以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明をスポーツタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を他のタイプの自動二輪車や、バギータイプの自動三輪車、自動四輪車等に適用してもよい。また、方向について、車両前方を矢印FR、車両後方を矢印RE、車両上方を矢印UP、車両下方を矢印LO、車両左方向を矢印L、車両右方向を矢印Rでそれぞれ示す。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
図1から図3を参照して、本実施の形態に係る自動二輪車の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る自動二輪車の概略構成を示す右側面図である。図2は、本実施の形態に係るエンジン及び車体フレームを示す右側面図である。図3は、本実施の形態に係るエンジン及び車体フレームを示す正面図である。
図1から図3に示すように、自動二輪車1は、電装系等の各部を搭載する車体フレーム2にパワーユニットの一部としてのエンジン3を懸架して構成される。エンジン3は、例えば、並列4気筒エンジンで構成される。図2及び図3に示すように、エンジン3は、クランクシャフト(不図示)等が収容されるエンジンケース30の上部に、シリンダヘッド31及びシリンダヘッドカバー32を取り付けて構成される。
エンジン3は、シリンダ(エンジンケース30の上半部分)の軸方向が鉛直方向に対して前側にやや傾斜するように配置されている。また、エンジンケース30の下部には、オイルパン33が設けられる。エンジンケース30の左方にはマグネトカバー34が設けられ、エンジンケース30の右方にはクラッチカバー35が設けられている。
また、クラッチカバー35の下方において、エンジンケース30の内部には、オイルパン33からオイルポンプ(不図示)によって汲み上げられるオイルの通路の一部を構成するオイルギャラリ30a(メインギャラリと呼ばれてもよい)が形成されている。オイルギャラリ30aは、エンジンケース30の車幅方向に延びるように形成されている。
車体フレーム2は、アルミ鋳造で形成されるツインスパータイプのフレームであり、上記のようにエンジン3を懸架することで、車体全体として剛性が得られるように構成される。車体フレーム2は、全体として、前方から後方に向かって延在し、後端側で下方に向かって湾曲した形状を有している。
具体的に車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から後下方に向かって延びる左右一対のメインフレーム21と、ヘッドパイプ20から下方に延びる左右一対のエンジン懸架部22(ダウンフレームと呼ばれてもよい)と、メインフレーム21の後端から下方に向かって延びる左右一対のボディフレーム23と、を含んで構成される。
メインフレーム21は、中空断面形状を有し、その後半部分がタンクレール21aを構成する。タンクレール21aの上部には、燃料タンク10が配置される。エンジン懸架部22は、エンジン3の前側部分(シリンダヘッド31)を支持する。エンジン懸架部22は、基端から先端(上方から下方)に向かうに従って前後幅が小さくなるように側面視略三角形状に形成されている。左右一対のメインフレーム21及びエンジン懸架部22は、エンジン3の上部(特にシリンダヘッドカバー32)の左右を囲んでいる。
ボディフレーム23は、上下端部でエンジンケース30の後部を支持する。また、ボディフレーム23の鉛直方向の略中央部分には、スイングアーム11を揺動可能に支持するピボット部23aが形成されている。ボディフレーム23の上端には、後上方に向かって延びるシートレール(不図示)及びバックステー24が設けられている。シートレールには、燃料タンク10の後部に連なるライダーシート12及びピリオンシート13が設けられる。
このように構成される車体フレーム2及びエンジン3には、車体外装としての各種カバーが装着される。具体的には、車体前半部がフロントカウル25によって覆われ、車体側面がサイドカウル26によって覆われる。また、シートレールがリヤカウル27によって覆われ、エンジン3の前下方がアンダーカウル28によって覆われる。
ヘッドパイプ20には、ステアリングシャフト(不図示)を介して左右一対のフロントフォーク14が操舵可能に支持される。フロントフォーク14の下部には前輪15が回転可能に支持されており、前輪15の上方はフロントフェンダ15aによって覆われる。
