以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る電動補助車両を説明する。実施形態の説明においては、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。本発明の実施形態における前後、左右、上下とは、電動補助車両のサドル(シート)に乗員がハンドルに向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る電動補助車両を示す側面図である。図1は、電動補助車両の一例として、二輪の電動補助自転車1を示している。
電動補助自転車1は、前後方向に延びる車体フレーム11を有する。車体フレーム11は、ヘッドパイプ12、ダウンチューブ5、ブラケット6、チェーンステイ7、シートチューブ16、シートステイ19を含む。ヘッドパイプ12は車体フレーム11の前端に配置される。ハンドルステム13は、ヘッドパイプ12に回転可能に挿入される。ハンドル14は、ハンドルステム13の上端部に固定される。ハンドルステム13の下端部にはフロントフォーク15が固定される。フロントフォーク15の下端部には、操舵輪である前輪25が回転可能に支持される。フロントフォーク15には、前輪25を制動するブレーキ8が設けられる。ヘッドパイプ12の前方の位置には前かご21が設けられる。フロントフォーク15にはヘッドランプ22が設けられる。
ダウンチューブ5は、ヘッドパイプ12から後方斜め下方に向かって延びている。シートチューブ16は、ダウンチューブ5の後端部から上方に向かって延びている。チェーンステイ7は、シートステイ19の下端部から後方に向かって延びている。ブラケット6は、ダウンチューブ5の後端部、シートチューブ16の下端部、チェーンステイ7の前端部を接続する。
シートチューブ16にはシートポスト17が挿入され、シートポスト17の上端部には乗員が座るサドル27が設けられる。チェーンステイ7の後方部は、駆動輪である後輪26を回転可能に支持する。チェーンステイ7の後方部には、後輪26を制動するブレーキ9が設けられる。また、チェーンステイ7の後方部には、駐輪時に車両を立てたまま保持するスタンド29が設けられる。シートステイ19は、シートチューブ16の上部から後方斜め下方に向かって延びている。シートステイ19の下端部は、チェーンステイ7の後方部に接続される。シートステイ19は、サドル27の後方に設けられた荷台24を支持するとともに、後輪26の上部を覆うフェンダー18を支持する。フェンダー18の後方部にはテールライト23が設けられる。
車体フレーム11の車両中央部付近に配置されたブラケット6には駆動ユニット51が設けられる。駆動ユニット51は、電動モータ53、クランクアーム54、ペダル55、クランク軸57、コントローラ70を含む。ブラケット6には、電動モータ53等に電力を供給するバッテリ56が搭載される。バッテリ56はシートチューブ16に支持されてもよい。
クランク軸57は駆動ユニット51に左右方向に貫通して支持されている。クランク軸57の両端部にはクランクアーム54が設けられる。クランクアーム54の先端には、ペダル55が回転可能に設けられる。
コントローラ70は、電動補助自転車1の動作を制御する。乗員がペダル55を足で踏んで回転させたときに発生するクランク軸57の回転出力は、チェーン28を介して、後輪26に伝達される。コントローラ70は、クランク軸57の回転出力に応じた駆動補助出力を発生するように電動モータ53を制御する。電動モータ53から出力された駆動補助出力は、チェーン28を介して、後輪26に伝達される。なお、チェーン28の代わりにベルト、シャフト等が用いられてもよい。
図2は、電動補助自転車1の機械的および電気的構成を示すブロック図である。駆動ユニット51は、クランク軸57、トルクセンサ41、一方向クラッチ43、クランク回転センサ42、加速度センサ38、制御装置70、電動モータ53、モータ回転センサ46、減速機47、一方向クラッチ48を備える。駆動ユニット51は、ペダル55に加えられた乗員の人力に応じた駆動補助出力を電動モータ53に発生させる補助出力制御システムである。
まず、動力の伝達経路を説明する。乗員がペダル55を踏み込んでクランク軸57を回転させると、そのクランク軸57の回転が一方向クラッチ43を介してチェーン28に伝達される。一方向クラッチ43は、クランク軸57の順回転のみをチェーン28に伝達し、クランク軸57の逆回転はチェーン28に伝達させない。電動モータ53の回転は、減速機47を介して一方向クラッチ48に伝達される。一方向クラッチ48は、チェーン28を順回転させる方向の減速機47の回転のみをチェーン28に伝達し、チェーン28を逆回転させる方向の減速機47の回転はチェーン28に伝達させない。乗員がペダル55に加えた人力により発生するクランク回転出力と、電動モータ53が発生する駆動補助出力とは、チェーン28で合成される。
チェーン28の回転は、後輪26側の駆動軸31に伝達される。駆動軸31の回転は、変速機構32および一方向クラッチ33を介して後輪26に伝達される。
変速機構32は、乗員による変速操作器66の操作に応じて変速比を変更する機構である。一方向クラッチ33は、駆動軸31の回転速度が後輪26の回転速度よりも速い場合にのみ、駆動軸31の回転を後輪26に伝える。駆動軸31の回転速度が後輪26の回転速度よりも遅い場合には、一方向クラッチ33は駆動軸31の回転を後輪26に伝えない。
次に、制御装置70による電動モータ53の駆動制御を説明する。制御装置70は、例えばMCU(Motor Control Unit)である。制御装置70は、マイクロコントローラ71、メモリ72、モータ駆動回路77を備える。マイクロコントローラ71は、電動モータ53の動作を制御するとともに、電動補助自転車1の各部の動作を制御する。メモリ72は、電動モータ53および電動補助自転車1の各部の動作を制御するための手順を規定したコンピュータプログラムを格納している。マイクロコントローラ71は、メモリ72からコンピュータプログラムを読み出して各種制御を行う。図2中のマイクロコントローラ71の内部は、マイクロコントローラ71の機能ブロックを示している。マイクロコントローラ71は、トルク算出部73、補助出力演算部74、変速比検知部75、スリップ量演算部76として機能する。
乗員がペダルに加えた人力(踏力)は、クランク軸57に発生するトルクとしてトルクセンサ41に検出される。トルクセンサ41は、検出したトルクに応じた電圧信号をトルク算出部73に出力する。トルク算出部73は、トルクセンサ41からの電圧信号をトルクに換算する。例えば、トルクセンサ41から入力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換し、デジタル電圧信号の大きさからトルクを算出する。トルク算出部73は、算出したトルクを補助出力演算部74に出力する。
クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転角を検出する。クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転角に応じた信号を補助出力演算部74に出力する。例えば、クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。補助出力演算部74は、クランク回転センサ42の出力信号からクランク軸57の回転角および回転速度を算出する。補助出力演算部74は、クランク軸57の回転速度とトルク算出部73が算出したトルクとを乗じて、クランク回転出力を算出する。
加速度センサ38は、電動補助自転車1の車両本体の加速度を検出する。加速度センサ38は、例えば、3軸の加速度センサであり、検出した加速度を補助出力演算部74に出力する。
電動モータ53には、モータ回転センサ46が設けられている。モータ回転センサ46は例えばエンコーダである。モータ回転センサ46は、電動モータ53のロータの回転角を検出し、回転角に応じた信号を変速比検知部75およびモータ駆動回路77へ出力する。例えば、モータ回転センサ46は、ロータの回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。変速比検知部75およびモータ駆動回路77は、モータ回転センサ46の出力信号から電動モータ53の回転角および回転速度を算出する。
前輪回転センサ35は、前輪25の回転角を検出し、回転角に応じた信号を変速比検知部75およびスリップ量演算部76へ出力する。例えば、前輪回転センサ35は、前輪25の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。変速比検知部75およびスリップ量演算部76は、前輪回転センサ35の出力信号から前輪25の回転角および回転速度を算出する。
