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JP6976341B2 - 近赤外線吸収有機顔料、樹脂組成物、近赤外線吸収有機顔料の製造方法、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法、膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ - Google Patents

近赤外線吸収有機顔料、樹脂組成物、近赤外線吸収有機顔料の製造方法、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法、膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ Download PDF

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Description

本発明は、近赤外線吸収有機顔料に関する。また、樹脂組成物、近赤外線吸収有機顔料の製造方法、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法、膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサに関する。
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、近赤外線カットフィルタを使用して視感度補正を行うことがある。
近赤外線カットフィルタは、近赤外線遮蔽性を高めるため、近赤外線吸収有機顔料などの近赤外線吸収剤を含む樹脂組成物を用いて製造する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
国際公開WO2016/035695号公報 特開2014−191190号公報 特開2014−224921号公報
近年、近赤外線吸収有機顔料などの近赤外線吸収剤は、可視透明性と近赤外線遮蔽性との両立を高い水準で達成することが求められている。
よって、本発明の目的は、可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収有機顔料を提供することにある。また、樹脂組成物、近赤外線吸収有機顔料の製造方法、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法、膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することにある。
かかる状況のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、特定の近赤外線吸収有機顔料が可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下を提供する。
<1> 波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有する近赤外線吸収有機顔料であって、
近赤外線吸収有機顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満であり、
近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径が1〜200nmであり、
近赤外線吸収有機顔料の粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値が0.70〜0.98である、近赤外線吸収有機顔料;
結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、
Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
<2> 近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxが0.57〜0.9である、<1>に記載の近赤外線吸収有機顔料。
<3> 上記近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxは、近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径が1500nmである場合の値よりも5%以上高い、<1>または<2>に記載の近赤外線吸収有機顔料。
<4> 近赤外線吸収有機顔料は、波長650〜780nmの範囲に極大吸収波長を有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収有機顔料。
<5> 近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の平均長短辺比が0.3〜0.99である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収有機顔料。
<6> 近赤外線吸収有機顔料が、ピロロピロール化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収有機顔料。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収有機顔料と、樹脂とを含む樹脂組成物。
<8> 更に、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材を含む、<7>に記載の樹脂組成物。
<9> 波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有し、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満である近赤外線吸収顔料をミリング処理して、平均一次粒子径を1〜200nmとし、粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値を0.70〜0.98とする、近赤外線吸収有機顔料の製造方法;
結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、
Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
<10> 波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有し、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満である近赤外線吸収顔料をミリング処理して、平均一次粒子径を1〜200nmとし、粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値を0.70〜0.98とする、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法;
結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、
Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
<11> ミリング処理後の近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxは、ミリング処理前の近赤外線吸収有機顔料の値よりも5%以上高い、<10>に記載の近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法。
<12> <7>または<8>に記載の樹脂組成物を用いて得られる膜。
<13> 支持体上に<12>に記載の膜を有する積層体。
<14> 支持体が銅を含有するガラス基材である、<13>に記載の積層体。
<15> <12>に記載の膜を有する近赤外線カットフィルタ。
<16> <12>に記載の膜を有する近赤外線透過フィルタ。
<17> <12>に記載の膜を有する固体撮像素子。
<18> <12>に記載の膜を有する画像表示装置。
<19> <12>に記載の膜を有する赤外線センサ。
本発明によれば、可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収有機顔料を提供することができる。また、樹脂組成物、近赤外線吸収有機顔料の製造方法、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法、膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、近赤外線透過フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することができる。
赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、近赤外線とは、波長700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において顔料とは、特定の溶剤に対して溶解しにくい化合物を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100gおよび23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度が0.1g以下であることが好ましく、0.01g以下であることがより好ましい。
<近赤外線吸収有機顔料>
本発明の近赤外線吸収有機顔料は、波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有する近赤外線吸収有機顔料であって、
上記近赤外線吸収有機顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満であり、
上記近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径が1〜200nmであり、
上記近赤外線吸収有機顔料の粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値が0.70〜0.98であることを特徴とする。
結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、
Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
本発明者が近赤外線吸収有機顔料について鋭意検討を行った結果、平均一次粒子径が1〜200nmで、かつ、上記式で表される結晶化度の値が0.70〜0.98である近赤外線吸収有機顔料は、優れた可視透明性を有しつつ、極大吸収波長近傍の広範囲における吸収性に優れ、広範囲の波長の近赤外線を遮光することができることを見出した。詳細な理由は不明であるが、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径および結晶化度の値を上記の範囲に調整することにより、近赤外線吸収有機顔料の会合が適度に崩れて結晶性を適度に乱すことができ、その結果、可視領域の分光特性を損なうことなく、極大吸収波長近傍の広範囲における吸収性が向上したと推測される。また、一次粒子径が上記の範囲であるため、散乱などによる影響が小さくなり、近赤外線遮蔽性を向上させつつ、可視透明性も向上させることができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料は、可視透明性に優れつつ、より広い範囲の近赤外線を遮光することができるので、この近赤外線吸収有機顔料を近赤外線カットフィルタに用いた場合には、より広い範囲の近赤外線を遮光できる近赤外線カットフィルタとすることができる。また、この近赤外線吸収有機顔料を近赤外線透過フィルタに用いた場合には、ノイズの少ない近赤外線を透過させることができる近赤外線透過フィルタとすることができる。なお、近赤外線透過フィルタにおいて、近赤外線吸収有機顔料は透過させる近赤外領域の光をより長波長側に限定する役割を有している。
また、本発明の近赤外線吸収有機顔料を用いることで、近赤外線カットフィルタや、近赤外線透過フィルタの視野角依存性をより向上させたり、欠陥の発生をより効果的に抑制することができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料は、上記式で表される結晶化度の値が0.70〜0.98である。上限は、0.96以下であることがより好ましく、0.94以下であることが更に好ましい。下限は、0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが更に好ましい。結晶化度の値が上記範囲であれば、近赤外線吸収有機顔料の可視領域の分光特性を損なうことなく、近赤外線遮蔽性を高めることができる。より具体的には、可視透明性が良好であり、かつ、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長近傍の広範囲における吸収性を高めて、より広い範囲の近赤外線を遮光することができる。近赤外線吸収有機顔料の結晶化度は、近赤外線吸収有機顔料のミリング条件を調整するなどの方法で調整することができる。たとえば、結晶化度を高めたい場合はミリング温度を高めたり、摩砕剤/顔料比(質量比)を高めればよく、結晶化度を下げたい場合はミリング温度を下げたり、摩砕剤/顔料比(質量比)を下げればよい。
なお、本発明における結晶に由来するピークとは、回折強度のピークにおける半値全幅が1°以下の鋭いピークを意味する。また、アモルファスに由来するピークとは、回折強度のピークにおける半値全幅が3°を超えるピークを意味する。また、本発明において、IcおよびIaの値は、近赤外線吸収有機顔料の粉末X線回折スペクトルの回折角度2θが5〜15°の領域での回折強度が最も低い点と、25〜35°の領域で回折強度が最も低い点とを結んだ直線をベースラインとし、粉末X線回折スペクトルのスペクトル実測値からベースラインの値を引いたスペクトル補正値を用いて計算した値である。近赤外線吸収有機顔料の粉末X線回折スペクトルは、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径は、1〜200nmである。下限は、5nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。上限は、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、近赤外線吸収有機顔料の可視領域の分光特性を損なうことなく、近赤外線遮蔽性を高めることができる。より具体的には、可視透明性が良好であり、かつ、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長近傍における吸収性を高めて、より広い範囲の近赤外線を遮光することができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径の変動係数は、20〜35%であることが好ましい。下限は21%以上がより好ましく、22%以上が更に好ましい。上限は33%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましく、29%以下が更により好ましく、28%以下が一層好ましい。近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径の変動係数が上記範囲であれば、近赤外線吸収有機顔料の可視透明性を向上させることができる。なお、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径の変動係数は、下記式にて定義される。
近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径の変動係数=(近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径の標準偏差/近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径の算術平均値)×100
本発明の近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の平均長短辺比は、0.30〜0.99であることが好ましい。下限は0.35以上がより好ましく、0.40以上が更に好ましい。上限は0.90以下がより好ましく、0.80以下が更に好ましい。近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の平均長短辺比が上記範囲であれば、優れた可視透明性を維持しつつ、近赤外線遮蔽性を高めることができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料の長短辺比の変動係数は、10〜30%であることが好ましい。下限は12%以上がより好ましく、14%以上が更に好ましい。上限は29%以下がより好ましく、28%以下が更に好ましい。近赤外線吸収有機顔料の長短辺比の変動係数が上記範囲であれば、近赤外線吸収有機顔料の可視透明性を向上させることができる。なお、近赤外線吸収有機顔料の長短辺比の変動係数は、下記式にて定義される。
近赤外線吸収有機顔料の長短辺比の変動係数=(近赤外線吸収有機顔料の長短辺比の標準偏差/近赤外線吸収有機顔料の長短辺比の算術平均値)×100
本発明において、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径および長短辺比は、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から求めることができる。具体的には、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径として算出する。また、投影された写真から、一次粒子の短辺と長辺の比(短辺/長辺)を求めて長短辺比を算出する。また、本発明における平均一次粒子径および平均長短辺比は、400個の近赤外線吸収有機顔料の一次粒子についての一次粒子径および長短辺比の算術平均値とする。また、一次粒子の最も長い直径を長辺といい、最も短い直径を短辺という。すなわち、楕円の場合は長軸が長辺であり、短軸が短辺である。また、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
本発明の近赤外線吸収有機顔料は、波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有する。近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長は、1200nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、780nm以下であることが更に好ましい。近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長は、700nm以上であることが好ましく、720nm以上であることがより好ましい。本発明の効果がより顕著に発揮されやすいという理由から、近赤外線吸収有機顔料は、波長650〜780nmの範囲に極大吸収波長を有することが特に好ましい。
本発明の近赤外線吸収有機顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満であり、0.05以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましく、0.02以下であることが更に好ましい。下限は、低いことが好ましく、例えば、0.001以上であることが好ましい。上述の比が上記範囲であれば、可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収有機顔料とすることができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料は、極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxが0.5〜0.9であることが好ましい。上述の比は、0.8以下であることがより好ましく、0.7以下であることが更に好ましい。また、上述の比は、0.56以上であることがより好ましく、0.57以上であることが更に好ましい。上述の比が上記範囲であれば、より広い範囲の近赤外線を遮光することができる近赤外線吸収有機顔料とすることができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料は、上記A1/Amaxの値が、近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径が1500nmである場合のA1/Amaxの値よりも5%以上高いことが好ましく、7%以上高いことがより好ましく、10%以上高いことが更に好ましい。
なお、本発明において、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長および各波長における吸光度の値は、近赤外線吸収有機顔料を含む樹脂組成物を用いて形成した膜の吸収スペクトルから求めた値である。
本発明において、近赤外線吸収有機顔料の化合物種としては、特に限定はないが、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物およびピロメテン化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物およびナフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、ピロロピロール化合物またはスクアリリウム化合物であることが更に好ましく、ピロロピロール化合物であることが特に好ましい。特にピロロピロール化合物の場合においては、優れた可視透明性を有しつつ、近赤外線遮蔽性をより効果的に向上させることができる。
ピロロピロール化合物としては、式(PP)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006976341

