以下、本実施形態の眼科解析装置について図面を用いて説明する。なお、以下では、眼科解析装置として、OCTモーションコントラストデータ解析装置を一例として説明する。図1に示すOCTモーションコントラストデータ解析装置(以下、OCT解析装置)1は、OCTデバイス10によって取得されたモーションコントラストデータを解析処理する。OCTモーションコントラストデータは、例えば、被検眼の血管情報を含む。
OCT解析装置1は、例えば、制御部70を備える。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73、等で実現される。ROM72には、例えば、モーションコントラストデータを処理するための解析処理プログラム、OCTデバイス10の動作を制御してモーションコントラストデータを得るためのプログラム、初期値等が記憶される。RAM73は、例えば、各種情報を一時的に記憶する。
制御部70には、図1に示すように、例えば、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)74、操作部76、および表示部75等が電気的に接続されている。記憶部74は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ等を記憶部74として使用することができる。
操作部76には、検者による各種操作指示が入力される。操作部76は、入力された操作指示に応じた信号をCPU71に出力する。操作部76には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスを用いればよい。
表示部75は、装置1の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。例えば、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)のディスプレイを用いてもよい。表示部75は、例えば、OCTデバイス10によって取得されたOCTデータ、モーションコントラストデータ等を表示する。
なお、本実施例のOCT解析装置1には、例えば、OCTデバイス10が接続されている。なお、OCT解析装置1は、例えば、OCTデバイス10と同一の筐体に収納された一体的な構成であってもよいし、別々の構成であってもよい。制御部70は、接続されたOCTデバイス10からモーションコントラストデータを取得してもよい。制御部70は、OCTデバイス10によって取得されたモーションコントラストデータを記憶媒体を介して取得してもよい。
<OCTデバイス>
以下、図2に基づいてOCTデバイス10の概略を説明する。例えば、OCTデバイス10は、被検眼Eに測定光を照射し、その反射光と参照光とによって取得されたOCT信号を取得する。OCTデバイス10は、例えば、OCT光学系100を主に備える。
<OCT光学系>
OCT光学系100は、被検眼Eに測定光を照射し、その反射光と参照光との干渉信号を検出する。OCT光学系100は、例えば、測定光源102と、カップラー(光分割器)104と、測定光学系106と、参照光学系110と、検出器120等を主に備える。なお、OCT光学系の詳しい構成については、例えば、特開2015−131107号を参考にされたい。
OCT光学系100は、いわゆる光断層干渉計(OCT:Optical coherence tomography)の光学系である。OCT光学系100は、測定光源102から出射された光をカップラー104によって測定光(試料光)と参照光に分割する。分割された測定光は測定光学系106へ、参照光は参照光学系110へそれぞれ導光される。測定光は測定光学系106を介して被検眼Eの眼底Efに導かれる。その後、被検眼Eによって反射された測定光と,参照光との合成による干渉光を検出器120に受光させる。
測定光学系106は、例えば、走査部(例えば、光スキャナ)108を備える。走査部108は、例えば、眼底上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させるために設けられてもよい。例えば、CPU71は、設定された走査位置情報に基づいて走査部108の動作を制御し、検出器120によって検出された受光信号に基づいてOCT信号を取得する。参照光学系110は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。
検出器120は、測定光と参照光との干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。
なお、OCTデバイス10として、例えば、Spectral-domain OCT(SD−OCT)、Swept-source OCT(SS−OCT)、Time-domain OCT(TD−OCT)等が用いられてもよい。
<正面撮影光学系>
正面撮影光学系200は、例えば、被検眼Eの眼底Efを正面方向(例えば、測定光の光軸方向)から撮影し、眼底Efの正面画像を得る。正面撮影光学系200は、例えば、走査型レーザ検眼鏡(SLO)の装置構成であってもよいし(例えば、特開2015−66242号公報参照)、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい(特開2011−10944参照)。なお、正面撮影光学系200としては、OCT光学系100が兼用してもよく、検出器120からの検出信号に基づいて正面画像が取得されてもよい。
<固視標投影部>
固視標投影部300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。投影部300は、眼Eに呈示する固視標を有し、眼Eを誘導できる。例えば、固視標投影部300は、可視光を発する可視光源を有し、固視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これによって、視線方向が変更され、結果的にOCTデータの取得部位が変更される。
<モーションコントラストデータの取得>
本実施例のOCT解析装置1は、例えば、OCTデバイス10によって検出されたOCTデータを処理してモーションコントラストデータを取得してもよい。CPU71は、走査部108の駆動を制御し、眼底Ef上の領域A1において測定光を走査させる。なお、図3(a)において、z軸の方向は、測定光の光軸の方向とする。x軸の方向は、z軸に垂直であって被検者の左右方向とする。y軸の方向は、z軸に垂直であって被検者の上下方向とする。
例えば、CPU71は、領域A1において走査ラインSL1,SL2,・・・,SLnに沿ってx方向に測定光を走査させる。なお、測定光の光軸方向に交差する方向(例えば、x方向)に測定光を走査させることを「Bスキャン」と呼ぶ。そして、1回のBスキャンによって得られた二次元OCTデータを1フレームの二次元OCTデータとして説明する。CPU71は、例えば、xy方向に2次元的に測定光を走査させ、各走査位置においてz方向のAスキャン信号を得てもよい。
CPU71は、OCTデータに基づいてモーションコントラストデータを取得してもよい。モーションコントラストは、例えば、被検眼の血流、網膜組織の変化などを捉えた情報であってもよい。モーションコントラストデータを取得する場合、CPU71は、被検眼の同一位置に関して時間的に異なる少なくとも2つのOCTデータを取得する。例えば、各走査ラインにおいて、CPU71は、時間の異なる複数回のBスキャンを行い、時間の異なる複数のOCTデータをそれぞれ取得する。
例えば、図3(b)は、走査ラインSL1,SL2,・・・,SLnにおいて時間の異なる複数回のBスキャンを行った場合に取得されたOCT信号を示している。例えば、図3(b)は、走査ラインSL1を時間T11,T12,・・・,T1Nで走査し、走査ラインSL2を時間T21,T22,・・・,T2Nで走査し、走査ラインSLnを時間Tn1,Tn2,・・・,TnNで走査した場合を示している。例えば、CPU71は、各走査ラインにおいて、時間の異なる複数のOCTデータを取得し、そのOCTデータを記憶部74に記憶させる。
CPU71は、上記のように、同一位置に関して時間的に異なる複数のOCTデータを取得すると、OCTデータを処理してモーションコントラストデータを取得する。モーションコントラストを取得するためのOCTデータの演算方法としては、例えば、複素OCTデータの強度差もしくは振幅差を算出する方法、複素OCTデータの強度もしくは振幅の分散もしくは標準偏差を算出する方法(Speckle variance)、複素OCTデータの位相差もしくは分散を算出する方法、複素OCTデータのベクトル差分を算出する方法、複素OCT信号の位相差及びベクトル差分を掛け合わせる方法が挙げられる。なお、演算手法の一つとして、例えば、特開2015−131107号公報を参照されたい。
CPU71は、異なる走査ラインでのモーションコントラストデータを並べることによって、被検眼Eの3次元モーションコントラストデータを取得してもよい。なお、前述のように、モーションコントラストデータとしては、位相差に限らず、強度差、ベクトル差分等が取得されてもよい。
<モーションコントラストデータの解析処理>
上記のように取得されたモーションコントラストデータの解析処理の一例を、以下に説明する。
CPU71は、モーションコントラストデータに対する解析領域を設定し、設定された解析領域に関して解析処理を行うことによって少なくとも一つの解析結果を取得してもよい。この場合、CPU71は、モーションコントラストデータとは異なる画像データである第2の画像データ上の解析チャートの位置情報を基準として、モーションコントラストデータでの解析領域を設定してもよい。
以下、解析結果の一例として、モーションコントラストデータに対する解析処理によって被検眼の血管領域を抽出する場合について説明する。この場合、モーションコントラストデータに対する解析領域として血管解析領域が設定され、少なくとも血管解析領域において血管領域を抽出するための解析処理を行われてもよい。
図4は、血管領域を抽出する際の解析画面の一例を示す図である。CPU71は、例えば、解析画面において、モーションコントラスト表示領域(以下、MC表示領域)400、第2の画像表示領域500を表示部75の表示画面に表示するようにしてもよい。この場合、MC表示領域400、第2の画像表示領域500が同時に表示されてもよいし、別タイミングで表示されてもよい。
MC表示領域400は、モーションコントラストデータ(以下、MCデータ)402を表示するための領域であり、例えば、MCデータ402として、図4に示すように、正面MCデータ(エンフェイスMCデータともいう)が表示されてもよい。正面MCデータは、例えば、深さ方向の少なくとも一部の領域に関して3次元MCデータを取り出す(例えば、特願2015−121574号公報参照)ことによって取得されてもよい。例えば、MCデータにおける深さ方向での積算値又は最大値によって正面MCデータが生成されてもよい。もちろん、MCデータ402として、一次元MCデータ、二次元MCデータ、3次元MCデータが表示されてもよい。
CPU71は、MCデータ402上での血管解析領域を示す表示(例えば、グラフィック404)を、MCデータ402上に表示するようにしてもよい。血管解析領域を示す表示としては、図4のグラフィック404のように血管解析領域の外縁を示す枠表示であってもよいし、血管解析領域と非血管解析領域とが色分けされた表示であってもよい。
