以下、本発明について説明する。なお、本明細書に記載される実施形態のうち、2以上の実施形態を組み合わせることができる場合、本発明には、当該組み合わせも包含される。
≪用語の説明≫
以下、本明細書で使用される用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。
ハロゲン原子
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基
「置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基」は、炭素数1~6のアルキル基又は1以上の置換基を有する炭素数1~6のアルキル基を意味する。
「炭素数1~6のアルキル基」は、炭素数1~6の直鎖状のアルキル基又は炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基を意味する。直鎖状のアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、好ましくは3~5、より好ましくは3又は4である。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
1以上の置換基を有する炭素数1~6のアルキル基において、1以上の置換基は、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基の水素原子と置換されている。炭素数1~6のアルキル基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。炭素数1~6のアルキル基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基
「置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基」は、炭素数1~6のアルコキシ基又は1以上の置換基を有する炭素数1~6のアルコキシ基を意味する。
「炭素数1~6のアルコキシ基」は、炭素数1~6のアルキル基-O-で表される基を意味する。「炭素数1~6のアルキル基」に関する上記説明は、炭素数1~6のアルコキシ基に含まれる炭素数1~6のアルキル基にも適用される。
1以上の置換基を有する炭素数1~6のアルコキシ基において、1以上の置換基は、それぞれ、炭素数1~6のアルコキシ基の水素原子と置換されている。炭素数1~6のアルコキシ基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。炭素数1~6のアルコキシ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基
「置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基」は、炭素数2~6のヘテロアルキル基又は1以上の置換基を有する炭素数2~6のヘテロアルキル基を意味する。
「炭素数2~6のヘテロアルキル基」は、炭素数2~6の直鎖状のヘテロアルキル基又は炭素数3~6の分岐鎖状のヘテロアルキル基を意味する。「ヘテロアルキル基」は、炭素原子間に酸素原子(-O-)を有するアルキル基を意味する。酸素原子の数は、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。直鎖状のヘテロアルキル基の炭素数は、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、より一層好ましくは2又は3である。分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、好ましくは3~5、より好ましくは3又は4である。炭素数2~6のヘテロアルキル基としては、例えば、-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-CH2-O-CH3、-CH(-CH3)-CH2-O-CH3、-CH2-O-CH2-CH3、-CH2-CH2-O-CH2-CH3、-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH3、-CH(-CH3)-CH2-O-CH2-CH3、-CH2-O-CH2-CH2-CH3、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-CH3、-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH2-CH3、-CH(-CH3)-CH2-O-CH2-CH2-CH3、-CH2-O-CH(-CH3)-CH3、-CH2-CH2-O-CH(-CH3)-CH3、-CH2-CH2-CH2-O-CH(-CH3)-CH3、-CH(-CH3)-CH2-O-CH(-CH3)-CH3等が挙げられる。
1以上の置換基を有する炭素数2~6のヘテロアルキル基において、1以上の置換基は、それぞれ、炭素数2~6のヘテロアルキル基の水素原子と置換されている。炭素数2~6のヘテロアルキル基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。炭素数2~6のヘテロアルキル基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基
「置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基」は、炭素数2~6のヘテロアルコキシ基又は1以上の置換基を有する炭素数2~6のヘテロアルコキシ基を意味する。
「炭素数2~6のヘテロアルコキシ基」は、炭素数2~6のヘテロアルキル基-O-で表される基を意味する。「炭素数2~6のヘテロアルキル基」に関する上記説明は、炭素数2~6のヘテロアルコキシ基に含まれる炭素数2~6のヘテロアルキル基にも適用される。
1以上の置換基を有する炭素数2~6のヘテロアルコキシ基において、1以上の置換基は、それぞれ、炭素数2~6のヘテロアルコキシ基の水素原子と置換されている。炭素数2~6のヘテロアルコキシ基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。炭素数2~6のヘテロアルコキシ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基
「置換又は非置換の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基」は、炭素数1~6のモノアルキルアミノ基又は1以上の置換基を有する炭素数1~6のモノアルキルアミノ基を意味する。
「炭素数1~6のモノアルキルアミノ基」は、式:-NH(-Q1)[式中、Q1は、炭素数1~6のアルキル基である。]で表される。「炭素数1~6のアルキル基」に関する上記説明は、炭素数1~6のモノアルキルアミノ基に含まれる炭素数1~6のアルキル基にも適用される。
1以上の置換基を有する炭素数1~6のモノアルキルアミノ基において、1以上の置換基は、それぞれ、炭素数1~6のモノアルキルアミノ基の水素原子と置換されている。炭素数1~6のモノアルキルアミノ基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。炭素数1~6のモノアルキルアミノ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の炭素数2~6のジアルキルアミノ基
「置換又は非置換の炭素数2~6のジアルキルアミノ基」は、炭素数2~6のジアルキルアミノ基又は1以上の置換基を有する炭素数2~6のジアルキルアミノ基を意味する。
「炭素数2~6のジアルキルアミノ基」は、式:-N(-Q2)(-Q3)[式中、Q2及びQ3は、それぞれ独立して、炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。]で表される。ジアルキルアミノ基の炭素数は、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、より一層好ましくは2又は3である。Q2及びQ3は、それぞれ独立して、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
1以上の置換基を有する炭素数2~6のジアルキルアミノ基において、1以上の置換基は、それぞれ、炭素数2~6のジアルキルアミノ基の水素原子と置換されている。炭素数2~6のジアルキルアミノ基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。炭素数2~6のジアルキルアミノ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の脂肪族環基
