以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置(電力変換装置1)の一構成例を表すものである。この電力変換装置1は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2を含む2つの運転モードで動作を行うことができるものである。
電力変換装置1は、端子T11,T12と、端子T21,T22と、端子T31,T32,T33とを備えている。端子T11,T12には、バッテリBTが接続されている。バッテリBTは、例えば、家庭用のバッテリであってもよいし、電気自動車用のバッテリであってもよい。端子T21,T22は、商用電源GRIDに接続されており、端子T31,T32,T33は、負荷装置LOADに接続されている。系統連系運転モードM1では、電力変換装置1は、単相2線を用いて商用電源GRIDと接続することにより、バッテリBTを充放電する。また、自立運転モードM2では、電力変換装置1は、単相3線を用いて負荷装置LOADと接続することにより、負荷装置LOADに電力を供給するようになっている。
電力変換装置1は、双方向DC/DCコンバータ10と、DC/ACインバータ20と、スイッチSgridu,Sgridwと、電圧検出部19と、スイッチSstdu,Sstdwとを備えている。
双方向DC/DCコンバータ10は、直流電圧を昇圧し、あるいは直流電圧を降圧する、双方向の電力変換を行うものである。双方向DC/DCコンバータ10は、例えば、非絶縁型のDC/DCコンバータであってもよいし、絶縁型のDC/DCコンバータであってもよい。双方向DC/DCコンバータ10は、端子T11,T12を介してバッテリBTに接続されるとともに、高電圧線HLおよび低電圧線LLを介してスイッチング素子SW1〜SW6を含むスイッチング部に接続される。バッテリBTにおけるバッテリ電圧Vbtは、例えば200V〜400V程度にすることができ、高電圧線HLおよび低電圧線LLの間の電圧(直流バス電圧Vdc)は、例えば400V程度にすることができる。双方向DC/DCコンバータ10は、例えば、電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合には、バッテリBTを充放電させる充放電制御を行う。また、双方向DC/DCコンバータ10は、電力変換装置1の運転モードが自立運転モードM2である場合には、直流バス電圧Vdcが例えば400Vになるように電圧一定制御を行うようになっている。
DC/ACインバータ20は、直流電圧を交流電圧に変換し、あるいは交流電圧を直流電圧に変換する、フルブリッジ型の単相3線式のインバータである。DC/ACインバータ20は、電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合には、フルブリッジ型の単相2線式のインバータとして動作し、電力変換装置1の運転モードが自立運転モードM2である場合には、フルブリッジ型の単相3線式のインバータとして動作するようになっている。DC/ACインバータ20は、電圧検出部21と、容量素子22と、スイッチング素子SW1〜SW6と、電流検出部23U,23Wと、ローパスフィルタ29U,29Wと、電圧検出部26U,26Wと、制御部30とを有している。
電圧検出部21は、直流バス電圧Vdcを検出するものである。電圧検出部21の一端は高電圧線HLに接続され、他端は低電圧線LLに接続されている。電圧検出部21は、低電圧線LLにおける電圧からみた高電圧線HLにおける電圧を直流バス電圧Vdcとして検出する。そして、電圧検出部21は、検出した直流バス電圧Vdcについての情報を制御部30に供給するようになっている。
容量素子22の一端は高電圧線HLに接続され、他端は低電圧線LLに接続されている。容量素子22は、例えば、電解コンデンサを用いて構成される。容量素子22は、キャパシタンス(容量値)Cdcを有するものである。
スイッチング素子SW1〜SW6は、ゲート信号S1〜S6に基づいてそれぞれスイッチング動作を行うものである。スイッチング素子SW1〜SW6は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いて構成される。スイッチング素子SW1〜SW6のそれぞれは、還流ダイオードを有している。スイッチング素子SW1の還流ダイオードのアノードは、スイッチング素子SW1のエミッタに接続され、カソードは、スイッチング素子SW1のコレクタに接続されている。スイッチング素子SW2〜SW6についても同様である。
スイッチング素子SW1は、オン状態になることにより高電圧線HLをノードN1に接続するものである。スイッチング素子SW1のコレクタは高電圧線HLに接続され、ゲートにはゲート信号S1が供給され、エミッタはノードN1に接続されている。スイッチング素子SW2は、オン状態になることにより低電圧線LLをノードN1に接続するものである。スイッチング素子SW2のコレクタはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号S2が供給され、エミッタは低電圧線LLに接続されている。ノードN1は、スイッチング素子SW1のエミッタとスイッチング素子SW2のコレクタとの接続点である。
スイッチング素子SW3は、オン状態になることにより高電圧線HLをノードN2に接続するものである。スイッチング素子SW3のコレクタは高電圧線HLに接続され、ゲートにはゲート信号S3が供給され、エミッタはノードN2に接続されている。スイッチング素子SW4は、オン状態になることにより低電圧線LLをノードN2に接続するものである。スイッチング素子SW4のコレクタはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号S4が供給され、エミッタは低電圧線LLに接続されている。ノードN2は、スイッチング素子SW3のエミッタとスイッチング素子SW4のコレクタとの接続点である。
スイッチング素子SW5は、オン状態になることにより高電圧線HLをノードN3に接続するものである。スイッチング素子SW5のコレクタは高電圧線HLに接続され、ゲートにはゲート信号S5が供給され、エミッタはノードN3に接続されている。スイッチング素子SW6は、オン状態になることにより低電圧線LLをノードN3に接続するものである。スイッチング素子SW6のコレクタはノードN3に接続され、ゲートにはゲート信号S6が供給され、エミッタは低電圧線LLに接続されている。ノードN3は、スイッチング素子SW5のエミッタとスイッチング素子SW6のコレクタとの接続点である。
ノードN1から端子T21,T31への経路には、電流検出部23Uおよびローパスフィルタ29Uが設けられている。
電流検出部23Uは、ノードN1からローパスフィルタ29Uに流れる電流i_inv1を検出するものである。電流検出部23Uの一端はノードN1に接続され、他端はローパスフィルタ29Uに接続されている。そして、電流検出部23Uは、検出した電流i_inv1についての情報を制御部30に供給するようになっている。
ローパスフィルタ29Uは、ノードN1における電圧とノードN3における電圧の電圧差に含まれる高周波数成分を除去するものである。ローパスフィルタ29Uは、ACリアクトル24Uと、容量素子25Uとを有している。ACリアクトル24Uの一端は電流検出部23Uの他端に接続され、他端はU相電圧線ULに接続されている。ACリアクトル24Uは、インダクタンスLinvおよび内部抵抗値Rinvを有している。容量素子25Uの一端はU相電圧線ULに接続され、他端はノードN3と端子T33とを結ぶ中性線OLに接続されている。容量素子25Uは、例えばフィルムコンデンサを用いて構成される。容量素子25Uは、キャパシタンス(容量値)Cinvおよび内部抵抗値Rcを有している。この構成により、ローパスフィルタ29Uは、例えばサイン波形状を有するU相の交流電圧を出力するようになっている。