後輪回転センサ36は、後輪26の回転角を検出し、回転角に応じた信号を変速比検知部75およびスリップ量演算部76へ送信する。例えば、後輪回転センサ36は、後輪26の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。変速比検知部75およびスリップ量演算部76は、後輪回転センサ36の出力信号から後輪26の回転角および回転速度を算出する。
変速比検知部75は、電動モータ53の回転速度と前輪25の回転速度から変速比を算出し、算出した変速比を補助出力演算部74へ入力する。なお、図2に示す例のように、変速機構32の変速比を検出する変速比センサ37を備える場合は、その変速比センサ37の出力信号から変速比を算出してもよい。スリップ量演算部76は、後輪26の回転速度と前輪25の回転速度とを用いて駆動輪である後輪26のスリップ量を算出し、算出したスリップ量を補助出力演算部74へ出力する。
補助出力演算部74は、トルク算出部73、クランク回転センサ42、加速度センサ38、変速比検知部75、スリップ量演算部76からの出力、およびメモリ72に格納されている情報などから、適切な駆動補助出力を発生させるための指令値を算出し、モータ駆動回路77へ送信する。補助出力演算部74は、例えば、ペダル55に加えられた乗員の人力により発生するクランク回転出力と、電動モータ53が発生する駆動補助出力の関係等に基づいて作成されたマップを参照することにより指令値を算出する。メモリ72には複数種類のマップが格納されている。補助出力演算部74は、メモリ72から条件に合ったマップを読み出し、読み出したマップを参照することにより指令値を算出する。
モータ駆動回路77は、例えばインバータであり、補助出力演算部74からの指令値に応じた電力をバッテリ56から電動モータ53に供給する。電力が供給された電動モータ53は回転し、所定の駆動補助出力を発生させる。このように、補助出力演算部74は、走行時の乗員のペダル55を漕ぐ動作をアシストするように、電動モータ53に駆動補助出力を発生させることができる。
次に、ペダル55に加えられた乗員の人力により発生するクランク回転出力と電動モータが発生させる駆動補助出力との関係を説明する。クランク回転出力は、ペダル55に加えられた乗員の人力によりクランク軸57に発生するトルクとクランク軸57の回転速度との積である。クランク回転出力に対する駆動補助出力の比率は、駆動補助比率と称される。また、駆動補助比率は、人の力に対する原動機を用いて人の力を補う力の比率と表現される場合もあり、この比率は、クランク回転出力に対する駆動補助出力の比率と同義である。駆動補助比率はアシスト比率とも称され、以下、駆動補助比率をアシスト比率と称する場合がある。また、駆動補助出力を単に補助出力と称する場合もある。
図3は、電動補助自転車1の車速とアシスト比率(駆動補助比率)との関係を示す図であり、横軸は車速(km/h)を示し、縦軸はアシスト比率を示している。
アシスト比率は、例えば1:2のように表される。アシスト比率1:2とは、クランク回転出力と補助出力との比率が1:2であることを表す。これは補助出力がクランク回転出力の2倍であることを意味している。また、例えば、アシスト比率1:3とは、クランク回転出力と補助出力との比率が1:3であることを表す。これは補助出力がクランク回転出力の3倍であることを意味している。また、アシスト比率1:0とは、補助出力を発生させていない状態を示している。
点線82は、アシスト比率の上限を1:2としたときの車速とアシスト比率との関係を示し、実線83はアシスト比率の上限を1:3としたときの車速とアシスト比率との関係を示している。
アシスト比率の上限を1:2とした場合、マイクロコントローラ71の補助出力演算部74は、上限が1:2となる範囲でアシスト比率を変動させる。すなわち、補助出力の大きさがクランク回転出力の2倍以下になるようにする。例えば、マイクロコントローラ71は、アシスト比率が1:2を超えないマップを選択する。アシスト比率が1:0以上で且つ1:2以下の範囲内(図3のドットで示す領域82aの範囲内)になるように電動モータ53の補助出力を決定する。この例では、時速0km/hから10km/hまでは、アシスト比率1:2を上限として補助出力を発生させる。時速10km/h以上では、速度に比例してアシスト比率の上限は漸減していき、時速24km/h以上ではアシスト比率は1:0、すなわち補助出力はゼロになる。
一方、例えば坂道の走行時や荷物を積んでいるとき等、走行負荷が増加する場合は、乗員はより大きい補助出力を得たい場合がある。このような場合、マイクロコントローラ71の補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を1:2より大きく、且つ1:3以下に設定する。この例では、電動補助自転車1におけるアシスト比率の上限として設定可能な最大の比率は1:3である。このような最大の比率は予め決められており、メモリ72は最大の比率の情報を記憶している。
アシスト比率の上限を1:3とした場合、マイクロコントローラ71の補助出力演算部74は、上限が1:3となる範囲でアシスト比率を変動させる。すなわち、補助出力の大きさがクランク回転出力の3倍以下になるようにする。例えば、マイクロコントローラ71は、アシスト比率が1:3以下となるマップを選択する。アシスト比率が1:0以上で且つ1:3以下の範囲内(図3に示す領域82aと斜線で示す領域83aとを合わせた範囲内)になるように電動モータ53の補助出力を決定する。この例では、時速0km/hから10km/hまでは、アシスト比率1:3を上限として補助出力を発生させる。時速10km/h以上では、速度に比例してアシスト比率の上限は漸減していき、時速24km/h以上ではアシスト比率は1:0、すなわち補助出力はゼロになる。
なお、図3の例では、アシスト比率の上限を1:3とした場合に、時速10km/h以上においてアシスト比率の上限が漸減していく例を示したが、時速10km/h未満において、アシスト比率を変動させる範囲の上限の漸減を開始してもよい。図4は、一例として、時速5km/h以上においてアシスト比率の上限が漸減していく例を示している。アシスト比率の上限を1:3に設定した場合、電力消費量が大きくなることが考えられる。そのため、低速域(例えば時速5km/h未満)では、最大のアシスト比率1:3を上限とした範囲の補助出力を発生させ、それ以上の速度域ではアシスト比率の上限を漸減させていくことにより、乗員に必要な補助出力を提供しながら電力消費量を小さくすることができる。
図5は、電動補助自転車1のハンドル14に取り付けられる表示装置60を示す図である。表示装置60は、例えばハンドル14の左グリップの近傍に取り付けられ、制御装置70と情報の送受信を行い、乗員に各種情報を提示する。電源スイッチ65は、電動補助自転車1の電源のオン/オフを切り替えるスイッチであり、乗員は電源スイッチ65を押して、電動補助自転車1の電源のオン/オフを切り替える。表示装置60は表示パネル61を備える。表示パネル61は例えば液晶パネルである。表示パネル61には、電動補助自転車1の速度、バッテリ56の残容量、アシスト比率を変動させる範囲に関する情報、アシストモードおよびその他の走行情報を含む情報が表示される。また、乗員が表示装置60のアシストモード操作スイッチ62を操作することにより、アシストモードを変更することができる。
表示パネル61は、速度表示エリア61a、バッテリ残容量表示エリア61b、アシスト比率変動範囲表示エリア61c、アシストモード表示エリア61dを有する。表示パネル61は、それらの情報等を乗員に報知する報知装置として機能し、この例では情報を表示するが、音声を出力して乗員に報知してもよい。
速度表示エリア61aには、電動補助自転車1の車速が数字で表示される。本実施形態の場合、電動補助自転車1の車速は、前輪回転センサ35を用いて検出される。
バッテリ残容量表示エリア61bには、バッテリ56から制御装置70に出力される電池残容量の情報に基づいて、バッテリ56の残容量がセグメントによって表示される。これにより、乗員はバッテリ56の残容量を直感的に把握することができる。
アシスト比率変動範囲表示エリア61cには、制御装置70が設定したアシスト比率を変動させる範囲がセグメントによって表示される。また、その変動範囲において現在実行中のアシスト比率をさらに表示してもよい。
アシストモード表示エリア61dには、乗員がアシストモード操作スイッチ62を操作して選択したアシストモードが表示される。アシストモードは、例えば“強”、“標準”、“オートエコ”である。乗員がアシストモード操作スイッチ62を操作してアシストモードオフを選択した場合は、アシストモード表示エリア61dには“アシストなし”と表示される。
