以下、本発明に係る電源維持装置の実施形態について説明する。
〈実施形態1〉
〈実施形態1の構成〉
図1は、実施形態1の電源維持装置の構成を示す。実施形態1の電源維持装置1は、内燃機関(図示せず)を備える自動車等の車両に搭載されている。電源維持装置1は、図1に示されるように、電源に関し、負荷電源2と、制御電源15と、電源回路21とを含む。
負荷電源2は、『第1の電源』として機能し、前記車両のスタータ(図示せず)を含む負荷に電力を供給する電源装置BAから電圧V(例えば、12V)である電力の供給を受け、電圧V1(概ね12V近傍)である第1の電力(例えば、数十アンペア以上の比較的大きい電力)を生成する。負荷電源2は、当該第1の電力を、前記車両の車輪の回転を制動するブレーキ装置の電動機MT(ブレーキ装置(図示せず)内のアクチュエータACに搭載される)及び当該電動機MTの回転を制御するインバータ回路12へ供給する。ここで、電動機MTは、『負荷』に相当する。
制御電源15は、『第2の電源』として機能し、電源装置BAから電圧Vである電力の供給を受け、電圧V2(概ね12V近傍)の第2の電力(例えば、数アンペア以下の比較的小さい電力)を生成する。制御電源15は、当該第2の電力を電源回路21へ供給する。
電源回路21は、『電源回路』として機能し、電圧V2の第2の電力から、制御回路(マイコン14等のデジタル回路を主に含む回路)を動作させるための電圧VCC(例えば、5.0V)、電圧VDD(例えば、3.3V)の制御用電力を生成し、当該制御用電力を前記制御回路に供給する。電源回路21は、例えば、ASIC(特定用途向け集積回路)からなる。ここで、制御回路は、デジタル回路を主に含む回路に代えて、アナログ回路を主に含む回路であっても良い。
上述した電圧V1である第1の電力は、第1の配線WR1を介して供給され、他方で、上述した電圧V2である第2の電力は、第2の配線WR2を介して供給される。ここで、第1の配線WR1は、負荷電源2から電動機MTまでを結ぶ線であり、また、第2の配線WR2は、制御電源15から電源回路21までを結ぶ線である。
より詳しくは、第1の配線WR1は、主に、負荷電源2及びフェールセーフスイッチ3間の配線、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5間の配線、逆接保護スイッチ5及びノイズ対策用コイル9の配線、並びに、ノイズ対策用コイル9及びインバータ回路12間の配線から構成されている。同様に、第2の配線WR2は、主に、制御電源15及びノイズ対策用コイル17間の配線、ノイズ対策用コイル17及び逆接保護用ダイオード18間の配線、並びに、逆接保護用ダイオード18及び電源回路21間の配線から構成されている。
電源維持装置1は、上記した負荷電源2、制御電源15、電源回路21に加えて、フェールセーフスイッチ3と、フェールセーフスイッチ制御回路4と、逆接保護スイッチ5と、逆接保護スイッチ制御回路6と、スイッチ回路7と、ノイズ対策用コンデンサ8と、ノイズ対策用コイル9と、インバータコンデンサ10と、インバータ作動回路11と、インバータ回路12と、プリチャージ回路13と、マイコン14と、ノイズ対策用コンデンサ16と、ノイズ対策用コイル17と、逆接保護用ダイオード18と、瞬断防止用コンデンサ19と、デカップリングコンデンサ20と、インターフェイス回路22と、含む。
フェールセーフスイッチ3は、『スイッチユニット』の一部として機能し、第1の配線WR1上で負荷電源2の後段に設けられ、例えば、ユニポーラトランジスタであるMOSFETから構成されており、負荷電源2からインバータ回路12及び電動機MTに向かう電流が流れることを許可しまたは禁止する。
フェールセーフスイッチ制御回路4は、マイコン14から、フェールセーフスイッチ3を導通にすべき旨又は非導通にすべき旨を指示する制御信号14dを受け、当該制御信号14dに基づき、フェールセーフスイッチ3のゲート端子に印加すべき電圧を制御することにより、フェールセーフスイッチ3を導通または非導通に切り換える。
逆接保護スイッチ5は、『スイッチユニット』の他の一部として機能し、第1の配線WR1上でフェールセーフスイッチ3の後段に設けられ、フェールセーフスイッチ3と同様に、例えば、ユニポーラトランジスタであるMOSFETから構成されている。
