1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層と、凹凸形状を有する表面層と、剥離可能な熱可塑性樹脂フィルム層を備える積層体により構成されており、表面層が、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物であり、熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度が、0.05〜0.50N/25mmであることを特徴とする。本発明の加飾シートは、このような特定の構成を備えていることにより、加飾シートの状態では熱可塑性樹脂フィルム層が十分に密着しており、さらに、射出成形後の加飾樹脂成形品からは当該熱可塑性樹脂フィルム層を好適に剥離することが可能となっている。
以下、本発明の加飾シートについて詳述する。なお、本明細書において、数値範囲については、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。また、本発明の加飾シートは、絵柄層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と、凹凸形状を有する表面層2と、剥離可能な熱可塑性樹脂フィルム層3とがこの順に積層された積層構造を有する。
本発明の加飾シートは、剥離可能な熱可塑性樹脂フィルム層3を備えていることにより、射出成形時などにおいて、表面層2の凹凸形状を好適に保護することができる。表面層2と熱可塑性樹脂フィルム層3とは、直接積層されていてもよいし、これらの層の間に他の層が積層されていてもよい。他の層としては、例えば、離型層(図示しない)などが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルム層3、さらに離型層は、表面層の凹凸形状の凹部を埋めていることが好ましい。
なお、本発明において、離型層が設けられている場合、後述の加飾シートまたは加飾樹脂成形品からの熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度は、表面層2と離型層との界面における剥離強度を意味する。
本発明の加飾シートにおいて、基材層1と表面層2の間には、各層同士の接着性を高める目的で、必要に応じてプライマー層4が設けられていてもよい。
また、基材層1と表面層2の間には、装飾性を付与する目的で、必要に応じて、絵柄層5を設けてもよい。プライマー層4を設ける場合には、基材層1とプライマー層4の間に絵柄層5を設ければよい。
また、基材層1と表面層2の間には、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、必要に応じて、隠蔽層(図示しない)が設けられていてもよい。プライマー層4を設ける場合であれば、当該隠蔽層は基材層1とプライマー層4の間に設ければよく、また、絵柄層5を設ける場合であれば、当該隠蔽層は、基材層1と絵柄層5の間に設ければよい。
更に、基材層1と表面層2の間には、耐傷付き性を向上させる目的で、必要に応じて、透明樹脂層(図示しない)を設けてもよい。プライマー層4を設ける場合であれば、当該透明樹脂層は、絵柄層5とプライマー層4の間に設ければよい。
更に、本発明の加飾シートにおいて、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層1の裏面(表面層2とは反対側の面)には、必要に応じて、裏面接着層(図示しない)が設けられてもよい。
本発明の加飾シートの積層構造の例として、基材層1/表面層2/熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層された積層構造;基材層1/表面層2/離型層/熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層5/表面層2/熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層5/プライマー層4/表面層2/熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層5/プライマー層4/表面層2/離型層/熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層5/透明樹脂層/プライマー層4/表面層2/熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層された積層構造などが挙げられる。
図1〜図3に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/表面層2/熱可塑性樹脂フィルム層3が積層された加飾シートの断面図を示す。図4に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/絵柄層5/プライマー層4/表面層2/熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層された加飾シートの断面図を示す。
加飾シートの各層の組成
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)である。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。当該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」と表記することもある)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂及びアクリル樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
基材層1の曲げ弾性率については、特に制限されない。例えば、本発明の加飾シートをインサート成形法によって成形樹脂と一体化させる場合には、本発明の加飾シートにおける基材層1の25℃における曲げ弾性率が500〜4,000MPa、好ましくは750〜3,000MPaが挙げられる。ここで、25℃における曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定された値である。25℃における曲げ弾性率が500MPa以上であると、加飾シートは十分な剛性を備え、インサート成形法に供しても、表面特性と成形性がより一層良好になる。また、25℃における曲げ弾性率が3,000MPa以下であると、ロール トゥ ロールで製造する場合に十分な張力をかけることができ、たるみが発生し難くなるため、絵柄がずれることなく重ねて印刷することができ、所謂絵柄見当が良好となる。
基材層1は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層1を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層1は公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
更に、基材層1は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層1は、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層1に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