表示装置60は、乗員に必要な情報を音により発信するスピーカ63と光により発信するランプ64とをさらに備える。例えば、アシスト比率の上限が1:2より大きい条件で車両が走行しているとき、音声または光の点滅等により、そのことを乗員に報知する。これにより、乗員は大きな補助出力が発生することを認識することができる。また、例えばハンドル14および/またはサドル27に振動を発生させることにより、アシスト比率の上限が1:2より大きい条件で車両が走行していることを、乗員に報知してもよい。
また、アシスト比率の上限が1:2より大きい条件で車両が走行しているときは、電動補助自転車1の周囲の人々に聞こえる音量の音をスピーカ63に発生させたり、ヘッドランプ22およびテールランプ23を点灯または点滅させたりしてもよい。これにより、電動補助車両1の周囲の人々は、大きな補助出力が発生可能な動作モードに電動補助車両1があることを認識することができる。
電動モータ53の補助出力は、クランク回転出力に対して、"強"、"標準"、"オートエコ"の順に小さくなる。
アシストモードが"標準"の場合、電動モータ53は、電動補助自転車1が発進、平坦路走行または上り坂走行の際に補助出力を発生させる。アシストモードが"強"の場合、電動モータ53は、"標準"の場合と同様、電動補助自転車1が発進、平坦路走行または上り坂走行の際に補助出力を発生させる。電動モータ53は、アシストモードが"強"の場合には、同じクランク回転出力に対して"標準"の場合よりも大きな補助出力を発生させる。アシストモードが"オートエコ"の場合、電動モータ53は、電動補助自転車1が発進または上り坂走行の際に、同じクランク回転出力に対して"標準"の場合よりも小さな補助出力を発生する。アシストモードが"アシストなし"の場合、電動モータ53は、補助出力を発生しない。
このように、上述のアシストモードに応じて、クランク回転出力に対する補助出力が変わる。この例では、アシストモードを4段階に切り替えている。しかしながら、アシストモードの切替えは3段階以下であってもよいし、5段階以上であってもよい。
また、乗員は、表示装置60のアシストモード操作スイッチ62を操作して、アシスト比率の上限を任意に変更してもよい。電動補助自転車1におけるアシスト比率の上限として設定可能な最大の比率は予め決められており、本実施形態におけるその最大の比率は1:3である。複数のアシストモードごとにアシスト比率の上限は変化し得るが、上記最大の比率1:3は、そのようなアシストモードに関係なく、電動補助自転車1に予め設定された最大の比率である。ここでいう「予め設定された」とは、例えば、出荷時に電動補助自転車1に設定されていることをいう。例えば、出荷時にメモリ72にその設定が予め記憶されていることをいう。本明細書において、アシスト比率の上限として設定可能な最大の比率が予め決められているとは、上記のように電動補助自転車1に予め設定されていることを言う。
そのような最大の比率が1:3と予め決められた電動補助自転車1において、例えば、アシストモードが“標準”のときのアシスト比率の上限が1:2となっており、アシストモードが“強”のときのアシスト比率の上限が1:2よりも大きいとする。乗員は、アシストモード“標準”で走行している場合に、もっと大きな補助動力が欲しいと思う場合がある。この場合は、アシストモード操作スイッチ62を操作して、アシストモードを“強”に変更すると、アシスト比率の上限は大きくなる。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5としたり、1:3としたりすることができる。乗員によるアシストモード操作スイッチ62の操作に応じて、アシスト比率の上限を変更することにより、乗員の希望に沿った補助出力を提供することができる。
なお、上記の説明では、アシスト比率の上限を変更するスイッチは、アシストモード操作スイッチ62であったが、アシストモード操作スイッチ62とは別に設けられてもよい。例えば、ハンドル14のグリップまたはその近傍に、アシスト比率の上限を変更する専用のスイッチが設けられてもよい。
次に、電動補助自転車1の起動時の動作を説明する。図6は、電動補助自転車1の起動時の動作を示すフローチャートである。
電動補助自転車1を駐輪しているとき、電動補助自転車1の電源はオフになっている。すなわち、駆動ユニット51の電源はオフになっている。電動補助自転車1を駐輪している状態から発進させるとき、乗員は、表示装置60に配置された電源スイッチ65を押して、電動補助自転車1の電源をオフからオンにして起動する(ステップS11)。このとき、駆動ユニット51はオフ状態からオン状態に変化して起動する。
上述したように、電動補助自転車1におけるアシスト比率の上限として設定可能な最大の比率1:3は予め決められており、電動補助自転車1は、アシスト比率の上限を1:3として大きな補助出力を発生させることができる。しかし、電動補助自転車1を起動して発進するときに、電動モータ53が大きな補助出力を発生させると、乗員は違和感を覚える場合がある。ここで、違和感とは、電動補助自転車1が乗員の意図した挙動と異なる挙動を取ることにより、その乗員が覚える違和感を意味する。そこで、本実施形態の電動補助自転車1では、電動補助自転車1の起動時は、アシスト比率の上限を小さくするよう予め設定されている(ステップS12)。例えば、起動時のアシスト比率の上限は、最大のアシスト比率である1:3よりも小さくする。例えば、起動時のアシスト比率の上限は、最大のアシスト比率である1:3の90%〜30%の大きさの比率にする。例として、起動時のアシスト比率の上限は1:2であってもよいし、1:2.5であってもよい。これにより、乗員が電動補助自転車1を起動して発進する時に、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
補助出力演算部74は、起動してから所定時間が経過したか否か判断する(ステップS13)。所定時間は、例えば10秒または15秒等、任意に設定される。起動してから所定時間が経過していない場合(ステップS13でNO)は、所定時間が経過するまで待つ。起動してから所定時間が経過した場合(ステップS13でYES)は、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS14)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.7または1:3のように大きくする。電動補助自転車1が起動してから所定時間経過後は、アシスト比率の上限を大きくすることにより、乗員が大きな補助動力が欲しいときにその補助動力を発生させることができる。
上記の説明では、電動補助自転車1が起動してから所定時間経過した後にアシスト比率の上限を大きくするとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電動補助自転車1が起動してから所定距離走行した後にアシスト比率の上限を大きくしてもよい。また、電動補助自転車1が起動してから所定の車両速度に達した後にアシスト比率の上限を大きくしてもよい。また、電動補助自転車1が起動してからのクランク軸57の回転回数が所定回数に達した後にアシスト比率の上限を大きくしてもよい。
また、アシストモードが、アシストしないモード“アシストなし”からアシストするモード(例えば"標準"、"強")に変化したタイミングも、本明細書では電動補助自転車1の起動と呼ぶ。図7は、アシストしないモードからアシストするモードに変化したときのアシスト比率の上限を設定する動作を示すフローチャートである。
乗員は、表示装置60(図5)のアシストモード操作スイッチ62を操作して、アシストしないモードからアシストするモードに切り替える(ステップS21)。乗員が、アシストしないモードからアシストするモードに切り替えたタイミングにおいて、電動モータ53が大きな補助出力を発生させると、乗員は違和感を覚える場合がある。このため、アシストしないモードからアシストするモードに変化したときは、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS22)。例えば、アシスト比率の上限は、最大のアシスト比率である1:3よりも小さくする。例として、アシストしないモードからアシストするモードに切り替わった時のアシスト比率の上限は1:2であってもよいし、1:2.5であってもよい。これにより、アシストしないモードからアシストするモードに切り替えた直後に、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