第2の画像表示領域500は、MCデータ402とは異なる画像データである第2の画像データ502を表示するための領域であってもよい。第2の画像表示領域には、例えば、正面画像、解析マップの少なくともいずれかが表示されてもよい。第2の画像データ502は、取得部位に関して、MCデータ402と少なくとも一部が重複する画像データが用いられる。例えば、MCデータ402が黄斑部位を中心とするデータの場合、黄斑に関する第2の画像データ502が表示され、MCデータ402が乳頭部位を中心とするデータの場合、乳頭に関する第2の画像データ502が表示されてもよい。
解析マップとしては、例えば、眼底に関する計測結果の二次元分布を示すマップであってもよい。この場合、例えば、計測値に応じて色分けされたカラーマップであってもよい。解析マップとしては、例えば、層厚を示す厚みマップ、被検眼の層厚と正常眼データベースに記憶された正常眼の層厚との比較結果を示す比較マップ、被検眼の層厚と正常眼データベースに記憶された正常眼の層厚とのずれを標準偏差にて示すデビエーションマップ、各検査日との厚みの差分を示す検査日比較厚み差分マップ、であってもよい。なお、層厚を求める場合、例えば、OCTデータに対する画像処理(例えば、セグメンテーション処理)によってOCTデータが層毎に分割処理され、層境界の間隔に基づいて各層の厚みが計測される。もちろん、層厚に限定されず、解析マップとしては、層厚に限定されず、例えば、眼底の曲率分布を示すマップであってよい。
正面画像は、例えば、正面撮影光学系200によって撮影された正面画像であってもよいし、OCT3次元データから生成される正面OCTデータ(エンフェイスOCTデータともいう)であってもよい。3次元OCTデータの場合、3次元モーションコントラストデータの基礎となる3次元OCTデータであってもよい。解析マップは、例えば、被検眼上の解析結果(例えば、眼底層の厚み、曲率など)を二次元的に表現するカラーマップであってもよい。図4では、第2の画像データ502として、正面画像に解析マップが重畳された画像が表示されている。
<解析チャート>
CPU71は、解析チャート504を、第2の画像データ502上に重畳して表示してもよい。この場合、第2の画像データ502は、3次元OCTデータに対する解析結果に基づく計測結果(例えば、解析マップの計測データ)と予め関連付けられてもよく(レジストレーション)、解析チャート504が設定された領域に対応する計測結果が出力される。この場合、第2の画像データ502が3次元OCTデータと関連付けされ、解析チャートが設定された領域に関して解析処理が実行されてもよく、解析結果に基づいて計測結果が出力されてもよい。この場合、3次元OCTデータは、MCデータの基礎となる3次元OCTデータであることが好ましい。なぜなら、MCデータと第2の画像データとの位置的な対応付け(レジストレーション)が容易かつ正確であるからである。
例えば、解析チャート504は、予め設定されたセクションでの計測結果の基本統計量を計測するための解析チャートであってもよく、セクション内での基本統計量が計測されてもよい。解析チャート504を形成するセクションは、一つの領域であってもよいし、複数のセクションであってもよい。複数のセクションの場合、分割されたセクション毎に基本統計量が計測されてもよい。基本統計量としては、代表値(平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値、など)、散布度(分散、標準偏差、変動係数)などであってもよい。
例えば、解析チャート504は、眼底の層厚の二次元的な分布につき、領域毎の平均を求めるチャートであってもよい。また、解析チャート504には、所定領域での層厚を数値にて表示する数値表示領域が付されてもよい。数値表示の代わりに、セクション単位での、計測結果に応じた色分けが行われてもよい。層厚データは、各層の合計であってもよいし、ある層(例えば、視神経線維層)での厚みであってもよい。
解析チャート504は任意に選択可能であり、厚みマップが黄斑マップの場合、解析チャート504として、例えば、検者は、GCHART(具体的には、半径方向に3分割されると共に、上下左右にそれぞれ分割されたチャート)、S/Iチャート、ETDRSから選択可能である。なお、厚みマップが乳頭マップの場合、解析チャートとして、例えば、全体チャート、上下チャート(2分割)、TSNIT(Temporal Superior Nasal Inferior Temporal)チャート(4分割)、ClockHourチャート(12分割)から選択可能である。
CPU71は、操作部76からの操作信号を受け付け、第2の画像データ502上での解析チャート504の表示位置を変更してもよい。これによって、第2の画像データ502上での解析チャート504による解析領域が変更される。CPU71は、解析チャート504の表示位置の変更に連動して、変更後の解析領域における解析結果を求めてもよい。なお、解析チャートの一部が、第2の画像データ502をはみ出してもよい。
例えば、検者は、操作部76を用いて解析チャート504を移動させることによって、解析チャートの中心504cを、眼底の基準部位(例えば、中心窩中心(図4中のM参照)、視神経乳頭中心、異常部位)に設定してもよい。これによって、例えば、眼底の基準部位を中心として、解析チャート504による計測結果が得られる。例えば、基準部位を中心とするチャート内全体の平均層厚、基準部位の層厚、基準部位を中心とする所定エリア内での平均層厚(例えば、1、2、3mm)等が計測されてもよい。これによって、眼底上の基準部位を中心とする計測結果が得られるので、臨床的にも有用である。
<解析チャートと血管解析領域の連動>
例えば、CPU71は、解析チャート504の位置情報を用いて、MCデータ上での血管領域の抽出を行うようにしてもよい。より詳細には、CPU71は、解析チャート504の移動に連動して、MCデータ上での血管解析領域の位置を移動させるようにしてもよい。この場合、CPU71は、血管解析領域を示す表示(例えば、グラフィック404)を、MCデータ402上で移動させてもよい。つまり、解析チャート504による解析領域の移動に連動して、血管解析領域の位置が変化する。
血管解析領域の移動の結果、MCデータ上での血管解析領域が変更される。そこで、CPU71は、血管解析領域の変更に連動して、変更後の血管解析領域における解析結果を求めてもよい(血管解析の手法については後述する)。
解析チャートと血管解析領域を連動させる場合、CPU71は、第2の画像データ502での解析チャート504の中心504cと、MCデータ402での血管解析領域の中心404cとが、解析上の同一位置に配置されるように、血管解析領域を移動させてもよい。つまり、CPU71は、MCデータ402において、第2の画像データ502における解析チャート504の中心位置に対応する位置に解析領域の中心を設定してもよい。この場合、第2の画像データ502とMCデータ402との間で位置的に関連付け(レジストレーション)されていることが好ましい。
ここで、例えば、検者が、解析チャート504の中心504cを、眼底の基準部位(例えば、中心窩中心、視神経乳頭中心、異常部位)に設定した場合、血管解析領域の中心が、眼底の基準部位に自動的に設定される。これによって、MCデータ402上で改めて解析領域を変更しなくとも、解析の基準位置を、解析チャート504による解析とMCデータ402に対する解析との間で一致させることができる。
<血管解析領域の設定>
血管解析領域は、検者が任意に設定できてもよい。例えば、CPU71は、操作部76からの操作信号を受け付け、MCデータ上での血管解析領域の位置を変更してもよい。この場合、血管解析領域を示す表示の位置を変更してもよい。CPU71は、血管解析領域の変更に応じて、変更後の血管解析領域における解析結果を求めてよい。この場合、CPU71は、血管解析領域の移動に連動して、第2の画像データ502上での解析チャート504の位置を移動させるようにしてもよい。この結果、解析チャート504の位置調整の手間を省くことができる。
なお、複数のモーションコントラストデータの解析を行う場合、第1のモーションコントラストデータにおける血管解析領域の位置の変更に連動して、第2のモーションコントラストデータにおける血管解析領域の位置の設定に用いてもよい。例えば、眼底の深さ方向に関して異なる複数のモーションコントラストデータの解析において適用可能である。また、CPU71は、第1のモーションコントラストデータ上で設定された第1のデータ領域を利用して、第2のモーションコントラストデータの中で第1のデータ領域に位置的に対応する第2のデータ領域でのアーチファクトを除去してもよい(例えば、第2のデータ領域の各画素の輝度において第1のデータ領域の各輝度の輝度を差し引く)。
血管解析領域の範囲(サイズ)が検者によって設定できてもよい。血管解析領域の範囲は、眼底上でのMCデータ402の取得領域に応じて設定可能であってもよい。取得領域としては、眼底の表面方向に関して異なる取得領域に応じて設定可能であってもよい。例えば、黄斑部位、乳頭部位に関して、範囲がそれぞれ設定されてもよい。
取得領域に応じた設定としては、眼底の深さ方向に関して異なる取得領域に応じて設定可能であってもよい。例えば、異なる血管層に関して、範囲がそれぞれ設定されてもよい。もちろん、血管層に限定されず、異なる網膜層(又は脈絡膜層)に関して、範囲がそれぞれ設定されてもよい。これによって、眼底上での取得領域に応じた血管解析が可能となる。正面MCデータが血管層毎に複数生成される場合、各血管層の正面MCデータでそれぞれ血管解析領域の範囲が予め設定可能であってもよい。これによって、各血管層に応じた血管解析が可能となる。
図5は設定画面の例であり、黄斑マップは、黄斑を中心とするモーションコントラストデータ、乳頭マップは、乳頭を中心とするモーションコントラストデータを示しており、マップ単位で、範囲(例えば、直径)が設定される。なお、範囲を設定する場合、例えば、CPU71は、操作部76からの操作信号を受け付けることによってグラフィック404の範囲(サイズ)を変更してもよい。また、血管解析領域の範囲は、解析チャート504と同じ範囲であってもよい。また、解析チャート504の範囲に基づいて、血管解析領域の範囲が設定されてもよい。
なお、上記説明においては、血管解析領域の変更パラメータとして、血管解析領域の位置、範囲(サイズ)を設定可能としたが、これに限定されない。例えば、血管解析領域の形状を設定可能であってもよい(例えば、円、楕円、矩形等)。この場合、眼底上でのMCデータ402の取得領域に応じて、血管解析領域の形状が設定可能であってもよい。
血管解析領域は、複数のセクションに分割された領域であってもよく、各セクションにおいて血管解析が実行されてもよい。各セクションの配置位置又は範囲(サイズ)のいずれかが異なる複数の血管解析領域が選択可能であってもよい。
この場合、眼底上でのMCデータ402の取得領域に応じて、血管解析領域の分割パターンが設定可能であってもよい。例えば、Superficial Capillary Plexusは、全体チャート(セクション一つ)、Intermediate Capillary PlexusはS/Iチャート(上下2分割セクション)であってもよい。この場合、血管解析領域の各セクションの配置位置及び範囲は、解析チャート504の各セクションの配置位置及び範囲と同一となるように設定されてもよい。これによって、解析チャート504の各セクションの解析結果と、血管解析領域での各セクションの解析結果とを対応付けて評価できる。よって、眼底の血管解析結果と、眼底の形態解析結果(例えば、層厚)との関連性を、セクション単位で確認できる。
<血管抽出処理、血管計測>