基材層1の厚みは、加飾シートの用途、成形樹脂と一体化させる成形法等に応じて適宜設定されるが、通常25〜1000μm程度、50〜700μm程度が挙げられる。より具体的には、本発明の加飾シートをインサート成形法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常50〜1000μm程度、好ましくは100〜700μm程度、更に好ましくは100〜500μm程度が挙げられる。また、本発明の加飾シートを射出成形同時加飾法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常25〜200μm程度、好ましくは50〜200μm程度、更に好ましくは70〜200μm程度が挙げられる。
[表面層2]
表面層2は、基材層1とは反対側の表面に凹凸形状を有している。また、表面層2は、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されている。このように、凹凸形状を有する表面層2を、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により構成することにより、射出成形時の凹凸形状の変形、消失などを抑制することができる。
<凹凸形状>
表面層2が備える凹凸形状については、特に制限されず、付与すべき意匠感や手触り等に応じて適宜設定すればよい。当該凹凸形状としては、例えば、ヘアライン模様、木目模様、幾何学模様(ドット、ストライプ、カーボン等)等が挙げられる。
また、表面層2が備える凹凸形状における凸部の高さ、凸部の幅、隣接する凸部間のピッチ、凹部の幅等については、加飾樹脂成形品に付与すべき意匠感や手触り等に応じて適宜設定すればよい。
例えば、表面層2の熱可塑性樹脂フィルム層3側表面の中心線平均粗さ(Ra)として、凹凸形状による優れた意匠感や手触りを付与するという観点から、通常4〜21μm、好ましくは4〜20μm、更に好ましくは4〜15μmが挙げられる。当該中心線平均粗さが21μm以下であると、加飾シートをロール状に巻いて保管する等する際に、凹凸が激しすぎることによる、輸送時の傷つきや破け、巻きの崩れ等が起こらず好適である。
また、同様の観点から、表面層2の熱可塑性樹脂フィルム層3側表面の最大高さ(Rz)としては、通常1.0〜100μm、好ましくは1.0〜80μm、更に好ましくは1.0〜60μmが挙げられる。同様の観点から、表面層2の熱可塑性樹脂フィルム層3側表面の十点平均高さ(Rzjis)としては、通常1.0〜100μm、好ましくは1.0〜80μm、更に好ましくは1.0〜60μmが挙げられる。なお、中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、及び十点平均高さ(Rzjis)は、それぞれ、JIS B 0601:2001の規定に準拠し、加飾シートの表面層2の熱可塑性樹脂フィルム層3側表面(凹凸形状が形成された部分)について、熱可塑性樹脂フィルム層3を剥離した状態で測定した値である。
また、表面層2によって形成される凹凸形状は、図1に示す態様のように凹部の底部が表面層2によって形成されていてもよいし、図2及び図3に示す態様のように凹部の底部には表面層2の下層が露出し、表面層2が部分的に設けられて凸部を形成したものであってもよい。加飾樹脂成形品の表面を保護する観点からは、前者が好ましい。図1及び図2は、例えば後述のエンボス加工を施す方法によって形成された凹凸形状を表しており、図3は、例えば表面層2を形成する樹脂組成物を、凸部を形成させる部分(盛上層)のみに塗布して硬化させる方法によって形成した凹凸形状を表している。すなわち、図3において、表面層2の凹凸形状は、部分的に設けられた凸部と、前記凸部の間において、前記表面層の下層が露出した凹部とにより形成されている。図1〜図3は、便宜上、基材層1、表面層2、及び熱可塑性樹脂フィルム層のみを積層させた積層構造を示している。
本発明の加飾シートにおいて、上記の凹凸形状は、加飾シートに凹凸形状による高い質感を付与するために、少なくとも一部の領域に形成すればよい。すなわち、本発明の加飾シートにおいては、上記の関係を充足する凹凸形状が一部の領域に形成されていてもよいし、全領域に形成されていてもよい。
また、上記の凹凸形状は、表面層2のみに形成されていてもよいし、凹凸形状の凹部が表面層2の下に位置する層(例えば、プライマー層4、絵柄層5、基材層1など)にまで到達していてもよい。加飾シートの射出成形時における凹凸形状の消失、変形等を効果的に抑制する観点からは、凹凸形状の凹部が基材層1に到達していることが好ましい。
<組成>
表面層2は、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されている。本発明において、加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層の十分な密着性と、射出成形後の加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を両立させる観点から、表面層2を形成する樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂に加えて、さらに熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との割合としては、質量比で、好ましくは電離放射線硬化性樹脂:熱可塑性樹脂=10:90〜25:75程度、より好ましくは15:85〜25:75程度、さらに好ましくは20:80〜25:75程度が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、好ましくは、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層の十分な密着性と、射出成形後の加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を両立させる観点から、特にアクリル樹脂が好ましい。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されないが、加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層の十分な密着性と、射出成形後の加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を両立させる観点から、好ましくは9万〜15万程度、より好ましくは10万〜14万程度、さらに好ましくは11万〜13万程度が挙げられる。
なお、本明細書における熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
(電離放射線硬化性樹脂)
