本発明の樹脂エマルションは、前記したように、トリアジン系紫外線吸収剤を含有し、前記樹脂エマルションの樹脂原料として用いられる単量体成分に重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体が用いられていることを特徴とする。
本発明の樹脂エマルションは、トリアジン系紫外線吸収剤を含有するが、樹脂エマルションの樹脂原料として用いられる単量体成分に重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体が用いられていることから、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れた塗膜を形成する。
本発明においては、種々ある紫外線吸収剤のなかでトリアジン系紫外線吸収剤が樹脂エマルションに用いられている点、および当該樹脂エマルションの樹脂原料として用いられる単量体成分に重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体が用いられている点に大きな特徴がある。このように、本発明では、トリアジン系紫外線吸収剤が樹脂エマルションに用いられているとともに、前記単量体成分に重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体が用いられており、本発明の樹脂エマルションは、これらの構成を併せ持つことから、耐紫外線透過性に優れるのみならず、紫外線外観保持性に優れた塗膜を形成するという従来技術から予期することができない格別顕著に優れた効果が発現される。
本発明の樹脂エマルションは、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤の存在下で単量体成分を重合させる方法、単量体成分を乳化重合させ、得られた樹脂エマルションとトリアジン系紫外線吸収剤とを混合する方法などによって得ることができる。これらの方法のなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、トリアジン系紫外線吸収剤の存在下で単量体成分を重合させる方法が好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤の存在下で単量体成分を重合させる方法としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する単量体成分を重合させる方法、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する水性媒体の存在下で単量体成分を乳化重合させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの方法なかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、トリアジン系紫外線吸収剤を含有する単量体成分を重合させる方法が好ましい。
以下に、トリアジン系紫外線吸収剤の存在下で単量体成分を重合させる方法として、トリアジン系紫外線吸収剤の存在下で単量体成分を重合させる際に、単量体成分として重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体を含有する単量体成分を用いることによって樹脂エマルションを調製する方法について説明する。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、ヒドロキシフェニルトリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのトリアジン系紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのトリアジン系紫外線吸収剤のなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤は、商業的に容易に入手することができるものである。その例としては、例えば、BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN(登録商標、以下同じ)400〔2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの混合物〕、TINUVIN405〔2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン〕、TINUVIN460〔2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン〕、TINUVIN477〔ヒドロキシフェニルトリアジン〕、TINUVIN479〔2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン〕、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブ(登録商標)F70〔2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン〕などのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのトリアジン系紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明の樹脂エマルションの樹脂原料として用いられる単量体成分100質量部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上、さらに一層好ましくは0.5質量部以上であり、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下、さらに一層好ましくは3.5質量部以下である。
重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体のなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンが好ましく、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンがより好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタクリロイル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
単量体成分における重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体の含有率は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、耐水性および凍結融解繰り返し安定性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
単量体成分には、重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体以外の他の単量体(以下、単に「他の単量体」という)を用いることができる。
他の単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、芳香族系単量体、カルボキシル基含有単量体、窒素原子含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、紫外線吸収性単量体、重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体以外の光安定性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの他の単量体のなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル(メタ)アクリレート、炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体および芳香族系単量体が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート、炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよびシラン基含有単量体がより好ましく、アルキル(メタ)アクリレート、炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
