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JP7059848B2 - 伝熱板の製造方法及び摩擦攪拌接合方法 - Google Patents

伝熱板の製造方法及び摩擦攪拌接合方法 Download PDF

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JP7059848B2 JP2018139629A JP2018139629A JP7059848B2 JP 7059848 B2 JP7059848 B2 JP 7059848B2 JP 2018139629 A JP2018139629 A JP 2018139629A JP 2018139629 A JP2018139629 A JP 2018139629A JP 7059848 B2 JP7059848 B2 JP 7059848B2
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Description

本発明は、伝熱板の製造方法及び摩擦攪拌接合方法に関する。
特許文献1には、ベース部材の内部に形成された流路に流体を流通させて熱交換等を行う伝熱板の製造方法が記載されている。ベース部材には、表面に開口する蓋溝と、この蓋溝の底面に形成された凹溝とが形成されている。伝熱板を製造する際には、蓋溝に蓋板を配置して、この蓋板の側面と蓋溝の側壁とで形成された突合部に対して摩擦攪拌接合を行っている。特許文献1では、突合部に回転した攪拌ピンを挿入し、攪拌ピンのみをベース部材及び蓋板に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。当該従来技術によれば、攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、攪拌ピンのみを被接合部材に接触させつつ基端部を露出させた状態で摩擦攪拌接合を行うため、接合の高さ位置が変化しても欠陥の発生を抑制することができるとともに、摩擦攪拌装置への負荷も軽減することができる。
特開2015-139800号公報
しかし、特許文献1の製造方法では、ショルダ部で塑性流動材を押えないため、金属部材の表面の段差凹溝が大きくなるとともに、接合表面粗さが大きくなるという問題がある。また、段差凹溝の脇に膨出部(接合前に比べて金属部材の表面が膨らむ部位)が形成されるという問題がある。
このような観点から、本発明は、金属部材の表面の段差凹溝を小さくすることができるとともに、接合表面粗さを小さくすることができる伝熱板の製造方法及び摩擦攪拌接合方法を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために本発明は、ベース部材の表面に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、を含み、前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、前記本接合工程において、前記ベース部材の裏面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記突合せ部に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記ベース部材及び前記蓋板に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
また、本発明は、ベース部材の表面に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記蓋溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、を含み、前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、前記本接合工程において、前記ベース部材の裏面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記突合せ部に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記ベース部材及び前記蓋板に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
また、本発明は、ベース部材の表面に開口する凹溝又は凹部を覆うように、前記ベース部材の表面に蓋板を重ね合わせる閉塞工程と、前記蓋板の表面から基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを挿入し、前記ベース部材の表面と前記蓋板の裏面との重合部に沿って前記本接合用回転ツールを相対移動させる本接合工程と、を含み、前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、前記本接合工程では、前記ベース部材の裏面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記蓋板の表面に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記蓋板の表面に接触させつつ、前記先端側ピンを前記ベース部材と前記蓋板の両方、又は、前記蓋板のみに接触させた状態で前記重合部の摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
また、本発明は、ベース部材の表面に開口する凹溝又は凹部を覆うように、前記ベース部材の表面に蓋板を重ね合わせる閉塞工程と、前記ベース部材の裏面から基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを挿入し、前記ベース部材の表面と前記蓋板の裏面との重合部に沿って前記本接合用回転ツールを相対移動させる本接合工程と、を含み、前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、前記本接合工程では、前記蓋板の表面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記ベース部材の裏面に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記ベース部材の裏面に接触させつつ、前記先端側ピンを前記ベース部材と前記蓋板の両方、又は、前記ベース部材のみに接触させた状態で前記重合部の摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
