以下、実施形態の空調制御装置、空調制御方法及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。なお、オフィスビルは年間を通じて空調機が冷房となることが多いため、各実施形態は、冷房で空調制御を行う場合を例として説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の空調制御システム1の配置図である。空調制御システム1は、居室10の空調を制御する。空調制御システム1は、空調制御装置100、第1熱源機制御装置200、第1熱源機201、第1ポンプ202、外調機203、VAV(Variable Air Volume)204、外調機制御装置300、第1バルブ301、第2熱源機制御装置400、第2熱源機401、第2ポンプ402、放射空調403、放射空調制御装置500、第2バルブ501を備える。
空調制御装置100は、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に対して、空調制御するための各設定値を送信する。第1熱源機制御装置200は、空調制御装置100から設定値として第1冷水の温度を表す第1冷水温度設定値を受信する。第1熱源機制御装置200は、第1冷水温度設定値に基づいて第1熱源機201内の圧縮機等の機能を制御することで第1冷水の温度を制御する。第1熱源機201は、外調機203で利用される第1冷水を生成する。第1冷水は、第1ポンプ202によって、外調機203に搬送される。外調機203は、外気を冷却して居室10内に給気する。外調機203は、外気を第1冷水で冷却する。外調機203は、、居室10内に冷却された外気を給気する。ここで、外調機203の風量は、一定に制御されてもよいし、居室10内のCO2濃度が一定となるようにVAV204の開度が制御されてもよい。なお、本実施形態では、VAV204は、床下に設置されているが、VAV204は、壁に設置されていてもよいし、天井に設置されていてもよい。外調機203は、第2空調機の一態様である。第2空調機は、後述の第1空調機とは異なる手段によって空間内の空調を制御する空調機である。居室10は、空間の一態様である。
外調機制御装置300は、空調制御装置100から設定値として外調機203の給気温度を表す外調機給気温度設定値を受信する。外調機制御装置300は、外調機給気温度設定値に基づいて、第1バルブ301を調整することで外調機203が居室10に給気する給気温度を制御する。第1バルブ301は、第1ポンプ202から外調機203に搬送される第1冷水の流量を調節する。
第2熱源機制御装置400は、空調制御装置100から設定値として第2冷水の温度を表す第2冷水温度設定値を受信する。第2熱源機制御装置400は、第2冷水温度設定値に基づいて第2熱源機401内の圧縮機等の機能を制御することで第2冷水の温度を制御する。第2熱源機401は、放射空調403で利用される第2冷水を生成する。第2冷水は、第2ポンプ402によって、放射空調403に搬送される。
放射空調制御装置500は、空調制御装置100から設定値として居室10内の温度を表す室内温度設定値を受信する。放射空調制御装置500は、室内温度設定値に基づいて第2バルブ501を調整することで放射空調403に流入される第2冷水の流量を調節する。ここで、放射空調403に流入する第2冷水の温度が極端に低い場合、放射空調403において結露する可能性がある。放射空調403の結露を防ぐため、第1冷水の温度よりも第2冷水の温度のほうが高いものとする。
図2は、第1の実施形態の空調制御装置100の機能構成を表す機能ブロック図である。空調制御装置100は、パーソナルコンピュータ又はサーバ等の情報処理装置を用いて構成される。空調制御装置100は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、空調制御プログラムを実行することによって通信部101、入力部102、表示部103、状態情報記憶部104、モデル記憶部105及び制御部106を備える装置として機能する。なお、通信部101、入力部102、表示部103、状態情報記憶部104、モデル記憶部105及び制御部106の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。空調制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。空調制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
通信部101は、ネットワークインタフェースである。通信部101は、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500と通信する。通信部101は、居室10、第1ポンプ202、外調機203、第1バルブ301、第2ポンプ402及び第2バルブ501に設置された電力計、風量計、温度計、湿度計及び流量計等の各種のセンサと通信をすることで、各種のセンサの計測値を取得する。通信部101は、例えば無線LAN(Local Area Network)、有線LAN、Bluetooth(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)(登録商標)又はLonWorks等の通信方式で通信してもよい。
入力部102は、タッチパネル、マウス及びキーボード等の入力装置を用いて構成される。入力部102は、入力装置を空調制御装置100に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部102は、入力装置において入力された入力信号から入力データ(例えば、空調制御装置100に対する指示を示す指示情報)を生成し、空調制御装置100に入力する。
