JP7059720B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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ニップ部を形成するニップ形成部材又はその一部に高い熱伝導性を有する均熱部材を用いることで、熱を拡散させて過剰な温度上昇を抑制することができる。
しかしながら、定着ベルトの内周面に塗布された潤滑剤は、定着ニップの入口や出口でニップ形成部材に掻き取られるため、定着ベルトの内周面に付着した潤滑剤の量は経時で減少し、摩擦負荷が増大してしまうため、定着ベルトの破損や、定着ベルトを回転させる部材の破損を招くおそれがある。
また、特許文献3には、表面の凹凸が連続性を有する溝形状であり、該連続性を有する溝形状が摺動方向に対して所定間隔を有すると共に、当接させる面における摺動方向と平行方向の端部から中心線にかけて摺動方向に向うように直線状に傾斜して設けられ、表面の摺動方向の十点平均粗さRzが、摺動方向と垂直方向の十点平均粗さ表面粗さRzよりも大きい電子写真装置用摺動部材が開示されている。
さらに、特許文献4には、樹脂フィルム管状体と押圧部材との間に介在させる部材としてシート状摺動部材を備え、該シート状摺動部材が少なくとも摺動面が耐熱性樹脂を含んで構成される非多孔質状シートからなり、表面に凹凸を有する基材上に非多孔質シートが設けられてなる定着装置が開示されている。
また、凹部に保持される潤滑剤の量も、潤滑剤が回収される機構がなければ経時で減少していくため、同様に経時でトルクの上昇を招くこととなる。
特に、生産性の高い高速機に適用される定着装置としては、長寿命かつコストが低いことが好ましいが、上述の従来の技術においてはこれらを両立させることは困難である。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8等を備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
本発明に係る定着装置20は、図2に示すように、回転可能に設けられた無端状の定着ベルト21と、回転可能に設けられ、定着ベルト21を外周側から加圧する加圧部材(加圧ローラ)22と、金属からなる均熱部材29を介して定着ベルト21を内周側から押圧し、定着ベルト21と加圧部材22との間に定着ニップ部Nを形成するニップ形成部材24と、定着ベルト21を加熱する熱源23と、を備える。
さらに、支持部材としてのステー25、反射部材26、及び分離部材28を備える。
均熱部材29は、詳しくは後述するが、図3に示すように定着ベルト21との当接面に皮膜40を有するとともに、複数の凹部50が形成されてなり、凹部50は、定着ベルト21の回転方向の上流側と下流側とで傾斜方向及び傾斜角の異なる傾斜面を有する。(なお、図2では凹部50を省略している。)
以下、熱源23がハロゲンヒータである態様について説明する。
ハロゲンヒータ23は、ガラス管内に不活性ガスとしてキセノン及びクリプトンのいずれかを主成分とするガス(以下、「封入ガス」ともいう)を封入したハロゲンランプを備えている。封入ガスの成分であるキセノンまたはクリプトンは、アルゴンよりも分子量の大きいガスである。
ニップ形成部材24は非回転であり、後述する均熱部材29を介して定着ベルト21の内周面に接触し、定着ベルト21の内周面と間接的に摺動するようになっている。
潤滑剤としては、フッ素化合物またはシリコン化合物を含むものが好ましく、例えば、フッ素化合物を含むフッ素オイルやフッ素グリス、フッ素粒子を増ちょう剤とするフッ素グリス、及びシリコーングリス等が挙げられる。
均熱部材29は、ニップ形成部材24のニップ側の面を覆うように配置された金属からなる熱伝導部材であって、金属としては銅、アルミニウム、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い金属材料が挙げられる。
なお、定着ベルト基材にポリイミド(熱伝導率0.29W/m・K)などの樹脂材料を用いた場合は、均熱部材29として鉄系のSUS材質(例えば熱伝導率19W/m・K)等の金属材料も使用することが出来る。
皮膜40としては、例えば、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を含むものが挙げられる。
定着ベルト21と摺動する当接面には、充滑剤を保持するために凹凸が形成されていることが好ましい。
Raの値を所望の範囲とする塗工条件については、公知の方法を適用することができ、例えば、均熱部材29の金属材質にフッ素樹脂をスプレーで吹き付ける方法(スプレーコート)などが挙げられる。
また、特許文献1(特開2017-125922)に記載のフッ素樹脂の分散メッキ皮膜とすることができる。分散メッキ皮膜は、例えば、Ni-Pマトリックスにフッ素樹脂が分散され、かつ280~320℃で析出硬化されたものである。
特に、高生産の画像形成装置(高速機)のように摺擦速度が速いシステムに搭載される定着装置において、磨耗量とトルク上昇低減を両立させる範囲が極めて低くなるため、皮膜40に形成した凹凸のみで対応することは困難である。
図3(A)は均熱部材29の断面図、図3(B)は均熱部材29の斜視図である。
凹部50を設けることにより、皮膜40が磨耗して潤滑剤の保持量が減少した場合でも、供給量の減少は抑制することができ、経時によるトルク上昇も抑えることができる。
これにより、適用可能な皮膜40のRaの範囲を拡大することができ、歩留まりが向上し、製造コストを低減することができる。すなわち、皮膜40の表面粗さRaが0.1未満または5.0を超える場合であっても、経時によるトルク上昇を抑えて長寿命化の効果が得られる。
凹部50の一例を図4に示す。図4(A)は均熱部材29の定着ベルト21の回転方向の断面図であり、図4(B)は均熱部材29の上面図である。
凹部50を構成する壁面のうち、定着ベルト21の回転方向に沿って連続する面が少なくとも2つの傾斜面で構成され、該2つの傾斜面の上流側と下流側とで傾斜方向と傾斜角が異なるものであればよく、その断面形状は図4に示すものに限定されない。
例えば、上流側傾斜面と下流側傾斜面との間に平面を有していてもよく、上流側傾斜面または下流側傾斜面が、傾斜方向が同じで傾斜角が異なる複数の傾斜面から構成されていてもよい。
