以下に、図1と図2とを用いて、本発明の第一実施形態に係る作業車両として移動式クレーン(ラフテレーンクレーン)であるクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、作業車両としてクレーン(ラフテレーンクレーン)ついて説明を行うが、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーン、高所作業車等でもよい。
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、車両2、作業装置であるクレーン装置6およびクレーン装置6を遠隔操作可能な遠隔操作端末32(図2参照)を有する。
車両2は、クレーン装置6を搬送するものである。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げるものである。クレーン装置6は、旋回台7、ブーム9、ジブ9a、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。
旋回台7は、クレーン装置6を旋回可能に構成するものである。旋回台7は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである油圧式の旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
アクチュエータである旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ23(図2参照)によって回転操作される。旋回用バルブ23は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、旋回台7は、旋回用バルブ23によって回転操作される旋回用油圧モータ8を介して任意の旋回速度に制御可能に構成されている。旋回台7には、旋回台7の旋回位置(角度)と旋回速度とを検出する旋回用センサ27(図2参照)が設けられている。
ブームであるブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持するものである。ブーム9は、複数のブーム部材から構成されている。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム9は、各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9aが設けられている。ジブ9aは、ブーム9のベースブーム部材に設けられたジブ支持部によってベースブーム部材に沿った姿勢で保持されている。ジブ9aの基端は、トップブーム部材のジブ支持部に連結可能に構成されている。
アクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダは、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ24(図2参照)によって伸縮操作される。伸縮用バルブ24は、伸縮用油圧シリンダに供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。ブーム9には、ブーム9の長さを検出する伸縮用センサ28と荷物Wの重量を検出する重量センサ29(図2参照)とが設けられている。
検知装置であるカメラ9b(図2参照)は、荷物Wおよび荷物W周辺の地物を撮影するものである。カメラ9bは、ブーム9の先端部に設けられている。カメラ9bは、荷物Wの鉛直上方から荷物Wおよびクレーン1周辺の地物や地形を撮影可能に構成されている。
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊るものである。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
アクチュエータである起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するものである。起伏用油圧シリンダ12は、シリンダ部の端部が旋回台7に揺動自在に連結され、ロッド部の端部がブーム9のベースブーム部材に揺動自在に連結されている。起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ25(図2参照)によって伸縮操作される。起伏用バルブ25は、起伏用油圧シリンダ12に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。ブーム9には、ブーム9の起伏角度を検出する起伏用センサ30(図2参照)が設けられている。
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行うものである。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータである図示しないメイン用油圧モータによって回転され、サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータである図示しないサブ用油圧モータによって回転されるように構成されている。
