ところで、建物の外壁としてALC(軽量気泡コンクリート)パネルを使用する場合に、所定の基準幅を有するALCパネルの縦壁を用い、例えばALCパネルの幅方向中間部に設置されたアンカーと取付け金物とにより建物躯体にALCパネルを取り付ける工法がある。ここで、所定の基準幅よりも幅狭のALCパネルを用いることができれば、例えばサッシ等の開口部分を端に寄せる等の設計の自由度が増す。しかし、幅狭のALCパネルを得るために所定の基準幅を有するALCパネルを加工する際に、アンカーを含む部分が切り落とされ、得られた幅狭のALCパネルがアンカーを備えていない構造となってしまう場合には、外壁の固定構造を別途設ける必要が生じる。
また、アンカーを備えていない薄物塗装ALCパネルに対して提案されている従来技術のALCパネルの取付構造は、使用する取付け金具の構造が複雑であると共に、取付け強度を向上させるためには、別途他の固定金具を他の建物躯体に取り付ける必要があることから、部材点数が増加する。更に、ALCパネルの表面側に掘られた座掘部からボルトを挿入して取り付けることから、座掘部分の補修が必要となる。
本発明は上記事実を考慮し、アンカーを備えていない幅狭のALC外壁パネルを補強しつつ、より少ない部材による簡単な構成により梁又は基礎に固定することができると共に、座掘り及び座掘部分の補修を要しない、外壁固定構造を得ることが目的である。
第1の態様に係る外壁固定構造は、アンカーを備えず、基準幅よりも幅狭でかつ平面視で屈曲部のない直線状に形成されたALC外壁パネルと、前記ALC外壁パネルの意匠面側から前記ALC外壁パネルを貫通するビスにより、前記ALC外壁パネルの裏面に固定され、前記ALC外壁パネルの前記裏面に当接して前記ALC外壁パネルの下端から上端近傍まで延在されると共に、上部及び下部に梁又は基礎に直接又は他の部材を介して取り付け可能に構成された上部取付部材及び下部取付部材がそれぞれ設けられた補強板と、を備える。
第1の態様に係る外壁固定構造によれば、アンカーを備えず基準幅よりも幅狭のALC外壁パネルの裏面にビス固定された補強板が、ALC外壁パネルに当接してALC外壁パネルの下端から上端近傍まで延在されることにより、幅狭のALC外壁パネルが補強される。補強板は、補強板の上部及び下部に設けられた上部取付部材及び下部取付部材により梁又は基礎に取り付けられ、結果としてALC外壁パネルが梁又は基礎に固定されることとなる。補強の機能を有する補強板に取付部材が設けられている構成を採用することにより、補強板と取付部材とをALC外壁パネルに固定して、更に取付部材により建物躯体に固定する場合に比べて、少ない部材による簡単な構成で、アンカーを備えていないALC外壁パネルを梁又は基礎に固定することできる。
また、ALC外壁パネルの裏面に補強板を固定するために、ALC外壁パネルの意匠面側から挿入されるビスが用いられる。このため、ビスの頭部の径を有する小さな凹みをパテで埋める作業だけで済み、ボルト、ナット及び座金等をALC外壁パネルに埋設する場合に必要となる座掘りの作業や、座掘部分の補修を要しない。
第2の態様に係る外壁固定構造は、第1の態様に係る外壁固定構造において、前記上部取付部材は前記梁に直接取り付け可能に構成され、前記下部取付部材は前記基礎に固定されると共に柱の下端部が接続される柱脚プレートを介して前記基礎に取り付け可能に構成されている。
第2の態様に係る外壁固定構造によれば、上部取付部材は梁に直接固定され、下部取付部材は基礎に固定された柱脚プレートを介して基礎に固定される。他の建築部材の固定にも使用される柱脚プレートを利用するため、ALC外壁パネルを固定するための追加の部材を要さず、アンカーを備えていない幅狭のALC外壁パネルであっても少ない部材による簡単な構成によりALC外壁パネルを梁又は基礎に固定することができる。
第3の態様に係る外壁固定構造は、第1の態様に係る外壁固定構造において、前記上部取付部材及び前記下部取付部材は前記梁に直接取り付け可能に構成されている。
