以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の実施例に係る測量システム1の概略を示しており、図1中、2は既知点に設置された測定機であり、3はターゲット装置、4は遠隔操作装置を示している。尚、3′は移動後のターゲット装置を示している。
前記測定機2は、三脚等の支持装置5、該支持装置5の上端に設けられた水平回転部6、該水平回転部6に設けられた托架部7、該托架部7に設けられた測定機本体8を有する。
前記水平回転部6は前記托架部7を水平方向に回転する水平駆動部(図示せず)を有すると共に、水平回転を検出可能な水平角検出器(図示せず)を有している。
前記托架部7は前記測定機本体8を鉛直方向に回転する鉛直駆動部9を有すると共に鉛直回転を検出可能な鉛直角検出器(図示せず)を有している。
前記測定機2は、測距光39を射出し、測定対象物迄の測距を行うと共に該測距光39を2次元にスキャン可能となっている(後述)。
前記ターゲット装置3は下端が測定点を示すポール11と、該ポール11の上端に設けられるターゲット板12とを有する。該ターゲット板12は少なくとも前記測定機2に対向する表面は再帰反射部材で形成されている。例えば、前記ターゲット板12の表面に、再帰反射シートが貼設される或は再帰反射塗料が塗布される等している。前記ターゲット板12は基準点13(即ち、前記ターゲット板12の中心)を有する。前記基準点13は、前記ポール11の軸心上に位置し、該ポール11の下端から既知の距離となっている。
前記測定機本体8について、図2を参照して説明する。
該測定機本体8は、測距光射出部18、受光部19、測距演算部21、撮像部22、射出方向検出部23、モータドライバ24、姿勢検出器25、演算制御部26、記憶部27、撮像制御部28、画像処理部29、表示部30、操作部31、通信部40を具備し、これらは筐体32に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部18、前記受光部19、前記測距演算部21等は測距部を構成する。
前記測距光射出部18は、射出光軸33を有し、該射出光軸33上に発光素子34、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸33上に投光レンズ35が設けられている。更に、前記射出光軸33上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡36と、受光光軸37(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡38とによって、前記射出光軸33は前記受光光軸37と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡36と前記第2反射鏡38とで、射出光軸偏向部が構成される。
前記発光素子34は、パルスレーザ光線を発し、前記測距光射出部18は、前記発光素子34から発せられたパルスレーザ光線を前記測距光39として射出する。
前記受光部19について説明する。該受光部19には、測定対象物(即ち測定点)からの反射測距光41が入射する。前記受光部19は、前記受光光軸37を有し、該受光光軸37には、上記した様に、前記第1反射鏡36、前記第2反射鏡38によって偏向された前記射出光軸33が合致する。尚、該射出光軸33と前記受光光軸37とが合致した状態を、測距光軸42とする(図4(A)参照)。
偏向された前記射出光軸33上に、即ち前記受光光軸37上に光軸偏向部43(後述)が配設される。該光軸偏向部43の中心を透過する真直な光軸は、基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部43によって偏向されなかった時の前記射出光軸33又は前記受光光軸37と合致する。
前記光軸偏向部43を透過した前記受光光軸37上に結像レンズ44が配設され、又前記受光光軸37上に受光素子45、例えばフォトダイオード(PD)が設けられている。前記結像レンズ44は、前記反射測距光41を前記受光素子45に結像する。該受光素子45は前記反射測距光41を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部21に入力される。該測距演算部21は、受光信号に基づき測定点迄の測距を行う。
図3を参照して、前記光軸偏向部43について説明する。
該光軸偏向部43は、一対の光学プリズム46a,46bから構成される。該光学プリズム46a,46bは、それぞれ円板状であり、前記受光光軸37上に該受光光軸37と直交して配置され、重なり合い、互いに平行に配置されている。