表面層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。なお、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面層の形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂として、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜混合したものが挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとともに、シラノール基を有するシリコーン化合物を反応させることにより得られる。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの電離放射線硬化性樹脂の中でも、加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層の十分な密着性と、射出成形後の加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を両立させる観点からは、電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの官能基数が2〜6の範囲にあることが好ましく、官能基数が2〜4の範囲にあることがより好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂に含まれるモノマーの分子量としては、好ましくは200〜2000程度、より好ましくは200〜1500程度、さらに好ましくは200〜1000程度が挙げられる。
さらに、これらのモノマーの中でも、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。
<他の添加剤>
また、表面層2の形成に使用される樹脂組成物には、表面層2に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、ワックス等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。なお、ワックスを配合することにより、耐傷性、耐摩耗性を向上させることができる。ワックスとしては、好ましくはポリエチレンワックス(PEワックス)などのオレフィンワックスが挙げられる。ワックスを配合する場合、硬化性樹脂組成物中の配合量としては、好ましくは0.1〜5質量%程度、より好ましくは0.5〜3質量%程度が挙げられる。
また、表面層2は、マット化剤を含んでいてもよい。マット化剤としては、特に制限されず、例えば、無機粒子、合成樹脂粒子などが挙げられる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、これらの疎水処理物等が好ましく挙げられる。これらの無機粒子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、合成樹脂粒子としては、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、シリコーンゴムビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリオレフィンワックス(ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、これらの混合物等)等が好ましく挙げられる。これらの合成樹脂粒子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面層2には、無機粒子及び合成樹脂粒子のいずれか一方を含有させてもよく、またこれらを組み合わせて含有させてもよい。無機粒子及び合成樹脂粒子の平均粒径は、意匠性向上の観点から、0.1〜5μmが好ましく、1〜5μmがより好ましく、2〜5μmが更に好ましい。なお、無機粒子及び合成樹脂粒子の粒子径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式によるものを指す。
<表面層2の厚み>
表面層2の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、例えば、0.01〜200μm、好ましくは0.01〜100μm、更に好ましくは0.01〜80μmが挙げられる。このような範囲の厚みを充足することによって、加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層の十分な密着性と、射出成形後の加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を両立させることができる。なお、例えば図1、図2、及び図4に示されるように、例えば凹凸形状がエンボス加工によって形成されたものである場合、凹凸形状を効果的に表出させて、特に優れた意匠感及び手触り感を備えさせる観点からは、表面層2の硬化後の厚みとしては、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.01〜15μm、更に好ましくは0.01〜12μmが挙げられる。なお、表面層2の厚みとは、表面層2の凸部の厚みを意味する。
<表面層2の形成>
表面層2は、硬化性樹脂組成物の硬化物が、凹凸形状を備えるように所定の層の上に形成すればよく、その具体的方法については特に制限されるものではない。表面層2に凹凸形状を付与する方法としては、例えば、エンボス加工を施す方法、表面層2を形成する樹脂組成物を、凸部を形成させる部分のみに塗布して硬化させる方法等が挙げられる。例えば、微細な凹凸形状を付与する観点からは、エンボス加工を施す方法が好ましい(例えば、後述の第1法または第2法)。また、凹部と凸部の素材感や艶を変化させ、よりコントラストのはっきりした凹凸意匠を得る観点からは、表面層2を形成する樹脂組成物を、凸部を形成させる部分(盛上層)のみに塗布して硬化させる方法が好ましい(例えば、後述の第3法)。
凹凸形状を有する表面層2の形成方法として、具体的には、以下の第1法〜第3法が挙げられる。
第1法:基材層1、及び必要に応じて設けられる他の層を順に積層させて、表面層2以外を有するシートを調製し、当該シートの表面層2を積層させる側にエンボス加工を施した後に、表面層2の形成に使用される樹脂組成物を塗布して当該樹脂組成物を硬化させる方法。
第2法:基材層1、及び必要に応じて設けられる他の層を順に積層させて、表面層2以外を有するシートを調製し、当該シートの表面層2を積層させる側に表面層2の形成に使用される樹脂組成物を塗布して当該樹脂組成物を硬化させた後に、表面層2側にエンボス加工を施す方法。
第3法:基材層1、及び必要に応じて設けられる他の層を順に積層させて、表面層2以外を有するシートを調製し、当該シートの表面層2を積層させる側の凸部を形成させる部分のみに表面層2の形成に使用される樹脂組成物を塗布して当該樹脂組成物を硬化させる方法。
表面層2の形成に使用される樹脂組成物を所定の層の上に塗布する方法については、特に制限されないが、例えば、前述の第1法または第2法であれば、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等が挙げられ、好ましくはグラビアコートが挙げられる。また、前述の第3法であれば、シルクスクリーン印刷、グラビア盛上印刷、ロータリースクリーン印刷、特開2002−240078号公報に記載の成形版胴法などの印刷又は塗布法などが挙げられる。
このようにして所定の層の上に塗布された樹脂組成物(未硬化樹脂層)に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して当該樹脂組成物を硬化させて表面層2を形成する。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材層として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