第3の態様に係る外壁固定構造によれば、補強板に設けられた上部取付部材及び下部取付部材が梁に直接取り付けられることによりALC外壁パネルが固定される。上部取付部材及び下部取付部材が建物躯体である梁に直接固定されることから、アンカーを備えていない幅狭のALC外壁パネルであっても、少ない部材による簡単な構成により建物躯体に固定することができる。
第4の態様に係る外壁固定構造は、第1の態様に係る外壁固定構造において、前記上部取付部材は前記梁に直接取り付け可能に構成され、前記下部取付部材は前記梁に固定された防水下地材を介して前記梁に取り付け可能に構成されている。
第4の態様に係る外壁固定構造によれば、下部取付部材は防水下地材を介して梁に固定される。梁に直接固定することが困難な構成においても、防水下地材を利用するため、ALC外壁パネルを固定するための追加の部材を要さず、アンカーを備えていない幅狭のALC外壁パネルであっても少ない部材による簡単な構成によりALC外壁パネルを梁に固定することができる。
第5の態様に係る外壁固定構造は、第1〜第4の何れかの態様に係る外壁固定構造において、前記補強板は、前記ALC外壁パネルの裏面から前記ALC外壁パネルの側面に沿って略垂直に折り曲げられている折り曲げ部を備える。
第5の態様に係る外壁固定構造によれば、ALC外壁パネルの裏面に固定された補強板が、ALC外壁パネルの側面に沿って折り曲げられている折り曲げ部を備えるので、補強板をALC外壁パネルに固定する際の幅方向の位置決めが容易となる。また、補強板に折り曲げ部が設けられていることにより、補強板の剛性が増す。このため、ALC外壁パネルの裏面に当接している補強板の撓み及び捩れが抑制される。その結果、ALC外壁パネルの破損等を抑制又は防止することができる。
第6の態様に係る外壁固定構造は、第1〜第5の何れかの態様に係る外壁固定構造において、前記上部取付部材及び前記下部取付部材は、前記補強板に溶接によって固定されており、前記上部取付部材及び前記下部取付部材の少なくとも一方は、前記梁又は前記基礎に少なくとも2点で固定されている。
第6の態様に係る外壁固定構造によれば、上部取付部材及び下部取付部材は、補強板に溶接によって固定されているため、補強板に強固に固定することができる。また、上部取付部材及び下部取付部材の少なくとも一方は、梁又は基礎に対して少なくとも2点で固定されているため、1点で固定している場合に比べて補強板の回転を抑制又は防止することができ、結果としてALC外壁パネルの固定をより強固にすることができる。
第7の態様に係る外壁固定構造は、第5の態様に係る外壁固定構造において、前記折り曲げ部に、他の建築部材が固定されている。
第7の態様に係る外壁固定構造によれば、補強板の折り曲げ部を、他の建築部材の固定のための下地とすることができるため、他の建築部材の固定のための追加の固定下地を要さず、ALC外壁固定構造の一部を他の用途に有効活用することにより部材点数を削減することができる。
以上説明したように、本発明に係る外壁固定構造は、少ない部材による簡単な構成により、アンカーを備えていないALC外壁を梁又は基礎に固定することができると共に、座掘りの作業や、座掘部分の補修を要しないという優れた効果を有する。
以下、図1〜図10を用いて、本発明に係る外壁固定構造の実施形態について説明する。
<外壁固定構造が適用された建物の構成>
図1には、本実施形態に係る外壁固定構造が適用された建物の2階部分の一部を示す平断面図が示されている。建物10は、一例として鉄骨軸組構造で建物躯体が構築された3階建ての住宅である。ここでは、本実施形態に係る外壁固定構造が適用された2階部分について説明する。図1に示されるように、建物10の2階部分は、バルコニー12、14と、居室16、18と、を含んで構成されている。また、建物10の屋外側には、ALC外壁パネル20、22が水平方向に複数並べて配置されており、バルコニー12、14に面した屋外側には、2つのALC外壁パネル20、22が屋外側に略垂直の角度をなして立設され、入隅部24、26、28が形成されている。入隅部24、26、28を形成するALC外壁パネル22に隣接して、サッシ30、32が設けられている。入隅部24、26、28を形成するALC外壁パネル20、22のうち、サッシ30、32に隣接するALC外壁パネル22は、サッシ30、32に隣接しないALC外壁パネル20と比べて幅狭に形成されている。