式中、R1aおよびR1bは、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR4A4B、または金属原子を表し、R4は、R1a、R1bおよびR3から選ばれる少なくとも一つと共有結合もしくは配位結合していてもよく、R4AおよびR4Bは、各々独立に置換基を表す。R4AおよびR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。式(PP)の詳細については、特開2009−263614号公報の段落番号0017〜0047、特開2011−68731号公報の段落番号0011〜0036、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0024の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
式(PP)において、R1aおよびR1bは、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1aおよびR1bが表すアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、特開2009−263614号公報の段落番号0020〜0022に記載された置換基や、以下の置換基Tが挙げられる。
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数1〜30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30)、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜30)。これらの基は、さらに置換可能な部位を有する基である場合、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
式(PP)において、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。R2およびR3の少なくとも一方は電子求引性基が好ましい。ハメットの置換基定数σ値(シグマ値)が正の置換基は、電子求引性基として作用する。ここで、ハメット則で求められた置換基定数にはσp値とσm値がある。これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。本発明においては、ハメットの置換基定数σ値が0.2以上の置換基を電子求引性基として例示することができる。σ値は、0.25以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、好ましくは0.80以下である。電子求引性基の具体例としては、シアノ基(σp値=0.66)、カルボキシル基(−COOH:σp値=0.45)、アルコキシカルボニル基(例えば、−COOMe:σp値=0.45)、アリールオキシカルボニル基(例えば、−COOPh:σp値=0.44)、カルバモイル基(例えば、−CONH2:σp値=0.36)、アルキルカルボニル基(例えば、−COMe:σp値=0.50)、アリールカルボニル基(例えば、−COPh:σp値=0.43)、アルキルスルホニル基(例えば、−SO2Me:σp値=0.72)、アリールスルホニル基(例えば、−SO2Ph:σp値=0.68)などが挙げられ、シアノ基が好ましい。ここで、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、ハメットの置換基定数σ値については、例えば、特開2011−68731号公報の段落番号0017〜0018を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
式(PP)において、R2は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、R3はヘテロアリール基を表すことが好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示される。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。ヘテロアリール基は、下記式(A−1)で表される基または(A−2)で表される基であることが好ましく、式(A−1)で表される基であることがより好ましい。
Figure 0006976341
式(A−1)において、X1は、O、S、NRX1またはCRX2X3を表し、RX1〜RX3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、Ra1およびRa2は、各々独立に水素原子または置換基を表し、Ra1とRa2は、互いに結合して環を形成していてもよい。*は連結手を表す。
a1、Ra2およびRX1〜RX3が表す置換基としては、置換基Tが挙げられ、アルキル基、アリール基およびハロゲン原子が好ましい。
a1とRa2が結合して形成する環は、芳香族環が好ましい。Ra1とRa2とが環を形成する場合、(A−1)としては、下記の(A−1−1)で表される基、(A−1−2)で表される基などが挙げられる。
Figure 0006976341

式中、X1は、O、S、NRX1またはCRX2X3を表し、RX1〜RX3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R101a〜R109aは、各々独立に水素原子または置換基を表す。*は連結手を表す。R101a〜R109aが表す置換基としては、置換基Tが挙げられる。X1は、OまたはSであることが好ましく、Oであることがより好ましい。
式(A−2)において、Y1〜Y4は、各々独立にNまたはCRY1を表し、Y1〜Y4の少なくとも2つはCRY1であり、RY1は、水素原子または置換基を表し、隣接するRY1同士は互いに結合して環を形成していてもよい。*は連結手を表す。RY1が表す置換基としては、置換基Tが挙げられ、アルキル基、アリール基およびハロゲン原子が好ましい。
1〜Y4の少なくとも2つはCRY1であり、隣接するRY1同士は互いに結合して環を形成していてもよい。隣接するRY1同士が結合して形成する環は、芳香族環が好ましい。隣接するRY1同士が環を形成する場合、(A−2)としては、下記の(A−2−1)〜(A−2−5)で表される基などが挙げられる。
Figure 0006976341

式中、R201a〜R227aは、各々独立して、水素原子または置換基を表し、*は連結手を表す。R201a〜R227aが表す置換基としては、置換基Tが挙げられる。
式(PP)において、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基または−BR4A4Bで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基または−BR4A4Bで表される基であることがより好ましく、−BR4A4Bで表される基であることが更に好ましい。R4AおよびR4Bが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、ヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。式(PP)における2個のR4同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。R4AおよびR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。
スクアリリウム化合物としては、下記式(SQ)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006976341

式(SQ)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、アリール基、ヘテロアリール基または式(A−1)で表される基を表す;
Figure 0006976341

式(A−1)中、Z1は、含窒素複素環を形成する非金属原子団を表し、R2は、アルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、dは、0または1を表し、波線は連結手を表す。式(SQ)の詳細については、特開2011−208101号公報の段落番号0020〜0049、特許第6065169号公報の段落番号0043〜0062、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0024〜0040の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、式(SQ)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
Figure 0006976341
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ−1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006976341

環Aおよび環Bは、それぞれ独立に芳香族環を表し、
AおよびXBはそれぞれ独立に置換基を表し、
AおよびGBはそれぞれ独立に置換基を表し、
kAは0〜nAの整数を表し、kBは0〜nBの整数を表し、
AおよびnBはそれぞれ環Aまたは環Bに置換可能な最大の基の数を表し、
AとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成しても良く、GAおよびGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環構造を形成していても良い。
AおよびGBが表す置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
AおよびXBが表す置換基としては、活性水素を有する基が好ましく、−OH、−SH、−COOH、−SO3H、−NRX1X2、−NHCORX1、−CONRX1X2、−NHCONRX1X2、−NHCOORX1、−NHSO2X1、−B(OH)2および−PO(OH)2がより好ましく、−OH、−SHおよび−NRX1X2が更に好ましい。RX1およびRX1は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。XAおよびXBが表す置換基としてはアルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、芳香族環を表す。芳香族環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、および、フェナジン環が挙げられ、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。芳香族環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
AとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成しても良く、GAおよびGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環を形成していても良い。環としては、5員環または6員環が好ましい。環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。XAとGA、XBとGB、XAとXB、GA同士またはGB同士が結合して環を形成する場合、これらが直接結合して環を形成してもよく、アルキレン基、−CO−、−O−、−NH−、−BR−およびそれらの組み合わせからなる2価の連結基を介して結合して環を形成してもよい。Rは、水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられ、アルキル基またはアリール基が好ましい。
kAは0〜nAの整数を表し、kBは0〜nBの整数を表し、nAは、環Aに置換可能な最大の基の数を表し、nBは、環Bに置換可能な最大の基の数を表す。kAおよびkBは、それぞれ独立に0〜4が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が特に好ましい。
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ−10)、式(SQ−11)または式(SQ−12)で表される化合物であることも好ましい。
式(SQ−10)
Figure 0006976341

式(SQ−11)
Figure 0006976341

式(SQ−12)
Figure 0006976341
式(SQ−10)〜(SQ−12)中、Xは、独立して、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CH2n1− ・・・(1)
式(1)中、n1は2または3である。
−(CH2n2−O−(CH2n3− ・・・(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0〜2の整数であり、n2+n3は1または2である。
1およびR2は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表す。アルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
3〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。
nは2または3である。
シアニン化合物は、式(C)で表される化合物が好ましい。
式(C)
Figure 0006976341