前記光軸偏向部43の中央部は、前記測距光39が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部43aとなっており、中央部を除く部分は前記反射測距光41が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部43bとなっている。
前記光学プリズム46a,46bは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素47a,47bと複数のプリズム要素48a,48bによって構成される。前記光学プリズム46a,46b及び各プリズム要素47a,47b及びプリズム要素48a,48bは同一の光学特性を有する。前記光学プリズム46a,46bの前記測距光偏向部43aに属する前記プリズム要素47a,47bは、好ましくは、1本であり、且つ前記プリズム要素47a,47bの幅は、前記測距光39の光束の直径と略同じか、少し幅広が好ましい。
前記プリズム要素47a,47bは、前記測距光偏向部43aを構成し、前記プリズム要素48a,48bは前記反射測距光偏向部43bを構成する。
前記光学プリズム46a,46bは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価で薄いフレネルプリズムを製作できる。
前記光学プリズム46a,46bはそれぞれ前記受光光軸37を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム46a,46bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出される前記測距光39の前記射出光軸33を任意の方向に偏向し、受光される前記反射測距光41の前記受光光軸37を前記射出光軸33と平行に偏向する。
前記光学プリズム46a,46bの外形形状は、それぞれ前記受光光軸37を中心とする円形であり、前記反射測距光41の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム46a,46bの直径が設定されている。
前記光学プリズム46aの外周にはリングギア49aが嵌設され、前記光学プリズム46bの外周にはリングギア49bが嵌設されている。
前記リングギア49aには駆動ギア51aが噛合し、該駆動ギア51aはモータ52aの出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア49bには駆動ギア51bが噛合し、該駆動ギア51bはモータ52bの出力軸に固着されている。前記モータ52a,52bは、前記モータドライバ24に電気的に接続されている。
前記モータ52a,52bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。前記モータ52a,52bの回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ24により前記モータ52a,52bが個別に制御される。尚、エンコーダを直接前記リングギア49a,49bにそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア49a,49bの回転角を直接検出する様にしてもよい。
前記駆動ギア51a,51b、前記モータ52a,52bは、前記測距光射出部18と干渉しない位置、例えば前記リングギア49a,49bの下側に設けられている。
前記投光レンズ35、前記第1反射鏡36、前記第2反射鏡38、前記測距光偏向部43a等は、投光光学系を構成し、前記反射測距光偏向部43b、前記結像レンズ44等は受光光学系を構成する。
前記測距演算部21は、前記発光素子34を制御し、前記測距光39としてパルスレーザ光線を発光させる。該測距光39が、前記プリズム要素47a,47b(前記測距光偏向部43a)により、測定点に向う様前記射出光軸33が偏向される。
測定対象物から反射された前記反射測距光41は、前記プリズム要素48a,48b(前記反射測距光偏向部43b)、前記結像レンズ44を介して入射し、前記受光素子45に受光される。該受光素子45は、受光信号を前記測距演算部21に送出し、該測距演算部21は前記受光素子45からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記記憶部27に格納される。而して、前記測距光39をスキャンしつつ、パルス光毎に測距を行うことで各測定点の測距データが取得できる。