また、本発明は、基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを用いて二つの金属部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、一方の前記金属部材の表面と他方の前記金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成する重合部形成工程と、他方の前記金属部材の表面から回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを挿入し、前記重合部に沿って前記本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、を含み、前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、前記本接合工程では、一方の前記金属部材の裏面側に設置された冷却板で一方の前記金属部材及び他方の前記金属部材を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを他方の前記金属部材の表面に挿入し、前記基端側ピンの外周面を他方の前記金属部材の表面に接触させつつ、前記先端側ピンを一方の前記金属部材と他方の前記金属部材の両方、又は、他方の前記金属部材のみに接触させた状態で前記重合部の摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
かかる方法によれば、テーパー角度の大きい基端側ピンの外周面でベース部材及び蓋板の少なくとも一方、又は金属部材を押えることができるため、接合表面の段差凹溝を小さくすることができるとともに、段差凹溝の脇に形成される膨出部を無くすか若しくは小さくすることができる。階段状の段差部は浅く、かつ、出口が広いため、基端側ピンで金属部材を押えても基端側ピンの外周面に塑性流動材が付着し難い。このため、接合表面粗さを小さくすることができるとともに、接合品質を好適に安定させることができる。また、先端側ピンを備えることにより深い位置まで容易に挿入することができる。さらに、冷却板でベース部材及び蓋板又は金属部材を冷却しながら摩擦攪拌を行うため、伝熱板の変形を抑制することができる。
また、前記本接合工程の前に、前記突合せ部を仮接合する仮接合工程を含むことが好ましい。また、前記本接合工程の前に、前記重合部を仮接合する仮接合工程を含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、本接合工程の際の突合せ部又は重合部の目開きを防止することができる。
また、前記本接合工程の終了後、前記本接合用回転ツールの摩擦攪拌によって生じたバリを切除するバリ切除工程を含むことが好ましい。かかる方法によれば、接合表面をきれいに仕上げることができる。
本発明に係る伝熱板の製造方法及び摩擦攪拌接合方法によれば、金属部材の表面の段差凹溝を小さくすることができるとともに、接合表面粗さを小さくすることができる。
本発明の実施形態に係る接合方法に用いる本接合用回転ツールを示す側面図である。 本接合用回転ツールの拡大断面図である。 本接合用回転ツールの第一変形例を示す断面図である。 本接合用回転ツールの第二変形例を示す断面図である。 本接合用回転ツールの第三変形例を示す断面図である。 本発明の第一実施形態に係る伝熱板を示す斜視図である。 第一実施形態に係る伝熱板の製造方法の準備工程を示す断面図である。 第一実施形態に係る伝熱板の製造方法の蓋板挿入工程を示す断面図である。 第一実施形態に係る伝熱板の製造方法のタブ材配置工程を示す平面図である。 第一実施形態に係る伝熱板の製造方法の仮接合工程における冷却板への固定作業を示す斜視図である。 第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって仮接合工程を示す。 第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって本接合工程を示す。 従来の回転ツールを示す概念図である。 従来の回転ツールを示す概念図である。 本発明の第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって準備工程を示す。 本発明の第二実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって蓋板挿入工程を示す。 第二実施形態に係る本接合工程を示す断面図である。 本発明の第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって仮接合工程を示す。 本発明の第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって本接合工程を示す。 本発明の第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって仮接合工程を示す。 本発明の第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示す断面図であって本接合工程を示す。 本発明の第五実施形態に係る摩擦攪拌接合方法を示す断面図である。 第五実施形態の変形例を示す断面図である。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。まずは、本実施形態に係る接合方法で用いる本接合用回転ツールおよび仮接合用回転ツールについて説明する。本接合用回転ツールおよび仮接合用回転ツールは、摩擦攪拌接合に用いられるツールである。本実施形態における本接合用回転ツールおよび仮接合用回転ツールは、大きさを除いて同様のものなので、ここでは本接合用回転ツールについて説明を行い、仮接合用回転ツールの説明を省略する。図1に示すように、本接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されており、基軸部F1と、基端側ピンF2と、先端側ピンF3とで主に構成されている。基軸部F1は、円柱状を呈し、摩擦攪拌装置の主軸に接続される部位である。
基端側ピンF2は、基軸部F1に連続し、先端に向けて先細りになっている。基端側ピンF2は、円錐台形状を呈する。基端側ピンF2のテーパー角度Aは適宜設定すればよいが、例えば、135~160°になっている。テーパー角度Aが135°未満であるか、又は、160°を超えると摩擦攪拌後の接合表面粗さが大きくなる。テーパー角度Aは、後記する先端側ピンF3のテーパー角度Bよりも大きくなっている。図2に示すように、基端側ピンF2の外周面には、階段状の段差部F21が高さ方向の全体に亘って形成されている。段差部F21は、右回り又は左回りで螺旋状に形成されている。つまり、段差部F21は、平面視して螺旋状であり、側面視すると階段状になっている。本実施形態では、本接合用回転ツールFを右回転させるため、段差部F21は基端側から先端側に向けて左回りに設定している。