補助出力演算部74は、アシストしないモードからアシストするモードに切り替わってから所定時間が経過したか否か判断する(ステップS23)。所定時間は、例えば10秒または15秒等、任意に設定される。動作モードが切り替わってから所定時間が経過していない場合(ステップS23でNO)は、所定時間が経過するまで待つ。動作モードが切り替わってから所定時間が経過した場合(ステップS23でYES)は、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS24)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.7または1:3のように大きくする。アシストしないモードからアシストするモードに切り替わってから所定時間経過後は、アシスト比率の上限を大きくすることにより、乗員が大きな補助動力が欲しいときにその補助動力を発生させることができる。
上記の説明では、アシストしないモードからアシストするモードに切り替わってから所定時間経過した後にアシスト比率の上限を大きくするとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、アシストしないモードからアシストするモードに切り替わってから所定距離を走行した後にアシスト比率の上限を大きくしてもよい。また、アシストしないモードからアシストするモードに切り替わってから所定の車両速度に達した後にアシスト比率の上限を大きくしてもよい。また、アシストしないモードからアシストするモードに切り替わってからクランク軸57の回転回数が所定回数に達した後にアシスト比率の上限を大きくしてもよい。
また、電動補助自転車1の起動時に乗員がペダル55に足を置いている場合は、アシスト比率の上限を小さくしてもよい。乗員がペダル55に足を置いている状態で電動補助自転車1を起動した場合に、大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。電動補助自転車1の起動時にペダル55に人力が加えられていた場合は、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えるあるいは補助出力を発生させないことにより、乗員の違和感を低減させることができる。
図8は、起動時に乗員がペダル55に足を置いているか検出してアシスト比率の上限を設定する動作を示すフローチャートである。
乗員が表示装置60に配置された電源スイッチ65を押すことにより、電動補助自転車1は起動する(ステップS101)。起動時、トルクセンサ41はクランク軸57に発生するトルクを検出して、検出したトルクに応じた電圧信号をトルク算出部73に出力する(ステップS102)。トルク算出部73は、トルクセンサ41からの電圧信号をトルクに換算し、補助出力演算部74に出力する。補助出力演算部74は、クランク軸57に発生するトルクが所定値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。乗員がペダル55に足を置いていない場合でも、クランクアーム54およびペダル55の重量により、クランク軸57にはトルクが発生する場合がある。このクランクアーム54およびペダル55の重量により発生し得るトルクよりも少し大きいトルクを所定値とし、検出したトルクがその所定値以上である場合は、乗員がペダル55に足を置いていると判断して、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS104)。例として、アシスト比率の上限を1:1としてもよいし、1:0としてもよい。アシスト比率1:0は、補助出力を発生させないことを意味している。
検出したトルクが所定値未満である場合は、乗員はペダル55に足を置いていないと判断して、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS105)。例として、アシスト比率の上限を1:2としてもよいし、1:2.5としてもよい。
電動補助自転車1の起動時に、乗員がペダル55に足を置いていた場合は、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えるあるいは補助出力を発生させないことにより、乗員の違和感を低減させることができる。
なお、電動補助自転車1の起動時のアシスト比率の上限を1:3にすることが許容される場合もあり得る。その場合に、起動時に乗員がペダル55に足を置いていた場合は、アシスト比率の上限を1:3より小さい比率としてもよい。
また、電動補助自転車1を発進させるとき、乗員は、片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面を蹴って電動補助自転車1を発進させる場合がある。そのような場合に大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。電動補助自転車1へのこのような乗り方が行われている場合は、アシスト比率の上限を小さくすることにより、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
乗員が片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面を蹴って電動補助自転車1を発進させる動作においては、一般にクランクアーム54は揺動する。図9は、クランクアーム54の揺動を示す図である。乗員が片足で地面を蹴るたびに、もう一方の片足を乗せたペダル55に力が掛かり、クランクアーム54には揺動91が発生する。電動補助自転車1におけるアシスト比率の上限として設定可能な最大の比率は予め決められており、本実施形態におけるその最大の比率は1:3である。クランクアーム54が揺動している場合は、アシスト比率の上限を最大の比率1:3よりも小さくすることにより、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
図10は、クランクアーム54の揺動の有無を検出してアシスト比率の上限を設定する動作を示すフローチャートである。
クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転を検出する(ステップS201)。クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転角に応じた信号を補助出力演算部74に出力する。クランクアーム54が揺動しているとき、クランク軸57は、一方の方向へ回転した後に他方の方向へ回転方向が変化する動きを繰り返す。補助出力演算部74は、クランク軸57の回転角または回転速度の変化から、クランク軸57の回転方向の変位を検出することができる。すなわち、クランクアーム54の揺動の有無を検出することができる(ステップS202)。クランク軸57の回転方向の変化が1回発生した場合にクランクアーム54が揺動しているとしてもよいし、2回または3回発生した場合にクランクアーム54が揺動しているとしてもよい。
クランクアーム54の揺動を検出した場合、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を最大の比率1:3よりも小さくする(ステップS203)。例として、アシスト比率の上限を1:1としてもよいし、1:0としてもよい。アシスト比率1:0は、補助出力を発生させないことを意味している。
クランクアーム54の揺動を検出しない場合は、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS204)。例として、アシスト比率の上限を1:2としてもよいし、1:3としてもよい。
補助出力演算部74は、この揺動の検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS205)。
乗員が片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面を蹴って電動補助自転車1を発進させる動作においては、アシスト比率の上限を小さくする。これにより、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
次に、ペダル55の漕ぎ始めの動作を説明する。電動補助自転車1におけるアシスト比率の上限として設定可能な最大の比率は予め決められており、本実施形態におけるその最大の比率は1:3である。電動補助自転車1を停止させていた状態からペダル55を漕ぎ始めたタイミングで大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。例えば、信号待ち等で電動補助自転車1を停止させているときは、電動補助自転車1の電源がオンの状態で待機する。電源がオンの状態で電動補助自転車1を停止させた後、再発進させるためにペダル55を漕ぎ始めたタイミングで大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。このため、本実施形態の電動補助自転車1では、ペダル55の漕ぎ始めではアシスト比率の上限を最大の比率1:3よりも小さくする。
