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JP6998057B2 - 歯髄細胞を含む神経損傷治療用移植材 - Google Patents

歯髄細胞を含む神経損傷治療用移植材 Download PDF

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JP6998057B2 JP2018527366A JP2018527366A JP6998057B2 JP 6998057 B2 JP6998057 B2 JP 6998057B2 JP 2018527366 A JP2018527366 A JP 2018527366A JP 2018527366 A JP2018527366 A JP 2018527366A JP 6998057 B2 JP6998057 B2 JP 6998057B2
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Description

特許法第30条第2項適用 平成28年1月23日に第60回脳の医学生物学研究会の学術集会にて口述発表。
特許法第30条第2項適用 平成28年2月17日発行の歯科再生医療産学連携会議主催第20回産学連携フォーラムの講演会要旨集にて公開。また、平成28年3月17日に歯科再生医療産学連携会議主催第20回産学連携フォーラムの講演会にて口述発表。
特許法第30条第2項適用 平成28年3月7日発行の第15回日本再生医療学会総会の学会発表要旨集にて公開。また、平成28年3月17日に第15回日本再生医療学会総会の学術集会にて口述発表。
特許法第30条第2項適用 平成28年4月発行の第70回NPO法人日本口腔科学会学術集会の学会発表要旨集にて公開。また、平成28年4月17日に第70回NPO法人日本口腔科学会学術集会の学術集会にて口述発表。
特許法第30条第2項適用 平成28年6月発行のIADR PBRG Symposium 2016の学会発表要旨集にて公開。また、平成28年6月27日にIADR PBRG Symposium 2016の学術集会にて口述発表。
本発明は、歯髄細胞を含む神経損傷治療用移植材およびその製造方法に関する。
脊髄は脳と末梢の神経伝達路であり障害されると、運動麻痺や知覚障害などの重篤な身体障害に陥る。脊髄損傷により失われた身体機能が回復することは極めてまれであり、患者はその後の生活に著しい制限を受ける。わが国では、約10万人の脊髄損傷患者がおり、年間約5000人が新たに受傷している。根本治療法の開発が社会的急務になっているが、現在、ヒト臨床研究に進んでいる先行技術はいずれも明確な治療効果を示すに至っていない。
近年、ヒト歯髄細胞の移植により、脊髄損傷モデル動物に運動障害が顕著に回復することが報告されている。ここで、細胞移植療法には、自家移植と他家移植とに分けることができる。自家移植とは、患者自身の組織あるいは自己組織由来の細胞を選別して増やして、あるいは分化誘導して、移植する方法である。自家移植の代表例として、自家歯牙移植、自家皮膚移植等が実際に臨床現場で行われている。自家移植治療の場合、免疫拒絶を回避することができるが、移植組織あるいは組織由来細胞の摘出に伴う侵襲、移植効果の個人差、細胞調製に要する時間やコストの問題が生じる。
一方、他家移植は、他者の組織や組織由来細胞を移植する方法である。他者の細胞を用いる際には、免疫拒絶を考慮しなければならない。自己防衛機能として備わっている免疫反応が、逆に移植治療の障害となる。近年では、免疫抑制剤の進歩により拒絶反応を抑えることができるようになり、臓器移植や造血幹細胞移植は飛躍的に発展した。しかしながら、現在の改良された免疫抑制剤でも、約 20 %の割合で免疫拒絶反応が起こること、免疫拒絶反応の治療が困難を極めるケースも数%あることから、安全面で不安が残る。
他家移植を考慮した際、歯髄細胞には移植細胞源としていくつかの利点がある。ひとつは、元来医療廃棄物として処理されている乳歯や知歯などの抜去歯(永久歯だけで年間1千万本廃棄されている)から採取でき、誘導・培養法が確立している(非特許文献1)ことから、豊富な移植細胞源として利用できることである。ここで、免疫拒絶はHLA 抗原を照合して非自己と判断した細胞を攻撃することに基づくが、HLA ハプロタイプホモのドナー細胞を用いると抗原の種類が半分になるため、適応できる患者が増える。
近年の報告によれば、約50ラインのHLAハプロタイプホモの細胞を準備すれば、日本人の約8割をカバーできると試算されている(非特許文献2)。つまり、供給源の豊富な歯髄細胞を治療に用いることができれば、免疫拒絶の少ない HLA ハプロタイプホモドナーの細胞を集めることができ、これを移植源とするストラテジーが現実味を帯びてくる。
本発明者らは、これまでに、歯髄組織から単離した歯髄細胞をFGF2で処理して移植すると、細胞移植による脊髄損傷の治療効果を高めることができることを明らかにしている(例えば、特許文献1)。なお、特許文献1には、神経損傷の治療用移植材の製造方法であって、当該移植材に用いる歯髄幹細胞を、FGF2以外の成長因子を実質的に含まない培地で培養することを含む方法を開示している。
WO2014/185470
Liu et al., Methods Enzymol, 2006, 419: 99-113 Okita et al, Nat Methods, 2011, 8: 409-412
これまでに、歯や歯髄組織から歯髄細胞の単離方法が検討され、また、再生医療用途に適した歯髄細胞の培養方法の確立が検討されてきた。ここで、歯髄細胞を再生医療に供する際に、単離方法や培養方法とは別の重要な課題として、由来するドナーごとの細胞の性状の違いを把握する必要がある点を挙げることができる。細胞には、年齢、性別だけでなく、遺伝子発現パターンによって個人差が生じるため、歯髄細胞のすべてが神経損傷回復機能を有するわけではない。すなわち、由来するドナーによっては、例えば、神経損傷の治療効果を奏さない歯髄細胞の存在が想定される。これを支持するように、本発明者らは、歯髄細胞のドナーの相違により、細胞移植後のモデル動物における運動機能回復効果に顕著な違いがあることを明らかとしている(例えば、特許文献1)。このように、歯髄細胞の他家移植療法を実現させるには、臨床効果と相関する歯髄細胞のドナー間での性状の違いを解明し、その性状の違いを移植前に検査できるバイオマーカーの絞り込みが重要な課題となる。
しかしながら、これまでにドナー間の違いによる細胞の性状の違いや神経損傷の治療用途に好ましい歯髄細胞の性状について解明した報告はなかった。特に、FGF2の処理による歯髄細胞の性状の変化、ドナーの違いによる歯髄細胞の性状差については不明であった。そこで、本発明は、神経損傷の治療用移植材として供される歯髄細胞であって、FGF2処理した歯髄細胞が有すべき性状を特定し、当該歯髄細胞を含む神経損傷の治療用移植材を提供することを課題とする。
本発明者らは、歯髄組織より単離した歯髄細胞を、FGF2で処理することより神経損傷治療用移植材として好ましい歯髄細胞を得ることができることを見出している。ここで、FGF2で処理した歯髄細胞は、FGF2非添加の幹細胞培養用の培地であるMSCGMで培養した歯髄細胞と比較して、脊髄損傷部位への移植後に、幼弱な神経細胞のマーカーを発現する細胞へ分化したことが確認されている(非特許文献1)。
なお、このような性質は、FGF2が処理した歯髄細胞が神経損傷の治療に有用であることを支持するものである。
しかしながら、上述のように、FGF2で処理した歯髄細胞であっても、脊髄損傷モデル動物に移植した際に、ドナーの違いにより神経損傷の治療効果を奏さないものの存在が明らかとなっている。本発明らは、さらに鋭意検討の結果、FGF2処理した歯髄細胞が有する性状であって、とりわけ神経損傷の治療用途に重要な性状を見出した。本発明は当該知見に基づき完成されたものである。
なお、本発明者らは、特許文献1において、FGF2非添加のMSCGMで培養した歯髄幹細胞であって、異なるドナー由来の歯髄幹細胞の遺伝子発現を網羅的に解析・比較した結果を示している。しかしながら、特許文献1は、FGF2処理による歯髄細胞の性状変化を解析・比較することは報告しておらず、特に治療効果の異なるドナー由来の歯髄細胞間において、FGF2処理による影響を解析・比較するものではない。したがって、神経損傷の治療用移植材に供されるためのFGF2処理した歯髄細胞において、神経損傷治療効果の指標となる性状は特定されていなかった。
すなわち、本発明は、以下のとおり:
本発明は、一態様として、
〔1〕GABRB1遺伝子が発現しており、かつ、活性酸素耐性を有する歯髄細胞を含む、神経損傷の治療用移植材に関するものである。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載の神経損傷の治療用移植材であって、
前記歯髄細胞が、FGF2処理されたものであることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔3〕上記〔2〕に記載の神経損傷の治療用移植材であって、
前記FGF2処理された歯髄細胞が、FGF2処理していない歯髄細胞と比較して、増加したGABRB1遺伝子の発現量を有するものであることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の神経損傷の治療用移植材であって、
前記歯髄細胞が、MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、NTSR1遺伝子、および、SCG2遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子をさらに発現していることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の神経損傷の治療用移植材であって、
前記FGF2処理が、FGF2を5ng/ml以上の濃度で含む培地を用いた培養であることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔6〕上記〔5〕に記載の神経損傷の治療用移植材であって、
前記FGF2を含む培地を用いた培養が、少なくとも6日間行われることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔7〕上記〔3〕に記載の神経損傷の治療用移植材であって、
前記FGF2処理していない歯髄細胞と比較して、増加したGABRB1遺伝子の発現量が10倍以上であることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の神経損傷の移植用治療材であって、
前記神経損傷が、脊髄損傷、脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、脊髄出血、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫損傷、坐骨神経痛、又は、糖尿病による末梢神経損傷であることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔9〕活性酸素除去剤と併用して神経損傷の治療に用いられる、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の治療用移植材であることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材は、一実施の形態において、
〔10〕上記〔9〕に記載の神経損傷の治療用移植材であって、