逆接保護スイッチ5は、負荷電源2が、電源装置BAに逆接される場合に、即ち、電源装置BAにおける電圧Vを出力する2つの出力端子(図示せず)と、負荷電源2における前記電圧Vを入力するための2つの入力端子(図示せず)との関係が、本来の接続とは異なり、逆に接続された場合に、例えば、前記した逆接に起因する想定しない電圧、電流、電力が、逆接保護スイッチ5の後段に設けられた回路に悪影響を及ぼすことを回避する。
逆接保護スイッチ制御回路6は、マイコン14から、逆接保護スイッチ5を導通すべき旨又は非導通にすべき旨を指示する制御信号14cを受け、当該制御信号14cに基づき、逆接保護スイッチ5のゲート端子に印加すべき電圧を制御することにより、逆接保護スイッチ5を導通又は非導通に切り換える。
スイッチ回路7は、『スイッチ回路』として機能し、第1の配線WR1と第2の配線WR2との間に設けられており、換言すれば、インバータコンデンサ10の一端(インバータコンデンサ10の2つの端子のうち、第1の配線WR1に接続されているもの)と、電源回路21における第2の電力の電圧V2の入力端との間に設けられている。スイッチ回路7は、上述したフェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5と同様に、ユニポーラトランジスタであるMOSFET7aを有し、更に、ダイオード7b及び電流制限抵抗器7cを有する。スイッチ回路7内で、MOSFET7a、ダイオード7b、電流制限抵抗器7cは、直列接続されている。
MOSFET7aは、マイコン14から、スイッチ回路7を、正確には、MOSFET7aを導通にすべき旨又は非導通にすべき旨を指示する制御信号14bを受け、当該制御信号14bに基づき、導通又は非導通に切り換わる。
ダイオード7bは、第1の配線WR1から第2の配線WR2へ向けて電流が流れることを許可すべく、換言すれば、制御電源15からスイッチ回路7を通じて負荷電源2へ電流が流れること、及び、制御電源15からスイッチ回路7を通じて電動機MTへ電流が流れることを禁止すべく、そのアノード端子がMOSFET7aを介して第1の配線WR1に接続されており、そのカソード端子が電流制限抵抗器7cを介して第2の配線WR2に接続されている。
電流制限抵抗器7cは、第1の配線WR1から第2の配線WR2へ流れる電流の大きさを制限し、これにより、電源回路21に大きい電流が流れることを回避する。
ノイズ対策用コンデンサ8は、第1の配線WR1上でスイッチ回路7の後段に設けられており、一端が第1の配線WR1に接続され、他端が基準電位(例えば、接地電位)に接続されている。
ノイズ対策用コイル9は、第1の配線WR1上でノイズ対策用コンデンサ8の後段に、第1の配線WR1に直列に挿入されている。ノイズ対策用コンデンサ8及びノイズ対策用コイル9は、協働してLCフィルタを構成し、これにより、負荷電源2から供給される第1の電力の電圧V1に含まれるノイズを除去する。
インバータコンデンサ10は、『コンデンサ』として機能し、具体的には、第1の配線WR1上でノイズ対策用コイル9の後段に設けられ、上記した一端、即ち、スイッチ回路7に接続されている、正確には、スイッチ回路7にノイズ対策用コイル9を介して接続されている一端が第1の配線WR1に接続されており、他端が上記の基準電位に接続されている。インバータコンデンサ10は、負荷電源2の電圧V1を、第1の配線WR1を介して印加されることにより蓄電し、また、制御電源15の電圧V2を、第2の配線WR2及びプリチャージ回路13を介して印加されることにより蓄電する。
インバータ作動回路11は、第1の配線WR1上でインバータコンデンサ10の後段に設けられている。インバータ作動回路11は、マイコン14から、インバータ回路12の動作を制御する制御信号14eを受け、当該制御信号14eに基づき、インバータ回路12の動作を制御する。加えて、インバータ作動回路11は、マイコン14からの前記制御信号14eに従って、自らの動作をも制御する。
インバータ回路12は、第1の配線WR1上でインバータ作動回路11の後段に設けられており、上述したように、インバータ作動回路11による制御の下で、電動機MTの回転を制御する。
プリチャージ回路13は、『プリチャージ回路』として機能し、入力端子13aが、第2の配線WR2に接続され、他方で、出力端子13bが、第1の配線WR1に接続されており、より正確には、入力端子13aが、制御電源15に接続され、他方で、出力端子13bが、インバータコンデンサ10の上述した一端に接続されている。プリチャージ回路13は、マイコン14から、プリチャージ回路13を導通にすべき旨又は非導通にすべき旨を指示する制御信号14aを受け、導通又は非導通に切り換わる。具体的には、プリチャージ回路13の導通により、制御電源15の電圧V2を、第2の配線WR2及びプリチャージ回路13を介して、第1の配線WR1上に、より正確には、インバータコンデンサ10の前記一端に印加する。他方で、プリチャージ回路13の非導通により、制御電源15の電圧V2を、インバータコンデンサ10の前記一端に印加しない。