式中、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子団であり、
101およびR102は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
1は、奇数個のメチン基を有するメチン鎖を表し、
aおよびbは、それぞれ独立に、0または1であり、
aが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが二重結合で結合し、bが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが単結合で結合し、
式中のCyで表される部位がカチオン部である場合、X1はアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位がアニオン部である場合、X1はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、cは0である。
近赤外線吸収有機顔料の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。下記の化合物のうち、(A−1)、(A−7)〜(A−22)、(A−53)〜(A−57)はピロロピロール化合物であり、(A−2)は、リレン化合物であり、(A−3)はナフタロシアニン化合物であり、(A−4)は、オキソノール化合物であり、(A−5)、(A−23)〜(A−42)はスクアリリウム化合物であり、(A−6)は亜鉛フタロシアニン化合物であり、(A−43)、(A−44)はクロコニウム化合物であり、(A−45)〜(A−47)はピロメテン化合物であり、(A−48)、(A−49)はインジゴ化合物であり、(A−50)、(A−51)はピリリウム化合物であり、(A−52)はアズレニウム化合物である。
Figure 0006976341

Figure 0006976341

Figure 0006976341

Figure 0006976341
<近赤外線吸収有機顔料の製造方法>
次に、本発明の近赤外線吸収有機顔料の製造方法について説明する。
本発明の近赤外線吸収有機顔料の製造方法は、波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有し、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満である近赤外線吸収顔料をミリング処理して、平均一次粒子径を1〜200nmとし、粉末X線回折スペクトルにおいて上記式で表される結晶化度の値が0.70〜0.98となるようにすることを特徴とする。
近赤外線吸収有機顔料のミリング処理は、近赤外線吸収有機顔料を、水溶性有機溶剤および水溶性無機塩の存在下にて混練研磨して処理する方法が挙げられる。
水溶性無機塩は、摩砕剤の役目をし、近赤外線吸収有機顔料と共に混練されることにより近赤外線吸収有機顔料の微細化を進める。水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、好ましくは塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムである。これらの水溶性無機塩は、その粉砕物を用いることができる。また、これらの水溶性無機塩は、1種類単独でも使用できるし、2種類以上の混合物でも使用することができる。
水溶性無機塩の平均粒子径(体積基準の50%径(D50))は、15μm以上であることが好ましく、18μm以上であることが更に好ましい。上限は、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。近赤外線吸収有機顔料は、有彩色系の有機顔料や、無機顔料と比較して硬度が低く、粒子径の小さい水溶性無機塩を用いて混練研磨を行うと、混練研磨時に近赤外線吸収有機顔料の構造にゆがみが生じたり、近赤外線吸収有機顔料の結晶構造などが変化して可視透明性などが低下することがあるが、粒子径が適度に大きい水溶性無機塩(好ましくは平均粒子径が15μm以上の水溶性無機塩)を用いることで、近赤外線吸収有機顔料の結晶構造の歪みなどを抑制しつつ、結晶性(結晶化度)を適度に調整できる。更には、近赤外線吸収有機顔料を微細化できる。
水溶性無機塩の量は、近赤外線吸収有機顔料の質量に対して2.5〜20倍が好ましく、4〜18倍がより好ましく、7〜18倍が更に好ましい。下限は、8倍以上が特に好ましく、10倍以上が最も好ましい。上限は17倍以下が特に好ましく、16倍以下が最も好ましい。水溶性無機塩の量が上述した範囲であれば、近赤外線吸収有機顔料の結晶構造の歪みなどを抑制しつつ、結晶性(結晶化度)を適度に調整できる。更には、近赤外線吸収有機顔料を微細化できる。
水溶性有機溶剤は、近赤外線吸収有機顔料および水溶性無機塩に対し粘結剤の役目をし、近赤外線吸収有機顔料、水溶性無機塩および水溶性有機溶剤を含む混合物に固さ、粘り気を与えると共に、近赤外線吸収有機顔料の結晶成長や結晶転移を抑制し得る。水溶性有機溶剤は、23℃の水100gに対する溶解度が20g以上であることが好ましく、50g以上であることがより好ましく、100g以上であることが更に好ましい。この態様によれば、水溶性無機塩を効率よく水洗できる。水溶性有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール等のアルキレングリコールの縮合物、メトキシエタノール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールのアルキルエーテル、グリセリン等が挙げられ、近赤外線吸収有機顔料、水溶性無機塩および水溶性有機溶剤を含む混合物に適度な固さ、粘り気を与えるという理由から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の粘性の高い水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤は、1種類単独でも使用できるし、2種類以上の混合物でも使用することができる。水溶性有機溶剤の最適な量は、近赤外線吸収有機顔料の量、水溶性無機塩の量、混練条件(温度、混練速度など)、用いる混練機の特性等により変わるが、近赤外線吸収有機顔料と水溶性無機塩の合計質量に対して0.10〜0.35倍が好ましく、0.12〜0.30倍がより好ましく、0.15〜0.25倍がさらに好ましい。水溶性有機溶剤の量が上記範囲であれば、近赤外線吸収有機顔料、水溶性無機塩および水溶性有機溶剤を含む混合物に適度な固さ、粘り気を与えることができる。
混練機としては、上記の混合物を混練しうる能力があればよく、双腕型ニーダー、フラッシャー、プラネタリーミキサー等を用いることができる。微細化に対しては剪断力の強い双腕型ニーダーがより好ましい。
混練時の温度(ミリング温度)は、近赤外線吸収有機顔料の結晶成長速度の温度依存性や結晶転移性に応じて設定される。一般に低温な程、結晶成長速度は小さい。一方、水溶性有機溶剤の顔料表面への濡れやすさ、顔料塊への水溶性有機溶剤の浸透速度は、高温な程早い。近赤外線吸収有機顔料の整粒は、微細化と結晶成長の両方のバランスによって進展する。例えば、0〜120℃が好ましい。下限は5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましく、15℃以上が更により好ましく、20℃以上が特に好ましい。上限は、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましく、60℃以下が更により好ましく、50℃以下が特に好ましい。ミリング温度が上記範囲であれば、近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径および結晶化度の値を上記範囲に調整しやすい。更には、可視透明性、近赤外線遮蔽性および耐熱性に優れた近赤外線吸収有機顔料を製造しやすい。
近赤外線吸収有機顔料の混練研磨時において、近赤外線吸収有機顔料の微細化、整粒化の進展に応じて、水溶性無機塩や水溶性有機溶剤を追加することができる。また、顔料混練物の排出、再混練は1回に限らず、複数回行っても良い。
近赤外線吸収有機顔料の混練研磨時において、近赤外線吸収有機顔料の微細化と共に結晶転移を行うこともできる。また近赤外線吸収有機顔料の微細化や結晶型制御などのために、顔料誘導体や表面処理剤を添加することもできる。
混練研磨後の混練物は、水、酸、アルカリなどによる洗浄等、公知の精製法によって精製することで、微細化された近赤外線吸収有機顔料が単離される。環境負荷低減という理由から水洗処理を行って単離することが好ましい。水洗処理後は水を含んだ状態の近赤外線吸収有機顔料をそのまま使用してもよく、乾燥処理を行って、水分を低減させたものを用いてもよい。乾燥処理方法は特に限定はないが、生産性向上の観点から熱風乾燥で行うことが好ましい。また、乾燥処理を行う場合、近赤外線吸収有機顔料の含水率を5%以下とすることが好ましく、2%以下とすることがより好ましい。
本発明によって製造された近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxは、ミリング処理前の近赤外線吸収有機顔料の値よりも高い特性を有している。詳細な理由は不明であるが、ミリング処理によって平均一次粒子径を1〜200nmとしつつ、結晶化度の値を0.70〜0.98としたことにより、近赤外線吸収有機顔料の会合が適度に崩れて結晶性を適度に乱すことができ、その結果、極大吸収波長近傍における吸収性がミリング処理前の状態に比べて向上したと推測される。本発明によって製造された近赤外線吸収有機顔料の上記A1/Amaxの値は、ミリング処理前の近赤外線吸収有機顔料の値よりも5%以上高いことが好ましく、7%以上高いことがより好ましく、10%以上高いことが更に好ましい。
<分光調整方法>
次に、本発明の近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法について説明する。本発明の近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法は、波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有し、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満である近赤外線吸収顔料をミリング処理して、平均一次粒子径を1〜200nmとし、粉末X線回折スペクトルにおいて上記式で表される結晶化度の値が0.70〜0.98となるようにすることを特徴とする。
本発明によれば、上述の近赤外線吸収顔料をミリング処理して、平均一次粒子径を1〜200nmとし、粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値を0.70〜0.98とすることにより、極大吸収波長近傍における吸収性がミリング処理前の状態に比べて向上し、より広い範囲の近赤外線を吸収させることができる。
本発明の近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法は、ミリング処理後の近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxが、ミリング処理前の近赤外線吸収有機顔料の値よりも5%以上高いことが好ましく、7%以上高いことがより好ましく、10%以上高いことが更に好ましい。
<樹脂組成物>
次に、本発明の樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は、上述した本発明の近赤外線吸収有機顔料と、樹脂とを含む。
<<近赤外線吸収有機顔料>>
本発明の樹脂組成物は、上述した本発明の近赤外線吸収有機顔料を含有する。本発明の近赤外線吸収有機顔料の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜60質量%が好ましい。下限は、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。上限は、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
<<樹脂>>
本発明の樹脂組成物は、樹脂を含有する。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。ポリイミド樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製のネオプリム(登録商標)シリーズ(例えば、C3450)などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、マープルーフG−0150M、G−0105SA、G−0130SP、G−0250SP、G−1005S、G−1005SA、G−1010S、G−2050M、G−01100、G−01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。ウレタン樹脂としては、8UH−1006、8UH−1012(大成ファインケミカル(株)製)を用いることもできる。
また、樹脂は、国際公開WO2016/088645号公報の実施例に記載された樹脂、特開2017−57265号公報に記載された樹脂、特開2017−32685号公報に記載された樹脂、特開2017−075248号公報に記載された樹脂、特開2017−066240号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂としては、下記構造の樹脂が挙げられる。以下の構造式中、Aは、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物から選択されるカルボン酸二無水物の残基であり、Mはフェニル基またはベンジル基である。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
Figure 0006976341
本発明で用いる樹脂は、酸基および/または水酸基を有する樹脂を含むことが好ましく、酸基を有する樹脂を含むことがより好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性水酸基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を有する樹脂は、更に重合性基を有していてもよい。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。市販品としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、Photomer6173(カルボキシル基含有ポリウレタンアクリレートオリゴマー、Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれも(株)ダイセル製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、アクリキュアーRD−F8((株)日本触媒製)などが挙げられる。
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むポリマーであることも好ましい。
Figure 0006976341
式(ED1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
Figure 0006976341