「置換又は非置換の脂肪族環基」は、脂肪族環基又は1以上の置換基を有する脂肪族環基を意味する。
「脂肪族環基」は、単環式の脂肪族炭化水素環から水素原子を除去することにより生成される官能基を意味する。脂肪族環基は、好ましくは、炭素数3~10のシクロアルキル基、より好ましくは、炭素数3~8のシクロアルキル基、より一層好ましくは、炭素数3~6のシクロアルキル基である。炭素数3~10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
1以上の置換基を有する脂肪族環基において、1以上の置換基は、それぞれ、脂肪族環基の水素原子と置換されている。脂肪族環基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。脂肪族環基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の脂肪族環オキシ基
「置換又は非置換の脂肪族環オキシ基」は、脂肪族環オキシ基又は1以上の置換基を有する脂肪族環オキシ基を意味する。
「脂肪族環オキシ基」は、脂肪族環基-O-で表される基を意味する。「脂肪族環基」に関する上記説明は、脂肪族環オキシ基に含まれる脂肪族環基にも適用される。
1以上の置換基を有する脂肪族環オキシ基において、1以上の置換基は、それぞれ、脂肪族環オキシ基の水素原子と置換されている。脂肪族環オキシ基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。脂肪族環オキシ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の脂肪族複素環基
「置換又は非置換の脂肪族複素環基」は、脂肪族複素環基又は1以上の置換基を有する脂肪族複素環基を意味する。
「脂肪族複素環基」は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式の脂肪族複素環(非芳香族複素環)から水素原子を除去することにより生成される官能基を意味する。
脂肪族複素環基に含まれるヘテロ原子の数は、通常1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。脂肪族複素環基の員数は、通常3~8員、好ましくは4~8員、より好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。脂肪族複素環基における環構成炭素原子の数は、脂肪族複素環基のヘテロ原子数及び員数に応じて適宜決定される。
脂肪族複素環基は、例えば、飽和脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。飽和脂肪族複素環基において、環を構成する2個の炭素原子がアルキレン基で架橋されていてもよい。飽和脂肪族複素環基において、環を構成する炭素原子のうち隣接する2個の炭素原子が二重結合を形成していてもよい。飽和脂肪族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。飽和脂肪族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1又は2個である。飽和脂肪族複素環基が硫黄原子を含む場合、飽和脂肪族複素環基は、ジオキシド体であってもよい。
脂肪族複素環基としては、例えば、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリニル基、ピロリジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピリジニル基、ジヒドロピリジニル基、ジヒドロチオピラニル基、テトラヒドロピリミジニル基、テトラヒドロピリダジニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、アゼピニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等の3~8員の脂肪族複素環基が挙げられる。
脂肪族複素環基は、好ましくは、テトラヒドロフラニル基である。
1以上の置換基を有する脂肪族複素環基において、1以上の置換基は、それぞれ、脂肪族複素環基の水素原子と置換されている。脂肪族複素環基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。脂肪族複素環基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基
「置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基」は、脂肪族複素環オキシ基又は1以上の置換基を有する脂肪族複素環オキシ基を意味する。
「脂肪族複素環オキシ基」は、脂肪族複素環基-O-で表される基を意味する。「脂肪族複素環基」に関する上記説明は、脂肪族複素環オキシ基に含まれる脂肪族複素環基にも適用される。
脂肪族複素環オキシ基は、好ましくは、テトラヒドロフラニルオキシ基である。
1以上の置換基を有する脂肪族複素環オキシ基において、1以上の置換基は、それぞれ、脂肪族複素環オキシ基の水素原子と置換されている。脂肪族複素環オキシ基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。脂肪族複素環オキシ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子から選択することができる。
置換又は非置換のフェニル基
「置換又は非置換のフェニル基」は、フェニル基又は1以上の置換基を有するフェニル基を意味する。
1以上の置換基を有するフェニル基において、1以上の置換基は、それぞれ、フェニル基の水素原子と置換されている。フェニル基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。フェニル基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、後述する置換基群αから選択することができる。1以上の置換基が、炭素原子を含有する基から選択される場合、1以上の置換基を有するフェニル基における合計炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、より一層好ましくは8以下、より一層好ましくは7以下である。
置換又は非置換のフェニルオキシ基
「置換又は非置換のフェニルオキシ基」は、フェニルオキシ基又は1以上の置換基を有するフェニルオキシ基を意味する。
「フェニルオキシ基」は、フェニル基-O-で表される基を意味する。
1以上の置換基を有するフェニルオキシ基において、1以上の置換基は、それぞれ、フェニルオキシ基の水素原子と置換されている。フェニルオキシ基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。フェニルオキシ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、後述する置換基群αから選択することができる。1以上の置換基が、炭素原子を含有する基から選択される場合、1以上の置換基を有するフェニルオキシ基における合計炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、より一層好ましくは8以下である。
置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基
「置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基」は、炭素数7~10のフェニルアルキル基又は1以上の置換基を有する炭素数7~10のフェニルアルキル基を意味する。
「炭素数7~10のフェニルアルキル基」は、フェニル基-炭素数1~4のアルキレン基で表される基を意味する。「炭素数1~4のアルキレン基」は、炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基又は炭素数3~4の分岐鎖状のアルキレン基を意味する。炭素数1~4のアルキレン基は、好ましくは、炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基である。直鎖状のアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