表面層2と熱可塑性樹脂フィルム3との密着性や剥離性を調整する観点から、必要に応じて、表面層2の表面(凹凸形状が形成されている側の表面)は、酸化法などの化学的表面処理が施されていてもよい。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、表面層2を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
[熱可塑性樹脂フィルム層3]
本発明において、熱可塑性樹脂フィルム層3は、加飾シートの真空成形や射出成形時に表面層2の凹凸形状の変形や消失を抑制するために設けられる層である。熱可塑性樹脂フィルム層3は、表面層2の基材層1側とは反対側の表面に設けられる。熱可塑性樹脂フィルム層3は、加飾シート(表面層2)から剥離可能な状態で積層されており、成形樹脂と一体成形された後に、加飾樹脂成形品から剥離される層である。
熱可塑性樹脂フィルム層3と表面層2とは、直接積層されていてもよいし、これらの層の間に、離型層などの他の層が積層されていてもよい。
本発明の加飾シートにおいては、熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度が、0.05〜0.50N/25mmである。本発明においては、表面層2が電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物であり、かつ、表面層の凹凸形状を保護する熱可塑性樹脂フィルム層を備えており、加飾シートにおける当該剥離強度が、このような特定の範囲内に設定されていることにより、加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層の十分な密着性に加えて、射出成形後の加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を両立させることが可能となっている。このような特性をさらに向上させる観点から、当該剥離強度としては、好ましくは0.10〜0.45N/25mm程度、より好ましくは0.15〜0.40N/25mm程度、さらに好ましくは0.20〜0.35N/25mm程度が挙げられる。
なお、本発明において、加飾シートにおける熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度は、次のようにして測定した値である。まず、加飾シートを裁断して、幅25mm、長さ150mmの試験片を得る。この試験片の一端から、熱可塑性樹脂フィルム層を25mm程度、手で剥がし、熱可塑性樹脂フィルム層を加飾シートの表面に対して90°に折り返す。次に、テンシロン万能試験機を用いて、片方のチャックに加飾シートを固定し、もう片方のチャックに折り返した熱可塑性樹脂フィルム層を固定する。この状態から、25℃下、引張速度100mm/分の条件で、引張試験機の運転を開始し、引張試験開始の6秒後から36秒後までの剥離強度測定値の平均値を、加飾シートからの熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度(N/25mm)とする。
表面層2と熱可塑性樹脂フィルム層3とが直接積層されている場合、熱可塑性樹脂フィルム層3が表面層2の凹凸形状の凹部の少なくとも一部を埋めていることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層3が表面層2の凹凸形状の凹部を埋めていることにより、熱可塑性樹脂フィルム層3による表面層2の凹凸形状の保護機能をより一層高めることができる。
熱可塑性樹脂フィルム層3によって表面層2の凹凸形状の凹部を埋める方法としては、例えば、押出成形または熱ラミネートにより、表面層2の凹凸形状の凹部を埋めるようにして、熱可塑性樹脂フィルム層3を積層する方法が挙げられる。本発明の加飾シートにおいては、表面層2が電離放射線樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されている。このため、凹凸形状が設けられた熱可塑性樹脂フィルムを表面に有する加飾シートに比べて、熱ラミネートや押出成形によって熱可塑性樹脂フィルム層3を積層した場合の加熱による凹凸形状の変形が抑制されている。
さらに、本発明の加飾シートにおいては、熱可塑性樹脂フィルム層3によって表面層2の凹凸形状が保護されているため、射出成形やそれに先立つ予備成形(真空成形)の際の成形性にも優れている。また、凹凸形状の変形を十分に抑制するとともに剥離時の作業性を良好にするため、熱可塑性樹脂フィルム層3の厚みを大きくした場合においても、成形性を損ないにくい。このため、本発明の加飾シートは、高い三次元性形成が求められる加飾シートとしても好適に使用することができる。
熱可塑性樹脂フィルム層3と表面層2とを加飾シートの状態では密着させ、成形樹脂と一体成形した後には容易に剥離できるよう、接着強度を調整する観点からは、熱可塑性樹脂フィルム層3は、押出成形により積層されたものであることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層3を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタラート(PBT)樹脂等のポリエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層の十分な密着性と、射出成形後の加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を両立させる観点から、これらの中でも、熱可塑性樹脂フィルム層3は、ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂により構成されていることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。非結晶性PETとしては、一般にA−PETまたはPET−Gとして知られている樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂フィルム層3の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは5〜300μm程度、より好ましくは5〜100μm程度が挙げられる。なお、例えば図5に示されるように、例えば凹凸形状がエンボス加工によって形成されたものである場合、凹凸形状を効果的に表出させて、優れた意匠感及び手触り感を備えさせる観点からは、熱可塑性樹脂フィルム層3の厚みとしては、好ましくは5〜100μm程度、より好ましくは20〜50μm程度が挙げられる。また、熱可塑性樹脂フィルム層3は複層からなっていてもよい。
(離型層)
離型層は、熱可塑性樹脂フィルム層3と表面層2との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。離型層は、表面層2と接するようにしても設けられる。本発明において、離型層が積層されている場合、離型層は、表面層2の凹凸形状の凹部を埋めている。
離型層を形成する素材としては、表面層2の凹凸形状を埋めるようにして塗布することができ、かつ、熱可塑性樹脂フィルム層3と共に表面層2の表面から剥離できるものであれば、特に制限されないが、離型層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されていることが好ましい。これにより、真空成形や射出成形時に表面層2の凹凸形状の変形や消失をより一層効果的に抑制し、加飾樹脂成形品に優れた意匠感及び手触り感を付与することが可能になる。
