以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
先ず、図1、図2に於いて、本発明の実施例に係る測定装置について説明する。
測定装置1は、例えば追尾機能を有するトータルステーションであり、三脚(図示せず)上に設置される。前記測定装置1は、測定装置本体2、托架部3、台座部4、測量基盤5を有している。
前記托架部3は、凹部を有する凹字形状であり、凹部に前記測定装置本体2が収納されている。該測定装置本体2は上下回転軸6を介して前記托架部3に支持され、前記上下回転軸6を中心に上下方向に回転自在となっている。
該上下回転軸6の端部には、上下被動ギア7が嵌設されている。該上下被動ギア7は上下駆動ギア8と噛合し、該上下駆動ギア8は上下駆動モータ9の出力軸に固着されている。前記測定装置本体2は、前記上下駆動モータ9により上下方向に回転される様になっている。
又、前記上下回転軸6と前記測定装置本体2との間には、上下角(前記上下回転軸6を中心とした回転方向の角度)を検出する上下回転角検出器11(例えば、エンコーダ)が設けられている。該上下回転角検出器11により、前記測定装置本体2の前記托架部3に対する上下方向の相対回転角が検出される。
前記托架部3の下面からは、左右回転軸12が突設され、該左右回転軸12は軸受(図示せず)を介して前記台座部4に回転自在に嵌合している。前記托架部3は、前記左右回転軸12を中心に左右方向に回転自在となっている。
該左右回転軸12と同心に、左右被動ギア13が前記台座部4に固着されている。前記托架部3には左右駆動モータ14が設けられ、該左右駆動モータ14の出力軸に左右駆動ギア15が固着されている。該左右駆動ギア15は前記左右被動ギア13と噛合している。前記托架部3は、前記左右駆動モータ14により左右方向に回転される様になっている。
又、前記左右回転軸12と前記台座部4との間には、左右角(前記左右回転軸12を中心とした回転方向の角度)を検出する左右回転角検出器16(例えば、エンコーダ)が設けられている。該左右回転角検出器16により、前記托架部3の前記台座部4に対する左右方向の相対回転角が検出される。
又、該台座部4は前記測量基盤5上に設けられ、該測量基盤5は三脚(図示せず)上に設置される。該測量基盤5は自動整準機構を有し、前記測定装置本体2の自動整準を行う整準部として機能する。
前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14との協働により、前記測定装置本体2を所望の方向へと向けることができる。尚、前記托架部3と前記台座部4とにより前記測定装置本体2の支持部が構成される。又、前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14とにより、前記測定装置本体2の回転駆動部が構成される。
該測定装置本体2内には、測距光射出部17、受光部18、測距部19、撮像部21、射出方向検出部22、モータドライバ23、追尾光射出部24、追尾光受光部25、追尾部26、測定制御部である演算制御部27が収納され、一体化されている。又、前記測定装置本体2には、操作部28、表示部29が設けられている。尚、該表示部29をタッチパネルとし、前記操作部28と兼用させてもよい。
前記測距光射出部17は、射出光軸31を有し、該射出光軸31上に発光素子32、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸31上に投光レンズ33が設けられている。更に、前記射出光軸31上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡34と、受光光軸35(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡36とによって、前記射出光軸31は前記受光光軸35と合致する様に偏向される。尚、前記第1反射鏡34と前記第2反射鏡36とで射出光軸偏向部が構成される。
尚、前記第1反射鏡34は波長選択機能を有し、例えば測距光を反射し、後述する追尾光を透過させる光学特性を有するビームスプリッタとなっている。
前記受光部18は、前記受光光軸35を有し、前記受光部18には、測定対象物やプリズムや反射鏡等の再帰反射性を有するターゲットからの反射測距光が入射する。
前記受光光軸35上に受光素子37、例えばフォトダイオード(PD)が設けられ、又結像レンズ38が配設されている。該結像レンズ38は、反射測距光を前記受光素子37に結像する。該受光素子37は反射測距光を受光し、受光信号を発する。該受光信号は、前記測距部19に入力される。
更に、前記受光光軸35(即ち、前記射出光軸31)上で、前記結像レンズ38の対物側には、光軸偏向部39が配設されている。以下、図3に於いて、該光軸偏向部39について説明する。