式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
エーテルダイマーの具体例としては、特開2013−29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
Figure 0006976341

式(X)において、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
酸基を有する樹脂については、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685〜0700)の記載、特開2012−198408号公報の段落番号0076〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。例えば、アクリベースFF−426(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。
酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g以上が更に好ましい。上限は、150mgKOH/g以下がより好ましく、120mgKOH/g以下が更に好ましい。
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
Figure 0006976341
本発明の樹脂組成物は、樹脂として、式(A3−1)〜(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂を用いることも好ましい。
Figure 0006976341
式中、R5は水素原子またはアルキル基を表し、L4〜L7は各々独立に単結合または2価の連結基を表し、R10〜R13は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。R14およびR15は、各々独立に水素原子または置換基を表す。
5が表すアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R5は、水素原子またはメチル基が好ましい。
4〜L7が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NR10−(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
10〜R13が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよく、環状が好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。R10〜R13が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。R10は、環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。R11、R12は、直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。R13は、直鎖状のアルキル基、分岐状のアルキル基、または、アリール基が好ましい。
14およびR15が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、−NRa1a2、−CORa3、−COORa4、−OCORa5、−NHCORa6、−CONRa7a8、−NHCONRa9a10、−NHCOORa11、−SO2a12、−SO2ORa13、−NHSO2a14または−SO2NRa15a16が挙げられる。Ra1〜Ra16は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。なかでも、R14およびR15の少なくとも一方は、シアノ基または−COORa4を表すことが好ましい。Ra4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましい。
式(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の市販品としては、ARTON F4520(JSR(株)製)などが挙げられる。また、式(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の詳細については、特開2011−100084号公報の段落番号0053〜0075、0127〜0130の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の樹脂組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40〜105mgKOH/gが好ましく、50〜105mgKOH/gがより好ましく、60〜105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、本発明において、樹脂として主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40〜10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系分散剤については、特開2012−255128号公報の段落番号0102〜0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、オリゴイミン系分散剤としては、特開2012−255128号公報の段落番号0168〜0174に記載の樹脂を用いることができる。
Figure 0006976341
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk−111(BYKChemie社製)、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。また、特開2014−130338号公報の段落番号0041〜0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、1〜80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましい。上限は、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が更により好ましい。
また、酸基を有する樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜80質量%が好ましい。上限は、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が更により好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。
また、分散剤としての樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜40質量%が好ましい。上限は、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下がより好ましく、75質量部以下が更に好ましい。下限は、2.5質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。
<<他の近赤外線吸収化合物>>
本発明の樹脂組成物は、上述した近赤外線吸収有機顔料以外の近赤外線吸収剤(他の近赤外線吸収剤ともいう)をさらに含んでもよい。他の近赤外線吸収化合物としては染料が挙げられる。化合物種としては、例えば、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、リレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、銅化合物などが挙げられる。他の近赤外線吸収剤の市販品としては、例えば、SDO−C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーTX−EX−801B、イーエクスカラーTX−EX−805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA−8041、ShigenoxNIA−8042、ShigenoxNIA−814、ShigenoxNIA−820ShigenoxNIA−839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV−63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO−JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK−3027、NK−5060((株)林原製)、YKR−3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
また、他の近赤外線吸収剤として、無機粒子を用いることもできる。無機粒子は、金属酸化物粒子または金属粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子など挙げられる。また、無機粒子としては酸化タングステン系化合物が使用できる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。酸化タングステン系化合物の詳細については、特開2016−006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。無機粒子の形状は特に制限されず、球状、非球状を問わず、シート状、ワイヤー状、チューブ状であってもよい。
無機粒子の平均粒子径は、800nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。無機粒子の平均粒子径がこのような範囲であることによって、可視透明性が良好である。光散乱を回避する観点からは、平均粒子径は小さいほど好ましいが、製造時における取り扱い容易性などの理由から、無機粒子の平均粒子径は、通常、1nm以上である。
本発明の樹脂組成物が他の近赤外線吸収剤を含有する場合、他の近赤外線吸収剤の含有量は、本発明の近赤外線吸収有機顔料の100質量部に対し0.1〜80質量部が好ましく、5〜60質量部がより好ましく、10〜40質量部がさらに好ましい。
<<有彩色着色剤>>
本発明の樹脂組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、極大吸収波長が400nm以上650nm未満の範囲にある着色剤が好ましい。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。
顔料は、有機顔料であることが好ましく、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独で用いる、あるいは、2種以上を組合せて用いることができる。
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015−028144号公報、特開2015−34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
本発明の樹脂組成物が有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して0.1〜70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
有彩色着色剤の含有量は、近赤外線吸収有機顔料の100質量部に対し、10〜1000質量部が好ましく、50〜800質量部がより好ましい。
また、有彩色着色剤と近赤外線吸収有機顔料と上述した他の近赤外線吸収剤との合計量は、樹脂組成物の全固形分に対して1〜80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。本発明の樹脂組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、有彩色着色剤を実質的に含有しないことも好ましい。有彩色着色剤を実質的に含有しないとは、有彩色着色剤の含有量が、樹脂組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、有彩色着色剤を含有しないことがさらに好ましい。
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の樹脂組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450〜650nmの範囲の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900〜1300nmの範囲の光を透過する色材であることが好ましい。
本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報、国際公開WO2014/208348号公報、特表2015−525260号公報などに記載の化合物が挙げられる。ビスベンゾフラノン化合物の市販品としては、BASF社製の「Irgaphor Black」などが挙げられる。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
本発明の樹脂組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がより一層好ましく、15質量%以下が特に好ましい。下限は、例えば、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の樹脂組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しないことも好ましい。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、樹脂組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことがさらに好ましい。
<<顔料誘導体>>
本発明の樹脂組成物は、顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、色素骨格に、酸基および塩基性基から選ばれる少なくとも1種の基が結合した化合物が挙げられる。顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006976341

式(B1)中、Pは色素骨格を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基または塩基性基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
Pが表す色素骨格としては、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、アゾ色素骨格、キノフタロン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリレン色素骨格、ペリノン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、ベンゾイミダゾール色素骨格およびベンゾオキサゾール色素骨格から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格およびベンゾイミダゾロン色素骨格から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール色素骨格が特に好ましい。
Lが表す連結基としては、1〜100個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜200個の水素原子、および0〜20個の硫黄原子から成り立つ基が好ましく、無置換でもよく、置換基を更に有していてもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
Xが表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基等が挙げられる。カルボン酸アミド基としては、−NHCORX1で表される基が好ましい。スルホン酸アミド基としては、−NHSO2X2で表される基が好ましい。イミド酸基としては、−SO2NHSO2X3、−CONHSO2X4、−CONHCORX5または−SO2NHCORX6で表される基が好ましい。RX1〜RX6は、それぞれ独立に、炭化水素基または複素環基を表す。RX1〜RX6が表す、炭化水素基および複素環基は、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
Xが表す塩基性基としてはアミノ基が挙げられる。
顔料誘導体としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開昭56−118462号公報、特開昭63−264674号公報、特開平1−217077号公報、特開平3−9961号公報、特開平3−26767号公報、特開平3−153780号公報、特開平3−45662号公報、特開平4−285669号公報、特開平6−145546号公報、特開平6−212088号公報、特開平6−240158号公報、特開平10−30063号公報、特開平10−195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086〜0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063〜0094等に記載の化合物、国際公開WO2016/035695号公報の段落番号0053に記載の化合物、特許第5299151号公報に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
Figure 0006976341
本発明の樹脂組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。上限値は、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<溶剤>>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、水、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や樹脂組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はないが、樹脂組成物の塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
溶剤の含有量は、樹脂組成物の全量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましい。
<<硬化性化合物>>
本発明の樹脂組成物は、硬化性化合物を含有することが好ましい。硬化性化合物としては、ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。硬化性化合物としては、例えば、重合性化合物、エポキシ基を有する化合物などが挙げられる。重合性化合物としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物が挙げられる。重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
(重合性化合物)
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を3個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物におけるエチレン性不飽和結合を有する基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。重合性化合物は、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100〜3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。また、重合性化合物は、分子量分布を実質的に有さない化合物であることも好ましい。ここで、分子量分布を実質的に有さない化合物としては、化合物の分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、1.0〜1.5である化合物が好ましく、1.0〜1.3がより好ましい。重合性化合物については、特開2009−288705号公報の段落番号0095〜0108、特開2013−29760号公報の段落0225〜0258、特開2008−292970号公報の段落番号0254〜0257の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D−330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D−320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D−310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A−DPH−12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM−309、M−310、M−321、M−350、M−360、M−313、M−315、M−306、M−305、M−303、M−452、M−450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−330、PET−30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
重合性化合物として、酸基を有する重合性化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM−510、M−520(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1〜40mgKOH/gであり、より好ましくは5〜30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。さらには、硬化性に優れる。
重合性化合物として、カプロラクトン構造を有する重合性化合物を用いることもできる。また、重合性化合物として、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4〜20個有する3〜6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR−494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA−330などが挙げられる。
重合性化合物として、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。また、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることも好ましい。市販品としては、UA−7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
また、重合性化合物としては、特開2017−48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。
また、重合性化合物としては、8UH−1006、8UH−1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB−A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
(エポキシ基を有する化合物)
本発明の樹脂組成物は、硬化性化合物としてエポキシ基を有する化合物を含有することができる。エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を2〜100個有する化合物であることが好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。
エポキシ基を有する化合物は、エポキシ当量(=エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基の数)が500g/当量以下であることが好ましく、100〜400g/当量であることがより好ましく、100〜300g/当量であることがさらに好ましい。
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
エポキシ基を有する化合物は、特開2013−011869号公報の段落番号0034〜0036、特開2014−043556号公報の段落番号0147〜0156、特開2014−089408号公報の段落番号0085〜0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。エポキシ基を有する化合物の市販品としては、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N−695(DIC(株)製)、アデカグリシロール ED−505((株)ADEKA製、エポキシ基含有モノマー)などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、硬化性化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。硬化性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物が硬化性化合物として重合性化合物を含有する場合、重合性化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜40質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。重合性化合物は1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。重合性化合物を2種以上併用する場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物が硬化性化合物としてエポキシ基を有する化合物を含有する場合、エポキシ基を有する化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1〜40質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。エポキシ基を有する化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物が硬化性化合物として重合性化合物と、エポキシ基を有する化合物を含有する場合、重合性化合物とエポキシ基を有する化合物との質量比は、重合性化合物の質量:エポキシ基を有する化合物の質量=100:1〜100:400が好ましく、100:1〜100:100がより好ましく、100:1〜100:50がさらに好ましい。
<<光重合開始剤>>
本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することができる。特に、本発明の樹脂組成物が重合性化合物を含む場合、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3−アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤としては、特開2014−130173号公報の段落0065〜0111の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
α−ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959、IRGACURE−127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α−アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−907、IRGACURE−369、IRGACURE−379、及び、IRGACURE−379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE−819、DAROCUR−TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
オキシム化合物としては、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653−1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156−162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202−232)に記載の化合物、特開2000−66385号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特表2004−534797号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、特開2017−19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680公報に記載の化合物などがあげられる。オキシム化合物の具体例としては、3−ベンゾイルオキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN−1919((株)ADEKA製、特開2012−14052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI−730、NCI−831、NCI−930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)が挙げられる。
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されるOE−01〜OE−75が挙げられる。
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0006976341