前記活性酸素除去剤が、エダラボン、ビタミンC、Nrf2誘導剤、および、グルタチオン活性誘導剤からなる群より選択される少なくとも一つの活性酸素除去剤であることを特徴とする。
また、本発明は、別の態様において、
〔11〕神経損傷を治療する方法であって、
上記〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の神経損傷の治療用移植材を、神経損傷部位に移植する工程を含む、治療方法に関する。
また、本発明の神経損傷を治療する方法は、一実施の形態において、
〔12〕活性酸素除去剤と併用して、下記i)またはii)の神経損傷の治療用移植材を、神経損傷部位に移植する工程を含む、治療方法に関する:
i)請求項1~8のいずれか一項に記載の神経損傷の治療用移植材、または、
ii)FGF2処理によりGABRB1遺伝子の発現量が亢進する歯髄細胞を含む神経損傷の治療用移植材。
また、本発明は、別の態様において、
〔13〕神経損傷の治療用移植材を製造する方法であって、
歯髄細胞のGABRB1遺伝子の発現を測定する工程と
GABRB1遺伝子を発現している歯髄細胞を選択する工程と
を含む、製造方法に関する。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材を製造する方法は、一実施の形態において、
〔14〕上記〔13〕に記載の神経損傷の治療用移植材を製造する方法であって、
MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、NTSR1遺伝子、および、SCG2遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子をさらに測定し、前記群より選択される少なくとも一つの遺伝子を発現している歯髄細胞を選択する工程をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材を製造する方法は、一実施の形態において、
〔15〕上記〔13〕または〔14〕に記載の神経損傷の治療用移植材を製造する方法であって、
前記歯髄細胞の遺伝子発現を測定する工程の前に、前記歯髄細胞を、FGF2を含む培地中で培養する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材を製造する方法は、一実施の形態において、
〔16〕上記〔13〕~〔15〕のいずれかに記載の神経損傷の治療用移植材を製造する方法であって、
前記歯髄細胞を、FGF2を含む培地中で培養する工程における前記培養が、少なくとも6日間行われることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材を製造する方法は、一実施の形態において、
〔17〕上記〔13〕~〔16〕のいずれかに記載の神経損傷の治療用移植材を製造する方法であって、
前記GABRB1遺伝子を発現している歯髄細胞を選択する工程が、FGF2非処理の歯髄細胞のGABRB1遺伝子の発現量と比較して10倍以上高いGABRB1遺伝子の発現量を有する歯髄細胞を選択する工程であることを特徴とする。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材を製造する方法は、一実施の形態において、
〔18〕上記〔13〕~〔17〕のいずれかに記載の神経損傷の治療用移植材を製造する方法であって、
前記神経損傷が、脊髄損傷、脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、脊髄出血、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫損傷、坐骨神経痛、又は、糖尿病による末梢神経損傷であることを特徴とする。
本発明に係る、GABRB1遺伝子を発現しておりかつ、活性酸素耐性を有する歯髄幹細胞を含む脊髄損傷の治療用移植材によれば、細胞移植後の優れた細胞生着性を有し、かつ、脊髄損傷に対する優れた治療効果を有する。
BBBスコアの評価基準を示す。 図2aは、脊髄損傷モデルラットに対して、FGF2処理していないDP-1株の歯髄細胞もしくはDP31株の歯髄細胞(DP1-FGF2(-)、もしくは、DP31-FGF2(-))の移植、または、PBSを投与した後のBBBスコアによるオープンフィールド運動機能評価結果を示す。エラーバーは標準偏差(± S.D.)を示す。有意差検定は、two-way ANOVAの後、Bonferroni post hoc testにより行った。図2bは、0.6mAの電気刺激時における完全に切断したT10部位を介した電気生理学的活動電位を測定した結果を示すグラフである。 図3aは、脊髄損傷モデルラットに対して、FGF2の投与、または、PBSを投与した後のBBBスコアによるオープンフィールド運動機能評価の結果を示す。エラーバーは標準偏差(± S.D.)を示す。有意差検定は、two-way ANOVAの後、Bonferroni post hoc testにより行った。アスタリスクは、PBSを投与した対照区と比較して、統計的に有意であることを示す(*P < 0.05、**P < 0.01)。図3bは、脊髄損傷モデルラットにFGF2を投与した区であって、0.6mAの電気刺激をした際、損傷部位であるT10部位を介した電気生理学的活動電位を測定した結果を示すグラフである。FGF2を投与した4匹のうち1匹においてのみ、損傷部位を越えて活動電位が検出できた。 図4aは、FGF2で処理した異なるドナー由来のヒト歯髄細胞(DP1-FGF2(+)、DP31-FGF2(+)、DP165-FGF2(+)、DP296-FGF2(+)、PBS投与(control))を脊椎損傷モデルラットへ移植した際の、BBBスコアによるオープンフィールド運動機能評価の結果を示す。エラーバーは、標準偏差(± S.D.)を示す。有意差検定は、two-way ANOVAの後、Bonferroni post hoc testにより行った。アスタリスク(*)は、PBSを投与した対照区と比較して、統計的に有意であることを示す(*P < 0.05、**P < 0.01、***P < 0.001)。図4bは、脊髄損傷モデルラットに各ドナー由来のヒト歯髄細胞を移植し、0.6mAの電気刺激をした際、損傷部位であるT10部位を介した電気生理学的活動電位を測定した結果を示すグラフである。図4cは、図4bにおける各区の潜時をプロットしたグラフを示す。有意差検定は、two-way ANOVAの後、Tukey's multiple comparisons testにより行った。アスタリスクは、全ての区と比較して、統計的に有意であることを示す(**P < 0.01)。また、エラーバーは、標準誤差(± SEM)(n=3)を示す。 図5aは、FGF2で処理したヒト歯髄細胞をラットの眼の硝子体腔に4×106個移植し、移植から3週間後の状態の画像を示す。図5bおよびcは、同様に移植から3週間後において、取り出した硝子体腔の割面像を示す。スケールバーは、500μmを示す。 図6は、脊髄損傷モデルラットに対して、DP165-FGF2(+)、または、DP296-FGF2(+)を移植した後8週目における脊髄の矢状面の免疫組織化学染色画像を示す。図6a~cはDP165-FGF2(+)移植区の画像を示し、図6d~fはDP296-FGF2(+)移植区の画像を示す。図6aの画像中央において、GAP-43陽性成長円錐がGFAP陽性細胞の間に検出された。図6bは、図6aにおける1で示すエリアの高倍率画像を示す。図6cは、DP296-FGF2(+)移植区の尾側腹側エリアの高倍率画像を示す。有髄再生軸索が、中央から尾方腹側に観察できた。図6dにおいては、GAP43陽性細胞はほとんど観察されなかった。図6eは、図6dにおける3で示すエリアの高倍率画像を示す。図6fは、DP296-FGF2(+)移植区の尾側腹側エリアの高倍率画像を示す。図6fにおいて、有髄軸索は消失していた。図6中スケールバーは、図6aおよび図6dにおいて500μm、図6b、図6c、図6e、および、図6fにおいて 100μmを示す。図6aおよび図6dにおける矢頭は、損傷部位中央を示す。 図7a~cは、脊髄損傷後、PBS投与区(図7a)、DP165移植区(図7b)、DP296移植区(図7c)における8週目の脊髄の蛍光染色画像を示す。スケールバーは、1.0mmを示す。 図8は、各ドナー由来のヒト歯髄細胞について、FGF2で処理した区、またはFGF2非処理区におけるGABRB1の発現量を示すグラフである。エラーバーは標準偏差(± S.D.)(n=3)を示す。アスタリスク(*)は、それぞれの細胞株におけるFGF2非処理区と比較して、統計的に有意であることを示す(*P < 0.05、**P < 0.01)。 図9は、各ドナー由来のヒト歯髄細胞について、FGF2で処理した区、またはFGF2非処理区における特定の遺伝子発現をreal-time PCRにより定量化した結果のグラフを示す。エラーバーは標準偏差(± S.D.)(n=3)を示す。アスタリスク(*)は、FGF2非処理区と比較して、統計的に有意であることを示す(*P < 0.05 and ***P < 0.001)。 図10は、下記実施例3.「FGF2処理によるヒト歯髄細胞の活性酸素に対する耐性への影響」に使用した各ヒト歯髄細胞の培養スケジュールを示す概略図である。 図11は、図10に示す各培養スケジュールで培養したヒト歯髄細胞についての活性酸素耐性試験(MTTアッセイ)の結果を示すグラフである。 図12は、図10に示す各培養スケジュールのうちのS/F区、および、F/S区の培養方法であって、さらに培養日数を変化させた際のヒト歯髄細胞の活性酸素耐性試験(MTTアッセイ)の結果を示すグラフである。 図13は、FGF2非処理のDP31株ヒト歯髄細胞(DP31-S)の移植とエダラボン投与(毎日)との併用区における脊髄の縦断面の蛍光顕微鏡画像を示す。図13Bおよび図13Cは、図13Aで示す領域を拡大したものである。図13AおよびCにおけるスケールバーは、それぞれ1mmおよび200μmを示す。画像の右側および左側は、それぞれ脊髄の尾側、吻側を示す。 図14(A)は、DP31-Sを移植した脊髄損傷モデルラットの脊髄損傷部位であって、細胞移植より7週間後の状態を示す画像(20倍率)を示す。図14(B)は、DP31-Sを移植し、かつ、エダラボン投与を併用した脊髄損傷モデルラットの脊髄損傷部位であって、細胞移植より7週間後の状態を示す画像(20倍率)を示す。図14(C)は、DP31-S移植区およびDP31-S移植とエダラボン併用との区において、脊髄損傷モデルラットへ移植を行った日より7週間後の脊髄損傷部位におけるGFP陽性細胞数(平均値)を示すグラフである。値は平均±標準誤差で示した。有意差検定はStudent’s t-testで行った(*p<0.05)。スケールバーは200μmを示す。 図15は、脊髄損傷モデルラットに対して、歯髄細胞(DP31-S)の移植とともにエダラボンの投与を併用した区(n=5)、歯髄細胞(DP31-S)を移植した区(n=9)、および、エダラボンを毎日投与した区(n=3)におけるBBBスコアの経時的変化を示すグラフである。値は平均±標準誤差で示した。有意差は、有意差検定は、two-way ANOVAの後、Tukey's multiple comparisons testにより行った(アスタリスク(*)は対照区との比較を示す: *p<0.05, **p<0.01, ***p<0.0001, ****p<0.0001。†は、歯髄細胞移植区との比較を示す: ††p<0.01, †††p<0.001 )。