1以上の置換基を有する炭素数7~10のフェニルアルキル基において、1以上の置換基は、それぞれ、フェニルアルキル基の水素原子と置換されている。置換される水素原子は、ベンゼン環上の水素原子であってもよいし、アルキレン部分の水素原子であってもよいが、ベンゼン環上の水素原子であることが好ましい。フェニルアルキル基がアルキレン部分に有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2であり、フェニルアルキル基がベンゼン環上に有し得る置換基の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。フェニルアルキル基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、後述する置換基群αから選択することができる。1以上の置換基が、炭素原子を含有する基から選択される場合、1以上の置換基を有するフェニルアルキル基における合計炭素数は、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、より一層好ましくは12以下である。
置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基
「置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基」は、炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基又は1以上の置換基を有する炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基を意味する。
「炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基」は、炭素数7~10のフェニルアルキル基-O-で表される基を意味する。「炭素数7~10のフェニルアルキル基」に関する上記説明は、炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基に含まれる炭素数7~10のフェニルアルキル基にも適用される。
1以上の置換基を有する炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基において、1以上の置換基は、それぞれ、フェニルアルキルオキシ基の水素原子と置換されている。置換される水素原子は、ベンゼン環上の水素原子であってもよいし、アルキレン部分の水素原子であってもよいが、ベンゼン環上の水素原子であることが好ましい。フェニルアルキルオキシ基がアルキレン部分に有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2であり、フェニルアルキルオキシ基がベンゼン環上に有し得る置換基の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。フェニルアルキルオキシ基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、後述する置換基群αから選択することができる。1以上の置換基が、炭素原子を含有する基から選択される場合、1以上の置換基を有するフェニルアルキルオキシ基における合計炭素数は、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、より一層好ましくは12以下である。
置換基群α
「置換基群α」は、以下の置換基から構成される。
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)アミノ基
(α-3)置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基
(α-4)置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基
(α-5)置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基
(α-6)置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基
(α-7)置換又は非置換の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基
(α-8)置換又は非置換の炭素数2~6のジアルキルアミノ基
(α-9)置換又は非置換の脂肪族環基
(α-10)置換又は非置換の脂肪族環オキシ基
(α-11)置換又は非置換の脂肪族複素環基
(α-12)置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基
「ハロゲン原子」、「置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基」、「置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基」、「置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基」、「置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基」、「置換又は非置換の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基」、「置換又は非置換の炭素数2~6のジアルキルアミノ基」、「置換又は非置換の脂肪族環基」、「置換又は非置換の脂肪族環オキシ基」、「置換又は非置換の脂肪族複素環基」及び「置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基」に関する上記説明は、置換基群αにも適用される。
置換基群αは、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基、置換又は非置換の脂肪族複素環基、及び、置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基から構成されることが好ましく、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基、及び、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基から構成されることがより好ましく、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基、及び、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基から構成されることがより一層好ましい。
置換又は非置換の芳香族環基
「置換又は非置換の芳香族環基」は、芳香族環基又は1以上の置換基を有する芳香族環基を意味する。
「芳香族環基」は、単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素環から水素原子を除去することにより生成される基を意味する。芳香族環基は、通常1~4環式、好ましくは1~3環式、より好ましくは1又は2環式の芳香族環基である。芳香族環基における環構成炭素原子の数は、通常6~18、好ましくは6~14、より好ましくは6~10である。単環式の芳香族環基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。縮合多環式の芳香族環基としては、例えば、ナフチル基、アントリル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、ピレニル基等の2~4環式の芳香族環基等が挙げられる。縮合多環式の芳香族環基は、部分的に飽和された縮合多環式の芳香族環基であってもよい。部分的に飽和された縮合多環式の芳香族環基は、環を構成する結合の一部が水素化された縮合多環式の芳香族環基である。
芳香族環基は、好ましくはフェニル基である。