表示部103は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の出力装置である。表示部103は、出力装置を空調制御装置100に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部103は、映像データから映像信号を生成し自身に接続されている映像出力装置に映像信号を出力する。
状態情報記憶部104は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。状態情報記憶部104は、取得された値を記憶する。取得された値は、例えば、居室10、第1ポンプ202、外調機203、第1バルブ301、第2ポンプ402及び第2バルブ501に設置された電力計、風量計、温度計、湿度計及び流量計等の各種のセンサの計測値である。
モデル記憶部105は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。モデル記憶部105は、推定されたモデルと、その他必要となるモデルを記憶する。推定されたモデルには、例えば、放射空調における冷却熱量及び輻射温度がある。また、モデルには、外調機203のファン電力量、第1熱源機201の冷却電力量、第1ポンプ202の電力量、第2熱源機401の冷却電力量及び第2ポンプ402の電力量がある。
外調機203のファン電力量のモデルは、例えば、以下の数式(1)で表される。
外調機ファン電力量(E_fan)=ファン定格消費電力量(E_fan_rate)×(外調機風量(F_fan)/ファン定格風量(F_fan_rate))3 (1)
第1熱源機201の冷却電力量のモデルは、例えば、以下の数式(2)で表される。
第1熱源機冷却電力量(E1_hs)=外調機系統冷却熱量(Q1)/効率(第1COP) (2)
第1熱源機201のポンプ電力量のモデルは、例えば、以下の数式(3)で表される。
第1熱源機ポンプ電力量(E1_pump)=ポンプ定格消費電力量(E1_pump_rate)×(ポンプ流量(F1_pump)/ポンプ定格流量(F1_pump_rate))3 (3)
第2熱源機401の冷却電力量のモデルは、例えば、以下の数式(4)で表される。
第2熱源機冷却電力量(E2_hs)=外調機系統冷却熱量(Q2)/効率(第2COP) (4)
第2熱源機401のポンプ電力量のモデルは、例えば、以下の数式(5)で表される。
第2熱源機ポンプ電力量(E2_pump)=ポンプ定格消費電力量(E2_pump_rate)×(ポンプ流量(F2_pump)/ポンプ定格流量(F2_pump_rate))3 (5)
上記の数式(1)〜(5)における、ファン定格消費電力量(E_fan_rate)、ファン定格風量(F_fan_rate)、効率(第1COP)、ポンプ定格消費電力量(E1_pump_rate)、ポンプ定格流量(F1_pump_rate)、効率(第2COP)、ポンプ定格消費電力量(E2_pump_rate)及びポンプ定格流量(F2_pump_rate)は、機器毎のカタログ値が用いられてもよい。上記の数式(1)〜(5)における、外調機風量(F_fan)、外調機系統冷却熱量(Q1)、ポンプ流量(F1_pump)、外調機系統冷却熱量(Q2)及びポンプ流量(F2_pump)は、後述の状態情報取得部107によって取得された状態情報が用いられてもよいし、状態情報に基づいて算出された値が用いられてもよい。
制御部106は、空調制御装置100の各部の動作を制御する。制御部106は、例えばCPU等のプロセッサ及びRAMを備えた装置により実行される。制御部106は、空調制御プログラムを実行することによって、状態情報取得部107、快適性指標取得部108、モデル推定部109、負荷配分決定部110及び設定値送信部111として機能する。
状態情報取得部107は、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度及び室内負荷等の状態情報を取得する。状態情報は、外気の状態と居室内の状態との現在値を表す。状態情報取得部107は、取得された状態情報を状態情報記憶部104に記録する。状態情報取得部107は、例えば、外調機203に設置された温度計及び湿度計から、外気温度及び外気湿度を取得する。状態情報取得部107は、例えば、居室10内に設置された温度計及び湿度計から、室内温度及び室内湿度を取得する。なお、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度の取得方法は、これに限定されない。例えば、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度は、他の場所に設置された温度計及び湿度計から取得されてもよい。
室内負荷は、室内で発生する熱負荷を表す。室内負荷は、例えば、人体からの発熱とOA機器からの発熱との合計を表す。室内負荷は、理論上は放射空調403が冷却する熱量と外調機203が冷却する熱量との合計値と一致する。したがって、状態情報取得部107は、放射空調403への入口及び出口の冷水(又は空気)温度差と冷水流量(又は外調機風量)から算出される冷却熱量とを計算して合計することで、室内負荷を取得してもよい。または、状態情報取得部107は、公知の技術を利用して、居室における最大熱負荷と各種機器の実績消費電力量とに基づいて室内負荷を推定しても良い。
快適性指標取得部108は、居室10の快適性指標を取得する。快適性指標は、入力部102を介して、ユーザから指定されてもよいし、予め指定されていてもよい。本実施形態では、快適性指標としてPMV(Predicted Mean Vote)の範囲を取得するが、快適性指標は、PMVに限定されない。快適性指標は、例えば、有効温度、有効温度が修正された修正有効温度等が用いられてもよい。快適性指標は、気温又は湿度を用いて表される指標が用いられてもよい。
モデル推定部109は、状態情報記憶部104に記録されている状態情報に基づいて、外調機203、放射空調403、第1熱源機201及び第2熱源機401のモデルを推定する。モデル推定部109は、モデル決定部の一態様である。モデル決定部は、状態情報記憶部に記憶される状態情報に基づいて、第1空調機の動作モデルを決定する。