なお、本接合用回転ツールFを左回転させる場合は、段差部F21を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、段差部F21によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。段差部F21は、段差底面F21aと、段差側面F21bとで構成されている。隣り合う段差部F21の各頂点F21c,F21cの距離X1(水平方向距離)は、後記する段差角度C及び段差側面F21bの高さY1に応じて適宜設定される。
段差側面F21bの高さY1は適宜設定すればよいが、例えば、0.1~0.4mmで設定されている。高さY1が0.1mm未満であると接合表面粗さが大きくなる。一方、高さY1が0.4mmを超えると接合表面粗さが大きくなる傾向があるとともに、有効段差部数(被接合金属部材と接触している段差部F21の数)も減少する。
段差底面F21aと段差側面F21bとでなす段差角度Cは適宜設定すればよいが、例えば、85~120°で設定されている。段差底面F21aは、本実施形態では水平面と平行になっている。段差底面F21aは、ツールの回転軸から外周方向に向かって水平面に対して-5°~15°内の範囲で傾斜していてもよい(マイナスは水平面に対して下方、プラスは水平面に対して上方)。距離X1、段差側面F21bの高さY1、段差角度C及び水平面に対する段差底面F21aの角度は、摩擦攪拌を行う際に、塑性流動材が段差部F21の内部に滞留して付着することなく外部に抜けるとともに、段差底面F21aで塑性流動材を押えて接合表面粗さを小さくすることができるように適宜設定する。
図1に示すように、先端側ピンF3は、基端側ピンF2に連続して形成されている。先端側ピンF3は円錐台形状を呈する。先端側ピンF3の先端は平坦面になっている。先端側ピンF3のテーパー角度Bは、基端側ピンF2のテーパー角度Aよりも小さくなっている。図2に示すように、先端側ピンF3の外周面には、螺旋溝F31が刻設されている。螺旋溝F31は、右回り、左回りのどちらでもよいが、本実施形態では本接合用回転ツールFを右回転させるため、基端側から先端側に向けて左回りに刻設されている。
なお、本接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝F31を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、螺旋溝F31によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。螺旋溝F31は、螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成されている。隣り合う螺旋溝F31の頂点F31c,F31cの距離(水平方向距離)を長さX2とする。螺旋側面F31bの高さを高さY2とする。螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成される螺旋角度Dは例えば、45~90°で形成されている。螺旋溝F31は、被接合金属部材と接触することにより摩擦熱を上昇させるとともに、塑性流動材を先端側に導く役割を備えている。
本接合用回転ツールFは、適宜設計変更が可能である。図3は、本発明の本接合用回転ツールの第一変形例を示す側面図である。図3に示すように、第一変形例に係る本接合用回転ツールFAでは、段差部F21の段差底面F21aと段差側面F21bとのなす段差角度Cが85°になっている。段差底面F21aは、水平面と平行である。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、段差角度Cは、摩擦攪拌中に段差部F21内に塑性流動材が滞留して付着することなく外部に抜ける範囲で鋭角としてもよい。
図4は、本発明の本接合用回転ツールの第二変形例を示す側面図である。図4に示すように、第二変形例に係る本接合用回転ツールFBでは、段差部F21の段差角度Cが115°になっている。段差底面F21aは水平面と平行になっている。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、段差部F21として機能する範囲で段差角度Cが鈍角となってもよい。
図5は、本発明の本接合用回転ツールの第三変形例を示す側面図である。図5に示すように、第三変形例に係る本接合用回転ツールFCでは、段差底面F21aがツールの回転軸から外周方向に向かって水平面に対して10°上方に傾斜している。段差側面F21bは、鉛直面と平行になっている。このように、摩擦攪拌中に塑性流動材を押さえることができる範囲で、段差底面F21aがツールの回転軸から外周方向に向かって水平面よりも上方に傾斜するように形成されていてもよい。上記の本接合用回転ツールの第一~第三変形例によっても、下記の実施形態と同等の効果を奏することができる。
[第一実施形態]
次に、本実施形態の伝熱板について説明する。以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。図6に示すように、本実施形態に係る伝熱板1は、ベース部材2と、蓋板5とで主に構成されている。ベース部材2は、略直方体を呈する。ベース部材2には、凹溝3と、蓋溝4とが形成されている。ベース部材2及び蓋板5の材料は摩擦攪拌可能であれば特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム合金である。ベース部材2は、例えば、蓋板5よりも硬度の高い材種で形成されている。
凹溝3は、ベース部材2の中央において、一方の側面から他方の側面に向けて貫通している。凹溝3は、蓋溝4の底面に凹設されている。凹溝3の底部は、円弧状になっている。凹溝3の開口は、ベース部材2の表面2a側に開放されている。
蓋溝4は、凹溝3よりも幅広になっており、凹溝3の表面2a側において凹溝3に連続して形成されている。蓋溝4は、断面視矩形を呈し、表面2a側に開放されている。
蓋板5は、蓋溝4に挿入される板状部材である。蓋板5は、蓋溝4に隙間無く挿入されるように、蓋溝4の中空部と同じ形状になっている。
蓋溝4の一対の側壁と蓋板5の一対の側面とが突き合わされて突合せ部J,Jが形成される。突合せ部J,Jは、深さ方向に亘って摩擦攪拌により接合されている。伝熱板1の凹溝3と蓋板5の下面とで囲まれた空間が、流体が流通する流路となる。
次に、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法について説明する。伝熱板の製造方法では、準備工程と、蓋板挿入工程と、タブ材配置工程と、仮接合工程と、本接合工程とを行う。
図7Aに示すように、準備工程は、ベース部材2を用意する工程である。準備工程では、エンドミル等を用いて凹溝3及び蓋溝4を切削加工により形成する。なお、ダイキャスト又は押し出し成形等によって予め凹溝3及び蓋溝4が形成されたベース部材2を用いてもよい。
図7Bに示すように、蓋板挿入工程は、蓋溝4に蓋板5を挿入する工程である。蓋溝4の側壁と、蓋板5の側面とがそれぞれ突き合わされて突合せ部J,Jが形成される。蓋板5の上面と表面2aとは面一になる。