図2は、図1のA線矢視部の拡大平断面図であると共に、本実施形態に係る外壁固定構造34を含む2階部分の入隅部24が示されている。詳細については後述するが、2階部分の外壁固定構造34は、幅狭のALC外壁パネル22と、ビス36によりALC外壁パネル22に固定された補強板38と、補強板38の屋内側表面(裏面)の上部に固定されたL字状の「下部取付部材」としての下側取付部材40と、「上部取付部材」としての上側取付部材42(図4参照)と、を含んで構成されている。
図3(A)、(B)には、基準幅(例えば490mm)のALC外壁パネル50、50’を切断することにより、アンカーを全く又は一部備えていない幅狭ALC外壁パネル22、22’が得られる様子が示されている。図3(A)に示されるように、基準幅のALC外壁パネル50には、幅方向中央部の上下2箇所にアンカー52、54が埋設されている。基準幅のALC外壁パネル50を一本の直線である仮想線Bで切断することにより、アンカー52、54を含まない幅狭のALC外壁パネル22が得られる。別の例として、図3(B)に示されるように、基準幅のALC外壁パネル50’をクランク状の仮想線Cで切断することにより、上側のアンカー52’のみを含み、下側のアンカー54’を含まない幅狭のALC外壁パネル22’が得られる。一例として、図3(A)に示される矩形状の幅狭のALC外壁パネル22は、上述の図1及び図2に示した入隅部24、26、28において使用され、図3(B)示される逆L字状の幅狭のALC外壁パネル22’は、図示しない玄関扉開口部に隣接して配置される一般部の外壁パネルとして使用される。逆L字状の幅狭のALC外壁パネル22’を更に上下2つの矩形状のパネルに分割して、アンカー52’を含むALC外壁パネルと、アンカーを全く含まない幅狭のALC外壁パネルとを得て、このアンカーを全く含まない幅狭のALC外壁パネルに本実施形態に係る外壁固定構造34を適用してもよい。
なお、本明細書における「基準幅」とは、同一規格のALC外壁パネルを一定数製造する際に採用される幅を指し、本実施形態では基準幅を490mmとしているが、例えば、意匠に採用される柄のサイズ等に応じて、基準幅は他の値であってもよい。
図4は、図1の4−4線断面図として示される2階部分の下部を示す縦断面図(一点鎖線2SLよりも上側に図示)と、建物10の他の箇所において本実施形態に係る外壁固定構造34が適用された1階部分を示す縦断面図(一点鎖線2SLよりも下側に図示)とを、説明の便宜のために同一図面に示したものである。この図に示されるように、外壁固定構造34が適用された建物10は、鉄骨軸組構造で構築された建物躯体の下側に、土台となるコンクリート製の基礎60を備えている。基礎60の上面には、図示しないアンカーボルトが所定の間隔で立設されている。また、柱が設置される箇所の基礎60の上面には、平面視で矩形平板状の「他の部材」としての柱脚プレート62が載置されている。図5(B)に示されるように、柱脚プレート62の中央部には、図示しない柱の下端部が嵌合されると共に溶接等により柱に接合される柱嵌合部64が形成されている。柱脚プレート62には更に、長手方向両端部における中央部に柱嵌合部64を挟んで一対のボルト挿通孔66が形成されている。基礎60の上面に立設された図示しないアンカーボルトが柱脚プレート62のボルト挿通孔66に挿入されて、図示しないナットによって締結固定されることにより、柱脚プレート62が基礎60上に固定されている。柱脚プレート62の四隅には、雌ねじ部68が形成されている。