図11は、ペダル55の漕ぎ始めにおけるアシスト比率の上限を設定する動作を示すフローチャートである。
クランク回転センサ42がクランク軸57の回転を検出すると(ステップS301)、補助出力演算部74は、電動補助自転車1の現在の状態はペダルの漕ぎ始めと判断して、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS302)。例えば、1:2のように、アシスト比率の上限を、最大の比率1:3より小さくする。
補助出力演算部74は、クランク軸57が回転した量が所定値以上であるか否か判断する(ステップS303)。所定値は、例えば1回転(2π)または2回転(4π)等、任意に設定される。
クランク軸57が回転した量が所定値未満である場合(ステップS303でNO)は、所定値になるまで待つ。
クランク軸57が回転した量が所定値以上である場合(ステップS303でYES)は、補助出力演算部74は、ペダルの漕ぎ始めは終了して通常の走行状態になったと判断して、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS304)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS305)。
このように、ペダル55の漕ぎ始めではアシスト比率の上限を小さくすることにより、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
なお、漕ぎ始め状態が終了したと判断するクランク軸57の回転回数が2回転より多い場合は、クランク軸57が1回転する毎にカウントして、所定の回転回数に達したときにアシスト比率の上限を大きくするとしてもよい。
また、上記の例では、クランク軸57が回転した量が所定値以上となったときにアシスト比率の上限を大きくしていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ペダル55を漕ぎ始めてから所定時間経過後に、アシスト比率の上限を大きくするとしてもよい。
次に、変速機構32の変速比に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を説明する。本実施形態の電動補助自転車1では、変速機構32の変速比が所定の変速比よりも高い変速比である場合は、アシスト比率の上限を小さくする。ここで、「高い変速比」とは、「減速比が大きい」ことを示しており、クランク軸57の回転速度に対して後輪26の回転速度が大きく減少する変速比であることを示している。変速機構32の変速比が高くなるほど(つまり減速比が大きくなるほど)、ペダル55に加えた人力に対してペダル55は回転しやすくなるといえる。そのため、変速機構32の変速比が所定の変速比よりも高い変速比である場合に大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。本実施形態の電動補助自転車1では、そのような場合にアシスト比率の上限を小さくする。電動補助自転車1におけるアシスト比率の上限として設定可能な最大の比率は予め決められており、本実施形態におけるその最大の比率は1:3である。変速機構32の変速比が所定の変速比よりも高い変速比である場合は、その最大の比率1:3よりも、アシスト比率の上限を小さくする。
図12は、変速機構32の変速比に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
変速比検知部75は、電動モータ53の回転速度と前輪25の回転速度の差から変速比を算出し、算出した変速比を補助出力演算部74へ入力する(S401)。この場合、前輪回転センサ35とモータ回転センサ46が、変速比を検出するセンサに該当する。なお、図2に示す例のように、変速機構32の変速比を検出する変速比センサ37を備える場合は、その変速比センサ37の出力信号から変速比を算出してもよい。変速比センサ37は、乗員が変速比を切り替える変速操作器に設けられてもよく、変速操作器の状態から変速比を検出してもよい。
補助出力演算部74は、変速機構32の変速比が所定の変速比よりも高い変速比であるか否かを検出する(S402)。
変速機構32の変速比が所定の変速比よりも高い変速比である場合、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を最大の比率1:3よりも小さくする(ステップS403)。例として、アシスト比率の上限を1:2としてもよいし、1:2.5としてもよい。
変速機構32の変速比が所定の変速比よりも高い変速比でない場合、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS404)。例として、アシスト比率の上限を1:2.7としてもよいし、1:3としてもよい。
補助出力演算部74は、この変速比の検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS405)。
本実施形態のように、変速機構32の変速比が所定の変速比よりも高い変速比である場合に、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えることにより、乗員の違和感を低減させることができる。
ここで、「所定の変速比」は、特に限定されない。「所定の変速比」は、変速機構32の取り得る変速比のうち、少なくとももっとも変速比が高い変速比においてアシスト比率の上限が小さくなるように設定されればよい。また、いわゆる低速段に相当する変速比において、アシスト比率の上限が小さくなるように設定されることが好ましい。例えば変速機構32の変速段数が6段である場合、低速側の2つの段(もっとも変速比が高い段および2番目に変速比が高い段)においてアシスト比率の上限が小さくなるように所定の変速比が設定されても(つまり3番目に変速比が高い段の変速比を「所定の変速比」としても)よい。また、例えば変速機構32の変速段数が8段である場合、低速側の3つの段(もっとも変速比が高い段、2番目に変速比が高い段および3番目に変速比が高い段)においてアシスト比率の上限が小さくなるように所定の変速比が設定されても(つまり4番目に変速比が高い段の変速比を「所定の変速比」としても)よい。
次に、駆動輪である後輪26のスリップ量に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を説明する。砂利道や泥道などの路面を走行する場合は駆動輪26のスリップ量が大きくなる場合がある。駆動輪26のスリップ量が大きいときは、アシスト比率の上限を小さくして補助出力を抑えることにより、駆動輪26のスリップ量を低減させることができる。
図13は、後輪26のスリップ量に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
スリップ量演算部76は、後輪26の回転速度と前輪25の回転速度とを用いて駆動輪である後輪26のスリップ量を算出し、算出したスリップ量を補助出力演算部74へ出力する(ステップS501)。スリップ量は、例えば、後輪26の回転速度と前輪25の回転速度との差の値として表すことできる。
補助出力演算部74は、後輪26のスリップ量が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS502)。通常走行時においても後輪26はわずかにスリップしているので、所定値はその通常走行時のスリップ量よりも大きな値とする。
後輪26のスリップ量が所定値以上である場合、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS503)。例として、アシスト比率の上限を1:1としてもよいし、1:0としてもよい。アシスト比率1:0は、補助出力を発生させないことを意味している。
後輪26のスリップ量が所定値未満である場合は、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS504)。例として、アシスト比率の上限を1:2.5としてもよいし、1:3としてもよい。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS505)。
後輪26のスリップ量が大きいときは、アシスト比率の上限を小さくして補助出力を抑えることにより、駆動輪26のスリップ量を低減させることができる。
なお、後輪26の回転加速度と電動補助自転車1の車両本体の加速度とを比較して、後輪26のスリップ量を算出してもよい。補助出力演算部74は、後輪26の回転速度から後輪26の回転加速度を換算する。また、補助出力演算部74は、加速度センサ38の出力信号から電動補助自転車1の車両本体の加速度を検出することができる。車両本体の加速度に対して後輪26の回転加速度が大きいときは、アシスト比率の上限を小さくして補助出力を抑えることにより、駆動輪26のスリップ量を低減させることができる。