図8に示すように、タブ材配置工程は、ベース部材2の側面にタブ材10,10を配置する工程である。タブ材10は、後記する摩擦攪拌の開始位置及び終了位置を設定する部材である。タブ材10は、ベース部材2の対向する側面に面接触されるとともに、突合せ部J,Jの延長線上に配置される。タブ材10は、本実施形態では、ベース部材2と同等の材料であるアルミニウム合金で形成されている。タブ材10は、タブ材10とベース部材2との入り隅部を溶接することにより接合される。
図9に示すように、仮接合工程では、まず、一体となったベース部材2、蓋板5およびタブ材10,10をテーブルKに固定する。テーブルKは、金属製であって直方体を呈する基板K1と、基板K1の四隅に形成されたクランプK3と、基板K1の内部に配設された冷却管WPによって構成されている。テーブルKは、仮接合工程及び本接合工程の際に、一体となったベース部材2、蓋板5およびタブ材10,10を移動不能に拘束するとともに、ベース部材2及び蓋板5を冷却する。つまり、テーブルKは、特許請求の範囲の「冷却板」として機能する部材である。ここでは、タブ材10,10が取り付けられたベース部材2の下にテーブルKが配置される。
冷却管WPは、基板K1の内部に埋設される管状部材である。冷却管WPの内部には、基板K1を冷却する冷却媒体が流通する。冷却管WPの配設位置、つまり、冷却媒体が流れる冷却流路の形状は特に制限されないが、仮接合工程における仮接合用回転ツールG及び本接合工程における本接合用回転ツールFの移動軌跡に沿う平面形状になっている。即ち、平面視した際に、冷却管WPの一部と突合せ部J,Jとが略重なるように冷却管WPが配設されている。
図10Aに示すように、仮接合工程は、仮接合用回転ツールGを用いて突合せ部J,Jに対して予備的に摩擦攪拌接合を行う工程である。仮接合用回転ツールGは、本接合用回転ツールFと同形状になっており、本接合用回転ツールFよりも小さくなっている。仮接合工程では、ベース部材2の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら摩擦攪拌接合を行う。仮接合工程の開始位置及び終了位置は、ベース部材2及びタブ材10の表面上であれば特に制限されないが、本実施形態では、タブ材10の表面に設定している。
具体的には、仮接合工程の開始位置を一方のタブ材10の表面に設定し、一方の突合せ部Jの全長に摩擦攪拌接合を行う。仮接合用回転ツールGの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。他方のタブ材10まで仮接合用回転ツールGを移動させたら、そのままタブ材10の表面で折り返させ、他方の突合せ部Jの全長に摩擦攪拌接合を行う。仮接合用回転ツールGを一方のタブ材10まで移動させたら、タブ材10から仮接合用回転ツールGを離脱させる。
仮接合工程では、基端側ピンG2と先端側ピンG3とをベース部材2及び蓋板5に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。回転する仮接合用回転ツールGの先端側ピンG3を突合せ部Jに挿入しつつ、基端側ピンG2の外周面でベース部材2及び蓋板5を押さえながら摩擦攪拌接合を行う。仮接合用回転ツールGは、突合せ部Jに沿って相対移動させる。基端側ピンG2及び先端側ピンG3の挿入深さは、基端側ピンG2の外周面がベース部材2及び蓋板5を押さえることが可能な範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、基端側ピンG2の外周面の高さ方向の中央部あたりがベース部材2及び蓋板5に接触するように設定している。仮接合用回転ツールGの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。
図10Bに示すように、本接合工程は、本接合用回転ツールFを用いて突合せ部J,Jに対して摩擦攪拌接合を行う工程である。本接合工程では、仮接合工程に引き続き、ベース部材2の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら摩擦攪拌接合を行う。本接合工程の開始位置及び終了位置は、タブ材10の表面に設定することが好ましい。本接合用回転ツールFをタブ材10に挿入する際には、仮接合用回転ツールGの抜き孔を利用してもよいし、タブ材10に別途下穴を設けて、当該下穴から本接合用回転ツールFを挿入してもよい。
本接合工程では、基端側ピンF2と先端側ピンF3とをベース部材2及び蓋板5に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。回転する本接合用回転ツールFの先端側ピンF3を突合せ部Jに挿入しつつ、基端側ピンF2の外周面でベース部材2及び蓋板5を押さえながら摩擦攪拌接合を行う。本接合用回転ツールFは、突合せ部Jに沿って相対移動させる(つまり、仮接合工程で形成された塑性化領域W1をなぞるようにして移動させる)。基端側ピンF2及び先端側ピンF3の挿入深さは、基端側ピンF2の外周面がベース部材2及び蓋板5を押さえることが可能な範囲で適宜設定すればよい。例えば、基端側ピンF2及び先端側ピンF3の挿入深さは、基端側ピンF2の外周面がベース部材2及び蓋板5を押さえることが可能な範囲であり、かつ、先端側ピンF3が蓋溝4に達するように設定してもよい。本実施形態では、基端側ピンF2の外周面の高さ方向の中央部あたりがベース部材2及び蓋板5に接触するように設定している。本接合用回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域Wが形成される。突合せ部Jと凹溝3との距離は、本接合工程を行った際に、凹溝3に塑性流動材が流入しないように設定することが好ましい。本接合工程が終了したら、タブ材10をベース部材2から切除する。
なお、本接合工程の終了後、摩擦攪拌によって生じたバリを切除するバリ切除工程を行ってもよい。バリ切除工程を行うことで、ベース部材2及び蓋板5の表面をきれいに仕上げることができる。
ここで、例えば、図11Aに示すように、従来の回転ツール200であると、ショルダ部で被接合金属部材210の表面を押えないため段差凹溝(被接合金属部材の表面と塑性化領域の表面とで構成される段差凹溝)が大きくなるとともに、接合表面粗さが大きくなるという問題がある。また、段差凹溝の脇に膨出部(接合前に比べて被接合金属部材の表面が膨らむ部位)が形成されるという問題がある。一方、図11Bの回転ツール201のように、回転ツール201のテーパー角度βを回転ツール200のテーパー角度αよりも大きくすると、回転ツール200に比べて被接合金属部材210の表面を押えることはできるため、段差凹溝は小さくなり、膨出部も小さくなる。しかし、下向きの塑性流動が強くなるため、塑性化領域の下部にキッシングボンドが形成されやすくなる。