1以上の置換基を有する芳香族環基において、1以上の置換基は、それぞれ、芳香族環基の水素原子と置換されている。芳香族環基が有し得る置換基の数は、芳香族環基の炭素数、員数等に応じて適宜決定することができる。芳香族環基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である場合、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。芳香族環基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、後述する置換基群βから選択することができる。1以上の置換基が、炭素原子を含有する基から選択される場合、1以上の置換基を有する芳香族環基における合計炭素数は、好ましくは20以下、より好ましくは19以下、より一層好ましくは18以下、より一層好ましくは17以下である。
置換又は非置換の芳香族複素環基
「置換又は非置換の芳香族複素環基」は、芳香族複素環基又は1以上の置換基を有する芳香族複素環基を意味する。
「芳香族複素環基」は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は縮合多環式の芳香族複素環から水素原子を除去することにより生成される基を意味する。芳香族複素環基は、通常1~4環式、好ましくは1~3環式、より好ましくは1又は2環式の芳香族複素環基である。芳香族複素環基に含まれるヘテロ原子の数は、通常1~4、好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。芳香族複素環基の員数は、好ましくは5~14員、より好ましくは5~10員である。芳香族複素環基における環構成炭素原子の数は、芳香族複素環基のヘテロ原子数及び員数に応じて適宜決定される。芳香族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。
芳香族複素環基は、例えば、単環式の芳香族複素環基である。単環式の芳香族複素環基は、例えば、5~7員の単環式の芳香族複素環基である。単環式の芳香族複素環基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子及び1~2個の硫黄原子を含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。単環式の芳香族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。単環式の芳香族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1又は2である。
芳香族複素環基は、例えば、縮合多環式の芳香族複素環基である。縮合多環式の芳香族複素環基は、例えば、8~14員の2環式又は3環式の芳香族複素環基である。縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、1~3個の酸素原子を含むもの、1~3個の硫黄原子を含むもの、1~3個の酸素原子及び1~3個の硫黄原子を含むもの、1~5個の窒素原子を含むもの、1~4個の窒素原子と1~3個の硫黄原子及び/又は1~3個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、α-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。多環式の芳香族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。多環式の芳香族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1、2又は3個である。
芳香族複素環基は、好ましくは、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基又はピリジル基であり、より一層好ましくはチエニル基又はベンゾチオフェニル基である。
1以上の置換基を有する芳香族複素環基において、1以上の置換基は、それぞれ、芳香族複素環基の水素原子と置換されている。芳香族複素環基が有し得る置換基の数は、芳香族複素環基の炭素数、員数等に応じて適宜決定することができる。芳香族複素環基が有し得る置換基の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。置換基の数が2以上である、2以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。芳香族複素環基が有し得る1以上の置換基は、それぞれ独立して、後述する置換基群βから選択することができる。1以上の置換基が、炭素原子を含有する基から選択される場合、1以上の置換基を有する芳香族複素環基における合計炭素数は、好ましくは20以下、より好ましくは19以下、より一層好ましくは18以下、より一層好ましくは17以下である。
置換基群β
「置換基群β」は、以下の置換基から構成される。
(β-1)置換基群α
(β-2)置換又は非置換のフェニル基
(β-3)置換又は非置換のフェニルオキシ基
(β-4)置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基
(β-5)置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基
「置換基群α」、「置換又は非置換のフェニル基」「置換又は非置換のフェニルオキシ基」、「置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基」及び「置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基」に関する上記説明は、置換基群βにも適用される。
(β-2)は、ハロゲン原子から選択される1以上の置換基を有するフェニル基であることが好ましい。ハロゲン原子の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
(β-3)は、ハロゲン原子から選択される1以上の置換基を有するフェニルオキシ基であることが好ましい。ハロゲン原子の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
(β-4)は、ハロゲン原子から選択される1以上の置換基を有する炭素数7~10のフェニルアルキル基であることが好ましい。ハロゲン原子の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
(β-5)は、ハロゲン原子から選択される1以上の置換基を有する炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基であることが好ましい。ハロゲン原子の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
置換基群βは、ハロゲン原子、脂肪族複素環オキシ基、フェニル基、並びに、ハロゲン原子及び脂肪族複素環オキシ基から選択される1以上の置換基を有するフェニル基から構成されることが好ましく、ハロゲン原子、脂肪族複素環オキシ基、フェニル基、及び、ハロゲン原子から選択される1以上の置換基を有するフェニル基から構成されることがより好ましい。
化合物(1)
化合物(1)は、下記式(1):
で表される化合物である。
式(1)において、nは、0~5の整数である。nは、好ましくは2又は3である。nが2又は3である場合、化合物(1)は、抗糖尿病薬等の医薬品原薬の合成中間体として、特に有用である。
式(1)において、n個のR1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アミノ基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、置換又は非置換の炭素数2~6のジアルキルアミノ基、置換又は非置換の脂肪族環基、置換又は非置換の脂肪族環オキシ基、置換又は非置換の脂肪族複素環基、置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基、置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のフェニルオキシ基、置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基、及び、置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基から選択される基である。