JP7047813B2 - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
c+0.1×(a-c)≧b ・・・(1)
なお、大気雰囲気中にて400℃で24時間保持する熱処理は、自動車のマフラーに使用された場合に排気ガスにより加熱されて酸化されることを再現し、5サイクルの腐食試験は融雪塩による腐食を再現している。
[1]質量%で、
C:0.001~0.020%、
Si:0.05~1.50%、
Mn:0.05~0.60%、
P:0.050%以下、
S:0.030%以下、
Al:0.001~0.100%、
Cr:14.5%以上16.0%未満、
Ti:0.15~0.35%、
Nb:0.090%以下、
V:0.010~0.090%、および
N:0.001~0.020%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
鋼中に0.015質量%以上のNbを固溶した状態で含有することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
[2]前記成分組成が、さらに、質量%で、
Ni:0.01~0.60%、
Cu:0.01~0.80%、
Co:0.01~0.50%、
Mo:0.01~1.00%、および
W:0.01~0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[3]前記成分組成が、さらに、質量%で、
Zr:0.01~0.50%、
B:0.0003~0.0030%、
Mg:0.0005~0.0100%、
Ca:0.0003~0.0030%、
Y:0.01~0.20%、
REM(希土類金属):0.01~0.10%、
Sn:0.01~0.50%、および
Sb:0.01~0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[4]自動車排気系部材用であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有する鋼素材を、1100~1250℃の温度で10分以上保持した後、熱間圧延して熱延板とする熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後の熱延板に950~1050℃の温度で5~180秒保持する熱延板焼鈍を施し熱延焼鈍板を得る熱延板焼鈍工程と、
前記熱延板焼鈍工程後の熱延焼鈍板を冷間圧延して冷延板とした後、当該冷延板に880~900℃の温度で5~180秒保持する冷延板焼鈍を施し冷延焼鈍板を得る冷延板焼鈍工程と、を有することを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。この効果はC含有量を0.001%以上にすることで得られる。しかし、C含有量が0.020%を超えると、鋼が硬質化して成形性が低下したり、耐食性が低下する。よって、C含有量は0.001~0.020%とする。好ましくは、C含有量は0.004%以上である。より好ましくは、C含有量は0.007%以上である。また、好ましくは、C含有量は0.015%以下である。より好ましくは、C含有量は0.012%以下である。
Siは、脱酸作用を有する。また、鋼板の大気中での加熱時に酸化皮膜中に濃化して皮膜を安定化させ、酸化皮膜中の塩化物イオンの透過を抑制して、鋼板の加熱後耐食性を高める元素である。これらの効果は、Si含有量を0.05%以上にすることで得られる。しかし、Si含有量が1.50%を超えると鋼が硬質化して成形性が低下する。よって、Si含有量は0.05~1.50%とする。好ましくは、Si含有量は0.10%以上である。より好ましくは、Si含有量は0.15%以上である。また、好ましくは、Si含有量は1.00%以下である。より好ましくは、Si含有量は0.60%以下である。
Mnは、脱酸作用を有する。この効果は、Mn含有量を0.05%以上にすることで得られる。しかし、Mn含有量が0.60%を超えるとMnSの析出および粗大化が促進され、このMnSが腐食の起点となって耐食性が低下する。よって、Mn含有量は0.05~0.60%とする。好ましくは、Mn含有量は0.15%以上である。また、好ましくは、Mn含有量は0.30%以下である。