これに対し、本実施形態の本接合用回転ツールFは、基端側ピンF2と、基端側ピンF2のテーパー角度Aよりもテーパー角度が小さい先端側ピンF3を備えた構成になっている。これにより、突合せ部Jに本接合用回転ツールFを挿入しやすくなる。また、先端側ピンF3のテーパー角度Bが小さいため、突合せ部Jの深い位置まで本接合用回転ツールFを容易に挿入することができる。また、先端側ピンF3のテーパー角度Bが小さいため、回転ツール201に比べて下向きの塑性流動を抑えることができる。このため、塑性化領域Wの下部にキッシングボンドが形成されるのを防ぐことができる。一方、基端側ピンF2のテーパー角度Aは大きいため、従来の回転ツールに比べ、被接合金属部材の厚さや接合の高さ位置が変化しても安定して接合することができる。
また、基端側ピンF2の外周面で塑性流動材を押えることができるため、接合表面に形成される段差凹溝を小さくすることができるとともに、段差凹溝の脇に形成される膨出部を無くすか若しくは小さくすることができる。また、階段状の段差部F21は浅く、かつ、出口が広いため、塑性流動材を段差底面F21aで押さえつつ塑性流動材が段差部F21の外部に抜けやすくなっている。そのため、基端側ピンF2で塑性流動材を押えても基端側ピンF2の外周面に塑性流動材が付着し難い。よって、接合表面粗さを小さくすることができるとともに、接合品質を好適に安定させることができる。
また、本接合工程では、必ずしも突合せ部J,Jの深さ方向の全長に亘って摩擦攪拌を行う必要は無いが、突合せ部Jの深さの全長に亘って摩擦攪拌すれば、伝熱板1の水密性及び気密性を高めることができる。
また、冷却板として機能するテーブルKでベース部材2及び蓋板5を冷却しながら摩擦攪拌を行うことで、摩擦熱を低減することができる。これにより、熱収縮に起因する伝熱板1の変形を小さくすることができる。また、本実施形態では、平面視した場合に、冷却流路と突合せ部J,J(仮接合用回転ツールG及び本接合用回転ツールFの移動軌跡)とが重なるようになっているため、摩擦熱が発生する部分を集中的に冷却できる。これにより、冷却効率を高めることができる。また、冷却管WPを配設して冷却媒体を流通させるため、冷却媒体の管理が容易となる。また、テーブルK(冷却板)とベース部材2の裏面2bとが面接触するため、冷却効率を高めることができる。
また、仮接合工程を行うことで、本接合工程を行う際に、ベース部材2と蓋板5との目開きを防ぐことができる。また、仮接合工程及び本接合工程では、摩擦攪拌の途中で仮接合用回転ツールG及び本接合用回転ツールFをベース部材2から離脱させず、一筆書きの要領で各回転ツールを移動させるため、作業手間を少なくすることができる。
なお、仮接合工程では、仮接合用回転ツールGによる塑性化領域W1が断続的に形成されるように不連続に摩擦攪拌を行ってもよい。また、仮接合工程では、溶接によって突合せ部J,Jを接合してもよい。また、タブ材10とベース部材2とを仮接合用回転ツールGを用いて仮接合してもよい。
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る伝熱板は、熱媒体用管6を備えている点で第一実施形態と相違する。熱媒体用管6は、その内部に流体が流通する部材である。
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法では、準備工程と、熱媒体用管挿入工程と、蓋板挿入工程と、仮接合工程と、本接合工程とを行う。
図12Aに示すように、準備工程は、ベース部材2を用意する工程である。
図12Bに示すように、熱媒体用管挿入工程は、凹溝3に熱媒体用管6を挿入する工程である。凹溝3及び熱媒体用管6の大きさ等は適宜設定すればよいが、本実施形態では、熱媒体用管6の外径と、凹溝3の幅及び深さは略同等になっている。
蓋板挿入工程は、蓋溝4に蓋板5を挿入する工程である。蓋溝4の側壁と蓋板5の側面とが突き合わされて突合せ部Jが形成される。蓋溝4に蓋板5を挿入すると、熱媒体用管6と蓋板5とが接触するとともに、ベース部材2の表面2aと蓋板5の上面とは面一になる。
仮接合工程は、突合せ部J,Jに対して予備的に接合を行う工程である。仮接合工程は、第一実施形態と同じように、ベース部材2の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら摩擦攪拌接合を行う。
図13に示すように、本接合工程は、本接合用回転ツールFを用いて突合せ部J,Jに対して摩擦攪拌接合を行う工程である。本接合工程は、第一実施形態と同じように、仮接合工程に引き続き、ベース部材2の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら摩擦攪拌接合を行う。本接合用回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域W,Wが形成される。塑性化領域Wは、突合せ部J,Jの深さ方向に亘って形成される。
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、熱媒体用管6を備えた伝熱板1Aを容易に製造することができる。
また、例えば、第一実施形態及び第二実施形態に係る凹溝3、蓋溝4、蓋板5及び熱媒体用管6の形状は、あくまで例示であって、他の形状であってもよい。また、本接合工程後に、ベース部材2の表面2aと塑性化領域Wの表面との間に段差が生じた場合は、当該段差を埋めるように肉盛り溶接を行ってもよい。もしくは、塑性化領域Wの表面に金属部材を配置し、当該金属部材とベース部材2とを本接合用回転ツールFで摩擦攪拌接合してもよい。
また、本実施形態では、蓋溝4を設ける場合を例示したが、蓋溝4を設けず、凹溝3に直接蓋板5を挿入するようにしてもよい。
また、図13に示すように、熱媒体用管6の周囲に空隙部Qが形成されている場合、本接合工程によって、この空隙部Qを埋めてもよい。蓋板挿入工程において、蓋溝4に蓋板5を挿入すると、凹溝3、蓋板5の下面及び熱媒体用管6によって空隙部Qが形成される。突合せ部J,Jの位置を熱媒体用管6に近接させるとともに、本接合工程では、本接合用回転ツールFによって形成された塑性流動材を空隙部Qに流入させる。これにより、熱媒体用管6の周囲の空隙部Qが金属で充填されるため、水密性及び気密性をより高めることができる。
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材2に蓋溝4が形成されておらず、ベース部材2の表面2aに蓋板5を載置する点で第一実施形態と相違する。
第三実施形態に係る伝熱板の製造方法では、準備工程と、凹溝閉塞工程と、仮接合工程と、本接合工程とを行う。
図14Aに示すように、準備工程は、ベース部材2を用意する工程である。ベース部材2の表面2aに凹溝3を形成する。
凹溝閉塞工程(閉塞工程)は、ベース部材2の表面2aに蓋板5を載置して凹溝3の上方を覆う工程である。凹溝閉塞工程では、ベース部材2の表面2aと蓋板5の裏面5bとが重ね合わされて重合部J1が形成される。