該光軸偏向部39は、一対の光学プリズム41a,41bから構成される。該光学プリズム41a,41bは、それぞれ円板状であり、前記受光光軸35上に該受光光軸35と直交して配置され、前記光学プリズム41a,41bは重なり合い、平行に配置されている。該光学プリズム41a,41bとしては、それぞれフレネルプリズムが用いられることが、装置を小型化する為に好ましい。
前記光軸偏向部39の中心部は、測距光が透過する第1光軸偏向部である測距光軸偏向部39aとなっており、中心部を除く部分は反射測距光が透過する第2光軸偏向部である反射測距光軸偏向部39bとなっている。
前記光学プリズム41a,41bとして用いられるフレネルプリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素42a,42bと多数のプリズム要素43a,43bによって構成され、板形状を有する。各プリズム要素42a,42b及びプリズム要素43a,43bは同一の光学特性を有する。
前記プリズム要素42a,42bは、前記測距光軸偏向部39aを構成し、前記プリズム要素43a,43bは前記反射測距光軸偏向部39bを構成する。
前記フレネルプリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なフレネルプリズムを製作できる。
前記光学プリズム41a,41bはそれぞれ前記受光光軸35を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム41a,41bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出される測距光の前記射出光軸31を任意の方向に偏向し、受光される反射測距光の前記受光光軸35を前記射出光軸31と平行になる様偏向する。
前記光学プリズム41a,41bの外形形状は、それぞれ前記受光光軸35を中心とする円形であり、反射測距光の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム41a,41bの直径が設定されている。
又、前記光学プリズム41aの外周にはリングギア44aが嵌設され、前記光学プリズム41bの外周にはリングギア44bが嵌設されている。
前記リングギア44aには駆動ギア45aが噛合し、該駆動ギア45aはモータ46aの出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア44bには、駆動ギア45bが噛合し、該駆動ギア45bはモータ46bの出力軸に固着されている。前記モータ46a,46bは、前記モータドライバ23に電気的に接続されている。
前記モータ46a,46bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。前記モータ46a,46bの回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ23により前記モータ46a,46bが個別に制御される。
前記駆動ギア45a,45b、前記モータ46a,46bは、前記測距光射出部17と干渉しない位置、例えば前記リングギア44a,44bの下側に設けられている。
尚、前記投光レンズ33、前記測距光軸偏向部39a等は、投光光学系を構成し、前記反射測距光軸偏向部39b、前記結像レンズ38等は受光光学系を構成する。
前記測距部19は、前記発光素子32を制御し、測距光としてレーザ光線を発光させる。前記プリズム要素42a,42b(前記測距光軸偏向部39a)により、測距光が測定点に向う様前記射出光軸31が偏向される。
測定対象物から反射された反射測距光は、前記プリズム要素43a,43b(前記反射測距光軸偏向部39b)、前記結像レンズ38を介して前記受光部18に入射し、前記受光素子37に受光される。該受光素子37は、受光信号を前記測距部19に送出し、該測距部19は前記受光素子37からの受光信号に基づき測定点(測距光が照射された点)の測距を行う。
前記撮像部21は、例えば50°の画角を有するカメラであり、測定対象物を含む画像データを取得する。該撮像部21は、前記測定装置本体2が水平姿勢で水平方向に延出する撮像光軸47を有し、該撮像光軸47と前記射出光軸31とは平行となる様に設定されている。又、前記撮像光軸47と前記射出光軸31との距離も既知の値となっている。
前記撮像部21の撮像素子48は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸47を原点とした座標系での位置が特定される。