電圧検出部26Uは、ローパスフィルタ29Uから出力されるU相の交流電圧に係る電圧e_uoを検出するものである。電圧検出部26Uの一端はU相電圧線ULに接続され、他端は中性線OLに接続されている。電圧検出部26Uは、中性線OLにおける電圧からみたU相電圧線ULにおける電圧を電圧e_uoとして検出する。そして、電圧検出部26Uは、検出した電圧e_uoについての情報を制御部30に供給するようになっている。
ノードN2から端子T22,T32への経路には、電流検出部23Wおよびローパスフィルタ29Wが設けられている。
電流検出部23Wは、ノードN2からローパスフィルタ29Wに流れる電流i_inv2を検出するものである。電流検出部23Wの一端はノードN2に接続され、他端はローパスフィルタ29Wに接続されている。そして、電流検出部23Wは、検出した電流i_inv2についての情報を制御部30に供給するようになっている。
ローパスフィルタ29Wは、ノードN2における電圧とノードN3における電圧の電圧差に含まれる高周波数成分を除去するものである。ローパスフィルタ29Wは、ACリアクトル24Wと、容量素子25Wとを有している。ACリアクトル24Wの一端は電流検出部23Wの他端に接続され、他端はW相電圧線WLに接続されている。ACリアクトル24Wは、インダクタンスLinvおよび内部抵抗値Rinvを有している。容量素子25Wの一端はW相電圧線WLに接続され、他端はノードN3と端子T33とを結ぶ中性線OLに接続されている。容量素子25Wは、例えばフィルムコンデンサを用いて構成される。容量素子25Wは、キャパシタンス(容量値)Cinvおよび内部抵抗値Rcを有している。この構成により、ローパスフィルタ29Wは、例えばサイン波形状を有するW相の交流電圧を出力するようになっている。
電圧検出部26Wは、ローパスフィルタ29Wから出力されるW相の交流電圧に係る電圧e_woを検出するものである。電圧検出部26Wの一端はW相電圧線WLに接続され、他端は中性線OLに接続されている。電圧検出部26Wは、中性線OLにおける電圧からみたW相電圧線WLにおける電圧を電圧e_woとして検出する。そして、電圧検出部26Wは、検出した電圧e_woについての情報を制御部30に供給するようになっている。
スイッチSgridu,Sgridwは、系統連系運転モードM1においてオン状態になることにより、U相電圧線ULおよびW相電圧線WLを商用電源GRIDに接続するものである。スイッチSgriduの一端はU相電圧線ULに接続され、他端は端子T21に接続されている。スイッチSgridwの一端はW相電圧線WLに接続され、他端は端子T22に接続されている。スイッチSgridu,Sgridwは、制御部30から供給されたスイッチ制御信号Sgに基づいてオンオフするようになっている。スイッチSgridu,Sgridwは、例えば、リレーを用いて構成される。
電圧検出部19は、商用電源GRIDから供給される系統電圧e_gridを検出するものである。電圧検出部19の一端は端子T21に接続され、他端は端子T22に接続されている。電圧検出部19は、端子T22における電圧からみた端子T21における電圧を系統電圧e_gridとして検出する。そして、電圧検出部19は、検出した系統電圧e_gridについての情報を制御部30に供給するようになっている。
端子T21,T22は、商用電源GRIDに接続されている。商用電源GRIDは、単相3線式のものであり、商用電源GRIDのU相電圧線が電力変換装置1の端子T21に接続され、商用電源GRIDのW相電圧線が電力変換装置1の端子T22に接続されている。商用電源GRIDは、U相電圧線と中性線との間に系統インピーダンス(インダクタンスLgridおよび抵抗値Rgrid)を有し、W相電圧線と中性線との間に、系統インピーダンス(インダクタンスLgridおよび抵抗値Rgrid)を有する。この商用電源GRIDには、負荷装置が接続されている。この負荷装置は、例えば、家庭内における1または複数の電子機器に対応するものである。この負荷装置は、一端が商用電源GRIDのU相電圧線に接続され他端が中性線に接続された、インピーダンスZgを有する負荷と、一端が商用電源GRIDのW相電圧線に接続され他端が中性線に接続された、インピーダンスZgを有する負荷とを含む。電力変換装置1の運転モードが系統連系運転モードM1である場合には、電力変換装置1のU相電圧線ULおよびW相電圧線WLは商用電源GRIDに接続されるが、電力変換装置1の中性線OLは商用電源GRIDに接続されない。このように、電力変換装置1では、系統連系運転モードM1において、電力変換装置1の中性線OLを商用電源GRIDの中性線に接続しないようにすることにより、ノイズの伝搬を抑えるようになっている。
スイッチSstdu,Sstdwは、自立運転モードM2においてオン状態になることにより、U相電圧線ULおよびW相電圧線WLを負荷装置LOADに接続するものである。スイッチSstduの一端はU相電圧線ULに接続され、他端は端子T31に接続されている。スイッチSstdwの一端はW相電圧線WLに接続され、他端は端子T32に接続されている。スイッチSstdu,Sstdwは、制御部30から供給されたスイッチ制御信号Ssに基づいてオンオフするようになっている。スイッチSstdu,Sstdwは、例えば、リレーを用いて構成される。
端子T31,T32,T33は、負荷装置LOADに接続されている。この負荷装置LOADは、例えば、家庭内や車内における1または複数の電子機器に対応するものである。負荷装置LOADは、一端が端子T31に接続され他端が端子T33に接続された、インピーダンスZ1を有する負荷(U相負荷)と、一端が端子T32に接続され他端が端子T33に接続された、インピーダンスZ2を有する負荷(W相負荷)とを含む。電力変換装置1の運転モードが自立運転モードM2である場合には、電力変換装置1のU相電圧線ULおよびW相電圧線WLは負荷装置LOADに接続される。また、この例では、電力変換装置1の中性線OLは、常に負荷装置LOADに接続される。
制御部30は、DC/ACインバータ20の動作を制御するものである。また、制御部30は、双方向DC/DCコンバータ10の動作、およびスイッチSstdu,Sstdw,Sgridu,Sgridwの動作を制御する機能をも有している。制御部30は、例えば、マイクロコントローラを用いて構成される。
図2は、電力変換装置1の動作を表すものである。この図2は、各運転モードにおける、双方向DC/DCコンバータ10、DC/ACインバータ20、およびスイッチSstdu,Sstdw,Sgridu,Sgridwの動作を示している。
系統連系運転モードM1では、スイッチSgridu,Sgridwがオン状態になるとともに、スイッチSstdu,Sstdwがオフ状態になる。これにより、商用電源GRIDが電力変換装置1に接続され、負荷装置LOADが電力変換装置1から切り離される。DC/ACインバータ20は、商用電源GRIDから供給された交流電圧に基づいて、直流バス電圧Vdcが所定の電圧(例えば400V)になるように、電圧一定制御を行う。そして、双方向DC/DCコンバータ10は、バッテリBTに対する充放電電力制御を行うようになっている。