Figure 0006976341
オキシム化合物は、波長350〜500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360〜480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000〜300,000であることがより好ましく、2,000〜300,000であることが更に好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
本発明は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光重合開始剤を用いてもよい。そのような光重合開始剤の具体例としては、特表2010−527339号公報、特表2011−524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016−532675号公報の段落番号0417〜0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039〜0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013−522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1〜7などが挙げられる。
光重合開始剤は、オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α−アミノケトン化合物が50〜600質量部であることが好ましく、150〜400質量部がより好ましい。
光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光重合開始剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<重合禁止剤>>
本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p−メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましい。また、重合禁止剤の含有量は、重合性化合物の100質量部に対し、0.001〜1質量部であることが好ましい。上限は、0.5質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下が更に好ましい。下限は、0.01質量部以上がより好ましく、0.03質量部以上が更に好ましい。本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。重合禁止剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<紫外線吸収剤>>
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012−208374号公報の段落番号0052〜0072、特開2013−68814号公報の段落番号0317〜0334の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。共役ジエン化合物の市販品としては、例えば、UV−503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。紫外線吸収剤としては、式(UV−1)〜式(UV−3)で表される化合物が好ましく、式(UV−1)または式(UV−3)で表される化合物がより好ましく、式(UV−1)で表される化合物が更に好ましい。
Figure 0006976341
式(UV−1)において、R101及びR102は、各々独立に、置換基を表し、m1およびm2は、それぞれ独立して0〜4を表す。
式(UV−2)において、R201及びR202は、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表し、R203及びR204は、各々独立に、置換基を表す。
式(UV−3)において、R301〜R303は、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表し、R304及びR305は、各々独立に、置換基を表す。
式(UV−1)〜式(UV−3)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
Figure 0006976341
紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<シランカップリング剤>>
本発明の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基は、樹脂との間で相互作用もしくは結合を形成して親和性を示す基が好ましい。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤は、特開2009−288703号公報の段落番号0018〜0036に記載の化合物、特開2009−242604号公報の段落番号0056〜0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜15.0質量%が好ましく、0.05〜10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<界面活性剤>>
本発明の樹脂組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238〜0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。本発明の樹脂組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を製造することもできる。
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)等に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS−330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、SC−101、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068、SC−381、SC−383、S−393、KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016−216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
Figure 0006976341