マイコン14は、電源回路21が生成する電圧VDD、VCCで動作する。マイコン14は、インターフェイス回路22を経由して、電源維持装置1の外部から、外部の状況、例えば、上記した車両に乗車する運転手によるキーの操作、電源維持装置1の外部の他の装置等との通信の状況、前記車両のエンジンの動作状況等を各々が示すイグニション信号22a、通信信号22b、関連信号22cを受ける。マイコン14は、例えば、これらの信号22a~22cに従って、上述した制御信号14a~14eを、プリチャージ回路13、スイッチ回路7、フェールセーフスイッチ制御回路4、逆接保護スイッチ5、プリチャージ回路13へ各々、出力する。
ノイズ対策用コンデンサ16は、第2の配線WR2上で制御電源15の後段に設けられ、一端が第2の配線WR2に接続され、他端が基準電位に接続されている。
ノイズ対策用コイル17は、第2の配線WR2上でノイズ対策用コンデンサ16の後段に、第2の配線WR2に直列に挿入されている。ノイズ対策用コンデンサ16及びノイズ対策用コイル17は、協働してLCフィルタを構成し、これにより、制御電源15から出力される第2の電力の電圧V2に含まれるノイズを除去する。
逆接保護用ダイオード18は、第2の配線WR2上でノイズ対策用コイル17の後段に、第2の配線WR2に直列に挿入されている。逆接保護用ダイオード18は、上記した逆接保護スイッチ5と同様な動作を有し、即ち、電源装置BAに制御電源15が逆接された場合、当該逆接に起因する想定しない電圧、電流、電力が、逆接保護用ダイオード18の後段に設けられた回路に悪影響を及ぼすことを回避する。
瞬断防止用コンデンサ19は、第2の配線WR2上で逆接保護用ダイオード18の後段に設けられており、一端が第2の配線WR2に接続され、他方で、他端が基準電位に接続されている。瞬断防止用コンデンサ19は、制御電源15の電圧V2が印加されることにより蓄電し、仮に、制御電源15が電圧V2を正常に出力することができない事態が瞬発的に生じても、蓄電された電荷により規定される、制御電源15の電圧V2と同等な電圧の電力を電源回路21に供給する。これにより、電源回路21による電圧VDD、VCCを生成する動作が瞬断されることを回避する。
デカップリングコンデンサ20は、第2の配線WR2上で、瞬断防止用コンデンサ19の後段に設けられており、換言すれば、電源回路21の前段に設けられており、より詳しくは、瞬断防止用コンデンサ19と同様に、一端が第2の配線WR2に接続され、他端が基準電位に接続されている。デカップリングコンデンサ20は、制御電源15から出力される電圧V2から、即ち、電源回路21に入力されるべき電圧V2からノイズを除去する。
インターフェース回路22は、電源維持装置1の外部の装置、機構、ユニット等とインターフェイスを行い、具体的には、上述したように、運転手によるキーの操作、外部の他の装置等との通信の状況、車両のエンジンの動作状況を含む、車両に関する動作及び状態に関する情報を示すイグニション信号22a、通信信号22b、関連信号22cの入力を受け、これらの信号22a~22cをマイコン14及び電源回路21へ転送する。
〈実施形態1の動作〉
図2は、実施形態1の電源維持装置1の動作を示し、より詳しくは、クランキング動作が発生するまでの電源維持装置1の動作を示す。以下、図2のフローチャートに沿って、電源維持装置1の動作について説明する。動作の説明及び理解を容易にすべく、電源維持装置1が搭載された車両の運転手が、当該車両のエンジンを始動させようとすることを想定する。
上記の想定に加えて、運転手がエンジンを始動させようとする前に、負荷電源2、制御電源15、電源回路21が動作しており、当該動作に起因して、電源回路21の電圧VCC、VDDで動作するマイコン14による制御の下で、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5が導通になっており、当該導通により、負荷電源2の電圧V1が第1の配線WR1に印加されており、当該印加により、インバータコンデンサ10に、予め、電荷が蓄積されており、他方で、制御電源15の電圧V2が第2の配線WR2に印加されていることを想定する。