Pは耐食性を低下させる元素である。また、Pは結晶粒界に偏析することで熱間加工性を低下させる。そのため、P含有量は、可能な限り少ないほうが望ましく、0.050%以下とする。好ましくは、P含有量は0.040%以下である。さらに好ましくは、P含有量は0.030%以下である。
Sは、Mnと析出物としてMnSを形成する。このMnSは腐食の起点となり、耐食性を低下させる。よって、S含有量は、低いほうが望ましく、0.030%以下とする。好ましくは、S含有量は0.020%以下である。
Alは、脱酸作用を有する。この効果は、Al含有量が0.001%以上で得られる。しかし、Al含有量が0.100%を超えると鋼板表面に欠陥が生成しやすくなり、製造性が低下する。よって、Al含有量は0.001~0.100%とする。好ましくは、Al含有量は0.030%以上である。また、好ましくは、Al含有量は0.060%以下である。
Crは、表面に不働態皮膜を形成して耐食性を高める元素である。Cr含有量が14.5%未満では十分な加熱後耐食性が得られない。一方、Cr含有量が16.0%以上となると、原料コストや製造コストの増大を招く。よって、Cr含有量は14.5%以上16.0%未満とする。好ましくは、Cr含有量は15.0%以上である。より好ましくは、Cr含有量は15.3%以上である。また、好ましくは、Cr含有量は15.8%以下である。より好ましくは、Cr含有量は15.5%以下である。
Tiは、炭窒化物を形成することでC、Nを固定し、鋼の耐鋭敏化性を向上させる元素である。この効果は、Ti含有量を0.15%以上にすることで得られる。しかし、Ti含有量が0.35%を超えると、鋼が硬質化して成形性が低下する。よって、Ti含有量は0.15~0.35%とする。好ましくは、Ti含有量は0.20%以上である。また、好ましくは、Ti含有量は0.30%以下である。
後述するように、Nbは鋼中に固溶して存在することで鋼の加熱後耐食性を高める元素である。しかし、Nb含有量が0.090%を超えると、後述するVによる再結晶温度上昇の抑制効果を得たとしても、鋼の再結晶温度が上昇し、鋼の生産性が低下する。よって、Nb含有量は0.090%以下とする。好ましくは、Nb含有量は0.080%以下である。より好ましくは、Nb含有量は0.070%以下である。一方、鋼中に所定量のNbを固溶した状態で存在させるためには、Nb含有量を0.020%以上とすることが好ましい。より好ましくは、Nb含有量は0.025%以上である。さらに好ましくは、Nb含有量は0.030%以上である。
Vは、Nbによる鋼の再結晶温度上昇を抑制することで、生産性を高める元素である。この効果は、V含有量を0.010%以上にすることで得られる。一方、V含有量が0.090%を超えると固溶V量が増加して再結晶温度が上昇し、生産性を確保できなくなる。よって、V含有量は0.010~0.090%とする。好ましくは、V含有量は0.020%以上である。より好ましくは、V含有量は0.030%以上である。また、好ましくは、V含有量は0.080%以下である。より好ましくは、V含有量は0.070%以下である。
Nは、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。この効果はN含有量を0.001%以上にすることで得られる。しかし、N含有量が0.020%を超えると、鋼が硬質化して成形性が低下したり、耐食性が低下したりする。よって、N含有量は0.001~0.020%とする。好ましくは、N含有量は0.003%以上である。より好ましくは、N含有量は0.007%以上である。また、好ましくは、N含有量は0.015%以下である。より好ましくは、N含有量は0.012%以下である。
(A群)Ni:0.01~0.60%、Cu:0.01~0.80%、Co:0.01~0.50%、Mo:0.01~1.00%、およびW:0.01~0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上
(B群)Zr:0.01~0.50%、B:0.0003~0.0030%、Mg:0.0005~0.0100%、Ca:0.0003~0.0030%、Y:0.01~0.20%、REM(希土類金属):0.01~0.10%、Sn:0.01~0.50%およびSb:0.01~0.50%のうちから選んだ1種または2種以上
