したガス冷媒は結露防止用の放熱パイプ40cに至って凝縮する。これは、いわゆるヒートパイプ(サーモサイフォン)現象であり、この現象により庫外の熱が結露防止用の放熱パイプ40cに伝えられるので、温度低下が抑制されている。
次に、経過時間tJにおいて、蒸発器温度が庫内送風機停止温度Tevp1に達したので、弁42が開放され、続いて、冷凍室ダンパ50が開放、冷蔵室ダンパ20が閉鎖、庫内送風機9が停止される(図7におけるステップS308,S309)。これにより、「庫内送風機9が停止、庫外送風機26が停止、冷蔵室ダンパ20が閉鎖、冷凍室ダンパ50が開放、圧縮機が停止、弁42が開放、除霜ヒータ22が通電」の状態となる。この状態では、庫内送風機9が停止状態で除霜ヒータ22が通電状態となっているので、主に自然対流によって除霜ヒータ22から蒸発器7に熱が伝えられ、蒸発器温度は上昇する。また、冷蔵室温度,冷凍室温度は冷却がなされないので上昇する。なお、冷蔵室ダンパ50を閉じているのは、蒸発器収納室8の上方に位置する冷蔵室2に暖気が流入しないようにするためである。また、冷凍室ダンパ20を開放しているのは、蒸発器収納室8の前方の冷凍温度帯室上部への暖気を流入させることで、冷凍温度帯室内に下降流が形成されるので、蒸発器収納室8内の上昇気流が強まり、結果的に、蒸発器温度を所定温度(Tevp2)まで短時間で上昇させることができるためである。一方、弁42を開放したことによって、放熱パイプ40d内に残っていた液冷媒が蒸発器7に流入するので、ヒートパイプによる温度低下抑制効果が得られなくなり結露防止用の放熱パイプ40cの温度は低下するが、このとき蒸発器7に流入した冷媒は、蒸発器7を管内から加熱するので、これによっても蒸発器温度を所定温度(Tevp2)まで短時間で上昇させることができる。
次に、経過時間tKにおいて、蒸発器温度が除霜ヒータ通電停止温度Tevp2に達したので、除霜ヒータ22の通電が停止され、「庫内送風機9が停止、庫外送風機26が停止、冷蔵室ダンパ20が閉鎖、冷凍室ダンパ50が開放、圧縮機が停止、弁42が開放、除霜ヒータ22が非通電」の状態となり除霜運転が終了する。続いて、5分後の経過時間tLにて、圧縮機24が起動し、「庫内送風機9が停止、庫外送風機26が停止、冷蔵室ダンパ20が閉鎖、冷凍室ダンパ50が開放、圧縮機が稼働、弁42が開放、除霜ヒータ22が非通電」の状態となる。この状態では、冷蔵室温度,冷凍室温度は冷却がなされないので上昇するが、蒸発器温度は、圧縮機24が稼働することで温度が低下する。また、結露防止用の放熱パイプ40cの温度は、圧縮機24が稼働することで高温冷媒が供給されるので上昇する。続いて、5分後の経過時間tMより冷凍運転が開始される。
以上で、本実施形態の冷蔵庫の構造と、制御方法の説明をしたが、次に、本実施形態の冷蔵庫の奏する効果について説明する。
本実施形態の冷蔵庫は、圧縮機24停止時に、結露防止用の放熱パイプ40c内に液冷媒が残るように制御している。これにより、冷凍サイクル稼働中に放熱手段40内に存在する高温の液冷媒が、圧縮機停止時に結露防止用の放熱パイプ40c内に残るため、結露防止用の放熱パイプ40cが保温され、圧縮機停止時の結露が生じにくくなる。
本実施形態の冷蔵庫は、圧縮機24停止時に、結露防止用の放熱パイプ40c内が液冷媒で満たされるように冷媒調整運転100を実施している。これにより、冷凍サイクル稼働中に放熱手段40内に存在する高温の液冷媒が、圧縮機停止時に結露防止用の放熱パイプ40cの略全体に残るため、結露防止用の放熱パイプ40cの略全体が保温され、圧縮機停止時の結露が生じ難くなる。
本実施形態の冷蔵庫は、結露防止用の放熱パイプ40c内を全て液冷媒で満たすために必要な冷媒量(約45g)より多い量の冷媒(88g)を封入するようにしている。これにより、冷媒量が不足するために、圧縮機停止時に結露防止用の放熱パイプ40c内に十分な液冷媒を残すことができないといった事態が生じなくなる。
本実施形態の冷蔵庫は、冷凍温度帯室61の仕切、すなわち、上側断熱仕切壁51の前面,下側断熱仕切壁52,横仕切部53,縦仕切部54に配設する結露防止用の放熱パイプ40c内の冷媒流れ(圧縮機24稼働時)が、上記仕切のうち最上部に位置する上側断熱仕切壁51から流入して、最下部に位置する下側断熱仕切壁52から流出するようにしている。これにより、より確実に、特に低温となって結露が生じやすい冷凍温度帯室61の仕切部に、液冷媒を残すことができる。その理由を、図11を参照しながら説明する。図11は、放熱手段の配管内の液冷媒とガス冷媒の分布を模式的に表した図であり、図11(a)は、圧縮機稼働時に冷媒が上方から下方に流れる場合、図11(b)は、圧縮機稼働時に冷媒が下方から上方に流れる場合を表す。