単量体成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、炭素数3〜10のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数4〜8のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
単量体成分における炭素数3〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、0質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、凍結融解繰り返し安定性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートのなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリセリンモノ(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。
単量体成分における水酸基含有(メタ)アクリレートの含有率は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのシラン基含有単量体のなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
単量体成分におけるシラン基含有単量体の含有率は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、0質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、アラルキル(メタ)アクリレート、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル〕−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ〕プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体以外の光安定性単量体としては、例えば、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとの混合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合性ヒンダードアミン系光安定性単量体以外の光安定性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分における他の単量体の含有率は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.7質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以下である。
単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上の単量体を共重合成分とする重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記乳化剤として、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10、アクアロンBC−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの反応性乳化剤は、いずれもそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分100質量部あたりの乳化剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部をフラスコ内に添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤などの添加剤をフラスコ内に適量で添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
以上のようにして単量体成分(以下、「前記単量体成分」という)を乳化重合させることにより、エマルション粒子を含有する樹脂エマルションが得られる。
エマルション粒子を構成している重合体は、架橋構造を有していてもよい。重合体の重量平均分子量は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
本発明の樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、1段の乳化重合によって調製された単層の樹脂層を有するものであってもよく、多段の乳化重合によって調製された複数の樹脂層を有するものであってもよい。これらのエマルション粒子のなかでは、複数の樹脂層を有することが、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から好ましい。なお、エマルション粒子が複数の樹脂層を有する場合、各樹脂層の境界は、必ずしも明確である必要がなく、隣接する樹脂層同士が互いに混ざり合っていてもよい。
エマルション粒子を構成する樹脂層の数は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは1〜5層、より好ましくは1〜3層、さらに好ましくは2および3層である。
また、複数の樹脂層を有するエマルション粒子のなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、当該エマルション粒子を構成する各樹脂層のうち、ガラス転移温度が最も高い樹脂層を最外層よりも内側の層に有するエマルション粒子が好ましい。
単層の樹脂層を有するエマルション粒子は、前記単量体成分を乳化重合させることによって調製することができる。また、複数の樹脂層を有するエマルション粒子は、前記単量体成分を乳化重合させる場合と同様の重合方法および重合条件で単量体成分を多段乳化重合させることによって調製することができる。
エマルション粒子が複数の樹脂層を有する場合、各層を形成する単量体成分は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、トリアジン系紫外線吸収剤をそれぞれ含有することが好ましい。
内層と外層との2層の樹脂層を有するエマルション粒子は、内層を形成する単量体成分を乳化重合させ、得られたエマルション粒子の存在下で外層を形成する単量体成分を乳化重合させることによって調製することができる。この場合、前記単量体成分は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、内層および外層を形成する単量体成分に用いられていることが好ましい。内層を構成している樹脂層と外層を構成している樹脂層との質量比(内層を構成している樹脂層/外層を構成している樹脂層)は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、さらに好ましくは30/70以上であり、造膜性、密着性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下である。
内層と中間層と外層との3層の樹脂層を有するエマルション粒子は、内層を形成する単量体成分を乳化重合させ、得られたエマルション粒子の存在下で中間層を形成する単量体成分を乳化重合させ、得られたエマルション粒子の存在下で外層を形成する単量体成分を乳化重合させることによって調製することができる。この場合、前記単量体成分は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、内層、中間層および外層を形成する単量体成分に用いられていることが好ましい。また、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、内層を構成している樹脂層の含有率が10〜40質量%であり、中間層を構成している樹脂層の含有率が20〜60質量%であり、外層を構成している樹脂層の含有率が20〜60質量%であることが好ましい。