上記した、運転手に関する想定、並びに、負荷電源2、制御電源15、電源回路21、フェールセーフスイッチ3、逆接保護スイッチ5、インバータコンデンサ10、及び第2の配線WR2に関する想定に加えて、運転手がエンジンを始動させようとする前に、スイッチ回路7は、非導通であり、また、プリチャージ回路13も、非導通であり、当該2つの非導通により、第1の配線WR1と第2の配線WR2とが接続されていないことを想定する。
上記した想定を要約すると、以下の通りである。
(1)運転手が、車両のエンジンを始動させようとしていること
(2)フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5が、導通であること
(3)インバータコンデンサ10が、予め蓄電されていること
(4)制御電源15の電圧V2が、第2の配線WR2に印加されていること
(5)スイッチ回路7及びプリチャージ回路13が、非導通であること
(6)第1の配線WR1と第2の配線WR2とが、非導通であること
ステップS1:運転手が、車両のキーを操作すると(例えば、車両のキー差込口に差し込んだキーを少し回転させると)、即ち、電源維持装置1及び当該電源維持装置1の外部にある他の装置、機構、ユニットを起動すべき旨が指示されると、当該指示に応答して、インターフェイス回路22に、イグニション信号22a、通信信号22b、関連信号22cのうち、少なくともいずれか1つがインターフェイス回路22へ入力される。インターフェイス回路22は、当該入力された信号をマイコン14及び電源回路21へ出力する。
ステップS2:運転手が、引き続き、車両のキーを操作すると(例えば、キーを更に少し回転させると)、換言すれば、車両に搭載されているアクセサリーを使用できるようにすべき旨が指示されると、当該指示に応答して、他の外部にある装置等からインターフェイス回路22に、イグニション信号22a、通信信号22b、関連信号22cのうち、ステップS1で入力された信号を除く他の信号が入力される。インターフェイス回路22は、ステップS1と同様に、当該入力された信号をマイコン14及び電源回路21へ出力する。
ステップS1及びステップS2を経て、より正確には、イグニション信号22a、通信信号22b、関連信号22cのうち、2つの信号を受けることにより、マイコン14は、これ以後に、運転手によってエンジン(図示せず)の始動が指示されるであろうこと、即ち、クランキング動作(ステップS10)が発生するであろうことを予測する。
ステップS3:マイコン14は、上記したクランキング動作(ステップS10)の発生の予測に基づき、インバータ回路12の動作を停止させる旨を指示する制御信号14eを、インバータ作動回路11に出力する。インバータ作動回路11は、当該制御信号14eに従って、インバータ回路12の動作を停止させる。
ステップS4:マイコン14は、インバータ作動回路11の動作を停止させる旨を指示する制御信号14eを、インバータ作動回路11に出力する。インバータ作動回路11は、当該制御信号14eに従って、インバータ作動回路11自体の動作を停止させる。
ここで、後述される(ステップS5、S6)、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5を非導通にすることに先立って、インバータ作動回路11の動作及びインバータ回路12の動作を停止する理由は、以下の通りである。もし、インバータ作動回路11の動作及びインバータ回路12の動作を停止するに先立って、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5を非導通すると、既に負荷電源2の電圧V1により蓄電していたインバータコンデンサ10の電力が、インバータ作動回路11及びインバータ回路12に供給されることにより、インバータコンデンサ10に蓄積された電力が消費されるためである。換言すれば、インバータ作動回路11及びインバータ回路12の動作を停止させることを、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5を非導通にすることよりも先に行うことにより、当該消費を回避する。
ステップS5:マイコン14は、フェールセーフスイッチ3を非導通にすべき旨を指示する制御信号14dを、フェールセーフスイッチ制御回路4に出力し、フェールセーフスイッチ制御回路4は、当該制御信号14dに従って、フェールセーフスイッチ3を導通から非導通へ切り換える。