モデル推定部109は、放射空調403における冷却熱量と輻射温度のモデルを推定する。モデル推定部109は、例えば、以下の数式(6)を用いて、冷却熱量のモデルを推定してもよい。
放射空調系冷却熱量Q2=α1×室内温度と平均冷水温度との差(Δt)α2 (6)
平均冷水温度は、放射空調403に流入する入口における第2冷水の温度と、放射空調403から流出する出口における第2冷水の温度との平均値である。第2冷水の温度は、例えば、放射空調403の第2冷水の入口に設置される温度計(不図示)との第2冷水の出口に設置される温度計とによって測定される。モデル推定部109は、例えば、以下の数式(7)で、輻射温度のモデルを推定してもよい。
輻射温度Trt=a1+a2×冷水流量+a3×冷水温度+a4×パネル面積+a5×室内温度+a6×日射計 (7)
冷水流量は、放射空調403に流入する水の量を表す。冷水流量は、例えば、放射空調403の第2冷水の入口に設置される流量計(不図示)によって測定される。冷水温度は、例えば、第2冷水の入口に設置される温度計又は第2冷水の出口に設置される温度計によって測定された温度が用いられてもよいし、平均冷水温度が用いられてもよい。パネル面積は、放射空調403を構成するパネルの面積である。パネル面積は、対象とする放射空調403の情報を取得すればよい。日射計は、屋外に設置された日射計の測定値である。
なお、空調制御装置100のユーザは、放射空調403における除去熱量を計測する熱量計と輻射温度計とが常設されていない場合、放射空調403の熱量センサと輻射温度計とを一時的に設置する。モデル推定部109は、取得されたデータに基づいて、数式(6)、(7)を利用してモデルを推定する。このように構成されることで、モデル推定部109は、モデルの推定が完了した場合、一時的に設置された熱量センサと輻射温度計とを撤去した場合であっても、数式(6)、(7)によって放射空調系統冷却熱量と輻射温度を推定することができる。なお、モデル推定部109は、モデルの更新が必要な場合に、モデルを推定してもよい。
負荷配分決定部110は、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に送信される設定値を決定する。負荷配分決定部110は、状態情報取得部107によって取得された状態情報と、快適性指標取得部108によって取得された快適性指標と、モデル記憶部105に記憶されるモデルと、に基づいて、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に対する設定値を決定する。決定された設定値によって運用される空調制御システムは、快適性指標の範囲を満たし、消費エネルギーが最小となる。
本実施形態では、空調制御システムの消費エネルギーは、以下の数式(8)で表される。
空調制御システム全体の消費エネルギー(Eall)=外調機ファン電力量(E_fan)+第1熱源機冷却電力量(E1_hs)+第1熱源機ポンプ電力量(E1_pump)+第2熱源機冷却電力量(E2_hs)+第2熱源機ポンプ電力量(E2_pump) (8)
負荷配分決定部110は、空調制御システムの消費エネルギーが最小となる設定値を決定するために、全ての設定値を所定の範囲で変化させたシミュレーションを行い消費エネルギーが最小となる条件を求めてもよいし、公知の消費エネルギー最小化アルゴリズムを用いてもよい。負荷配分決定部110は、このようにして、PMV範囲を満たしつつ、空調制御システム全体の消費エネルギーが最小となる、外調機給気温度設定値、第1冷水温度設定値、第2冷水温度設定値、室内温度設定値を決定する。
設定値送信部111は、決定された第1冷水温度設定値を第1熱源機制御装置200に送信する。設定値送信部111は、決定された外調機給気温度設定値を外調機制御装置300に送信する。設定値送信部111は、決定された第2冷水温度設定値を第2熱源機制御装置400に送信する。設定値送信部111は、決定された室内温度設定値を放射空調制御装置500に送信する。
図3は、第1の実施形態の設定値の決定の処理の流れを示すフローチャートである。快適性指標取得部108は、入力部102を介して居室10の快適性指標を受け付ける(ステップS101)。制御部106は、モデル記憶部105に所定のモデルを記録する(ステップS102)。所定のモデルは、例えば、数式(1)〜数式(5)で表される外調機ファン電力量(E_fan)、第1熱源機冷却電力量(E1_hs)、第1熱源機ポンプ電力量(E1_pump)、第2熱源機冷却電力量(E2_hs)及び第2熱源機ポンプ電力量(E2_pump)の各値が算出されるモデルである。
状態情報取得部107は、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度及び室内負荷等の状態情報を取得する(ステップS103)。状態情報取得部107は、取得された状態情報を状態情報記憶部104に記録する(ステップS104)。制御部106は、モデル記憶部105に記録されるモデルを更新するか否かを判定する(ステップS105)。制御部106は、例えば、予め指定された日時にモデルの更新を行ってもよいし、入力部102を介して、モデルの更新の指示を受け付けた場合にモデルの更新を行ってもよいし、モデルが記録されていない場合にモデルの更新を行ってもよい。制御部106は、モデルの更新を行うと判定した場合(ステップS105:YES)、処理はステップS106に遷移する。制御部106は、モデルの更新を行わないと判定した場合(ステップS105:NO)、処理はステップS108に遷移する。
モデル推定部109は、放射空調403における冷却熱量と輻射温度のモデルを推定する(ステップS106)。モデル推定部109は、推定されたモデルをモデル記憶部105に記録する(ステップS107)。