図4に戻り、基礎60上には、図示しない複数の柱が立設され、柱の上端部には、隣合う柱の上端部との間にH型鋼で構成された梁44が架け渡されて1階部分を構成している。梁44上には、図示しない2階部分の柱が立設されており、2階部分の柱の上端部に、図示しない梁が架け渡されている。建物躯体の一部を構成する梁44は、図4の紙面と直交する方向を長手方向とするH型鋼で構成され、建物上下方向を板厚方向とする上フランジ44A及び下フランジ44Bと、梁44の幅方向を板厚方向とすると共に上フランジ44Aの下面と下フランジ44B上面とをそれぞれの幅方向中央部において連結するウェブ44Cと、を備えている。上フランジ44Aは、上面が上階のスラブライン(一点鎖線2SLとして図示)を構成し、下フランジ44Bは、柱により支持されている。上フランジ44A及び下フランジ44Bには、ウェブ44Cとの連結部位よりも屋内側と屋外側とに、それぞれ長手方向に複数の貫通孔46(図6参照)が形成されている。
<本実施形態の要部構成>
次に、上記外壁固定構造34の要部の構成について詳細に説明する。
図4に示されるように、1階部分の外壁固定構造34は、幅狭のALC外壁パネル22と、ビス36によりALC外壁パネル22に固定された補強板38と、補強板38の屋内側表面の上部に固定された「上部取付部材」としての上側取付部材42と、「下部取付部材」としての基礎側取付部材72と、を含んで構成されている。
外壁固定構造34の要部を構成する幅狭のALC外壁パネル22は、矩形の板状に形成されて(図3(A)参照)、1階スラブライン(一点鎖線1SLとして図示)の上方から、2階スラブライン(一点鎖線2SLとして図示)まで略垂直に延在されている。幅狭のALC外壁パネル22の裏面22B(屋内側表面)には、ALC外壁パネル22の意匠面22A側(屋外側)から挿入されたビス36により、補強板38が固定されている。一例として、意匠面を含めたALC外壁パネル22の厚さは100mm、幅は165mm、175mm、185mm等に構成されている。
図4、図5(A)及び図6に示されるように、補強板38は、ALC外壁パネル22の裏面22Bに当接してALC外壁パネル22の下端から上端近傍まで延在される基部38Aと、基部38Aの幅方向一端から屋外側に延出されると共にALC外壁パネル22の裏面22Bから一方の側面22Cに沿って略垂直に折り曲げられて形成された折り曲げ部38Bと、によって構成された金属製の板である。図6に示される態様では、補強板38の基部38Aの幅はALC外壁パネル22の幅と同じであるが、他の部材、例えば開口フレームとの干渉を避けるために、補強板38の基部38Aの幅がALC外壁パネル22の幅よりも狭くなるように構成してもよい。折り曲げ部38Bは、補強板38の下端から上端まで延在されると共に、基部38Aの幅方向一端から屋外側に略垂直に起立しており、ALC外壁パネル22の側面22Cに当接されて、補強板38をALC外壁パネル22に固定する際の幅方向の位置決めのガイドとなる。
図4及び図6に示されるように、補強板38をALC外壁パネル22に固定するためのビス36は、ALC外壁パネル22の意匠面22A側から挿入され、補強板38の基部38Aを貫通して、基部38Aの屋外側に突出している。補強板38の基部38Aの幅方向中央部にビス36が配置されるように挿入され、かつ、垂直方向に所定のピッチ(例えば500mm)で複数のビス36が挿入されることにより、補強板38がALC外壁パネル22に固定されている。なお、補強板38をALC外壁パネル22にビス固定する前に、接着剤により仮固定してもよい。
図4に示されるように、1階部分の補強板38の基部38Aの、ALC外壁パネル22に当接された面とは反対側の面(裏面)の下端には、柱脚プレート62に取り付け可能に構成された「下部取付部材」としての基礎側取付部材72が溶接により接合されている。また、基部38Aの裏面の上端には、梁44の下フランジ44Bに取り付け可能に構成された「上部取付部材」としての上側取付部材42が溶接により接合されている。