ステップS6:マイコン14は、逆接保護スイッチ5を非導通にすべき旨を指示する制御信号14cを、逆接保護スイッチ制御回路6に出力する。逆接保護スイッチ制御回路6は、当該制御信号14cに従って、逆接保護スイッチ5を導通から非導通へ切り換える。この時点で、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5が非導通になっていることから、負荷電源2が、実質的には、第1の配線WR1から切り離された状態になる。従って、インバータコンデンサ10は、負荷電源2の電圧V1による蓄電を中断する。
ステップS7:マイコン14は、プリチャージ回路13を導通にすべき旨を示す制御信号14aを、プリチャージ回路13に出力する。プリチャージ回路13は、当該制御信号14aに従って、非導通から導通に切り換わり、これにより、制御電源15の電圧V2が、第2の配線WR2及びプリチャージ回路13を介して、第1の配線WR1、即ち、インバータコンデンサ10の前記一端に印加される。この結果、インバータコンデンサ10は、ステップS6で切り離された負荷電源2の電圧V1に代えて、第2の配線WR2を介した制御電源15の電圧V2より、蓄電を再開する。
ステップS8:マイコン14は、スイッチ回路7を導通にすべき旨を指示する制御信号14bを、スイッチ回路7に出力する。スイッチ回路7では、当該制御信号14bに従って、MOSFET7aが導通になることにより、スイッチ回路7自体が、非導通から導通へ切り換わる。これにより、インバータコンデンサ10に蓄電された電荷により規定される電圧が、第1の配線WR1、スイッチ回路7、第2の配線WR2、及び電源回路21という経路で、電源回路21に印加され、換言すれば、インバータコンデンサ10の電力が、電源回路21に供給される。
ステップS9:運転手が、ステップS1及びステップS2に引き続き、車両のキーを操作し(例えば、キーを更に少し回転させると)、即ち、エンジンを始動すべき旨が指示される。
ステップS10:上記した指示(ステップS9)に応答して、電源装置BAから電力の供給を受けるスタータが始動する。スタータの始動に伴い、クランキング動作が発生し、即ち、電源装置BAからスタータへ、大きい電流が、一時的に流れ、これにより、電源装置BAから出力される電圧Vが、一時的に低下する。
図3は、クランキング動作(ステップS10)のときの、実施形態1の電源装置BAの出力電圧Vの波形を示し、図4は、クランキング動作(ステップS10)のときの、実施形態1の電源回路21への入力電圧並びに出力電圧VDD、VCCを示す。
上述したクランキング動作(ステップS10)の間、図3に示されるように、電源装置BAの出力電圧Vは、上記した大きい電流が流れることに起因して、クランキング動作の開始前に比較して急激に低下する。電源装置BAの出力電圧Vの低下に起因して、制御電源15の出力電圧V2も急激に低下する(図示せず)。
しかしながら、このクランキング動作(ステップS10)の間、電源回路21は、上述したように、ステップS8で、スイッチ回路7が導通することにより、インバータコンデンサ10の電力を供給されることから、上記した電源装置BAの出力電圧Vの急激な低下にも拘わらず、電源回路21への入力電圧は、図4に示されるように、緩やかに低下するに留まる。しかも、インバータコンデンサ10(正確には、インバータコンデンサ10の容量を予め大きくしておくこと)は、電源回路21への入力電圧が、電源回路21が正常に動作することができる動作保証最低電圧V2minを下回らないことを保証することから、電源回路21は、電圧VDD、VCCを、クランキング動作が始まる前のときと同様に、安定的に生成しかつ出力することができる。
〈実施形態1の効果〉
上述したように、実施形態1の電源維持装置1によれば、インバータコンデンサ10が、ステップS10でクランキング動作が発生する前に、負荷電源2の電圧V1及び制御電源15の電圧V2の両方により蓄電しており、かつ、インバータコンデンサ10に蓄電された電力が、ステップS10でクランキング動作が発生する前から、スイッチ回路7を導通することにより、電源回路21に供給される。これにより、ステップS10でクランキング動作が発生し、即ち、電源装置BAの電圧Vが急激に低下し、それにより、制御電源15の出力電圧V2が急激に低下しても、電源回路21に入力される電圧が低下することを緩和することができる。その結果、電源回路21は、電圧VCC、VDDをクランキング動作の開始前と同様に安定的に生成することができ、当該安定な電圧VCC、VDDにより、マイコン14等の制御回路を、クランキング動作の開始前と同様に安定的に動作させることが可能となる。