単層の樹脂層を有するエマルション粒子において、当該樹脂層のガラス転移温度は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−5℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
内層と外層との2層の樹脂層を有するエマルション粒子において、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、内層を構成している樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは−10〜110℃であり、外層を構成している樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは−50〜70℃、より好ましくは−40〜60℃である。
内層と中間層と外層との3層の樹脂層を有するエマルション粒子において、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、内層を構成している樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜110℃であり、中間層を構成している樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは−50〜0℃、より好ましくは−30〜−10℃であり、外層を構成している樹脂層のガラス転移温度は、好ましくは0〜50℃、より好ましくは10〜40℃である。
また、複数の樹脂層を有するエマルション粒子全体のガラス転移温度は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−5℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
エマルション粒子を構成する樹脂層のガラス転移温度は、単量体成分に用いられる単量体の種類およびその量を調整することによって容易に調整することができる。
なお、本明細書において、エマルション粒子を構成する樹脂層のガラス転移温度は、当該樹脂層を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
本明細書においては、エマルション粒子を構成する樹脂層のガラス転移温度は、特に断りがない限り、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。複数の樹脂層を有するエマルション粒子を構成する樹脂層全体のガラス転移温度は、多段乳化重合の際に用いられたすべての樹脂層を構成する全単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%以下である場合、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
樹脂層のガラス転移温度は、単量体成分の組成を調整することにより、容易に調節することができる。エマルション粒子を構成する樹脂層のガラス転移温度を考慮して、当該エマルション粒子を構成する樹脂層の原料として用いられる単量体成分の組成を決定することができる。
重合体のガラス転移温度は、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、スチレンの単独重合体では100℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの単独重合体では130℃、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの単独重合体では70℃である。
なお、エマルション粒子が複数の樹脂層で構成されている場合、外層を構成している樹脂層の溶解パラメーター(以下、SP値ともいう)は、内層を構成している樹脂層のSP値よりも高いことが、塗膜の可撓性および造膜性を向上させる観点から好ましい。また、内層を構成している樹脂層のSP値と外層を構成している樹脂層とのSP値の差(絶対値)は、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から、大きいことが好ましい。
SP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義される値であり、2成分系溶液の溶解度の目安にもなっている。一般に、SP値が近い物質同士は互いに混ざりやすい傾向がある。したがって、SP値は、溶質と溶媒との混ざりやすさを判断する目安にもなっている。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子自体の機械的安定性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上であり、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
本発明の樹脂エマルションとしては、例えば、
(1)前記単量体成分にトリアジン系紫外線吸収剤を含有させたものを乳化重合させることによって得られ、トリアジン系紫外線吸収剤を含有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルション、
(2)前記単量体成分を乳化重合させることによって得られるエマルション粒子を含有する樹脂エマルションとトリアジン系紫外線吸収剤とを混合することによって得られる樹脂エマルション
などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの樹脂エマルションのなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れた塗膜を形成する観点から、トリアジン系紫外線吸収剤を含有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションが好ましい。
本発明の樹脂エマルションにおけるエマルション粒子およびトリアジン系紫外線吸収剤の不揮発分の合計含有率は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
樹脂エマルションにおける不揮発分の合計含有率は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分の合計含有率(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
また、本発明の樹脂エマルションの最低造膜温度は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃以下である。樹脂エマルションの最低造膜温度は、例えば、エマルション粒子全体のガラス転移温度や最外層の樹脂層のガラス転移温度を調節することによって調整することができる。
なお、本明細書において、樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工し、クラックが生じたときの温度を意味する。
以上のようにして得られる本発明の樹脂エマルションには、必要により、例えば、架橋剤などが含有されていてもよい。架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、チタネート系架橋剤、尿素系架橋剤、アルキルアルコール化尿素系架橋剤、ヒドラジン化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物などの多価金属化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。架橋剤の量は、当該架橋剤の種類、などに応じて適宜設定することが好ましい。架橋剤のなかでは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、オキサゾリン系架橋剤およびヒドラジン系架橋剤が好ましい。
オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン系架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。オキサゾリン系架橋剤は、商業的に容易に入手することができるものであり、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK−2010、エポクロスK−2020、エポクロスK−2030などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ヒドラジン系架橋剤としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、ジドラジド基を有する重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明の樹脂エマルションは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成するので、例えば、建築物の外装、窯業系建材などの表面に塗装されるトップコートと称されている上塗り塗料に好適に使用することができる。
本発明の上塗り塗料は、本発明の樹脂エマルションを含有する。本発明の上塗り塗料に含まれる固形分におけるエマルション粒子およびトリアジン系紫外線吸収剤の不揮発分の合計含有率は、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
本発明の上塗り塗料は、本発明の樹脂エマルションのみを含有するものであってもよく、必要により、例えば、顔料、添加剤などを含有していてもよい。
顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらの顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛などをはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウムなどの扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの体質顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明の上塗り塗料における顔料の固形分含量は、0質量%以上であるが、塗膜硬度を高めるとともに、形成される塗膜の意匠性または隠蔽性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
なお、本発明の上塗り塗料における顔料の固形分含量は、式:
[上塗り塗料における顔料の固形分含量(質量%)]
=[(顔料の固形分)/(樹脂エマルションの固形分+顔料の固形分)]×100
に基づいて求められた値を意味する。
添加剤としては、例えば、骨材、レベリング剤、抗酸化剤、重合禁止剤、充填剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌剤、金属不活性化剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防曇剤、防食剤、顔料分散剤、流動調整剤、過酸化物分解剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤、スリップ剤、金属キレート剤、アンチブロッキング剤、耐熱安定剤、加工安定剤、分散剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、発泡剤、老化防止剤、防腐剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、酸化防止剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
本発明の上塗り塗料における全不揮発分の含有率は、本発明の上塗り塗料の用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10〜70質量%であることが好ましい。
本発明の上塗り塗料は、例えば、本発明の樹脂エマルション、必要により、顔料、添加剤、水などを混合することによって容易に調製することができる。
以上のようにして得られる本発明の上塗り塗料は、本発明の樹脂エマルションを含有することから、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成するので、例えば、金属、ガラス、磁器、コンクリート、サイディングボード、樹脂などの素材からなる基材の表面仕上げに好適に使用することができる。したがって、本発明の上塗り塗料は、なかでも建築物の外装、窯業系建材などの表面に塗装されるトップコートと称されている上塗り塗料として好適に使用することができる。
窯業系建材としては、例えば、瓦、外壁材などが挙げられる。窯業系建材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。建築物の外装を構成する無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
このような建材の表面には、通常、所望の意匠を付与するために、上塗り塗料が塗布されている。本発明の上塗り塗料は、この上塗り塗料に好適に使用することができる。
本発明の上塗り塗料は、それ単独で1層で塗工してもよく、2層以上に重ね塗りすることによって塗工してもよい。2層以上に重ね塗りすることによって塗工する場合、その一部の層のみが本発明の上塗り塗料によって形成されてもよく、全部の層が本発明の上塗り塗料で形成されてもよい。重ね塗りは、例えば、プライマー処理やシーラー処理などを施した被塗物に、第1層(例えば、下塗り層)用塗料を塗布して乾燥させた後、第2層(例えば、上塗り層)用塗料を上塗りし、乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。本発明の上塗り塗料を塗布する方法としては、例えば、刷毛、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の上塗り塗料を用いて形成された塗膜は、例えば、常温で乾燥させてもよく、加熱することによって乾燥させてもよい。
また、本発明の上塗り塗料を用いて形成された塗膜の乾燥後の厚さは、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、通常、1〜100μm程度であることが好ましい。
上塗り塗料の基材に対する塗布量は、当該基材の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れ、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に優れた塗膜を形成する観点から、通常、不揮発分量で10〜200g/m2程度であることが好ましい。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味する。
実施例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水417部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液120部、単量体成分としてメチルメタクリレート290部、シクロヘキシルメタクリレート250部、2−エチルヘキシルアクリレート200部、n−ブチルアクリレート200部、ヒドロキシエチルメタクリレート20部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン30部、および当該単量体成分100部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量が1部となるようにトリアジン系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN400〕10部を含有させた滴下用プレエマルションを調製し、そのうち単量体成分とトリアジン系紫外線吸収剤との合計量の10%にあたる154部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションの樹脂原料として用いられた単量体成分およびトリアジン系紫外線吸収剤の組成を表1に示す。