本発明らは、FGF2処理した歯髄細胞が有する性状であって、とりわけ神経損傷の治療用途に重要な性状として、GABRB1遺伝子が発現している、または活性酸素耐性を有する、あるいはその両方の性質を併せ持つことが重要であることを見出した。
すなわち、本発明は、一態様において、GABRB1遺伝子が発現している、活性酸素耐性を有している、または、その両方の性質を併せ持つ歯髄細胞を含む、神経損傷の治療用移植材を提供する。なお、好ましい実施形態としては、GABRB1遺伝子が発現しており、かつ、活性酸素耐性を有する歯髄細胞を含む、神経損傷の治療用移植材である。また、本発明の別の形態としては、FGF2処理された歯髄細胞であって、GABRB1遺伝子が発現している、活性酸素耐性を有している、または、その両方の性質を併せ持つ歯髄細胞を含む、神経損傷の治療用移植材を提供する。
本明細書において「歯髄細胞」とは、乳歯や永久歯の歯髄組織より採取される細胞であって、歯髄幹細胞を含む細胞をいう。なお、本発明に用いられる歯髄細胞は、神経損傷部位に移植した際に、神経損傷の機能の改善効果を有するものであれば制限されず、生体から直接採取した細胞であっても、培養細胞であってもよく、また、凍結保存後に解凍した細胞であってもよい。なお、好ましい一実施の形態として、本発明の神経損傷の治療用移植材に用いられる歯髄細胞の全て、または、そのほとんどが歯髄幹細胞である形態を挙げることができる。
よって、本発明は、一実施の形態として、FGF2処理した歯髄幹細胞であって、GABRB1遺伝子が発現している歯髄幹細胞を含む神経損傷の治療用移植材を提供する。その他、本明細書に開示される発明は、好ましい一実施の形態において、上記のように、「歯髄細胞」を「歯髄幹細胞」と読み替えることができる。
本明細書において「歯髄幹細胞」とは、歯髄組織から単離できる組織幹細胞の一種である。組織幹細胞は体性幹細胞とも呼ばれ、あらゆる細胞に分化することができる胚性幹細胞に対して、組織幹細胞は分化できる細胞の種類が限られている。歯髄幹細胞は、例えば、表面抗原STRO-1で特徴付けられる。その他、Nestin、SOX10、SOX11などの神経堤細胞マーカーを指標として歯髄幹細胞を識別することも可能である。
ここで、歯髄細胞を含む「歯髄組織」は、乳歯及び永久歯のいずれからも採取することができ、従来医療廃棄物として処理されてきた乳歯や親知らずなどの抜去歯の歯髄から得ることが可能である。歯髄組織は、歯科医療施設において歯科処置的に抜歯された歯から取り出すことができ、自然抜歯された歯から取り出されてもよい。なお、歯より歯髄組織を取り出す方法は公知であり、当業者は適宜実施することができる。また、歯科処置的に抜歯された歯など、その場ですぐに凍結処理を行うことができない場合には、輸送のため、例えば、α-MEMなどの培地に歯を浸し、低温(例えば、4℃)で保存することができる。歯髄細胞の調製及び保存は、Takeda, T. et al.: J. Dent. Res., 87:676-681, 2008;Tamaoki et al., J Dent Res. 2010 89:773-778などに記載の方法に従って行うことができる。
歯髄組織から歯髄細胞を単離する方法は、具体的には、例えば以下のようにして行うことができる。メスなどを用いて歯髄組織を細断した後、細断した歯髄組織をディスパーゼやコラゲナーゼ、またはそれらの混合酵素液などを用いて酵素処理する。酵素処理の後、血清を含む培養液にて十分に混和した後、セルストレーナーなどを用いて夾雑物を取り除く。その後、遠心処理(例えば、2,000 rpm、4℃)を行い、上清を捨て、培養液を添加することで歯髄組織より歯髄細胞を採取することができる。上記のように、歯髄組織から歯髄細胞を採取する方法は公知であり当業者であれば、適宜、使用する試薬や試験条件を設定して行うことができる。
また、歯髄組織より単離された歯髄細胞は、その細胞集団中に歯髄幹細胞を含んでいる。本発明において、FGF2処理する際には、歯髄幹細胞を含む歯髄細胞群をそのまま用いてFGF2を含む培地で培養することができる。または、歯髄幹細胞を歯髄組織由来の細胞集団より上記の細胞表面マーカーを用いた公知の方法などにより分離してからFGF2処理を行ってもよい。
なお、歯髄組織の由来はヒトに限られず、その他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ)であってもよい。
本発明の神経損傷の治療用移植材に用いられる歯髄幹細胞は、歯髄組織より単離後に、FGF2含有培地による培養によりFGF2処理されたものである。歯髄細胞をFGF2処理することにより、GABRB1遺伝子の発現が亢進した歯髄細胞であって、神経損傷の治療用移植材に適した歯髄細胞を得ることができる。
ここで、「GABRB1遺伝子」とは、gamma-aminobutyric acid type A receptor beta1 subunitをコードする遺伝子である。
本明細書において、歯髄細胞が「GABRB1遺伝子が発現している」というとき、FGF2処理していない歯髄細胞のGABRB1遺伝子の発現量と比較して、有意に増加したGABRB1遺伝子の発現量を有していることを意味する。なお、歯髄組織より単離した歯髄細胞は、FGF2存在下で培養するなどの特定の条件を経ない限り、GABRB1遺伝子の発現は亢進していない状態にある。また、歯髄細胞をFGF2存在下で一定の期間培養することにより、GABRB1遺伝子の発現量が亢進する。特に、GABRB1遺伝子はFGF2の存在下において最も発現が亢進される遺伝子である。なお、FGF2処理以外の方法によりGABRB1遺伝子の発現を亢進する場合には、当該方法を適用する前の細胞のGABRB1遺伝子の発現量と比較して、GABRB1遺伝子の発現量が有意に増加していることを意味する。
また、本明細書において、「歯髄細胞がGABRB1遺伝子が発現している」というとき、以下に限定されないが、例えば、ヒト歯髄細胞における好ましい一実施の形態としては、当該歯髄細胞のGABRB1遺伝子の発現量が、FGF2処理していない歯髄細胞におけるGABRB1遺伝子の発現量と比較して、約10倍以上、約20倍以上、約100倍以上、より好ましくは約200倍以上の増加した発現量を有するものである。
由来するドナーの違いにより、歯髄細胞を含む移植用治療材の移植によっても、神経損傷の改善効果が望めない場合があったが、FGF2処理によりGABRB1遺伝子の発現が亢進した歯髄細胞は、神経損傷部位に移植された際に、優れた神経損傷の治療効果を有するものである。
また、本発明の神経損傷の治療用移植材に用いられる歯髄細胞の一実施の形態においては、GABRB1遺伝子に加えて、「MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、SCG2遺伝子、および、NTSR1遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子」が発現している。「MMP1遺伝子」とは、Matrix metallopeptidase 1 (interstitial collagenase)をコードする遺伝子である。「DRD2遺伝子」とは、Dopamine receptor D2をコードする遺伝子である。「ABCA6遺伝子」とは、ATP-binding cassette,sub-family A (ABC1) ,member6をコードする遺伝子である。「TMEM100遺伝子」とは、Transmembrane protein 100をコードする遺伝子である。「THBD遺伝子」とは、thrombomodulinをコードする遺伝子である。「NTSR1遺伝子」とは、neurotensin receptor 1である。「SCG遺伝子」とは、Secretogranin IIをコードする遺伝子である。
本明細書において、「MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、SCG2遺伝子、および、NTSR1遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子がさらに発現している」というとき、GABRB1遺伝子の発現に加えて、上記列挙する遺伝子群のうちの一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、または、七つの遺伝子が発現していることをいう。
GABRB1遺伝子に加えて、上記列挙する遺伝子群のうちの一つの遺伝子が発現している歯髄細胞としては、具体的には、GABRB1遺伝子とMMP1遺伝子とが発現している歯髄細胞、GABRB1遺伝子とDRD2遺伝子とが発現している歯髄細胞、GABRB1遺伝子とABCA6遺伝子遺伝子とが発現している歯髄細胞、GABRB1遺伝子とTMEM100遺伝子遺伝子とが発現している歯髄細胞、GABRB1遺伝子とTHBD遺伝子とが発現している歯髄細胞、GABRB1遺伝子とSCG2遺伝子とが発現している歯髄細胞、GABRB1遺伝子とNTSR1遺伝子とが発現している歯髄細胞である。また、上記列挙する遺伝子群のうちの二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、または、七つの遺伝子が発現しているというとき、MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、SCG2遺伝子、および、NTSR1遺伝子とからなる群より選択される二つの遺伝子の組み合わせの全て、三つの遺伝子の組み合わせの全て、四つの遺伝子の組み合わせの全て、五つの遺伝子の組み合わせの全て、六つの遺伝子の組み合わせの全て、または、七つの遺伝子の組み合わせの全てを含む。
本明細書において、上記列挙される遺伝子が発現しているというとき、FGF2処理していない歯髄細胞の対応する遺伝子の発現量と比較して、亢進した遺伝子発現を有していることを意味する。好ましくは、FGF2処理していない歯髄細胞の対応する遺伝子の発現量と比較して、有意に増加した遺伝子発現量を有していることを意味する。FGF2処理していない歯髄細胞の対応する遺伝子の発現量と比較して、遺伝子発現量が有意に増加する遺伝子は、MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、および、SCG2遺伝子である。よって、例えば、MMP1遺伝子が発現している歯髄細胞とは、好ましい形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるMMP1遺伝子の発現量と比較して、有意に増加したMMP1遺伝子の発現量を有する歯髄細胞をいう。なお、GABRB1遺伝子と同様に、MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、NTSR1遺伝子、および、SCG2遺伝子についても、歯髄組織より単離した歯髄細胞においては、FGF2存在下で培養するなどの特定の条件を経ない限り、発現が亢進していない状態にある。また、歯髄細胞をFGF2存在下で一定の期間培養することにより、これらの遺伝子の発現量が亢進する。
以下、ヒト歯髄細胞を例に、各遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞の好ましい形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明の歯髄細胞は、各遺伝子の発現が亢進している限りにおいて、以下に制限されない。
FGF2処理によりMMP1遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞は、好ましい実施の形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるMMP1遺伝子の発現量と比較して、約145倍以上の増加したMMP1遺伝子の発現量を有する。