図4及び図5(A)に示されるように、基礎側取付部材72は、基礎60上に固定された柱脚プレート62の上に載置される底壁部72Aと、梁44の長手方向を板厚方向とする縦壁部72Bとによって構成されており、屋外側から見てL字状に形成されている。図5(A)に示されるように、底壁部72Aには挿通孔74が形成されており、挿通孔74が、柱脚プレート62に形成された雌ねじ部68(図5(B)参照)と同軸上に配置され、雄ねじ70(図4参照)により締結固定されている。図5(A)に示されるように、縦壁部72Bは、屋外側の側面の上部が補強板38の基部38Aの裏面の下端に当接されて、溶接により接合されている。縦壁部72Bの屋外側の側面の下部は補強板38の基部38Aに接合されておらず、縦壁部72Bが基部38Aの下端よりも下側に突出しているため、底壁部72Aが補強板38の基部38Aの下端よりも下方に位置している。これにより、ALC外壁パネル22は、ALC外壁パネル22の下端と基礎60との間が上下方向に離間された状態で、基礎側取付部材72を介して基礎60上の柱脚プレート62に固定されている(図4参照)。
図4及び図6に示されるように、上側取付部材42は、梁44の下フランジ44Bの下面に当接されて締結固定されることにより梁44に取り付けられる取付部42Aと、補強板38の基部38Aの裏面の上端に溶接により接合された接合部42Bとによって構成されており、ALC外壁パネル22の側面から見てL字状に形成されている。取付部42Aには、長手方向に2つの取付孔48が形成されており(図6参照)、2つの取付孔48の間隔は、梁44の下フランジ44Bに形成された貫通孔46のうちの2つの間隔と同じになるように構成されている。取付部42Aの2つの取付孔48が下フランジ44Bの屋外側の2つの貫通孔46と同軸上に配置され、下フランジ44Bの側から挿入されたボルト76がナット78に螺合されて締結固定されている。このとき、取付部42Aの屋外側端部は、下フランジ44Bの屋外側端部よりも屋外側に突出するように構成されている。これにより、梁44の上フランジ44A及び下フランジ44Bの屋外側端部と、ALC外壁パネル22の裏面との間は離間されて、躯体の建て方誤差等の調整代としてのクリアランスが設けられている。
上側取付部材42の接合部42Bは、屋外側の面の下部が補強板38の基部38Aの裏面の上端に当接されて、溶接により接合されている。基部38Aの幅方向における接合部42Bの固定位置は、梁44の下フランジ44Bの貫通孔46の位置と、ALC外壁パネル22の設置位置との相対関係により決定されるので、図2及び図6に示されるように上側取付部材42がALC外壁パネル22の幅方向外側に突出する位置に固定されてもよいし、ALC外壁パネル22の幅に収まる位置に固定されてもよい。また、基部38Aの幅方向における接合部42Bの固定位置は、折り曲げ部38Bが形成されている端部側に寄っていてもよいし(図6参照)、折り曲げ部38Bとは反対側の端部に寄っていてもよい(図2参照)。なお、本実施形態では、「下部取付部材」としての基礎側取付部材72が補強板38の下端に1つだけ接合されているが、2つの基礎側取付部材72を補強板38の下端に接合するようにしてもよい。また、本実施形態では上側取付部材42の取付孔48は2つ設けられているが、3つ以上設けてもよい。更に、本実施形態では、基礎側取付部材72と上側取付部材42とを溶接により補強板38に接合しているが、補強板38の基部38Aの下端及び上端の少なくとも一部をそれぞれ折り曲げる等の方法により基礎側取付部材72と上側取付部材42とを形成し、補強板38と一体成形してもよい。