換言すれば、内燃機関(図示せず)を始動するときに、上記した電源装置BAの出力電圧Vが急激に低下した後、当該出力電圧Vが低下している間であっても、ブレーキ装置(図示せず)内のアクチュエータACを構成する電動機MTを制御する制御回路(マイコン14等)を正常に動作させ続けることが可能となる。
図5は、実施形態1の電源維持装置の動作を示し、より詳しくは、クランキング動作が発生した後の電源維持装置1の動作を示す。以下、図5のフローチャートに沿って、電源維持装置1の動作について説明する。以下では、図2のフローチャートを用いて説明したクランキング動作(図2中のステップS10)まで完了していることを想定する。
ステップS20:電源維持装置1以外の他の装置の1つ(図示せず)が、電源装置BAの出力電圧Vがクランキング動作より前の電圧まで回復したことを検出すると、当該他の装置は、例えば、関連信号22cにより、出力電圧Vが回復した旨をインターフェイス回路22に通知する。インターフェイス回路22は、関連信号22cを受けると、当該関連信号22cをマイコン14へ転送する。マイコン14は、関連信号22cに従って、スイッチ回路7を非導通にすべき旨を指示する制御信号14bをスイッチ回路7へ出力する。スイッチ回路7では、MOSFET7aが、前記制御信号14bに従って、非導通に切り換わり、その結果、スイッチ回路7自体が、導通から非導通に切り換わる。これにより、インバータコンデンサ10に蓄電された電力が電源回路21へ供給されることが中止される。
ステップS21:マイコン14は、プリチャージ回路13を非導通に切り換える旨を指示する制御信号14aを、プリチャージ回路13へ出力する。プリチャージ回路13は、当該制御信号14aに従って、導通から非導通に切り換わる。これにより、制御電源15の出力電圧V2がインバータコンデンサ10に印加されることが中止される。
ステップS22:マイコン14は、逆接保護スイッチ5を導通に切り換える旨を指示する制御信号14cを、逆接保護スイッチ制御回路6へ出力する。逆接保護スイッチ制御回路6は、当該制御信号14cに従って、逆接保護スイッチ5を非導通から導通へ切り換える。
ステップS23:マイコン14は、ステップS22と同様に、フェールセーフスイッチ3を導通に切り換える旨を指示する制御信号14dを、フェールセーフスイッチ制御回路4へ出力する。フェールセーフスイッチ制御回路4は、当該制御信号14dに従って、フェールセーフスイッチ3を非導通から導通へ切り換える。この時点で、逆接保護スイッチ5及びフェールセーフスイッチ3が導通に切り換わっていることから、負荷電源2は、第1の配線WR1との関係で、切り離された状態から接続された状態に切り換わる。
ステップS24:マイコン14は、インバータ作動回路11の動作を再開すべき旨を指示する制御信号14eを、インバータ作動回路11へ出力する。インバータ作動回路11は、当該制御信号14eに従って、インバータ作動回路11自体の動作を停止状態から再開状態へ切り換え、即ち、インバータ作動回路11の動作を再開させる。
ステップS25:マイコン14は、インバータ回路12の動作を再開すべき旨を指示する制御信号14eを、インバータ作動回路11へ出力する。インバータ作動回路11は、当該制御信号14eに従って、インバータ回路12を停止状態から再開状態へ切り換え、即ち、インバータ回路12の動作を再開させる。
ステップS26:以後、マイコン14は、インバータ作動回路11及びインバータ回路12の動作を指示する制御信号14eを用い、インバータ作動回路11及びインバータ回路12を介して、電動機MT、即ち、アクチュエータACの動作を制御する。
〈実施形態2〉
実施形態2の電源維持装置について説明する。
図6は、実施形態2の電源維持装置の構成を示す。実施形態2の電源維持装置1Aは、図6に示されるように、図1に示される実施形態1の電源維持装置1と概ね同一の構成を有する。他方で、実施形態2の電源維持装置1Aは、実施形態1の電源維持装置1と異なり、スイッチ回路7内に、ユニポーラトランジスタであるMOSFET7aに代えて、バイポーラトランジスタであるNPN型トランジスタ7dを有し、また、ダイオード7bを有しない。ここで、NPN型トランジスタに代えて、PNP型トランジスタでも良い。