<離型層における電離放射線硬化性樹脂>
離型層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂の種類、好ましいもの等については、前記表面層2の形成に使用されるものと同様である。離型層における電離放射線硬化性樹脂としては、3官能ペンタエリスリトールアクリレートが好ましい。また、離型層の形成に使用する電離放射線硬化性樹脂と、前記表面層2の形成に使用する電離放射線硬化性樹脂とは同一の種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
<他の添加成分>
離型層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物には、電離放射線硬化性樹脂以外に、成形性の向上等のために、必要に応じて、他の樹脂成分が含まれていてもよい。このような電離放射線硬化性樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂;ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂;ウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリイミド;ポリ乳酸;ポリビニルアセタール樹脂;液晶性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
離型層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の他、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル−メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル−メラミン系樹脂単独、アクリル−メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物で離型層を構成することが特に好ましい。
離型層を形成する樹脂組成物には、離型層に備えさせる所望の物性を考慮して、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
離型層の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは1〜40μm程度、より好ましくは5〜15μm程度が挙げられる。なお、離型層の厚みは、表面層2の凸部の上に位置する部分の厚みである。
離型層は、表面層2の上に、前述の樹脂組成物を塗布することによって形成することができる。具体的には、当該樹脂組成物を、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の方法で、表面層2の表面に塗布すればよい。
[プライマー層4]
プライマー層4は、表面層2の延伸部に微細な割れや白化を生じ難くすること等を目的として、基材層1と表面層2との間、絵柄層5を設ける場合には絵柄層5と表面層2との間及び/又は基材層1と絵柄層5の間等に、必要に応じて設けられる層である。
表面層2とその下に位置する層との密着性を高める観点から、表面層2の直下にプライマー層4が設けられていることが好ましい。
プライマー層4を構成するプライマー組成物としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等をバインダー樹脂とするものが好ましく用いられ、これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂を混ぜて構成することも可能である。
架橋後の表面層2との密着性、表面層2を積層後の相互作用の生じ難さ、物性、成形性の面から、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせることが好ましく、特にアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて用いることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8の範囲で調整することが好ましい。
プライマー層4の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.5〜20μm程度であり、好ましくは、1〜5μmが挙げられる。
プライマー層4は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法は、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[絵柄層5]
絵柄層5は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、基材層1と表面層2の間、プライマー層4を設ける場合は、基材層1とプライマー層4の間、又は隠蔽層を設ける場合は隠蔽層と表面層2の間等に、必要に応じて設けられる層である。
絵柄層5は、例えば、インキ組成物を用いて所望の絵柄を形成した層とすることができる。絵柄層5の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
インキ組成物に使用されるバインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキ組成物に使用される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
絵柄層5によって形成される絵柄についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよく、あるいは単色無地(いわゆる全面ベタ)であってもよい。これらの絵柄は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
絵柄層の厚みは、特に制限されないが、例えば1〜30μm、好ましくは1〜20μmが挙げられる。
また、絵柄層5は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。金属薄膜層は全面に設けられても、部分的に設けられてもよい。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
[隠蔽層]
隠蔽層は、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層1と表面層2の間、プライマー層4を設ける場合であれば基材層1とプライマー層2の間、又は絵柄層5を設ける場合であれば基材層1と絵柄層5の間に、必要に応じて設けられる層である。
隠蔽層は、基材層が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般的には、不透明色の層として形成される。
隠蔽層は、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層を形成するインキ組成物は、前述した絵柄層に使用されるものから適宜選択して使用される。
隠蔽層は、通常、厚みが1〜20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。