メイン用油圧モータは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ26m(図2参照)によって回転操作される。メインウインチ13は、メイン用バルブ26mによってメイン用油圧モータを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ26s(図2参照)によってサブ用油圧モータを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
キャビン17は、操縦席を覆うものである。キャビン17は、旋回台7に搭載されている。図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための操作具やクレーン装置6を操作するための旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21m、サブドラム操作具21s等が設けられている(図2参照)。旋回操作具18は、旋回用油圧モータ8を操作することができる。起伏操作具19は、起伏用油圧シリンダ12を操作することができる。伸縮操作具20は、伸縮用油圧シリンダを操作することができる。メインドラム操作具21mは、メイン用油圧モータを操作することができる。サブドラム操作具21sは、サブ用油圧モータを操作することができる。
通信機22(図2参照)は、遠隔操作端末32からの制御信号を受信し、クレーン装置6からの制御情報等を送信するものである。通信機22は、キャビン17に設けられている。通信機22は、遠隔操作端末32からの制御信号等を受信すると図示しない通信線を介して制御装置31に転送するように構成されている。また、通信機22は、制御装置31からの制御情報やカメラ9bからの映像iを図示しない通信線を介して遠隔操作端末32に転送するように構成されている。
図2に示すように、制御装置31は、各操作弁を介してクレーン1のアクチュエータを制御するものである。制御装置31は、キャビン17内に設けられている。制御装置31は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置31は、各アクチュエータや切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
制御装置31は、カメラ9b、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sに接続され、カメラ9bの映像iを取得し、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sのそれぞれの操作量を取得することができる。
制御装置31は、通信機22に接続され、遠隔操作端末32からの制御信号を取得し、クレーン装置6からの制御情報やカメラ9bからの映像i等を送信することができる。
制御装置31は、旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに接続され、旋回用バルブ23、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに制御信号を伝達することができる。
制御装置31は、旋回用センサ27、伸縮用センサ28、重量センサ29および起伏用センサ30に接続され、旋回台7の旋回位置、ブーム長さ、起伏角度および荷物Wの重量を取得することができる。
制御装置31は、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sの操作量に基づいて各操作具に対応した制御信号を生成する。
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏操作具19の操作によって起伏用油圧シリンダ12でブーム9を任意の起伏角度に起立させて、伸縮操作具20の操作によってブーム9を任意のブーム9長さに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。また、クレーン1は、サブドラム操作具21s等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具18の操作によって旋回台7を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
次に、図3から図5を用いて遠隔操作端末32について説明する。
図3に示すように、遠隔操作端末32は、クレーン1を遠隔操作する際に使用するものである。遠隔操作端末32は、筐体33、筐体33の操作面に設けられる第1の操作部である吊り荷移動操作具35、基準変更操作具34、端末側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38s、端末側起伏操作具39、第2の操作部である基準変更許可スイッチ40、表示装置41、端末側通信機42および端末側制御装置43(図2、図4参照)等を具備する。遠隔操作端末32は、操作方向基準Boを基準変更操作具34によって設定し、吊り荷移動操作具35または各種操作具の操作により荷物Wを移動させる各アクチュエータの操作弁の制御信号をクレーン装置6に送信する。