CPU71は、前述のように設定された血管解析領域にてMCデータ402を解析することによって、設定された血管解析領域での計測結果を表示部75上に表示してもよい。このようにすれば、解析チャートでの計測とMCデータ402に対する計測とをスムーズに行うことができる。なお、解析結果は、例えば、MC表示領域400上に数値406として表示されてもよい。
例えば、CPU71は、MCデータ上の血管解析領域として設定された領域に関して画像処理による解析を行うことによって、血管領域と非血管領域との判別処理を行う。判別処理によって、血管領域が抽出される。この場合、判別処理によって、非血管領域が抽出されてもよい。
判別処理としては、例えば、閾値処理であってもよく、閾値を満たす画素を血管領域とし、閾値を満たさない画素を非血管領域として判別してもよい。閾値自体は、検者によって任意に設定できてもよいし、固定値として予め決定されていてもよい。また、閾値は、MCデータ402に対する画像解析処理を経て設定されてもよい。
例えば、CPU71は、判別処理の結果に基づいて血管領域に関する計測を行うようにしてもよい。CPU71は、判別処理によって抽出された血管領域に基づいて、血管領域を計測してもよい。計測結果としては、例えば、血管密度、血管面積であってもよい。血管領域の密度としては、例えば、血管解析領域全体における血管領域の比率を求めることによって、単位面積当たりの血管の面積(血管量)が求められる。計測結果としては、これに限定されず、例えば、血管総量、血管蛇行度、血管の規則性等であってもよい。なお、血管解析領域が、複数のセクションに分割された場合、CPU71は、各セクション間での計測結果の比率、差分を求めてもよい。これによって、例えば、血管の対称性等を求めることができる。
<毛細血管の判別>
以下、毛細血管領域に関する計測結果を取得する処理について説明する。毛細血管領域に関する計測を行う場合、CPU71は、血管領域と非血管領域との判別処理後、さらに、血管領域として判別された領域に関して画像処理による解析を行うことによって、大血管と毛細血管との判別処理を行うようにしてもよい。判別処理によって、毛細血管領域が抽出される。
判別処理としては、例えば、血管径による判別処理であってもよく、血管径が閾値を下回る血管を毛細血管領域とし、血管径が閾値を超える血管を大血管領域として判別してもよい。これは、血管径に関して、毛細血管が細く、大血管が太いことを利用したものである。血管径を利用することで、血管径が細い毛細血管と、血管径が太い大血管とが的確に区別されうる。なお、血管径を求める場合、CPU71は、血管領域に含まれる各血管径を画像処理によって計測してもよい。例えば、CPU71は、MCデータから検出された血管領域に対し細線化を行い、細線化した線から元の血管径を計測してもよい。血管径の計測手法については、これに限定されず、例えば、血管壁間の距離(例えば、内膜間距離)を計測するようにしてもよい。
判別処理としては、例えば、血管の分岐数による判別処理であってもよく、血管の分岐数が閾値を超える血管を毛細血管領域とし、血管の分岐数が閾値を下回る血管を大血管領域として判別してもよい。これは、血管の分岐数に関して、毛細血管が多く、大血管が少ないことを利用したものである。分岐数を利用することで、比較的末端に位置する毛細血管と、比較的基端に位置する大血管とが的確に区別されうる。この場合、乳頭部からの血管の分岐数が基準であってもよいし、大血管の中でも上位の大きさを持つ大血管からの分岐数が基準であってもよい。血管の分岐数を求める場合、CPU71は、血管の分岐点を画像処理によって抽出し、各血管に関する分岐点の数を計測するようにしてもよい。なお、血管径と血管の分岐数を統合して判別処理を行うようにしてもよい。これにより、判別精度が向上される。
なお、上記説明では、大血管と毛細血管との判別処理として、血管径と分岐数を例にとって説明したが、これに限定されない。例えば、血管の血流速度の違いによる判別処理であってもよい。より詳細には、血流速度が閾値を下回る血管を毛細血管領域とし、血流速度が閾値を超える血管を大血管領域として判別してもよい。これは、血流速度に関して、毛細血管が遅く、大血管が速いことを利用できる。なお、血流速度は、例えば、MCデータにおける毛細血管と大血管との間での輝度の違いを利用して検出されてもよい。この場合、毛細血管が相対的に明るく画像化され、大血管が相対的に暗く画像化される。
なお、判別処理において血管径、分岐数等に関する閾値が用いられる場合、閾値自体は、検者によって任意に設定できてもよいし、固定値として予め決定されてもよい。固定値の場合、被検体の特性(例えば、年齢、性別のいずれか)に応じて閾値が変動されてもよい。つまり、大血管と毛細血管の判別基準は、検者によって設定されてもよい。なお、大血管と毛細血管の判別処理は、検者の操作を介して行われてもよく、検者がMCデータ上で毛細血管領域を指定していくことによって判別結果が取得されてもよい。もちろん、大血管を指定することで、結果として、大血管以外の毛細血管領域が特定されてもよい。
図6は、判別処理の結果の一例であり、図6に示すように、血管全体に関するMCデータ(上図)が、毛細血管に関するMCデータ(中図)と大血管に関するMCデータ(下図)に判別されてもよい。なお、上記処理において、毛細血管領域が抽出されればよく、大血管領域が抽出される必要は必ずしもない。
<大血管の影響を軽減した毛細血管の計測>
CPU71は、MCデータを解析して毛細血管領域に関する計測結果を取得してもよい。例えば、CPU71は、毛細血管よりも血管径の大きい大血管による計測結果への影響を軽減するための軽減処理を介して毛細血管領域に関する計測結果を取得してもよい。
軽減処理としては、例えば、一定の血管径よりも小さい血管領域に特定した解析処理であってもよい。また、CPU71は、MCデータから毛細血管領域を特定する処理を行うようにしてもよく、特定された毛細血管領域に基づいて毛細血管領域に関する計測結果を取得してもよい。また、CPU71は、血管領域において、大血管領域と毛細血管領域を判別して処理を行い、毛細血管領域として判別された領域に関して計測処理を行うようにしてもよい。つまり、上記判別結果が用いられてもよい。また、血管領域に囲まれた領域を特定し、特定された領域に基づいて毛細血管に関する計測結果を取得してもよい。また、MCデータと眼底正面画像の差分によって毛細血管を特定してもよい。眼底正面画像としては、眼底カメラ又はSLOによって取得された正面画像が用いられてもよい。
以下に、軽減処理の一例を以下に示す。例えば、CPU71は、判別処理の結果に基づいて毛細血管領域に関する計測を行うようにしてもよい。この場合、CPU71は、判別処理によって判別された毛細血管領域に基づいて、毛細血管の血管領域を計測してもよい。計測結果としては、例えば、毛細血管の血管密度、毛細血管の血管面積であってもよい。毛細血管の血管密度としては、例えば、血管解析領域全体における毛細血管領域の比率を求めることによって、単位面積当たりの毛細血管の面積(血管量)が求められる。計測結果としては、これに限定されず、例えば、毛細血管の総量、毛細血管の蛇行度、毛細血管の規則性等であってもよい。なお、血管解析領域が、複数のセクションに分割された場合、CPU71は、各セクション間での計測結果の比率、差分を求めてもよい。これによって、例えば、毛細血管の対称性等を求めることができる。
上記計測処理によれば、例えば、毛細血管に特定した計測が行われるので、大血管の影響が軽減され、毛細血管の計測をより的確に行うことができる。よって、例えば、毛細血管に係る眼疾患をより的確に評価できる。一方、大血管を含めた計測の場合、大血管は、血管領域全体において一定の比重を占めており、毛細血管に係る計測血管を埋没・変動させる要因となりうる。
なお、上記説明においては、大血管領域と毛細血管領域を判別し、毛細血管領域として判別された領域に対して計測結果を取得したが、これに限定されず、CPU71は、重み付け演算等によって大血管領域の比重を低減するように構築された演算処理を用いて、大血管領域と毛細血管領域を含めた計測処理を行ってもよい。この場合、CPU71は、大血管領域として判別された領域を、毛細血管と同程度に細線化する画像処理を行った後、大血管領域と毛細血管領域を含めた計測処理を行ってもよい。上記のような処理によっても、大血管の影響が軽減された計測結果が得られる。なお、上記説明においては、毛細血管領域に関する計測を行う例を示したが、これに限定されず、判別処理を介して抽出された大血管領域に関する計測を行うようにしてもよい。
<毛細血管の二次元計測、血管解析マップの取得>
CPU71は、毛細血管領域に関する計測結果を2次元的又は3次元的に求めてもよい。また、CPU71は、毛細血管領域に関する各位置での計測結果に応じて色分けされたカラーマップを出力してもよい。
例えば、CPU71は、毛細血管領域の各二次元位置に関して計測処理を行うようにしてもよい。この場合、例えば、毛細血管領域を形成する一画素毎あるいは複数の画素からなる画素群毎に計測処理を行ってもよい。なお、計測範囲としては、例えば、MCデータ上の一部に設定された設定範囲内であってもよいし、MCデータ全体であってもよい。MCデータの一部に設定される設定範囲としては、眼底の基準部位(例えば、中心窩、視神経乳頭中心、異常部位)を中心として設定されてもよい。設定範囲としては、予め設定された所定範囲であってもよいし、検者によって任意に設定された範囲であってもよい。また、設定範囲の形状が任意に変更されてもよい。
例えば、CPU71は、毛細血管領域を複数のセクションに分割し、分割された各セクションに関して計測処理を行うようにしてもよい(例えば、図7参照)。この場合、例えば、CPU71は、微小領域毎に計測結果を取得してもよい。より具体的には、256×256の二次元MCデータを、8×8の二次元MCデータ単位で分割することによって、各セクションでの計測結果を求めてもよい。また、CPU71は、比較的広い領域(例えば、2次元)毎に計測結果を取得してもよい。より具体的には、256×256の二次元MCデータを、縦横方向にそれぞれ分割する(例えば、縦横それぞれ3分割、縦横それぞれ4分割)ことによって、各セクションでの計測結果を求めてもよい。なお、毛細血管の計測処理において、定量的な計測値として取得される必要は必ずしもなく、計測結果を段階的に求める手法(例えば、グレード分け)であってもよい。
CPU71は、毛細血管領域に関する計測結果に基づいて、血管解析マップを取得するようにしてもよい(例えば、図7参照)。血管解析マップは、表示部75の画面上に表示されてもよい。
血管解析マップは、例えば、毛細血管に関する計測結果の二次元分布を示すマップであってもよい。血管解析マップは、例えば、各二次元位置での計測値に応じて色分けされたカラーマップであってもよい。この場合、CPU71は、各二次元位置での計測値に応じた表示色を決定し、決定された表示色にて各位置を表示してもよい。なお、表示色については、計測結果の大小に応じて予め設定された表示色であってもよいし、計測結果に応じて検者が任意に設定してもよい。より詳細には、血管解析マップは、例えば、各セクションでの計測結果に応じて色分けされたカラーマップであってもよい。CPU71は、各セクションに関する計測結果に応じた表示色を決定し、決定された表示色にて各セクションを表示してもよい。
なお、血管解析マップにおいて、大血管に関して色分け表示が行われないようにしてもよい。また、毛細血管の計測結果に応じて色分けとは異なる色にて大血管に関する計測結果が表示されてもよい。これによって、検者は、毛細血管と大血管が判別されているので、毛細血管の評価を的確に行うことができる。また、血管解析マップは、MCデータに重畳して表示されてもよく、この場合、MCデータの大血管上にはマップによる色分けが重畳表示されない、或いは毛細血管領域とは判別可能な色にて重畳表示が行われてもよい。