負荷配分決定部110は、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に対する設定値を決定する(ステップS108)。負荷配分決定部110は、設定値として第1冷水温度設定値、外調機給気温度設定値、第2冷水温度設定値及び室内温度設定値を決定する。負荷配分決定部110は、決定された設定値によって運用される空調制御システムが快適性指標の範囲を満たし、消費エネルギーが最小となるように、設定値を決定する。設定値送信部111は、決定された設定値を第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に送信する(ステップS109)。
このように構成された空調制御装置100は、ユーザから受け付けた快適性指標を満たすように放射空調403を含めた空調制御システム1全体の消費エネルギーを最小化できる。空調制御装置100の負荷配分決定部110は、外調機203及び放射空調403のモデルを使用することで、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度及び室内負荷などに応じて空調制御システム1全体の消費エネルギーを最小化する設定値を決定する。そして、空調制御装置100の設定値送信部111は決定された設定値を外調機給気温度や放射空調室内温度などの空調関連の設定値を各制御装置(例えば、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500)に送信する。各制御装置は、送信された設定値に基づいて動作することで、ユーザから受け付けた快適性指標を満たしつつ、空調制御システム1全体の消費エネルギーを最小化することができる。
また、空調制御装置100のモデル推定部109は、一時的に輻射温度計などのセンサを設置して、放射空調403のモデルを推定してもよい。このように構成されることで、負荷配分決定部110は、輻射温度計が撤去された後でもモデルを利用して輻射温度を推定できる。これにより、放射温度計の常設が不要となる。
本実施形態のモデル推定部109は、放射空調のモデルとして式(7)を用いて、輻射温度を推定するが、複写温度の推定は、数式(7)に限定されない。例えば、数式(7)の説明変数として、冷水流量、冷水温度、パネル面積、室内温度及び日射計に加えて、インテリア又はペリメータを判別するための情報又は方位を加えてもよい。
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の空調制御システム2の配置図である。空調制御システム2は、空調制御装置100、第2熱源機制御装置400、第2熱源機401、第2ポンプ402の代わりに空調制御装置100a、井戸600及び井戸水ポンプ601を備える点で第1の実施形態とは異なるがそれ以外の点については、第1の実施形態における空調制御システム1と同じである。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
空調制御装置100aは、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300及び放射空調制御装置500に対して各設定値を送信する。放射空調403は、井戸水ポンプ601によって井戸600から汲み上げられた井戸水を冷水として用いて居室10内を冷却する。放射空調制御装置500は、第2バルブ501を調整することで、放射空調403に流入する井戸水の量を調整する。放射空調制御装置500は、放射空調403に流入する井戸水の量を調整することで、居室10内の室内温度を制御する。放射空調403は、第1空調機の一態様である。第1空調機は、自然対流によって空間内の空調を制御する空調機である。
第2の実施形態の空調制御装置100aの機能ブロック図は、第1の実施形態と同じである。しかし、モデル記憶部105、状態情報取得部107、モデル推定部109及び負荷配分決定部110が、第1の実施形態と異なる機能を持つ。以下、第1の実施形態と異なる機能を持つ機能ブロックについて説明する。
モデル記憶部105は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。モデル記憶部105は、推定されたモデルと、その他必要となるモデルを記憶する。推定されたモデルには、例えば、放射空調における冷却熱量及び輻射温度がある。また、モデルには、外調機203のファン電力量、第1熱源機201の冷却電力量、第1ポンプ202の電力量及び井戸水ポンプの電力量がある。このうち、放射空調における冷却熱量及び輻射温度、外調機203のファン電力量、第1熱源機201の冷却電力量、第1ポンプ202の電力量のモデルは、数式(1)から(4)、(6)及び(7)が用いられてもよい。
井戸水ポンプの電力量のモデルは、例えば、以下の数式(9)で表される。
井戸水ポンプ電力量(Ew_pump)=井戸水ポンプ定格消費電力量(Ew_pump_rate)×(井戸水ポンプ流量(Fw_pump)/井戸水ポンプ定格流量(Fw_pump_rate))3 (9)
上記の数式(9)における、井戸水ポンプ定格消費電力量(Ew_pump_rate)及び井戸水ポンプ定格流量(Fw_pump_rate)は、機器のカタログ値が用いられてもよい。井戸水ポンプ流量(Fw_pump)は、状態情報取得部107によって取得された状態情報が用いられてもよいし、状態情報に基づいて算出された値が用いられてもよい。
状態情報取得部107は、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度、室内負荷及び井戸水温度等の現在値を表す状態情報を取得する。井戸水温度は、井戸600が保持する水の温度を表す。状態情報取得部107は、取得された状態情報を状態情報記憶部104に記録する。状態情報取得部107は、例えば、井戸600内の水中に設置された温度計から、井戸水温度を取得する。