前記射出方向検出部23は、前記モータ52a,52bに入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ52a,52bの回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ52a,52bの回転角を検出する。又、前記射出方向検出部23は、前記モータ52a,52bの回転角に基づき、前記光学プリズム46a,46bの回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部23は、前記光学プリズム46a,46bの屈折率と回転位置に基づき、前記基準光軸Oに対する前記測距光39の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算制御部26に入力される。
又、前記演算制御部26には前記水平角検出器(図示せず)からの水平角検出信号54、及び前記鉛直角検出器(図示せず)からの鉛直角検出信号55が入力され、前記演算制御部26は前記水平角検出信号54、及び前記鉛直角検出信号55に基づき前記基準光軸Oの方向を演算する様に構成されている。
前記演算制御部26は、前記基準光軸Oの方向、又該基準光軸Oに対する前記測距光39の偏角、射出方向から測定点の水平角、鉛直角を演算し、各測定点について、水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定点の3次元データ(3次元座標)を求めることができる。
前記姿勢検出器25は、前記筐体32の水平に対する傾斜角、傾斜方向を検出する。検出した傾斜角、傾斜方向は前記演算制御部26に入力される。該演算制御部26は前記姿勢検出器25の検出結果に基づき、測定した距離、水平角、鉛直角を補正する。尚、該姿勢検出器25については、特許文献1に開示された姿勢検出器を使用することができる。又、前記姿勢検出器25として前記筐体32の傾斜を検出するチルトセンサが用いられてもよい。チルトセンサに基づき前記筐体32を水平に整準し、該筐体32を整準した状態で測定を実行してもよい。
前記撮像部22は、例えば50°の画角を有するカメラであり、前記測定機本体8の前記基準光軸Oと平行な撮像光軸57を有し、前記測定機本体8のスキャン範囲を含む画像データを取得する。前記撮像光軸57と前記射出光軸33及び前記基準光軸Oとの距離はそれぞれ既知であり、位置関係は既知となっている。又、前記撮像部22は、静止画像、動画像、又は連続画像が取得可能である。
前記撮像制御部28は、前記撮像部22の撮像を制御する。前記撮像制御部28は、前記撮像部22が前記静止画像、動画像、又は連続画像を撮像する場合に、静止画像、動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと、前記測定機本体8でスキャンするタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部26は画像と点群データとの関連付けも実行する。
前記撮像部22の撮像素子58は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサである。各画素は前記撮像光軸57が通過する点を基準とし、画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸57が通過する点を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。
前記画像処理部29は、前記撮像部22で取得した画像データを、エッジ検出処理、特徴点の抽出、画像トラッキング処理、画像マッチング等の画像処理を行う。
前記記憶部27には、測距を実行する為の制御プログラム、測距結果に基づき3次元の点群データを作成する為のプログラム、前記測距光39を所定の偏角、偏向方向に射出する為のプログラム、前記撮像部22に画像を取得させる為の制御プログラム、前記画像処理部29に取得した画像に対してエッジ検出等所定の画像処理を行わせる為のプログラム、前記光軸偏向部43の回転を制御して所要のパターンで測距光の2次元スキャンを実行するプログラム等のプログラムが格納されている。
又、前記記憶部27には、取得した測距結果、作成した点群データが格納される。
前記表示部30には、測距結果、取得された点群データ、前記撮像部22で撮像された画像等が表示可能である。又、前記操作部31は、測距等の開始指示、設定の変更等が実行可能となっている。
前記通信部40は、有線や無線等、所要の手段で構成され、前記遠隔操作装置4と各種データ、画像データ等のデータ通信が可能となっている。