なお、血管解析マップの種類としては、例えば、基本マップ、比較マップ、差分マップ、検査日差分マップの少なくともいずれかであってもよい。より詳細には、基本マップは、被検眼の毛細血管に関する計測値の大小が二次元的に表現された基本マップ(例えば、血管密度マップ)であってもよい。比較マップは、毛細血管に関する被検眼の計測値と、正常眼データベースに記憶された毛細血管に関する正常眼データとの比較結果を示す比較マップであってもよい。差分マップは、毛細血管に関する被検眼の計測値と、血管情報データベースに記憶された毛細血管に関する正常眼データとのずれを示すデビエーションマップ(差分マップ)であってもよい。検査日差分マップは、毛細血管に関する被検眼の計測値に関して異なる検査日との差分を示す検査日差分マップであってもよい。
血管解析マップを得る場合、例えば、MCデータが層毎に分割処理され、少なくとも一つの層に関して血管解析マップが取得されてもよい。この場合、層領域が異なる複数の血管解析マップが取得されてもよい。また、複数の層領域での血管解析マップが取得されてもよい。なお、層毎の分割処理は、MCデータに対する画像処理(例えば、セグメンテーション)によって行ってもよいし、MCデータの基礎となるOCTデータに対する画像処理(例えば、セグメンテーション)の結果をMCデータに適用してもよい。
なお、血管解析マップを表示する場合、例えば、CPU71は、血管解析マップと、血管解析マップの基礎となるMCデータ(例えば、2次元MCデータ)とを表示部75の同一画面上に同時に表示してもよい(例えば、図8参照)。
例えば、CPU71は、得られた血管解析マップを、被検眼のMCデータに重畳させてもよい。これによって、MCデータ上での血管の消失領域を容易に確認できる。なお、血管解析マップを重畳させる場合、CPU71は、正常眼データにおける正常範囲を超えた領域を、異常領域として強調する表示を行うようにしてもよい。例えば、CPU71は、得られた血管解析マップを、被検眼の正面画像に重畳させてもよい。眼底正面画像としては、赤外正面画像、カラー正面画像、OCTデータに基づく正面画像であってもよい。
なお、CPU71は、計測部位に応じて血管解析マップを変更してもよい。この場合、出力されるマップが、計測部位に応じて予め設定されていてもよいし、検者が任意に設定できてもよい。
例えば、計測部位に応じて、血管解析マップにおけるセクションの数を変更してもよい。より詳細には、例えば、黄斑部位のMCデータについては、分割するセクション数が比較的多く、乳頭部位のMCデータについては、分割するセクション数が比較的に少なく設定されてもよい。これは、黄斑部については、詳細な計測結果が求められ、乳頭部については、全体的な計測結果が求められる可能性があるからである。また、計測部位に応じて、血管解析マップの基礎となるMCデータの深さ領域を変更してもよい。より詳細には、例えば、黄斑部位のMCデータについては、網膜の手前の領域(例えば、NFL〜IPL)に関する血管解析マップが設定され、乳頭部位については、網膜全体の領域(例えば、NFL〜RPE)に関する血管解析マップが設定されてもよい。
また、CPU71は、解析疾患に応じて血管解析マップを変更してもよい。この場合、出力されるマップが、計測部位に応じて予め設定されていてもよいし、検者が任意に設定できてもよい。
例えば、解析疾患に応じて、血管解析マップにおけるセクションの数、セクションの配置位置、血管解析マップの基礎となるMCデータの深さ領域の少なくともいずれかを変更してもよい。例えば、糖尿病性網膜症の場合、網膜上において比較的に浅い領域(手前側)において虚血が生じる。
一方、BRVO(Branch retinal vein occlusion: 網膜静脈分枝閉塞症)、CRVO (Central retinal vein occlusion: 網膜中心静脈閉塞症)、BRAO (Branch retinal artery occlusion: 網膜動脈分枝閉塞症)、CRAO (Central retinal artery occlusion: 網膜中心動脈閉塞症) の場合、網膜全体において虚血が生じる。そこで、病変に応じてMCデータの深さ領域を変更することで、病変の評価を好適に行うことができる。
また、血管解析マップにおけるセクションの数については、例えば、CRVOの場合、乳頭辺りが起因とされるので、正面方向(深さ方向と直交する方向)に関して眼底全体に均一にセクションが設定されてもよい。一方、BRVOの場合、上耳側に発症するとされているので、上耳側に関してセクションの数が多く、他の領域に関してセクションの数を少なくしてもよい。つまり、病変に応じて、セクションの数、セクションの配置位置の少なくともいずれかを変更してもよい。
<血管密度マップの例>
以下に、血管解析マップの一例として、毛細血管に関する血管密度の二次元分布を示す血管密度マップを示す(図7、図9参照)。
図7のマップは、各セクションでの計測値(血管密度)に応じて色分けされたカラーマップの一例である。例えば、CPU71は、予め設定されたセクション毎の計測値に応じたカラーマップを生成し、生成されたカラーマップを表示部75上に表示してもよい。計測値に応じて表示色を変えることで、血管の消失を容易に把握できる。
さらに、上記のようにセクション単位でカラーマップを表示する場合、セクションの形状、数の少なくともいずれかが任意に変更されてもよい。これによって、疾患に応じた密度表示を行うようにしてもよい。
なお、CPU71は、得られた血管密度マップと同一範囲に関して、血管情報データベースに記憶された正常眼の血管密度分布データと、被検眼の血管密度分布データとを比較してもよく、比較結果の表示によって、検者は、正常眼に対する被検眼の血管の消失状態を容易に確認できる。比較結果を表示する場合、正常眼データと被検眼データとの差分マップが有用である。また、CPU71は、比較結果として、正常眼データに基づく血管密度マップと、被検眼データに基づく血管密度マップとを表示部75上に同時に表示してもよい。
また、CPU71は、得られた血管密度マップと同一範囲に関して、血管情報データベースに記憶された被検眼の過去の血管密度分布データと、被検眼の現在の血管密度分布データとを比較してもよく、比較結果の表示によって、検者は、血管の消失状態に関する経時的な変化を容易に確認できる。比較結果を表示する場合、過去の被検眼データと現在の被検眼データとの差分マップが有用である。また、CPU71は、比較結果として、過去の被検眼データに基づく血管密度マップと、現在の被検眼データに基づく血管密度マップとを表示部75上に同時に表示してもよい。
なお、血管解析マップの表示手法として、例えば、CPU71は、図9に示すように、MCデータにおける血管領域に基づいて血管で囲まれた領域を特定することによって、結果的に、毛細血管に関する計測結果の二次元分布を求めてもよい。
この場合、CPU71は、例えば、各血管の連結性を画像処理によって判定し、非血管領域の周囲が血管によって囲まれているか否かによって、血管で囲まれた領域を特定してもよい。この場合、必ずしも非血管領域が360度囲まれている必要はなく、一定量囲まれた状態であれば、血管で囲まれた領域であると判別してもよい。
より詳細には、CPU71は、血管で囲まれた領域の面積を算出してもよい。CPU71は、各領域において、算出された面積に応じた色分け表示を行うようにしてもよい。色分けとしては、少なくとも2色が用いられる。例えば、図9のように、狭い領域が第1の色(例えば、赤)で表示され、広い領域が第2の色(例えば、緑)で表示されてもよい。毛細血管が消失するにつれ、第1の色の領域が減少し第2の色の領域が増えるので、これらの色分布によって、毛細血管の消失を容易に把握できる。このような表示手法によれば、血管自体は面積としてカウントされないので、結果として、大血管による影響が軽減され、毛細血管の消失状態を的確に把握できる。
なお、毛細血管の消失状態を求める場合、非血管領域のうち、最も近い血管からの距離が閾値以上である部分を色分けしてもよい。
なお、上記説明においては、血管密度マップを例として説明したが、これに限定されず、上記のような表示形態においては、他の血管解析マップにおいても適用可能であることはいうまでもない。
<血管情報データベース>
記憶部74には、血管情報データベースが記憶されてもよい。血管情報データベースに記憶されたデータは、例えば、取得された被検眼の計測結果との比較に用いられてもよく、血管に関する計測結果である血管計測結果(例えば、血管密度、血管面積、毛細血管の総量、毛細血管の蛇行度、毛細血管の規則性等)の少なくともいずれかがデータベースとして記憶される。
血管情報データベースとしては、例えば、正常眼データベースであってもよく、正常眼の血管計測結果が記憶される。正常眼データベースは、例えば、実際に計測された被検眼の計測結果との比較に用いられてもよい。
正常眼データベースは、多数の正常眼の血管計測結果を統合することによって作成されてもよく、例えば、多数の正常眼の血管計測結果から取得された統計的な計測値が記憶されてもよい。この場合、例えば、多数の眼についての血管計測結果を取得し、正常眼の血管計測結果を統合することによって、正常眼データベースが構築されてもよい。なお、上記のような正常眼データベースは、人種、性別、眼特性(例えば、眼軸長)毎に構築され、記憶部74に記憶されてもよい。
血管情報データベースとしては、例えば、経過観察(フォローアップ)用データベースであってもよく、各被検眼の過去の血管計測結果が記憶される。経過観察用データベースは、例えば、新たに取得された被検眼の計測結果との比較に用いられてもよいし、異なる時期に取得された過去の計測結果の比較に用いられてもよい。経過観察用データベースとしては、例えば、経過観察において取得される計測結果が計測時期(例えば、日時)と共に、被検者毎に記憶されてもよい。
上記のような血管情報データベースにおいて、大血管の影響を軽減した状態で計測結果を取得しデータベース化することによって、大血管の影響が軽減されたデータベースが構築される。このような血管情報データベースを活用することによって、被検眼の毛細血管の解析をより的確に行うことができる。
<深さ方向を考慮した血管計測>
血管計測を行う場合、CPU71は、MCデータを解析して、特定の深さ領域での血管領域に関する計測結果を取得してもよい。さらに、CPU71は、深さ領域の計測範囲に基づいて計測結果を補正してもよい。特定の深さ領域での血管領域としては、所定の層(網膜層全体でもよいし、脈絡膜全体でもよい)であってもよいし、3次元データにおける一部の深さ領域が抽出されたデータであってもよい。
例えば、CPU71は、深さ方向における計測範囲を考慮して、血管領域に関する計測を行うようにしてもよい。例えば、CPU71は、MCデータに基づいて算出された血管領域の計測結果を、深さ方向における計測範囲に基づいて補正してもよい。例えば、正面MCデータに基づいて算出された血管領域に関する二次元的な計測結果を、深さ方向における計測範囲に基づいて補正してもよい。
深さ方向における計測範囲としては、例えば、図10に示すように、血管計測に用いた正面MCデータに対応する深さ方向での計測範囲D1の大きさ(サイズ)であってもよい。この場合、CPU71は、正面MCデータに基づいて算出された血管領域の計測結果を、計測範囲D1の大きさによって補正してもよい。
特定の深さ領域に関するMCデータとしては、特定の深さ領域での3次元モーションコントラストデータに基づくOCT正面モーションコントラストデータであってもよく、CPU71は、深さ領域の計測範囲に基づいて、特定の深さ領域での血管領域に関する二次元的な計測結果を補正してもよい。