Niは、低pH環境において、鋼の活性溶解を抑制することで、鋼の耐食性を高める。一方、過剰にNiを含有すると、鋼の成分コストおよび製造コストの上昇を招くとともに、鋼が硬質化して成形性が低下する。そのため、Niを含有する場合は、Ni含有量を0.01~0.60%とする。好ましくは、Ni含有量は0.10%以上である。また、好ましくは、Ni含有量は0.25%以下である。
Cuは、ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。一方、過剰にCuを含有すると、鋼の成分コストおよび製造コストの上昇を招くとともに、ε-Cuが析出しやすくなり、耐食性が低下する。そのため、Cuを含有する場合は、Cu含有量を0.01~0.80%とする。好ましくは、Cu含有量は0.30%以上である。より好ましくは、Cu含有量は0.40%以上である。また、好ましくは、Cu含有量は0.50%以下である。より好ましくは、Cu含有量は0.45%以下である。
Coは、ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。一方、過剰にCoを含有すると、鋼が硬質化して成形性が低下する。そのため、Coを含有する場合は、Co含有量は0.01~0.50%とする。好ましくは、Co含有量は0.03%以上である。より好ましくは、Co含有量は0.05%以上である。また、好ましくは、Co含有量は0.30%以下である。より好ましくは、Co含有量は0.10%以下である。
Moには、ステンレス鋼の耐食性を向上させる効果がある。一方、過剰にMoを含有すると、鋼の成分コストおよび製造コストの上昇を招くとともに、鋼が硬質化して成形性が低下する。そのため、Moを含有する場合は、Mo含有量を0.01~1.00%とする。好ましくは、Mo含有量は0.03%以上である。より好ましくは、Mo含有量は0.05%以上である。また、好ましくは、Mo含有量は0.50%以下である。より好ましくは、Mo含有量は0.30%以下である。
Wは、ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。一方、過剰にWを含有すると、鋼が硬質化して成形性が低下する。そのため、Wを含有する場合は、W含有量を0.01~0.50%とする。好ましくは、W含有量は0.03%以上である。より好ましくは、W含有量は0.05%以上である。また、好ましくは、W含有量は0.30%以下である。より好ましくは、W含有量は0.10%以下である。
Zrは、炭窒化物を形成することでC、Nを固定し、鋼の耐食性を向上させる元素である。一方、過剰にZrを含有すると炭窒化物が過度に析出し、鋼の耐食性が低下する。そのため、Zrを含有する場合は、Zr含有量を0.01~0.50%とする。好ましくは、Zr含有量は0.03%以上である。より好ましくは、Zr含有量は0.05%以上である。また、好ましくは、Zr含有量は0.40%以下である。より好ましくは、Zr含有量は0.30%以下である。
Bには、鋼の強度を向上させる効果がある。一方、過剰にBを含有すると鋼が硬質化して成形性が低下する。そのため、Bを含有する場合は、B含有量を0.0003~0.0030%とする。好ましくは、B含有量は0.0010%以上である。また、好ましくは、B含有量は0.0025%以下である。
Mgは、脱酸剤として作用する。一方、過剰にMgを含有すると表面欠陥が増加する。そのため、Mgを含有する場合は、Mg含有量を0.0005~0.0100%とする。好ましくは、Mg含有量は0.0010%以上である。また、好ましくは、Mg含有量は0.0050%以下である。より好ましくは、Mg含有量は0.0030%以下である。
Caは、脱酸剤として作用する。一方、過剰にCaを含有すると表面欠陥が増加する。そのため、Caを含有する場合は、Ca含有量を0.0003~0.0030%とする。好ましくは、Ca含有量は0.0005%以上である。より好ましくは、Ca含有量は0.0007%以上である。また、好ましくは、Ca含有量は0.0025%以下である。より好ましくは、Ca含有量は0.0015%以下である。