モデル推定部109は、状態情報記憶部104に記録されている井戸水温度を含む状態情報に基づいて、井戸水を利用する場合の放射空調403における冷却熱量と輻射温度のモデルを推定する。モデル推定部109は、第1の実施形態と同様に、放射空調のモデルとして、数式(1)及び(2)を用いてもよい。
負荷配分決定部110は、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300及び放射空調制御装置500に対する設定値を決定する。負荷配分決定部110は、状態情報取得部107によって取得された状態情報と、快適性指標取得部108において取得された快適性指標と、モデル記憶部105に記憶されるモデルと、に基づいて第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300及び放射空調制御装置500に対する設定値を決定する。決定された設定値によって運用される空調制御システムは、快適性指標の範囲を満たし、消費エネルギーが最小となる。設定値は、快適性指標を満たし、かつ外調機203及び放射空調403の消費エネルギーが低減されるように、外調機203及び放射空調403の負荷の配分を表す値である。
本実施形態では、空調制御システムの消費エネルギーは、以下の数式(10)で表される。
空調制御システム全体の消費エネルギー(Eall)=外調機ファン電力量(E_fan)+第1熱源機冷却電力量(E1_hs)+第1熱源機ポンプ電力量(E1_pump)+井戸水ポンプ電力量(Ew_pump) (10)
図5は、第2の実施形態の設定値の決定の処理の流れを示すフローチャートである。快適性指標取得部108は、入力部102を介して居室10の快適性指標を受け付ける(ステップS101)。制御部106は、モデル記憶部105に所定のモデルを記録する(ステップS102a)。所定のモデルは、例えば、数式(1)〜(3)、(9)で表される外調機ファン電力量(E_fan)、第1熱源機冷却電力量(E1_hs)、第1熱源機ポンプ電力量(E1_pump)、井戸水ポンプ電力量(Ew_pump)の各値が算出されるモデルである。
状態情報取得部107は、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度、室内負荷及び井戸水温度等の状態情報を取得する(ステップS103a)。状態情報取得部107は、取得された状態情報を状態情報記憶部104に記録する(ステップS104)。制御部106は、モデル記憶部105に記録されるモデルを更新するか否かを判定する(ステップS105)。制御部106は、例えば、予め指定された日時にモデルの更新を行ってもよいし、入力部102を介して、モデルの更新の指示を受け付けた場合にモデルの更新を行ってもよいし、モデルが記録されていない場合にモデルの更新を行ってもよい。制御部106は、モデルの更新を行うと判定した場合(ステップS105:YES)、処理はステップS106に遷移する。制御部106は、モデルの更新を行わないと判定した場合(ステップS105:NO)、処理はステップS108に遷移する。
モデル推定部109は、放射空調403における冷却熱量と輻射温度のモデルを推定する(ステップS106)。モデル推定部109は、推定されたモデルをモデル記憶部105に記録する(ステップS107)。
負荷配分決定部110は、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300及び放射空調制御装置500に対する設定値を決定する(ステップS108a)。負荷配分決定部110は、設定値として第1冷水温度設定値、外調機給気温度設定値及び室内温度設定値を決定する。負荷配分決定部110は、決定された設定値によって運用される空調制御システムが快適性指標の範囲を満たし、消費エネルギーが最小となるように、設定値を決定する。設定値送信部111は、決定された設定値を第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に送信する(ステップS109)。
このように構成された空調制御装置100aは、ユーザから受け付けた快適性指標を満たすように放射空調403を含めた空調制御システム1全体の消費エネルギーを最小化できる。空調制御装置100aの放射空調403は、未利用熱エネルギーとして井戸水を放射空調で利用する。このため、空調制御システム2は、全体の消費エネルギーを低減することができる。なお、第2の実施形態では、未利用熱エネルギーとして井戸水を用いたが、井戸水に限定されない。例えば、空調制御装置100aは、未利用熱エネルギーとして、河川水などから取得された液体を用いてもよい。また、空調制御装置100aは、コージェネレーションシステム又は空調制御システム2によって生成された排熱と給収式冷凍機などを利用して生成された冷水とを用いてもよい。さらに、空調制御装置100aは、暖房時において、コージェネレーションシステム又は燃料電池の排熱として生成された温水を、放射空調403に利用してもよい。
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の空調制御装置100bの機能構成を表す機能ブロック図である。空調制御装置100bは、室内湿度に応じて湿度に関する設定値を補正する。放射空調403は、顕熱負荷を除去するため、室内の湿度を制御することができない。したがって、空調制御システム1では、外調機203を用いて室内の湿度を制御する必要がある。空調制御システムでは、一般的に除湿を強めると多くのエネルギーが必要となるため、省エネにならない。第3の実施形態の空調制御装置100bは、放射空調403を含む空調制御システム全体の省エネと快適性との両立を実現する。空調制御装置100bは、制御部106の代わりに制御部106bを備える。空調制御装置100bは、それ以外の点については、第1の実施形態における空調制御装置100と同じである。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