より詳細には、3次元MCデータ全体から深さ方向の部分領域に関する3次元MCデータを選択することによって、正面MCデータが生成される場合、CPU71は、深さ計測範囲として、当該部分領域の深さ方向での大きさを得るようにしてもよい。
ここで、CPU71は、基準となる計測範囲の大きさよりも計測範囲D1が大きい場合、基準に対して深さ方向における計測範囲が増分するので、増分に応じて計測結果を低く算出してもよい。一方、CPU71は、基準となる計測範囲の大きさよりも計測範囲D1が小さい場合、基準眼に対して深さ方向における計測範囲が減少するので、減少分に応じて計測結果を高く算出してもよい。
上記補正によれば、深さ方向での計測範囲の大きさの違いによる計測結果の変動が補正され、血管領域をより定量的に計測できる。例えば、血管の消失状態の評価において、正面MCデータのみによって計測値を得る場合、深さ方向の情報が考慮されない。したがって、血管に関する計測値が一定の場合、計測範囲の大きさが違っても、同じ結果として出力されてしまうので、血管密度等の評価において改善の余地がある。上記構成によれば、計測範囲の違いを考慮した計測が可能であり、血管密度等をより的確に求めることができる。なお、計測結果が取得される各二次元位置(例えば、セクション)にて深さ方向における計測範囲が取得され、二次元位置毎に補正が行われてもよい。
特定の深さ領域に関するMCデータとしては、特定の層領域に関するOCT正面モーションコントラストデータであってもよく、CPU71は、層領域の厚みデータに基づいて、特定の深さ領域での血管領域に関する二次元的な計測結果を補正してもよい。
より詳細には、正面MCデータが、所定の網膜層(例えば、視神経線維層:NFL)での3次元MCデータに基づいて取得された場合、CPU71は、例えば、被検眼における所定の網膜層の厚みデータを取得し、取得された厚みデータによって計測結果を補正してもよい。
ここで、CPU71は、基準の厚みデータ(例えば、血管情報データベースの正常眼データに対応する所定網膜層の計測値)に対して被検眼の網膜厚が大きい場合、基準眼でのデータに対して所定網膜層の体積が増分するので、厚みの増分に応じて計測結果を低く算出してもよい。一方、CPU71は、基準の厚みデータに対して被検眼の網膜厚が小さい場合、基準眼でのデータに対して所定網膜層の体積が減少するので、厚みの増分に応じて計測結果を高く算出してもよい。なお、所定網膜層の厚みデータは、MCデータの基礎となるOCTデータに基づいて取得されてもよいし、3次元MCデータにおける血管網間の距離に基づいて取得されてもよい。
上記補正によれば、網膜層の厚みの違いによる計測結果の変動が補正され、血管領域をより定量的に計測できる。例えば、血管の消失状態の評価において、正面MCデータのみによって計測値を得る場合、深さ方向の情報が考慮されない。したがって、血管に関する計測値が一定の場合、網膜厚が違っても、同じ結果として出力されてしまうので、血管密度等の評価において改善の余地がある。上記構成によれば、網膜厚の違いを考慮した計測が可能であり、血管密度等をより的確に求めることができる。
例えば、ある眼疾患の初期段階等において、血管密度の減少よりも組織の減少の方が早いような場合、上記補正を行うことで、血管密度結果が増加する方向となる。逆に、例えば、ある眼疾患の初期段階等において、組織の減少よりも血管密度の減少の方が早いような場合、上記補正を行うことで、血管密度結果が減少する方向となる。この場合、補正された計測結果を用いて経過観察を行うことで、眼疾患の早期発見につながる可能性がありうる。
なお、上記説明においては、所定の網膜層としてNFLを例としたが、これに限定されず、CPU71は、眼底の層領域(例えば、他の網膜層又は脈絡膜層)において、上記実施例を適用してもよい。層領域としては、単一の層からなる領域であってもよいし、複数の層からなる領域であってもよい。
なお、上記説明においては、深さ方向での計測範囲を考慮して計測結果を補正したが、これに限定されない。例えば、CPU71は、3次元MCデータに基づいて3次元的な計測を行うようにしてもよい。
より詳細には、CPU71は、血管計測結果(例えば、血管密度)の分布を3次元的に求めるようにしてもよい。この場合、CPU71は、3次元MCデータを処理して所定の深さ領域(例えば、所定の網膜層)における血管領域を3次元的に抽出すると共に、抽出された血管領域の計測結果を3次元的に求めてもよい。CPU71は、抽出された3次元的な血管領域を複数のブロックに分割し、分割された各ブロックに関して計測処理を行うようにしてもよい。この場合、例えば、CPU71は、微小領域毎に計測結果を取得してもよい。より具体的には、256×256×256の三次元MCデータを、8×8×8の三次元MCデータ単位で分割することによって、各ブロックでの計測結果を求めてもよい(例えば、図11参照)。また、CPU71は、比較的広い領域毎に計測結果を取得してもよい。より具体的には、256×256×256の三次元MCデータを、3次元方向にそれぞれ分割(例えば、3〜10分割)することによって、各ブロックでの計測結果を求めてもよい。
3次元的に求められる結果としては、例えば、血管領域の体積、血管領域の3次元的な血管密度分布であってもよい。3次元的な血管密度分布を求める場合、CPU71は、3次元MCデータを処理して所定の深さ領域における血管領域の体積を求めると共に、所定の深さ領域における3次元MCデータの体積を血管領域の体積で割ることによって、血管領域の3次元的な密度を求めることができる。
CPU71は、3次元的に求められた計測結果の分布をカラーマップとして表示してもよい。例えば、CPU71は、前述のように求められる各ブロックでの計測結果に応じて色分けされた3次元画像を表示してもよい。また、CPU71は、血管で囲まれた領域を3次元的に計測することによって、結果的に、毛細血管に関する計測結果の3次元分布を求めてもよい。この場合、CPU71は、例えば、各血管の連結性を画像処理によって判定し、非血管領域の周囲が血管によって囲まれているか否かによって、血管で囲まれた領域を抽出してもよい。この場合、必ずしも非血管領域が3次元方向において360度囲まれている必要はなく、一定量囲まれた状態であれば、血管で囲まれた領域であると判別してもよい。より詳細には、CPU71は、血管で囲まれた領域の体積を算出してもよい。CPU71は、各領域において、算出された体積に応じた色分け表示を行うようにしてもよい。
<OCT血管解析マップとOCT形態解析マップの表示>
CPU71は、OCTによって取得されたMCデータに基づく血管解析マップと、眼科OCTデータに基づく形態解析マップと、をモニタ上に同時に表示してもよい。
例えば、被検眼の血管計測結果に関する血管解析マップを表示する場合、CPU71は、被検眼の形態計測結果に関する形態解析マップ(例えば、網膜厚に関するマップ)と同時に表示するようにしてもよい(例えば、図12参照)。例えば、CPU71は、血管解析マップと形態解析マップとを並列して表示してもよい。
例えば、CPU71は、眼底における共通の層領域に関して血管解析マップと形態解析マップを同時に表示してもよい。この場合、深さ方向に関して共通する領域に関して、被検眼の血管情報と形態情報との相関性を容易に求めることができる。
例えば、所定の網膜層の厚みに関する形態解析マップにおいて、網膜層の厚みが薄い場合、血管解析マップを同時に確認することによって、厚み減少が、血管の減少によるものか、あるいは他の要因によるものか否かを容易に把握できる。この場合、CPU71は、計測時期が異なる血管解析マップと形態解析マップとを取得しておき、血管解析マップと形態解析マップとを時系列に同時に表示するようにしてもよい。
なお、血管解析マップの種類としては、例えば、前述のように、基本マップ、比較マップ、差分マップ、検査日差分マップが考えられる。また、形態解析マップとしては、例えば、眼底に関する形態計測結果の二次元分布を示すマップであってもよい。この場合、例えば、例えば、計測値に応じて色分けされたカラーマップであってもよい。解析マップとしては、例えば、層厚を示す厚みマップ(基本マップ)、被検眼の層厚と正常眼データベースに記憶された正常眼の層厚との比較結果を示す比較マップ、被検眼の層厚と正常眼データベースに記憶された正常眼の層厚とのずれを標準偏差にて示す差分マップ(デビエーションマップ)、各検査日との厚みの差分を示す検査日比較厚み差分マップ、であってもよい。
層厚を求める場合、例えば、OCTデータに対する画像処理(例えば、セグメンテーション処理)によってOCTデータが層毎に分割処理され、層境界の間隔に基づいて各層の厚みが計測されてもよい。もちろん、形態計測結果としては、層厚に限定されない。また、解析マップとしては、層厚マップに限定されず、例えば、眼底の曲率分布を示すマップであってよい。
ここで、血管解析マップが形態解析マップと共に表示部75に同時に表示される場合、同じ特性のマップを同時に表示することによって、形態情報と血管情報での比較を目的に応じてより的確に行うことができる。例えば、血管解析マップの基本マップと、形態解析マップの基本マップとが同時に表示されてもよい。同様に、各比較マップが同時に表示されてもよいし、各差分マップが同時に表示されてもよいし、各検査日差分マップが同時に表示されてもよい。
なお、形態解析マップは、眼底正面画像にカラーマップ(例えば、層厚に関するマップ)が重畳された表示形式であってもよい。眼底正面画像は、眼底カメラ、SLOによって取得されてもよいし、OCTデータに基づいて取得されたOCT正面画像であってもよい。また、正面MC画像にカラーマップ(例えば、層厚に関するマップ)が重畳された表示形式であってもよい。
また、血管解析マップと形態解析マップとが同時に表示される場合、各マップは、正面MCデータにカラーマップが重畳された形式であってもよい。このような表示によって、MCデータの画像に対し、血管解析結果と形態解析血管の相関を容易に求めることができる。この場合、MCデータと、血管解析マップと、形態解析マップとが同時に表示されてもよい。また、各マップは、眼底正面画像にカラーマップが重畳された形式であってもよい。このような表示によって、眼底正面画像に対し、血管解析結果と形態解析血管の相関を容易に求めることができる。眼底正面画像としては、赤外正面画像、カラー正面画像、OCTデータに基づく正面画像であってもよい。
<血管計測結果と形態計測結果の統合>
CPU71は、被検眼の血管計測結果と、被検眼の形態計測結果とを統合した計測処理を行うようにしてもよい。二次元分布として各計測結果が取得される場合、例えば、CPU71は、統合計測処理の結果を、単一のカラーマップ又は解析チャートとして表示するようにしてもよい(例えば、図13参照)。CPU71は、被検眼の血管計測結果と、被検眼の形態計測結果とを統合した統合値を求めても良い。
統合計測を行う場合、CPU71は、血管計測結果と形態計測結果の各計測値の代表値(例えば、平均値、合算値)を求めてもよいし、各計測値との間で一定の重み付けを行う重みづけ演算であってもよい。この場合、各計測値の単位が一致しない場合(例えば、密度と厚み)、所定の統合パラメータが設定され、血管計測結果と形態計測結果と間で、任意の係数が設定されてもよい。
また、上記と同様に、CPU71は、被検眼の視野計測の結果と、被検眼の血管計測の結果とを、同一画面上に同時に表示してもよい。また、CPU71は、被検眼の視野計測の結果と、被検眼の血管計測の結果とを統合した計測処理を行い、統合計測結果を表示するようにしてもよい。