前記射出方向検出部22は、前記モータ46a,46bに入力される駆動パルスをカウントすることで、前記モータ46a,46bの回転角を検出する。或は、エンコーダ58a,58b(後述)からの信号に基づき、前記モータ46a,46bの回転角を検出する。又、前記射出方向検出部22は、前記モータ46a,46bの回転角に基づき、前記光学プリズム41a,41bの回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部22は、前記光学プリズム41a,41bの屈折率と回転位置に基づき、測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算制御部27に入力される。
尚、前記光学プリズム41a,41bにそれぞれエンコーダを設け、該エンコーダの検出結果を基に前記光学プリズム41a,41bの回転位置を演算してもよい。
又、前記追尾光射出部24は追尾光軸49を有し、該追尾光軸49上に発光素子51、例えば測距光とは異なる波長の追尾光を射出するレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記追尾光軸49上に投光レンズ52が設けられている。更に、前記追尾光軸49上に偏向光学部材としての前記第1反射鏡34が設けられている。尚、前記発光素子51による追尾光の射出は、前記追尾部26によって制御される。
前記第1反射鏡34を透過した追尾光は、該第1反射鏡34で偏向された前記射出光軸31と合致する。又、追尾光は前記第2反射鏡36に反射されることで、前記受光光軸35(即ち、前記射出光軸31)と合致する。
又、前記追尾光受光部25は、偏向光学部材であり波長選択機能を有する第3反射鏡53、集光レンズ54、偏向光学部材である第4反射鏡55、追尾光受光素子56を有している。
前記第3反射鏡53は前記受光光軸35上に設けられ、反射追尾光を反射し、波長の異なる反射測距光を透過する光学特性を有している。又、前記追尾光受光部25は、前記第3反射鏡53によって前記受光光軸35から分岐された追尾光受光光軸57を有し、前記第4反射鏡55、前記追尾光受光素子56は前記追尾光受光光軸57上に設けられている。又、前記集光レンズ54は前記第3反射鏡53と前記第4反射鏡55の間に配設されている。
ターゲットの検出、追尾が行われる場合は、測定対象物として再帰反射性を有する反射鏡、例えばプリズムが用いられる。プリズム(図示せず)で反射された反射追尾光は、前記光軸偏向部39を透過し、前記第3反射鏡53で反射され、前記集光レンズ54で集光され、前記第4反射鏡55により前記追尾光受光光軸57上に偏向され、前記追尾光受光素子56に受光される。該追尾光受光素子56は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。該追尾光受光素子56は、反射追尾光を受光し、該追尾光受光素子56上での受光に基づく受光信号を発する。該受光信号は、前記追尾部26に入力される。
該追尾部26は、反射追尾光の前記追尾光受光素子56上での受光を基にプリズムを検出し、前記追尾光受光素子56の中心とプリズムの位置との差を演算する。演算結果は前記演算制御部27に入力される。
該演算制御部27は、入出力制御部、演算器(CPU)、記憶部等から構成されている。該記憶部には測距作動を制御する測距プログラム、後述するターゲットを検出する為の検出プログラム、追尾作動を制御する追尾プログラム、前記モータドライバ23に前記モータ46a,46bの駆動を制御させる為のプリズム制御プログラム、前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14の駆動を制御する為の本体制御プログラム、前記射出方向検出部22からの測距光の射出方向の演算結果、前記上下回転角検出器11と前記左右回転角検出器16の検出結果に基づき測距光の方向角(水平角、鉛直角)を演算する方向角演算プログラム、前記表示部29に画像データ、測距データ等を表示させる為の画像表示プログラム等のプログラムが格納されている。更に、前記記憶部には、測距データ、画像データや、前記光学プリズム41a,41bの回転位置データ、前記モータ46a,46bを制御する際の設定値データ等が格納される。
次に、前記測定装置1による測定作動について、図4(A)〜図4(C)を参照して説明する。尚、図4(A)では説明を簡略化する為、前記光学プリズム41a,41bについて、前記プリズム要素42a,42b、前記プリズム要素43a,43bを分離して示している。又、図4(A)で示される前記プリズム要素42a,42b、前記プリズム要素43a,43bは最大の偏角が得られる状態となっている。又、最小の偏角は、前記光学プリズム41a,41bのいずれか一方が180゜回転した位置であり、偏角は0゜となり、射出されるレーザ光線(測距光)の光軸は前記射出光軸31と平行となる。前記プリズム要素42a,42bは、例えば±20°の範囲で測定対象物或は測定対象エリアを測距光で走査できる様になっている。