nが2以上である場合、n個のR1は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(1)において、n個のR1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基、置換又は非置換の脂肪族環基、置換又は非置換の脂肪族環オキシ基、置換又は非置換の脂肪族複素環基、置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基、置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のフェニルオキシ基、置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基、及び、置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基から選択される基であることが好ましく、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基、置換又は非置換のフェニル基、及び、置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基から選択される基であることがより好ましく、フッ素、臭素、ヨウ素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert―ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基及びベンジル基から選択される基であることがより一層好ましく、フッ素、臭素、ヨウ素、メチル基及びメトキシ基から選択される基であることがより一層好ましい。n個のR1がそれぞれ独立してこれらの基から選択される場合、化合物(1)は、抗糖尿病薬等の医薬品原薬の合成中間体として、特に有用である。
式(1)において、nが2である場合、2個のR1が結合している位置は、ベンゼン環の2位及び5位であることが好ましい。なお、1位は、-CH2-Arが結合している位置である。
式(1)において、nが2である場合、2個のR1のうち、少なくとも1個は、ハロゲン原子であることが好ましい。2個のR1の位置がベンゼン環の2位及び5位である場合、少なくとも5位のR1が、ハロゲン原子であることが好ましい。2個のR1の組み合わせは、ハロゲン原子と、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基及び置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基から選択される1種との組み合わせであることが好ましく、ハロゲン原子と、ハロゲン原子及び置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基から選択される1種との組み合わせであることがより好ましい。
式(1)において、nが3である場合、3個のR1が結合している位置は、ベンゼン環の2位、4位及び5位であることが好ましい。なお、1位は、-CH2-Arが結合している位置である。
式(1)において、nが3である場合、3個のR1のうち、少なくとも1個は、ハロゲン原子であることが好ましい。3個のR1の位置がベンゼン環の2位、4位及び5位である場合、少なくとも5位のR1が、ハロゲン原子であることが好ましい。3個のR1の組み合わせは、ハロゲン原子と、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基及び置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基から選択される2種との組み合わせが好ましく、ハロゲン原子と、ハロゲン原子と、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基及び置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基から選択される1種との組み合わせ、或いは、ハロゲン原子と、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基及び置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基から選択される2種との組み合わせがより好ましく、ハロゲン原子と、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基と、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基との組み合わせがより一層好ましい。
式(1)において、Arは、置換又は非置換の芳香族環基、及び、置換又は非置換の芳香族複素環基から選択される基である。
式(1)において、Arは、以下の式(Ar-1)、(Ar-2)又は(Ar-3)で表される基であることが好ましい。
式(Ar-1)、(Ar-2)及び(Ar-3)において、pは、0~5の整数である。pは、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、より一層好ましくは0又は1である。
式(Ar-1)、(Ar-2)及び(Ar-3)において、p個のRaは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アミノ基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルキル基、置換又は非置換の炭素数2~6のヘテロアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、置換又は非置換の炭素数2~6のジアルキルアミノ基、置換又は非置換の脂肪族環基、置換又は非置換の脂肪族環オキシ基、置換又は非置換の脂肪族複素環基、置換又は非置換の脂肪族複素環オキシ基、置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のフェニルオキシ基、置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基、及び、置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキルオキシ基から選択される基である。
式(Ar-1)において、pは、好ましくは1であり、Raは、好ましくは、置換又は非置換のフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子を有するフェニル基であり、より一層好ましくは、フッ素原子を有するフェニル基である。置換又は非置換のフェニル基が結合している位置は、好ましくは、チオフェン環の2位である。ハロゲン原子を有するフェニル基において、ハロゲン原子が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
式(Ar-2)において、pは、好ましくは0である。
式(Ar-3)において、pは、好ましくは1であり、Raは、好ましくは、置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは、炭素数1~3のアルコキシ基であり、より一層好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。置換又は非置換の炭素数1~6のアルコキ基が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
式(1)で表される化合物(1)のうち好適な化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
化合物(1A)は、カナグリフロジンの合成中間体として、化合物(1B)は、イプラグリフロジンの合成中間体として、化合物(1C)は、ルセオグリフロジンの合成中間体として、有用である。なお、カナグリフロジン、イプラグリフロジン及びルセオグリフロジンはいずれも抗糖尿病薬である。
化合物(2)
化合物(2)は、下記式(2):
で表される化合物である。
式(2)において、R1、Ar及びnは、式(1)と同義である。したがって、式(1)におけるR1、Ar及びnに関する上記説明は、式(2)におけるR1、Ar及びnにも適用される。
式(2)において、Xは、-C(=O)-、-CH(-OH)-及び-CH(-OR2)-から選択される基である。
R2は、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基及び置換又は非置換の炭素数7~10のフェニルアルキル基から選択される基である。R2は、炭素数1~6のアルキル基及び炭素数7~10のフェニルアルキル基から選択される基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数7~10のフェニルアルキル基から選択される基であることがより好ましく、メチル基、エチル基及びベンジル基から選択される基であることがより一層好ましい。