もちろん、CPU71は、被検眼の形態計測の結果と、被検眼の視野計測の結果と、被検眼の血管計測の結果とを、同一画面上に同時に表示してもよい。また、CPU71は、被検眼の形態計測の結果と、被検眼の視野計測の結果と、被検眼の血管計測の結果とを統合した計測処理を行い、統合計測結果を表示するようにしてもよい。
<血管解析チャート>
なお、上記説明によれば、計測結果を血管解析マップとして表示したが、これに限定されず、血管解析チャートとして出力してもよい。
例えば、血管解析チャートは、予め設定されたセクションでの血管計測結果の基本統計量を計測するための血管解析チャートであってもよく、セクション内での基本統計量が計測されてもよい。血管解析チャートを形成するセクションは、一つの領域であってもよいし、複数のセクションであってもよい。複数のセクションの場合、分割されたセクション毎に基本統計量が計測されてもよい。基本統計量としては、代表値(平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値、など)、散布度(分散、標準偏差、変動係数)などであってもよい。
例えば、血管解析チャートは、血管計測結果の二次元的な分布につき、領域毎の平均を求めるチャートであってもよい。血管解析チャートには、所定領域での血管計測結果を数値にて表示する数値表示領域が付されてもよい。
<経過観察>
なお、CPU71は、MCデータに基づく血管計測結果を時系列データを記憶部74から取得し、取得された血管計測結果を経時的に表示するようにしてもよい(例えば、図14参照)。例えば、CPU71は、血管計測結果の経時変化を示すグラフを表示してもよいし、取得時期が異なる複数の血管解析マップを時系列で並べるようにしてもよい。取得時期が異なる複数の血管解析マップをタイムラプス画像として表示してもよい。CPU71は、血管計測結果に関して、第1の取得時期と第2の取得時期との間の差分を求めるようにしてもよい。CPU71は、血管計測結果の二次元分布において第1の取得時期と第2の取得時期との間の差分を求めることによって、二次元分布の差分マップを表示してもよい。
なお、上記説明においては、大血管の影響を軽減して計測を行う点について説明したが、<血管解析マップ>、<血管密度マップ>、<血管情報データベース>、<深さ方向を考慮した血管計測>、<血管解析マップと厚み解析マップの表示>、<血管計測結果と形態計測結果の統合>、<血管解析チャート>、<経過観察>等の項目、また以下に説明される項目、あるいは、他の部分で示した技術内容につき、大血管を含めた計測においても適用できる手法について実施可能である。もちろん、大血管に特定した血管計測を行うようにしてもよい。同様に、他の項目についても、並列的に実施されてもよいし、独立して実施されてもよい。
なお、上記説明においては、OCTによって取得されたMCデータを例として説明したが、被検眼の眼底正面画像を撮像する眼底撮像装置(例えば、眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡(SLO))によって取得される眼底正面画像に含まれる眼底血管の計測においても、上記実施形態の適用は可能である。この場合、眼底正面画像としては、被検眼からの反射光による正面画像データ(例えば、カラー眼底画像)、被検眼からの蛍光による正面画像データの少なくともいずれかであってもよい。また、OCTモーションコントラストデータとこれらの組み合わせた解析が行われてもよい。
なお、血管領域と非血管領域との判別処理を自動的に行う場合、CPU71は、MCデータ402の輝度値から二値化処理(例えば、判別分析法)を適用することによって、血管・非血管領域を定めてもよい。また、血管解析領域が複数のセクションに分割されている場合、各セクションに対応する領域単位で閾値が設定されてもよいし、血管解析領域全体で閾値が設定されてもよい。
<血管情報のMCデータへの展開>
CPU71は、MCデータに含まれる血管領域に関する血管情報を取得してもよい。さらに、CPU71は、取得された血管情報を、MCデータに含まれる血管領域に対して付与してもよい。この場合、血管領域に含まれる少なくとも一つの血管に関して血管情報が取得されればよく、MCデータに含まれる一本の血管に関して血管情報が取得されて血管情報が付与されてもよいし、MCデータに含まれる複数の血管に関して血管情報がそれぞれ取得され、血管情報がそれぞれ付与されてもよい。また、血管情報は、血管毎の血管情報を含んでもよく、各血管の位置情報と血管情報がセットで取得されてもよい。
血管情報に関し、例えば、CPU71は、MCデータに含まれる血管領域に関する動静脈情報を、血管情報として取得してもよい。さらに、CPU71は、MCデータに含まれる血管領域に対して動静脈情報を付与してもよい(例えば、図15参照)。つまり、血管情報は、血管の機能に関する情報であってもよい。
また、例えば、CPU71は、MCデータに含まれる血管領域に関する出血情報を、血管情報として取得してもよい。さらに、CPU71は、MCデータに含まれる血管領域に対して出血情報を付与してもよい。
血管情報を得る場合、CPU71は、MCデータとは異なるデータから血管情報を取得してもよい。これによって、例えば、MCデータのみでは検出が難しい血管情報がMCデータに付与され、検者による血管評価がより良好に行われる。異なるデータの場合、MCデータの少なくとも一部に関して、取得領域が共通するデータであってもよい。また、異なるデータにおいて、血管情報に関する分布データであってもよく、MCデータに対してレジストレーションされてもよい。
例えば、CPU71は、血管情報を、OCTによって取得されたOCTデータ又はドップラーOCTデータから取得してもよい。OCTデータ又はドップラーOCTデータは、MCデータを取得するOCTデバイスによって取得されたデータであってもよいし、MCデータを取得するOCTデバイスとは異なるOCTデバイスによって取得されたデータであってもよい。CPU71は、MCデータ自体から血管情報を取得してもよく、例えば、MCデータを取得するOCTデバイスとして、例えば、ドップラ―OCTが利用あれてもよい。
また、CPU71は、OCTとは異なるモダリティ(撮影部)によって撮影された画像データから取得してもよい。異なるモダリティとしては、血管情報を取得可能であればよく、例えば、眼底カメラ、SLO、LSFG(レーザスペックルフローグラフィー)であってもよい。
血管情報としては、動静脈情報、出血情報に限定されず、血流速度情報、層位置情報、色情報、偏光特性情報、走行方向情報、硬さ情報、血管の内壁と外壁の比率情報等が取得されてもよい。つまり、血管情報としては、例えば、MCデータに含まれる血管領域の特性に関する情報であってもよい。血流速度情報は、例えば、ドップラーOCTによって取得されてもよい。層位置情報は、例えば、OCTデータ又はMCデータによって取得されてもよい。色情報は、例えば、眼底カメラ又は分光OCTによって取得されてもよい。偏光特性情報は、例えば、PS−OCTによって取得されてもよい。
MCデータを出力する際、例えば、CPU71は、取得された血管情報に基づいてMCデータに対して画像処理を施し、血管情報を含むMCデータを表示部75に表示してもよい。なお、表示部75への表示に限定されず、血管情報を含むMCデータが印刷されてもよいし、外部サーバーに出力されてもよい。なお、MCデータは、例えば、正面MCデータであってもよいし、3次元MCデータであってもよいし、2次元MCデータであってもよい。この場合、MCデータに対して予め付与された血管情報に基づいて、血管情報を含むMCデータを表示部75に表示してもよい。また、取得された血管情報に関する表示を、MCデータに付与してもよい。
MCデータを解析して血管領域に関する計測結果を取得する際、例えば、CPU71は、取得された血管情報を用いて、血管領域に関する計測結果を取得してもよい。この場合、CPU71は、計測結果を2次元的又は3次元的に求めてもよい。計測結果は、例えば、解析マップとして表示されてもよいし、解析チャートとして表示されてもよい。
CPU71は、MCに対して予め付与された血管情報を用いて計測結果を取得してもよい。血管領域に関する計測結果を予め取得した後、取得された計測結果に血管情報を付与してもよい。
血管情報として動静脈情報が取得された場合、CPU71は、動静脈情報を用いて、動脈領域に関する計測結果及び静脈に関する計測結果の少なくともいずれかを取得してもよい。例えば、血管情報として出血情報が取得された場合、CPU71は、出血情報を用いて、出血した血管領域に関する計測結果を取得してもよい。つまり、CPU71は、各血管の動静脈情報を利用して、動脈・静脈別に計測処理を行ってもよい。
なお、MCデータに含まれる血管領域に関する血管情報は、記憶部74にMCデータと共に記憶されてもよい。この場合、例えば、MCデータでの各血管における位置情報と、血管情報とが対応付けて記憶されてもよい。この場合、のちの解析・計測処理、表示処理の少なくともいずれかにおいて、MCデータに含まれる少なくとも一つの血管の血管情報が参照できれば、具体的手法は限定されない。
血管情報の付与としては、例えば、各血管の位置情報を含む血管情報が、MCデータにレジストレーションされることによって、MCデータの各血管と血管情報とが対応付けされてもよい。また、MCデータにおける各血管と血管情報との対応関係を示すテーブルが設定されてもよい。また、各血管のMCデータに対して血管情報が付与され、CPU71が、各血管のMCデータに対応する血管情報を参照してもよい。
<動静脈情報の取得、付与>
以下に、動静脈情報の取得、付与を行う場合の一例を示す。例えば、CPU71は、動静脈情報として、MCデータに含まれる少なくとも一つの血管が動脈であるか静脈であるかを判別するための判別情報を取得してもよい。動静脈情報としては、各血管について動脈か静脈か否かが特定された動静脈情報であってもよい。なお、動静脈情報としては、動脈・静脈のいずれかに関する情報であればよく、例えば、動脈のみの情報であってもよいし、静脈のみの情報であってもよい。動静脈情報は、動脈及び静脈の少なくともいずれかに関する血管分布情報であってもよい。
例えば、CPU71は、動静脈情報に基づいてMCデータに対して画像処理を施し、動静脈情報が反映されたMCデータを表示部75に表示するようにしてもよい。この場合、CPU71は、MCデータにおける各血管領域を、動脈・静脈か否かに応じて異なる色(例えば、動脈が赤、静脈が青)にて表示してもよい。この場合、白黒表現にて画像化されたMCデータの血管領域に対して色が重畳されてもよいし、MCデータ自体を着色処理してもよい。また、例えば、CPU71は、動静脈情報を利用して、動脈のみ又は静脈のみが画像化されたMCデータを表示してもよい。この場合、CPU71は、動静脈情報を利用して、動脈領域と静脈領域の一方を抽出することによって、動脈領域と静脈領域の一方を画像化してもよい。また、CPU71は、動脈領域に関するMCデータと、静脈領域に関するMCデータとを切換表示又は並列表示してもよい。この場合、動脈と静脈とが異なる色で表示されてもよい。また、特定の血管が指定されたときに動静脈情報が表示されてもよい。
上記のようにすれば、MCデータに含まれる血管が動脈であるか静脈であるかが特定されることで、被検眼の血管の状態を、機能面を含めて評価できるようになり、臨床的に有用であると考える。
また、MCデータに動静脈情報が付与されることで、これを反映したMCデータの表示、計測等が可能となる。例えば、CPU71は、MCデータを解析して血管領域に関する計測結果を取得する際、動静脈情報を用いて、動脈領域に関する計測結果及び静脈に関する計測結果の少なくともいずれかを取得するようにしてもよい。計測結果としては、動脈又は静脈に関して、例えば、血管密度、血管面積、血管の総量、血管の蛇行度、毛細血管の規則性、血管径の少なくともいずれかが算出されてもよい。