また、FGF2処理によりDRD2遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞は、好ましい実施の形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるDRD2遺伝子の発現量と比較して、約104倍以上の増加したDRD2遺伝子の発現量を有する。
また、FGF2処理によりABCA6遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞は、好ましい実施の形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるABCA6遺伝子の発現量と比較して、約17倍以上の増加したABCA6遺伝子の発現量を有する。
また、FGF2処理によりTMEM100遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞は、好ましい実施の形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるTMEM100遺伝子の発現量と比較して、約54倍以上の増加したTMEM100遺伝子の発現量を有する。
また、FGF2処理によりTHBD遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞は、好ましい実施の形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるTHBD遺伝子の発現量と比較して、約6倍以上の増加したTHBD遺伝子の発現量を有する。
また、FGF2処理によりNTSR1遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞は、好ましい実施の形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるNTSR1遺伝子の発現量と比較して、8倍以上の増加したSCG2遺伝子の発現量を有する。
また、FGF2処理によりSCG2遺伝子の発現が亢進している歯髄細胞は、好ましい実施の形態において、FGF2処理していない歯髄細胞におけるSCG2遺伝子の発現量と比較して、約5倍以上の増加したSCG2遺伝子の発現量を有する。
GABRB1遺伝子、MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、NTSR1遺伝子、および、SCG2遺伝子の発現は、公知の方法を用いて測定することができ、例えば、real time PCR、ノーザンブロッティング、in situハイブリダイゼーション、RNAse保護アッセイ、及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)などを挙げることができる。
なお、各遺伝子の発現量について、FGF2非処理の歯髄細胞における遺伝子の発現量を比較する際には、下記実施例2-2.Real-time PCRに記載の方法に準じて行うことが好ましい。
具体的には、Real-time PCRの反応条件は、各遺伝子に対応するプライマーを用いて、95℃ 30秒を1サイクル、95℃ 5秒、60℃ 30秒を1サイクルとして40サイクル、95℃ 15秒、60℃ 30秒、95℃ 15秒を1サイクルを行う。
また、これらの遺伝子の発現を指標とすることで、神経損傷の治療用移植材に適した歯髄細胞をスクリーニングすることが可能である。特に、FGF2処理によるGABRB1遺伝子の発現の亢進は、治療効果に相関を示すため、GABRB1遺伝子の発現の亢進を指標とすることが好ましい。
すなわち、本発明には、一態様において、神経損傷の治療用移植材に適した歯髄細胞をスクリーニングする方法であって、FGF2処理した歯髄細胞のGABRB1遺伝子の発現を測定し、GABRB1遺伝子を発現している歯髄細胞を選択することを含む方法が含まれる。また、当該スクリーニング方法における一実施の形態は、GABRB1遺伝子に加えて、MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、NTSR1遺伝子、および、SCG2遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の発現を測定し、測定した遺伝子が発現している歯髄細胞を選択する形態を含む。これらの遺伝子を指標としてFGF2処理した歯髄細胞をスクリーニングすることで、例えば、複数のドナー由来の歯髄細胞の中から、神経損傷の治療効果を有する歯髄細胞を選択することが可能となる。
また、本明細書において、「活性酸素耐性を有する」とは、歯髄細胞が活性酸素の毒性に対して耐性を有していることを意味する。特に、歯髄細胞を移植材として用いたときに、移植先の損傷部位の組織において生じた活性酸素の毒性に対して耐性を有することを意味する。本発明の活性酸素耐性を有する歯髄細胞は、活性酸素耐性を有していない歯髄細胞と比較して、移植後の細胞生着率が高く、損傷部位の機能改善に対する優れた効果を有するものである。
ここで、歯髄細胞の活性酸素耐性は、以下に限定されないが、例えば、歯髄細胞を培養している培地中に過酸化水素(H2O2)を加えて培養し、その後、MTTアッセイなどにより評価することができる。
本明細書において、「活性酸素耐性を有する歯髄細胞」というとき、好ましい一実施の形態において、以下の条件ア)~カ)のいずれかを満たす:
ア)0.5mM過酸化水素を含む10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した時点の歯髄細胞の生細胞が、過酸化水素を添加していない10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した歯髄細胞の生細胞数に対して、約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上の割合で生存している、
イ)0.6mM過酸化水素を含む10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した時点の歯髄細胞の生細胞が、過酸化水素を添加していない10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した歯髄細胞の生細胞数に対して、約40%以上、より好ましくは約50%以上、さらに好ましくは約60%以上の割合で生存している、
ウ)0.7mM過酸化水素を含む10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した時点の歯髄細胞の生細胞が、過酸化水素を添加していない10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した歯髄細胞の生細胞数に対して、約15%以上、より好ましくは約20%以上、さらに好ましくは約25%以上の割合で生存している、
エ)0.5mM過酸化水素を含む10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した時点の歯髄細胞の生細胞が、FGF2処理していない歯髄細胞を同様の条件で24時間培養した時点の生細胞数に対して、約3倍以上、より好ましくは約4倍以上、さらに好ましくは約5倍以上の割合で生存している、
オ)0.6mM過酸化水素を含む10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した時点の歯髄細胞の生細胞が、FGF2処理していない歯髄細胞を同様の条件で24時間培養した時点の生細胞数に対して、約3倍以上、より好ましくは約4倍以上、さらに好ましくは約5倍以上の割合で生存している、
カ)0.7mM過酸化水素を含む10% FCS-αMEM培地中で24時間培養した時点の歯髄細胞の生細胞が、FGF2処理していない歯髄細胞を同様の条件で24時間培養した時点の生細胞数に対して、約3倍以上、より好ましくは約4倍以上、さらに好ましくは約5倍以上の割合で生存している。
歯髄細胞を神経損傷の治療用移植材として用いるためにFGF2処理する方法は、例えば、国際公開第2014/185470号に記載の方法に従って行うことができる。以下の実施形態に限定されないが、具体的には、例えば、歯髄組織より単離した歯髄細胞を、FGF2を含む培地中で一定期間培養することによりFGF2処理を行う。
ここで、本明細書において、「FGF2を含む培地」とは、例えば、血清を含む基本培地に、成長因子としてFGF2が加えられた培地;血清を含まない基本培地に、FGF2が加えられた培地;血清を含む基本培地に、FGF2が加えられた培地;間葉系幹細胞培養用培地として市販される培地に、成長因子としてFGF2が加えられた培地;間葉系幹細胞培養用培地として市販される培地に、FGF2が加えられた培地が挙げられる。
また、本明細書において、FGF2は、塩基性の線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor;FGF)を意味し、bFGF又はHBGF-2とも呼ばれる。
FGF2は、市販のものを適宜希釈等して使用することができる。移植材に用いられるため、適当なメンブレンでろ過され、細菌、真菌、マイコプラズマ等の陰性が確認されたものが好ましい。FGF2の濃度は、得られる移植材に十分な脊髄損傷治療効果がある限り特に限定されないが、例えば5ng/ml以上、7ng/ml以上、10ng/ml以上とすることができる。好ましい一実施形態としては、10ng/mlの濃度でFGF2が添加された培地を用いて歯髄細胞を培養する方法である。また、FGF2処理は、GARBR1遺伝子の発現が亢進する限りにおいて以下に限定されないが、毎日培地にFGF2を添加する実施形態が好ましい。
本明細書において「基本培地」とは、低分子量の既知成分のみの培地をいい、基本培地の非限定的な例として、BME(Basal medium Eagle's)、MEM(Minimum essential medium)、DMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)などのイーグル培地、RPMI1630、RPMI1640などRPMI(Roswell Park Memorial Institue)培地、フィッシャー培地(Fischer's medium)、F10培地、F12培地などのハム培地(Ham's medium)、MCDB104、107、131、151、153、170、202などのMCDB培地、RITC80-7培地が知られており、適宜選択することができる。
本明細書において「間葉系幹細胞培養用培地として市販される培地」は、分化誘導することなく、分化能を維持した状態で間葉系幹細胞を培養し増殖させるための市販の培地を意味し、例えば、MSCGM培地(LONZA社)、間葉系幹細胞増殖培地(タカラバイオ株式会社)、間葉系幹細胞増殖培地DXF(タカラバイオ株式会社)、Stemline(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(Sigma-Aldrich社)、MF-medium(商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡ライフサイエンス)、BD Mosaic(商標)ヒト間葉系幹細胞用無血清培養キット(BDバイオサイエンス)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において「血清」は、細胞培養に用いられる血清であれば制限されず、例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清、ウマ血清などが挙げられる。本発明に係る治療用移植材がヒトに移植される場合は、ヒト血清であることが好ましい。血清は、培地中、15重量%未満、13重量%未満、10重量%未満、8重量%未満、5重量%未満等であることが好ましい。