Xが-C(=O)-である場合、化合物(2)は、下記式(2-1):
[式中、R
1、Ar及びnは、前記と同義である。]
で表されるケトン化合物(2-1)である。
Xが-CH(-OH)-である場合、化合物(2)は、下記式(2-2):
[式中、R
1、Ar及びnは、前記と同義である。]
で表されるアルコール化合物(2-2)である。
Xが-CH(-OR
2)-である場合、化合物(2)は、下記式(2-3):
[式中、R
1、Ar、n及びR
2は、前記と同義である。]
で表されるエーテル化合物(2-3)である。
式(2)において、Xは、-C(=O)-又は-CH(-OH)-であることが好ましい。すなわち、化合物(2)は、ケトン化合物(2-1)又はアルコール化合物(2-2)であることが好ましい。ケトン化合物(2-1)及びアルコール化合物(2-2)は、抗糖尿病薬等の医薬品原薬の合成中間体として、特に有用である。
ケトン化合物(2-1)のうち好適な化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
アルコール化合物(2-2)のうち好適な化合物としては、例えば、ケトン化合物(2-1A)~(2-1C)において、=Oが-OHとなっている化合物が挙げられる。ケトン化合物(2-1A)~(2-1C)において、=Oが-OHとなっている化合物を、それぞれ、アルコール化合物(2-2A)~(2-2C)という。ケトン化合物(2-1B)において、=Oが-OHとなっているアルコール化合物(2-2B)を以下に示す。
ケトン化合物(2-1A)及びアルコール化合物(2-2A)は、カナグリフロジンの合成中間体として、ケトン化合物(2-1B)及びアルコール化合物(2-2B)は、イプラグリフロジンの合成中間体として、ケトン化合物(2-1C)及びアルコール化合物(2-2C)は、ルセオグリフロジンの合成中間体として、有用である。なお、カナグリフロジン、イプラグリフロジン及びルセオグリフロジンはいずれも抗糖尿病薬である。
チタン化合物
チタン化合物としては、例えば、チタンが0価であるもの、チタンが2価であるもの、3価であるもの、4価であるもの等が知られているが、いずれのチタン化合物であってもよい。チタン化合物としては、例えば、TiCl4、TiBr4、TiI4、TiO2、Ti(O-iPr)Cl3、Ti(O-iPr)2Cl2、Ti(O-iPr)3Cl等の4価のチタン塩又はその溶媒和物;TiCl3、TiBr3、TiO3等の3価のチタン塩又はその溶媒和物;TiCl2、TiO等の2価のチタン塩又はその溶媒和物;金属Ti等の0価のチタン又はその溶媒和物が挙げられる。なお、「iPr」は、イソプロピル基を意味する。溶媒和物としては、例えば、水和物等が挙げられる
反応性の点や、反応系における取り扱いが容易である点から、チタン化合物は、下記式(3):
[式中、R
3は、ハロゲン原子であり、R
4は、置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基であり、r及びsは、r+s=3又は4を満たす0~4の整数である。]
で表される3価又は4価のチタン塩又はその溶媒和物であることが好ましく、四塩化チタン又はその溶媒和物であることがより好ましい。
式(3)において、R3は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、R4は、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。なお、「置換又は非置換の炭素数1~6のアルキル基」に関する上記説明は、式(3)におけるR4にも適用される。
≪第1の態様≫
本発明の第1の態様は、化合物(1)の製造方法に関し、下記工程(a)及び(b):
(a)化合物(2)を準備する工程;及び
(b)化合物(2)を、チタン化合物の存在下、還元剤を使用して還元し、化合物(1)を製造する工程
を含む。
工程(a)
工程(a)で準備される化合物(2)は、工業的に入手可能な市販品であってもよいし、工程(a)で製造された化合物であってもよい。
工程(a)は、化合物(2)を製造する工程を含むことができる。化合物(2)の製造工程では、本発明の第2の態様に係る製造方法を使用して、化合物(2)を製造することができる。工程(a)が、ケトン化合物(2-1)を製造する工程を含む場合、態様2Aに係る製造方法を使用して、ケトン化合物(2-1)を製造することができる。工程(a)が、アルコール化合物(2-2)を製造する工程を含む場合、態様2Bに係る製造方法を使用して、アルコール化合物(2-2)を製造することができる。工程(a)が、エーテル化合物(2-3)を製造する工程を含む場合、態様2Cに係る製造方法を使用して、エーテル化合物(2-3)を製造することができる。
工程(b)
工程(b)では、化合物(2)を、チタン化合物の存在下、還元剤を使用して還元し、化合物(1)を製造する。工程(b)において、チタン化合物は、ルイス酸として作用する。チタン化合物を使用することにより、化合物(1)を高収率で効率よく製造することができる。
本明細書における「チタン化合物」に関する説明は、工程(b)で使用されるチタン化合物にも適用される。
工程(b)で使用される還元剤としては、例えば、カルボニル基、エーテル基、アルコキシド基等を有する還元反応に使用される還元剤が挙げられる。還元剤の具体例としては、トリエチルシラン、テトラメチルジシロキサン等のシラン化合物、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素マグネシウム等の水素化ホウ素金属塩、水素等が挙げられる。これらの中でも、チタン化合物と組み合わせた場合の反応性の点や、工業的に安価で入手可能な点から、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素マグネシウム等の水素化ホウ素金属塩が好ましく、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素アルカリ金属塩がより好ましい。
工程(b)で使用される還元剤及びチタン化合物の量は特に制限されず、化合物(2)の反応性等を勘案して適宜調整することができる。還元剤の使用量は、化合物(2) 1当量に対して、好ましくは0.5~5.0当量の範囲、より好ましくは0.5~3.0当量の範囲、より一層好ましくは0.5~2.0当量の範囲である。このような還元剤の使用量は、目的とする化合物(1)を高純度及び/又は高収率で製造する観点から好適である。チタン化合物の使用量は、化合物(2) 1当量に対して、好ましくは0.05~5.0当量の範囲、より好ましくは0.1~3.0当量の範囲、より一層好ましくは0.5~2.0当量の範囲である。このようなチタン化合物の使用量は、化合物(1)を高収率で製造する観点から好適である。
工程(b)で使用される溶媒は、還元反応に適した溶媒であることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、t-ブチルーメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。工程(b)で使用される溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。反応性の観点から、工程(b)で使用される溶媒は、塩化メチレン、THF、ジメトキシエタン、ジグライム等から選択される1種以上の溶媒を含むことが好ましい。工程(a)が化合物(2)の製造工程を含む場合、化合物(2)の製造工程において、工程(b)と同様の溶媒を使用することができる。化合物(2)の製造工程において、工程(b)と同様の溶媒を使用する場合、化合物(2)の製造工程で使用された溶媒を、そのまま、工程(b)で使用することができる。
工程(b)で使用される溶媒の量は、反応容器の容量等を勘案して適宜調整することができる。溶媒の使用量は、化合物(2) 1質量部に対して、通常1~100容量部の範囲である。
工程(b)において、溶媒に対する化合物(2)、チタン化合物及び還元剤の添加順序は特に制限されず、製造装置等を勘案して適宜決定することができる。添加方法としては、例えば、溶媒に化合物(2)を添加した後、チタン化合物及び還元剤を添加する方法、溶媒にチタン化合物及び還元剤を添加した後、化合物(2)を添加する方法等が挙げられるが、溶媒にチタン化合物及び還元剤を添加した後、化合物(2)を添加する方法が好ましい。具体的には、溶媒にチタン化合物及び還元剤を添加し、還元剤とチタン化合物とを、20~120℃にて反応させ、次いで、溶媒に化合物(2)を添加する方法が、還元反応の収率が高い点で好ましい。還元剤とチタン化合物とを反応させる時間は、0.1~17時間の範囲で適宜調整することができる。