CPU71は、MCデータの動脈領域に関する計測結果及び静脈に関する計測結果を統合した統合計測結果を取得してもよい。例えば、CPU71は、動脈領域に関する計測結果と静脈に関する計測結果の比率又は差分を取得してもよい。より詳細には、CPU71は、動脈領域での血管径と静脈領域での血管径の比である動静脈比(A/V比)を求めても良い。
CPU71は、動脈領域に関する計測結果及び静脈に関する計測結果の少なくともいずれかに関して、計測結果を2次元的又は3次元的に求めるようにしてもよい。さらに、CPU71は、得られた計測結果を血管解析マップとして表示部75に表示してもよい。また、CPU71は、動脈領域に関する血管解析マップ、静脈領域に関する血管解析マップとを切換表示又は並列表示してもよい。もちろん、血管解析マップに限定されず、得られた計測結果は、血管解析チャートとして表示されてもよい。
なお、CPU71は、MCデータに含まれる血管領域の一部又は全体に動静脈情報を付与してもよく、さらに、少なくとも一つの血管の一部に動静脈情報を付与してもよいし、少なくとも一つの血管全体に動静脈情報を付与してもよい。もちろん、複数の血管領域に対してそれぞれ動静脈情報を付与してもよい。さらに、CPU71は、各血管領域を血管径に関して分類し、一部の血管径に関して動静脈情報を付与してもよい。例えば、毛細血管領域、大血管領域のいずれかに動静脈情報を付与してもよい。
動静脈の判別方法は、OCTを用いて動静脈を判別する方法、パルスオキシメーターの原理を応用して動静脈を判別する方法、もしくは、眼底カラー画像、SLO画像の色情報から動脈静脈を判別する方法などが考えられる。以下、具体例を示す。
<OCTデータに基づく動静脈判別>
動静脈情報を取得する場合、例えば、CPU71は、OCTによって取得された眼底のOCTデータ又はドップラOCTデータに基づいて、動静脈情報を取得してもよい。OCTデータとしては、例えば、 MCデータと共通する領域に関して取得されたOCTデータ(例えば、二次元OCTデータ)であってもよく、MCデータの基礎となったOCTデータであってもよい。この場合、OCTデータは、眼底の反射率データであるという点でMCデータと区別される。OCTデータは、例えば、眼底の形態情報を含む断層画像データであってもよい。
OCTデータから動静脈情報を取得する場合、例えば、OCTデータの輝度値に基づいて、被検眼の血管が動脈か静脈かを判別してもよい。より詳細には、図16に示すように、OCTデータにおいて動脈は明るく、静脈は動脈よりも暗く表示される。
OCTデータにおける血管領域を検出する際、例えば、各Aスキャンデータに関してRPEよりもNFL側の領域における輝度値を求め、輝度値が相対的に低い領域を血管領域候補として設定してもよい。CPU71は、血管候補領域のうち、走査方向に関して所定幅以上の領域を血管領域として検出してもよい。なお、OCTデータにおいて血管領域を検出する場合、CPU71は、MCデータに含まれる血管情報を利用して、OCTデータにおける血管領域を検出してもよい。この場合、OCTデータとして、MCデータの基礎となるOCTデータを用いる場合、データ間のレジストレーションが容易であり、血管領域を容易に特定できる。
次に、CPU71は、OCTデータ上での血管領域の輝度値に基づいて動脈と静脈を判別してもよい。例えば、CPU71は、図17に示すような眼底の領域TSNITの各領域で血管領域の輝度平均を用いて動脈・静脈の判定を行ってもよい。CPU71は、TSNITの各領域で、血管領域のILMからIPL/INLまでの輝度平均を計算し、判別分析法によりクラス間分散が最大となる閾値を決定してもよい。CPU71は、この閾値よりも高輝度な血管を動脈、低輝度な血管を静脈としてもよい。
なお、OCTデータでの動脈と静脈の判別手法としては、これに限定されず、動脈と静脈との間での血管壁の輝度の違いを利用してもよい。また、動脈と静脈との間での血管下側のRPEの輝度の違いを利用してもよい。つまり、OCTデータ上で画像化された動脈と静脈との間での違い(例えば、輝度、形状)を利用して、動脈と静脈を判別する手法であれば、特に限定されない。つまり、本発明者らは、OCTデータ上に含まれる血管において動脈と静脈との間で描画状態が異なることを利用した判別手法を見出した。
上記のようにしてOCTデータに基づく動静脈情報が取得されると、CPU71は、OCTデータと共通の領域に関するMCデータにおいて対応する血管領域に動静脈情報を付与してもよい。なお、3次元MCデータの場合、CPU71は3次元OCTデータを形成する各二次元OCTデータに基づいて動静脈情報を取得し、取得された動静脈情報を3次元MCデータの各二次元MCデータの対応する血管に付与してもよい。もちろん、CPU71は、次元OCTデータにおける動脈又は静脈に関する3次元分布情報を取得しておき、取得された3次元分布情報による動静脈情報を、3次元MCデータの血管領域に付与してもよい。この場合、CPU71は、正面OCTデータを用いて動静脈情報を取得し、取得された動静脈情報を、正面OCTデータの血管領域に付与してもよい。
なお、上記説明においては、OCTデータに基づいて動静脈情報を取得したが、これに限定されず、ドップラーOCTデータにおける位相変化量の正負を用いて動静脈情報を取得してもよい。例えば、CPU71は、位相変化量に基づいて血流の進行方向を求めてもよく、血流の進行方向に基づいて動静脈情報を取得してもよい。この場合、例えば、血流の進行方向を辿って行き着く先が乳頭であれば静脈とし、逆であれば動脈として判別してもよい。
<パルスオキシメーターの原理を応用>
パルスオキシメーターは、酸素と結合したヘモグロビンと結合していないヘモグロビンで、赤色光と赤外光の吸収度が変化する性質を利用して血中の酸素飽和度を計測する。これを応用し、OCT光源でパルスオキシメーターと同様な計測を行う。酸素飽和度が高いほうを動脈、低いほうを静脈と判定する。
つまり、CPU71は、被検眼の酸素飽和度データに基づいて、動静脈情報を取得してもよい。この場合、得られた各血管の動静脈情報と、MCデータとがレジストレーションされることで、動静脈情報が付与されてもよい。
<他の装置からの動静脈情報の取得>
CPU71は、OCTとは異なる撮影手段(モダリティ)によって取得された画像データに基づいて、動静脈情報を取得してもよい。他のモダリティとしては、例えば、眼底カメラ、SLO、LSFG(レーザスペックルフローグラフィー)によって取得される画像データが用いられても良い。例えば、眼底カメラ、SLOによって取得された眼底画像における動脈と静脈との間の色調の違いに基づいて、動静脈情報を取得してもよい。また、動脈のほうが静脈より血管の色が明るい性質を利用して、動静脈を判定してもよい。
また、SLO又は眼底カメラによって取得される蛍光造影画像の時系列変化による血流方向の違いに基づいて、動静脈情報を取得してもよい。さらに、LSFGによって取得される相対的な血流速度・血流方向の違いに基づいて、動静脈情報を取得してもよい。
なお、上記のように動静脈情報を取得する場合、OCT光学系とともに動静脈情報の元となる画像を得るモダリティーが配置され、モーションコントラストデータの取得と同時に、これらの画像が取得されてもよい。また、これに限定されず、OCT装置とは別に、当該モダリティーが配置されてよい。また、上記のようにCPU71が判別処理を実行する必要は必ずしもなく、CPU71は、予め取得された動静脈情報を、外部又は記憶部74から取得してもよい。
<血管方向の計測>
CPU71は、3次元MCデータに関して、3次元方向の各方向に関してエッジ強度を算出し、各方向でのエッジ強度に基づいて、血管領域に関する走行方向情報を取得してもよい。さらに、CPU71は、取得された走行方向情報を、3次元MCデータに含まれる血管領域に対して付与してもよい。これによって、MCデータに含まれる各血管の方向を検出できるので、蛇行度等の計測を容易に行うことができる。
より詳細には、図18に示すように、CPU71は、3次元MCデータのボリュームデータをXYZ方向に関してエッジ検出をそれぞれ行い、XYZ方向に関するエッジ検出結果をボリュームデータとしてそれぞれ取得してもよい。この場合、各方向に関するエッジ検出結果のボリュームデータがそれぞれ取得される。ここで、3次元MCデータの各点に対応する各ボリュームデータでのエッジ検出結果に基づいて、各血管の走行方向を容易に検出できる。例えば、X方向にストレートに伸びる血管のみが3次元MCデータに存在する場合、YZ方向に関してエッジが検出され、X方向に関してエッジが検出されないので、これに基づいて走行方向が検出される。このような関係を利用して、各血管の走行方向を検出することが可能である。なお、説明の便宜上、簡易的な例を示したが、もちろん、複数の血管が異なる方向に走行する場合であっても、上記手法の適用は可能である。
CPU71は、取得された走行方向情報に基づいて3次元モーションコントラストデータに対して画像処理を施し、走行方向情報が反映された3次元モーションコントラストデータを表示部に表示してもよい(例えば、図19参照)。この場合、各血管に矢印が表示されてもよいし、走行方向に応じた色が付与されてもよい。
CPU71は、3次元モーションコントラストデータを解析して血管領域に関する計測結果を取得する際、走行方向情報を用いて、血管の蛇行度を取得してもよい。
なお、上記走行方向の検出は、3次元的な方向の検出に限定されず、2次元的な方向の検出に適用されてもよい。例えば、正面MCデータにおいて、XY方向にそれぞれエッジ検出が行われ、エッジ検出結果に基づいて二次元的な走行方向が検出されてもよい。
なお、上記手法に限定されず、MCデータの各血管に対して細線化処理を施すと共に、細線化処理で生成されたスケルトンの各ピクセルの連結性を求めることによって、走行方向を検出してもよい。例えば、2次元であれば、周辺8pixelとの連結性を求めることで、2次元的な走行方向を検出してもよい。同様に、3次元の場合、周辺の画素の連結性を3次元的に求めることで3次元的な走行方向を検出してもよい。
<眼底層に対する血管の走行状態>
CPU71は、被検眼に形成された層領域に対する、MCデータに含まれる血管領域の走行状態を示す層走行情報を取得してもよい(例えば、図20参照)。さらに、CPU71は、MCデータに含まれる血管領域に対して層走行情報を付与してもよい。これにより、例えば、層領域に対する血管の走行状態を取得でき、被検眼の正常異常判定を行うことができる。
層走行情報としては、例えば、MCデータに含まれる少なくとも一つの血管が走行している層領域に関して判別可能な情報であってもよい。層走行情報としては、例えば、MCデータに含まれる少なくとも一つの血管が、特定の層領域を走行しているか否かに関する情報であってもよい。また、MCデータに含まれる少なくとも一つの血管が、どの層領域からどの層領域までを走行しているか否かに関する情報であってもよい。
MCデータは、被検眼眼底に形成された複数の層に関するMCデータであってもよく、CPU71は、複数の層の中で、少なくとも一つの血管が走行する層を特定する処理を行うことによって、層走行情報を取得してもよい。
より詳細には、CPU71は、MCデータにおける血管の走行位置と、MCデータ又はOCTデータに対するセグメンテーション処理によって取得される層位置とに基づいて層方向情報を取得してもよい。
例えば、CPU71は、MCデータに含まれる特定の血管の3次元的な位置情報と、眼底各層の3次元的な位置情報とを比較し、血管Kが走行する眼底層を特定してもよい。この場合、CPU71は、特定の層において血管Kが存在するかどうかを判別していくことによって、血管Kが走行する層領域を特定してもよい。例えば、脈絡膜層の存在する血管Kが、RPE層に到達していることが検出される。