スイングアーム11は、ピボット部23aから後方に向かって延びている。スイングアーム11とボディフレーム23の間には、リヤサスペンション16が設けられている。リヤサスペンション16は、一端がボディフレーム23の上端側に接続され、他端がリヤサスペンションリンク16aを介してスイングアーム11の前側下方に接続される。スイングアーム11の後端には後輪17が回転可能に支持される。後輪17の上方は、リヤカウル27の後部に設けられるリヤフェンダ17aによって覆われる。
また、シリンダヘッド31の各排気ポートには、排気システムとして、エキゾーストパイプ18及びマフラ19が接続される。エキゾーストパイプ18は、各排気ポートから下方に向かって複数本(本実施の形態では4本)延び、エンジン3の前下方で後方に屈曲した後、1本にまとめられる。
また、本実施の形態に係るエンジン3には、油圧式の可変バルブタイミング(VVT:Variable Valve Timing)機構4、5(図7参照)が採用されている。可変バルブタイミング機構4、5は、エンジン3の内部を循環するオイルによって駆動される。詳細は後述するが、可変バルブタイミング機構4、5は、シリンダヘッド31及びシリンダヘッドカバー32の内部に配置されており、カムシャフトの軸端に設けられる排気側アクチュエータ40と吸気側アクチュエータ50(以下、総じて油圧アクチュエータと呼ぶことがある)とを含んで構成される(図7、13、14参照)。
可変バルブタイミング機構4、5に供給されるオイルの流量(油圧)は、オイルコントロールバルブ6によって調整される。オイルコントロールバルブ6は、エンジン3の側面に配置されており、上流端がオイル配管62を介してエンジンケース30に接続され、下流端が複数のオイル配管63−66を介してシリンダヘッドカバー32の上部に接続される。なお、オイルコントロールバルブ6の詳細については後述する。
ところで、油圧式の可変バルブタイミング機構を備えるエンジンにおいては、レイアウトの関係上、オイルコントロールバルブの配置箇所が限られている。例えば、可変バルブタイミング機構は、カムシャフトの端部に設けられるため、オイルコントロールバルブもその周辺に配置されることが好ましい。例えば、エンジンの側面において、車体フレームとシリンダヘッドとの間にオイルコントロールバルブを配置することが考えられる。
しかしながら、車体フレームとエンジンとの間にオイルコントロールバルブが介在することで、車両全体が車幅方向(左右方向)に大きくなってしまうおそれがある。また、車両の左右幅が大きくなることで、搭乗者が車体フレームを跨いで地面に足を着く際に、両足間でエンジン回りの車体フレームが嵩張って地面に両足が届き難くなるという、いわゆる「足着き性」が悪化するおそれもある。
また、オイルコントロールバルブをエンジンに内蔵することも考えられるが、エンジン内の配置スペースや内部のオイル通路の確保等、オイルコントロールバルブの配置自由度が限られるため、エンジンの設計工数増加の要因と成り得る。
そこで、本件発明者は、エンジン3と、エンジン3を支持する車体フレーム2との位置関係に着目して本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、図2に示すように、側面視でメインフレーム21とエンジン懸架部22とが二股に分かれている。すなわち、側面視でメインフレーム21とエンジン懸架部22との間にエンジン3の一部(シリンダヘッド31)が露出するスペースSが形成される。そして、当該スペースS内で、シリンダヘッド31の側面にオイルコントロールバルブ6を配置している。
この構成によれば、車幅方向でオイルコントロールバルブ6がエンジンと車体フレーム2との間に介在しないため、車両全体が幅方向に大型化するのを抑制することが可能である。特に、オイルコントロールバルブ6の少なくとも一部が、図3に示す正面視で車体フレーム2(エンジン懸架部22)に重なっている。これにより、車両幅を抑えつつも、車幅方向におけるオイルコントロールバルブ6の突き出し量を最小限に抑えることが可能である。この結果、車体フレーム2とエンジン3との間にオイルコントロールバルブ6が介在する場合に比べて、車体フレーム2が車幅方向に突き出すことを防止することができ、車両の小型化が可能である。
このように、フレーム幅を抑えたまま、可変バルブタイミング機構4、5を搭載するエンジン3を実現することができ、フレーム幅短縮による強度・剛性の向上、軽量化、更には車両のコンパクト化に伴って、搭乗者の足つき性を向上することが可能である。また、上記スペースS内にオイルコントロールバルブ6を配置したことで、外装カバーを取り外すだけでオイルコントロールバルブ6を外部に露出させることが可能である。この結果、オイルコントロールバルブ6へのアクセスを容易にし、組み付け性やメンテナンス性を向上することが可能である。