遠隔操作端末32の操作方向基準Boは、吊り荷移動操作具35の任意の方向への傾倒操作によって移動される荷物Wの車両2(車両方向基準Bv)に対する移動方向を設定するための基準である。具体的には、操作方向基準Boは、車両2の基準である車両方向基準Bvに対して、吊り荷移動操作具35の任意の方向への傾倒操作によって移動する荷物Wの移動方向(クレーン装置6の作動方向)を補正する補正角度θ1を設定するための基準である。本実施形態において、車両方向基準Bvは、車両2の前進方向である前方向に設定され(一点鎖線矢印参照)、遠隔操作端末32の操作方向基準Boは、筐体33の操作面に向かって上方向に設定されている(破線矢印参照)。
筐体33は、遠隔操作端末32の主たる構成部材である。筐体33は、操縦者が手で保持可能な大きさの筐体に構成されている。筐体33には、操作面に吊り荷移動操作具35、基準変更操作具34、端末側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38s、端末側起伏操作具39、基準変更許可スイッチ40、表示装置41および端末側通信機42(図2、図4参照)が設けられている。
基準変更操作具34は、車両方向基準Bvに対する操作方向基準Boの位置を変更する指示が入力されるものである。基準変更操作具34は、筐体33の操作面から突出した回転つまみおよび回転つまみの回転位置である回転方向および回転量を検出する図示しないセンサから構成されている。基準変更操作具34は、回転つまみが任意の方向に回転操作可能に構成されている。基準変更操作具34は、回転つまみの回転位置から車両方向基準Bvから操作方向基準Boまでの間の角度である補正角度θ1(図5(a)参照)についての信号を端末側制御装置43に伝達するように構成されている。
第1の操作部である吊り荷移動操作具35は、任意の水平面において任意の方向に任意の速度で荷物Wを移動させる指示が入力されるものである。吊り荷移動操作具35は、筐体33の操作面から略垂直に起立した操作スティックおよび操作スティックの傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。吊り荷移動操作具35は、操作スティックが任意の方向に傾倒操作可能に構成されている。吊り荷移動操作具35は、センサで検出した操作スティックの傾倒方向と操作方向基準Boまでの間の傾倒角度θ2(図5(b)参照)およびその傾倒量についての信号を端末側制御装置43に伝達するように構成されている。さらに、吊り荷移動操作具35は、基準変更許可スイッチ40が操作された後に傾倒方向を変更された操作スティックの傾倒方向とその操作角度θ3についての操作信号を端末側制御装置43に伝達するように構成されている。吊り荷移動操作具35には、筐体33の操作面に向かって上方向を示す矢印Aa、操作面に向かって右側方向を示す矢印Ab、操作面に向かって下方向を示す矢印Ac、操作面に向かって左側方向を示す矢印Adが吊り荷移動操作具35の傾倒角度θ2、操作角度θ3の目安として表示されている。
端末側旋回操作具36は、クレーン装置6を任意の移動方向に任意の移動速度で旋回させる指示が入力されるものである。端末側旋回操作具36は、筐体33の操作面から略垂直に起立した操作スティックおよび操作スティックの傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。端末側旋回操作具36は、左旋回を指示する方向および右旋回を指示する方向にそれぞれ傾倒可能に構成されている。
端末側伸縮操作具37は、ブーム9を任意の速度で伸縮させる指示が入力されるものである。端末側伸縮操作具37は、筐体33の操作面から起立した操作スティックおよびその傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。端末側伸縮操作具37は、延伸を指示する方向および収縮を指示する方向にそれぞれ傾倒可能に構成されている。
端末側メインドラム操作具38mは、メインウインチ13を任意の速度で任意の方向に回転させる指示が入力されるものである。端末側メインドラム操作具38mは、筐体33の操作面から起立した操作スティックおよびその傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。端末側メインドラム操作具38mは、メインワイヤロープ14の巻き上げを指示する方向および巻き下げを指示する方向にそれぞれ傾倒可能に構成されている。端末側サブドラム操作具38sについても同様に構成されている。
端末側起伏操作具39は、ブーム9を任意の速度で起伏させる指示が入力されるものである。端末側起伏操作具39は、筐体33の操作面から起立した操作スティックおよびその傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。端末側起伏操作具39は、起立を指示する方向および倒伏を指示する方向にそれぞれ傾倒可能に構成されている。