一般に、圧縮機稼働時の放熱手段の配管内の冷媒は、上流から下流に向かって、放熱して(冷却されて)凝縮が進み、下流側ほど液冷媒が増えて、最終的には液冷媒のみとなる(図10参照)。したがって、図11(a)(b)ともに、冷媒流れの上流から下流に向かって液冷媒が増加している。一方、圧縮機を停止すると、液冷媒は、重力の作用で下方に向かうので、配管の下部に液冷媒が貯まる。したがって、基本的な冷媒の流れ方向が上方から下方(重力の方向)に向かう場合、圧縮機稼働時と圧縮機停止時で液冷媒が多くなる領域(破線で示す領域)が略一致するが、基本的な冷媒の流れ方向が下方から上方(重力と逆方向)に向かう場合、圧縮機稼働時と圧縮機停止時で液冷媒が多くなる領域(破線で示す領域)が大きく異なってしまう。したがって、本実施形態の冷蔵庫は、特に低温となって結露が生じやすい冷凍温度帯室61の仕切部の放熱パイプ40c内に、確実に液冷媒を残すために、圧縮機稼働時の冷媒流れが、上記仕切のうち最上部に位置する上側断熱仕切壁51から流入して、最下部に位置する下側断熱仕切壁52から流出するようにしている。
本実施形態の冷蔵庫は、圧縮機24停止前に、弁42を閉鎖して、結露防止用の放熱パイプ40c内の液冷媒を増加させている。これにより、冷凍サイクル稼働中には、結露防止用の放熱パイプ内が液冷媒で満たされていなくても、結露防止用の放熱パイプ40c内の液冷媒量を調整できるので、冷媒の封入量を少なく抑えることができる。
本実施形態の冷蔵庫は、除霜運転開始時に、圧縮機24停止後に、弁42を閉鎖して、放熱手段40内の液冷媒量を減少させて、放熱パイプ40d内がガス冷媒と液冷媒が共存するようにしている。これにより、放熱パイプ40dが蒸発部、結露防止用の放熱パイプ40cが凝縮部となり、ヒートパイプ(サーモサイフォン)によって庫外の熱が結露防止用の放熱パイプ40cに伝えられるので、温度低下が抑制されている。
本実施形態の冷蔵庫は、放熱手段40として、結露防止用の放熱パイプ40cの上流側に主として庫外に放熱することを目的とする凝縮器40aと放熱パイプ40bを備えている。これにより、放熱パイプ40c内は冷凍サイクル稼働状態(冷却運転中)に液冷媒が多く存在させることができるので(図10参照)、圧縮機停止時に、結露防止用の放熱パイプ40c内、あるいは、放熱パイプ40d内に容易に液冷媒を残すようにすることができる。
本実施形態の冷蔵庫は、圧縮機24の吐出冷媒を、凝縮器40aに流入させて、その後放熱パイプ40bに流入するようにしている。これにより、圧縮機24の高温吐出冷媒は、温度が下がってから(本実施形態の冷蔵庫では二相域に入ってから(図10参照))、断熱箱体10の壁に設けられた放熱パイプ40bに流入するので、圧縮機24から吐出される高温冷媒の影響で断熱箱体10の壁が過度に暖められて、庫内への熱侵入量が増加する事態を避けることができ、省エネ性が高い冷蔵庫となる。
本実施形態の冷蔵庫は、圧縮機24停止前に、庫外送風機26を停止している。これにより、結露防止用の放熱パイプ40c内の冷媒温度が上昇するので、圧縮機24を停止した際に温度が低下し難く、結露が生じ難くなる。
本実施形態の冷蔵庫は、圧縮機24停止前の冷却運転(冷凍運転)中は、圧縮機が高回転となっている。これにより、結露防止用の放熱パイプ40c内の冷媒温度が上昇するので、圧縮機24を停止した際に温度が低下し難く、結露が生じ難くなる。
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば上記した実施例においては、弁42を閉鎖することによって放熱手段40から蒸発器7に冷媒が流入することを阻止しているが、圧縮機停止時に圧縮機内の冷媒流路を介して放熱手段から蒸発器に冷媒が流入する場合には、圧縮機の上流側または下流側に圧縮機停止時に閉鎖する第二の弁、あるいは、逆流防止弁を設けてもよい。また、上記した実施例では、圧縮機24の停止前に庫外送風機26を停止しているが(図6または図8参照)、例えば、庫外送風機26の回転数を下げることで放熱手段40の放熱性能を低下させてもよい。また、機械室19内に配設する凝縮器として、蒸発皿21内に貯まる除霜水内に配管を浸す方式の凝縮器を採用してもよい。