また、本実施の形態では、エンジン3とは別体の独立したオイルコントロールバルブ6をエンジン3(シリンダヘッド31)の側面に配置し、オイルコントロールバルブ6とエンジン3とを、外部配管としてのオイル配管62−66で接続する構成とした。
この構成によれば、オイル配管62−66によって可変バルブタイミング機構4、5に対するオイル通路を構成することができ、エンジン3内部のオイル通路を簡略化することが可能である。この結果、オイルコントロールバルブ6やその周辺部品の配置自由度、及びエンジン設計の自由度を向上することが可能である。
次に、図2から図6を参照して、本実施の形態に係るオイルコントロールバルブの取付構造について詳細に説明する。図4は、図2のオイルコントロールバルブ周辺の部分拡大図である。図5は、図4のA矢視図、すなわち、シリンダヘッドを前下方から見た図である。図6は、図4のB矢視図、すなわち、シリンダヘッドカバーを前上方から見た図である。
上記したように、オイルコントロールバルブ6は、エンジン3側方のスペースS内でシリンダヘッド31の右側面に取り付けられている。図2及び図3に示すように、オイルコントロールバルブ6は、可変バルブタイミング機構4、5に対する油圧を制御する、いわゆる流量制御弁であり、例えばスプール式の電磁弁で構成される。
図4に示すように、オイルコントロールバルブ6は、排気側及び吸気側の各弁体(スプール弁)を収容する収容部60と、エンジン3に対する取付部となるホルダ部61(後述するようにマニホールド部と呼ばれてもよい)とを前後で連結して構成される。収容部60が、ホルダ部61に対して後下方に位置している。収容部60は、2つの円柱を平行に並べ、それぞれの円筒面が連なった形状を有している。また、収容部60は、各円柱の軸方向が前方に向かうに従って上方に傾斜するように配置されている。
図4及び図5に示すように、ホルダ部61は、金属等によって略直方体形状に形成されたブロック体で構成される。ホルダ部61内には、収容部60に連通する複数のオイル通路(不図示)が形成されており、前下方に位置する一側面に複数のオイル配管62−66を取り付けるための取付穴(不図示)が形成されている。すなわち、ホルダ部61は、複数のオイル配管を接続するためのマニホールド部を構成する。
具体的にホルダ部61には、継手Vを介して合計5つのオイル配管62−66が接続される。1つは、オイルギャラリ30aとオイルコントロールバルブ6を接続するオイル配管62である。残りの4つは、オイルコントロールバルブ6と後述する配管接続部7とを接続するオイル配管63−66である。
上記したように、オイル配管62の上流端は、継手Vを介してオイルギャラリ30aに接続されている。また、図5に示すように、ホルダ部61の下面側から見て、オイル配管62の下流端は、ホルダ部61の上下左右方向略中央に接続されている。残り4つのオイル配管63−66のうち、オイル配管62より左側、すなわち車両内側の2つのオイル配管63、64は、排気側のオイル配管を示しており、オイル配管62より右側、すなわち車両外側の2つのオイル配管65、66は、吸気側のオイル配管を示している。
具体的に排気側の2つのオイル配管63、64は、上流端がホルダ部61の左側に偏って上下に並んで接続されている。上側が遅角用のオイル配管63であり、下側が進角用のオイル配管64である。一方、吸気側の2つのオイル配管65、66は、上流端がホルダ部61の右側に偏って上下に並んで接続されている。上側が遅角用のオイル配管66であり、下側が進角用のオイル配管65である。
図2及び図3に示すように、4つのオイル配管63−66は、右側のエンジン懸架部22の外側(右方及び前方)を回り込むようにして上方に曲げられ、シリンダヘッドカバー32の上部に接続される。オイル配管63−66がエンジン懸架部22の外側を回り込むことで、エンジン3とエンジン懸架部22との隙間をできるだけ小さくすることができる。この結果、車体フレーム2が車幅方向に大型化するのを防止することが可能である。また、外部配管を採用したことで車体フレーム2の外側からの配管取り回しが容易になっている。
図6に示すように、シリンダヘッド31の上部には、4つのオイル配管63−66の下流端を接続するための配管接続部7が設けられている。配管接続部7は、前後に延びる長尺体で形成される。配管接続部7には、4つのオイル配管63−66の下流端が継手Vを介して接続される。具体的に4つのオイル配管63−66は、前方から排気側遅角用のオイル配管63、排気側進角用のオイル配管64、吸気側進角用のオイル配管65、吸気側遅角用のオイル配管66の順に並んで配置されている。