図4に示されるように、2階部分に幅狭のALC外壁パネル22を適用する場合、補強板38の下端には、「下部取付部材」としての下側取付部材40が溶接により接合され、下側取付部材40を梁44の上フランジ44Aに締結固定することによりALC外壁パネル22が梁44に固定されている。下側取付部材40は、1階部分の「上部取付部材」としての上側取付部材42と同じ構成を有するが、上側取付部材42とは上下逆の方向で上フランジ44Aに取り付けられている。すなわち、下側取付部材40の取付部40Aは、上フランジ44Aの上面に当接して載置され、2つの取付孔48(図2を参照)のそれぞれにボルト80が上フランジ44Aの側から挿通され、ナット82に螺合されて2点で締結固定されている。接合部40Bは、取付部40Aの屋外側端部から上に向かって延出され、2階部分の補強板38の基部38Aの裏面の下端に当接されて、溶接により接合されている。2階部分の補強板38の上端は、図4に示される1階部分の上端の固定と同様、2階部分の上部の梁(図示しない)の下フランジに上側取付部材42を介して固定されている。
図7に示されるように、2階部分のバルコニーに面した箇所に幅狭のALC外壁パネル22を適用する場合には、ALC外壁パネル22の下部にバルコニーALC床84及び耐火材86が配置されると共に、「他の部材」としての防水下地材88による防水の立ち上げが形成されている。このため、補強板38の下端と梁44の上フランジ44Aとの距離が大きく、補強板38を下側取付部材40により上フランジ44Aに直接取り付けることができない。そこで、「下部取付部材」としての引掛け金具90を基部38Aの裏面の下端近傍に溶接により接合し、上フランジ44Aに固定された防水下地材88の上端に引掛けることにより、防水下地材88を介して補強板38を上フランジ44Aに取り付ける。
図8(A)及び(B)に示されるように、引掛け金具90は、補強板38の基部38Aの裏面の下端近傍に当接されて溶接により接合される第1縦壁部90Aと、第1縦壁部90Aの下端から屋内側へ斜め下方に延出される段差部90Bと、段差部90Bの下端から補強板38の基部38Aと平行に下方に延出される第2縦壁部90Cと、第2縦壁部90Cの下端から屋内側へ斜め下方に延出されるガイド部90Dとにより構成されている。引掛け金具90が取り付けられる防水下地材88は、梁44の上フランジ44Aにボルト締結される基部88Aと、基部88Aの屋内側端部から上に延出される立ち上がり部88Bとにより構成されている(図7参照)。引掛け金具90は、第2縦壁部90Cと、補強板38の基部38Aの裏面との間に防水下地材88の立ち上がり部88Bを挟み込むことにより補強板38を防水下地材88に固定するように構成されている。このため、第1縦壁部90Aと第2縦壁部90Cとの段差(補強板38の基部38Aの裏面と第2縦壁部90Cとの距離d)は、防水下地材88の立ち上がり部88Bの板厚と略同一となるように設定されている。ガイド部90Dは、防水下地材88への取り付けの際に、引掛け金具90を引掛け易くするためのガイドとして設けられている。なお、本実施形態では、引掛け金具90は、幅が50mm、高さが85mm、第1縦壁部90Aと第2縦壁部90Cとの段差(距離d)が4mmとして構成されると共に、補強板38の基部38Aの裏面の下端近傍の同じ高さに2つ設けられているが、防水下地材88の板厚やALC外壁パネル22の幅等に応じて、他の寸法としてもよいし、3つ以上設けてもよい。
図9には、本実施形態に係る外壁固定構造34をパラペットに適用した場合の構成を示す縦断面図が示されている。最上階(3階)のパラペット部分に適用される幅狭のALC外壁パネル100は、最上階の屋外側を覆う本体部102と、ルーフスラブライン(仮想線RSLとして図示)よりも上まで延長されて形成されたパラペット部104とが一体に形成されている。補強板106も同様に、ALC外壁パネル100の本体部102の裏面に当接された本体部108と、ルーフスラブライン(RSL)よりも上まで延長されてALC外壁パネル100のパラペット部104の裏面に当接された延長部110とが一体に形成されている。本体部108は、基部108A及び折り曲げ部108Bを備え、延長部110は、基部110A及び折り曲げ部110Bを備えている。