次に、乗員がハンドルを握る状態に応じて、アシスト比率の上限を変更する動作を説明する。乗員は、ハンドル14を両手で握らない状態で電動補助自転車1を運転する場合がある。そのような場合には大きな補助出力を発生させないようにすることが好ましいと考えられる。本実施形態の電動補助自転車1では、乗員の両手の少なくとも一方がハンドル14を握っていない場合は、アシスト比率の上限を小さくする。
図14は、ハンドル14を示す図である。ハンドル14の右部には、右ハンドルグリップ141R、右ブレーキレバー(前輪ブレーキレバー)143R、変速操作器66が設けられている。ハンドル14の左部には、左ハンドルグリップ141L、左ブレーキレバー(後輪ブレーキレバー)143L、表示装置60が設けられている。右ハンドルグリップ141Rには、乗員の手が右ハンドルグリップ141Rに触れているか否かを検出する右センサ142Rが設けられている。左ハンドルグリップ141Lには、乗員の手が左ハンドルグリップ141Lに触れているか否かを検出する左センサ142Lが設けられている。
右センサ142Rおよび左センサ142Lは、例えば、押下される間だけONとなり、押下されないとOFFとなるモーメンタリスイッチである。乗員の手が右ハンドルグリップ141Rに接触している(右ハンドルグリップ141Rを握っている)ときは、右センサ142RはONとなり、触れていない(握っていない)ときはOFFとなる。乗員の手が左ハンドルグリップ141Lに接触している(左ハンドルグリップ141Lを握っている)ときは、左センサ142LはONとなり、触れていない(握っていない)ときはOFFとなる。補助出力演算部74は、右センサ142Rおよび左センサ142LのON/OFF状態から、乗員がハンドルを握る状態を把握することができる。
図15は、乗員がハンドルを握る状態に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
右センサ142Rおよび左センサ142Lの両方が手の接触を検出しない場合(ステップS601でNO)、補助出力演算部74は、大きな補助出力は不要と判断し、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS604)。例えば、アシスト比率の上限を1:2または1:1のように小さくする。
ハンドルへの手の接触を検出した場合は、右センサ142Rおよび左センサ142Lの両方が手の接触を検出しているか否か判断する(ステップS602)。右センサ142Rおよび左センサ142Lの少なくとも一方に乗員の手が触れていない場合は、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS604)。例えば、アシスト比率の上限を1:2または1:1のように小さくする。
補助出力演算部74は、右センサ142Rおよび左センサ142Lの両方に乗員の手が触れている場合は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS603)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS605)。
乗員は、ハンドル14を両手で握らない状態で電動補助自転車1を運転する場合がある。そのような場合には大きな補助出力を発生させないようにすることが好ましいと考えられる。乗員の両手の少なくとも一方がハンドル14を握っていない場合は、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えることにより、乗員の違和感を低減させることができる。
なお、右センサ142Rおよび左センサ142Lは、乗員の手を光学的に検出する光学センサであってもよい。右センサ142Rおよび左センサ142Lとしては、種々の接触式センサおよび非接触式センサを用いることができる。
次に、乗員がペダル55に足を乗せる状態に応じて、アシスト比率の上限を変更する動作を説明する。乗員は、片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面を蹴って電動補助自転車1を発進させる場合がある。そのような場合に大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。本実施形態の電動補助自転車1では、左右のペダルの一方に足が乗っていない場合は、アシスト比率の上限を小さくすることにより、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
図16は、電動補助自転車1のペダル55を示す上面図である。右ペダル55Rには、乗員の足が右ペダル55Rに乗っているか否かを検出する右センサ155Rが設けられている。左ペダル55Lには、乗員の足が左ペダル55Lに乗っているか否かを検出する左センサ155Lが設けられている。
右センサ155Rおよび左センサ155Lは、例えば、押下される間だけONとなり、押下されないとOFFとなるモーメンタリスイッチである。乗員の足が右ペダル55Rに乗っているときは、右センサ155RはONとなり、乗っていないときはOFFとなる。乗員の足が左ペダル55Lに乗っているときは、左センサ155LはONとなり、乗っていないときはOFFとなる。補助出力演算部74は、右センサ155Rおよび左センサ155LのON/OFF状態から、乗員がペダルに足を乗せる状態を把握することができる。
図17は、乗員がペダルに足を乗せる状態に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
右センサ155Rおよび左センサ155Lの両方が、足が乗っていることを検出しない場合(ステップS701でNO)、補助出力演算部74は、大きな補助出力は不要と判断し、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS704)。例えば、アシスト比率の上限を1:1または1:0のように小さくする。
ペダルに足が乗っていることを検出した場合は、右センサ155Rおよび左センサ155Lの両方が、足が乗っていることを検出しているか否か判断する(ステップS702)。右センサ155Rおよび左センサ155Lの一方に乗員の足が乗っていない場合は、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS704)。例えば、アシスト比率の上限を1:1または1:0のように小さくする。
補助出力演算部74は、右センサ155Rおよび左センサ155Lの両方に乗員の足が乗っている場合は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS703)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS705)。
乗員は、片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面を蹴って電動補助自転車1を発進させる場合がある。そのような動作中は、右ペダル55Rおよび左ペダル55Lの一方に足が乗っていない。右ペダル55Rおよび左ペダル55Lの一方に足が乗っていない場合は、アシスト比率の上限を小さくすることにより、補助出力が大きくなることを抑制させることができる。
なお、右センサ155Rおよび左センサ155Lは、乗員の足を光学的に検出する光学センサであってもよい。また、右センサ155Rおよび左センサ155Lは、右センサ155Rおよび左センサ155Lに加えられた力を検出するセンサ、例えば、荷重センサ、圧力センサ等であってもよい。右センサ155Rおよび左センサ155Lとしては、種々の接触式センサおよび非接触式センサを用いることができる。
次に、乗員のサドル27への着座状態に応じて、アシスト比率の上限を変更する動作を説明する。乗員が安定した着座姿勢で電動補助自転車1を発進させる場合は、十分な補助出力を発生可能とすることが好ましいと考えられる。しかし、乗員は、サドル27に着座せず、片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面を蹴って電動補助自転車1を発進させる場合がある。本実施形態の電動補助自転車1では、乗員がサドル27に着座していない場合は、アシスト比率の上限を小さくすることにより、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
図18は、電動補助自転車1のサドル27および荷台24を示す側面図である。この例では、サドル27には重量センサ161が設けられており、荷台24には重量センサ162が設けられている。
重量センサ161は、サドル27に掛かる負荷を検出する。重量センサ162は、荷台24に掛かる負荷を検出する。重量センサ162を用いた動作は後述する。