実施形態2の電源維持装置1Aは、図2のフローチャート中のステップS8以外の全てのステップを、実施形態1と同様に行う。他方で、実施形態2の電源維持装置1Aは、実施形態1と異なり、図2のフローチャート中のステップS8のとき、スイッチ回路7内では、マイコン14から出力される、スイッチ回路7を導通にすべき旨の制御信号14bに従って、NPN型トランジスタ7dが導通にすることにより、スイッチ回路7自体が、非導通から導通へ切り換わる。これにより、実施形態1の電源維持装置1と同様に、インバータコンデンサ10に蓄積された電力が、第1の配線WR1、スイッチ回路7、第2の配線WR2、電源回路21という経路で、電源回路21に供給される。従って、実施形態2の電源維持装置1Aは、実施形態1と異なる構成を有するスイッチ回路7による制御の下で、実施形態1と同様な効果を得ることができる。
実施形態2のスイッチ回路7の構成については、実施形態2のNPN型トランジスタ7dでは、実施形態1のMOSFET7aと異なり、ボディーダイオードが存在しない。それにより、実施形態1のダイオード7bが阻止すべき、制御電源15からスイッチ回路7を経由して負荷電源2へ電流が流れること、及び、制御電源15からスイッチ回路7を経由して電動機MTへ電流が流れることは、起こり得ない。従って、実施形態2の電源維持装置1Aでは、実施形態1の電源維持装置1が有するダイオード7bを不要にすることができる。
〈実施形態3〉
実施形態3の電源維持装置について説明する。
図7は、実施形態3の電源維持装置の構成を示す。実施形態3の電源維持装置1Bは、図7に示されるように、図1に示される実施形態1の電源維持装置1と概ね同一の構成を有する。他方で、実施形態3の電源維持装置1Bは、実施形態1の電源維持装置1と異なり、プリチャージ回路13を有しない。
実施形態3の電源維持装置1Bは、図2のフローチャート中のステップS7以外の全てのステップを、実施形態1と同様に行う。他方で、実施形態3の電源維持装置1Bは、実施形態1と異なり、プリチャージ回路13が存在しないことから、図2のフローチャート中のステップS7の動作を有せず、即ち、プリチャージ回路13を非導通から導通へ切り換えることを行わない。従って、実施形態3のインバータコンデンサ10は、実施形態1のインバータコンデンサ10と異なり、ステップS7のときに、制御電源15の出力電圧V2が印加されない。
しかし、上記したステップS7に先立つステップS6までの間、より正確には、ステップS4までの間、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5が導通になっていることから、インバータコンデンサ10は、第1の配線WR1を介して負荷電源2の出力電圧V1により蓄電することができる。これにより、インバータコンデンサ10に蓄積された電力が、ステップS10のクランキング動作のときに、電源回路21に供給される。その結果、実施形態3の電源維持装置1Bでは、インバータコンデンサ10が、実施形態1のステップS7以後にインバータコンデンサ10に蓄電される電力に相当する分を有しないものの、実施形態1の電源維持装置1と概ね同様な効果を得ることができる。
〈実施形態4〉
実施形態4の電源維持装置について説明する。
図8は、実施形態4の電源維持装置の構成を示す。実施形態4の電源維持装置1Cは、図8に示されるように、図1に示される実施形態1の電源維持装置1と概ね同一の構成を有する。他方で、実施形態4の電源維持装置1Cと実施形態1の電源維持装置1との相違は、フェールセーフスイッチ3の配置及び逆接保護スイッチ5の配置である。具体的には、実施形態4の電源維持装置1Cでは、実施形態1の電源維持装置1との比較では、フェールセーフスイッチ3と逆接保護スイッチ5との前後関係が反対であり、即ち、逆接保護スイッチ5は、第1の配線WR1上で負荷電源2の後段に設けられており、フェールセーフスイッチ3は、第1の配線WR1上で逆接保護スイッチ5の後段に設けられている。
実施形態4の電源維持装置1Cは、図2のフローチャート中の全てのステップを、実施形態1と全く同様に行う。フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5については、実施形態4の電源維持装置1Cでは、マイコン14は、実施形態1と同様に、図2のフローチャート中のステップS5で、フェールセーフスイッチ3を非導通にすべき旨を表す制御信号14dを、フェールセーフスイッチ制御回路4に出力し、フェールセーフスイッチ制御回路4は、当該制御信号14dに基づき、フェールセーフスイッチ3を導通から非導通へ切り換える。