実施例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水716部を仕込んだ。満下ロートに脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液60部、単量体成分としてメチルメタクリレート307.5部、シクロヘキシルメタクリレート125部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン15部、および全単量体成分100部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量が0.5部となるようにトリアジン系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN400〕2.5部を含有させた1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち単量体成分とトリアジン系紫外線吸収剤との合計量の10%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、単量体成分としてシクロヘキシルメタクリレート125部、2−エチルヘキシルアクリレート147.5部、n−ブチルアクリレート200部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン15部、および全単量体成分100部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量が0.5部となるようにトリアジン系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN400〕2.5部を含有させた2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションの樹脂原料として用いられた単量体成分および紫外線吸収剤の組成を表1に示す。
実施例3〜5
実施例2において、単量体成分およびトリアジン系紫外線吸収剤を表1に示すように変更したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションの樹脂原料として用いられた単量体成分およびトリアジン系紫外線吸収剤の組成を表1に示す。
実施例6
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水716部を仕込んだ。満下ロートに脱イオン水139部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、単量体成分としてメチルメタクリレート185部、シクロヘキシルメタクリレート125部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部、および全単量体成分100部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量が3.1部となるようにトリアジン系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN400〕10部を含有させた1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち単量体成分とトリアジン系紫外線吸収剤との合計量の10%にあたる51部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を90分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水139部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、単量体成分としてシクロヘキシルメタクリレート125部、2−エチルヘキシルアクリレート175部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部およびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、および全単量体成分100部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量が3.1部となるようにトリアジン系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN400〕10部を含有させた2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を90分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水139部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、単量体成分としてシクロヘキシルメタクリレート125部、n−ブチルメタクリレート140部、2−エチルヘキシルアクリレート35部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部およびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、および全単量体成分100部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量が3.1部となるようにトリアジン系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN400〕10部を含有させた2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を90分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加
することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却し
た後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションの樹脂原料として用いられた単量体成分およびトリアジン系紫外線吸収剤の組成を表1に示す。
比較例1〜4
実施例1において、単量体成分および紫外線吸収剤を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂エマルションを調製した。得られた樹脂エマルションの樹脂原料として用いられた単量体成分および紫外線吸収剤の組成を表2に示す。
なお、表1〜2に記載の略号は、以下のことを意味する。
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
重合性HALS:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン
非重合性HALS:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN292〕
TMSMA:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
TIN400:トリアジン系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN400〕
TIN1130:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤〔BASFジャパン(株)製、商品名:TINUVIN1130〕
また、以下の表1〜2に記載の用語は、以下のことを意味する。
〔層の数〕
樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している樹脂層の数
〔重合性HALS量〕
全単量体成分における重合性HALSの含有率(質量%)
〔トリアジン系紫外線吸収剤量〕
全単量体成分100部あたりのトリアジン系紫外線吸収剤の量(部)
〔不揮発分含量〕
樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)
〔層1のTg〕
エマルション粒子を構成している樹脂層1のガラス転移温度(℃)
〔層2のTg〕
エマルション粒子を構成している樹脂層2のガラス転移温度(℃)
〔層3のTg〕
エマルション粒子を構成している樹脂層3のガラス転移温度(℃)
〔トータルTg〕
エマルション粒子自体のガラス転移温度(℃)
なお、表1において、層1〜層3は、その順序で重合させて層を形成させたことを示す。表1中の単量体成分において、「−」は、その層が形成されていないことを意味する。