延長部110の基部110Aの裏面の下端には、「上部取付部材」としての上側取付部材112が溶接により接合されている。図4に示される1階部分の「上部取付部材」としての上側取付部材42が補強板38の上端に接合されているのに対して、上側取付部材112は補強板106の延長部110の下端に接合されているので、補強板106の上端よりも下方に接合されている。上側取付部材112は、図4に示される下側取付部材40と同様の構成を有し、取付部112Aと接合部112Bとにより構成されており、取付部112Aが、梁114の上フランジ114Aの上面に2点で締結固定されている。但し、2階部分の下側取付部材40が補強板38の基部38Aの下端に接合される「下部取付部材」であるのに対して、上側取付部材112は、補強板106の上端近傍に接合される「上部取付部材」である点が異なっている。
図10には、本実施形態に係る外壁固定構造34の補強板120がチャンバ扉枠122の固定下地とされた状態が示されている。ここで、チャンバ扉枠122に対して回動可能に固定されたチャンバ扉124は、一例としてガスメーターボックス126の扉である。ALC外壁パネル128は、図示しない基礎側取付部材72及び上側取付部材42によって、図示しない基礎及び梁にそれぞれ固定されている。補強板120は、基部120Aと折り曲げ部120Bとにより構成され、折り曲げ部120Bは、図6に示される折り曲げ部38Bよりも延長されて、折り曲げ部38Bよりも幅広に構成されている。補強板120の折り曲げ部120Bにはチャンバ扉枠122に予め接合された取付金具130が当接されて、チャンバ扉枠122の側から挿入されるビス132が取付金具130の図示しない挿通孔及び折り曲げ部120Bを貫通してALC外壁パネル128に側面から螺合されることにより、チャンバ扉枠122が補強板120を介してALC外壁パネル128に固定されている。
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
まず、基準幅のALC外壁パネル50を加工することにより、アンカー52、54を備えていない幅狭のALC外壁パネル22が得られる。補強板38は、幅方向端部が略垂直に折り曲げられて、折り曲げ部38Bが予め形成される。1階部分に使用される補強板38の基部38Aの裏面の上端には上側取付部材42が、下端には基礎側取付部材72が溶接により予め接合される。
次いで、補強板38がALC外壁パネル22に固定される。具体的には、折り曲げ部38Bを幅狭のALC外壁パネル22の側面22Cに当接させることにより、補強板38をALC外壁パネル22に対して幅方向に位置決めすると共に、補強板38の下端がALC外壁パネル22の下端と合うように上下方向の位置決めをし、補強板38がALC外壁パネル22に接着剤により仮固定される。この状態で、ALC外壁パネル22の意匠面22A側から複数のビス36が挿入され、ALC外壁パネル22を貫通すると共に、補強板38の基部38Aの幅方向中央部を貫通し、補強板38がALC外壁パネル22に固定される。
その後、建築現場にて、予め構築された梁44及び基礎60に対して、補強板38に設けられた上側取付部材42及び基礎側取付部材72がそれぞれ取り付けられる。具体的には、上側取付部材42の取付部42Aが梁44の下フランジ44Bの下面に当接されて取付部42Aの2つの取付孔48が下フランジ44Bの屋外側の2つの貫通孔46と同軸上に配置された状態で、上から(下フランジ44Bの側から)挿入されたボルト76がナット78に螺合されて上側取付部材42が梁44に取り付けられる。また、基礎側取付部材72の底壁部72Aに設けられた挿通孔74が基礎60に固定された柱脚プレート62に形成された雌ねじ部68と同軸上に配置されて、上から挿入された雄ねじ70が螺合されて基礎側取付部材72が柱脚プレート62を介して基礎60に取り付けられる。