重量センサ161は、乗員のサドル27への着座の有無を検出する。着座時はサドル27へ負荷が掛かることにより、着座を検出することができる。補助出力演算部74は、重量センサ161が検出する負荷から、乗員が着座しているか否かを把握することができる。
図19は、乗員のサドル27への着座状態に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
重量センサ161が負荷を検出しない場合(ステップS801でNO)、補助出力演算部74は、大きな補助出力は不要と判断し、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS803)。例えば、アシスト比率の上限を1:2または1:1のように小さくする。
補助出力演算部74は、重量センサ161への負荷を検出した場合は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS802)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS804)。
安定した着座姿勢であれば、十分な補助出力を発生可能とすることが好ましいと考えられる。しかし、乗員は、サドル27に着座せず、片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面を蹴って電動補助自転車1を発進させる場合がある。乗員がサドル27に着座していない場合は、アシスト比率の上限を小さくすることにより、補助出力が大きくなることを抑制し、乗員の違和感を低減させることができる。
また、乗員が片足のみをペダル55に乗せ、もう一方の片足で地面に立ち、サドル27に着座しない状態で電動補助自転車1を停止させる場合がある。そのような場合に大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。乗員がサドル27に着座していない場合は、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えることにより、乗員の違和感を低減させることができる。
なお、乗員の着座を検出するセンサは、モーメンタリスイッチであってもよいし光学センサであってもよい。乗員の着座を検出するセンサは、サドル27の変形を検出するセンサであってもよい。乗員の着座を検出するセンサとしては、種々の接触式センサおよび非接触式センサを用いることができる。
次に、ブレーキの操作状態に応じて、アシスト比率の上限を変更する動作を説明する。乗員はブレーキを作動させているときにペダル55に人力を加えている場合がある。そのような場合に大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。乗員がブレーキレバーを操作しているときは、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えるあるいは補助出力を発生させないことにより、乗員の違和感を低減させることができる。
図20および図21は、電動補助自転車1のハンドル14の左部を示す側面図である。ハンドル14の左部には、ブラケット144が設けられている。ブラケット144は左ブレーキレバー143Lを回転可能に支持している。この例では、ブラケット144には磁気センサ146が設けられている。左ブレーキレバー143Lにおける磁気センサ146の近傍にはマグネット147が設けられている。
図20は、左ブレーキレバー143Lのニュートラルの位置を示し、この状態ではブレーキは作動していない。このとき、マグネット147は磁気センサ146に近接しており、磁気センサ146はONとなる。図21は、乗員が左ブレーキレバー143Lを握ってブレーキを作動させている状態を示している。このとき、左ブレーキレバー143Lの変位に応じて、マグネット147は磁気センサ146から離れ、磁気センサ146はOFFになる。右ブレーキレバー143Rも、図20および図21に示す構造と同様の構造を有する。補助出力演算部74は、この磁気センサ146のON/OFF状態から、乗員がブレーキレバーを操作しているか否かを把握することができる。
図22は、ブレーキレバーの操作状態に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
乗員がブレーキレバー143Lおよび143Rの両方を操作していない場合(ステップS901でNO)、補助出力演算部74は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS903)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。
補助出力演算部74は、乗員がブレーキレバー143Lおよび143Rの少なくとも一方を操作している場合は、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS902)。例えば、アシスト比率の上限を1:1または1:0のように小さくする。
なお、ブレーキレバー143Lおよび143Rに遊びがある場合は、ブレーキレバー143Lおよび143Rの位置をある程度変位させないと車輪の制動は起こらない。このような遊びがある場合は、ブレーキレバー143Lおよび143Rを操作しているが車輪の制動は起こっていない状態においても、アシスト比率の上限を小さくしてもよい。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS904)。
乗員はブレーキレバーを操作しているときにペダル55に人力を加えている場合がある。そのような場合に大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。ブレーキレバーを操作しているときは、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えるあるいは補助出力を発生させないことにより、乗員の違和感を低減させることができる。
なお、ブレーキレバーの操作状態を検出するセンサは、モーメンタリスイッチであってもよいし光学センサであってもよい。ブレーキレバーの操作状態を検出するセンサとしては、種々の接触式センサおよび非接触式センサを用いることができる。
次に、ハンドルの操舵角に応じて、アシスト比率の上限を変更する動作を説明する。ハンドルの操舵角は、電動補助自転車1が直進しているときのハンドル14の位置(ニュートラル位置)を基準としたときの、ハンドル14の回転角である。ハンドルの操舵角は、ハンドルの切れ角、ハンドルの操作角とも称される。乗員がハンドル14を大きく回転させた状態で電動補助自転車1を発進させたときに、大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。また、乗員がハンドル14を大きく回転させてカーブを走行しているときに大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。ハンドル14の操舵角が所定の角度以上である場合は、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えることにより、乗員の違和感を低減させることができる。
電動補助自転車1のヘッドパイプ12には、ハンドルステム13が回転可能に挿入されている。ハンドル14は、ハンドルステム13の上端部に固定されている。ヘッドパイプ12に対するハンドルステム13の操舵角を検出することにより、ハンドル14の操舵角を検出することができる。図14を参照して、ヘッドパイプ12には、ヘッドパイプ12とハンドルステム13の相対的な回転角を検出する回転センサ143が設けられている。回転センサ143は、ヘッドパイプ12に対するハンドルステム13の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。補助出力演算部74は、回転センサ143の出力信号からハンドル14の操舵角を検出する。
図23は、ハンドル14の操舵角に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
補助出力演算部74は、回転センサ143の出力信号からハンドル14の操舵角を検出する。補助出力演算部74は、電動補助自転車1が直進しているときのハンドル14の位置(ニュートラル位置)を予め記憶している。この直進時のハンドル14のニュートラル位置を基準としたハンドル14の操舵角を検出する(ステップS1001)。