Yは、鋼の清浄度を向上させる元素である。一方、過剰にYを含有すると表面欠陥が増加する。そのため、Yを含有する場合は、Y含有量を0.01~0.20%とする。好ましくは、Y含有量は0.03%以上である。また、好ましくは、Y含有量は0.10%以下である。
REM(希土類金属:La、Ce、Ndなどの原子番号57~71の元素)は、鋼の清浄度を向上させる元素である。一方、REMを過剰に含有すると、表面欠陥が増加する。そのため、REMを含有する場合は、REM含有量を0.01~0.10%とする。好ましくは、REM含有量は0.02%以上である。また、好ましくは、REM含有量は0.05%以下である。
Snは、加工肌荒れの抑制に有効な元素である。一方、過剰にSnを含有すると、鋼の熱間加工性が低下する。そのため、Snを含有する場合は、Sn含有量を0.01~0.50%とする。好ましくは、Sn含有量は0.03%以上である。また、好ましくは、Sn含有量は0.20%以下である。
Sbは、Snと同様に、加工肌荒れの抑制に有効な元素である。一方、過剰にSbを含有すると、表面欠陥が増加する。そのため、Sbを含有する場合は、Sb含有量を0.01~0.50%とする。好ましくは、Sb含有量は0.03%以上である。また、好ましくは、Sb含有量は0.20%以下である。
鋼中に固溶した状態で存在するNbは、鋼の大気中加熱にともなって鋼表面に生成する酸化皮膜中にNbイオンとして含まれることとなり、酸化皮膜を化学的に安定化させることによって、鋼の加熱後耐食性を向上させる。この効果は、鋼中に固溶した状態で存在するNb量(固溶Nb量)を0.015質量%以上にすることで得られる。よって、固溶Nb量は、0.015質量%以上とする。好ましくは、固溶Nb量は、0.020質量%以上である。
鋼スラブの加熱温度が1100℃未満であると、鋼中のNbCが十分に固溶せず、最終製品である冷延焼鈍板の鋼中に含まれる固溶Nb量が不足し、鋼板の加熱後耐食性が低下する。また、鋼スラブの加熱時間が10分未満であると、鋼中のNbCが十分に固溶せず、最終製品である冷延焼鈍板の鋼中に含まれる固溶Nb量が不足し、鋼板の加熱後耐食性が低下する。また、鋼スラブの加熱温度が1250℃を超えると、鋼スラブの変形を招き熱間圧延工程における熱延板の製造性を低下させる。よって、本発明においては、鋼スラブを1100℃以上1250℃以下に10分以上保持してから熱間圧延して熱延板とすることが好ましい。より好ましくは、鋼スラブの加熱温度は1150℃以上である。また、より好ましくは、上記の加熱時間は30分以上である。また、より好ましくは、鋼スラブの加熱温度は1180℃以下である。また、鋼スラブの過度に長時間の加熱保持は、鋼スラブの変形を招き熱間圧延工程における熱延板の製造性を低下させるため、鋼スラブの加熱時間は2時間以下とすることが好ましい。
熱延板焼鈍温度が950℃未満であると、鋼中のNbが十分に固溶せず、冷延焼鈍板中に含まれる固溶Nbの量が不十分となり、冷延焼鈍板の加熱後耐食性が低下する。一方、熱延板焼鈍温度が1050℃を超えると、鋼中におけるTiCの固溶が促進されて熱延焼鈍板中および冷延板中の固溶C量が増大することとなり、冷間圧延後の冷延板焼鈍においてNbCの析出が促進され、冷延焼鈍板の鋼中に含まれる固溶Nb量が不足し、鋼板の加熱後耐食性が低下する。また、熱延板焼鈍の保持時間が5秒未満であると、鋼中のNbが十分に固溶せず、冷延焼鈍板中に含まれる固溶Nbの量が不十分となり、冷延焼鈍板の加熱後耐食性が低下する。一方、熱延板焼鈍の保持時間が180秒を超えると、鋼中におけるTiCの固溶が促進されて熱延焼鈍板中および冷延板中の固溶C量が増大することとなり、冷間圧延後の冷延板焼鈍においてNbCの析出が促進され、冷延焼鈍板の鋼中に含まれる固溶Nb量が不足し、鋼板の加熱後耐食性が低下する。よって、本発明においては、熱延板を950℃以上1050℃以下で5~180秒保持する熱延板焼鈍を行い、熱延焼鈍板とすることが好ましい。より好ましくは、熱延板の焼鈍温度の範囲は1020℃以上1040℃以下である。また、上記の保持時間は、より好ましくは10秒以上である。また、上記の保持時間は、より好ましくは60秒以下である。