また、FGF2を含む培地を用いた歯髄細胞の培養工程における一実施の形態としては、「FGF2以外の成長因子を実質的に含まない培地」を用いることができる。本明細書において「FGF2以外の成長因子を実質的に含まない培地」とは、意図的に添加する成長因子がFGF2のみであることを意味する。
本明細書において「成長因子」は、成長因子又は増殖因子と呼ばれる各種タンパク質を意味し、例えば、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF又はFGF1)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF又はFGF2)、血小板由来成長因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)、インスリン様成長因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)インターロイキン類などが挙げられる。
本発明に係る脊髄損傷治療用移植材の製造方法で用いる培地には、その他、細胞の培養に有用な物質を適宜添加することができる。かかる物質として、例えば、pHを安定させるための緩衝剤(HEPESなど)、pH指示薬のフェノールレッド、抗生物質(ペニシリンG、ストレプトマイシン、アンフォテリシンB、ゲンタマイシン、カナマイシン、アンピシリン、ミノマイシン、ゲンタシン等)、アミノ酸、ビタミン、脂質、糖質、核酸、無機塩、有機酸塩、ミネラル、等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明に係る神経損傷の治療用移植材の製造方法では、上述した培地の中で、歯髄細胞を2回、3回、4回、5回、又は6回以上継代培養することも好ましい。なお、FGF2処理により歯髄細胞に対して活性酸素耐性を付与するには、少なくとも2回以上の継代培養の期間、または、少なくとも6日以上の培養を行うことが好ましい。FGF2処理した歯髄細胞であっても、FGF2を含まない培地中に1~2継代培養する、または、FGF2を含まない培地中に3日程度培養することにより活性酸素耐性を失ってしまう。よって、歯髄細胞が神経損傷の治療効果を奏する限りにおいて制限されないが、FGF2を含む培地を用いた培養は、治療用移植材として歯髄細胞を用いる直前まで行うことがより好ましい。
培養方法は、FGF2以外の成長因子を実質的に含まない培地で培養すること以外特に限定されず、当業者が、培養する細胞の種類に応じて、種々の条件(温度、湿度、CO2濃度、pH、培地の交換頻度等)を選択することが可能である。
本発明に係る神経損傷の治療用移植材の製造方法は、上述した培養工程に加え、移植材の製造方法として適切な各種の工程を行うことができる。例えば、培養工程で得られた培養物を、ヒアルロン酸、コラーゲンゲル、フィブリノーゲン、軟寒天、合成ポリマーなどの粘性の高い物質と混合して流動性を調節する工程を行ってもよい。適度な流動性を付与することにより、移植材を損傷部位に定着させることができる。
コラーゲンゲル、軟寒天、合成ポリマーなどのゲルと混合後、ある程度の期間培養を行って、三次元培養を行ってもよい。
本明細書において「神経損傷」は、中枢及び末梢の神経損傷を意味し、具体的には、脊髄損傷、脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、脊髄出血、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫損傷、坐骨神経痛、又は糖尿病による末梢神経障害などを含むがこれらに限定されない。本発明の移植材は、移植によって治療効果が得られる限りあらゆる神経損傷に適用することができる。治療効果とは、疾患を治癒させる効果に限定されず、疾患に伴う少なくとも一つの症状を改善する効果や、疾患の進行を阻止又は遅延する効果等を含む。
本発明に係る神経損傷の治療用移植材の製造方法で得られた治療用移植材の効果は、例えば神経損傷モデル動物に対して細胞移植をすることにより評価することができる。
例えば、公知の方法により作製したラット脊髄損傷モデルを用いて評価することができる。具体的には、ラットをイソフルレンなどの麻酔下で、椎弓切除後、脊髄を、外科用メスを用いて完全に切断する。なお、切断部位は、例えば、第10胸椎(Th10)とすることができる。脊髄を切断後に止血処理を行い、次いで、歯髄細胞を含む培地を、シリンジを用いて損傷部位に移植する。なお、例えば、約1×106個の濃度で細胞を含む培地10μlを、損傷部位に移植する。細胞注入後、10分間程度静置し、縫合により傷口をふさぐ。ラットは、手術後に目を覚ますまで、復温用チャンバーに置いてもよい。また、必要に応じて、麻酔の拮抗薬を投与してもよい。手術後は、必要に応じて、抗生物質や免疫抑制剤を投与してもよい。
例えば、移植より7週間後の時点において、運動機能の改善の評価や歯髄細胞移植部位の免疫組織化学染色による組織修復の評価、電気生理学的手法による損傷部位の機能回復の評価を行い、治療用移植剤の効果を確認する。
運動機能の評価はBBBスコア(Basso DM et al., J Neurotrauma. 1995 Feb;12(1):1-21)により評価することができる。
また、免疫組織化学染色は、公知の方法により作製した脊髄損傷部位の凍結切片に対して行うことができる。具体的には、麻酔下でラットを経心的に灌流固定し、脊髄組織を採取する。包埋剤を用いて組織を凍結包埋し、クリオスタットを用いて切片を作製する。免疫染色は、成長円錐マーカーである抗growth-associated protein (GAP) 43抗体、アストロサイトマーカーである抗glial fibrillary acidic protein (GFAP)抗体、抗GFP抗体、オリゴデンドロサイトマーカーである抗MBP抗体を用いて組織を染色することができる。神経損傷部位に歯髄細胞を移植した際、損傷部を介して、GAP43陽性細胞の再生軸索が伸長し、その軸索をMBP陽性細胞が取り囲むようにして有髄化した再生軸索が確認できる、または、その再生軸索の足場としてGFAP陽性の内在性アストロサイトが保全されていることが好ましい。
また、例えば、歯髄細胞を神経損傷部位に移植した際、好ましい形態においては、歯髄細胞移植1週間後において、GAP-43 陽性の脊髄再生線維が歯髄細胞を移植していない対照区よりも3倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは7倍以上認められる。
また、電気生理学的手法による評価は、脊髄切断部を介した電気的な活動電位を測定することにより行うことができる。例えば、Th10の部位を切断したラットに対しては、麻酔下において、Th10を介して、Th8にて電気刺激を加え、Th13にて活動電位を検出できるように、脊髄に対して微小電極を挿入する。電気刺激としては、例えば、短い矩形波パルス(0.2秒)を2秒ごとに与え、Th13における活動電位の検出および潜時を測定することにより評価することができる。
本発明に係る神経損傷の治療用移植材は、上述した、FGF2処理することによりGABRB1遺伝子が発現している歯髄細胞を含むものである。神経損傷の治療用移植材の製造方法における一実施の形態としては、歯髄細胞を培養していたFGF2を含む培地を、そのまま歯髄細胞を含む状態で治療用移植材とすることもできるし、別の培地や溶液などに歯髄細胞を移してから治療用移植材としてもよい。移植材は、コラーゲンゲル、軟寒天、合成ポリマーなどのゲルを含んでいてもよく、適当なゲル化剤や増粘剤によって粘性を調節してもよい。
本発明は、上述した神経損傷の治療用移植材を、神経損傷部位に移植する工程を含む、神経損傷の治療方法も包含する。
神経損傷治療用移植材は、例えば、神経損傷部位に、注射器等によって注入することができる。また、損傷部位を切開して移植材を配置してもよい。移植材が他家細胞を含む場合、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を同時に投与してもよい。神経損傷治療効果が得られる限り、他の医薬と併用することも可能である。
投与量及び投与回数は、当業者が適宜決定することが可能である。
神経損傷の治療方法の対象はヒトに限られず、その他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ)であってもよい。
本明細書においては、ヒト脊髄損傷の治療方法の例を以下に示すが、治療方法はこれに限られない。
上述した本発明に係る神経損傷の治療用移植材の製造方法によって製造した治療用移植材、又は、本発明に係る神経損傷の治療用移植材を、麻酔下にあるヒト脊髄損傷患者の脊髄損傷部位に対して注射器等を用いて直接、歯髄細胞の有効量を移植することができる。
また、本発明の神経損傷の治療方法は、一実施の形態において、活性酸素除去剤と併用して、上述した神経損傷の治療用移植材を、神経損傷部位に移植する工程を含む方法である。
本明細書において「活性酸素除去剤」とは、生体内の神経損傷部位に生じる活性酸素による損傷部位または移植した歯髄細胞への障害を防ぐ効果を有するものを意味し、歯髄細胞の移植と同時に、または、併用して投与されるものである。
このような、活性酸素除去剤としては、生体に投与することができ、損傷部位における活性酸素の障害から移植細胞を保護する効果を有するものであれば特に制限されず、例えば、エダラボン、ビタミンC、Nrf2 誘導剤、グルタチオン活性誘導剤などの公知の活性酸素除去剤を用いることができる。
活性酸素除去剤の投与方法や投与量、投与回数は、使用する活性酸素除去剤や損傷部位により、当業者であれば適宜設定することができる。
なお、例えば、活性酸素除去剤として、エダラボンを歯髄細胞の移植と併用して脊髄損傷ラットに投与する場合、以下に限定されないが、細胞移植手術の直後から1日2回1週間にわたりエダラボンを3 mg/kgの用量で腹腔内に投与することができる。なお、エダラボンを脊髄損傷モデルに単独投与するだけでは、優位な機能回復が得られないことが確認されている。
また、例えば、活性酸素除去剤として、エダラボンを歯髄細胞の移植と併用してヒトに投与する場合、以下に限定されないが、細胞移植手術の直後から1日1回または2回に分けて、2週間にわたりエダラボンを60mg/kgの用量で点滴静注することができる。
また、本発明の神経損傷の治療方法は、活性酸素除去剤と併用して、神経損傷の治療用移植材を神経損傷部位に移植するものである。活性酸素除去剤は、上述のように、神経損傷部位に生じる活性酸素の細胞障害を防ぐ効果を有するものである。したがって、活性酸素除去剤の投与と併用して移植される歯髄細胞は、必ずしも活性酸素耐性を有している必要はない。すなわち、移植に用いる歯髄細胞は、必ずしも、FGF2処理により活性酸素耐性を得た歯髄細胞でなくても良い。