また、自立運転モードM2では、スイッチSstdu,Sstdwがオン状態になるとともに、スイッチSgridu,Sgridwがオフ状態になる。これにより、負荷装置LOADが電力変換装置1に接続され、商用電源GRIDが電力変換装置1から切り離される。双方向DC/DCコンバータ10は、バッテリBTにおけるバッテリ電圧Vbtに基づいて、直流バス電圧Vdcが所定の電圧(例えば400V)になるように、電圧一定制御を行う。DC/ACインバータ20は、例えば、U相電圧線ULにおける電圧とW相電圧線WLにおける電圧の電圧差である交流出力電圧e_uwの電圧振幅が所定の振幅になるように、電圧振幅一定制御を行う。この自立運転モードM2において、電力変換装置1は、中性点(中性線OL)における電圧バランスを保つように中性点の電圧を制御する。これにより、電力変換装置1は、例えば、家庭内の様々な全ての負荷装置に対して、安定した交流電圧を供給することができるようになっている。
制御部30は、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2において、電力変換装置1がこのような動作を行うように、DC/ACインバータ20の動作、双方向DC/DCコンバータ10の動作、およびスイッチSstdu,Sstdw,Sgridu,Sgridwの動作を制御するようになっている。
(DC/ACインバータ20)
制御部30は、電圧検出部21から供給された直流バス電圧Vdcについての情報、電流検出部23U,23Wから供給された電流i_inv1,i_inv2についての情報、電圧検出部26U,26Wから供給された電圧e_uo,e_woについての情報、および電圧検出部19から供給された系統電圧e_gridについての情報に基づいて、スイッチング素子SW1〜SW6に供給するゲート信号S1〜S6を生成する。制御部30は、例えば、電圧検出部21から供給された直流バス電圧Vdcについての情報に対して、AD変換を行うことにより、直流バス電圧Vdcを示すデジタル値を求め、このデジタル値に基づいて制御を行う。電流i_inv1,i_inv2、電圧e_uo,e_wo、電圧e_gridについても同様である。以下、AD変換されたデジタル値を表すものとして、直流バス電圧Vdc、電流i_inv1,i_inv2、電圧e_uo,e_wo、系統電圧e_gridを適宜用いる。
系統連系運転モードM1では、制御部30は、例えば、電圧検出部19から供給された系統電圧e_gridについての情報に基づいてゲート信号S1〜S4を生成する。これにより、スイッチング素子SW1〜SW4は、ゲート信号S1〜S4に基づいて、商用電源GRIDから供給された交流電圧に同期してオンオフする。スイッチング素子SW5,SW6は、例えばオフ状態を維持する。これにより、DC/ACインバータ20は、直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように、電圧一定制御を行う。具体的には、DC/ACインバータ20は、例えば、後述するバイポーラPWM(pulse width modulation)動作やユニポーラPWM動作と同様の動作を行うことにより、電圧一定制御を行うことができる。
一方、自立運転モードM2では、制御部30は、電圧検出部21から供給された直流バス電圧Vdcについての情報、電流検出部23U,23Wから供給された電流i_inv1,i_inv2についての情報、電圧検出部26U,26Wから供給された電圧e_uo,e_woについての情報に基づいてゲート信号S1〜S6を生成する。スイッチング素子SW1〜SW6は、このゲート信号S1〜S6に基づいてオンオフする。DC/ACインバータ20は、例えば、スイッチング素子SW1〜SW4をオンオフすることにより、交流出力電圧の電圧振幅が所定の振幅になるように、電圧振幅一定制御を行うとともに、スイッチング素子SW5,SW6をオンオフすることにより、中性点(中性線OL)における電圧バランスを保つように中性点の電圧を制御する。
以下に、制御部30のうち、自立運転モードM2における動作に係る回路構成について、詳細に説明する。
(電圧振幅一定制御について)
図3は、制御部30における、電圧振幅一定制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30は、減算部31と、指令値生成部32と、減算部33と、電流推定部34と、減算部35〜37と、電圧制御部38と、電流制御部39と、ゲート信号生成部40とを有している。制御部30の演算処理において用いられる演算式を以下に示す。
減算部31は、電圧e_uo,e_woに基づいて、式EQ1の第1式に示したように、電圧e_uoから電圧e_woを減算することにより、交流出力電圧e_uwを求めるものである。
指令値生成部32は、式EQ1の第2式に示したように、交流出力電圧e_uwの指令値e_uw*を生成するものである。この式EQ1の第2式において、Emaxは振幅値であり、θsdは位相角度である。この位相角度θsdは、時間tの関数であり、自立運転周波数fsd(例えば60Hz)に応じて変化するものである。
減算部33は、電流i_inv1,i_inv2に基づいて、式EQ1の第3式に示したように、電流i_inv1から電流i_inv2を減算することにより、交流出力電流i_invを求めるものである。
電流推定部34は、電圧e_uo,e_woに基づいて、式EQ2に示したように、容量素子25Uに流れる電流(推定電流i_c1)を推定するとともに、容量素子25Wに流れる電流(推定電流i_c2)を推定するものである。図1に示したように、推定電流i_c1は、ACリアクトル24Uから容量素子25Uに向かって流れる電流であり、推定電流i_c2は、ACリアクトル24Wから容量素子25Wに向かって流れる電流である。この式EQ2において、Euormsは、電圧e_uoの実効値であり、Ewormsは、電圧e_woの実効値である。実効値Euorms,Ewormsは、電圧e_uo,e_woに基づいて、例えば、式EQ3を用いて求めることができる。
減算部35は、電流i_inv1および推定電流i_c1に基づいて、式EQ1の第4式に示したように、電流i_inv1から推定電流i_c1を減算することにより、推定負荷電流i_ld1を求めるものである。この推定負荷電流i_ld1は、図1に示したように、U相電圧線ULにおけるローパスフィルタ29Uの出力電流であり、端子T31に流れる電流である。
減算部36は、電流i_inv2および推定電流i_c2に基づいて、式EQ1の第5式に示したように、電流i_inv2から推定電流i_c2を減算することにより、推定負荷電流i_ld2を求めるものである。この推定負荷電流i_ld2は、図1に示したように、W相電圧線WLにおけるローパスフィルタ29Wの出力電流であり、端子T32に流れる電流である。
減算部37は、推定負荷電流i_ld1,i_ld2に基づいて、式EQ1の第6式に示したように、推定負荷電流i_ld1から推定負荷電流i_ld2を減算することにより、推定負荷電流の電流差i_ld_dmを求めるものである。
電圧制御部38は、交流出力電圧e_uwの指令値e_uw*および交流出力電圧e_uwに基づいて、交流出力電流i_invの指令値i_inv*を生成するものである。電圧制御部38は、減算部38Aを有している。減算部38Aは、指令値e_uw*から交流出力電圧e_uwを減算するものである。電圧制御部38は、この減算部38Aの演算結果に基づいて、指令値i_inv*を生成するようになっている。
電流制御部39は、交流出力電流i_invの指令値i_inv*、交流出力電流i_inv、推定負荷電流の電流差i_ld_dm、および直流バス電圧Vdcに基づいて、デューティ比d_invを求めるものである。電流制御部39は、減算部39Aを有している。減算部39Aは、指令値i_inv*から交流出力電流i_invを減算するものである。電流制御部39は、この減算部39Aの演算結果、推定負荷電流の電流差i_ld_dm、および直流バス電圧Vdcに基づいて、デューティ比d_invを求めるようになっている。