配管接続部7は、シリンダヘッドカバー32に対して着脱可能に構成されている。具体的にシリンダヘッドカバー32の上部には、配管接続部7の形状に対応した開口(不図示)が形成されており、当該開口から配管接続部7へのアクセスが可能になっている。これにより、予め配管接続部7に4つのオイル配管63−66を取り付けておくことで、シリンダヘッドカバー32に対するオイル配管63−66の組み付け性を向上することが可能である。なお、詳細は後述するが、配管接続部7は、シリンダヘッドカバー32内のカムシャフトハウジング8(図7参照)に接続される。
オイルコントロールバルブ6は、例えば、所定方向に延在する弁体(スプール弁)をその軸方向に進退させることで、オイル通路の切換え及びオイル流量の制御を実施する。この結果、オイルギャラリ30aから1つのオイル配管62を介してオイルコントロールバルブ6を経由したオイルは、4つのオイル配管63−66を通じて、シリンダヘッドカバー32内の可変バルブタイミング機構4、5(図7参照)に供給される。これにより、後述する排気側アクチュエータ40又は吸気側アクチュエータ50(共に図13参照)が駆動され、排気バルブ又は吸気バルブの開閉タイミングを変更することが可能である。
このように構成されるオイルコントロールバルブ6は、シリンダヘッド31の右側面からホルダ部61にボルトB(図4参照)を挿通してシリンダヘッド31にねじ込むことで取り付けられる。本実施の形態に係るオイルコントロールバルブ6の取付構造によれば、メインフレーム21とエンジン懸架部22とによって形成されるスペースSにオイルコントロールバルブ6を配置したことで、デッドスペースを有効活用すると共に、オイルコントロールバルブ6が車幅方向に突出するのを抑制することが可能である。この結果、車両の大型化を防止することが可能である。
また、オイルコントロールバルブ6の上流側及び下流側にそれぞれ外部配管としてオイル配管62−66を接続したことにより、エンジン内部のオイル通路を簡略化することが可能である。これにより、例えば、可変バルブタイミング機構4、5(油圧アクチュエータ)の有無に応じて車両の仕様変更が容易となり、エンジン3の設計工数を削減することが可能である。また、可変バルブタイミング機構4、5に対するオイル供給系統の配置自由度も高めることが可能である。
次に、図7から図9を参照して、本実施の形態に係る可変バルブタイミング機構及びその周辺構成について説明する。図7は、図6のシリンダヘッドカバーを省略し、シリンダヘッド周辺を左前上方から見た斜視図である。図8は、カムシャフトハウジング及び配管接続部を上方から見た分解斜視図である。図9は、配管接続部及びその周辺構成を図6のC−C線に沿って切断した断面図である。
図7に示すように、シリンダヘッド31とシリンダヘッドカバー32(図6参照)との合わせ面36(シリンダヘッドカバー32に対するシリンダヘッド31の合わせ面36)上には、可変バルブタイミング機構4、5の一部を構成する排気カムシャフト41及び吸気カムシャフト51(以下、総じてカムシャフトと呼ぶことがある)が設けられている。排気カムシャフト41及び吸気カムシャフト51は、車幅方向に延びており、前後に並んで配置されている。車両前側に位置する排気カムシャフト41には、排気バルブ(不図示)に対応する箇所に排気カム42が設けられている。同様に、車両後側に位置する吸気カムシャフト51には、吸気バルブ(不図示)に対応する箇所に吸気カム52が設けられている。なお、各カムの個数及び配置位置は適宜変更が可能である。
排気カムシャフト41及び吸気カムシャフト51は、合わせ面36上に形成される半円形状の窪み38(図10参照)に受容されて支持される。すなわち、当該窪み38が、排気カムシャフト41及び吸気カムシャフト51を支持する軸受部分の一部を構成する。なお、詳細は後述するが、排気カムシャフト41及び吸気カムシャフト51は、上記窪み38に滑り軸受として半割メタルベアリング9(図12参照)を介し、上方からカムシャフトハウジング8で挟持固定することによって回転可能に支持される。
排気カムシャフト41の右側の軸端部には、車両外側から排気側アクチュエータ40、排気カムスプロケット43が一体回転可能に取り付けられている。同様に吸気カムシャフト51の右側の軸端部には、車両外側から吸気側アクチュエータ50、吸気カムスプロケット53が一体回転可能に取り付けられている(図7では不図示、図13、14参照)。排気カムスプロケット43、吸気カムスプロケット53及びクランクシャフトのスプロケット(共に不図示)には、カムチェーン(不図示)が巻き掛けられる。これにより、クランクシャフトの回転が排気カムシャフト41及び吸気カムシャフトに伝達可能となる。