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD−6112、D−6112−W、D−6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)製)、サンデットBL(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4460、TSF−4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、0.005〜1.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<酸化防止剤>>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−50F、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−60G、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−330(以上、(株)ADEKA)などが挙げられる。また、酸化防止剤として、国際公開WO17/006600号公報に記載された多官能ヒンダードアミン酸化防止剤を用いることもできる。
酸化防止剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<その他成分>>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012−003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100〜250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80〜200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017−008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA−5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1〜3000mPa・sの範囲にあることが好ましい。下限は、3mPa・s以上がより好ましく、5mPa・s以上が更に好ましい。上限は、2000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物のチキソトロピー性は、低いことが好ましい。チキソトロピー性とはTi値の指標で表すことができる。例えばE型粘度計(東機産業製RE85L)を用いて測定される粘度において、回転数が20rpmと50rpmの粘度をそれぞれη(20rpm)、η(50rpm)とする時のη(20rpm)/η(50rpm)の値をTi値とする。Ti値が1に近いほどチキソトロピー性が低いことを意味する。このような測定方法で得られたTi値に関して、23℃におけるTi値は、0.8〜1.4であることが好ましく、0.9〜1.2であることがより好ましく、0.9〜1.1であることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収納容器として、原材料や樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されない。例えば、近赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。また、本発明の樹脂組成物において、さらに、可視光を遮光する色材を含有させることで、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な近赤外線透過フィルタを形成することもできる。したがって、本発明の樹脂組成物は、近赤外線透過フィルタなどの形成に好ましく用いることもできる。
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、前述の成分を混合して調製できる。樹脂組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して樹脂組成物として調製してもよい。
また、本発明の樹脂組成物は顔料を含むため、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015−157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。
樹脂組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、樹脂組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜3.0μm程度であり、さらに好ましくは0.05〜0.5μm程度である。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物を確実に除去できる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。具体的には、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NXEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)または株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、第1のフィルタと同様の素材で形成されたものを使用することができる。
また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
<膜>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の樹脂組成物を用いてなるものである。本発明の膜は、近赤外線カットフィルタや、近赤外線透過フィルタなどに好ましく用いることができる。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。
本発明の膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の膜は、波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。極大吸収波長は1200nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、780nm以下が更に好ましい。極大吸収波長は700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましい。本発明の膜は、波長650〜780nmの範囲に極大吸収波長を有することが特に好ましい。
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の膜は波長400〜550nmの平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400〜550nmの全ての範囲で透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長650〜1400nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
本発明の膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、上述した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、樹脂、硬化性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などをさらに含有することができる。これらの詳細については、上述した材料が挙げられ、これらを用いることができる。
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の膜とカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
本発明の膜は、支持体に積層して用いることもできる。支持体としては、シリコンなどの半導体基材や、透明基材が挙げられる。透明基材は、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、結晶、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。透明基材の材質としてはガラスが好ましい。すなわち、透明基材はガラス基材であることが好ましい。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅含有ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスとしては、銅を含有するリン酸塩ガラス、銅を含有するフツリン酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF−50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。結晶としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。また、支持体と本発明の膜との密着性を高めるため、支持体の表面には下地層などが設けられていてもよい。
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過するものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本発明において、近赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
本発明の膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
<積層体>
本発明の積層体は、支持体上に本発明の膜を有する。支持体としては、透明基材が挙げられ、ガラス基材であることが好ましく、銅を含有するガラス基材であることがより好ましい。特に本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜を、銅を含有するガラス基材に積層することで、幅広い範囲の近赤外線を遮光することができる。
<近赤外線カットフィルタ>
次に、本発明の近赤外線カットフィルタについて説明する。本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した本発明の膜を有する。本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、上述した本発明の膜は、支持体上に積層されていてもよい。この近赤外線カットフィルタは、固体撮像素子の用途に好ましく用いることができる。支持体としては、透明基材が挙げられる。また、支持体と本発明の膜との密着性を高めるため、支持体の表面には下地層などが設けられていてもよい。また、本発明の膜をガラス基材に積層して用いる場合においては、本発明の膜は、シランカップリング剤および/またはエポキシ基を有する化合物を含む組成物を用いて形成してなる膜であることが好ましい。この態様によれば、ガラス基材と本発明の膜との密着性をより強固にすることができる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、上述した本発明の膜を支持体上に積層して用いる場合、近赤外線カットフィルタは、本発明の膜の他に、更に、誘電体多層膜を有することも好ましい。この態様によれば、視野角が広く、近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。誘電体多層膜は、支持体の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。誘電体多層膜を支持体の片面に設ける場合には、製造コストを抑えることができる。誘電体多層膜を支持体の両面に設ける場合には、高い強度を有し、反りの生じにくい近赤外線カットフィルタを得ることができる。また、誘電体多層膜は、支持体と接していてもよく、接していなくてもよい。本発明の近赤外線カットフィルタは、透明基材と誘電体多層膜との間に、本発明の膜を有し、本発明の膜と誘電体多層膜とが接していることが好ましい。このような構成とすることにより、本発明の膜が、誘電体多層膜により酸素や湿度から遮断され、近赤外線カットフィルタの耐光性や耐湿性が良化する。更には、視野角が広く、近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られ易い。
なお、本発明において、誘電体多層膜とは、光の干渉の効果を利用して赤外線を遮光する膜である。具体的には、屈折率の異なる誘電体層(高屈折率材料層と低屈折率材料層)を、交互に2層以上積層してなる膜である。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上(好ましくは1.7〜2.5)の材料を用いることが好ましい。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量含有させたものが挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下(好ましくは1.2〜1.6)の材料を用いることが好ましい。例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みは、遮断しようとする赤外線の波長λ(nm)の0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。また、誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層の合計の積層数は、2〜100層が好ましく、2〜60層がより好ましく、2〜40層が更に好ましい。誘電体多層膜の詳細については、特開2014−41318号公報の段落番号0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の近赤外線カットフィルタが、本発明の膜と、支持体と、誘電体多層膜とを有する場合において、各層の積層の順序は特に限定はないが、例えば、以下の(1)〜(10)の層構成が挙げられる。以下において、支持体を層A、本発明の膜を層B、誘電体多層膜を層Cと記載する。
(1)層A/層B/層C
(2)層A/層C/層B
(3)層C/層A/層B
(4)層B/層A/層B/層C
(5)層C/層A/層B/層C
(6)層B/層A/層C/層B
(7)層C/層A/層C/層B
(8)層C/層B/層A/層B/層C
(9)層C/層B/層A/層C/層B
(10)層B/層C/層A/層C/層B
本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の膜の他に、更に、銅を含有する層、紫外線吸収層などを有していてもよい。近赤外線カットフィルタが、更に、銅を含有する層を有することで、視野角が広く、近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られ易い。また、近赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。銅を含有する層としては、銅錯体を含む組成物を用いて形成してなる層が挙げられる。
<近赤外線透過フィルタ>
次に、本発明の近赤外線透過フィルタについて説明する。本発明の近赤外線透過フィルタは、上述した本発明の膜を有する。近赤外線透過フィルタとしては、例えば、可視光を遮光し、波長900nm以上の光を透過するフィルタが挙げられる。具体的な一例として、波長400〜830nmの範囲の光の透過率の最大値が20%以下であり、波長1000〜1300nmの範囲の光の透過率の最小値が80%以上である分光特性を有するフィルタが挙げられる。本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、上述した本発明の膜は、支持体上に積層されていてもよい。支持体としては、上述したシリコンなどの半導体基材や、透明基材が挙げられる。本発明の近赤外線透過フィルタは、本発明の膜を用いた画素と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒および無色から選ばれる画素とを有する態様も好ましい。本発明の近赤外線透過フィルタにおいて、上述した本発明の膜はパターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。
<膜の製造方法>
次に、本発明の膜の製造方法について説明する。本発明の膜は、本発明の樹脂組成物を塗布する工程を経て製造できる。
本発明の膜の製造方法において、本発明の樹脂組成物は支持体上に塗布することが好ましい。支持体としては、シリコンなどの半導体基材や上述した透明基材が挙げられる。これらの基材には、有機膜や無機膜などが形成されていてもよい。有機膜の材料としては、例えば上述した樹脂が挙げられる。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。また、支持体としてガラス基材を用いる場合においては、ガラス基材上に無機膜を形成したり、ガラス基材を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。
樹脂組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、樹脂組成物の塗布方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂組成物を塗布して形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク温度を150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、有機素材の特性をより効果的に維持することができる。プリベーク時間は、10秒〜3000秒が好ましく、40〜2500秒がより好ましく、80〜220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
プリベーク後、更に加熱処理(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度としては、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、180〜240℃がより好ましい。ポストベーク時間としては、2〜10分が好ましく、4〜8分がより好ましい。ポストベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
本発明の膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の樹脂組成物を塗布して形成した組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。
<<露光工程>>
露光工程では組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、組成物層をパターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく、i線がより好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03〜2.5J/cm2が好ましく、0.05〜1.0J/cm2がより好ましく、0.08〜0.5J/cm2が最も好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2〜100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
<<現像工程>>
次に、露光後の組成物層における未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを与えない、アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20〜30℃が好ましい。現像時間は、20〜180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5〜100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、180〜230℃がより好ましい。
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、支持体上の組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジスト層の形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落番号0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明の膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012−227478号公報、特開2014−179577号公報に記載の装置が挙げられる。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の膜を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430〜485nm)、緑色領域(530〜580nm)および黄色領域(580〜620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加えさらに赤色領域(650〜700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を有する。本発明の赤外線センサの構成としては、本発明の膜を有する構成であり、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。
以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110の撮像領域上には、近赤外線カットフィルタ111と、近赤外線透過フィルタ114が配置されている。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および近赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
近赤外線カットフィルタ111は本発明の樹脂組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。
カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過および吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014−043556号公報の段落番号0214〜0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
近赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。例えば、赤外LEDの発光波長が850nmである場合、近赤外線透過フィルタ114は、厚み方向における光の透過率の、波長400〜750nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、厚み方向における光の透過率の、波長900〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であることが好ましい。また、例えば、赤外LEDの発光波長が940nmである場合、近赤外線透過フィルタ114は、厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であることが好ましい。
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。また、図1に示す赤外線センサにおいて、近赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112の位置が入れ替わっても良い。また、固体撮像素子110と近赤外線カットフィルタ111との間、および/または、固体撮像素子110と近赤外線透過フィルタ114との間に他の層が配置されていてもよい。他の層としては、重合性化合物、樹脂および光重合開始剤とを含む組成物を用いて形成された有機物層などが挙げられる。また、カラーフィルタ112上に平坦化層が形成されていてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
[試験例1]
<近赤外線吸収有機顔料の製造>
下記の表に記載の顔料、摩砕剤および粘結剤をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に投入し、装置中の混練物の温度が下記表に記載の温度(ミリング温度)になるように温度コントロールして、下記表に記載のミリング時間にて混練した。
混練研磨後の混練物を、24℃の水10Lで水洗処理して摩砕剤および粘結剤を取り除き、加熱オーブンで80℃24時間の乾燥処理を行って、ミリング顔料である近赤外線吸収有機顔料(実施例1〜5)を得た。
なお、比較例1は、ミリング処理を行っていない近赤外線吸収有機顔料である。
Figure 0006976341
上記表に記載の材料は以下の通りである。
(顔料)
顔料1:下記構造の化合物(近赤外線吸収有機顔料である)
Figure 0006976341

顔料2:下記構造の化合物(近赤外線吸収有機顔料である)
Figure 0006976341

(摩砕剤)
摩砕剤1:中性無水芒硝E(平均粒子径(体積基準の50%径(D50))=20μm、三田尻化学製)
摩砕剤2:ナクルUM(平均粒子径(体積基準の50%径(D50))=50μm、ナイカイ塩業製)
(粘結剤)
DEG:ジエチレングリコール
<評価>
(近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径の測定)
実施例1〜5、比較例1の近赤外線吸収有機顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から平均一次粒子径を求めた。具体的には、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を近赤外線吸収有機顔料の一次粒子径とした。400個の近赤外線吸収有機顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値を平均一次粒子径とした。
(近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の平均長短辺比)
実施例1〜5、比較例1の近赤外線吸収有機顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から平均長短辺比を求めた。具体的には、投影された写真から、近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の短辺と長辺との比(短辺/長辺)を求めて、長短辺比を算出した。
(近赤外線吸収有機顔料の粉末X線回折スペクトルの測定)
測定装置として、リガク製 試料水平型強力X線回折装置 RINT−TTR IIIを使用し、回折角度2θ=5°〜55°、電圧50kV、電流300mA、スキャンスピード4°/min、ステップ間隔0.1、スリット(散乱0.05mm、発散10mm、受光0.15mm)の条件で、実施例1〜5、比較例1の近赤外線吸収有機顔料の粉末X線回折スペクトルを測定した。
(結晶化度の測定)
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度2θが5〜15°の領域で最も低い点と、25〜35°の領域で最も低い点を結んだ直線をベースラインとし、粉末X線回折スペクトルの実測値からベースラインの値を引いたスペクトル補正値を用いて、下記式を用いて結晶化度を測定した。
結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
なお、半値全幅が1°以下のピークを結晶に由来するピークとする。また半値全幅が3°を超えるピークをアモルファスに由来するピークとする。
(分光特性)
実施例および比較例の近赤外線吸収有機顔料の3.13質量部と、顔料誘導体1の0.63質量部と、分散剤1の2.25質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の44質量部と、直径0.5mm径のジルコニアビーズの66質量部とを混合し、ペイントシェーカーで120分間分散処理を行った後、ジルコニアビーズをデカンテーションで分離して、分散液を調製した。
顔料誘導体1:下記化合物
Figure 0006976341