本発明は、神経損傷の治療用移植材の製造用キットも包含する。かかるキットには、歯髄細胞を培養するための培地またはその成分の全部又は一部と、FGF2と、遺伝子の発現測定用試薬(例えば、GABRB1増幅用のプライマーなど)とが含まれている。また、細胞移植時に用いる活性酸素除去剤が含まれていても良い。歯髄細胞を培養するための培地としては、基本培地又は間葉系幹細胞培養用培地が挙げられる。FGF2は培地と別になっていてもよく、最初から混合されていてもよい。また、培地は、超純水など、実験室に常備される材料はユーザにおいて準備するものとし、それに混合するだけで本発明の培地を調製できるよう、必要な成分の全部又は一部を含むものであってもよい。
本発明のキットは、実験室での実験に使用されるものであってもよいし、大量培養に用いられるものであってもよい。培養液のほか、培養容器、ウイルスフィルタ、培養容器のコーティング材料、各種試薬、緩衝液、使用説明書等を備えていてもよい。
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書中に引用する文献の内容は、本明細書に参照として組み込まれる。
下記実施例1および2に記載するヒト歯髄組織の回収、ゲノム/遺伝子解析は、岐阜大学倫理委員会により承認されたものである(承認番号26-116)。全ての動物実験は、岐阜大学の動物実験委員会により承認されたプロトコール(承認番号25-20,25-68,27-83)に厳密に従った。
<実施例1.FGF2処理したヒト歯髄細胞による脊髄損傷治療>
これまでに、歯髄細胞の移植またはFGF2投与のどちらかが一方のみで、完全に脊髄が切断された状態から機能的回復が促進されたことが報告されていた。これらの効果を確かめるために、ラットの脊髄損傷部にヒト歯髄細胞を移植し、電気生理学的テストと組み合わせて後肢の運動機能を評価(BBBスコア)する試験を行った。
また、ヒト歯髄細胞を調製するために用いた発育段階の歯については、由来するドナーごとにiPS誘導への効率に違いがあることを確認している。本実施例においては、下記表に示す、年齢および性別の異なる4人のドナーより得られたそれぞれのヒト歯髄細胞系統を用いて、移植後の脊髄損傷の改善効果を比較した。
Figure 0006998057000001
なお、具体的には、下記方法により行った。
<1-1.ヒト歯髄細胞の単離および培養、ならびに、ウイルス感染>
本発明者らは、岐阜大学医学部付属大学病院にて、およそ300DPC系統を収集した。インフォームドコンセントに基づき提供された患者由来のヒト歯髄細胞は、公知の方法(Gronthos et al., 2000, Takeda et al., 2008)により単離および培養を行った。
遺伝子導入用のレンチウイルスを、レンチウイルスベクター(EF-1α promoter, Venus) (Supplementary Table S.)およびプラスミド(pLP/VSV-G, pLP1, pLP2) (Miyoshi, H. et al., Development of a self-inactivating lentivirus vector. J. Virol. 1998)を用いて、HEK293FT細胞株中で産生した。なお、レンチウイルスベクターは、EF1αプロモーターの下流にVenus遺伝子を結合した配列を含むものである。
ヒト歯髄細胞は、37℃、MSCGM培地(Lonza)中、21%O2、5CO2の加湿空気下において培養し、5~6継代時の移植において細胞をトレースするためにレンチウイルスを感染させた。レンチウイルス感染後、ヒト歯髄細胞はα-MEM培地(Sigma)中で培養を行った。ウイルス感染の効率は、FACSを用いて確認した。
また、FGF2(R&D SYSTEMS)をα-MEM培地中に、毎日10ng/μlの濃度で添加し、FGF2で処理したヒト歯髄細胞は、継代10~13代目において、移植に使用した。FGF2処理した各ドナー由来の歯髄細胞移植区を、それぞれ、DP1-FGF(+)区、DP31-FGF(+)、DP165-FGF(+)、DP296-FGF(+)という。また、FGF2添加に対する対照区として、FGF2を含まないα-MEM培地中で、DP1またはDP31を継代したものを作製し、継代10~13代目において、同様に移植に使用した(それぞれ、DP1-FGF(-)区、または、DP31-FGF(-)区という)。
<1-2.動物および移植手術>
雌のウィスター系成体ラット(148g~168g)を日本エスエルシー株式会社より購入した。ラットは、1.5~2%イソフルレン(TK-7、株式会社バイオマシナリー、日本)の吸入により適当な麻酔下におき、椎弓切除後、脊髄の第10胸椎(Th10)を、外科用メス(Surgical blade stainless steel no.11 mini, kai medical, Japan)を用いて正確にゆっくりと2度切断することにより、完全に脊髄を切断した。また、切断は目視により確認した。止血処理後、10μl培地中に約1×106個の濃度で細胞を含む培地を、ハミルトンシリンジ(Sigma-Aldrich, Missouri, USA)を用いて注意深く、ゆっくりと損傷部位に注入した。細胞注入後、10分間接触しないように放置した。10分間の放置後、縫合により傷口をふさいだ。また、対照区のラットには、細胞を注入する代わりに、脊髄切断部位に同量のPBSを添加し、同様に10分間の静置後、縫合により傷口をふさいだ(PBS投与区)。ラットは、手術後に目を覚ますまで、復温用チャンバーに置いた。
その後、抗生物質(sulbactam/ampicillin, SANDOZ, 10 mg/kg body weight)を1週間の間毎日投与した。また、ヒト歯髄細胞を移植したラットと対照区のラット(PBS投与区)に対して、免疫抑制剤((cyclosporine, Novartis, 10mg/kg body weight)を手術前日から手術後毎日投与した。全ての実験動物は、長いノズルを備えた特注の給水設備により容易に給水を行うことができ、かつ、常時食餌できる環境下で飼育し、かつ、26℃、65%湿度、1日12時間の照明の条件とした。
<1-3.ラット硝子体腔へのヒト歯髄細胞の移植>
FGF2で処理したヒト歯髄細胞の発がん性を調べるために、上記1-1.に記載の方法によりFGF2含有培地で培養したヒト歯髄細胞(DP31)を、ラット硝子体腔に移植した。
具体的には、1.5~2%イソフルレンによりラットを麻酔下におき、ラットの角膜を4%オキシブプロカイン(Benoxil, Santen)によりさらに麻酔した。角膜に対して、27ゲージの皮下注射針(terumo, USA)を用いて穴を開けた。その後、皮下注射針を取り除き、30ゲージの鈍針(Hamilton Company, Reno, NV, USA)を、作成した穴を通じて、かつ、光彩と水晶体を避けて、前房へ挿入した。針は、硝子体腔を通じて網膜表面に向けて挿入を進め、針が網膜表面に届いた後、FGF2で処理したDP31を含むDMEM培地10μlを硝子体腔内へ注入した。細胞の注入後、オフロキサシン点眼液(Tarivid topical solution, Santen)1滴を、目に点眼した。本試験には6匹のラットを用い、そのうち2匹は、0.5 × 106の細胞を移植し、残りの4匹は4 × 106の細胞を移植した。全てのラットは、免疫抑制剤((cyclosporine, Novartis, 10mg/kg body weight)を手術前日から手術後毎日投与した。
<1-4.BBBスコア>
客観的に手術後のラットの運動機能を分析するために、手術後、毎週30秒から2分間の間、ラットをビデオに記録した。BBBスコア分析を以前に行ったことのあるそれぞれ独立した観察者により集団同一性を排除し、当該ビデオを見ることによりBBB locomotion rating scaleを評価した(Basso et al., 1996)。詳細な評価基準を下記図1に示した。
<1-5.電気生理学的試験>
ヒト歯髄細胞移植後のラットについて、脊髄切断部を介した電気的な活動電位を伝達することが可能であるか確かめるために、下記方法により電気生理学的試験を行った。
ウレタンを用いてラットを麻酔下におき、気道を確保するためラットの器官を切開した。移植片を通した電気的活動の伝達について、下記方法を用いて評価した。
本試験においては、タングステン微小電極(φ0.2 mm, Unique Medical, Japan.)を1mmの間隔で備える別注の双極型電極を使用した。当該電極は、Th8脊髄文節を刺激し、かつ、Th13脊髄文節にて電気的活動を記録するように、脊髄の中心に対して1.0m下方かつ0.5~0.75mm側方に挿入した。微小電極の挿入は、脊椎固定装置(ST-7R-HT, NARISHIGE, Tokyo, JAPAN)を用いてラットを固定し、マニュピレーターにより微小電極を制御するとともに、手術用顕微鏡下で微小電極の位置を確認することにより行った。電気刺激としては、短い矩形波パルス(0.2秒)を2秒ごとに与えた。
<1-6.免疫組織化学>
免疫組織染色のために、手術より8週間後、ラットを麻酔し、1%PBSおよび4%パラホルムアルデヒドを用いて経心腔的灌流により固定処理を行った。脊髄組織を取り出し、24時間、4%パラホルムアルデヒドでさらに後固定し、その後、30%スクロース溶液中で一晩置いた。その後、脊髄をOCTコンパウンド(Sakura Finetek)中で凍結切片とし、クライオスタット(CM3050S, Leica)を用いて25mmの矢状断面凍結切片を作製した。凍結切片は、一次抗体として、抗GFAP抗体(rabbit IgG,1:500, abcam)、抗GAP-43抗体(mouse IgG, 1:200, Millipore)、抗GFP抗体(rabbit IgG, 1:200,Millipore)、抗MBP抗体(rabbit IgG, 1:200, Millipore)を反応させた。次いで、二次抗体として、anti-rabbit IgG-Alexa 546、anti-mouse IgG-Alexa Fluor 488、anti-mouse IgG-Alexa 546、および、anti-rabbit IgG-Alexa Fluor 488を用いて染色し、また、DAPI (Sigma-Aldrich)により染色した。染色した切片の画像は蛍光顕微鏡(BZ-9000, Keyence)を用いて取得した。
<1-7.結果>
その結果、FGF2を添加せずに培養したDP1(DP1-FGF2(-)区)およびDP31(DP31-FGF2(-)区)を移植した区は、PBS投与区と比較して運動機能の有意な回復を観察することができなかった(図2a)。同様に、DP1-FGF2(-)およびDP31-FGF2(-)を移植した6匹のうち、脊髄損傷後8週間目において、完全に切断された部位を介した電気的な活動電位を検出できたのは1匹のみであった(図2b)。次に、10μg/mlFGF2含有α‐MEM(FGF2単独投与区)を用いた同様の試験を試みたところ、PBS投与区であって免疫抑制剤を使用しなかったものと比較してわずかな機能改善のみを示した(図3a)。FGF2単独投与区では4匹のうちたった一匹のみから活動電位を検出することができた(図3b)。
一方、FGF2含有培地で培養したDP1またはDP31を投与した区(DP1-FGF2(+)区またはDP31-FGF2(+)区)は、いずれの区についても、脊髄損傷後の有意な回復を示し、活動電位の改善が見られた(図4)。