排気側アクチュエータ40及び吸気側アクチュエータ50は、中空円柱形状のケース44、54(図7では排気側のみ図示)内にベーン付きのロータ(不図示)を収容して構成される。各ロータは、ケース44、54に対して相対回転可能に排気カムシャフト41又は吸気カムシャフト51に取り付けられる。また、ケース44、54内には、複数の隔壁によって複数の油圧室(共に不図示)が形成されており、各油圧室にロータの各ベーンが収容される。各油圧室は、それぞれベーンによって進角室と遅角室とに仕切られる。
進角室及び遅角室は、各カムシャフト及びカムシャフトハウジング8に形成されたオイル通路に連通されている。例えば排気側において、油圧により進角室の容積が拡大すると、ケース44に対してロータが相対的に進角側に回転される。これにより、ロータに固定された排気カムシャフト41が回転して、バルブタイミングが進角側に変化する。一方、油圧によって遅角室の容積が拡大すると、ケース44に対してロータが相対的に遅角側に回転される。これにより、ロータに固定された排気カムシャフト41が回転して、バルブタイミングが遅角側に変化する。吸気側も同様である。なお、各カムシャフト及びカムシャフトハウジング8のオイル通路については後述する。
カムシャフトハウジング8の上部には、4つのオイル配管63−66が接続された配管接続部7が取り付けられる。図8に示すように、配管接続部7は、前後に延びる長尺体で形成される。配管接続部7の前後の両端部には、一段下がったフランジ部70が形成されている。各フランジ部70には、カムシャフトハウジング8に取り付けるための取付穴70aが上下に貫通するように形成されている。また、配管接続部7の上面には、上下に貫通する4つの貫通口7a−dが前後に並んで形成されている。各貫通口7a−dには、オイル配管63−66を接続するための継手V(共に図7参照)が取り付けられる。
カムシャフトハウジング8は、シリンダヘッド31との間でカムシャフトの軸受部分を形成するものである。カムシャフトハウジング8は、後述するシリンダヘッド31の隔壁部37(図11参照)に対応して前後に延びる長尺体で形成される。詳細は後述するが、カムシャフトハウジング8、排気カムシャフト41及び吸気カムシャフト51の右端側を前後に跨ぐ長さを有している。すなわち、カムシャフトハウジング8は、各カムシャフトの軸方向に対して交差する方向に延在している。カムシャフトハウジング8には、各カムシャフトに対応した半円形状の窪み80が裏面側から形成されている。この窪み80は、シリンダヘッド31側の窪み38と協働して各カムシャフトの軸受部分を構成する。
カムシャフトハウジング8の前後の両端部には、一段下がったフランジ部81が形成されている。各フランジ部81には、シリンダヘッド31に取り付けるための取付穴81aが上下に貫通するように形成されている。また、カムシャフトハウジング8の上面には、配管接続部7を取り付けるための取付座部82が形成されている。取付座部82は、配管接続部7に対応して前後に延びる長尺体で形成され、カムシャフトハウジング8の上面でやや左側に偏って形成されている。取付座部82の前後の両端部には、取付穴70aに対応してボルト穴82aが形成されている。
また、取付座部82の上面には、4つの貫通口7a−dに対応して、4つの円形凹部82bが形成されている。各円形凹部82bの略中央には、裏面側のオイル通路(図8では不図示)に連通する連通孔83a−dが形成されている。各円形凹部82bには、当該円形凹部82bの内径に対応したサイズのOリング83(図9参照)が取り付けられる。取付座部82の上面側の外周部分には、一段下がった環状の段部82cが形成されている。環状の段部82cには、当該段部82cの外径に対応したサイズのOリング84(図9参照)が取り付けられる。
また、取付座部82より左側のカムシャフトハウジング8の上面において、前後の両端部には、それぞれ上方に立ち上がるボス85が形成されている。ボス85の上面には、シリンダヘッドカバー32をボルトB(図6参照)で固定するためのボルト穴85aが形成されている。なお、カムシャフトハウジング8の裏面側の構成については後述する。
このように構成される配管接続部7及びカムシャフトハウジング8は、各円形凹部82bにOリング83を取り付け、図9に示すように環状の段部82cにもOリング84を取り付けた状態で各取付穴70aにボルト(不図示)を挿通し、ボルト穴82aにねじ込むことで一体固定される。これにより、貫通口7a−dと連通孔83a−dとが連通される。また、Oリング83によって配管接続部7とカムシャフトハウジング8とのシール性が確保され、Oリング84によってシリンダヘッドカバー32とカムシャフトハウジング8とのシール性が確保される。