空調制御装置100bは、パーソナルコンピュータ又はサーバ等の情報処理装置を用いて構成される。空調制御装置100bは、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、空調制御プログラムを実行することによって通信部101、入力部102、表示部103、状態情報記憶部104、モデル記憶部105及び制御部106bを備える装置として機能する。なお、通信部101、入力部102、表示部103、状態情報記憶部104、モデル記憶部105及び制御部106bの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。空調制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。空調制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
制御部106bは、空調制御装置100bの各部の動作を制御する。制御部106bは、例えばCPU等のプロセッサ及びRAMを備えた装置により実行される。制御部106bは、空調制御プログラムを実行することによって、状態情報取得部107、快適性指標取得部108、モデル推定部109、負荷配分決定部110b、設定値送信部111b及び設定値補正部112として機能する。
負荷配分決定部110bは、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に対する設定値だけでなく、居室10内の湿度制御に関する外調機給気露点温度設定値を決定する。外調機給気露点温度設定値は、外調機203によって給気された空気が結露する温度を表す。外調機給気露点温度設定値は、予め一定値に指定されてもよいし、気温と湿度との組み合わせに応じて設定されてもよい。外調機給気露点温度設定値通信部101を介して外部から取得されてもよいし、空調制御装置100bに記録されていてもよい。
設定値補正部112は、状態情報取得部107によって取得された室内湿度に基づいて、負荷配分決定部110bによって決定された外調機給気露点温度設定値を補正し、補正後外調機給気露点温度設定値を決定する。設定値補正部112は、取得された室内湿度の値に応じて、補正後外調機給気露点温度設定値を決定する。具体的には、設定値補正部112は、以下の規則に基づいて、外調機給気露点温度設定値を補正する。
前回の演算で外調機露点温度設定値を補正しなかった場合について説明する。補正前外調機給気露点温度設定値は、前回の演算で補正される前の外調機給気露点温度設定値を表す。設定値補正部112は、室内湿度が70%よりも大きい場合、補正前外調機給気露点温度設定値から1減じた値を補正後外調機給気露点温度設定値とする。設定値補正部112は、室内湿度が40%よりも小さい場合、補正前外調機給気露点温度設定値から1加算した値を補正後外調機給気露点温度設定値とする。設定値補正部112は、室内湿度が40%以上70%以下である場合、補正前外調機給気露点温度設定値をそのまま補正後外調機給気露点温度設定値とする。
前回の演算で外調機露点温度設定値を補正した場合について説明する。現在の外調機給気露点温度設定値は、負荷配分決定部110bによって決定された外調機給気露点温度設定値を表す。設定値補正部112は、室内湿度が70%よりも大きい場合、現在の外調機給気露点温度設定値から1減じた値を補正後外調機給気露点温度設定値とする。設定値補正部112は、室内湿度が40%よりも小さい場合、現在の外調機給気露点温度設定値から1加算した値を補正後外調機給気露点温度設定値とする。設定値補正部112は、室内湿度が40%以上70%以下である場合、現在の外調機給気露点温度設定値をそのまま補正後外調機給気露点温度設定値とする。
設定値補正部112は、外調機露点温度設定値の補正を空調制御装置100bの制御周期ごとに実施してもよいし、空調制御装置100bの制御周期よりも長い又は短い周期で実施してもよい。例えば、設定値補正部112は、空調制御装置100bの制御周期が1時間の場合に、制御周期毎に外調機露点温度設定値を補正すると、制御周期が長いため室内湿度が70%を大きく超えて快適性を大幅に悪化させる可能性がある。また、設定値補正部112は、空調制御装置100bの制御周期が1分の場合に、制御周期毎に外調機露点温度設定値を補正すると、室内湿度の変化には数分以上必要なため、外調機給気露点温度が大幅に下がり、過剰な除湿となる可能性がある。このため、設定値補正部112における外調機露点温度設定値の補正は、必ずしも空調制御装置の制御周期と一致してなくてもよい。
設定値送信部111bは、決定された第1冷水温度設定値を第1熱源機制御装置200に送信する。設定値送信部111bは、決定された外調機給気温度設定値及び補正後外調機給気露点温度設定を外調機制御装置300に送信する。設定値送信部111bは、決定された第2冷水温度設定値を第2熱源機制御装置400に送信する。設定値送信部111bは、決定された室内温度設定値を放射空調制御装置500に送信する。
図7は、第3の実施形態の設定値の決定の処理の流れを示すフローチャートである。図7に示されるフローチャートのステップS101からステップS107は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
負荷配分決定部110bは、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に送信される設定値と外調機給気露点温度設定値とを決定する(ステップS108b)。設定値補正部112は、状態情報取得部107によって取得された室内湿度に基づいて、負荷配分決定部110bによって決定された外調機給気露点温度設定値を補正し、補正後外調機給気露点温度設定値を決定する(ステップS201)。設定値送信部111bは、決定された設定値を第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に送信する。設定値送信部111bは、補正後外調機給気露点温度設定値を外調機制御装置300に送信する(ステップS109b)。