仮接合工程は、重合部J1に対して予備的に接合を行う工程である。仮接合工程では、第一実施形態と同じように、ベース部材2の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら仮接合を行う。仮接合工程は、本実施形態では、ベース部材2及び蓋板5の側面から仮接合用回転ツールGを挿入し、重合部J1に対して摩擦攪拌接合を行う。仮接合工程後には、ベース部材2及び蓋板5の側面には、塑性化領域W1が形成される。
図14Bに示すように、本接合工程は、本接合用回転ツールFを用いて重合部J1に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。本接合工程は、仮接合工程に引き続き、ベース部材2の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら摩擦攪拌接合を行う。回転する本接合用回転ツールFの先端側ピンF3を蓋板5の表面5aから挿入して、凹溝3の長手方向に沿って本接合用回転ツールFを相対移動させて重合部J1を摩擦攪拌接合する。凹溝3に塑性流動材が流入しないように、本接合用回転ツールFの移動ルートを設定する。なお、本接合用回転ツールFの移動ルートは、冷却管WPの配設位置に沿うものであるのがよい。即ち、平面視した際に、冷却管WPの一部と本接合工程における本接合用回転ツールFの移動軌跡とが略重なるのがよい。
本接合工程では、基端側ピンF2の外周面で蓋板5の表面5aを押さえながら摩擦攪拌接合を行う。本接合工程では、基端側ピンF2を蓋板5に接触させつつ、先端側ピンF3をベース部材2及び蓋板5の両方に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。基端側ピンF2及び先端側ピンF3の挿入深さは、基端側ピンF2の外周面が蓋板5の表面5aを押さえることが可能な範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、基端側ピンF2の外周面の高さ方向の中央部あたりを蓋板5の表面5aに接触させつつ、先端側ピンF3がベース部材2に接触するように設定する。このようにしても、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。
第三実施形態に係る伝熱板の製造方法のように、蓋溝4を設けず、ベース部材2の表面2aに板厚の大きい蓋板5を載置する形態であっても、伝熱板1Bを容易に製造することができる。また、仮接合工程を行うことで、本接合工程を行う際に、ベース部材2と蓋板5との目開きを防ぐことができる。
また、冷却板として機能するテーブルKでベース部材2及び蓋板5を冷却しながら摩擦攪拌を行うことで、摩擦熱を低減することができる。これにより、熱収縮に起因する伝熱板1Bの変形を小さくすることができる。また、本実施形態では、平面視した場合に、冷却流路と本接合工程における本接合用回転ツールFの移動軌跡とが重なるようになっているため、摩擦熱が発生する部分を集中的に冷却できる。これにより、冷却効率を高めることができる。また、冷却管WPを配設して冷却媒体を流通させるため、冷却媒体の管理が容易となる。また、テーブルK(冷却板)とベース部材2の裏面2bとが面接触するため、冷却効率を高めることができる。
なお、仮接合工程では、仮接合用回転ツールGによる塑性化領域W1が断続的に形成されるように不連続に摩擦攪拌を行ってもよい。また、仮接合工程では、溶接によって重合部J1を接合してもよい。また、第一実施形態のようにタブ材を用いて仮接合工程及び本接合工程を行ってもよい。
また、本実施形態の本接合工程では、先端側ピンF3の先端が、ベース部材2に達する位置まで押し込むように設定したが、ベース部材2に達しないように設定する、つまり、基端側ピンF2及び先端側ピンF3の両方が蓋板5のみと接触するように挿入深さを設定してもよい。このような場合は、基端側ピンF2及び先端側ピンF3と蓋板5との接触によって生じた摩擦熱で、重合部J1が塑性流動化されることにより、重合部J1が接合される。
また、本実施形態の本接合工程では、蓋板5の表面5aから本接合用回転ツールFを挿入したが、ベース部材2の裏面2bから本接合用回転ツールFを挿入して、重合部J1を摩擦攪拌するようにしてもよい。この場合には、蓋板5の上に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら本接合を行う。このような場合であっても、先端側ピンF3を、ベース部材2及び蓋板5の両方と接触する位置まで押し込んでもよいし、ベース部材2のみと接触する位置まで押し込んで、重合部J1を摩擦攪拌するように設定してもよい。
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、大きな窪みを備えた凹部20が形成されている点で第三実施形態と相違する。
第四実施形態に係る伝熱板の製造方法は、準備工程と、凹部閉塞工程と、仮接合工程と、本接合工程とを行う。
図15Aに示すように、準備工程は、ベース部材2を用意する工程である。ベース部材2の表面2aに凹部20を形成する。凹部20は、凹溝3よりも十分に広い窪みとなっている。
凹部閉塞工程(閉塞工程)は、ベース部材2の表面2aに蓋板5を載置して凹部20の上方を覆う工程である。凹部閉塞工程では、ベース部材2の表面2aと蓋板5の裏面5bとが重ね合わされて重合部J1が形成される。
図15A,図15Bに示すように、仮接合工程および本接合工程では、第三実施形態と同じように、ベース部材2の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら仮接合および本接合を行う。仮接合工程及び本接合工程は、第三実施形態と同等であるため、詳細な説明は省略する。これにより、伝熱板1Cが形成される。
第四実施形態に係る伝熱板の製造方法では、第三実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、第四実施形態によれば、凹溝3よりも大きな凹部20を備えるとともに板厚の大きい蓋板5を載置する場合であっても、伝熱板1Cを容易に形成することができる。
なお、本実施形態の本接合工程では、先端側ピンF3の先端が、ベース部材2に達する位置まで押し込むように設定したが、ベース部材2に達しないように設定する、つまり、基端側ピンF2及び先端側ピンF3と蓋板5のみとが接触する位置まで押し込み、重合部J1を摩擦攪拌するように設定してもよい。このような場合は、基端側ピンF2及び先端側ピンF3と蓋板5との接触によって生じた摩擦熱で、ベース部材2及び蓋板5が塑性流動化されることにより、重合部J1が接合される。