隠蔽層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方法;グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗布方法等によって形成される。
[透明樹脂層]
透明樹脂層は、耐薬品性や耐傷付き性を向上させる目的で、基材層1と表面層2の間、プライマー層4を設ける場合は基材層1とプライマー層4の間、絵柄層5を設ける場合は絵柄層5と表面層2の間、又は基材層1上にプライマー層4と絵柄層5をこの順に設ける場合はプライマー層4と絵柄層5の間等に、必要に応じて設けられる層である。透明樹脂層は、インサート成形法によって成形樹脂と一体化される加飾シートにおいて、好適に設けられる層である。
透明樹脂層を形成する樹脂成分としては、透明性、三次元成形性、形状安定性、耐薬品性等に応じて適宜選定されるが、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が使用される。これらの熱可塑性樹脂の中でも、耐薬品性、耐傷付き性等の観点から、好ましくは、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂;更に好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂;より好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられる。
透明樹脂層は、接面する他の層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。これらの物理的又は化学的表面処理は、基材層に施される表面処理と同様である。
透明樹脂層の厚みについては、特に制限されないが、例えば10〜200μm、好ましくは15〜150μmが挙げられる。
透明樹脂層は、接着剤を介して積層させてもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介して積層させる場合、使用される接着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂等が挙げられる。また、接着剤を介さず積層させる場合には、押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の方法で行うことができる。
[裏面接着層]
裏面接着層(図示しない)は、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、基材層1の裏面(表面層2とは反対側の面)に、必要に応じて設けられる層である。
裏面接着層には、加飾樹脂成形品に使用される成形樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。
裏面接着層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、裏面接着層の形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、
エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
加飾シートの製造方法
本発明の加飾シートは、例えば、下記の第1工程及び第2工程を経て製造することができる。
基材層上に、凹凸形状を有し、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成された表面層が積層された積層体を形成する第1工程と、
前記第1工程で得られた積層体の表面層上に、剥離可能な熱可塑性樹脂フィルム層を形成する第2工程。
第1工程及び第2工程において、各層の形成に使用される成分、各層の形成方法の具体的条件、表面層2の凹凸形状の形成方法等については、前記各層の組成の欄で述べた通りである。
2.熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートと成形樹脂とを一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層6、基材層1、凹凸形状を有する表面層2、及び熱可塑性樹脂フィルム層3が順に積層されてなり、表面層2は、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されている。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品から熱可塑性樹脂フィルム層を剥離する際の、熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度は、0.10〜0.80N/25mmである。
前述の通り、本発明の加飾シートにおいては、熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度が、0.05〜0.50N/25mmであり、加飾シートにおける当該剥離強度が、このような特定の範囲に設定されていることにより、加飾シートの状態における熱可塑性樹脂フィルム層が十分な密着性を備えており、さらに、射出成形後の加飾樹脂成形品の剥離強度を0.10〜0.80N/25mmの範囲に設定することが可能となり、加飾樹脂成形品からの好適な剥離性を発揮することが可能となっている。加飾樹脂成形品における熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度としては、好ましくは0.10〜0.70N/25mm程度、より好ましくは0.10〜0.60N/25mm程度、さらに好ましくは0.10〜0.50N/25mm程度が挙げられる。
なお、本発明において、加飾樹脂成形品における熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度は、次のようにして測定した値である。まず、カッターナイフを用いて加飾樹脂成形品の表面の熱可塑性樹脂フィルム層に切り込みを入れ、幅25mm、長さ150mmの試験領域を形成する。この試験領域の一端から、熱可塑性樹脂フィルム層を25mm程度、手で剥がし、熱可塑性樹脂フィルム層を加飾樹脂成形品の表面に対して90°に折り返す。次に、テンシロン万能試験機を用いて、片方のチャックに加飾樹脂成形品を固定し、もう片方のチャックに折り返した熱可塑性樹脂フィルム層を固定する。この状態から、25℃下、引張速度100mm/分の条件で、引張試験機の運転を開始し、引張試験開始の6秒後から36秒後までの剥離強度測定値の平均値を、加飾樹脂成形品からの熱可塑性樹脂フィルム層の剥離強度(N/25mm)とする。
図5に、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品の一態様について、その断面構造を示す。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートの基材層側に、樹脂を射出することにより成形樹脂層を形成する工程を備える方法により製造することができる。具体的には、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。本発明の加飾シートを各種射出成形法に供して熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品を作製することによって、射出成形の際に凹凸形状が損なわれることを抑制するという上述の効果を発揮できるので、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品を構成する成形樹脂層6の好適な一例として、射出成形で形成された射出樹脂層が挙げられる。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。すなわち、本発明の加飾シートは、インサート成形法または射出成形同時加飾法に好適に用いられる。