ゲート信号生成部40は、デューティ比d_invに基づいて、PWM(pulse width modulation)を用いて、ゲート信号S1〜S4を生成するものである。
制御部30は、例えば、周期Ts(例えば50μsec.(=1/20kHz))ごとに、直流バス電圧Vdc、電流i_inv1,i_inv2、および電圧e_uo,e_woに基づいてこれらの演算を行うことによりデューティ比d_invを求め、ゲート信号生成部40は、このデューティ比d_invに応じたゲート信号S1〜S4を生成する。電力変換装置1では、このようにして負帰還がかかるように、交流出力電圧および交流出力電流についてのループ制御が行われる。このループ制御により、電力変換装置1では、交流出力電圧e_uwが、交流出力電圧e_uwの指令値e_uw*とほぼ同じになるように制御され、交流出力電流i_invが、交流出力電流i_invの指令値i_inv*とほぼ同じになるように制御されるようになっている。
図4は、DC/ACインバータ20がバイポーラPWM動作を行う場合における、ゲート信号S1〜S4の波形の一例を表すものであり、(A)はデューティ比d_invを示し、(B)はキャリア信号CRの波形を示し、(C)〜(F)はゲート信号S1〜S4の波形をそれぞれ示し、(G)はノードN1における電圧とノードN2における電圧の電圧差ΔVの波形を示し、(H)は交流出力電圧e_uwの波形を示す。この例では、ゲート信号S1が高レベルである場合にはスイッチング素子SW1はオン状態になり、ゲート信号S1が低レベルである場合にはスイッチング素子SW1はオフ状態になる。ゲート信号S2〜S4についても同様である。なお、この図4では、説明の便宜上、周期Tsの期間を長くしているが、例えば、周期Tsは50μsec.(=1/20kHz)に設定することができ、周期Tsdは16.7msec.(=1/60Hz)に設定することができる。
ゲート信号生成部40は、キャリア信号CRを生成し(図4(A))、このキャリア信号CRと、電流制御部39から供給されたデューティ比d_inv(図4(A))に基づいて、ゲート信号S1〜S4を生成する(図4(C)〜(F))。このゲート信号S1〜S4におけるパルス幅は、デューティ比d_invに応じて変化する。このバイポーラPWM動作では、4つのスイッチング素子SW1〜SW4におけるスイッチングタイミングは、ほぼ同時である。なお、図示していないが、ゲート信号S1が高レベルになる期間と、ゲート信号S2が高レベルになる期間とは、互いにデッドタイムTdだけ離れて設定される。このデッドタイムTdは、高電圧線HLおよび低電圧線LLが電気的に短絡するのを回避するために設けられた時間である。ゲート信号S3,S4についても同様である。ノードN1における電圧とノードN2における電圧の電圧差ΔVは、このゲート信号S1〜S4に応じたパルス信号になる(図4(G))。このパルス信号は、2つの電圧の間で遷移する信号である。ローパスフィルタ29U,29Wは、このパルス信号に含まれる高周波数成分を除去する。このようにして、DC/ACインバータ20は、交流出力電圧e_uwを生成する(図4(H))。
図5は、DC/ACインバータ20がユニポーラPWM動作を行う場合における、ゲート信号S1〜S4の波形の一例を表すものであり、(A)はデューティ比d_invを示し、(B)はキャリア信号CRの波形を示し、(C)〜(F)はゲート信号S1〜S4の波形をそれぞれ示し、(G)はノードN1における電圧とノードN2における電圧の電圧差ΔVの波形を示し、(H)は交流出力電圧e_uwの波形を示す。
ゲート信号生成部40は、キャリア信号CRを生成し(図5(A))、このキャリア信号CRと、電流制御部39から供給されたデューティ比d_inv(図5(A))に基づいて、ゲート信号S1〜S4を生成する(図5(C)〜(F))。このユニポーラPWM動作では、バイポーラPWM動作の場合(図4)と異なり、スイッチング素子SW1,SW2におけるスイッチングタイミングと、スイッチング素子SW3,SW4におけるスイッチングタイミングとは、互いに異なり得る。ノードN1における電圧とノードN2における電圧の電圧差ΔVは、このゲート信号S1〜S4に応じたパルス信号になる(図5(G))。このパルス信号は、3つの電圧の間で遷移する信号であり、このパルス信号の遷移頻度は、バイポーラPWM動作の場合(図4)の2倍になる。ローパスフィルタ29U,29Wは、このパルス信号に含まれる高周波数成分を除去する。このようにして、DC/ACインバータ20は、交流出力電圧e_uwを生成する(図5(H))。
(中性点の電圧制御について)
次に、いくつか例を挙げて、中性点の電圧制御を行う制御部30の回路構成について説明する。
図6Aは、制御部30の一例である制御部30Aにおける、中性点の電圧制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30Aは、さらに、加算部41と、加算部42と、絶対値演算部61〜64と、ローパスフィルタ(LPF)71〜74と、パラメータ演算部43と、ゲイン演算部50と、バランス制御部51と、ゲート信号生成部52とを有している。この図6Aは、図3に示した減算部31,35〜37、および電流推定部34をも図示している。
加算部41は、減算部35,36から供給された推定負荷電流i_ld1,i_ld2に基づいて、式EQ1の第7式に示したように、推定負荷電流i_ld1および推定負荷電流i_ld2を加算することにより、推定負荷電流の電流和i_ld_cmを求めるものである。
加算部42は、電圧e_uo,e_woに基づいて、式EQ1の第8式に示したように、電圧e_uoおよび電圧e_woを加算することにより、電圧和e_cmを求めるものである。
絶対値演算部61は、加算部42から供給された電圧和e_cmに基づいて、電圧和e_cmの絶対値を求めるものである。ローパスフィルタ71は、この電圧和e_cmの絶対値を平滑化することにより、出力電圧のコモンモード成分であるコモンモード電圧Ecmを生成するものである。
絶対値演算部62は、加算部41から供給された電流和i_ld_cmに基づいて、電流和i_ld_cmの絶対値を求めるものである。ローパスフィルタ72は、この電流和i_ld_cmの絶対値を平滑化することにより、推定負荷電流のコモンモード成分であるコモンモード負荷電流Ildcmを生成するものである。
絶対値演算部63は、減算部31から供給された交流出力電圧e_uwに基づいて、交流出力電圧e_uwの絶対値を求めるものである。ローパスフィルタ73は、この交流出力電圧e_uwの絶対値を平滑化することにより、出力電圧の差分モード成分である差分モード電圧Edmを生成するものである。
絶対値演算部64は、減算部37から供給された推定負荷電流の電流差i_ld_dmに基づいて、推定負荷電流の電流差i_ld_dmの絶対値を求めるものである。ローパスフィルタ74は、この推定負荷電流の電流差i_ld_dmの絶対値を平滑化することにより、推定負荷電流の差分モード成分である差分モード負荷電流Ilddmを生成するものである。
パラメータ演算部43は、コモンモード電圧Ecm、コモンモード負荷電流Ildcm、差分モード電圧Edm、および差分モード負荷電流Ilddmに基づいて、以下の式EQ4を用いて、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを生成するものである。
ここで、maxは、2つの引数(この例では“Edm・Ilddm”および“x・Srated”)のうちの最大のものを選択する関数である。Sratedは、定格出力電力である。xは、例えば“0.1”に設定されるパラメータである。