また上記したように、シリンダヘッドカバー32が取り付いた状態(図6参照)においては、配管接続部7が、シリンダヘッドカバー32の上面から露出されている。このため、シリンダヘッドカバー32を取り外すことなく、配管接続部7(又はカムシャフトハウジング8)へのアクセスが容易となり、オイル配管63−66の組み付け性及びメンテナンス性が向上されている。また、配管接続部7の貫通口7a−dの内径を変更するだけで、オイル流量の変更、すなわち可変バルブタイミング機構4、5の性能(応答性)を変更することができ、設計変更が容易となる。
次に、図10及び図12を参照して、カムシャフトの軸受構造について説明する。図10は、シリンダヘッド単体を上方から見た平面図である。図12は、カムシャフトの軸受部分の周辺構成を下方から見た分解斜視図である。
図10に示すように、シリンダヘッド31の内部には、前後に延びる隔壁部37によって2つの空間が形成されている。車両外側である右側の空間はカムチェーン室R1を構成し、車両内側である左側の空間は動弁室R2を構成する。隔壁部37の上面(上記した合わせ面36)には、左右方向に軸方向を有する半円形状の窪み38が前後に2つ並んで形成されている。当該2つの窪み38は、上記したように、排気カムシャフト41及び吸気カムシャフト51の軸受部分を構成する(図13参照)。また、隔壁部37の前後の両端部には、カムシャフトハウジング8の取付穴81aに対応してボルト穴37aが形成されている。
ところで、上記した特許文献1では、カムシャフトの端部に可変バルブタイミング機構(油圧アクチュエータ)が設けられることから、可変バルブタイミング機構の分だけエンジン全体が車幅方向に大きくなってしまうことが想定される。
そこで、本件発明者は、シリンダヘッドをエンジンケースに固定するためのボルト締結穴の位置に着目して本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、図10に示すように、シリンダヘッド31をエンジンケース30(図2参照)に連結固定するためのボルト締結穴39が隔壁部37に2つ形成されている。より具体的に各ボルト締結穴39は、隔壁部37の上面からシリンダ(不図示)の軸方向に沿って各窪み38の一部を貫通するように形成されている。
すなわち、図10に示す上面視において、ボルト締結穴39が前後方向及び左右方向で窪み38に重なるように形成される。このように、隔壁部37の一部(窪み38)をボルト締結穴39用の壁として活用したことで、ボルト締結穴39を形成するための座面(その他専用のボス等)を別途シリンダヘッド31に設ける必要がなくなる。よって、カムシャフトの軸端に油圧アクチュエータを配置しつつも、シリンダヘッド31、すなわちエンジン全体が車幅方向に大型化するのを防止することができる。また、ボルト締結穴39の上端側には、同心の座ぐり穴39aが形成されている。このため、ボルト(不図示)の頭が窪み38の上側に突出することがない。
上記のように、シリンダヘッド31の大型化防止を優先した結果、窪み38の一部がボルト締結穴39及び座ぐり穴39aによって切り欠かれることになる。この場合、各カムシャフトの軸受部分、すなわち、カムシャフトを支える面積が小さくなることで、カムシャフトを安定的に支持することができなくなるおそれがある。また、カムシャフトは、ボールベアリング等の転がり軸受によって支持されることもある。しかしながら、ボールベアリングは高価であるため、コストの観点からあまり好ましくない。
そこで、更に本実施の形態では、図12に示すように、上下割の半割メタルベアリング9を介して各カムシャフトを支持する構成とした。半割メタルベアリング9は、例えば金属等の板材で形成される円筒部材を上下2つの上半部90と下半部91に分割して形成される。すなわち、上半部90と下半部91とが協働して1つの円筒状の滑り軸受を形成する。
この構成によれば、半割メタルベアリング9を採用したことで、安価な構成でカムシャフトの軸受構造を実現することが可能である。また、ボルト締結穴39及び座ぐり穴39aによって切り欠かれた窪み38を半割メタルベアリング9で覆い、当該切り欠き部分を半割メタルベアリング9で補完することができる。よって、カムシャフトを支える面積を確保することができ、安定的にカムシャフトを支持することが可能である。また、後述する潤滑構造により、各カムシャフト及び可変バルブタイミング機構4、5に対するオイル供給を安価な構成で実現することが可能である。