さらに、凹部50を構成する定着ベルト21の幅方向の壁面の構成は、本発明の目的を達成することができる範囲において適宜選択することができ、対向する一対の壁面の一方または両方が、傾斜面であっても傾斜していない垂直面であってもよい。
均熱部材29の表面には皮膜40が形成されている。
皮膜40には潤滑剤(例えば、シリコングリース)が塗布され、潤滑剤は定着ベルト21との間に介在している。
凹部50の内部に保持された潤滑剤は、定着ベルト21の摺動によって定着ベルト21の内周側表面及び均熱部材29の表面に供給される。
これにより、図4(A)中矢印d1で示す流動によって潤滑剤を下流方向へ供給するとともに、矢印d2で示す流動によって潤滑剤を回収することができ、微量の潤滑剤を継続的に安定して供給することが可能となる。
図4に示す態様において、凹部50の最大深さt2は、皮膜40の厚さt3より大きい。これにより、皮膜40が経時の摩耗等で消滅した場合であっても、凹部50は残存し、潤滑剤を供給する機能は失われないため、急激なトルク上昇を抑制することができる。
例えば、均熱部材29に対し、プレス加工により所望の形状及び配置となるように凹部50を形成することができる。
図5に示すように、均熱部材29のひとつの凹部50は、定着ベルト21の回転方向において他の凹部50と隣接することが好ましい。
このような凹部50の配置により、定着ベルト21の長手方向(幅方向)の全域に潤滑剤を供給することができる。
これにより、定着ベルト21の長手方向(幅方向)の全域に潤滑剤を長期にわたって安定に供給することができる。
凹部50から供給される潤滑剤は、定着ベルト21の摺動により概ね図中d3及びd4で示す方向に広がっていき、定着ニップ部Nの下流で整列塗布されるが、上述の配置とすることにより部位による潤滑剤の供給ムラを低減することができる。
図6~8は、A4Yサイズの転写紙を3P/J、10[秒]間隔での間欠印刷を行った結果を示すグラフである。縦軸はユニットトルクの値の大小(単位はNm)を示し、横軸は枚数(k枚)を示している。
また、グラフには本実施形態における限界トルクを「T」、目標寿命を「L」で示している。
凹部50は、定着ベルト21回転方向の上流側と下流側とで傾斜方向及び傾斜角の異なる傾斜面を有するように、プレス加工により形成した。
ユニットトルク値は、汎用のトルク測定器を用いて測定した。
一方、本実施形態においては、形成された凹部50の効果により、摩耗により生じた粉体等の影響を受けることなく潤滑剤の供給が継続され、凹部50に粉体を取り込むことができるため、トルクの急激な上昇発生を抑制することができ、長寿命化を実現することができる。
図9に示す定着装置20は、熱源が3本のハロゲンヒータ23a、23b及び23cで構成されている以外は、図2の定着装置と同様である。また、図10に示す定着装置20は、熱源が2本のハロゲンヒータ23a及び23bで構成されている以外は、図2の定着装置と同様である。
ハロゲンヒータ23の数を増やすことで、生産性を落とすことなく記録媒体Pの各種紙幅に対応した定着をすることができる。
(なお、図9及び図10では均熱部材29の凹部50を省略している。)
20 定着装置
21 定着ベルト
22 加圧部材(加圧ローラ)
23 熱源(ハロゲンヒータ)
24 ニップ形成部材
29 均熱部材
40 皮膜
50 凹部
N 定着ニップ部
Claims (9)
- 回転可能に設けられた無端状の定着ベルトと、
回転可能に設けられ、前記定着ベルトを外周側から加圧する加圧部材と、
金属からなる均熱部材を介して前記定着ベルトを内周側から押圧し、前記定着ベルトと前記加圧部材との間に定着ニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記定着ベルトを加熱する熱源と、を備え、
前記定着ニップ部において、前記均熱部材と前記定着ベルトとの間に潤滑剤が介在し、
前記均熱部材は、前記定着ベルトとの当接面に皮膜を有するとともに、複数の凹部が形成されてなり、
前記凹部は、前記定着ベルトの回転方向の上流側と下流側とで傾斜方向及び傾斜角の異なる傾斜面を有し、
前記均熱部材の前記凹部の最大深さは、該均熱部材の皮膜の厚さ以上であることを特徴とする定着装置。 - 前記均熱部材の前記凹部の前記定着ベルトの回転方向の上流側の傾斜面の傾斜角が、下流側の傾斜面の傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記均熱部材のひとつの前記凹部は、前記定着ベルトの回転方向において他の前記凹部と隣接することを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
- 前記均熱部材のひとつの前記凹部は、前記定着ベルトの回転方向において、上流側と下流側に少なくとも1つずつ他の前記凹部と隣接することを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
- 前記均熱部材の前記凹部は、前記定着ベルトの回転方向において、下流側よりも上流側に多く形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の定着装置。
- 前記熱源は、ハロゲンランプを備えたハロゲンヒータであり、該ハロゲンランプの封入ガスはキセノン及びクリプトンのいずれかを主成分とすることを特徴とする定着装置であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
- 熱源がIHヒータであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
- 前記潤滑剤は、フッ素化合物またはシリコン化合物を含み、
前記均熱部材に形成された前記皮膜は、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の定着装置。 - 請求項1から8のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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