第2の操作部である基準変更許可スイッチ40は、操作方向基準Boの変更を許可する指示が入力されるものである。基準変更許可スイッチ40は、遠隔操作端末32の操作面であって、吊り荷移動操作具35の操作中に同時に操作可能な位置に設けられている。例えば、基準変更許可スイッチ40は、筐体33の側面であって、操縦者が吊り荷移動操作具35を操作中に操作可能な位置に設けられている。基準変更許可スイッチ40は、操作信号が端末側制御装置43に伝達するように構成されている。
表示装置41は、クレーン1の姿勢情報や荷物Wの情報等の様々な情報を表示するものである。表示装置41は、液晶画面等の画像表示装置から構成されている。表示装置41は筐体33の操作面に設けられている。表示装置41には、遠隔操作端末32の操作方向基準Boの向きを表す画像としてクレーン1の車両2を模式的に表す基準図形Gが表示されている。基準図形Gは、車両2における車両方向基準Bvが認識できるように描画されている。基準図形Gは、基準変更操作具34の回転位置に連動して回転表示される。すなわち、表示装置41には、基準変更操作具34の回転方向および回転量が反映された操作方向基準Bo(実線矢印参照)と車両方向基準Bv(二点鎖線矢印参照)との相対的な位置関係が表示されている。
さらに、表示装置41には、基準図形Gを囲むようにして、筐体33の操作面に向かって上方向を示す矢印Aa、操作面に向かって右側方向を示す矢印Ab、操作面に向かって下方向を示す矢印Ac、操作面に向かって左側方向を示す矢印Adが吊り荷移動操作具35の傾倒角度θ2の目安として表示されている。
図4に示すように、端末側通信機42は、クレーン装置6の制御情報等を受信し、遠隔操作端末32からの制御情報等を送信するものである。端末側通信機42は、筐体33の内部に設けられている。端末側通信機42は、クレーン装置6からの映像iや制御信号等を受信すると端末側制御装置43に伝達するように構成されている。また、端末側通信機42は、端末側制御装置43からの制御情報をクレーン1のクレーン装置6に送信するように構成されている。
制御部である端末側制御装置43は、遠隔操作端末32を制御するものである。端末側制御装置43は、遠隔操作端末32の筐体33内に設けられている。端末側制御装置43は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。端末側制御装置43は、吊り荷移動操作具35、基準変更操作具34、端末側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38s、端末側起伏操作具39、基準変更許可スイッチ40、表示装置41、端末側通信機42等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
端末側制御装置43は、吊り荷移動操作具35、端末側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38sおよび端末側起伏操作具39に接続され、各操作具の操作スティックの傾倒方向および傾倒量からなる操作信号を取得することができる。また、端末側制御装置43は、基準変更操作具34に接続され、基準変更操作具34の回転位置である回転方向および回転角度からなる操作信号を取得することができる。また、端末側制御装置43は、基準変更許可スイッチ40に接続され、基準変更許可スイッチ40からの操作信号を取得することができる。
端末側制御装置43は、端末側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38sおよび端末側起伏操作具39の各センサから取得した各操作スティックの操作信号から、対応する旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sの制御信号を生成することができる。
端末側制御装置43は、表示装置41に接続され、表示装置41にクレーン装置6からの映像iや各種情報を表示させることができる。また、端末側制御装置43は、基準変更操作具34の回転つまみの回転位置から取得した回転方向および補正角度θ1に連動して基準図形G(または基準座標軸)を回転表示させることができる。端末側制御装置43は、端末側通信機42に接続され、端末側通信機42を介してクレーン装置6の通信機22との間で各種情報を送受信することができる。
図5(a)に示すように、端末側制御装置43(図4参照)は、回転操作された基準変更操作具34から取得した回転位置である回転方向、および車両方向基準Bvからの角度である補正角度θ1についての操作信号に基づいて、車両方向基準Bvに対して操作方向基準Boを相対回転させる。例えば、基準変更操作具34が一方向(図5(a)における右回り方向)に操作方向基準Boから補正角度θ1の位置に回転操作された場合、端末側制御装置43は、補正方向として他方向(図5(a)における左回り方向)に車両方向基準Bvから補正角度θ1として操作方向基準Boを回転させて、操作方向基準Boの方向を補正する。この際、端末側制御装置43は、基準変更操作具34からの補正角度θ1についての操作信号に基づいて、表示装置41に表示させている基準図形Gを操作方向基準Boの方向である遠隔操作端末32の上方向から一方向(図5(a)における右回り方向)へ補正角度θ1の位置に回転させる。