該遠隔操作装置4は、前記通信部40とデータ通信可能であり、前記遠隔操作装置4から前記測定機2に対して遠隔操作用のコマンドを送信可能となっている。又前記遠隔操作装置4は表示部(図示せず)を有し、前記測定機2から前記通信部40を介して送信された画像データを表示部に表示可能となっている。尚、該遠隔操作装置4として、スマートフォンやタブレット等の表示部を有する外部端末装置が用いられてもよい。
前記演算制御部26は、前記通信部40を介して各種データを前記遠隔操作装置4、或は前記外部端末装置に送信し、測距結果、点群データ、画像等を前記遠隔操作装置4、或は前記外部端末装置に表示させることができる。又、前記通信部40を介して、前記遠隔操作装置4或は前記外部端末装置から測距等の開始指示、設定の変更等が実行可能となっている。即ち、前記遠隔操作装置4或は前記外部端末装置から操作信号を送信することで、前記測定機本体8の遠隔操作が可能となっている。
前記光軸偏向部43の偏向作用、スキャン作用について、図4(A)〜図4(C)を参照して説明する。
尚、図4(A)では、説明を簡略化する為、前記光学プリズム46a,46bについて、前記プリズム要素47a,47bと前記プリズム要素48a,48bとを分離して示している。又、図4(A)は、前記プリズム要素47a,47b、前記プリズム要素48a,48bが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角が得られる。又、最小の偏角は、前記光学プリズム46a,46bのいずれか一方が180°回転した位置であり、該光学プリズム46a,46bの相互の光学作用が相殺され、偏角は0°となる。従って、該光学プリズム46a,46bを経て射出、受光されるレーザ光線の光軸(前記測距光軸42)は、前記基準光軸Oと合致する。
前記発光素子34から前記測距光39が発せられ、該測距光39は前記投光レンズ35で平行光束とされ、前記測距光偏向部43a(前記プリズム要素47a,47b)を透過して測定対象物或は測定範囲に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部43aを透過することで、前記測距光39は前記プリズム要素47a,47bによって所要の方向に偏向されて射出される。
測定対象物或は測定範囲で反射された前記反射測距光41は、前記反射測距光偏向部43bを透過して入射され、前記結像レンズ44により前記受光素子45に集光される。
前記反射測距光41が前記反射測距光偏向部43bを透過することで、前記反射測距光41の光軸は、前記受光光軸37と合致する様に前記プリズム要素48a,48bによって偏向される(図4(A))。
前記光学プリズム46aと前記光学プリズム46bとの回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光39の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
又、前記光学プリズム46aと前記光学プリズム46bとの位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム46aと前記光学プリズム46bとで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ52a,52bにより、前記光学プリズム46aと前記光学プリズム46bとを一体に回転すると、前記測距光偏向部43aを透過した前記測距光39が描く軌跡は前記測距光軸42を中心とした円となる。
従って、前記発光素子34よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部43を回転させれば、前記測距光39を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記反射測距光偏向部43bは、前記測距光偏向部43aと一体に回転していることは言う迄もない。
次に、図4(B)は、前記光学プリズム46aと前記光学プリズム46bとを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム46aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム46bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム46a,46bによる光軸の偏向は、該光学プリズム46a,46b間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