ゲイン演算部50は、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいて、中性点電圧についてのループ制御におけるループゲインを構成するゲインファクタKoを求めるものである。ゲイン演算部50は、以下の式EQ5を用いて、ゲインファクタKoを求める。
ここで、Kmaxは、ゲインファクタKoの上限値を規定する値であり、Kminは、ゲインファクタKoの下限値を規定する値である。値Kmaxは、例えば値Kminよりも十分に大きい値に設定される。ゲイン演算部50は、式EQ5に示したように、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmの比である“Xcm/Xdm”に基づいて、ゲインファクタKoを求める。例えば、U相負荷(例えば図1におけるインピーダンスZ1)とW相負荷(例えば図1におけるインピーダンスZ2)とが互いにバランスしている場合(平衡負荷状態)では、コモンモードパラメータXcmは“0”(ゼロ)に近づき、“Xcm/Xdm”が“0”(ゼロ)に近づく。これにより、ゲインファクタKoは値Kminに近づく。言い換えれば、この値Kminは、平衡負荷状態におけるゲインファクタKoの下限値である。一方、U相負荷とW相負荷とが互いにアンバランスである場合(不平衡負荷状態)では、コモンモードパラメータXcmが大きくなり、“Xcm/Xdm”は“1”に近づく。これにより、このゲインファクタKoは、値Kmax(〜Kmax+Kmin)に近づく。言い換えれば、この値Kmaxは、不平衡負荷状態におけるゲインファクタKoの上限値である。このように、ゲイン演算部50は、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいて、ゲインファクタKoを、値Kminおよび値Kmax(〜Kmax+Kmin)の間の値に設定する。
パラメータ演算部43は、式EQ5に示したように、関数maxを用いて、差分モードパラメータXdmを求める。これにより、軽負荷状態や無負荷状態における、高いループゲインに起因するバランス制御の不安定性を抑えることができる。すなわち、例えば、関数maxを用いずに、差分モード電圧Edmと差分モード負荷電流Ilddmの積(Edm・Ilddm)を差分モードパラメータXdmにした場合には、例えば軽負荷状態や無負荷状態において、差分モード負荷電流Ilddmが小さくなるので、差分モードパラメータXdmが“0”に近づき、その結果、ゲインファクタKoが大きくなりすぎる場合がある。この場合には、バランス制御が不安定になり,電圧e_uo, e_woも不安定になるおそれがある。その結果,出力電圧が発振してしまう可能性があると考える。一方、この例では、関数maxを用いるようにしたので、差分モードパラメータXdmが定格出力電力Sratedのx倍を下回ることがない。言い換えれば、“x・Srated”は、差分モードパラメータXdmの下限値である。これにより、バランス制御の不安定要素を排除することができ,出力電圧の発振が生ずるおそれを低減することができる。
ゲイン演算部50は、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいて、このような式を用いてゲインファクタKoを求めるようになっている。
バランス制御部51は、電圧e_uo,e_wo、直流バス電圧Vdc、およびゲインファクタKoに基づいてデューティ比d_oを生成するものである。バランス制御部51は、加算部51Aを有している。この加算部51Aは、電圧e_uoおよび電圧e_woを加算するものである。バランス制御部51は、この加算部51Aの演算結果、直流バス電圧Vdc、およびゲインファクタKoに基づいてデューティ比d_oを生成するようになっている。
ゲート信号生成部52は、デューティ比d_oに基づいて、パルス幅変調を用いて、ゲート信号S5,S6を生成するものである。
このように、制御部30Aでは、パラメータ演算部43は、出力電力に基づいてコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを算出し、ゲイン演算部50は、これらのコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいてゲインファクタKoを求めることができるので、より適切にループゲインを設定することができる。
図6Bは、制御部30の他の例である制御部30Bにおける、中性点の電圧制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30Bは、実効値演算部81〜84を有している。実効値演算部81は、加算部42から供給された電圧和e_cmの実効値を演算することにより、出力電圧のコモンモード成分であるコモンモード電圧Ecmを生成するものである。実効値演算部82は、加算部41から供給された電流和i_ld_cmの実効値を演算することにより、推定負荷電流のコモンモード成分であるコモンモード負荷電流Ildcmを生成するものである。実効値演算部83は、減算部31から供給された交流出力電圧e_uwの実効値を演算することにより、出力電圧の差分モード成分である差分モード電圧Edmを生成するものである。実効値演算部84は、減算部37から供給された推定負荷電流の電流差i_ld_dmの実効値を演算することにより、推定負荷電流の差分モード成分である差分モード負荷電流Ilddmを生成するものである。すなわち、制御部30A(図6A)では、絶対値演算部61〜64およびLPF71〜74を用いて、瞬時値演算を行うことにより、コモンモード電圧Ecm、コモンモード負荷電流Ildcm、差分モード電圧Edm、および差分モード負荷電流Ilddmを算出したが、制御部30B(図6B)では、実効値演算部81〜84を用いて、実効値演算を行うことにより、コモンモード電圧Ecm、コモンモード負荷電流Ildcm、差分モード電圧Edm、および差分モード負荷電流Ilddmを算出している。
図6Cは、制御部30の他の例である制御部30Cにおける、中性点の電圧制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30Cは、加算部45と、絶対値演算部65,66と、ローパスフィルタ(LPF)75,76と、パラメータ演算部46とを有している。
加算部45は、電流i_inv1,i_inv2に基づいて、式EQ1の第9式に示したように、電流i_inv1および電流i_inv2を加算することにより、電流和i_cmを求めるものである。
絶対値演算部65は、加算部45から供給された電流和i_cmに基づいて、電流和i_cmの絶対値を求めるものである。ローパスフィルタ75は、この電流和i_cmの絶対値を平滑化することにより、出力電流のコモンモード成分であるコモンモード電流Icmを生成するものである。
絶対値演算部66は、減算部33から供給された交流出力電流i_invに基づいて、交流出力電流i_invの絶対値を求めるものである。ローパスフィルタ76は、この交流出力電流i_invの絶対値を平滑化することにより、出力電流の差分モード成分である差分モード電流Idmを生成するものである。
パラメータ演算部46は、コモンモード電圧Ecm、コモンモード電流Icm、差分モード電圧Edm、および差分モード電流Idmに基づいて、以下の式EQ6を用いて、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを生成するものである。