このように構成された空調制御装置100bは、第1の実施形態と同様にユーザから受け付けた快適性指標を満たすように放射空調403を含めた空調制御システム1全体の消費エネルギーを最小化できる。また、空調制御装置100bの設定値補正部112は、居室内環境の急変又は各制御装置に関するモデルの誤差によって、室内湿度が大きく又は小さくなった場合、室内湿度に応じて外調機給気露点温度設定値を補正する。補正された外調機給気露点温度設定によって居室内環境の大幅な悪化を防ぐことができる。第3の実施形態では、設定値補正部112が外調機給気露点温度設定値を補正した。しかし、設定値補正部112は、室内湿度設定値を補正しても良い。この場合、負荷配分決定部110bは室内湿度設定値を決定する。すなわち、設定値補正部112によって補正される設定値は、室内湿度に関連するものであればよい。
(第3の実施形態の変形例)
第3の実施形態の設定値補正部112は、設定値の補正を実行する都度、外調機給気露点温度を+1度又は−1度、補正する。しかし、設定値補正部112は、例えば、図8に示されるような表を用いて外調機給気露点温度を補正するように構成されてもよい。図8に示される表は、例えば、空調制御装置100bのユーザによって入力される。設定値補正部112は、表に基づいて補正温度関数を生成することで、ユーザの意図する詳細な設定値補正が可能となる。
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態の空調制御装置100c及びオフライン処理装置120の機能構成を表す機能ブロック図である。空調制御装置100cは、オフライン処理装置120によって予め生成された負荷配分関数を用いることで、リアルタイムにおける演算負荷を低減する。空調制御装置100cは、制御部106の代わりに制御部106cを備え、状態情報記憶部104及びモデル記憶部105を備えない点で第1の実施形態における空調制御装置100と異なるが、それ以外の点については、第1の実施形態における空調制御装置100と同じである。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
空調制御装置100cは、パーソナルコンピュータ又はサーバ等の情報処理装置を用いて構成される。空調制御装置100cは、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、空調制御プログラムを実行することによって通信部101、入力部102、表示部103及び制御部106cを備える装置として機能する。なお、通信部101、入力部102、表示部103及び制御部106cの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。空調制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。空調制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
制御部106cは、空調制御装置100cの各部の動作を制御する。制御部106cは、例えばCPU等のプロセッサ及びRAMを備えた装置により実行される。制御部106cは、空調制御プログラムを実行することによって、状態情報取得部107、快適性指標取得部108、負荷配分決定部110c及び設定値送信部111として機能する。
負荷配分決定部110cは、予め生成された負荷配分関数に基づいて、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に送信される設定値を決定する。負荷配分決定部110cは、負荷配分関数に対して、状態情報取得部107によって取得された外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度及び室内負荷と、快適性指標取得部108によって取得された快適性指標と、を負荷配分関数に入力し、外調機系統及び放射空調系統のそれぞれの系統によって除去される室内負荷の配分を決定することで設定値を決定する。
負荷配分決定部110cは、公知の手法を用いて、設定値を決定してもよい。例えば、負荷配分決定部110cは、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度及び室内負荷の組み合わせ毎に、設定された快適性指標の範囲内で空調制御システム1の消費エネルギーが最小となる設定値を決定する。負荷配分決定部110cは、オフライン処理装置120から全ての条件における設定値を通る負荷配分関数を取得する。負荷配分決定部110cは、予め生成された負荷配分関数と取得された状態情報とに基づいて、設定値を決定する。
オフライン処理装置120は、パーソナルコンピュータ又はサーバ等の情報処理装置を用いて構成される。オフライン処理装置は、オフライン状態で、負荷配分関数を生成する。オフライン状態とは、例えば、負荷配分決定部110cと通信不可能な状態であることを表す。オフライン処理装置120は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、空調制御プログラムを実行することによって通信部121、モデル記憶部122及び制御部123を備える装置として機能する。なお、通信部121、モデル記憶部122及び制御部123の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。空調制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。空調制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