前記発光素子32から測距光が発せられ、測距光は前記投光レンズ33で平行光束とされ、前記測距光軸偏向部39a(前記プリズム要素42a,42b)を透して測定対象物或は測定対象エリアに向けて射出される。ここで、前記測距光軸偏向部39aを透過することで、測距光は前記プリズム要素42a,42bによって所要の方向に偏向されて射出される。
測定対象物或は測定対象エリアで反射された反射測距光は、前記反射測距光軸偏向部39b(前記プリズム要素43a,43b)を透して入射され、前記結像レンズ38により前記受光素子37に集光される。
反射測距光が前記反射測距光軸偏向部39bを透過することで、反射測距光の光軸は、前記受光光軸35と合致する様に前記プリズム要素43a,43bによって偏向される(図4(A))。
又、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとの回転位置の組合わせにより、射出する測距光を任意の偏向方向、偏角で偏向することができる。
又、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとの位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ46a,46bにより、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとを一体に回転することで、前記測距光軸偏向部39aを透過した測距光が描く軌跡は前記射出光軸31を中心とした円となる。
従って、前記発光素子32よりレーザ光線(測距光)を発光させつつ、前記光軸偏向部39を回転させれば、測距光を円の軌跡で走査させることができる。
尚、前記反射測距光軸偏向部39bは、前記測距光軸偏向部39aと一体に回転していることは言う迄もない。
次に、図4(B)は前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム41aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム41bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム41a,41bによる光軸の偏向は、該光学プリズム41a,41b間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
従って、角度差θを変化させる度に、前記光軸偏向部39を1回転させ、1回転毎に照射すれば、直線状に測距光を走査させることができる。又、角度差θを変化させる度に、測距光を照射した状態で回転させれば、同心多重円状に測距光を走査させることができる。又、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bを同速度で反対方向に回転させれば、合成偏向C方向に直線で測距光を走査させることができる。
更に、図4(C)に示される様に、前記光学プリズム41aの回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム41bを回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ測距光が回転されるので、測距光の走査軌跡は、スパイラル状となる。
更に又、前記光学プリズム41a、前記光学プリズム41bの回転方向、回転速度を個々に制御することで、測距光の走査軌跡を前記射出光軸31を中心とした放射方向(半径方向の走査)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々の走査状態が得られる。
測定の態様としては、前記光軸偏向部39を所要偏角毎に固定して測距を行うことで、特定の測定点についての測距を行うことができる。更に、前記光軸偏向部39の偏角を変更しつつ、測距を実行することで、即ち測距光を走査しつつ測距を実行することで走査軌跡上の測定点についての測距データを取得することができる。
各測距光の射出方向角は、前記モータ46a,46bの回転角及び前記上下回転角検出器11と前記左右回転角検出器16の検出結果により検出でき、射出方向角と前記測距データとを関連付けることで、3次元の測距データを取得することができる。
又、上記した様に、前記測定装置1は前記撮像部21を具備し、該撮像部21で取得された画像は前記表示部29に表示される。