冷延板焼鈍温度が880℃未満であると、鋼の軟質化が不十分となり成形性が低下する。一方、900℃を超える冷延板焼鈍は生産性の高い普通鋼-ステンレス鋼兼用の焼鈍ラインで冷延板焼鈍を行うことができない。また、冷延板焼鈍の保持時間が5秒未満であると、鋼の軟質化が不十分となる。一方、冷延板焼鈍の保持時間が180秒を超えると、結晶粒が粗大化して表面品質が低下する場合ある。よって、本発明においては、冷延板を880℃以上900℃以下の温度で5~180秒保持する冷延板焼鈍を行うことが好ましい。より好ましくは、冷延板の焼鈍温度の範囲は890℃以上である。また、上記の保持時間は、より好ましくは10秒以上である。また、上記の保持時間は、より好ましくは120秒以下である。
表1-1に示す成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼を100kg鋼塊(鋼素材)に溶製した後、表1-2に記載の各スラブ加熱温度で、表1-2に記載の各スラブ加熱時間保持した後、熱間圧延を行って板厚3.0mmの熱延板とした。熱間圧延の最終パスが完了した直後より、熱延板を700℃に設定した電気炉に挿入して1時間保持し、その後電気炉内で炉冷した。なお、この熱延板を700℃に設定した電気炉に挿入して1時間保持し、その後電気炉内で炉冷する工程は、実製造ラインにおいて熱間圧延後の熱延板をコイル状に巻き取ってから徐冷する温度履歴を模擬したものである。
上記の製造条件で得られた冷延板の硬さaと、前記冷延板に、900℃にて20sの冷延板焼鈍を施した冷延焼鈍板の硬さbと、十分に軟質化した場合の指標として1050℃にて20sの冷延板焼鈍を施した冷延焼鈍板の硬さcとを比較することで、焼鈍にともなう冷延板の硬さ変化を評価した。具体的には、前記冷延板より長さ15mm×幅20mmの試験片を3枚切出し、そのうち1枚の試験片の断面のビッカース硬さ(HV)を測定し、上記の硬さaとした。また、残り2枚の試験片について、それぞれ900℃において20s、1050℃において20sの焼鈍を施した後、長さ15mm×幅10mmのサイズに切断し、切断した試験片の断面のビッカース硬さ(HV)を測定し、それぞれ上記の硬さb、cとした。試験片は、樹脂埋めの後に、試験面を鏡面研磨して試験に供した。ビッカース硬さの測定条件は、試験力9.8N、保持時間15秒とした。測定した硬さa、b、およびcが、式(1)を満たすものを「○(合格)」、満たさなかったものを「▲(不合格)」として評価した。この評価で〇であれば、普通鋼-ステンレス鋼兼用の焼鈍ラインで冷延板焼鈍を行うことができ、生産性に優れると評価できる。
c+0.1×(a-c)≧b ・・・(1)
上記の製造条件で得られた冷延焼鈍板より、長さ20mm×幅50mmの試験片を切出し、JIS G 1237に規定される誘導結合プラズマ発光分光分析方法に準拠した分析を行い、鋼中の総Nb量(質量%)を評価した。次に、同一の冷延焼鈍板より、長さ20mm×幅50mmの試験片を切出し、10vol%アセチルアセトン-1質量%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノールを用いて定電流電解によって析出物を抽出した。抽出残渣のろ過には、セルロースアセテート製メンブランフィルタ(孔径0.2μm、47mmφ)を使用した。捕集した残渣はフィルタごと白金るつぼに入れ580℃で灰化後、0.75gNa2O2+0.75gLiBO4を加えガスバーナーで溶融し融成物とした。融成物は0.8質量%酒石酸/10vol%硫酸25mLを加えて溶解し、純水で100mLに定容後、ICP発光分光分析を行い、鋼中の析出Nb量(質量%)を評価した。そして、得られた総Nb量から、析出Nb量を減じることで、固溶Nb量(質量%)を評価した。
上記の製造条件で得られた冷延焼鈍板より、せん断加工により長さ80mm×幅60mmの試験片を切出した。試験片の表面をエメリー紙で600番まで研磨し、アセトンによる脱脂を行った後、大気雰囲気中にて400℃で24時間保持する熱処理を行った後、腐食試験を行って、加熱後耐食性を評価した。腐食試験は、JASO M609-91に準拠して実施した。1サイクルを、5.0質量%NaCl水溶液の噴霧(35℃、相対湿度98%)2h→乾燥(60℃、相対湿度30%)4h→湿潤(50℃、相対湿度95%以上)2hとし、5サイクルの腐食試験を実施した。試験後、試験片表面を撮影した写真から、試験片表面中央の30mm×30mmの領域について、画像解析により発銹面積率を測定した。そして、発銹面積率が20%以下であったものを「○(合格)」、20%超であったものを「▲(不合格)」として評価した。この評価で〇であれば、耐食性(大気中で加熱された後の耐食性)に優れると評価できる。