通信部101は、ネットワークインタフェースである。通信部101は、外気温度、外気湿度、室内温度、外気湿度及び室内負荷などの外気条件及び室内条件を受信する。通信部101は、例えば無線LAN、有線LAN、Bluetooth又はLTE等の通信方式で通信してもよい。
モデル記憶部122は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。モデル記憶部122は、第1の実施形態のモデル記憶部105と同様に、放射空調403における冷却熱量と輻射温度のモデル、外調機203のファン電力量、第1熱源機201の冷却電力量、第1ポンプ202の電力量、第2熱源機401の冷却電力量及び第2ポンプ402の電力量のモデルを記憶する。
制御部123は、オフライン処理装置120の各部の動作を制御する。制御部123は、例えばCPU等のプロセッサ及びRAMを備えた装置により実行される。制御部123は、空調制御プログラムを実行することによって、負荷条件取得部124、負荷配分演算部125及び負荷配分関数生成部126として機能する。
負荷条件取得部124は、通信部121が受信した外気条件及び室内条件を取得する。外気条件には、複数の外気温度及び外気湿度が含まれる。室内条件には、複数の室内温度、室内湿度及び室内負荷が含まれる。負荷条件取得部124は、取得された外気条件及び室内条件を負荷配分演算部125に出力する。
負荷配分演算部125は、外気条件及び室内条件の組み合わせ毎に、設定された快適性指標の範囲内で空調制御システム1の消費エネルギーが最小となる外調機給気温度設定値、放射空調室内温度設定値、第1熱源機冷水温度設定値、第2熱源機冷水温度設定値を決定する。負荷配分演算部125は、数式(8)に基づいて、空調制御システム1全体の消費エネルギーを決定する。
負荷配分関数生成部126は、快適性指標の範囲と決定された設定値の値に応じて、複数の負荷配分関数を生成する。このように構成されることで、空調制御装置100cのユーザは、自由に快適性指標の範囲を変更できる。空調制御装置100cは、変更された快適性指標の範囲に応じて、空調制御システム1全体の消費エネルギーを低減させる各機器への設定値を決定できる。
図10は、第4の実施形態の設定値の決定の処理の流れを示すフローチャートである。負荷条件取得部124は、外気条件及び室内条件を取得する(ステップS301)。負荷配分演算部125は、外気条件及び室内条件の組み合わせ毎に、設定された快適性指標の範囲内で空調制御システム1の消費エネルギーが最小となる設定値(例えば、外調機給気温度設定値、放射空調室内温度設定値、第1熱源機冷水温度設定値、第2熱源機冷水温度設定値)を決定する(ステップS302)。負荷配分関数生成部126は、快適性指標の範囲と決定された設定値の値に応じて、複数の負荷配分関数を生成する(ステップS303)。
快適性指標取得部108は、入力部102を介して居室10の快適性指標を受け付ける(ステップS304)。状態情報取得部107は、外気温度、外気湿度、室内温度、室内湿度及び室内負荷等の状態情報を取得する(ステップS305)。負荷配分決定部110cは、予め生成された負荷配分関数に基づいて、第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に対する設定値を決定する(ステップS306)。設定値送信部111は、決定された設定値を第1熱源機制御装置200、外調機制御装置300、第2熱源機制御装置400及び放射空調制御装置500に送信する(ステップS307)。
このように構成された空調制御装置100cは、第1の実施形態と同様にユーザから受け付けた快適性指標を満たすように放射空調403を含めた空調制御システム1全体の消費エネルギーを最小化できる。また、オフライン処理装置120の負荷配分演算部125が、予め処理時間がかかる負荷配分の設定値をオフラインで決定する。負荷配分関数生成部126が、決定された設定値に基づいて、負荷配分関数を生成する。これによって、例えば、多数の居室を備える大規模ビルの場合でも、各機器への設定値を制限周期内に決定することが可能となる。
(実施形態の変形例)
本実施形態は、外気を取り入れる空調機として外調機を用いて説明した。しかし、外調機の代わりにデシカント空調機が用いられてもよい。デシカント空調機は、外調機よりも除湿性能に優れた空調機である。デシカント空調機は、湿度を制御できない放射空調と組み合わせが有効である。この場合、モデル記憶部は、デシカント空調機が備えるデシカントローターにおける除湿特性及び再生特性に基づいて、デシカント空調機のモデルを記憶する。負荷配分決定部は、デシカント空調機のモデルを用いて、快適性指標の範囲を満たしつつ空調制御システム全体の消費エネルギーが最小となる設定値を決定する。
本実施形態は、放射空調と外調機との2つの空調機を用いて説明した。しかし、本実施形態は、2つの空調機に限られない。例えば、放射空調、外調機、デシカント空調機、ビル用マルチエアコン又はファンコイルユニットのうち、3つ以上の空調機が用いられてもよい。この場合、モデル記憶部は、用いられる空調機に関するモデルを記憶する。負荷配分決定部は、記憶された空調機のモデルを用いて、快適性指標の範囲を満たしつつ空調制御システム全体の消費エネルギーが最小となる設定値を決定する。
上記各実施形態では、状態情報取得部107、快適性指標取得部108、モデル推定部109、負荷配分決定部110、設定値送信部111及び設定値補正部112はソフトウェア機能部であるものとしたが、LSI等のハードウェア機能部であってもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、負荷配分決定部110及び設定値送信部111を持つことにより、空調設備の消費エネルギーを抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。