この場合、CPU71は、第1の層(例えば、脈絡膜層)に分布する血管に関して、第1の層とは異なる第2の層(例えば、RPE層)まで到達しているか(伸びているか)否かを判別してもよい。また、CPU71は、MCデータにおいて、血管領域が、第1の層からどの層まで到達しているかどうかを求めてもよい。上記手法によれば、脈絡膜層に存在する血管が、RPE層に達しているか否かを容易に判別できるので、糖尿病性網膜症等に関する評価を容易に行うことができる。
上記のようにして、各血管に関する層領域情報を取得することによって、MCデータに含まれる各血管に対して層領域情報を付与できる。CPU71は、付与された層領域情報に基づいて3次元モーションコントラストデータに対して画像処理を施し、層領域情報が反映された3次元モーションコントラストデータを表示部に表示してもよい。この場合、層領域情報に応じた色が付与されてもよい。
CPU71は、付与された層領域情報に基づいて、血管に関する計測結果を取得してもよい。例えば、CPU71は、第1の層に存在する血管に関して、第2の層まで到達した血管の二次元分布を、計測結果として取得しても良く、例えば、当該血管に特定した密度分布などを取得してもよい。また、CPU71は、MCデータにおける複数の層を横断した血管に関する計測結果を取得してもよい。
CPU71は、層領域情報に基づく血管計測結果を2次元的又は3次元的に求めるようにしてもよい。さらに、CPU71は、得られた計測結果を血管解析マップとして表示部75に表示してもよい。もちろん、血管解析マップに限定されず、得られた計測結果は、血管解析チャートとして表示されてもよい。
<モーションコントラストデータを用いた血管層の分離>
CPU71は、3次元MCデータの各深さ領域における血管の二次元的な存在量に関する血管分布情報を取得してもよい。さらに、CPU71は、取得された血管分布情報に基づいて、3次元MCデータに含まれる血管を層毎に分離するようにしてもよい。つまり、MCデータを用いて血管層を分離してもよい。
これによって、血管層を確実に分離することができる。なお、従来の技術では、MCデータの血管層の分離は、OCTデータの層境界検出結果を用いて行っている。例えばNFLの血管層は、NFL/GCLの層境界の所定範囲というように固定値で決められている。そのため、患者によってはうまく血管層を分離できない。また、OCTの層境界検出が失敗した場合、血管層の分離も失敗する可能性がある。網膜の血管は特定の領域に固まって存在する。そこで、OCT Angiographyの結果から、血管のまとまりごとに分離することで、正確に血管層を分離できると考えられる。
より詳細には、例えば、血管の二次元的な存在量として、各深さ領域の正面MCデータにおいて血管が検出された画素数をそれぞれ計測してもよく、各深さ領域での血管画素数の分布を示すヒストグラムを取得してもよい(図21参照)。また、CPU71は、血管の二次元的な存在量として、各深さ領域の正面MCデータにおいてそれぞれ血管の密度分布又は血管面積を求めるようにしてもよい。つまり、血管分布情報としては、例えば、深さ方向に関して、3次元MCデータの各深さ領域における血管の二次元的な存在量の分布を示す情報であってもよい。
なお、CPU71は、血管の二次元的な存在量として、血管が検出された画素数を計測してもよく、各深さ領域での血管画素数の分布を示すヒストグラムを取得してもよい。なお、3次元MCデータを深さ方向に関して分割する場合、一画素単位で分割してもよいし、2画素以上の単位で分割してもよい。
眼底の血管は、一般的には、眼底の各層に分かれて血管層を形成している。よって、取得された血管分布情報は、各血管層に応じた山を含んでいる。そこで、CPU71は、血管分布情報における山毎に分離することで、血管を層毎に分離するようにしてもよい。なお、血管分布に含まれる山毎に分離する場合、例えば、CPU71は、一定の存在量を超える領域が、深さ方向に所定の幅を持っているかによって山を検出するようにしてもよい。
なお、3次元MCデータを正面方向(深さ方向に直交する方向)に関して複数に分割し、分割された各領域において血管分布情報を取得してもよい。この場合、分割された各領域において血管を層毎に分離するようにしてもよい。例えば、図21におけるブロックB1、B2、B3単位でそれぞれ血管層が分離されてもよい。
なお、CPU71は、層毎に分離された各血管に対し、他の層に存在する血管に対して判別可能な層情報を付与してもよい。
<出血情報の取得、付与>
CPU71は、MCデータに含まれる血管領域に関する出血情報を取得してもよい。さらに、CPU71は、取得された出血情報を、MCデータに含まれる血管領域に対して付与してもよい。
出血情報としては、血管領域における出血領域の位置情報であってもおい。また、出血情報としては、少なくとも一つの血管に関する出血の有無を判別するための出血情報であってもよい。また、出血情報としては、各血管について出血の有無が特定された出血情報であってもよい。また、出血情報は、出血領域の分布を示す情報であってもよい。
出血情報は、例えば、正面OCTデータに基づいて取得されてもよい。正面OCTデータは、3次元OCTデータでの深さ方向の一部に関する正面OCTデータであってもよいし、3次元OCTデータでの深さ方向全体に関する正面OCTデータであってもよい。もちろん、二次元OCTデータに基づいて出血情報が取得されてもよい。この場合、出血情報の位置情報が取得されてもよい。
OCTデータにおいて血管から出血があった出血領域に関して、出血領域から奥側は、輝度値が減衰し、層構造が描画されない。なお、図22の例では、画像の左側領域にて出血が生じている。そこで、これらの特性を利用して、出血領域を検出することによって、出血領域の位置情報を判別できる。
ここで、OCTデータによって取得された出血領域に関する情報を、MCデータに付与してもよい。この場合、CPU71は、MCデータに付与された出血領域情報に基づいて、出血領域が付与されたMCデータを表示するようにしてもよい(例えば、図23参照)。これによって、MCデータにおいて出血が生じた血管領域を確認できる。この場合、出血領域の位置情報とMCデータの位置情報を対応づけることによって、MCデータ上において出血領域の位置がレジストレーションされる。
この場合、出血領域が付与されたMCデータとしては、例えば、MCデータ上において出血領域に対応するグラフィックが付与されたMCデータが表示されてもよいし、出血領域に対する血管領域が判別可能に表示されたMCデータが表示されてもよい。なお、出血情報は、眼底カメラ、SLO等の他の撮影手段によって取得された画像から取得されてもよい。
<ラベル付与>
CPU71は、3次元データの解析・表示において、3次元データの各ボクセルに、解析結果を示すラベルを付与してもよい。ラベルの種類としては、血管領域、無血管領域、血流、血管壁、血管の方向、血管が存在する層や深さ、血流量、血流の速さ、血流の酸素飽和度、血管の繋がり、正常血管、異常血管、出血等の少なくとも1つであってもよい。
ラベルは、数値で示してもよいし、色、グラフで示してもよい。また、ラベルは、単独で表示されてもよいし、OCTデータ(断層画像)、眼底正面画像、OCTMCデータ(OCT Angiography画像)に重畳して表示されてもよい。または、複数のラベルを組み合わせて表示されてもよい。さらに、CPU71は、前述のように、他の装置、OCTデータ、OCTMCデータから動静脈を判別し、判別結果をラベルとしてボクセルに記録してもよい。
さらに、CPU71は、血管の方向を判別し、判別結果をラベルとしてボクセルに記録してもよい。より詳細には、MCデータをXYZ方向でエッジ検出を行い、それぞれの方向のエッジ成分の大きさから血管の向きを検出し、ラベルとして記録してもよい。血管の向きラベルから血管の蛇行度を算出し、この蛇行度もラベルとして記録してもよい。蛇行度の算出方法としては、血管をたどりながら、直前のボクセルと現在のボクセルの血管の向きラベルの差を累積していき蛇行度とする方法が考えられる。
さらに、CPU71は、血管の繋がりを見ることで、正常な血管か異常な血管かを判別してもよい。例えば、脈絡膜から出た血管がNFL方向にのびていたら異常と判定する。正常血管と異常血管のラベルを付与することで、どちらかだけを表示したり、色を分けて表示したりすることができる。
さらに、CPU71は、血管層の層情報をラベルとしてボクセルに記録してもよい。つまり、MCデータを用いて血管層を分離した結果をラベルとしてボクセルに付与することで、層ごとの血流を表示したり、下記に示す血管の正常異常判定に用いたりすることができる。
血管径の計測において、CPU71は、血管領域のラベルが付与された領域を細線化し、細線化された領域を血管のスケルトンのラベルとしてボクセルに記録してもよい(図24参照)。さらに、CPU71は、細線化前後の血管の変化量を血管径として計測し、血管径をラベルとしてボクセルに記録してもよい。
より詳細には、MCデータで検出した血管領域に対し細線化を行い、細線化した線から元の血管径を計測してもよい。細線化した結果と血管径をラベルとしてボクセルに記録してもよい。細線化のラベルのボクセルだけを表示することで、血管のスケルトンを表示してもよい。また、血管径ラベルを用いることで、血管径によって血管の色を変える、一定の血管径以上もしくは以下の血管だけを表示してもよい。また、血管径の正常眼データベースが構築されてもよい。
さらに、CPU71は、OCTデータとOCTMCデータから出血部を判別し、ラベルとしてボクセルに記録してもよい。OCTデータでは出血部は、比較的高反射となる。また、出血部の下側は信号が減衰する。この情報とOCTMCデータを組み合わせて、血管がある場所で上記のような出血部の特徴を有する箇所を出血部として検出し、ラベルとして記録してもよい。
なお、ラベル表示は、経過観察用(フォローアップ用)として時系列に表示されてもよい。また、ラベル表示は、他の装置の検査結果と組み合わせて表示されてもよい。
図25は、表示ラベルとして、OCTラベルが選択された場合の一例であり、3Dマップのようなデータが表示される。ここで、各ボクセルには、種々の解析結果が付与されてもよく、検者が所望する単体または複数のラベルが、3次元データに対して重畳して表示されてもよい。
ここで、血管ラベルが選択されると、網膜の血管のみが表示され、血管の構造が簡単に確認される。さらに、血管ラベルと層ラベルを組み合わせて層ごとに色を変えて表示してもよい。
CPU71は、血管ラベルと動静脈ラベルを組み合わせて、動脈と静脈を色分けして表示してもよい。また、動脈・静脈の片方だけ表示してもよい。さらに、血管ラベルと動静脈ラベルと層境界ラベルを組み合わせて、所望の網膜層だけの血管を表示してもよい。
このように、複数のラベルを組み合わせることで、さまざまなデータを簡単に確認することができる。また、検者がラベルの組み合わせを自由に設定できる。加えて、他の装置の結果を合わせて表示してもよい。例えば、視野計の結果とOCTAngiography結果を組み合わせて、視野の欠損と血管の欠損の相関を確認できる。
上記のようなラベル表示によれば、OCTデータ、MCデータ等を含む様々なデータを3次元データとして解析し、ユーザーに提示することで、診断を支援することができる。
なお、上記説明においては、被検眼の眼底を例として説明したが、これに限定されず、被検眼の前眼部においても適用可能である。さらに、被検眼に限らず、OCTによって取得された他のモーションコントラストデータ(例えば、眼以外の他の組織におけるモーションコントラストデータ)に対しても適用可能である。