実験例
次に、各実施例または各比較例で得られた樹脂エマルション100部に、水20部、成膜助剤としてブチルセロソルブ〔協和発酵バイオ(株)製〕5部および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕5部を添加することにより、混合溶液を得た。得られた混合溶液をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が65KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.3部をフラスコ内に添加し、その状態で30分間撹拌することにより、評価用試料を調製した。
前記で得られた評価用塗料を用い、樹脂エマルションの物性として、耐水性、耐紫外線透過性、紫外線外観保持性、凍結融解繰り返し安定性および透明性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表3に示す。
(1)耐水性
前記で得られた評価用試料をガラス板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:2mm」に乾燥後の塗膜の厚さが50μmとなるようにアプリケーターで塗布し、80℃の温度で2時間乾燥させた。
次に、評価用試料が塗布された面の60°鏡面光沢(以下、温水浸漬前の光沢という)を光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕で測定し、さらに50℃温水中に1日間浸漬させた後、水中から取り出し、前記光沢計で当該ガラス板の塗装面の光沢(以下、温水浸漬後の光沢という)を測定し、
式:[光沢保持率(%)]=〔[温水浸漬後の光沢]÷[温水浸漬前の光沢]〕×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
〔評価基準〕
◎:光沢保持率が90%以上
○:光沢保持率が75%以上90%未満
△:光沢保持率が60%以上75%未満
×:光沢保持率が60%未満
(2)耐紫外線透過性
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、大気中にて23℃で1週間乾燥させることによって塗膜を形成させた。
前記で形成された塗膜上に以下の着色塗料を乾燥後の塗膜の厚さが100μmとなるようにアプリケーターで塗布し、大気中にて23℃にて1週間乾燥させた後、さらに当該スレート板の表面に形成されている塗膜上に前記で得られた評価用試料を乾燥後の塗膜の厚さが20μmとなるようにアプリケーターで塗布し、大気中にて23℃にて1週間乾燥させることにより、試験板を得た。
〔着色塗料〕
アクリル系樹脂エマルション〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットEMN−210E〕に、水10部、成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌し、以下に記載の白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が70KUになるように増粘剤〔(株)ADEKA、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、続けて水性カラーペースト〔エスケー化研(株)製、商品名:SK水性カラー(アカサビ、オーカおよびブルーの混色)〕5部を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、着色塗料を調製した。
〔白色ペースト〕
脱イオン水210部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、プロピレングリコール60部、酸化チタン〔石原産業(株)製、品番:CR−95〕1000部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000min-1にて60分間分散させることにより、白色ペーストを調製した。
前記で得られた試験板の側面および裏面をアルミニウムテープでシールし、その試験板の塗膜面の色差(L0、a0、b0)を色差計〔日本電色工業(株)製、商品名:分光式色差計SE−2000〕で測定した。次に、以下の紫外線照射試験条件で紫外線照射試験を800時間行なった後、当該試験板の塗膜面の色差(L1、a1、b1)を測定し、試験前後の色調変化(ΔE)を、式:
ΔE=[(L1−L0)2+(a1−a0)2+(b1−b0)2]1/2
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて耐紫外線透過性を評価した。
〔紫外線照射試験条件〕
・試験機:メタルウェザーメーター〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU−R5型〕
・照射:気温65℃、相対湿度50%の雰囲気中で4時間照射(照射強度:65mW/cm2)
・湿潤:気温65℃、相対湿度98%の雰囲気中で4時間湿潤
・水シャワー:湿潤前後にそれぞれ30秒間シャワー
〔評価基準〕
◎:ΔEが1未満
○:ΔEが1以上、3未満
△:ΔEが3以上、5未満
×:ΔEが5以上
(3)紫外線外観保持性
前記で得られた試験板の側面および裏面をアルミニウムテープでシールし、その試験板の塗膜面の60°鏡面光沢(以下、照射試験前の光沢という)を光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕で測定した。次に、前記紫外線照射試験条件と同様の条件で紫外線照射試験を1000時間行なった後、当該試験板の塗膜面の60°鏡面光沢(以下、照射試験後の光沢という)を前記光沢計で測定し、試験前後の光沢変化(外観維持率%)を、式:
[外観維持率(%)]=〔[照射試験後の光沢]÷[照射試験前の光沢]〕×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて紫外線外観保持性を評価した。
〔評価基準〕
◎:外観維持率が90%以上
○:外観維持率が75%以上90%未満
△:外観維持率が60%以上75%未満
×:外観維持率が60%未満
(4)凍結融解繰り返し安定性
前記で得られた試験板の側面をシリコーン系バスボンド〔コニシ(株)製〕でシールした後、凍結融解試験機を用い、大気中で−20℃に冷却することによって2時間凍結した後に20℃の水中に1時間浸漬する操作を1サイクルとし、100サイクルごとに拡大倍率が30倍のルーペを用いて当該試験板の塗膜面のクラックの発生状態を観察しながら前記操作を300サイクル行ない、以下の評価基準に基づいて凍結融解繰り返し安定性を評価した。
〔評価基準〕
◎:300サイクルでも問題なし
○:200サイクルで問題がないが、300サイクルでクラックが発生
△:100サイクルで問題がないが、200サイクルでクラックが発生
×:100サイクルでクラックが発生
(5)透明性
JIS K7105に準拠し、濁度計〔日本電色工業(株)製、品番:NDH300A〕を用いてポリエステルフィルムと塗膜の透明性(ヘイズ)の差を測定し、塗膜の透明性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:ヘイズの差が0.5%未満
〇:ヘイズの差が0.5%以上1%未満
△:ヘイズの差が1%以上2%未満
×:ヘイズの差が2%以上
(6)総合評価
次に、各物性において、◎の評価を20点、〇の評価を15点、△の評価を10点、×の評価を0点として総合得点(最高得点:100点)を集計し、その結果を表3の総合評価の欄に記載した。なお、評価に×が1つでも存在するものは、不合格である。
表3に示された結果から、各実施例で得られた樹脂エマルションは、いずれも、耐紫外線透過性および紫外線外観保持性に優れた塗膜を形成することがわかる。また、各実施例で得られた樹脂エマルションは、いずれも、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性にも優れた塗膜を形成することがわかる。したがって、各実施例で得られた樹脂エマルションは、いずれも、耐紫外線透過性、紫外線外観保持性、耐水性、凍結融解繰り返し安定性および透明性に総合的に優れた塗膜を形成することがわかる。