インサート成形法では、先ず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを用いる場合であれば、通常100〜250℃程度、好ましくは130〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70〜130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度、好ましくは220〜280℃程度とすることができる。
また、本発明の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材層1側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60〜200℃程度とすることができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた成形樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
成形樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、成形樹脂として使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品から熱可塑性樹脂フィルム層を剥離除去することにより、加飾樹脂成形品を得ることができる。また、熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品において、熱可塑性樹脂フィルム層は、加飾樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、用時に熱可塑性樹脂フィルム層を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって加飾樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
3.加飾樹脂成形品
前記熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品から熱可塑性樹脂フィルム層3を剥離除去することにより、表面に凹凸形状が付与された加飾樹脂成形品が得られる。図6に、図5の熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品から熱可塑性樹脂フィルム層3が除去された加飾樹脂成形品の一態様について、その断面構造を示す。
本発明の加飾樹脂成形品は、加飾シートの表面層2が備えている凹凸形状が好適に付与されている。射出成形時の熱と圧力によって、加飾シートの表面層2が備えている凹凸形状は、通常、変化する。加飾樹脂成形品において、表面層2の熱可塑性樹脂フィルム層3側表面の中心線平均粗さ(Ra)として、凹凸形状による優れた意匠感や手触りを付与するという観点から、通常1〜15μm、好ましくは2〜13μm、更に好ましくは3〜11μmが挙げられる。
また、同様の観点から、表面層2の熱可塑性樹脂フィルム層3側表面の最大高さ(Rz)としては、通常5〜50μm、好ましくは10〜40μm、更に好ましくは15〜30μmが挙げられる。同様の観点から、表面層2の熱可塑性樹脂フィルム層3側表面の十点平均高さ(Rzjis)としては、通常5〜40μm、好ましくは10〜35μm、更に好ましくは15〜30μmが挙げられる。なお、中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、及び十点平均高さ(Rzjis)は、それぞれ、JIS B 0601:2001の規定に準拠し、加飾樹脂成形品の表面層2の表面について、測定した値である。
本発明の加飾樹脂成形品は、凹凸形状による優れた意匠感と手触り感を有しているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
[加飾シートの製造]
実施例1〜10(射出成形同時加飾法に用いられる仕様)
加飾法として、射出成形同時加飾法に用いられる仕様の加飾シートを以下の手順により製造した。基材層として表1に記載の樹脂フィルム(ABS樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム)を用いた。次に、基材層上に、アクリル樹脂を含むインキ組成物を用いて、木目柄の絵柄層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。次に、絵柄層上に、主剤(アクリルポリオール/ウレタン、質量比9/1)100質量部と硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)7質量部を含む2液硬化型樹脂からなるバインダー樹脂を含むプライマー層用樹脂組成物を塗布し、乾燥させて厚みが2μmのプライマー層を形成し、基材層/絵柄層/プライマー層が順に積層された積層体を得た。
次に、得られた積層体のプライマー層側に、表1に示される種類のエンボス版を用いて、エンボス加工を行い、凹凸形状をプライマー層上に形成させた。エンボス版の詳細は、後述の通りである。次に、凹凸形状が形成されたプライマー層上に、表面層を形成するために、表1に記載の樹脂を配合した樹脂組成物を、硬化後の厚さ(表面層の凹凸形状の凸部の厚み)が10μmとなるように塗布した。この樹脂組成物に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)を照射して硬化させ、凹凸形状を有する表面層を形成した。なお、表面層の凹凸形状は、プライマー層の凹凸形状に対応している。次に、表面層の上に、押出成形により表1に記載の熱可塑性樹脂フィルム(ポリエチレン(PE)層またはA−PET層)を形成することで、基材層/絵柄層/プライマー層/凹凸形状を有する表面層/熱可塑性樹脂フィルム層がこの順に積層された積層構造の加飾シートを得た。なお、表面層の凹凸形状の凹部が熱可塑性樹脂フィルムにより埋められている。また、押出成形の条件としては、押出機のダイ下温度を300〜310℃程度、熱可塑性樹脂フィルムの厚み(表面層の凹凸形状の凸部上の厚み)を50μmとした。
実施例11〜14及び比較例1〜5(インサート成形法に用いられる仕様)
加飾法として、インサート成形法に用いられる仕様の加飾シートを以下の手順により製造した。基材層として表2または表3に記載の樹脂フィルム(ABS樹脂フィルム)を用いた。次に、基材層上に、アクリル樹脂を含むインキ組成物を用いて、木目柄の絵柄層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。次に、絵柄層上に、主剤(アクリルポリオール/ウレタン、質量比9/1)100質量部と硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)7質量部を含む2液硬化型樹脂からなるバインダー樹脂を含むプライマー層用樹脂組成物を塗布し、乾燥させて厚みが2μmのプライマー層を形成し、基材層/絵柄層/プライマー層が順に積層された積層体を得た。