図5(b)に示すように、端末側制御装置43(図4参照)は、吊り荷移動操作具35から取得した操作方向基準Boから操作スティックの傾倒方向までの間の角度である傾倒角度θ2、傾倒方向および傾倒量についての操作信号に基づいて、操作方向基準Boからの荷物Wの移動方向および移動速度を算出する。例えば、操作方向基準Boの方向と車両方向基準Bvの方向とが一致している状態において、吊り荷移動操作具35が操作方向基準Boの左右一側に傾倒角度θ2だけ傾倒操作された場合、端末側制御装置43は、基準変更操作具34によって設定された補正角度θ1(図5(b)においては補正角度θ1が0°)およびその補正方向(図5(b)においては補正角度θ1が0°であるため補正方向は設定されていない)と傾倒角度θ2から、車両方向基準Bvに対する荷物Wの移動角度θを算出する。端末側制御装置43は、移動角度θの方向へ傾倒量に応じた移動速度で荷物Wを移動させる制御信号を算出する。
図6に示すように、端末側制御装置43(図4参照)は、基準変更許可スイッチ40からの操作信号を取得すると、取得後の吊り荷移動操作具35の操作に伴って車両方向基準Bvに対する操作方向基準Boの方向を変更する。具体的には、端末側制御装置43は、基準変更許可スイッチ40からの操作信号の取得後に、吊り荷移動操作具35が左右方向一側(図6における左回り方向)に向かって操作角度θ3だけ回転されると、吊り荷移動操作具35の操作に連動させて、車両方向基準Bvから操作方向基準Boを左右方向他側(図6における右回り方向)に向かって操作角度θ3だけ回転させる。
また、端末側制御装置43は、基準変更許可スイッチ40からの操作信号を取得すると、その際に操作されている吊り荷移動操作具35の傾倒方向、および操作方向基準Boから操作スティックの傾倒方向までの間の角度である傾倒角度に基づいて生成されるクレーン装置6の作動方向に関する制御信号を固定する。すなわち、端末側制御装置43は、基準変更許可スイッチ40からの操作信号を取得すると、クレーン装置6に送信する作動方向に関する制御信号を基準変更許可スイッチ40が操作された際に送信していた作動方向に関する制御信号に固定し、その後の吊り荷移動操作具35の傾倒方向に関わらず固定した制御信号をクレーン装置6に送信する。
例えば、吊り荷移動操作具35が操作方向基準Boの左右一側に傾倒角度θ2だけ傾倒操作されている状態において、基準変更許可スイッチ40からの操作信号を取得した場合、端末側制御装置43は、クレーン装置6の作動方向に関する制御信号を吊り荷移動操作具35が操作方向基準Boから左右一側に傾倒角度θ2で傾倒操作された際の制御信号に固定する。
基準変更許可スイッチ40からの操作信号が停止した場合、端末側制御装置43は、車両方向基準Bvからの操作方向基準Boの位置を操作角度θ3だけ変更した位置に固定する。これにより、遠隔操作端末32は、基準変更許可スイッチ40の操作中に吊り荷移動操作具35の操作によって操作方向基準Boの位置が変更されても、基準変更許可スイッチ40の操作前後でクレーン装置6に同一の動作方向に関する制御信号が送信される。
次に、図7から図9を用いて、遠隔操作端末32における操作方向基準Boの設定および遠隔操作端末32によるクレーン装置6の制御について説明する。クレーン1の車両2の方向として、車両2の前進方向(ブーム9を基準としてキャビン17方向)を前方向、後進方向(ブーム9を基準と対向する方向)を後方向、前方向に向かって右側を右側方向、前方向に向かって左側を左側方向とする。本実施形態において、車両方向基準Bv(図5から図9における一点鎖線矢印)は、車両2の前方向に設定され、遠隔操作端末32の操作方向基準Bo(図5から図9における破線矢印)は、筐体33の操作面に向かって上方向(吊り荷移動操作具35および表示装置41に表示されている矢印Aa方向)に設定されているものとする。また、補正角度θ1および傾倒角度θ2は、矢印Aa方向から左回り方向を+方向とし、矢印Aa方向から右回り方向を-方向とし、角度の加減に各符号を用いるものとする。
図7に示すように、車両方向基準Bvと操作方向基準Boとが一致しない回転位置として、基準変更操作具34が車両方向基準Bvから右回り方向に補正角度θ1だけ回転操作されている場合(図5(a)参照)、遠隔操作端末32は、車両方向基準Bvから補正方向である左回り方向に補正角度θ1だけ回転された位置に操作方向基準Boを補正する。つまり、遠隔操作端末32は、車両方向基準Bvから左回り方向に補正角度θ1だけ回転させた位置に操作方向基準Boが設定されている。この際、遠隔操作端末32の表示装置41には、クレーン1の車両2を模式的に表す基準図形Gの前方向が操作方向基準Boである矢印Aaから右回り方向へ補正角度θ1の方向を向いて表示されている。
遠隔操作端末32の吊り荷移動操作具35の任意の方向への傾倒操作として、例えば操作方向基準Boである矢印Aaから左回り方向の傾倒角度θ2の方向に任意の傾倒量だけ傾倒操作された場合、端末側制御装置43は、操作方向基準Boから操作スティックの左回り方向(+方向)への傾倒方向までの間の角度である傾倒角度θ2および傾倒量についての操作信号を吊り荷移動操作具35の図示しないセンサから取得する。さらに、端末側制御装置43は、取得した操作信号と操作方向基準Boの車両方向基準Bvからの補正量である左回り方向(+方向)への補正角度θ1とから、車両方向基準Bvからの荷物Wの移動角度θ=補正角度θ1+傾倒角度θ2の移動方向および傾倒量に応じた移動速度で荷物Wを移動させる制御信号を算出する。そして、遠隔操作端末32は、端末側制御装置43で算出した移動角度θと傾倒量に基づいて対応する旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sの制御信号を生成し、端末側通信機42によってクレーン1に送信する。