従って、前記光学プリズム46aと前記光学プリズム46bを逆向きに同期して等速度で往復回転させた場合、前記光学プリズム46a,46bを透過した前記測距光39は、直線状にスキャンされる。従って、前記光学プリズム46aと前記光学プリズム46bとを逆向きに等速度で往復回転させることで、図4(B)に示される様に、前記測距光39を合成偏向C方向の直線の軌跡59で往復スキャンさせることができる。
更に、図4(C)に示される様に、前記光学プリズム46aの回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム46bを回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光39が回転されるので、該測距光39のスキャン軌跡はスパイラル状となる。
更に又、前記光学プリズム46a、前記光学プリズム46bの回転方向、回転速度を個々に制御することで、前記測距光39のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした照射方向(半径方向のスキャン)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々のスキャンパターンが得られる。
次に、図5(A)、図5(B)を参照して前記ターゲット装置3について説明する。
前記ポール11は下端が測定点Pに設置される。前記ポール11の上端には、前記ターゲット板12が設けられる。
図示では該ターゲット板12を正方形で示しているが、該ターゲット板12の形状は、正方形、円形のいずれでもよく、既知の形状であればよい。前記ターゲット板12は、前記基準点13を有し、図示では前記ターゲット板12の中心が前記基準点13となっている。該基準点13は前記ポール11の軸心上にあり、該ポール11の下端と前記基準点13との距離は既知となっている。
前記ターゲット板12の前面(前記測定機2と対向する面)は、反射シートとなっており、更に非反射パターン61が形成されている。即ち、前記ターゲット板12は、反射率の異なる少なくとも2つの部材からなる。前記非反射パターン61は、前記基準点13を示すものであり、例えば非反射パターン61の中心が、前記基準点13となっている。図15の前記非反射パターン61はその一例を示している。
該非反射パターン61は、前記基準点13を通過する鉛直線61a及び水平線61b、前記基準点13を通過する対角線61c,61dによって構成され、前記鉛直線61a、前記水平線61b、前記対角線61c,61dは、それぞれ非反射部となっている。前記鉛直線61a、前記水平線61b、前記対角線61c,61dはそれぞれ、既知の線幅で形成され、同一の線幅であっても、それぞれ異なる線幅であってもよい。前記鉛直線61aは、前記ポール11の軸心と合致している。
前記ターゲット板12の上端部中央には欠切部62が形成される。該欠切部62は、前記鉛直線61a上に形成され、該鉛直線61aの上端部が前記欠切部62によって切取られる様になっている。
前記ターゲット板12の背面側、前記欠切部62の位置に偏向光学部材としての反射鏡63が設けられる。該反射鏡63は、前記欠切部62より大きく、前記欠切部62を塞ぐ様に設けられる。又、前記反射鏡63は、前記ターゲット板12の前面及び前記ポール11の軸心に対して45゜傾斜しており、前記欠切部62を通過して前記反射鏡63に入射する前記測距光39を上方に反射する様に設定されている。
尚、偏向光学部材としては、プリズム、ペンタプリズム等、光軸を偏向する種々の光学部材が使用可能である。又、偏向光学部材は前記測距光39を90゜に限らず所要の角度で偏向してもよく、偏向角度が既知であればよい。
以下、本実施例に係る前記測量システム1の作用について説明する。
先ず、測定点Pの測定を行う場合を説明する。
前記測定機本体8を前記支持装置5を介して既知点、又は所定点に設置する。前記ターゲット装置3の前記ポール11の下端を測定点Pに設置し、前記ターゲット板12を前記測定機2に向ける。
前記基準光軸O(即ち、偏向していない状態の前記測距光軸42)を前記ターゲット板12に向け、概略視準させる。この時の前記基準光軸Oの水平角(左右角)は、前記水平角検出器(図示せず)によって検出され、前記基準光軸Oの水平に対する傾斜角(鉛直角)は前記鉛直角検出器(図示せず)によって検出される。
概略視準させる方法としては、前記撮像部22が取得した画像を前記遠隔操作装置4に表示させ、作業者が画像を見ながら該遠隔操作装置4からの操作で前記測定機本体8を前記ターゲット板12の中心(前記基準点13)に向ける。或は、前記演算制御部26が画像から前記ターゲット板12を検出し、この検出結果に基づき前記水平回転部6、前記鉛直駆動部9を制御して、前記基準光軸Oを前記ターゲット板12の略中心に向ける。