次に、得られた積層体のプライマー層側に、エンボス加工を行い、凹凸形状をプライマー層上に形成させた。エンボス版の詳細は、後述の通りである。次に、凹凸形状が形成されたプライマー層上に、表面層を形成するために、表2又は表3に記載の樹脂を配合した樹脂組成物を、硬化後の厚さ(表面層の凹凸形状の凸部の厚み)が10μmとなるように塗布した。この樹脂組成物に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)を照射して硬化させ、凹凸形状を有する表面層を形成した。なお、表面層の凹凸形状は、プライマー層の凹凸形状に対応している。次に、表面層の上に、押出成形によりポリエチレン層を形成することで、基材層/絵柄層/プライマー層/凹凸形状を有する表面層/熱可塑性樹脂フィルム層(ポリエチレン層(PE))がこの順に積層された積層構造の加飾シートを得た。なお、表面層の凹凸形状の凹部がポリエチレン層により埋められている。また、押出成形の条件としては、押出機のダイ下温度を320〜330℃程度とし、ポリエチレン層の厚み(表面層の凹凸形状の凸部上の厚み)を80μmとした。
なお、比較例4においては、エンボス加工を施した表面層の上からコロナ処理(3kw)を行った。
比較例6(インサート成形法に用いられる仕様)
加飾法として、インサート成形法に用いられる仕様の加飾シートを以下の手順により製造した。アクリル樹脂フィルム(厚さ125μm)の裏面上に、アクリル樹脂を含むインキ組成物を用いて、木目柄の絵柄層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。次に、絵柄層上に、ABS樹脂フィルム(厚さ300μm)をポリエステル系の接着剤層(厚さ30μm)を介したドライラミネートにより積層した。次に、アクリル樹脂フィルムの上に、押出成形によりポリエチレン層を形成することで、比較例6の加飾シートを得た。なお、表3に示されるように、比較例6においては、エンボス加工を施さなかった。
エンボス版A:ストライプ柄、エンボス版深40μm
エンボス版B:ストライプ柄、エンボス版深60μm
エンボス版C:幾何学柄、エンボス版深60μm
エンボス版D:幾何学柄、エンボス版深40μm
エンボス版E:ストライプ柄、エンボス版深40μm
エンボス版F:ヘアライン柄、エンボス版深100μm
エンボス版G:ストライプ柄、エンボス版深40μm
エンボス版H:浮造り柄、エンボス版深80μm
表1〜3に記載されている3官能モノマー(Mw=298)は、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」であり、2官能モノマー(Mw=500)は、「エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート」である。
<加飾樹脂成形品の製造>
(射出成形同時加飾法に用いられる仕様)
実施例1〜10で得られた各加飾シートを金型に入れて、赤外線ヒーターで350℃、7秒間加熱し、真空成形で金型内の形状に沿うように予備成形して型締した(最大延伸倍率100%)。その後、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、該加飾シートと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出すと同時に加飾樹脂成形品を得た。
(インサート成形法に用いられる仕様)
実施例11〜14及び比較例1〜6で得られた各加飾シートを赤外線ヒーターで加熱し、シート温度が160℃になるまで軟化させた。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率100%)、金型の内部形状に成形した。成形後の加飾シートを冷却後、金型から離型した。その後、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、該加飾シートと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出すと同時に加飾樹脂成形品を得た。
<加飾シートからの剥離強度>
上記で得られた各加飾シートを裁断して、幅25mm、長さ150mmの試験片を得た。この試験片の一端から、熱可塑性樹脂フィルム層を25mm程度、手で剥がし、熱可塑性樹脂フィルム層を加飾シートの表面に対して90°に折り返した。次に、テンシロン万能試験機(「RTC−1250A(型番)」,株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、片方のチャックに加飾シートを固定し、もう片方のチャックに折り返した熱可塑性樹脂フィルム層を固定した。この状態から、25℃下、引張速度100mm/分の条件で、引張試験機の運転を開始し、引張試験開始の6秒後から36秒後までの剥離強度測定値の平均値を、それぞれの加飾シートからの剥離強度(N/25mm)とした。結果を表1〜3に示す。
<加飾樹脂成形品からの剥離強度>
上記で得られた各加飾樹脂成形品について、カッターナイフを用いて表面の熱可塑性樹脂フィルム層に切り込みを入れ、幅25mm、長さ150mmの試験領域を形成した。この試験領域の一端から、熱可塑性樹脂フィルム層を25mm程度、手で剥がし、熱可塑性樹脂フィルム層を加飾樹脂成形品の表面に対して90°に折り返した。次に、テンシロン万能試験機(「RTC−1250A(型番)」,株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、片方のチャックに加飾樹脂成形品を固定し、もう片方のチャックに折り返した熱可塑性樹脂フィルム層を固定した。この状態から、25℃下、引張速度100mm/分の条件で、引張試験機の運転を開始し、引張試験開始の6秒後から36秒後までの剥離強度測定値の平均値を、それぞれの加飾樹脂成形品からの剥離強度(N/25mm)とした。結果を表1〜3に示す。
<加飾樹脂成形品からの剥離性の評価>
上記で得られた各加飾樹脂成形品から熱可塑性樹脂フィルム層を手で剥離した際の、熱可塑性樹脂フィルム層の剥離性を以下の基準により評価した。結果を表1〜3に示す。
○:剥離する時にスムーズに剥がれる。
△:剥離する時、熱可塑性樹脂フィルム層の引っ掛かりを感じる。
×:剥離する時に重く感じる、熱可塑性樹脂フィルム層を剥離した跡が加飾樹脂成形品の表面に残る。
××:熱可塑性樹脂フィルム層を剥離できない。
<加飾シートの表面粗さの測定>
JIS B 0601:2001の規定に準拠し、上記で得られた各加飾シートから熱可塑性樹脂フィルム層を剥離し、表面層側表面の各種表面粗さ(中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、及び十点平均高さ(Rzjis))を測定した。測定装置としては、株式会社東京精密製の表面粗さ測定器(商品名「ハンディーサーフE−35A」を使用した。測定結果を表1〜3に示す。
<加飾樹脂成形品の表面粗さの測定>
後述の成形性評価で得られた各加飾樹脂成形品から熱可塑性樹脂フィルム層を剥離し、表面層側表面について、上記<加飾シートの表面粗さの測定>と同様にして、各種表面粗さを測定した。測定結果を表1〜3に示す。