また、本実施形態の本接合工程では、蓋板5の表面5aから本接合用回転ツールFを挿入したが、ベース部材2の裏面2bから本接合用回転ツールFを挿入して、重合部J1を摩擦攪拌するようにしてもよい。この場合には、蓋板5の上に冷却板として機能するテーブルKを配置して、ベース部材2及び蓋板5を冷却しながら本接合を行う。この場合であっても、先端側ピンF3は、ベース部材2及び蓋板5の両方と接触する位置まで押し込んでもよいし、ベース部材2のみと接触する位置まで押し込んで、摩擦攪拌するように設定してもよい。
〔第五実施形態〕
次に、本発明の第五実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について説明する。第五実施形態では、凹溝3や凹部20等の流路を備えていない金属部材同士を接合する点で他の実施形態と相違する。
第五実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、準備工程と、重ね合わせ工程(重合部形成工程)と、仮接合工程と、本接合工程とを行う。
図16に示すように、準備工程は、金属部材31,32を用意する工程である。金属部材31,32は、板状の金属部材である。金属部材31,32の種類は、摩擦攪拌可能な金属から適宜選択すればよい。例えば、本接合用回転ツールFが挿入される金属部材32の材種は、金属部材31よりも硬度の低い材種としてもよい。
重ね合わせ工程(重合部形成工程)は、金属部材31,32を重ね合わせる工程である。重ね合わせ工程では、金属部材31の表面31aに、金属部材32の裏面32bを重ね合わせて、重合部J1を形成する。
仮接合工程は、重合部J1に対して予備的に接合を行う工程である。仮接合工程では、金属部材31の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、金属部材31,32を冷却しながら仮接合を行う。仮接合工程は、本実施形態では、金属部材31,32の側面から仮接合用回転ツールGを挿入し、重合部J1に対して摩擦攪拌接合を行う。仮接合工程後には、金属部材31,32の側面には、塑性化領域W1が形成される。
本接合工程は、本接合用回転ツールFを用いて重合部J1に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。本接合工程は、仮接合工程に引き続き、金属部材31の下に冷却板として機能するテーブルKを配置して、金属部材31,32を冷却しながら摩擦攪拌接合を行う。回転する本接合用回転ツールFの先端側ピンF3を金属部材32の表面32aから挿入して、本接合用回転ツールFを相対移動させて重合部J1を摩擦攪拌接合する。本接合工程では、基端側ピンF2の外周面で金属部材32の表面32aを押さえながら摩擦攪拌接合を行う。本接合工程では、基端側ピンF2を金属部材32に接触させつつ、先端側ピンF3を金属部材31,32の両方に接触させた状態(先端側ピンF3の先端が金属部材31に入り込んだ状態)で摩擦攪拌接合を行う。これにより、複合板1Dが形成される。なお、本接合用回転ツールFの移動ルートは、冷却管WPの配設位置に沿うものであるのがよい。即ち、平面視した際に、冷却管WPの一部と本接合工程における本接合用回転ツールFの移動軌跡とが略重なるのがよい。
第五実施形態に係る摩擦攪拌接合方法によれば、内部に流路を設けない複合板1Dが容易に形成される。第五実施形態に係る摩擦攪拌接合方法によっても第三実施形態と略同等の効果を得ることができる。
また、仮接合工程を行うことで、本接合工程を行う際に、金属部材31,32間の目開きを防ぐことができる。
なお、仮接合工程では、仮接合用回転ツールGによる塑性化領域W1が断続的に形成されるように不連続に摩擦攪拌を行ってもよい。また、仮接合工程では、溶接によって重合部J1を接合してもよい。また、第一実施形態のようにタブ材を用いて仮接合工程及び本接合工程を行ってもよい。
また、図17に示すように、本接合工程を行う際に、先端側ピンF3が金属部材31に達しないようにする、つまり、基端側ピンF2及び先端側ピンF3が金属部材32のみと接触するように設定して摩擦攪拌を行ってもよい。このような場合は、塑性化領域Wと重合部J1とを接触させることで、金属部材31,32同士を接合することができる。つまり、基端側ピンF2及び先端側ピンF3と金属部材32との接触によって生じた摩擦熱で、金属部材31,32が塑性流動化されることにより、重合部J1を接合することができる。これにより、複合板1Eが形成される。
1 伝熱板
2 ベース部材
3 凹溝
4 蓋溝
5 蓋板
6 熱媒体用管
10 タブ材
20 凹部
31 金属部材
32 金属部材
F 本接合用回転ツール
F2 基端側ピン
F3 先端側ピン
G 仮接合用回転ツール
G2 基端側ピン
G3 先端側ピン
J 突合せ部
J1 重合部
K テーブル(冷却板)
WP 冷却管
W,W1 塑性化領域

Claims (10)

  1. ベース部材の表面に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、
    前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、を含み、
    前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、
    前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、
    前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、
    前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、
    前記本接合工程において、前記ベース部材の裏面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記突合せ部に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記ベース部材及び前記蓋板に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする伝熱板の製造方法。
  2. ベース部材の表面に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、
    前記蓋溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、
    前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、を含み、
    前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、
    前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、
    前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、