表2に示す成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼を100kg鋼塊(鋼素材)に溶製した後、1150℃の温度で1時間加熱し、熱間圧延を行って板厚3.0mmの熱延板とした。熱間圧延の最終パスが完了した直後より、熱延板を700℃に設定した電気炉に挿入して1時間保持し、その後電気炉内で炉冷した。得られた熱延板を1030℃で20秒保持した後、空冷し、熱延焼鈍板とした。この熱延焼鈍板を硫酸溶液と続いてフッ酸と硝酸の混合溶液で酸洗し、冷間圧延用素材として、その後、板厚1.0mmまでの冷間圧延を行い、冷延板とした。得られた冷延板の一部は、900℃で100秒保持した後、空冷し、その後、表裏面の表面研削を行って表面スケールを除去して、冷延焼鈍板とした。得られた冷延板および冷延焼鈍板を、上述した評価に供した。なお、試験No.2-28、2-29は参考例であり、前記試験No.2-28はSUH409L規格の成分組成であり、前記試験No.2-29はAISI439規格の成分組成である。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.001~0.020%、
Si:0.05~1.50%、
Mn:0.05~0.60%、
P:0.050%以下、
S:0.030%以下、
Al:0.001~0.100%、
Cr:14.5%以上16.0%未満、
Ti:0.15~0.35%、
Nb:0.090%以下、
V:0.010~0.090%、および
N:0.001~0.020%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
鋼中に0.015質量%以上のNbを固溶した状態で含有することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。 - 前記成分組成が、さらに、質量%で、
Ni:0.01~0.60%、
Cu:0.01~0.80%、
Co:0.01~0.50%、
Mo:0.01~1.00%、および
W:0.01~0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。 - 前記成分組成が、さらに、質量%で、
Zr:0.01~0.50%、
B:0.0003~0.0030%、
Mg:0.0005~0.0100%、
Ca:0.0003~0.0030%、
Y:0.01~0.20%、
REM(希土類金属):0.01~0.10%、
Sn:0.01~0.50%、および
Sb:0.01~0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。 - 自動車排気系部材用であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。
- 請求項1~4のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有する鋼素材を、1100~1250℃の温度で10分以上保持した後、熱間圧延して熱延板とする熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後の熱延板に950~1050℃の温度で5~180秒保持する熱延板焼鈍を施し熱延焼鈍板を得る熱延板焼鈍工程と、
前記熱延板焼鈍工程後の熱延焼鈍板を冷間圧延して冷延板とした後、当該冷延板に880~900℃の温度で5~180秒保持する冷延板焼鈍を施し冷延焼鈍板を得る冷延板焼鈍工程と、を有することを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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