ここで、前記撮像部21の画角は例えば50°であり、前記光学プリズム41a,41bによる偏向範囲は例えば±20°であるので、前記測距部19の測定範囲は前記撮像部21の撮像範囲と略一致している。従って、測定者は視覚によって容易に測定範囲を特定でき、前記表示部29に表示された画像から、測定対象物を探し、或は測定対象物を選択することができるので、測定対象物を視準する必要がない。
尚、前記撮像部21の画角、前記光学プリズム41a,41bによる偏向範囲は上記したものに限られるものではなく、例えば前記測距部19の測定範囲と前記撮像部21の撮像範囲とが完全に一致する様にしてもよい。
測定対象物が選択されると、測定対象物に向って測距光が偏向される様、前記光学プリズム41a,41bを回転させる。尚、測定対象物が前記撮像部21の撮像範囲外にある場合には、測定対象物が前記撮像部21の撮像範囲内に位置する様、前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14とを駆動させる。
前記射出光軸31と前記撮像光軸47は平行であり、且つ両光軸は既知の関係であるので、前記演算制御部27は前記撮像部21で取得した画像上で、画像中心と前記射出光軸31とを一致させることができる。更に、前記演算制御部27は、測距光の射出方向角を検出することで、該射出方向角に基づき画像上に測定点を特定できる。従って、測定点の3次元の測距データと前記撮像部21で取得した画像の関連付けは容易に行え、該撮像部21で取得した画像を3次元データ付きの画像とすることができる。
又、前記測定装置1は前記追尾部26を具備している。前記発光素子51から追尾光が発せられ、追尾光は前記投光レンズ52で平行光束とされ、前記測距光軸偏向部39a(前記プリズム要素42a,42b)を透して測定対象物、例えばプリズムや反射鏡等の再帰反射性を有するターゲットに向けて射出される。ここで、前記測距光軸偏向部39aを透過することで、追尾光は前記プリズム要素42a,42bによって所要の方向に偏向されて射出される。
ターゲットで反射された反射追尾光は、前記反射測距光軸偏向部39b(前記プリズム要素43a,43b)を透して入射され、前記結像レンズ38、前記第3反射鏡53、前記集光レンズ54、前記第4反射鏡55により前記追尾光受光素子56に集光される。
前記追尾部26は、反射追尾光の前記追尾光受光素子56上での受光を基に、ターゲットを検出し、前記追尾光受光素子56の中心とターゲットの位置との差を演算する。演算結果は前記演算制御部27に入力される。
該演算制御部27は、前記追尾部26での演算結果を基に、前記モータ46a,46bの駆動を制御する。ターゲットからの反射追尾光が前記追尾光受光素子56の中心に受光される様、前記演算制御部27が前記光学プリズム41a,41bを回転させる。これにより、該測定装置本体2は静止した状態で追尾光のみをターゲットの動きに追従させ、ターゲットを追尾する。
尚、前記光軸偏向部39による追尾範囲を超える様な場合は、前記上下駆動モータ9、前記左右駆動モータ14を駆動し、前記測定装置本体2をターゲットに向ける様回転させるのは言う迄もない。
以下、測定対象物の限られた部位を集中的に測定する場合に於いて、前記光学プリズム41a、前記光学プリズム41bを高速で往復回転させ、測距光で前記部位を往復走査する場合の前記モータ46a,46bの反転制御について説明する。
図5は、該モータ46a,46bの反転制御を行なう際の基本的な制御図であり、該モータ46a,46bのトルク値、回転角を固定値とした場合を示している。
前記演算制御部27からモータドライバ23aに対して、回転方向例えば順回転の指示である信号aと予め設定されたトルク値である信号bが入力されると、該モータドライバ23aは、入力された信号a、信号bに基づき、前記モータ46aを回転させる。
該モータ46aの回転角は、前記エンコーダ58aでリアルタイムに検出され、検出回転角を有する信号cが判断部59aに入力される。
該判断部59aには、予め設定された順回転時の目標回転角が信号dとして前記演算制御部27より入力されている。前記判断部59aは、前記エンコーダ58aからの検出回転角と、前記演算制御部27からの目標回転角とが一致したかどうかを判断し、検出回転角と目標回転角とが一致した時点で、回転完了信号eを前記演算制御部27に出力する。
該演算制御部27は、回転完了信号eが入力されると、前回とは逆向きの方向への回転指示(反転指示)である信号aと、逆回転時トルク値である信号bとを前記モータドライバ23aに出力する。
上記の処理は、測定対象物の測定が完了し、前記モータ46aの反転制御が終了する迄繰返し実行される。又、上記処理が行われることで、前記モータ46a,46bの応答速度の上限一杯での往復動作が可能となる。更に、上記処理が繰返されることで、狭い走査範囲に対する高速のスキャンが可能となる。