分散剤1:下記構造の樹脂(重量平均分子量=21000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
Figure 0006976341
上記で得られた実施例および比較例の近赤外線吸収有機顔料を用いた分散液10質量部と、樹脂A((株)ダイセル製サイクロマーP (ACA)230AA)の10質量部とを混合して試料溶液を作製した。
この試料溶液を、塗布後の膜厚が0.3μmになるように、ガラス基材上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次にi線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い1000mJ/cm2で露光した。さらに、ホットプレートを用いて220℃で5分間加熱し、膜を形成した。膜が形成された基板に対して、分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、極大吸収波長、極大吸収波長における吸光度Amax、波長550nmにおける吸光度A550、極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1をそれぞれ測定し、吸光度A550と吸光度Amaxとの比であるA550/Amax、吸光度A1と吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxをそれぞれ算出した。A550/Amaxの値が小さいほど可視透明性に優れることを意味する。また、A1/Amaxの値が1に近いほど極大吸収波長近傍の広い範囲における吸収性に優れ、近赤外線遮蔽性に優れることを意味する。
Figure 0006976341
上記表に示す通り、実施例の近赤外線吸収有機顔料は、比較例1よりも吸光度比A550/Amaxが小さく、かつ、吸光度比A1/Amaxが高い特性を有しており、実施例の近赤外線吸収有機顔料は、優れた可視透明性を有しつつ、近赤外線遮蔽性にも優れていた。
[試験例2]
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液A−1)
下記原料を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液A−1を調製した。
実施例1の近赤外線吸収有機顔料・・・5.35質量部
顔料誘導体1・・・2.15質量部
分散剤1・・・6.0質量部
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)・・・・86.5質量部
(顔料分散液A−2)
実施例1の近赤外線吸収有機顔料の代わりに、実施例2の近赤外線吸収有機顔料を用いた以外は顔料分散液A−1と同様の方法で顔料分散液A−2を調製した。
(顔料分散液A−3)
実施例1の近赤外線吸収有機顔料の代わりに、実施例3の近赤外線吸収有機顔料を用いた以外は顔料分散液A−1と同様の方法で顔料分散液A−3を調製した。
(顔料分散液A−4)
実施例1の近赤外線吸収有機顔料の代わりに、実施例4の近赤外線吸収有機顔料を用いた以外は顔料分散液A−1と同様の方法で顔料分散液A−4を調製した。
(顔料分散液A−5)
実施例1の近赤外線吸収有機顔料の代わりに、実施例5の近赤外線吸収有機顔料を用いた以外は顔料分散液A−1と同様の方法で顔料分散液A−5を調製した。
(顔料分散液A−6)
実施例1の近赤外線吸収有機顔料の代わりに、比較例1の近赤外線吸収有機顔料を用いた以外は顔料分散液A−1と同様の方法で顔料分散液A−6を調製した。
<樹脂組成物の調製>
下記表に記載の原料を混合して樹脂組成物を調製した。
Figure 0006976341
上記表に記載の原料は以下の通りである。
顔料分散液A−1〜A−6:上述した顔料分散液A−1〜A−6
色材B−1、B−2:下記構造の化合物
Figure 0006976341

アルカリ可溶性樹脂1:下記構造の樹脂(Mw=41000、主鎖に付記した数値はモル比である。)
Figure 0006976341

樹脂1:以下の方法で合成した樹脂(固形分濃度35質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)
ベンジルメタクリレート14g、N−フェニルマレイミド12g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15g、スチレン10g 及びメタクリル酸20gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解し、更に2,2’−アゾイソブチロニトリル3g及びα−メチルスチレンダイマー5gを投入した。反応容器内を窒素パージ後、攪拌及び窒素バブリングしながら80℃で5時間加熱して樹脂1を合成した。
添加剤1:ビス−(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホナート
エポキシ化合物1:EPICLON N−695(DIC(株)製)
重合性化合物4:群栄化学工業社製レヂトップC−357(固形分濃度20質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)
界面活性剤1:下記化合物(Mw=14000)。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
Figure 0006976341

界面活性剤2:FTX‐218D((株)ネオス製)
有機溶剤1:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
有機溶剤2:シクロヘキサノン
<膜の作製>
樹脂組成物を、塗布後の膜厚が0.3μmになるように、ガラス基材上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次にi線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い1000mJ/cm2で露光した。さらに、ホットプレートを用いて220℃で5分間加熱し、膜を形成した。
<分光特性の評価>
膜が形成された基板に対して、分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、極大吸収波長、極大吸収波長における吸光度Amax、波長550nmにおける吸光度A550、極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1をそれぞれ測定し、吸光度A550と吸光度Amaxとの比であるA550/Amax、吸光度A1と吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxをそれぞれ算出した。A550/Amaxの値が小さいほど可視透明性に優れることを意味する。また、A1/Amaxの値が1に近いほど極大吸収波長近傍の広い範囲における吸収性に優れ、近赤外線遮蔽性に優れることを意味する。なお、実施例101〜105、比較例101は、いずれも波長650〜780nmの範囲に極大吸収波長を有していた。
<視野角依存性の評価>
入射角を膜面に対し垂直(角度0度)及び40度に変化させ、波長600nm以上の可視領域から近赤外領域における、分光透過率の低下によるスロープの透過率が50%となる波長のシフト量を、下記基準に従って評価した。
A:波長のシフト量が5nm未満
B:波長のシフト量が5nm以上20nm未満
C:波長のシフト量が20nm以上
Figure 0006976341
上記表に示す通り、実施例は、比較例よりもA550/Amaxが小さく、かつ、A1/Amaxがより1に近い値を有していた。このため、実施例は、比較例よりも可視透明性が高く、近赤外線遮蔽性に優れていた。更には視野角依存性も良好であった。
[試験例3]
<顔料分散液の調製>
下記の原料を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液B−1〜B−7を調製した。
(顔料分散液B−1)
赤色顔料(C.I.Pigment Red 254)と黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 139との混合顔料(赤色顔料:黄色顔料=12.5:5.5(質量比))・・・18.0質量部
分散剤1・・・8.1質量部
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)・・・73.1質量部
(顔料分散液B−2)
青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)と紫色顔料(C.I.Pigment Violet 23)との混合顔料(青色顔料:紫色顔料=14.3:3.7(質量比))・・・18.0質量部
分散剤1・・・3.1質量部
アルカリ可溶性樹脂2・・・5.0質量部
シクロヘキサノン・・・31.2質量部
PGMEA・・・42.7質量部
(顔料分散液B−3〕
青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)・・・12.5質量部
・分散剤2・・・4.4質量部
・PGMEA・・・83.01質量部
(顔料分散液B−4)
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 139)・・・11.0質量部
・分散剤2・・・4.4部
・顔料誘導体2・・・1.59質量部
・PGMEA・・・83.01質量部
(顔料分散液B−5)
青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)・・・10.0質量部
紫色顔料(C.I.Pigment Violet 23)・・・2.5質量部
分散剤2・・・4.4質量部
PGMEA・・83.01質量部
(顔料分散液B−6)
黒色顔料(Irgaphor Black)・・・12.59質量部
分散剤3・・・4.4質量部
PGMEA・・・83.01質量部
(顔料分散液B−7)
黒色顔料(C.I.Pigment Black 32)・・・12.59質量部
分散剤2・・・4.4質量部
PGMEA・・・83.01質量部
顔料分散液B−1〜B−7に用いた原料は以下の通りである。
分散剤1:上述した分散剤1
分散剤2:下記構造の樹脂(Mw=24000、主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である)
Figure 0006976341

分散剤3:下記構造の樹脂(Mw=20000、主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である)
Figure 0006976341

アルカリ可溶性樹脂2:後述するアルカリ可溶性樹脂2
顔料誘導体2:下記構造の化合物
Figure 0006976341
<樹脂組成物の調製>
下記表に記載の原料を混合して樹脂組成物を調製した。
Figure 0006976341
上記表に記載の原料は以下の通りである。
顔料分散液A−1、A−6、B−1〜B−7:上述した顔料分散液A−1、A−6、B−1〜B−7
アルカリ可溶性樹脂2:下記構造の樹脂(酸価:70mgKOH/g、Mw=11000、主鎖に付記した数値はモル比である。構造式中のMeはメチル基である。)
Figure 0006976341

重合性化合物1:下記構造の化合物の混合物(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
Figure 0006976341

重合性化合物2:下記構造の化合物
Figure 0006976341

重合性化合物3:下記構造の化合物(a+b+c=3)
Figure 0006976341

シランカップリング剤1:下記構造の化合物(以下の構造式中のEtはエチル基である)
Figure 0006976341

重合禁止剤:p−メトキシフェノール
紫外線吸収剤:UV−503(大東化学(株)製)
光重合開始剤1:下記構造の化合物
Figure 0006976341

光重合開始剤2:IRGACURE−OXE04(BASF社製)
光重合開始剤3:IRGACURE−OXE02(BASF社製)
光重合開始剤4:下記構造の化合物
Figure 0006976341