化合物(2)の還元反応の反応温度は、通常、-30~120℃の範囲で適宜調整することができる。化合物(2)の還元反応の反応時間は、通常、0.5~24時間の範囲で適宜調整することができる。
工程(b)の後、後処理を行ってもよい。後処理としては、特に限定されず、通常の反応処理を適用すれることができる。例えば、工程(b)の後、反応液中に水、塩酸水等を添加して反応を止め、次いで、クロロホルム等の有機溶媒で生成物を抽出し、次いで、得られた有機層を分取し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより、化合物(1)を単離することができる。
工程(b)における反応スキームとしては、例えば、以下の反応スキームが挙げられる。
≪第2の態様≫
本発明の第2の態様は、化合物(2)の製造方法に関し、ケトン化合物(2-1)の製造方法(以下「態様2A」という。)、アルコール化合物(2-2)の製造方法(以下「態様2B」という。)及びエーテル化合物(2-3)の製造方法(以下「態様2C」という。)を包含する。
<態様2A>
態様2Aは、ケトン化合物(2-1)の製造方法に関し、下記工程(c)及び(d):
(c)下記式(4):
[式中、R
1及びnは、前記と同義であり、Yは、ハロゲン原子である。]
で表される酸ハロゲン化合物(4)を準備する工程;及び
(d)酸ハロゲン化合物(4)と、下記式(5):
[式中、Arは、前記と同義である。]
で表される芳香族化合物(5)とを、ルイス酸の存在下、反応させ、ケトン化合物(2-1)を製造する工程を含む。
工程(c)
工程(c)で準備される酸ハロゲン化合物(4)は、工業的に入手可能な市販品であってもよいし、工程(c)で製造された化合物であってもよい。
式(4)において、R1及びnは、式(1)と同義である。したがって、式(1)におけるR1及びnに関する上記説明は、式(4)におけるR1及びnにも適用される。
式(4)において、Yは、好ましくは、塩素原子である。
式(4)で表される酸ハロゲン化合物(4)のうち好適な化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
工程(c)は、酸ハロゲン化合物(4)を製造する工程を含むことができる。
酸ハロゲン化合物(4)の製造工程では、対応するカルボン酸と、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、臭化チオニル、三臭化リン等のハロゲン化剤とを反応させることにより、酸ハロゲン化合物(4)を製造することができる。ハロゲン化剤の使用量は、酸ハロゲン化合物(4)の種類、ハロゲン化剤の種類等に応じて適宜調整することができる。ハロゲン化剤の使用量は、カルボン酸1当量に対して、通常1~5当量の範囲である。酸ハロゲン化合物(4)を製造する際、酸ハロゲン化反応を促進させるために添加剤を使用してもよい。添加剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。添加剤の使用量は、カルボン酸1当量対して、通常0.001~1当量の範囲で適宜調整することができる。酸ハロゲン化反応に使用される溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、t-ブチルーメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。酸ハロゲン化反応に使用される溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。反応性の観点から、溶媒として、塩化メチレン、THF、ジメトキシエタン、ジグライム等を使用することが好ましい。溶媒の使用量は、反応容器の容量等を勘案して適宜調整することができる。溶媒の使用量は、カルボン酸1質量部に対して、通常1~100容量部の範囲で適宜調整することができる。酸ハロゲン化の温度及び時間は、酸ハロゲン化反応の進行に応じて適宜調整することができる。酸ハロゲン化の温度は、通常-30~120℃の範囲であり、酸ハロゲン化の時間は、通常0.1~10時間の範囲である。
工程(d)
工程(d)では、酸ハロゲン化合物(4)と芳香族化合物(5)とを、チタン化合物の存在下、反応させ、ケトン化合物(2-1)を製造する。なお、工程(d)で生じる反応は、フリーデル-クラフツ アシル化反応である。
工程(d)において、チタン化合物をルイス酸として使用することが好ましい。チタン化合物をルイス酸として使用することにより、ケトン化合物(2-1)を高収率で効率よく製造することができる。なお、工程(d)において、チタン化合物に代えて又はチタン化合物とともに、チタン化合物以外のルイス酸を使用してもよい。
本明細書における「チタン化合物」に関する説明は、工程(d)で使用されるチタン化合物にも適用される。
芳香族化合物(5)は、Arで表される基、すなわち、置換又は非置換の芳香族環基及び置換又は非置換の芳香族複素環基から選択される基を有する。式(5)において、Arは、式(1)と同義である。したがって、式(1)におけるArに関する上記説明は、式(5)におけるArにも適用される。芳香族化合物(5)は、置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族環基及び置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族複素環基から選択される基を有する化合物であることが好ましい。このような芳香族化合物としては、例えば、メチルベンゼン、メトキシベンゼン、ジメチルアミノベンゼン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、2-(4-フルオロフェニル)チオフェン等が挙げられる。これらの芳香族化合物の中でも、抗糖尿病薬等の医薬品原薬の合成中間体として有用である点から、芳香族化合物(5)は、メトキシベンゼン、ベンゾチオフェン、2-(4-フルオロフェニル)チオフェン等であることが特に好ましい。
工程(d)で使用される酸ハロゲン化合物(4)及び芳香族化合物(5)の量は特に制限されず、酸ハロゲン化合物(4)及び化合物(5)の反応性等を勘案して適宜調整することができる。ケトン化合物(2-1)を高純度及び/又は高収率で製造する観点から、芳香族化合物(5)の使用量は、酸ハライド化合物(4) 1当量に対して、通常1~100当量の範囲、好ましくは1~10当量の範囲、より好ましくは1~2当量の範囲である。ケトン化合物(2-1)を高収率で製造する観点から、チタン化合物の使用量は、酸ハロゲン化合物(4) 1当量に対して、通常0.1~10当量の範囲、好ましくは0.5~5当量の範囲、より好ましくは1.0~3当量の範囲である。
工程(d)で使用される溶媒は、フリーデル-クラフツ アシル化反応に使用される公知の溶媒から適宜選択することができる。このような溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、t-ブチルーメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。工程(d)で使用される溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。反応性及び溶解性の観点から、工程(d)で使用される溶媒は、塩化メチレン、THF、ジメトキシエタン及びジグライムから選択される1種以上の溶媒を含むことが好ましい。工程(c)が酸ハロゲン化合物(4)の製造工程を含む場合、酸ハロゲン化合物(4)の製造工程において、工程(d)と同様の溶媒を使用することができる。酸ハロゲン化合物(4)の製造工程において、工程(d)と同様の溶媒を使用する場合、酸ハロゲン化合物(4)の製造工程で使用された溶媒を、そのまま、工程(d)における溶媒として使用することができる。溶媒の使用量は、反応容器の容量等を勘案して適宜調整することができる。溶媒の使用量は、酸ハロゲン化合物(4) 1質量部に対して、通常1~100容量部の範囲である。反応温度は、通常-30~120℃の範囲で適宜調整することができ、反応時間は、通常0.5~24時間の範囲で適宜調整することができる。