尚、前記モータ46bに対する反転制御は、前記モータ46aに対する反転制御と同様であるので、説明を省略する。
又、図5中では、前記判断部59a,59bは独立した構成として記載されているが、実際には該判断部59a,59bは前記演算制御部27の一部となっている。
図6(A)は、前記モータ46aの回転範囲61aの一部を示し、前記モータ46aを往復回転させる場合の反転目標位置62a,62bと該反転目標位置62a,62bに至るまでの回転の軌跡63a,63bを示している。又、図6(B)は、前記モータ46bの回転範囲61bの一部を示し、該モータ46bを往復回転させる場合の反転目標位置64a,64bと該反転目標位置64a,64bに至るまでの回転の軌跡65a,65bを示している。尚、前記モータ46bに対しては、前記モータ46aと同様の制御が行われるので、以下、図6(A)について説明する。
図6(A)に示される様に、前記反転目標位置62aで前記モータ46aの回転を停止させた場合、オーバラン66aが生じ、前記反転目標位置62bで前記モータ46aの回転を停止させた場合、オーバラン66bが生じる。従って、実際に前記モータ46aの回転が反転する位置は、前記反転目標位置62a,62bよりも前記オーバラン66a,66b分だけ回転した位置となる。即ち、前記モータ46aの回転量は、設定した回転量よりも前記オーバラン66a,66b分だけ多くなる。
該オーバラン66a,66bは、前記モータ46aの重さ、回転モーメントや軸受部のグリースの広がり具合等により変化する。又、該モータ46aの回転速度も該モータ46aの重さや軸受部のグリースの広がり具合等により変化する。従って、製作誤差による個体差で変化も一様ではない。又、前記モータ46aの駆動中にも温度変化、湿度変化等環境の変化に起因しても変化を生じる。従って、前記オーバラン66a,66bや前記モータ46aの回転速度を把握し、制御することは困難である。
一方で、前記モータ46a,46bにオーバランが発生した場合や、回転速度が異った場合には、前記光学プリズム41a,41bの同期回転にズレが生じ、設定した測距光の走査形状や往復長さと、実際の測距光の走査形状や往復長さとに差異が生じ、正確な測定結果が得られない場合がある。
従って、前記測定装置1により正確な測定結果を得る為には、前記光学プリズム41a,41bの回転を正確に同期させ、又オーバランを生じない様に回転させる必要がある。
以下、前記光学プリズム41a,41bを正確に同期回転させ、又オーバランを生じさせない様にする為の前記モータ46a,46bの制御について説明する。
図7は、該モータ46a,46bを正確に同期回転させた反転制御を行なう際の制御図であり、トルク値を可変値、回転角を固定値とした場合を示している。
前記演算制御部27から前記モータドライバ23aに対して、回転方向の指示である信号a、予め設定されたトルク値である信号bが入力されると、該モータドライバ23aは、入力された回転指示、予め設定されたトルク値に基づき、前記モータ46aを回転させる。
該モータ46aの回転角は、前記エンコーダ58aで信号cとしてリアルタイムに検出され、検出回転角が前記判断部59aに入力される。
該判断部59aは、前記エンコーダ58aからの検出回転角と、前記演算制御部27からの目標回転角(信号d)とが一致したかどうかを判断し、検出回転角と目標回転角とが一致した時点で、回転完了信号eを前記演算制御部27に出力する。
同様に、前記演算制御部27からモータドライバ23bに対して、回転方向の指示(信号a)、予め設定されたトルク値(信号b)が入力されると、該モータドライバ23bは、入力された回転指示、トルク値に基づき前記モータ46bを回転させる。
該モータ46bの回転角は、前記エンコーダ58bでリアルタイムに検出され(信号c)、検出回転角が前記判断部59bに入力される。
該判断部59bは、前記エンコーダ58bからの検出回転角と、前記演算制御部27からの目標回転角(信号d)とが一致したかどうかを判断し、検出回転角と目標回転角とが一致した時点で、回転完了信号eを前記演算制御部27に出力する。
該演算制御部27は、前記判断部59aからの回転完了信号eと、前記判断部59bからの回転完了信号eのうち、一方の回転完了信号eが入力されてから、他方の回転完了信号eが入力されるまでの経過時間(時間差)を計測している。
例えば、前記判断部59aからの回転完了信号eが先に入力された場合、前記演算制御部27は時間差に基づき、前記モータドライバ23aに出力されるトルク値を弱める為のトルク修正値を演算する。尚、トルク修正値については、事前に各モータ46a,46b間の回転完了信号eの時間差とトルク修正値とのデータテーブルを作成しておき、該データテーブルによりトルク修正値を演算する様にしてもよい。或は、トルク修正後の時間差を求め、時間差が0になる様にトルク修正値を収斂させてもよい。