このように、パラメータ演算部46は、関数maxを用いて、差分モードパラメータXdmを求める。これにより、DC/ACインバータ20では、例えば軽負荷状態や無負荷状態において、出力電圧の発振を抑えることができる。
なお、この例では、絶対値演算部61,65,63,66およびLPF71,75,73,76を用いて、瞬時値演算を行うことにより、コモンモード電圧Ecm、コモンモード電流Icm、差分モード電圧Edm、および差分モード電流Idmを算出したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、制御部30B(図6B)と同様に、実効値演算を行うことにより、コモンモード電圧Ecm、コモンモード電流Icm、差分モード電圧Edm、および差分モード電流Idmを算出してもよい。
図6Dは、制御部30の他の例である制御部30Dにおける、中性点の電圧制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30Dは、絶対値演算部61,63と、LPF71,73と、パラメータ演算部47とを有している。パラメータ演算部47は、コモンモード電圧Ecmおよび差分モード電圧Edmに基づいて、以下の式EQ7を用いて、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを生成するものである。
なお、この例では、絶対値演算部61,63およびLPF71,73を用いて、瞬時値演算を行うことにより、コモンモード電圧Ecmおよび差分モード電圧Edmを算出したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、制御部30B(図6B)と同様に、実効値演算を行うことにより、コモンモード電圧Ecmおよび差分モード電圧Edm、を算出してもよい。
図6Eは、制御部30の他の例である制御部30Eにおける、中性点の電圧制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30Eは、絶対値演算部62,64と、LPF72,74と、パラメータ演算部48とを有している。パラメータ演算部48は、コモンモード負荷電流Ildcmおよび差分モード負荷電流Ilddmに基づいて、以下の式EQ8を用いて、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを生成するものである。
ここで、Iratedは、定格出力電流である。xは、例えば“0.1”に設定されるパラメータである。このように、パラメータ演算部48は、関数maxを用いて、差分モードパラメータXdmを求める。これにより、DC/ACインバータ20では、例えば軽負荷状態や無負荷状態において、出力電圧の発振を抑えることができる。
なお、この例では、絶対値演算部62,64およびLPF72,74を用いて、瞬時値演算を行うことにより、コモンモード負荷電流Ildcmおよび差分モード負荷電流Ilddmを算出したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、制御部30B(図6B)と同様に、実効値演算を行うことにより、コモンモード負荷電流Ildcmおよび差分モード負荷電流Ilddmを算出してもよい。
図6Fは、制御部30の他の例である制御部30Fにおける、中性点の電圧制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30Fは、絶対値演算部65,66と、LPF75,76と、パラメータ演算部49とを有している。パラメータ演算部49は、コモンモード電流Icmおよび差分モード電流Idmに基づいて、以下の式EQ9を用いて、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを生成するものである。
このように、パラメータ演算部49は、関数maxを用いて、差分モードパラメータXdmを求める。これにより、DC/ACインバータ20では、例えば軽負荷状態や無負荷状態において、出力電圧の発振を抑えることができる。
なお、この例では、絶対値演算部65,66およびLPF75,76を用いて、瞬時値演算を行うことにより、コモンモード電流Icmおよび差分モード電流Idmを算出したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、制御部30B(図6B)と同様に、実効値演算を行うことにより、コモンモード電流Icmおよび差分モード電流Idmを算出してもよい。
制御部30は、例えば、周期Ts(例えば50μsec.(=1/20kHz))ごとに、電圧e_uo,e_wo、直流バス電圧Vdc、およびコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいてデューティ比d_oを求め、ゲート信号生成部52は、このデューティ比d_oに応じたゲート信号S5,S6を生成する。電力変換装置1では、このようにして負帰還がかかるように、中性点電圧についてのループ制御が行われる。このループ制御により、電力変換装置1では、中性点電圧が、中性点における電圧バランスを保つように制御されるようになっている。
図7A,7Bは、中性点の電圧制御の一例を表すものであり、図7Aは、U相負荷とW相負荷がバランスしている場合(平衡負荷状態)を示し、図7Bは、U相負荷とW相負荷がアンバランスである場合(不平衡負荷状態)を示す。図7A,7Bにおいて、(A)は電圧e_uoの波形を示し、(B)は電圧e_woの波形を示し、(C)は中性線OLにおける中性点電圧e_oの波形を示す。U相負荷とW相負荷がバランスしている場合には、図7Aに示したように、中性点電圧e_oは、直流電圧に近づく。また、U相負荷とW相負荷がアンバランスである場合には、図7Bに示したように、中性点電圧e_oは、中性点における電圧バランスを保つように交流の電圧になる。このようにして、制御部30は、中性点電圧を制御するようになっている。
また、制御部30は、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいて、式EQ5を用いて、ゲインファクタKoを変化させることにより、中性点電圧についてのループ制御において、ループゲインを変化させる。これにより、電力変換装置1は、例えば、U相負荷(例えば図1におけるインピーダンスZ1)とW相負荷(例えば図1におけるインピーダンスZ2)とが互いにバランスしている場合(平衡負荷状態)では、ゲインファクタKoを小さくすることにより、ループゲインを低くすることができる。これにより、電力変換装置1では、制御動作の安定性を高めることができる。また、電力変換装置1では、U相負荷とW相負荷とが互いにアンバランスである場合(不平衡負荷状態)では、ゲインファクタKoを大きくすることにより、ループゲインを高くすることができる。これにより、電力変換装置1では、後述するように、電圧e_uoの実効値Euormsと、電圧e_woの実効値Ewormsとの差を小さくすることができる。その結果、電力変換装置1では、負荷状態が平衡負荷状態から不平衡負荷状態に急に変化した場合でも、制御動作の安定性を高めつつ、交流出力電圧(電圧e_uo,e_wo)の変動を抑制することができるようになっている。