次に、2次元スキャンのパターンを設定する。
2次元スキャンのパターンとしては、円スキャンパターン、楕円スキャンパターン、矩形スキャンパターン、8の字スキャンパターン等所要のスキャンパターンが選択される。
以下の説明では、円スキャンパターン71が選択された場合を説明する。
該円スキャンパターン71により前記測距光39のスキャンを実行すると、スキャンラインが前記各線、即ち前記鉛直線61a、前記水平線61b、前記対角線61c,61dを通過する度に、前記測距光39が反射されない為、前記受光部19の前記受光素子45による前記反射測距光41の検出がなく、前記各線のスキャンライン通過位置で受光光量が低下する。
又、スキャンラインが前記欠切部62を通過した際、即ちスキャンラインが前記反射鏡63を通過した際には前記受光素子45が前記反射測距光41を受光する。尚、スキャンラインが前記欠切部62を通過した場合については後述する。
図6(A)は、スキャンライン(円スキャンライン)上での受光光量の変化を示している。図6(A)に於いて、光量が低下した位置は、円スキャンラインが前記各線を通過した位置を示している。
図示では、光量が低下した位置が等間隔となっており、前記円スキャンパターン71の中心と前記非反射パターン61の中心(前記基準点13)とが合致していることを示している。
前記円スキャンパターン71の中心と前記基準点13とを正確に合致させる方法としては、前記鉛直線61aを前記円スキャンパターン71が通過する2点について3次元座標を求め、更に前記鉛直線61aの中点を求める。又、前記水平線61bについても同様に中点を求め、両中点の座標が一致する様に、前記測距光軸42の視準方向を調整すればよい。
更に、前記対角線61c,61dについても同様に中点を求め、全ての中点が一致する様に前記測距光軸42の視準方向を調整すれば、視準方向設定の精度が向上する。
尚、光量が低下する位置が等間隔となる様、視準方向の調整をしてもよい。
次に、前記ターゲット板12の傾斜(前後方向の傾き(以下傾斜))及び前記ポール11を中心とした回転(以下回転))の測定について説明する。
前記ターゲット板12を前記円スキャンパターン71で前記測距光39をスキャンした場合、該円スキャンパターン71に沿って前記ターゲット板12が3次元測定される。前記ターゲット装置3が鉛直状態にあり、前記ターゲット板12が前記基準光軸Oに対して垂直である場合(即ち、前記ターゲット板12が前記測定機2に対して正対している場合)、円スキャンした場合の測距結果は同一となる。又、この時の測距結果に基づき測定点Pの3次元座標を求めることができる。
次に、前記ターゲット板12が傾斜、又は回転している状態では、前記ターゲット板12の前記測量機2に接近している部位では測距結果は小さく、離れている部位では測距結果は大きくなる。この為、円スキャンの回転角を横軸とし、測距結果を縦軸で示すと、図6(B)に示される様に、sinカーブ73が得られる。
前記傾斜、回転の大きさは前記sinカーブ73の振幅Aとして現れ、前記回転の角度は、前記sinカーブ73の位相のズレθとして現れる。従って、前記振幅A、位相のズレθを測定することで、前記ターゲット板12の傾斜、回転を検出することができる。
該ターゲット板12の傾斜、回転が検出されることで、該ターゲット板12の前記基準点13が測定できる。更に、前記ターゲット板12の傾斜(即ち、前記ポール11の傾斜)と該ポール11の下端と前記基準点13間の距離に基づき、前記測定点Pを正確に測定することができる。
尚、前記測定機本体8は前記姿勢検出器25を備え、前記測定機本体8の姿勢を検出できるので、該測定機本体8を前記水平回転部6から取外し、前記測定機本体8を手で持った状態で該測定機本体8により測定し、前記姿勢検出器25の検出結果で測定結果を補正する様にしてもよい。
本測量システムに於いて、前記測定機本体8をトータルステーションとして使用することもでき、該測定機本体8をレーザスキャナとして使用することもできる。例えば、前記光軸偏向部43により前記測距光39を所定の測定点に照射して測定点を測定すれば、前記測定機本体8をトータルステーションとして使用でき、前記光軸偏向部43で前記測距光39をスキャンさせながら所定の測定範囲を測定すれば測定対象について点群データを取得することができ、前記測定機本体8をレーザスキャナとして使用することもできる。
更に、前記撮像部22が取得する画像について画像トラッキングを行うことで、前記ターゲット板12の追尾が可能であるので、前記ターゲット装置3を移動させることで、必要な部分、必要な箇所の点群データが取得可能である。