トルク修正値が演算されると、前記演算制御部27は、前回とは逆向きの回転方向の指示(反転指示)である信号aと、予め設定されたトルク値(信号b)からトルク修正値(信号f)を引いたトルク値、即ち予め設定されたトルク値にマイナスのトルク修正値を加えたトルク値を前記モータドライバ23aに出力する。
該モータドライバ23aは、入力された回転指示とトルク値に基づき、前記モータ46aを前回とは逆向きに、前回よりも弱い駆動力で回転させる。
又、前記モータドライバ23bに対しては、前回とは逆向きの回転方向の指示(反転指示)である信号aと、前回と同様のトルク値(信号b)が入力され、前記モータ46bを前回とは逆向きに、前回と同様の駆動力で回転させる。
上記の処理は、測定対象物の測定が完了し、前記モータ46a,46bの反転制御が終了する迄繰返し実行される。
回転完了信号eが先に入力される前記モータ46aに対して、即ち前記モータ46bよりも回転速度が速い前記モータ46aに対して、時間差に基づきトルク値を弱める様に制御する。該モータ46aの回転速度を低下させ、該モータ46aの回転速度を前記モータ46bの回転速度と合わせることができるので、前記モータ46aと前記モータ46bの回転完了信号eを同時又は略同時に検出することができる。
従って、前記モータ46a,46bを正確に同期回転させた反転制御が可能となり、前記光学プリズム41a,41bの正確な同期回転が可能となるので、設定した測距光の走査形状と実際の測距光の走査形状とを一致させることができ、測定対象物の正確な測定結果を得ることができる。
又、時間差に基づくトルク値の修正は、前記モータ46a,46bの反転のタイミング毎に実行されるので、該モータ46a,46bの駆動中に於ける回転速度の変化にも対応することができる。
従って、前記モータ46a,46bとして、製作誤差やグリースの広がり具合等、個体差のあるモータが用いられた場合でも、正確に同期回転させることができる。従って、前記モータ46a,46bの個体差、組立て誤差があった場合でも、実際の回転状態に基づき同期制御が行われるので、個体差等を考慮する必要がなく、作業性を向上させることができる。
尚、上記では、回転完了信号eが先に入力される前記モータ46aに対して、時間差に基づきトルク値を弱める様に制御しているが、回転完了信号eが後に入力される前記モータ46bに対して、時間差に基づき予め設定されたトルク値(信号b)からマイナスのトルク修正値(信号f)を引き、トルク値を強める様に制御してもよい。
この場合、前記演算制御部27が時間差に基づきトルク修正値を演算し、予め設定されたトルク値(信号b)にトルク修正値(信号f)を加えたトルク値が前記モータドライバ23bに出力される。
又、上記では、前記モータ46a,46bの反転のタイミング毎にトルク値の修正を行っているが、前記モータ46a,46bを1往復回転させる毎にトルク値の修正を行う様にしてもよい。
図8は、該モータ46a,46bにオーバランを生じさせない様に反転制御を行なう際の制御図であり、トルク値を固定値、回転角を可変値とした場合を示している。尚、前記モータ46bに対して行われる反転制御は、前記モータ46aと同様の制御となっているので、以下前記モータ46aの反転制御を行う場合について説明する。
反転制御が開始されると、先ず前記演算制御部27から前記モータドライバ23aに対して、例えば順方向への回転指示(信号a)と、予め設定されたトルク値(信号b)が入力される。該モータドライバ23aは、入力された回転指示、トルク値に基づき、前記モータ46aを順方向に回転させる。
該モータ46aの回転角は、前記エンコーダ58aにリアルタイムで検出され、検出回転角(信号c)が判断部68aに入力される。該判断部68aは、予め設定された前記演算制御部27からの順回転時の目標回転角(信号d)と検出回転角とが一致したかどうかを判断し、検出回転角と目標回転角とが一致した時点で、回転完了信号eを前記演算制御部27に出力する。
該演算制御部27は、回転完了信号eが入力されると、前回とは逆向きの方向への回転指示(反転指示)(信号a)と、トルク値(信号b)とを前記モータドライバ23aに出力する。この時、前記判断部68aに対しても、前記演算制御部27から前記モータ46aの回転方向(信号f)が出力される。前記モータドライバ23aは、入力された回転指示(反転指示)、トルク値に基づき、前記モータ46aを逆方向に回転させる駆動信号gを発する。
該モータ46aに駆動信号gが発せられた時点でも、該モータ46aはイナーシャにより反転せず減速しつつ回転(オーバラン)する。やがて該モータ46aが停止し、反転する。該モータ46aの停止反転は、前記エンコーダ58aによって検出され、検出結果は反転時回転角として前記判断部68aに入力される。