次に、図11から図14を参照して、本実施の形態に係る可変バルブタイミング機構の潤滑構造について説明する。図11は、カムシャフトハウジング単体を下方から見た平面図である。図13は、可変バルブタイミング機構の周辺構成をシリンダヘッドカバー側から見た平面図である。具体的に図13Aはシリンダヘッドに下側の半割メタルベアリング(下半部)を取り付けた図であり、図13Bは図13Aに可変バルブタイミング機構を取り付けた図であり、図13Cは図13Bに上側のメタルベアリング(上半部)を取り付けた図である。図14は、可変バルブタイミング機構の周辺構成をシリンダヘッド側から見た平面図である。具体的に図14Aはカムシャフトハウジングに上半部を取り付けた図であり、図14Bは図14Aに可変バルブタイミング機構を取り付けた図であり、図14Cは図14Bに下半部を取り付けた図である。
図11に示すように、カムシャフトハウジング8は前後方向でほぼ対称な形状を有している。図11及び図12に示すように、カムシャフトハウジング8の窪み80には、径方向に一段窪んだ段部86が形成されている。段部86は、窪み80の右側部分に形成され、左側の端部に半円弧状の端面86aを有している。当該段部86は、上側の半割メタルベアリング9(以下、上半部90と呼ぶ)を収容する収容部を構成する。
また、カムシャフトハウジング8の裏面側には、上記した各連通孔83a−dに連なる複数のオイル溝が形成されている。具体的に排気側遅角用の連通孔83a及び吸気側遅角用の連通孔83d(両外側2つの連通孔83a、d)は、それぞれ段部86の内周面に連通している。排気側進角用の連通孔83b及び吸気側進角用の連通孔83c(内側2つの連通孔83b、c)は、それぞれ、カムシャフトハウジング8の下面において、前後方向の略中央部分に前後に並んで連通している。
また、段部86の内周面には、当該内周面に沿う2つの円弧溝87、88が段部86の軸方向に並んで形成されている。遅角用の連通孔83a、dは、左側の円弧溝87に連なっている。進角用の連通孔83b、cは、カムシャフトハウジング8の下面中央に形成されるL字溝89に連なっており、L字溝89の下流端が右側の円弧溝88に連なっている。L字溝89は、カムシャフトハウジング8の下面において、進角用の連通孔83b、cから右側に延び、前方又は後方に向かって直角に屈曲した後、右側の円弧溝88に接続される。
図12、図13A−C、図14A−Cに示すように、半割メタルベアリング9は、上半部90に対して下半部91の方が軸方向(車幅方向)に長くなるように形成されている。具体的に下半部91の軸方向の長さは、隔壁部37の左右幅より大きく、カムシャフトハウジング8の左右幅と略同一である。これに対し、上半部90の軸方向の長さは、段部86の左右幅と略同一である。
また、上半部90には、カムシャフトハウジング8の円弧溝87、88に対応して、厚み方向に貫通する2つの貫通孔92、93が形成されている。2つの貫通孔92、93は、軸方向に並んで配置されている。左側の円弧溝87と貫通孔92とが連通し、右側の円弧溝88と貫通孔93とが連通している。なお、上半部90の周方向における貫通孔92、93の位置は、円弧溝87、88に連通する位置であればどこであってもよい。
また、排気カムシャフト41の円筒面には、上半部90の貫通孔92、93の位置に対応して、進角用及び遅角用の2つの環状溝45、46が軸方向に並んで形成されている(図13B及び図14B参照)。左側に位置する進角用の環状溝45の底部には、排気側アクチュエータ40の遅角室(不図示)に連通する連通孔47が形成されている。右側に位置する進角用の環状溝46の底部には、排気側アクチュエータ40の進角室(不図示)に連通する連通孔48が形成されている。
同様に、吸気カムシャフト51の円筒面には、上半部90の貫通孔92、93の位置に対応して、進角用及び遅角用の2つの環状溝55、56が軸方向に並んで形成されている(図13B及び図14B参照)。左側に位置する進角用の環状溝55の底部には、吸気側アクチュエータ50の遅角室(不図示)に連通する連通孔57が形成されている。右側に位置する進角用の環状溝56の底部には、吸気側アクチュエータ50の進角室(不図示)に連通する連通孔58が形成されている。