更に、前記測量システム1により前記基準光軸Oと平行な面、或は該基準光軸Oに対して直交する方向に存在する測定対象物を測定する場合を説明する。図1では、天井65を測定する場合を示している。
既知の点、又は前記測定機2により測定し、既知とした点Pに、前記ターゲット装置3を設置する。
所要の2次元スキャンのパターンを設定する。図示では、円スキャンパターンが選択されている。
スキャンラインが前記欠切部62を通過した場合、前記測距光39は前記反射鏡63によって反射され、副測距光39′として前記天井65を照射し、更に該天井65で反射され、更に前記反射鏡63によって反射され、副反射測距光41′(図8、図9参照)として前記受光素子45で受光され、測距が行われる。
前記天井65の測距結果は、図6(B)に示されるsinカーブ73上から突出するピーク値74として得られる。前記副測距光39′が照射する点が、被測定点である場合は、得られる測距結果が被測定点迄の測距値となる。
尚、前記天井65の高さ(前記測定点Pから前記天井65迄の垂直距離)を測定したい場合は、前記ターゲット板12の測定で前記ポール11の傾斜を測定し、該ポール11の傾斜に基づき測定結果を補正することで正確な、前記天井65の高さを測定することができる(図1参照)。
更に、前記ターゲット装置3を既知の点Pに設置した状態で、前記天井65の任意の点、例えば、該天井65の隅を測定することができる。尚、この場合、前記測距光39は可視光が好ましい。
該測距光39の円スキャンを行っている状態で、作業者が、前記ターゲット装置3を前記測定点Pを中心に傾斜させ、前記副測距光39′の照射位置を被測定点に合わせる。前記測定機2から被測定点迄の測距が行える。又、前記測定点Pと前記副測距光39′間の水平距離を測定する場合は、前記測距光39により前記ターゲット板12を円スキャンすることで、前記ポール11の傾斜を測定できるので、該ポール11の傾斜角と前記測定点Pの3次元座標、前記測定機2から前記照射位置迄の測距結果に基づき前記水平距離を測定することができる。
図7は、第2の実施例に係るターゲット装置76を示している。図7中、図5(A)中に示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
該ターゲット装置76では、基準点13の位置に照明灯77が設けられる。該照明灯77が設けられることで、画像上から前記基準点13の位置を容易に認識できる。更に、前記照明灯77を点滅させ、該照明灯77の点灯時と消灯時と同期させて画像を取得し、該照明灯77の点灯時の画像と該照明灯77の消灯時の画像との差を求めることで、前記照明灯77のみの画像を取得でき、画像処理による前記ターゲット板12の抽出、前記基準点13の特定が容易に、且つ精度よく行える。
図8(A)、図8(B)は、第3の実施例に係るターゲット装置78を示している。図8(A)、図8(B)中、図5(A)、図5(B)中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。又、第3の実施例では、第2の実施例と同様、基準点13の位置に照明灯77が設けられている。
天井面等自然物の表面は、ターゲット板12の反射面に比べ、反射率が低いのが通常である。第3の実施例では、測定対象物の表面の反射率が低くても充分な光量が得られる様、前記反射鏡63で反射される測距光39の光路上に、副測距光39′を天井65で結像、或は略結像させる為の集光レンズ79が設けられる。ここで、ビル等の屋内での天井の高さは、略一定であり、前記集光レンズ79の焦点距離は、一般的な天井の高さに基づき決定すればよい。或は、該集光レンズ79を着脱可能とし、焦点距離の異なる該集光レンズ79を複数用意し、測定環境に合わせて適宜交換する様にしてもよい。
前記集光レンズ79で前記天井65に結像させることで、該天井65で反射される全光量が副反射測距光41′として前記受光素子45に入射されるので、測定の為の充分な光量が得られる。前記副測距光39′の照射点、前記集光レンズ79によって再帰反射の構成とすることができる。
図9(A)、図9(B)は、第3の実施例の応用例に係るターゲット装置81を示している。図9(A)、図9(B)中、図8(A)、図8(B)中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施例の応用例では、前記集光レンズ79に代え多重焦点レンズ、好ましくは多重焦点フレネルレンズ82が用いられる。多重焦点レンズとすることで結果的に焦点深度が大きくなり、天井の高さが異なる場合にも充分な光量が得られることになり、多様な環境での測定が可能となり、測量システムの汎用性が増す。