端末側制御装置43は、吊り荷移動操作具35の傾倒方向、傾倒角度θ2および傾倒量についての操作信号を取得している間、すなわち、荷物Wを移動させるクレーン装置6に対する制御信号を生成している間、基準変更操作具34から補正角度θ1についての操作信号を取得した際の車両方向基準Bvに対する操作方向基準Boの回転処理を実施しない。
例えば、図8(a)に示すように、基準変更操作具34が一方向に角度θaだけ回転操作されても、端末側制御装置43は、基準変更操作具34の操作信号を無効と判断して、操作方向基準Boをさらに角度θaだけ回転させる補正を行わない。
一方、端末側制御装置43は、吊り荷移動操作具35の傾倒方向、傾倒角度θ2および傾倒量についての操作信号を取得していない間、すなわち、荷物Wを移動させるクレーン装置6に対する制御信号を生成していない間、基準変更操作具34から補正角度θ1についての操作信号を取得した際の車両方向基準Bvに対する操作方向基準Boの回転処理を実施する。
例えば、図8(b)に示すように、基準変更操作具34が一方向に角度θaだけ回転操作されると、端末側制御装置43は、基準変更操作具34の操作信号に基づいて操作方向基準Boをさらに角度θaだけ回転させる補正を行う。
図7に示すように、クレーン1は、遠隔操作端末32から荷物Wの移動角度θおよび傾倒量に応じた移動速度の制御信号を受信すると、車両方向基準Bvである車両2の前方向から荷物Wの移動角度θの方向に傾倒量に応じた速度で荷物Wを移動させる。クレーン1は、吊り荷移動操作具35が矢印Aaから左回り方向(+方向)に傾倒角度θ2で所定の傾倒量だけ傾倒されているので、吊り荷移動操作具35の傾倒量に対応する搬送速度で車両方向基準Bvの左回り方向(+方向)で荷物Wの移動角度θ=補正角度θ1+傾倒角度θ2の方向に荷物Wを移動させる。この際、クレーン1は、旋回用油圧モータ8、縮用油圧シリンダ、起伏用油圧シリンダ12およびメイン用油圧モータ等を荷物Wの移動軌跡に応じて制御する。
図9(a)に示すように、基準変更許可スイッチ40の操作中に(黒塗矢印参照)、吊り荷移動操作具35が操作方向基準Boの左側に傾倒角度θ2だけ傾倒操作されている状態(図6参照)から左回り方向に操作角度θ3だけ傾倒操作された場合、図9(b)に示すように、端末側制御装置43は、車両方向基準Bvを左回り方向に操作角度θ3だけ回転させる。合わせて、端末側制御装置43は、表示装置41に表示されている基準図形Gを左回り方向に操作角度θ3だけ回転させる。つまり、端末側制御装置43は、車両方向基準Bvからの操作方向基準Boの位置を右回り方向に変更角度θ4=操作角度θ3-補正角度θ1の位置に変更する。
図10に示すように、端末側制御装置43は、吊り荷移動操作具35の傾倒方向の変更に伴って車両方向基準Bvからの操作方向基準Boの位置を変更することで、傾倒方向を変更された後の吊り荷移動操作具35と車両方向基準Bvとの位置関係が、傾倒方向を変更される前の吊り荷移動操作具35と車両方向基準Bvとの位置関係(図9(a)参照)と等しくなるように構成されている。端末側制御装置43は、取得した吊り荷移動操作具35の操作信号と操作方向基準Boの車両方向基準Bvからの基準変更量である右回り方向(-方向)への変更角度θ4に基づいて、車両方向基準Bvからの荷物Wの移動角度θ=補正角度θ1+傾倒角度θ2(図9(a)参照)の移動方向および傾倒量に応じた移動速度で荷物Wを移動させる制御信号を算出する。そして、遠隔操作端末32は、端末側制御装置43で算出した移動角度θと傾倒量に基づいて対応する旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sの制御信号を生成し、端末側通信機42によってクレーン1に送信する。
このように構成することで、クレーン1は、操縦者が遠隔操作端末32からクレーン装置6に対する遠隔操作端末32の相対的な位置を把握することなく、基準変更操作具34によって吊り荷移動操作具35の操作方向基準Boを作業車両2の車両方向基準Bvに対する相対角度として任意の値に設定される。この際、遠隔操作端末32の表示装置41には、車両方向基準Bvに対する操作方向基準Boが表示されるので、操縦者が車両方向基準Bvと操作方向基準Boとの関係を視覚的に把握しやすい。さらに、クレーン1は、基準変更許可スイッチ40が操作されると、吊り荷移動操作具35の操作によるクレーン装置6の作動方向が固定された状態で、吊り荷移動操作具35の操作によって操縦者の所望する方向に操作方向基準Boが変更されるので、荷物Wがクレーン装置6によって移動されて荷物Wと遠隔操作端末32との位置関係が変動しても操縦者が操作中に吊り荷移動操作具35の傾倒方向に対するクレーン装置6の作動方向の認識を喪失することがない。これにより、クレーン装置6の遠隔操作時における誤操作を防止し、クレーン装置6の遠隔操作を容易かつ簡単に行うことができる。