このように構成される可変バルブタイミング機構4、5をシリンダヘッド31に組み付ける場合、図13及び図14に示すように、先ず、隔壁部37の右側の端面と下半部91の右側の端面とが一致するように、下半部91を窪み38に取り付ける。そして、環状溝45、46、55、56と下半部91とが対応するように、排気側及び吸気側にそれぞれ可変バルブタイミング機構4、5を配置する。このとき、排気カム42及び吸気カム52(カムシャフトの左端側)は動弁室R2内に収容される。一方、排気側アクチュエータ40、排気カムスプロケット43、吸気側アクチュエータ50及び吸気カムスプロケット53は、カムチェーン室R1内に収容される。
そして、環状溝45、46、55、56と上半部90の貫通孔92、93とが対応するように上半部90を各カムシャフトに取り付ける。その後、上方からカムシャフトハウジング8を配置し、ボルトで固定することにより、各カムシャフトが半割メタルベアリング9を介してシリンダヘッド31とカムシャフトハウジング8との間に支持される。なお、組み付けの順序は上記内容に限定されず、適宜変更が可能である。
図12及び図14aに示すように、上半部90が段部86に収容された状態においては、上半部90の軸方向左側の端面90aが段部86の端面86aに当接する。これにより、上半部90の軸方向左側への移動が規制される。また、下半部91の周方向の端面91aは、カムシャフトハウジング8の下面(より具体的には図12のハッチング部分8a)に当接する。これにより、下半部91の周方向(回転方向)の移動が規制される。上半部90の周方向の端面90bは、下半部91の周方向の端面91aに当接するため、上半部90の周方向の移動も規制される。このように半割メタルベアリング9の位置決めがなされることで、車両の振動等によって上半部90と下半部91とが連れ回りしたり、半割メタルベアリング9の位置がずれたりするのを防止することが可能である。
このように構成される可変バルブタイミング機構4、5の潤滑構造によれば、カムシャフトハウジング8、半割メタルベアリング9及びカムシャフトの各部材に形成されるオイル通路によって、オイルコントロールバルブ6からのオイルを可変バルブタイミング機構4、5に供給するためのオイル供給経路が形成される。よって、カムシャフトの軸受部分の潤滑をしつつも、油圧アクチュエータに対する進角及び遅角用のオイル供給を安価な構成で実現することが可能である。
なお、上記実施の形態では、並列4気筒のエンジン3を例にして説明したが、この構成に限定されない。例えば、エンジン3は、単気筒、2気筒以上の多気筒エンジンで構成されてもよく、各気筒の配置も適宜変更が可能である。
また、上記実施の形態では、車体フレーム2をツインスパータイプのフレームで構成したが、この構成に限定されない。車体フレーム2は、例えば、ダイヤモンドタイプのフレームであってもよい。
また、上記実施の形態では、オイルコントロールバルブ6がシリンダヘッド31の右側面に配置される構成としたが、この構成に限定されない。オイルコントロールバルブ6は、シリンダヘッド31の左側面に配置されてもよい。
また、上記実施の形態では、収容部60の軸方向が前方に向かうに従って上方に傾斜するように配置される場合について説明したが、この構成に限定されない。収容部60の軸方向は、例えば水平に向いてもよく、その向きは適宜変更が可能である。
また、上記実施の形態では、ホルダ部61の下面に外部配管が接続される構成としたが、この構成に限定されない。外部配管は、ホルダ部の前面又は上面に接続されてもよい。接続箇所に応じて、配管長を短縮することが可能である。
また、上記実施の形態では、シリンダヘッド31(カムシャフトハウジング8)に対して配管接続部7が着脱可能に構成される場合について説明したが、この構成に限定されない。配管接続部7とカムシャフトハウジング8とは一体的に構成されてもよい。
また、上記実施の形態では、排気側及び吸気側の双方に油圧アクチュエータが設けられる場合について説明したが、この構成に限定されない。排気側及び吸気側のいずれか一方にのみ油圧アクチュエータが設けられてもよい。
また、上記実施の形態では、油圧アクチュエータがカムシャフトの右端部に設けられる構成としたが、この構成に限定されない。油圧アクチュエータは、カムシャフトの左端部に設けられてもよい。
また、上記実施の形態では、可変バルブタイミング機構に対するオイル供給経路が進角用と遅角用の双方に形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。進角用及び遅角用のいずれか一方にのみオイル供給経路が形成されてもよい。
また、上記実施の形態では、上半部90に対して下半部91の方が、軸方向に長く形成される構成としたが、この構成に限定されない。下半部91に対して上半部90の方が、軸方向に長く形成されてもよい。
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。