界面活性剤1:上述した界面活性剤1
有機溶剤1:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
<分光特性の評価>
樹脂組成物を、塗布後の膜厚が0.3μmになるように、ガラス基材上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次にi線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い1000mJ/cm2で露光した。さらに、ホットプレートを用いて220℃で5分間加熱し、膜を形成した。膜が形成された基板に対して、分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、波長400〜1400nmの光の範囲の透過率、および、波長700nmの光の透過率を測定した。
<欠陥の評価>
レジストCT−2000L溶液(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を、シリコンウエハの上に膜厚2μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、220℃で1時間加熱乾燥させて、透明硬化膜(下塗り層)を形成した。
得られた下塗り層付きシリコンウエハの下塗り層の上に、樹脂組成物を、乾燥膜厚が1.0μmになるようスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒プリベークし、シリコンウエハ上に膜を形成した。この膜に含まれる異物を、異物評価装置コンプラスIII(アプライドマテリアルズ社製)を用いて検出し、検出された全ての異物から、歩留まり低下の原因となる最大幅1.0μm以上の異物(粗大粒子)を目視で分類した。分類された最大幅1.0μm以上の異物の数(1cm2あたりの数)をカウントし、得られた値を指標として欠陥性能の評価を行なった。
Figure 0006976341
実施例は、波長400〜830nmの範囲の光の透過率の最大値が20%以下であり、波長1000〜1300nmの範囲の光の透過率の最小値が80%以上であった。また、上記表に示すように、実施例は、比較例よりも波長700nmにおける遮光性に優れていた。このため、実施例は、比較例よりもノイズの少ない近赤外線を透過させることができた。また、実施例は、比較例よりも異物が少なく、欠陥性能が良好であった。
[試験例4]
実施例101〜108の樹脂組成物を、製膜後の膜厚が1.0μmになるように、シリコンウエハ上にスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光した。
次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで2μm四方のベイヤーパターン(近赤外線カットフィルタ)を形成した。
次に、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用い、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用い、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上にRed組成物をパターニングした。同様にGreen組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑および青の着色パターンを形成した。
次に、上記着色パターン形成した膜上に、近赤外線透過フィルタ形成用組成物を、製膜後の膜厚が2.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのパターンの抜け部分に、近赤外線透過フィルタのパターニングを行った。これを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。
得られた固体撮像素子について、低照度の環境下(0.001Lux)で赤外発光ダイオード(赤外LED)光源から光を照射し、画像の取り込みを行い、画像性能を評価した。画像上で被写体をはっきりと認識できた。また、入射角依存性が良好であった。
試験例4で使用したRed組成物、Green組成物、Blue組成物および近赤外線透過フィルタ形成用組成物は以下の通りである。
(Red組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液 ・・51.7質量部
樹脂11 ・・・0.6質量部
重合性化合物2 ・・・0.6質量部
光重合開始剤11 ・・・0.4質量部
界面活性剤11 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV−503、大東化学(株)製) ・・・0.3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) ・・・42.6質量部
(Green組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液 ・・・73.7質量部
樹脂11 ・・・0.3質量部
重合性化合物11 ・・・1.2質量部
光重合開始剤11 ・・・0.6質量部
界面活性剤11 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV−503、大東化学(株)製) ・・・0.5質量部
PGMEA ・・・19.5質量部
(Blue組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液 44.9質量部
樹脂11 ・・・2.1質量部
重合性化合物11 ・・・1.5質量部
重合性化合物2 ・・・0.7質量部
光重合開始剤11 ・・・0.8質量部
界面活性剤11 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV−503、大東化学(株)製) ・・・0.3質量部
PGMEA ・・・45.8質量部
(近赤外線透過フィルタ形成用組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、近赤外線透過フィルタ形成用組成物を調製した。
顔料分散液1−1 ・・・46.5質量部
顔料分散液1−2 ・・・37.1質量部
重合性化合物1 ・・・1.8質量部
樹脂11 ・・・1.1質量部
光重合開始剤12 ・・・0.9質量部
界面活性剤11 ・・・4.2質量部
重合禁止剤(p−メトキシフェノール) ・・・0.001質量部
シランカップリング剤1 ・・・0.6質量部
PGMEA ・・・7.8質量部
Red組成物、Green組成物、Blue組成物および近赤外線透過フィルタ形成用組成物に使用した原料は以下の通りである。
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254の9.6質量部と、C.I.Pigment Yellow 139の4.3質量部と、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)の6.8質量部と、PGMEAの79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
・Green顔料分散液
C.I.Pigment Green 36の6.4質量部と、C.I.Pigment Yellow 150の5.3質量部と、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)の5.2質量部と、PGMEAの83.1質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6の9.7質量部と、C.I.Pigment Violet 23の2.4質量部と、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)の5.5質量部と、PGMEAの82.4質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
・顔料分散液1−1
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1−1を調製した。
・赤色顔料(C.I.Pigment Red 254)及び黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 139)からなる混合顔料 ・・・11.8質量部
・樹脂(Disperbyk−111、BYKChemie社製) ・・・9.1質量部
・PGMEA ・・・79.1質量部
・顔料分散液1−2
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1−2を調製した。
・青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)及び紫色顔料(C.I.Pigment Violet 23)からなる混合顔料 ・・・12.6質量部
・樹脂(Disperbyk−111、BYKChemie社製) ・・・2.0質量部
・樹脂A ・・・3.3質量部
・シクロヘキサノン ・・・31.2質量部
・PGMEA ・・・50.9質量部
樹脂A:下記構造の樹脂(Mw=14,000、構造単位における比はモル比である)
Figure 0006976341
・重合性化合物1:上述した重合性化合物1
・重合性化合物2:上述した重合性化合物2
・重合性化合物11:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
・樹脂11:上述したアルカリ可溶性樹脂2
・光重合開始剤11:IRGACURE−OXE01(BASF社製)
・光重合開始剤12:下記構造の化合物
Figure 0006976341

・界面活性剤11:下記混合物(Mw=14000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。
Figure 0006976341
・シランカップリング剤1:上述したシランカップリング剤1。
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:近赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層

Claims (19)

  1. 波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有する式(PP)で表される化合物である近赤外線吸収有機顔料であって、
    前記近赤外線吸収有機顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と前記極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満であり、
    前記近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径が1〜200nmであり、
    前記近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の平均長短辺比が0.3〜0.99であり、
    前記近赤外線吸収有機顔料の粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値が0.70〜0.98である、近赤外線吸収有機顔料;
    結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
    式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、
    Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
    Figure 0006976341
    (式(PP)中、R 1a およびR 1b は、各々独立にアリール基を表し、R 2 およびR 3 の一方はシアノ基を表し、他方はヘテロアリール基を表し、R 4 は、−BR 4A 4B を表し、R 4A およびR 4B は、各々独立に置換基を表し、R 4A およびR 4B は互いに結合して環を形成していてもよい。)
  2. 前記近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、前記近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxが0.57〜0.9である、請求項1に記載の近赤外線吸収有機顔料。
  3. 前記近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A1と、前記近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA1/Amaxは、前記近赤外線吸収有機顔料の平均一次粒子径が1500nmである場合の値よりも5%以上高い、請求項1または2に記載の近赤外線吸収有機顔料。
  4. 前記近赤外線吸収有機顔料は、波長650〜780nmの範囲に極大吸収波長を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収有機顔料。
  5. 前記結晶化度の値が0.85〜0.94である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収有機顔料。
  6. 前記近赤外線吸収有機顔料の一次粒子の平均長短辺比が0.40以上0.80以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収有機顔料。
  7. 前記式(PP)のR 2 およびR 3 が表すヘテロアリール基が、式(A−1−1)で表される基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収有機顔料。
    Figure 0006976341
    (式(A−1−1)中、X 1 は、O、S、NR X1 またはCR X2 X3 を表し、R X1 〜R X3 は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R 101a 〜R 104a は、各々独立に水素原子または置換基を表し、*は連結手を表す。)
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の近赤外線吸収有機顔料と、樹脂とを含む樹脂組成物。
  9. 更に、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
  10. 式(PP)で表される化合物であって、波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有し、波長550nmにおける吸光度A550と前記極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満である近赤外線吸収顔料をミリング処理して、平均一次粒子径を1〜200nmとし、一次粒子の平均長短辺比を0.3〜0.99とし、粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値を0.70〜0.98とする、近赤外線吸収有機顔料の製造方法;
    結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
    式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、
    Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
    Figure 0006976341
    (式(PP)中、R 1a およびR 1b は、各々独立にアリール基を表し、R 2 およびR 3 の一方はシアノ基を表し、他方はヘテロアリール基を表し、R 4 は、−BR 4A 4B を表し、R 4A およびR 4B は、各々独立に置換基を表し、R 4A およびR 4B は互いに結合して環を形成していてもよい。)
  11. 式(PP)で表される化合物であって、波長650〜1400nmの範囲に極大吸収波長を有し、波長550nmにおける吸光度A550と前記極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1未満である近赤外線吸収顔料をミリング処理して、平均一次粒子径を1〜200nmとし、一次粒子の平均長短辺比を0.3〜0.99とし、粉末X線回折スペクトルにおいて下記式で表される結晶化度の値を0.70〜0.98とする、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法であり、
    前記ミリング処理後の近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長よりも50nm短い波長における吸光度A 1 と、前記近赤外線吸収有機顔料の極大吸収波長における吸光度A max との比であるA 1 /A max は、前記ミリング処理前の近赤外線吸収有機顔料の値よりも5%以上高い、近赤外線吸収有機顔料の分光調整方法;
    結晶化度=[Ic/(Ia+Ic)]
    式中、Icは、回折角度2θが15°以上の領域において、粉末X線回折スペクトルにおける結晶に由来するピークの回折強度の最大値であり、
    Iaは、粉末X線回折スペクトルにおけるアモルファスに由来するピークの回折強度の最大値である。
    Figure 0006976341
    (式(PP)中、R 1a およびR 1b は、各々独立にアリール基を表し、R 2 およびR 3 の一方はシアノ基を表し、他方はヘテロアリール基を表し、R 4 は、−BR 4A 4B を表し、R 4A およびR 4B は、各々独立に置換基を表し、R 4A およびR 4B は互いに結合して環を形成していてもよい。)
  12. 請求項8または9に記載の樹脂組成物を用いて得られる膜。
  13. 支持体上に請求項12に記載の膜を有する積層体。
  14. 前記支持体が銅を含有するガラス基材である、請求項13に記載の積層体。
  15. 請求項12に記載の膜を有する近赤外線カットフィルタ。
  16. 請求項12に記載の膜を有する近赤外線透過フィルタ。
  17. 請求項12に記載の膜を有する固体撮像素子。
  18. 請求項12に記載の膜を有する画像表示装置。
  19. 請求項12に記載の膜を有する赤外線センサ。
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