ケトン化合物(2-1)の製造後、後処理を行ってもよい。後処理としては、特に限定されず、通常の反応処理を適用すれることができる。例えば、反応後、反応液中に水、塩酸水等を添加して反応を止め、次いで、クロロホルム等の有機溶媒で生成物を抽出し、次いで、得られた有機層を分取し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより、目的とするケトン化合物(2-1)を単離ことができる。
工程(d)における反応スキームとしては、例えば、以下の反応スキームが挙げられる。
ケトン化合物(2-1A)は、カナグリフロジンの合成中間体として、ケトン化合物(2-1B)は、イプラグリフロジンの合成中間体として、ケトン化合物(2-1C)は、ルセオグリフロジンの合成中間体として、有用である。なお、カナグリフロジン、イプラグリフロジン及びルセオグリフロジンはいずれも抗糖尿病薬である。
<態様2B>
態様2Bは、アルコール化合物(2-2)の製造方法に関する。
一実施形態において、態様2Bに係る製造方法は、ケトン化合物(2-1)を還元し、アルコール化合物(2-2)を製造する工程を含む。ケトン化合物(2-1)の還元は常法に従って行うことができる。
別の実施形態において、態様2Bに係る製造方法は、下記式(6):
[式中、R
1及びnは前記と同義であり、Mは金属原子又は金属ハロゲン化物である。]
で表される有機金属化合物(6)と、下記式(7):
[式中、Arは、前記と同義である。]
で表されるアルデヒド化合物(7)とを反応させ、アルコール化合物(2-2)を製造する工程を含む。
式(6)において、R1及びnは、式(1)と同義である。したがって、式(1)におけるR1及びnに関する上記説明は、式(6)におけるR1及びnにも適用される。
式(6)において、Mは、金属原子又は金属ハロゲン化物である。金属原子としては、例えば、リチウム等が挙げられ、金属ハロゲン化物としては、例えば、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等が挙げられる。
式(7)において、Arは、式(1)と同義である。したがって、式(1)におけるArに関する上記説明は、式(7)におけるArにも適用される。
<態様2C>
態様2Cは、エーテル化合物(2-3)の製造方法に関し、アルコール化合物(2-2)を、酸(例えば、メタンスルホン酸、ボロンフルオライド・エーテル錯体等)の存在下、アルカノールと反応させ、エーテル化合物(2-3)を製造する工程を含む。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
以下の反応式に従って、化合物(1A)を合成した。
ケトン体(2-1A)(100mg、0.24mmol)のジメトキシエタン(DME、1mL)溶液に水素化ホウ素ナトリウム(9.1mg、0.24mmol)を加え70℃で2時間攪拌を行った。室温まで冷却後、TiCl4の塩化メチレン溶液(133mg、TiCl4(45.9mg、0.24mmol)含有)を5分かけて加え、50℃で5時間攪拌した。一夜、室温で放置後、反応液に水(5mL)を加え、30分攪拌した後、クロロホルム(10mL)で抽出した。有機層を、水洗(5mL×2)した後、HPLCで分析したところ、還元体(62.7mg、64%)が含まれていた。
上記の抽出液を減圧濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルカラム(酢酸エチル)で精製することにより化合物(1A)を結晶(56.4mg、収率57.6%)として得た。
[物性評価]
得られた化合物(1A)に関して、各種分析結果を以下に示す。
融点 109-110℃
IR(KBr)1509cm-1
1H-NMR(CDCl3) δ 2.30(s、3H)、4.10(s、2H)、6.60-7.75(m、9H)
[HPLC分析条件]
サンプル濃度:0.05%
注入量:1.0μL
波長:254nm
流速:1.0mL/min
移動相:0~15min(CH3CN:水=50:50~CH3CN:水=100:0)
カラム温度:30℃
充填剤:X Bridge C18 5μm(4.6×150mm)
保持時間:化合物(1A):4.3min
〔実施例2〕
実施例1と同じケトン体(2-1A)(100mg、0.24mmol)のDME(1mL)溶液に水素化ホウ素ナトリウム(14mg、0.37mmol)を加え70℃で2時間攪拌を行った。室温まで冷却後、TiCl4の塩化メチレン溶液(200mg、TiCl4(67mg、0.35mmol)含有)を5分かけて加え、50℃で5時間攪拌した。一夜室温で放置後、反応液に水(5mL)を加え、30分攪拌した後、クロロホルム(10mL)で抽出した。有機層を、水洗(5mL×2)後、HPLCで分析したところ、化合物(1A)(83.7mg、85.4%)が含まれていた。
〔比較例1〕
TiCl4の代わりにMgCl2を加えた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、全く反応が進行しなかった。
〔比較例2〕
TiCl4の代わりにH2SO4を加えた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、全く反応が進行しなかった。
〔比較例3〕
TiCl4の代わりにFeCl3を加えた以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、化合物(1A)は得られなかったが、アルコール体(、49mg、50%、HPLCアッセイ収率)を得た。
反応液を実施例1と同様の処理に付し、得られた溶液を減圧濃縮して、濃縮残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=20:1)で精製することにより、アルコール体を結晶(44.1mg、収率45%)として得た。
[物性評価]
得られたアルコール体に関して、各種分析結果を以下に示す。
融点 100-102℃
IR(KBr)3566、1509cm-1
1H-NMR(CDCl3) δ 2.30(s、3H)、2.40-2.50(m、1H),6.10-6.20(m、1H)、6.60-8.10(m、9H)
〔実施例3〕
以下の反応式に従って、化合物(1A)を合成した。
水素化ホウ素ナトリウム(13mg、0.34mmol)のDME(1mL)溶液にTiCl4(67mg、0.35mmol)の塩化メチレン溶液(180mg)をゆっくり加え50℃で1時間攪拌した。この反応液にアルコール体(2-2A)(50mg、0.12mmol)を加え50℃で3時間攪拌した。反応液に水(5mL)を加え30分攪拌した後、酢酸エチル(3mL)で抽出を行いHPLCにて分析したところ、還元体(1A)が、33.5mg(68.4%)含まれていた。
〔参考例1〕
以下の反応式に従って、ケトン体(2-1A)を合成した。
5-ヨードトルイル酸(0.30g、1.14mmol)のジクロロメタン(1mL)溶液にDMF(0.004g、0.05mmol)、塩化チオニル(0.28g、2.35mmol)を順次加え50℃で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、濃縮残渣をジクロロメタン(1mL)に溶解した。この溶液に、6℃で、四塩化チタン(0.33g、1.74mmol)の塩化メチレン(1mL)溶液を1分かけて滴下後、同温で30分攪拌した。この反応液に2-(4-フルオロフェニル)チオフェン(0.20g、1.12mmol)を5分かけて添加後、30分間、同温で攪拌した後、室温で4時間攪拌した。得られた反応液へ水(10mL)を加え、生成物をクロロホルム(10mL×2)で抽出し、得られた有機層を合してHPLCで分析したところ、ケトン体(2-1A)(433mg、91.7%)が含まれていた。
この溶液を減圧濃縮し、得られた粗結晶を酢酸エチルとヘキサンの混合液から再結晶することにより、ケトン体(2-1A)(390mg、収率82.5%)を結晶として得た。
[物性評価]
得られたケトン体(2-1A)に関して、各種分析結果を以下に示す。
融点 127~129℃
IR(KBr)1625、1597cm-1
1H-NMR(CDCl3) δ 2.35(s、3H)、7.00-8.00(m、9H)
[HPLC分析条件]
サンプル濃度:0.05%
注入量:1.0μL
波長:254nm
流速:1.0mL/min
移動相:0~15min(CH3CN:水=50:50~CH3CN:水=100:0)
カラム温度:30℃
充填剤:X Bridge C18 5μm(4.6×150mm)
保持時間:ケトン体:12.96min