補助出力演算部74は、ハンドル14の操舵角が所定角未満の場合(ステップS1002でNO)、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS1004)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。所定角は例えば30°であるが、これに限定されず、20°であってもよいし、40°であってもよい。所定角としては任意の角度が設定される。
補助出力演算部74は、ハンドル14の操舵角が所定角以上の場合は、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS1003)。例えば、アシスト比率の上限を1:2または1:1のように小さくする。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS1005)。
乗員がハンドル14を大きく回転させた状態で電動補助自転車1を発進させたときに、大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。また、乗員がハンドル14を大きく回転させてカーブを走行しているときに大きな補助出力が発生すると、乗員は違和感を覚える場合がある。ハンドル14の操舵角が所定の角度以上である場合は、アシスト比率の上限を小さくし、補助出力を抑えることにより、乗員の違和感を低減させることができる。
なお、ハンドル14の回転状態を検出するセンサは、モーメンタリスイッチであってもよいし光学センサであってもよい。例えば、ハンドル14が所定角以上回転したときにON/OFFが切り替わるスイッチを用いてもよい。ハンドル14の回転状態を検出するセンサとしては、種々の接触式センサおよび非接触式センサを用いることができる。
次に、電動補助自転車1に掛かる重量に応じて、アシスト比率の上限を変更する動作を説明する。電動補助自転車1に重い荷物を載せたりして総重量が大きくなった場合は、運転者はより大きい補助出力が欲しいと思う場合がある。電動補助自転車1にかかる重量が大きい場合は、アシスト比率の上限を大きくし、より大きな補助出力を発生可能とすることにより、走行時の快適性を向上できる。
図18に示したように、サドル27には重量センサ161が設けられており、荷台24には重量センサ162が設けられている。重量センサ161は、サドル27に掛かる負荷を検出する。重量センサ162は、荷台24に掛かる負荷を検出する。重量センサ161および162は、例えば、ロードセルまたは変位センサである。補助出力演算部74は、重量センサ161および162が検出する負荷から、電動補助自転車1にかかる重量を把握することができる。
図24は、電動補助自転車1にかかる重量に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
重量センサ161および162は、乗員の重量および荷物の重量を検出する(ステップS1101)。補助出力演算部74は、重量センサ161および162が検出した重量の合計値が所定値未満の場合(ステップS1102でNO)、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS1104)。例えば、アシスト比率の上限を1:2または1:1のように小さくする。所定値は例えば100kg重であるが、これに限定されず、80kg重であってもよいし、120kg重であってもよい。所定値としては任意の重量が設定される。
補助出力演算部74は、重量の合計値が所定値以上の場合は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS1103)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS1105)。
電動補助自転車1にかかる重量が大きい場合は、アシスト比率の上限を大きくし、より大きな補助出力を発生可能とすることにより、走行時の快適性を向上できる。
次に、電動補助自転車1のピッチ角に応じて、アシスト比率の上限を変更する動作を説明する。電動補助自転車1が坂道を登るとき、特に坂道の傾斜角が大きいときは、乗員はより大きい補助出力が欲しいと思う場合がある。電動補助自転車1のピッチ角が大きいときは、アシスト比率の上限を大きくし、より大きな補助出力を発生可能とすることにより、坂道を登るときの快適性を向上できる。
この例では、図2に示した加速度センサ38は、電動補助自転車1の加速度および角速度を検出する。加速度センサ38は、電動補助自転車1のピッチ角を検出する傾斜センサとして用いることができる。補助出力演算部74は、加速度センサ38の出力信号から、電動補助自転車1のピッチ角を検出することができる。
図25は、電動補助自転車1のピッチ角に応じてアシスト比率の上限を変更する動作を示すフローチャートである。
補助出力演算部74は、加速度センサ38の出力信号から、電動補助自転車1のピッチ角を検出する(ステップS1201)。補助出力演算部74は、ピッチ角が所定値未満の場合(ステップS1202でNO)、アシスト比率の上限を小さくする(ステップS1204)。例えば、アシスト比率の上限を1:2または1:1のように小さくする。所定値は例えば10°であるが、これに限定されず、12°であってもよいし、15°であってもよい。所定値としては任意の角度が設定される。
補助出力演算部74は、ピッチ角が所定値以上の場合は、アシスト比率の上限を大きくする(ステップS1203)。例えば、アシスト比率の上限を1:2.5または1:3のように大きくする。
補助出力演算部74は、この検出動作を繰り返し、アシストモードが終了すると検出動作を終了する(ステップS1205)。
電動補助自転車1のピッチ角が大きい場合は、アシスト比率の上限を大きくし、より大きな補助出力を発生可能とすることにより、走行時の快適性を向上できる。
なお、メモリ72(図2)は、アシスト比率が所定の比率以上で電動補助自転車1が走行した総走行距離を記憶しておいてもよい。この例では、所定の比率は、1:2より大きい比率である。
一例として、所定の比率は1:2.5であるとする。補助出力演算部74は、アシスト比率が1:2.5以上となる補助動力を発生させているとき、前輪25の回転速度から電動補助自転車1の走行速度を算出する。補助出力演算部74は、走行速度と走行時間との積から走行距離を算出する。補助出力演算部74は、算出した電動補助自転車1の走行距離をメモリ72に記憶させる。このとき、メモリ72に既に記憶されている過去の走行距離に、今回走行した距離を積算していく。
走行距離の積算値、すなわち総走行距離が所定値以上になったとき、総走行距離が所定値以上であることを乗員に知らせる。所定値としては任意の距離が設定され、例えば2万kmまたは3万kmである。例えば、補助出力演算部74は、表示装置60の表示パネル61に、総走行距離が所定値以上であることを表示させてもよい。
図26は、表示装置60を示す図である。図26に示す例では、表示パネル61の表示エリア61eに総走行距離が所定値以上になったことを示す情報を表示する。また、表示装置60は、総走行距離が所定値以上になったときに点灯または点滅するランプ67を備える。また、スピーカ63を用いて音声により総走行距離が所定値以上であることを報知してもよい。これにより、乗員は、総走行距離を認識することができ、例えば車両のメンテナンスの目安とすることができる。
電動補助自転車1におけるアシスト比率の上限として設定可能な最大の比率は予め決められており、本実施形態におけるその最大の比率は1:3である。補助出力演算部74は、所定の比率(例えば1:2.5)以上の比率において補助出力を発生させて走行した総走行距離が所定値以上になった場合は、アシスト比率の上限を最大の比率1:3よりも小さく制限するようにしてもよい。アシスト比率の上限が1:3未満となるように補助動力を発生させてもよいし、アシスト比率の上限が1:2.5未満となるように補助動力を発生させてもよい。これにより、電動補助自転車1の駆動系にかかる負荷を低減させることができる。
なお、上記の説明では、人力により発生する回転出力と電動モータが発生させる補助出力とを足し合わせた出力が伝達される駆動輪は後輪26であったが、電動補助車両の形態に応じて、前輪25に出力が伝達されてもよい。また、前輪25および後輪26の両方に出力が伝達されてもよい。
また、上記の説明では、電動補助車両として二輪の電動補助自転車を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電動補助車両は三輪以上の電動補助自転車であってもよい。
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。また、上述の実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせた実施形態も可能である。本発明は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、改変、置き換え、付加および省略などが可能である。