2階部分に使用される幅狭のALC外壁パネル22では、補強板38の基部38Aの裏面の上端には上側取付部材42が、下端には下側取付部材40又は引掛け金具90が溶接により予め接合されている。下端に下側取付部材40を用いる場合には、建築現場では、梁44の上フランジ44Aにボルト締結される。また、下端に引掛け金具90を用いる場合には、ガイド部90Dを防水下地材88の立ち上がり部88Bの上端に引掛けて、第2縦壁部90Cと、補強板38の基部38Aの裏面との間に防水下地材88の立ち上がり部88Bを挟み込むことにより補強板38が防水下地材88に固定される。
このように本実施形態では、アンカーを備えず基準幅よりも幅狭のALC外壁パネル22の裏面22Bにビス固定された補強板38が、ALC外壁パネル22に当接してALC外壁パネル22の下端から上端近傍まで延在されるので、幅狭のALC外壁パネル22が補強される。また、補強板38の基部38Aの裏面の上端には、上側取付部材42が、下端には基礎側取付部材72(2階部分の場合には下側取付部材40又は引掛け金具90)が溶接により予め接合される。そして、上側取付部材42及び基礎側取付部材72が梁44及び基礎60にそれぞれ取り付けられることにより、結果としてALC外壁パネルが梁44及び基礎60に固定されることとなる。上側取付部材42及び基礎側取付部材72が補強板38に設けられており、ALC外壁パネル22に直接固定されていない構成を採用することにより、補強板と取付部材とをALC外壁パネルに固定して、更に取付部材により建物躯体に固定する場合に比べて、少ない部材による簡単な構成で、アンカーを備えていないALC外壁パネル22を梁44及び基礎60に固定することできる。
また、本実施形態では、ALC外壁パネル22の裏面22Bに補強板38を固定するために、ALC外壁パネル22の意匠面(22A)側からビス36が挿入されるため、ビス36の頭部の径を有する小さな凹み(例えば直径約10mm)をパテで埋める作業だけで済み、ボルト、ナット及び座金等をALC外壁パネルに埋設する場合に必要となる座掘りの作業や、座掘部分の補修、意匠の再構築を要しない。
さらに、本実施形態では、補強板38の取付部材を梁44又は基礎60に直接固定することが困難な構成においても、他の建築部材の固定に使用される柱脚プレート62や、防水下地材88を介して固定されるため、追加の部材を要さずに、アンカーを備えていない幅狭のALC外壁パネル22を少ない部材による簡単な構成により梁44又は基礎60に固定することができる。
また、補強板38にはALC外壁パネルの側面に沿って折り曲げられている折り曲げ部38Bが設けられており、補強板38をALC外壁パネル22に固定する際には、折り曲げ部38Bを幅狭のALC外壁パネル22の側面22Cに当接させることにより、補強板38をALC外壁パネル22に対して幅方向に位置決めすることができる。さらに、補強板38に折り曲げ部38Bが設けられていることにより、補強板38の剛性が増し、ALC外壁パネル22の裏面22Bに当接している補強板38の撓み及び捩れが抑制される。その結果、ALC外壁パネル22の破損等を抑制又は防止することができる。
さらに、上側取付部材42及び下側取付部材40は、2つの取付孔48を備えることにより、2点で下フランジ44B及び上フランジ44Aにそれぞれ締結固定される。また、防水下地材88に取り付けるための引掛け金具90は、少なくとも2つ設けられており、2点で防水下地材に固定されている。このように、補強板38の上部及び下部に設けられた取付部材の上下少なくとも一方は、少なくとも2点で梁44又は他の部材に固定されていることから、1点で固定している場合に比べて補強板の回転を抑制又は防止することができ、結果としてALC外壁パネル22の固定をより強固にすることができる。
また、補強板120の折り曲げ部120Bを、チャンバ扉枠122の固定下地とすることができるため、チャンバ扉枠122の固定のための追加の固定下地を要さず、ALC外壁固定構造34の一部を他の用途に有効活用することにより部材点数を削減することができる。