    前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、
    前記本接合工程において、前記ベース部材の裏面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記突合せ部に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記ベース部材及び前記蓋板に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする伝熱板の製造方法。
  3. 前記本接合工程の前に、前記突合せ部を仮接合する仮接合工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
  4. ベース部材の表面に開口する凹溝又は凹部を覆うように、前記ベース部材の表面に蓋板を重ね合わせる閉塞工程と、
    前記蓋板の表面から基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを挿入し、前記ベース部材の表面と前記蓋板の裏面との重合部に沿って前記本接合用回転ツールを相対移動させる本接合工程と、を含み、
    前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、
    前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、
    前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、
    前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、
    前記本接合工程では、前記ベース部材の裏面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記蓋板の表面に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記蓋板の表面に接触させつつ、前記先端側ピンを前記ベース部材と前記蓋板の両方、又は、前記蓋板のみに接触させた状態で前記重合部の摩擦攪拌を行うことを特徴とする伝熱板の製造方法。
  5. ベース部材の表面に開口する凹溝又は凹部を覆うように、前記ベース部材の表面に蓋板を重ね合わせる閉塞工程と、
    前記ベース部材の裏面から基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを挿入し、前記ベース部材の表面と前記蓋板の裏面との重合部に沿って前記本接合用回転ツールを相対移動させる本接合工程と、を含み、
    前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、
    前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、
    前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、
    前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、
    前記本接合工程では、前記蓋板の表面側に設置された冷却板で前記ベース部材及び前記蓋板を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを前記ベース部材の裏面に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記ベース部材の裏面に接触させつつ、前記先端側ピンを前記ベース部材と前記蓋板の両方、又は、前記ベース部材のみに接触させた状態で前記重合部の摩擦攪拌を行うことを特徴とする伝熱板の製造方法。
  6. 前記本接合工程の前に、前記重合部を仮接合する仮接合工程を含むことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の伝熱板の製造方法。
  7. 前記本接合工程の終了後、前記本接合用回転ツールの摩擦攪拌によって生じたバリを切除するバリ切除工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
  8. 基端側ピンと先端側ピンとを備えた本接合用回転ツールを用いて二つの金属部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、
    一方の前記金属部材の表面と他方の前記金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成する重合部形成工程と、
    他方の前記金属部材の表面から回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを挿入し、前記重合部に沿って前記本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、を含み、
    前記本接合用回転ツールの前記基端側ピンのテーパー角度は、135°~160°であり、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、
    前記基端側ピンの外周面には、螺旋状であり、側面視すると階段状の段差部が形成されており、
    前記段差部の段差底面と段差側面とでなす段差角度は85°~120°であり、
    前記先端側ピンの外周面には、螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝の螺旋底面と螺旋側面とで構成される螺旋角度が45°~90°であり、
    前記本接合工程では、一方の前記金属部材の裏面側に設置された冷却板で一方の前記金属部材及び他方の前記金属部材を冷却しつつ、回転した前記本接合用回転ツールの先端側ピンを他方の前記金属部材の表面に挿入し、前記基端側ピンの外周面を他方の前記金属部材の表面に接触させつつ、前記先端側ピンを一方の前記金属部材と他方の前記金属部材の両方、又は、他方の前記金属部材のみに接触させた状態で前記重合部の摩擦攪拌を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
  9. 前記本接合工程の前に、前記重合部を仮接合する仮接合工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の摩擦攪拌接合方法。
  10. 前記本接合工程の終了後、前記本接合用回転ツールの摩擦攪拌によって生じたバリを切除するバリ切除工程を含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の摩擦攪拌接合方法。
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