ここで、スイッチング素子SW1は、本開示における「第1のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子SW2は、本開示における「第2のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子SW3は、本開示における「第3のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子SW4は、本開示における「第4のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子SW5は、本開示における「第5のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子SW6は、本開示における「第6のスイッチング素子」の一具体例に対応する。高電圧線HLは、本開示における「第1の電圧線」の一具体例に対応し、低電圧線LLは、本開示における「第2の電圧線」の一具体例に対応する。ノードN1は、本開示における「第1のノード」の一具体例に対応し、ノードN2は、本開示における「第2のノード」の一具体例に対応し、ノードN3は、本開示における「第3のノード」の一具体例に対応する。端子T31は、本開示における「第1の出力端子」の一具体例に対応し、端子T32は、本開示における「第2の出力端子」の一具体例に対応し、端子T33は、本開示における「第3の出力端子」の一具体例に対応する。ローパスフィルタ29Uは、本開示における「第1のローパスフィルタ」の一具体例に対応し、ローパスフィルタ29Wは、本開示における「第2のローパスフィルタ」の一具体例に対応する。容量素子25Uは、本開示における「第1の容量素子」の一具体例に対応し、容量素子25Wは、本開示における「第2の容量素子」の一具体例に対応する。制御部30は、本開示における「制御部」の一具体例に対応する。
電圧e_uoは、本開示における「第1の電圧」の一具体例に対応し、電圧e_woは、本開示における「第2の電圧」の一具体例に対応する。電流i_inv1は、本開示における「第1の電流」の一具体例に対応し、電流i_inv2は、本開示における「第2の電流」の一具体例に対応する。推定負荷電流i_ld1は、本開示における「第1の負荷電流」の一具体例に対応し、推定負荷電流i_ld2は、本開示における「第2の負荷電流」の一具体例に対応する。
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電力変換装置1の動作および作用について説明する。
(全体動作概要)
まず、図1,2を参照して、電力変換装置1の全体動作概要を説明する。
系統連系運転モードM1では、制御部30は、図2に示したように、スイッチSgridu,Sgridwをオン状態にするとともに、スイッチSstdu,Sstdwをオフ状態にする。これにより、商用電源GRIDが電力変換装置1に接続され、負荷装置LOADが電力変換装置1から切り離される。DC/ACインバータ20は、商用電源GRIDから供給された交流電圧に基づいて、直流バス電圧Vdcが所定の電圧(例えば400V)になるように、電圧一定制御を行う。具体的には、制御部30は、例えば、電圧検出部19から供給された系統電圧e_gridについての情報に基づいてゲート信号S1〜S4を生成する。これにより、スイッチング素子SW1〜SW4は、このゲート信号S1〜S4に基づいて、商用電源GRIDから供給された交流電圧と同期してオンオフする。スイッチング素子SW5,SW6は、例えばオフ状態を維持する。これにより、DC/ACインバータ20は、直流バス電圧Vdcが所定の電圧になるように、電圧一定制御を行う。双方向DC/DCコンバータ10は、バッテリBTに対する充放電電力制御を行う。
自立運転モードM2では、制御部30は、図2に示したように、スイッチSstdu,Sstdwをオン状態にするとともに、スイッチSgridu,Sgridwをオフ状態にする。これにより、負荷装置LOADが電力変換装置1に接続され、商用電源GRIDが電力変換装置1から切り離される。双方向DC/DCコンバータ10は、バッテリBTにおけるバッテリ電圧Vbtに基づいて、直流バス電圧Vdcが所定の電圧(例えば400V)になるように、電圧一定制御を行う。DC/ACインバータ20は、例えば、交流出力電圧e_uwの電圧振幅が所定の振幅になるように、電圧振幅一定制御を行う。具体的には、制御部30は、電圧検出部21から供給された直流バス電圧Vdcについての情報、電流検出部23U,23Wから供給された電流i_inv1,i_inv2についての情報、電圧検出部26U,26Wから供給された電圧e_uo,e_woについての情報に基づいてゲート信号S1〜S6を生成する。これにより、スイッチング素子SW1〜SW6は、このゲート信号S1〜S6に基づいてオンオフする。制御部30は、例えば、スイッチング素子SW1〜SW4をオンオフすることにより、交流出力電圧の電圧振幅が所定の振幅になるように、電圧振幅一定制御を行う。また、制御部30は、スイッチング素子SW5,SW6をオンオフすることにより、中性点(中性線OL)における電圧バランスを保つように中性点電圧e_oを制御する。
(詳細動作)
自立運転モードM2では、制御部30は、図3に示したように、例えば、周期Ts(例えば50μsec.(=1/20kHz))ごとに、電圧e_uo,e_wo、電流i_inv1,i_inv2、および直流バス電圧Vdcに基づいてデューティ比d_invを求め、ゲート信号生成部40は、このデューティ比d_invに応じたゲート信号S1〜S4を生成する。このループ制御により、電力変換装置1では、交流出力電圧e_uwが、交流出力電圧e_uwの指令値e_uw*とほぼ同じになるように制御され、交流出力電流i_invが、交流出力電流i_invの指令値i_inv*とほぼ同じになるように制御される。
また、制御部30は、図6A〜6Fに示したように、例えば、周期Ts(例えば50μsec.(=1/20kHz))ごとに、電圧e_uo,e_wo、直流バス電圧Vdc、およびコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいてデューティ比d_oを求め、ゲート信号生成部52は、このデューティ比d_oに応じたゲート信号S5,S6を生成する。このループ制御により、電力変換装置1では、中性点電圧e_oが、中性点(中性線OL)における電圧バランスを保つように制御される。
以下に、いくつかのシミュレーション結果を用いて、電力変換装置1の動作および作用について説明する。以下のシミュレーションでは、制御部30A〜30Fのうちの制御部30A(図6A)の構成を用いた。また、図8に示したように、シミュレーション条件を設定した。
(容量素子25U,25Wに流れる電流の推定について)
電力変換装置1では、制御部30の電流推定部34が、電圧e_uo,e_woに基づいて、式EQ2を示したように、容量素子25Uに流れる電流(推定電流i_c1)を推定するとともに、容量素子25Wに流れる電流(推定電流i_c2)を推定した。そして、減算部35が、電流i_inv1および推定電流i_c1に基づいて、式EQ1の第4式に示したように、推定負荷電流i_ld1を求め、減算部36が、電流i_inv2および推定電流i_c2に基づいて、式EQ1の第5式に示したように、推定負荷電流i_ld2を求めた。そして、制御部30は、図3,6Aに示したように、これらの推定負荷電流i_ld1,i_ld2に基づいて、スイッチング素子SW1〜SW6の動作を制御するようにした。このように、電力変換装置1では、この推定電流i_c1,i_c2を外乱成分として電流制御ループに加えるようにしたので、電流制御の応答性を向上することができる。
また、電力変換装置1では、容量素子25U,25Wに流れる電流を推定することにより、推定負荷電流i_ld1,i_ld2を求めるようにしたので、負荷電流を検出する電流検出部を省くことができるので、装置を小型にすることができる。
また、電力変換装置1では、式EQ2を用いて、推定電流i_c1,i_c2を求めるようにしたので、ノイズを抑えることができる。以下に、シミュレーション結果を用いて説明する。