マイコン14は、更に、実施形態1と同様に、ステップS6で、逆接保護スイッチ5を非導通にすべき旨を示す制御信号14cを、逆接保護スイッチ制御回路6へ出力し、逆接保護スイッチ制御回路6は、当該制御信号14cに基づき、逆接保護スイッチ5を導通から非導通へ切り換える。
実施形態4の電源維持装置1Cによれば、上記したように、実施形態1の電源維持装置1と比較して、第1の配線WR1上における、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5の前後関係の配置が反対になっており、当該配置の下でも、実施形態1と同様な効果を得ることができる。
〈実施形態5〉
実施形態5の電源維持装置について説明する。
図9は、実施形態5の電源維持装置の構成を示す。実施形態5の電源維持装置1Dは、図9に示されるように、図1に示される実施形態1の電源維持装置1と概ね同一の構成を有する。他方で、実施形態5の電源維持装置1Dは、実施形態1の電源維持装置1と異なり、フェールセーフスイッチ3A、逆接保護スイッチ5A、及びスイッチ回路7が、MOSFETに代えて、メカニカルリレーで構成されている。
実施形態5の電源維持装置1Dでは、図2のフローチャート中の全てのステップと実質的に同一な動作を行う。特に、フェールセーフスイッチ3A、逆接保護スイッチ5A、及びスイッチ回路7に関する動作は、以下の通りである。
マイコン14が、実施形態1と同様に、図2のフローチャート中のステップS5のとき、フェールセーフスイッチ3Aを非導通にすべき旨を示す制御信号14dを、フェールセーフスイッチ制御回路4へ出力する。フェールセーフスイッチ制御回路4は、当該制御信号14dに従って、メカニカルリレーであるフェールセーフスイッチ3Aを導通から非導通へ切り換える。
マイコン14は、また、実施形態1と同様に、ステップS6のとき、逆接保護スイッチ5Aを非導通にすべき旨を示す制御信号14cを、逆接保護スイッチ制御回路6へ出力する。逆接保護スイッチ制御回路6は、当該制御信号14cに従って、メカニカルリレーである逆接保護スイッチ5を導通から非導通へ切り換える。
マイコン14は、更に、実施形態1と同様に、ステップS8のとき、スイッチ回路7を導通にすべき旨を示す制御信号14bを、スイッチ回路7へ出力する。スイッチ回路7では、当該制御信号14bに基づき、メカニカルリレー7Aが、非導通から導通に切り換わり、即ち、スイッチ回路7自体が、非導通から導通へ切り換わる。
実施形態5の電源維持装置1Dによれば、上記したように、メカニカルリレーを備えるフェールセーフスイッチ3A、逆接保護スイッチ5A、及びスイッチ回路7を有するとの構成の下でも、実施形態1と同様な効果を得ることができる。
〈実施形態6〉
実施形態6の電源維持装置について説明する。
図10は、実施形態6の電源維持装置の構成を示す。
実施形態6の電源維持装置1Eは、図10に示されるように、図9に示される実施形態5の電源維持装置1Dと概ね同一の構成を有する。他方で、実施形態6の電源維持装置1Eでは、実施形態5の電源維持装置1Dと異なり、フェールセーフスイッチ3及び逆接保護スイッチ5に代えて、フェールセーフスイッチ3の機能及び逆接保護スイッチ5の機能を備えるメカニカルリレー3Bを有する。実施形態6の電源維持装置1Eでは、また、フェールセーフスイッチ制御回路4及び逆接保護スイッチ制御回路6に代えて、フェールセーフスイッチ制御回路4の機能及び逆接保護スイッチ制御回路6の機能を備えるメカニカルリレー制御回路4Bを有する。
実施形態6の電源維持装置1Eでは、図2のフローチャート中のステップS5、S6以外の全てのステップを実施形態1と同様に行う。他方で、実施形態6の電源維持装置1Eでは、実施形態1と異なり、図2のフローチャート中のステップS5及びS6のときに、マイコン14が、メカニカルリレー3Bを非導通にすべき旨を示す制御信号14fを、メカニカルリレー制御回路4Bへ出力し、メカニカルリレー制御回路4Bは、当該制御信号14fに従って、メカニカルリレー3Bを導通から非導通へ切り換える。
実施形態6の電源維持装置1Eによれば、上記したように、メカニカルリレー3B及びメカニカルリレー制御回路4Bを備えるとの構成の下でも、実施形態1と同様な効果をえることができる。
〈他の実施形態〉
上記した実施形態の電源維持装置は、ブレーキ装置に代えて、車両に搭載される制御装置にも適用することができる。
上記した実施形態の電源維持装置は、上記した、運転手によるエンジンの始動に代えて、エンジンの自動始動(例えば、アイドリングストップ制御からの復帰)にも適用することができる。