なお、本実施形態において、遠隔操作端末32は、基準変更操作具34または吊り荷移動操作具35によって操作方向基準Boが変更可能に構成されているが、クレーン1の車両2と遠隔操作端末32とにクレーン装置6の作動方向の基準を自動的に設定する基準設定部である車両側方位センサと端末側方位センサとが設けられ、それぞれの方位を自動的に検出して操作方向基準Boと車両方向基準Bvとを設定する構成でもよい。
次に、図11と図12とを用いて、カメラ9bによる荷物Wの映像iの表示の態様について説明する。クレーン1は、ブーム9の先端部に設けられているカメラ9bからの映像iを遠隔操作端末32の表示装置41に表示させることができる。
遠隔操作端末32の端末側制御装置43(図4参照)は、端末側通信機42を介してカメラ9bが撮影した映像iを取得することができる。また、端末側制御装置43は、取得した画像に配置マークMaを表示させることができる(図11参照)。また、端末側制御装置43は、取得した映像iを基準変更操作具34の操作信号(図11参照)、または吊り荷移動操作具35の操作信号に応じて回転させて表示装置41に表示させることができる(図12参照)。また、端末側制御装置43は、取得した吊り荷移動操作具35の操作信号に応じて移動マークMtを表示させることができる(図12参照)。
図11(a)に示すように、表示装置41には、カメラ9bが撮影している荷物Wの鉛直上方からの映像iが表示される。映像iには、荷物Wを中心とする所定の範囲の映像が含まれている。また、表示装置41には、荷物Wを中心とする所定の範囲の映像iに加えて、車両2またはクレーン装置6の配置方向を示す配置マークMa(本実施形態においては三角マーク)が表示されている。これにより、操縦者は、車両2またはクレーン装置6に対するカメラ9bの向きに関わらず、映像i上において荷物Wからの車両2またはクレーン装置6の配置方向を常に把握することができる。なお、表示装置41に表示される映像iの枠形状は、矩形でも円形でもよい。
図11(b)に示すように、遠隔操作端末32の端末側制御装置43は、回転操作された基準変更操作具34から取得した回転位置である回転方向、および車両方向基準Bvからの角度である補正角度θ1についての操作信号を取得すると、表示装置41に表示させている映像iを補正角度θ1だけ回転させる。例えば、基準変更操作具34が一方向(図5(a)における右回り方向)に操作方向基準Boから角度θ1の位置に回転操作された場合、端末側制御装置43は、映像iおよび配置マークMaを一方向に補正角度θ1だけ回転させて、表示装置41に表示させる。
さらに、表示装置41には、荷物Wを中心とする所定の範囲の映像iに加えて、荷物Wの移動方向および移動速度を示す移動マークMt(本実施形態においては黒塗矢印、図12参照)を吊り荷移動操作具35の傾倒方向に応じて表示させることができる。これにより、操縦者は、車両2またはクレーン装置6に対するカメラ9bの向きに関わらず、映像i上において荷物Wの移動方向を常に把握することができる。
図12(a)に示すように、吊り荷移動操作具35が任意の傾倒角度θ2に操作されている状態において、表示装置41には、カメラ9bが撮影している荷物Wの鉛直上方からの映像iが表示される。映像iには、荷物Wを中心として車両2またはクレーン装置6の配置方向を示す配置マークMa(本実施形態においては三角マーク)と荷物Wの移動方向および移動速度を示す移動マークMt(本実施形態においては黒塗矢印とが表示されている。端末側制御装置43は、吊り荷移動操作具35から取得した操作方向基準Boから操作スティックの傾倒方向までの間の傾倒角度、傾倒方向および傾倒量についての操作信号を取得すると、移動マークMtとして荷物Wの移動方向を指し示す矢印を荷物Wの移動速度に応じた大きさで表示装置41に表示させる。
図12(b)に示すように、基準変更許可スイッチ40が操作された状態で、吊り荷移動操作具35が任意の方向に傾倒されている位置から左側に操作角度θ3だけ傾倒操作された場合、遠隔操作端末32の端末側制御装置43は、基準変更許可スイッチ40の操作信号および操作角度θ3についての操作信号を取得すると、表示装置41に表示させている配置マークMaと移動マークMtとを含む映像iを操作角度θ3だけ左回り方向に回転させる。
このように構成することで、操縦者は、映像iにおいてクレーン1の配置方向を配置マークMaで常に認識し、荷物Wの移動方向および移動速度を移動マークMtで常に認識しているので、クレーン1と荷物Wとその周辺との位置関係が把握し易い。さらに、操縦者は、クレーン装置6によって移動される荷物Wと遠隔操作端末32との位置関係に応じて、吊り荷移動操作具35と基準変更許可スイッチ40とによって操作方向基準Boを変更するとともに映像iの表示方向を変更することができる。これにより、クレーン1は、クレーン装置6の遠隔操作を映像iによって適切な視点方向から視認しながら容易かつ簡単に行うことができる。
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。