該判断部68aは、前記エンコーダ58aからの検出回転角(信号c)の増加が停止した時、或は減少に転じた時の検出回転角(信号h)を反転時回転角として、該反転時回転角(信号f)と基準目標回転角との差分(信号i)を演算する。この差分(回転角度差)がオーバラン量となる。
該判断部68aにより、該オーバラン量が目標回転角と検出回転角とが一致した際の回転完了信号eと共に前記演算制御部27に出力される。
基準目標回転角は、前記モータ46aのオーバランを検出する為の基準値であり、常に一定となっている。前記モータ46aの制御が開始された時点では、目標回転角と基準目標回転角とは一致している。
該演算制御部27は、入力されたオーバラン量を基に、オーバラン量だけ反転時回転角を減じる様目標回転角を修正し、順回転時の新たな目標回転角を演算する。又、前記演算制御部27は、前回とは逆向きの順方向への回転指示とトルク値とを前記モータドライバ23aに出力すると共に、前記判断部68aに回転方向を出力する。尚、演算された順回転時の新たな目標回転角は、基準目標回転角とは異なった値となる。
又、前記演算制御部27より順方向への反転指示が出力され、検出回転角の増加が停止した時、或は減少に転じた時の前記モータ46aの回転角が、実際に順方向に反転した時の角度である反転時回転角として前記エンコーダ58aにより検出され、前記判断部68aに入力される。
該判断部68aは、逆回転時の基準目標回転角と反転時回転角との差分、即ち逆回転時のオーバラン量を演算し、該オーバラン量が目標回転角と検出回転角とが一致した際の回転完了信号eと共に前記演算制御部27に出力される。尚、この時の目標回転角と基準目標回転角とは一致している。
該演算制御部27は、入力されたオーバラン量を基に、オーバラン量だけ反転時回転角を減じる様目標回転角を修正し、逆回転時の新たな目標回転角を演算する。又、前記演算制御部27は、前回とは逆向きの逆方向への回転指示とトルク値とを前記モータドライバ23aに出力すると共に、前記判断部68aに回転方向を出力する。尚、演算された逆回転時の新たな目標回転角は、基準目標回転角とは異なった値となる。
該判断部68aは、前記エンコーダ58aによる検出回転角と新たな目標回転角との一致を判断すると共に、反転時回転角と基準目標回転角との差分(オーバラン量)を演算し、回転完了信号eとオーバラン量を前記演算制御部27に出力する。
上記の処理は、測定対象物の測定が完了し、前記モータ46aの反転制御が終了する迄繰返し実行される。
上記した様に、本実施例では、予め設定された基準目標回転角と、反転指示時の実際の反転時回転角との差分、即ちオーバラン量を演算し、該オーバラン量分だけ反転時回転角を減じる様、目標回転角を修正し、反転時回転角を基準目標回転角に近づける様制御を行っている。
従って、前記モータ46a,46bを駆動させた際のオーバランを抑制することができるので、設定した測距光の往復長さと、実際の測距光の往復長さとを一致又は略一致させることができ、測定対象物の正確な測定結果を得ることができる。
又、目標回転角の修正は、前記モータ46a,46bの反転のタイミング毎に実行されるので、該モータ46a,46bの駆動中に於けるオーバラン量の変化にも対応することができる。
従って、製作誤差や軸受部のグリースの広がり具合等、個体差のあるモータに対しても、或は環境の変化等により駆動中に変化が生じたモータに対しても、同様に処理してオーバランを防止することができるので、モータの個体差を考慮する必要がなく、作業性を向上させることができる。
尚、図8中では、前記判断部68a,68bが独立した構成として記載されているが、実際には該判断部68a,68bは前記演算制御部27の一部となっている。
又、図7では、トルク値を可変値とし、回転角を固定値として前記モータ46a,46bの同期回転を行い、図8では、トルク値を固定値とし、回転角を可変値として前記モータ46a,46bのオーバランの抑制を行っているが、トルク値と回転角を共に可変値としてもよい。
トルク値と回転角とを共に可変値とすることで、前記モータ46a,46bの同期回転とオーバランの抑制とを同時に行うことができ、測定結果の正確性、作業性をより向上させることができる。
又、本実施例では、前記モータ46a,46bを同期回転させる制御、オーバランを抑制する制御を前記測定装置1に適用する場合について説明したが、例えばレーザ光線で被加工物を加工する加工機のレーザ光線の方向の制御等、2つのモータを正確に同期回転させ、オーバランを抑制することが必要な装置であれば、他の装置に対しても本実施例の制御が適用可能であるのは言う迄もない。又、中空ブラシレスモータ(ダイレクトドライブモータ)、超音波モータ等に対しても、本実施例の制御を適用可能である。