FGF2で処理したヒト歯髄細胞が移植後の部位において長い時間維持されず、脊髄損傷部位からすぐに消失することを確認するために、核移行シグナルを含むVenusタンパク質を発現するヒト歯髄細胞を移植した。その結果、脊髄損傷より8週間後の時点において損傷部位においてはほとんど蛍光が検出されなかった。この結果を支持するように、同じヒト歯髄細胞を硝子体腔へ移植した際にも、移植より3週間後の時点において硝子体の割面を蛍光顕微鏡 (SZX-RFL2, OLYMPUS)にて観察したところ、蛍光を検出することができなかった(図5)。これは、移植した細胞が本試験の脊髄損傷モデルシステムにおいて検出されるのに十分な長さで細胞が維持されず、移植した細胞の腫瘍化は観察されなかったことを示す(なお、実施例4の結果ではFGF2処理した歯髄細胞は移植7週経過後もわずかながら残存しており、検出されないことはなかった。レンチウイルスベクターの構造の違いにより、検出力に違いがあるものの、二つの結果はいずれも移植した細胞のほとんどは移植した脊髄組織では維持されないことを示すものである。)
また、由来するドナーごとに治療効果を比較したところ、FGF2含有培地で培養したDP1、DP31、または、DP165を移植した区(DP1-FGF(+)区、DP31-FGF2(+)区、または、DP165-FGF2(+)区)では、いずれの区も同様に、対照区(PBS投与区)と比較して、BBBスコアにおいて運動機能の有意な改善が見られた(図4a)。しかしながら、興味深いことに、FGF2含有培地で培養したDP296を移植した区(DP296-FGF2(+)区)においては、同様の効果を確認することができなかった(図4a)。
また、これを支持するように、DP296-FGF2(+)区では、0.6mA の電気刺激を与えた際に、DP1-FGF(+)区、DP31-FGF2(+)区、または、DP165-FGF2(+)区の3つの区の潜時(4.24±0.38ms, 3.67±0.34ms, 3.72±0.32ms)と比較して、有意に潜時が延長していた(6.14±1.4ms) (図4bおよびc)。
なお、脊髄損傷を受けていない場合、Th8における刺激は、Th13において短潜時誘発電位を引き起こす。PBS投与区における活動電位は、全く生じなかった。一方で、DP1、DP31、およびDP165を移植した区では、潜時が延長した誘発反応の回復が観察された。また、DP296においては、上述のように、活動電位を観察することができたが、脊髄損傷していない区と比較した場合、潜時反応がかなり延長した。
完全に脊髄を切断し、ヒト歯髄細胞移植より8週間後の時点における脊髄の免疫組織化学の結果を図6に示す。DP165-FGF(+)区では、内在するGFAP陽性アストロサイトに沿って、GAP43陽性軸索が大量に増加していた(図6aおよびb)。
加えて、再生した軸索は髄鞘形成にも関与しており、MBP陽性である髄鞘を確認することができた(図6c)。一方で、DP296-FGF(+)区では、ごくわずかな限られた再生のみが観察された(図6d,e,およびf)。PBS投与区およびDP296-FGF(+)区において、GFAP陽性細胞は、そのほとんどが尾側の脊髄において消失していた。一方で、DP165-FGF(+)区においては、脊髄を完全に切断してから8週間後の時点においても維持されていた(図7)。
<実施例2.FGF2によるヒト歯髄細胞のGABRB1発現制御>
FGF2処理により歯髄細胞の遺伝子発現が制御されることを確認するために、DP1、DP31、DP165、および、DP296を用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。なお、DP296は、実施例1において示すように、FGF2処理によっても神経損傷の治療効果を奏しない歯髄細胞である。遺伝子発現解析に用いた各ヒト歯髄細胞は、上記1-1.の方法により単離・培養し、FGF2(R&D SYSTEMS)をα-MEM培地中に毎日10ng/μlの終濃度で添加し、FGF2で処理したヒト歯髄細胞を調製した(FGF2処理区)。また、FGF2非添加区として、同様に単離したヒト歯髄細胞について、FGFを含まないα-MEM培地で培養したものを作製した(FGF2非処理区)。各細胞は、継代10~13代目の細胞を用いた。また、cDNAマイクロアレイにより網羅的な遺伝子解析を行い、その後、特定の遺伝子発現についてReal-time PCR法を用いて解析した。なお、本実施例に用いた歯髄細胞は、レンチウイルスによる遺伝子導入を行っていないものを用いた。
<2-1.cDNAマイクロアレイ>
培養後のヒト歯髄細胞からのTotal RNAは、Rneasy(登録商標) Plus Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて単離した。Agilent 2100 バイオアナライザを用いてRNAの定量化を行った後、100ngのtotal RNAは、Low Input Quick Amp Labeling kit(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を用いて、プロトコールに従い、cDNAへ逆転写し、増幅し、Cy3標識CTPで標識した。標識および精製工程の後、cDNAはND-1000 分光光度計(Nano Drop Technologies, Wilmington, DE)を用いて定量化し、SurePrint G3 Human 8x60K v2 oligo-DNAマイクロアレイ(Agilent Technologies)とハイブリダイズさせた。ハイブリダイズの後、アレイは、Gene Expression Wash Pack (Agilent Technologies)を用いて洗浄した。ハイブリダイズしたアレイの蛍光画像は、Agilent DNAマイクロアレイスキャナーにより取得し、蛍光強度はAgilent Feature Extraction software ver.10.7.3.1を用いて決定した。各サンプルは、一回ずつ分析を行った。遺伝子発現のレベルはGene Spring GX12.6 (Agilent Technologies)を用いて決定した。
<2-2.Real-time PCR>
培養後のヒト歯髄細胞からのTotal RNAは、Rneasy(登録商標) Plus Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて単離した。real-time PCRのために、cDNAからなるPCR産物を、SYBR Premix Ex Taq (Takara, Shiga, Japan)およびThermal Cycler Dice Real-Time System (Takara)を用いて作成した。使用したプライマーを表2に示す。
Figure 0006998057000002
<2-3.結果>
cDNAマイクロアレイ解析の結果、FGF処理区とFGF非処理区とで比較し、FGF2処理により5倍以上有意に発現が上昇した遺伝子が131遺伝子存在した。とりわけ、GABRB1は、FGF2処理により357倍発現上昇を示した。なお、下記表は、FGF処理区とFGF非処理区とで比較し、FGF2処理により5倍以上有意に発現が上昇した遺伝子のリストである。
Figure 0006998057000003
ここで、DP1、DP31、DP165、およびDP296におけるGABRB1の発現レベルを評価するために、Real-time PCRアッセイを行った。その結果、予想通り、DP1、DP31、およびDP165においては、FGF2処理によりGABRB1の発現が有意に上昇しており、発現が亢進していた遺伝子のうち最も発現量が増加していた。しかしながら、DP296におけるGABRB1の発現は有意な変化を示さなかった(図8)。この結果は、FGF2処理によるGABRB1遺伝子発現が、神経損傷の治療効果の指標として用いることができることを示す。また、FGF2により上方制御される他の7つの遺伝子(MMP1遺伝子、DRD2遺伝子、ABCA6遺伝子、TMEM100遺伝子、THBD遺伝子、NTSR1遺伝子、および、SCG2遺伝子)は、4つの異なる細胞株において同様の発現プロファイルを示した(図9)。したがって、これらの7つの遺伝子のそれぞれについて、発現の亢進は神経損傷の治療用移植材として用いる歯髄細胞には重要である。
<実施例3.FGF2処理によるヒト歯髄細胞の活性酸素に対する耐性への影響>
FGF2非処理の歯髄細胞の移植では、神経損傷の改善に有効な効果を示さなかった。ここで、脊髄損傷部では、急性期に活性酸素の濃度が上昇することが知られている。活性酸素は、脊髄内の神経系細胞だけでなく、移植した細胞も傷害すると考えられる。そこで、FGF2処理が歯髄細胞の活性酸素に対する細胞毒性に耐性を有するのか否かについて確認するため、下記試験を行った。
<3-1.実験材料>
ヒト歯髄組織は岐阜大学医学部口腔病態学講座において、患者の研究目的での使用を書面により同意を得たうえで採取した。また誘導・培養した歯髄細胞は連結不可能匿名化された形で凍結保存・管理されており、個人情報は厳密に守られている。岐阜大学・岐阜薬科大学それぞれの生命倫理委員会に同細胞を用いた研究計画を提出、承認を受けて、同ストックから一部の細胞を供与され実験に用いた。間葉系幹細胞基本培地 (mesenchymal stem cell basal medium : MSCBM) はロンザジャパン株式会社、α-MEM培地はシグマアルドリッチジャパン株式会社からそれぞれ購入した。また、ウシ胎仔血清 (fetal calf serum : FCS) はHyclone社、FGF-2はR&D System社からそれぞれ購入した。
<3-2.歯髄細胞の培養>
歯髄組織から単離したヒト歯髄細胞DP31(すなわち、実施例1および2で用いたDP31と同じドナー由来の歯髄細胞)を10 cm シャーレ1枚にセミコンフレントになった状態から、2-3日に1度継代(1枚を3枚に継代)し、12継代までをMSCBMにて培養した。その後、組織内動態を評価するために、レンチウイルスベクターを用いてCAG プロモーターに連結したEGFP遺伝子およびpuromycin耐性遺伝子を歯髄細胞に導入し、puromycin を添加培養することで、遺伝子導入細胞のみを選別した。この際、細胞死を起こした細胞はほとんど認められなかった。遺伝子導入した歯髄細胞を継代後、下記の培養スケジュールで歯髄細胞を培養した。
まず、FGF2の添加のタイミングと活性酸素に対する耐性への影響との関係を調べるために、歯髄細胞を下記i)~iv)の培養スケジュールで培養した。また、i)~iv)の培養スケジュールの概要を図10に示す。
i)10%FCS含有α-MEM培地(10% FCS-αMEM)にて6継代培養した歯髄細胞を、10%FCS-αMEM培地にて、さらに49時間培養する(S/S:DPC-S区)。
ii)10%FCS含有αMEM培地(10% FCS-αMEM)にて6継代培養した歯髄細胞を、10%FCS-αMEM培地にて、さらに48時間培養した後、FGF-2(最終濃度: 10 ng/ml)を含む10% FCS-αMEMで1時間培養する(S/F:DPC-S区)。
iii)FGF-2(最終濃度: 10 ng/ml)を含む10% FCS-αMEM培地にて6継代培養した歯髄細胞を、FGF-2(最終濃度: 10 ng/ml)を含む10% FCS-αMEM培地にて、さらに49時間培養する(F/F:DPC-FS区)。
iv)FGF-2(最終濃度: 10 ng/ml)を含む10% FCS-αMEM培地にて6継代培養した歯髄細胞を、FGF-2(最終濃度: 10 ng/ml)を含む10% FCS-αMEM培地にて、さらに24時間培養した後、10%FCS-αMEM培地にて25時間培養する(F/S:DPC-FS区)。
また、S/F:DPC-S区として培養した歯髄細胞をFGF2含有培地で培養した際の培養期間と活性酸素耐性への影響との関係、または、F/S:DPC-FS区として培養した歯髄細胞をFGF2不含培地で培養した際の培養期間と活性酸素耐性への影響との関係を調べるために、培養期間を変更した下記v)およびvi)の条件で歯髄細胞を培養した。