図10は、第4の実施例に係るターゲット装置84を示している。図10中、図7中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
前記ターゲット装置84では、欠切部62aを鉛直線61aの上端部に設けると共に、欠切部62b、欠切部62cを水平線61bの両端部に設けている。又、図示しないが前記欠切部62a、前記欠切部62b、前記欠切部62cの位置に対応し、ターゲット板12の背面側にはそれぞれ反射鏡が設けられ、各反射鏡は前記ターゲット板12に対して45゜傾斜している。
従って、ポール11が鉛直状態、基準光軸Oが水平な状態で、測距光39が前記ターゲット板12に対し円スキャンされた場合、前記測距光39が前記欠切部62aを通過する際には前記測距光39は反射鏡によって鉛直上方に反射され、前記測距光39が前記欠切部62b,前記欠切部62cを通過する際には、前記測距光39は水平左方に、又水平右方にそれぞれ反射される。
更に、各反射鏡によって反射された副測距光39a′,39b′,39c′は上方に位置する測定対象物、側方に位置する測定対象物に照射され、照射点(測定点)について測距が行われる。
又、前記ターゲット装置84が傾斜していた場合、回転していた場合でも、前記欠切部62a、前記欠切部62b、前記欠切部62cを除く円スキャンの測距結果により前記ターゲット板12の傾斜、回転が検出できるので、検出した傾斜、回転角に基づき測距結果の補正が行える。
図11は、第5の実施例に係るターゲット装置86を示している。図11中、図10中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
前記ターゲット装置86は、走行装置87に鉛直に立設されている。
前記ターゲット装置86では、欠切部62(欠切部62a,62b,62c,62d,62e,62f,62g)が、基準点13を中心とする円と非反射パターン61と交差する位置にそれぞれ設けられている。尚、図示では円スキャンパターン71と前記欠切部62が設けられる円とが一致しているが、一致する必要はない。
又、各欠切部62a,62b,62c,62d,62e,62f,62gの背面側には、それぞれターゲット板12に対して45゜傾斜している反射鏡(図示せず)が設けられ、前記欠切部62a,62b,62c,62d,62e,62f,62gを通過する測距光39を副測距光39a′,39b′,39c′,39d′,39e′,39f′39g′として鉛直線61a方向、水平線61bの2方向、対角線61cの2方向、対角線61dの2方向の各方向に反射する。
従って、前記副測距光39a′,39b′,39c′,39d′,39e′,39f′39g′によって、基準光軸Oに対して直交する方向の下方を除く7点を略同時に測定することができる。更に、測定機2から前記ターゲット装置86迄の距離と、該ターゲット装置86の傾斜、回転角を測定できるので、前記測定機2を基準とした7点の3次元座標が測定できる。
更に、前記走行装置87を移動させつつ、7点の測定を実行することで、前記走行装置87の走行方向と平行な面の測定、或は走行方向に沿って存在する測定対象物の3次元測定を行うことができる。
更に又、前記ターゲット板12に前記基準点13を中心に回転させるターゲット板回転装置(図示せず)を設け、前記ターゲット板12を回転させると共に該ターゲット板12の回転角を検出する様にし、該ターゲット板12を回転させつつ前記副測距光39a′,39b′,39c′,39d′,39e′,39f′39g′によって測距を行うことで、走行方向に沿って存在する測定対象物の3次元点群データを取得することができる。
例えば、トンネル内を走行させつつ3次元データを取得すれば、トンネル壁面の断面データが取得でき、トンネル壁面の状況が測定できる。
又、図11で示す前記ターゲット装置86では、前記ターゲット板12を全周回転する必要はなく、前記基準点13を中心として45゜の往復回転をさせればよい。
更に、前記ターゲット板12を全周回転する場合は、前記欠切部62は1箇所だけに設けてもよい。
尚、前記非反射パターンは、2次元スキャンの過程でスキャンラインと3箇所以上で交差する形状であればよく、又2次元スキャンのパターンは限られない。又、鉛直線61a、水平線61b、対角線61c,61dをそれぞれ反射率の異なる部材で形成してもよい。この場合、各交差位置での反射光量に基づき、交差した直線を特定することができる。
如上の如く、本発明では基準光軸Oの方向だけではなく、該基準光軸Oと直交する方向も測定できるので、測定対象物に合わせて、或は測定環境に合わせて、前記測定機2を再設置する必要がなく、作業性が向上すると共に測量システムの汎用性が向上する。