v)S/F:DPC-S区の培養により得られた歯髄細胞を、FGF-2(最終濃度: 10 ng/ml)を含む10% FCS-αMEM培地にて、さらに1日、2日、5日、または、11日間培養する(S/F1区、S/F2区、S/F5区、または、S/F11区)。
vi)F/S:DPC-FS区の培養により得られた歯髄細胞を、10% FCS-αMEM培地にて、さらに1日、2日、5日、または、11日間培養する(F/S1区、F/S 2区、F/S 5区、F/S 11区とする)。
なお、i)~vi)の各培養スケジュールにおいて、継代培養後の培養は、24時間ごとに培地の交換を行った。
<3-3.活性酸素に対する耐性試験>
活性酸素に対する耐性試験は、上記3-1.に記載の各培養スケジュールで得られた歯髄細胞に対して過酸化水素(H2O2)(和光純薬工業株式会社製)を添加した10% FCS-αMEM培地中で24時間培養し、その後MTTアッセイを行うことで活性酸素に対する耐性を評価した。MTTアッセイは、MTT (Sigma 社製)を0.5mg/mL になるように添加し、CO2 インキュベーターにて 4時間反応させ、その後形成されたホルマザンを 0.04M HCl を含む イソプロパノールで溶解して 570 nM の吸光波長を測定した。
なお、過酸化水素は、0mM(添加なし)~0.7mMの範囲で培地に添加した。また、過酸化水素を添加しない培地を用いた条件を対照区とした。
<3-4.結果>
上記i)~iv)培養スケジュールで培養した歯髄細胞の活性酸素に対する耐性試験の結果を図11に示す。図11に示すように、S/S:DPC-S区およびS/F:DPC-S区と比較して、F/F:DPC-FS区およびF/S:DPC-FS区ではより多くの生細胞を確認することできた。特に、過酸化水素を0.5mM以上の濃度で含む培養液中で歯髄細胞を24時間培養した際、S/S:DPC-S区およびS/F:DPC-S区ではほとんどの細胞が生存していなかったのに対して、F/F:DPC-FS区およびF/S:DPC-FS区ではより多くの生細胞を確認することできた。
また、上記v)およびvi)培養スケジュールで培養した歯髄細胞の活性酸素に対する耐性試験の結果を図12に示す。図12に示すように、S/F:DPC-S区の歯髄細胞であっても、FGF2を含む培地中で11日間培養した区では、活性酸素に対する抵抗性が増大した。また、図示はないが、FGF2を含まない培地での培養期間(1~7継代)によらず、FGF2含有培地で2~4回継代培養する(約6~12日間)ことにより、歯髄細胞の活性酸素に対する抵抗性が増大することを確認した。一方で、活性酸素に対する抵抗性を獲得したF/S:DPC-FS区の歯髄細胞であっても、FGF2を含まない培地中で11日間培養することにより活性酸素に対する抵抗性を消失した(図12)。また、図示はないが、活性酸素に対する抵抗性を獲得した歯髄細胞を、FGF2を含まない培地で1~2継代(約3~6日間)培養することにより活性酸素に対する抵抗性が消失することを確認した。
<実施例4.活性酸素除去剤併用による歯髄細胞の移植>
<4-1.脊髄損傷モデルラット>
Wistar系ラット(7週齢、雌)は岐阜薬科大学動物飼育・動物実験委員会の承認を経て日本エスエルシー社から購入した。また塩酸メデトミジン、塩酸アチパメゾールは日本全薬工業株式会社、ミダゾラムはサンド株式会社、酒石酸ブトルファノールはMeiji seika ファルマ株式会社、注射用水は大塚製薬株式会社、免疫抑制剤であるシクロスポリンAはエルシーラボラトリーズ社からそれぞれ購入した。
<4-2.脊髄損傷モデルラットの作製と脊髄損傷モデルラットへの歯髄細胞の移植におけるエダラボンとの併用>
塩酸メデトミジン、ミダゾラム、酒石酸ブトルファノールを混合し、3種混合麻酔薬として調製し、7週齢雌性Wistarラットに5 ml/kgの投与量で腹腔内投与した。正向反射等の有無や肉球に対する刺激等により深麻酔を確認後、第10胸椎周辺で背部を正中線に沿って2 cm切開し、脂肪及び筋組織を剥離して脊柱を露出させた。その後第10胸椎の椎弓を剥離し、手術用メス(Feather disposable scalpel mini no.14)で第10胸髄(T10)を横断的に完全切断した。止血の確認後、マイクロピペットを用いて 10 μlのリン酸緩衝化生理食塩水(phosphate-buffered saline: PBS)に懸濁した 1.0×106 個の歯髄細胞を切断部の吻側断端と尾側断端の間隙に注入し、背筋と皮膚を縫合した。なお、歯髄細胞は、上記3-2.に記載のS/S:DPC-S区の培養スケジュールにより培養した細胞を用いた。手術後は塩酸メデトミジン拮抗薬である塩酸アチパメゾールを 0.75 mg/kgの容量で腹腔内投与した。脊髄を全切断したラットは排尿能力を完全に失うため、飼育期間中1日2回、膀胱を刺激し排尿させた。また、異種間移植であるため、免疫抑制剤であるシクロスポリンAを 10 mg/kg体重の用量で1日1回腹腔内に投与した。
エダラボン投与区およびエダラボン投与併用細胞移植区には、術後直後から1日2回1週間にわたりエダラボン(和光純薬工業株式会社)を3 mg/kgの用量で腹腔内に投与した。
<4-3.凍結切片作製>
細胞移植より7週間後において、脊髄損傷モデルラットはエーテル過麻酔下、4 % (w/v) パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde : PFA) 溶液で経心的に灌流固定した。続いて組織を摘出して同溶液で4 ℃にて1晩、後固定したのち、20 % (w/v) スクロースを含むPBSに浸漬し固定液を置換した (一晩)。その後、包埋剤のO.C.T. compoundで凍結包埋して凍結ブロックとし、-80 ℃にて保存した。作製した凍結ブロックからクリオスタット (Leika社製、M1800) を用い25 μm厚の矢状断連続切片を作製し、細切したMASコート付蛍光用スライドガラスに貼り付け、以下の組織化学的解析に用いた。
<4-4.免疫組織化学染色>
免疫組織化学染色に用いた試薬は下記のように準備した。ブロックエースは大日本住友製薬株式会社、Vectastain ABC elite kitはVector社、MAS(Matsunami adhesive silane)コートスライドガラスは松波硝子株式会社、包埋剤O.C.T. Compoundはサクラファインテック社、封入剤であるPermaFluor Aqueous Mounting MediumはThermo Fisher Scientific社から購入した。抗growth-associated protein (GAP) 43マウス抗体、抗glial fibrillary acidic protein (GFAP) ウサギ抗体は Chemicon 社、Alexa Fluor 488 標識抗マウス IgG 抗体、Alexa Fluor 546 標識抗ウサギ IgG 抗体は Molecular Probes 社からそれぞれ購入した。
以下、具体的な方法を記載する。上記4-3.で作製した薄切片をPBSで洗浄後、抗体の浸透性を高めるために、0.3 % (v/v) Triton X-100を含む0.1 M Tris-HCl buffer ( pH.7.4 ) に37 ℃、30分間浸漬処理した。組織切片をPBSにて洗浄後、2 % ブロックエースでブロッキングした。その後GFAP、GAP-43またはGFPをそれぞれ特異的に認識する1次抗体を加えて4 ℃で一晩反応させた。PBSで3回洗浄したのち、2 % ブロックエースを含む PBS で500倍に希釈した二次抗体 (Alexa Fluor 488 標識抗マウス IgG 抗体または Alexa Fluor 546 標識抗ウサギ IgG 抗体) を加え、室温にて3時間反応させた。PBSで3回洗浄したのちPermaFluor Aqueous Mounting Mediumを用いて封入した。封入後十分に乾燥させ、オールインワン蛍光顕微鏡 (KEYENCE社、BZ-9000) を用いて染色像を観察、撮影した。
<4-5.脊髄損傷モデルラットへ歯髄細胞移植後の脊髄組織内の生着歯髄細胞の定量解析>
上記4-3.で作製した矢状断連続切片の内、脊髄正中線および正中線から左右両側にそれぞれ0.2および0.4 mmの位置の切片を各1枚ずつ、計5枚準備した。次いで、上記4-4.に記載の方法に準じて抗 GFP 抗体を用いた免疫染色を行った。損傷中心から吻・尾側にそれぞれ2mmの範囲内におけるGFP陽性細胞数を計測し、切片ごとのGFP陽性細胞数を定量化した。
<4-6.後肢の運動機能評価>
BBBスコアを用いて、脊髄損傷モデルラットの後肢の運動機能を損傷直後より1週ごとに、7週間にわたり評価した。BBB locomotor rating scale とは、広く脊髄損傷実験で用いられている運動機能評価基準であり、対象ラットの後肢の挙動を評価基準に基づいてスコアリングする。詳細な評価基準は、図1に示すものである。
<4-7.結果>
免疫組織化学染色の結果を図13に示す。図13に示すように、S/S:DPC-S区の細胞移植とエダラボンの毎日投与との併用により、GAP-43陽性を示す再生軸索のほとんどは、GFAP陽性細胞へ浸潤していた。
また、S/S:DPC-S区の細胞移植のみの区と比較して、S/S:DPC-S区の細胞移植とエダラボン投与とを併用した際には、脊髄損傷部位におけるGFP陽性細胞が有意に増加していた(図14a~c)。これは、神経損傷部位にFGF2処理していない歯髄細胞を移植する場合であっても、活性酸素除去剤を併用することにより歯髄細胞の生着を有意に増加できることを示す。
さらに、図15のBBBスコアの結果が示すように、S/S:DPC-S区の細胞移植とエダラボン投与との併用を行ったものでは、エダラボン投与のみ、および、S/S:DPC-S区の細胞移植のみ(エダラボン投与せず)のBBBスコアと比較して、有意に運動活性の改善効果を示した。この結果は、神経損傷部位に歯髄細胞を移植する際、活性酸素除去剤を併用することで、歯髄細胞の生着率の向上に加えて、運動活性の改善効果を向上させることができることを示す。

Claims (5)

  1. GABRB1遺伝子が発現しており、かつ、活性酸素耐性を有する歯髄細胞を含む神経損傷の治療用移植材であって
    前記歯髄細胞がFGF2処理されたものであり、かつ、FGF2処理していない歯髄細胞と比較して、増加したGABRB1遺伝子の発現量を有する細胞である、神経損傷の治療用移植材。
  2. 請求項に記載の神経損傷の移植用治療材であって、
    前記神経損傷が、脊髄損傷、脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、脊髄出血、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫損傷、坐骨神経痛、又は、糖尿病による末梢神経損傷である、治療用移植剤。
  3. 活性酸素除去剤と併用して神経損傷の治療に用いられる、請求項1または2に記載の治療用移植材。
  4. 神経損傷を治療する方法であって、
    請求項1~のいずれか一項に記載の神経損傷の治療用移植材を、ヒトを除く対象の神経損傷部位に移植する工程を含む、治療方法。
  5. 神経損傷の治療用移植材を製造する方法であって、
    前記歯髄細胞を、FGF2を含む培地中で培養する工程と
    前記歯髄細胞のGABRB1遺伝子の発現を測定する工程と
    GABRB1遺伝子を発現している歯髄細胞を選択する工程と
    を含む、製造方法。
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