図9は、推定電流i_c1の波形のシミュレーション結果例を表すものである。式EQ2に示したように、電流推定部34は、周期的関数であるサイン関数を用いて、推定電流i_c1を求めている。このサイン関数の振幅は、電圧e_uoの実効値Euormsを含んでいる。この実効値Euormsは、式EQ3に示したように、電圧e_uoにより求められる。推定電流i_c2についても同様である。このような周期的な関数を用いて推定電流i_c1,i_c2を求めることにより、電力変換装置1では、以下に説明する参考例Rに比べて、推定電流i_c1,i_c2にノイズが生じるおそれを低減することができる。
参考例Rに係る電力変換装置1Rは、推定電流i_c1,i_c2の求め方が本実施の形態の場合と異なるものである。この参考例Rは、特許文献1に記載の技術に対応するものである。電力変換装置1Rは、以下の式EQ10を用いて推定電流i_c1,i_c2を求める。
この式EQ10は、ラプラス変換の手法により表現された式であり、第1式は、電圧e_uoを微分する演算を含んでおり、第2式は、電圧e_woを微分する演算を含んでいる。よって、電圧e_uo,e_woに歪みやノイズが含まれる場合には、推定電流i_c1,i_c2には、この電圧e_uo,e_woの微分に起因するノイズが生じてしまう。
図10は、参考例Rに係る電力変換装置1Rにおける推定電流i_c1のシミュレーション結果例を表すものである。このように、参考例に係る電力変換装置1Rでは、推定電流i_c1にノイズが生じてしまう。推定電流i_c2についても同様である。
一方、本実施の形態に係る電力変換装置1では、所定の周期的関数であるサイン関数を用いて、容量素子25U,25Wに流れる電流を推定するようにしたので、微分演算を行わないので、図9に示したように、推定電流i_c1,i_c2にノイズが生じるおそれを低減することができる。その結果、電力変換装置1では、例えば、交流出力電圧e_uwや交流出力電流i_invにノイズが生じるおそれを低減することができる。
(負荷状態が急に変化した場合の動作について)
電力変換装置1では、制御部30が、ゲインファクタKoを変化させることにより、中性点電圧についてのループ制御において、ループゲインを変化させるようにしたので、例えば、負荷状態が平衡負荷状態から不平衡負荷状態に急に変化した場合でも、制御動作の安定性を高めつつ、交流出力電圧(電圧e_uo,e_wo)の変動を抑制することができる。
まず、U相負荷とW相負荷とが互いにアンバランスである場合(不平衡負荷状態)における、電圧e_uoの実効値Euormsと、電圧e_woの実効値Ewormsとの差ΔErmsについて説明する。ここで、実効値Euorms,Ewormsの差ΔErmsは、以下の式EQ11に示すように、実効値Euormsと実効値Ewormsとの差の絶対値である。
図11は、ゲインファクタKoと実効値の差ΔErmsとの関係を示すシミュレーション結果例を表すものである。このシミュレーションでは、U相負荷とW相負荷とを互いにアンバランスにしている。電力変換装置1では、制御部30は、式EQ5に示したように、ゲインファクタKoを値Kminから値Kmax(〜Kmax+Kmin)までの範囲で変化させることができる。例えば、ゲインファクタKoを値Kmax(この例では2.0)に固定設定した場合には、実効値の差ΔErmsは10Vである。また、例えば、ゲインファクタKoを値Kmin(この例では0.1)に固定設定した場合には、実効値の差ΔErmsは26.7Vである。また、例えば、ゲインファクタKoを“0.5×Kmax+Kmin”(この例では0.1)に固定設定した場合には、実効値の差ΔErmsは14.4Vである。ここで“0.5”は、式EQ5において“Xcm/Xdm=0.5”を模擬していることを示している。一方、ゲイン演算部50が、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいて、式EQ5を用いてゲインファクタKoを求めるように動作する場合には、実効値の差ΔErmsは10Vになる。つまり、この例では、U相負荷とW相負荷とを互いにアンバランスにしているので、式EQ5において“Xcm/Xdm”が“1”に近づくことにより、ゲインファクタKoを値Kmaxに近い値にすることができ、その結果、実効値の差ΔErmsを10Vに抑えることができる。
次に、負荷状態が平衡負荷状態から不平衡負荷状態に急に変化した場合における電力変換装置1の動作について説明する。
図12は、負荷状態が急に変化した場合における、電力変換装置1のシミュレーション結果を表すものであり、(A)は電圧e_uo,e_woの波形を示し、(B)は推定負荷電流i_ld1,i_ld2の波形を示し、(C)は電圧e_uoの実効値Euormsおよび電圧e_woの実効値Ewormsの波形を示す。
この例では、U相負荷(例えば図1におけるインピーダンスZ1)およびW相負荷(例えば図1におけるインピーダンスZ2)は、線形負荷である。そして、この例では、タイミングt1において、U相負荷およびW相負荷のうちのW相負荷が開放状態になることにより、負荷状態が平衡負荷状態から不平衡負荷状態に急に変化する。これにより、このタイミングt1以降において、推定負荷電流i_ld2が略“0”(ゼロ)になる(図12(B))。これに伴い、W相の交流電圧に係る電圧e_woの振幅が増大するとともに、U相の交流電圧に係る電圧e_uoの振幅が減少する(図12(A))。よって、電圧e_uoの実効値Euormsと電圧e_woの実効値Ewormsとの差ΔErmsが大きくなる(図12(C))。その後、ゲインファクタKoが徐々に大きくなることにより、この実効値Euorms,Ewormsの差ΔErmsは徐々に小さくなっていく(図12(C))。
このように、電力変換装置1では、ゲインファクタKoを変化させることにより、中性点電圧についてのループ制御において、ループゲインを変化させるようにしたので、以下に説明する参考例Sの場合と比べて、制御動作の安定性を高めつつ、交流出力電圧(電圧e_uo,e_wo)の変動を抑制することができる。
参考例Sに係る電力変換装置1Sは、ゲインファクタKoを値Kmaxに固定設定したものである。
図13は、負荷状態が急に変化した場合における、電力変換装置1Sのシミュレーション結果を表すものであり、(A)は電圧e_uo,e_woの波形を示し、(B)は推定負荷電流i_ld1,i_ld2の波形を示し、(C)は電圧e_uoの実効値Euormsおよび電圧e_woの実効値Ewormsの波形を示す。
この例では、タイミングt2において、U相負荷およびW相負荷のうちのW相負荷が開放状態になる。これにより、このタイミングt2以降において、推定負荷電流i_ld2が略“0”(ゼロ)になる(図13(B))。これに伴い、W相の交流電圧に係る電圧e_woの振幅が増大するとともに、U相の交流電圧に係る電圧e_uoの振幅が減少する(図13(A))。電力変換装置1Sでは、このタイミングt2において発振が生じ、電圧e_uo,e_woおよび推定負荷電流i_ld1の波形が乱れている(図13(A),(B))。このように、電力変換装置1Sでは、ゲインファクタKoを値Kmaxに固定設定したので、ループゲインが高いので、制御動作の安定性が低下してしまうおそれがある。また、制御動作の安定性を高めるべく、ゲインファクタKoを低い値に設定した場合には、実効値Euorms,Ewormsの差ΔErmsが大きくなってしまう。この場合には、負荷状態が平衡負荷状態である場合と、不平衡負荷状態である場合とで、実効値Euorms,Ewormsの差ΔErmsが大きく変化するので、交流出力電圧(電圧e_uo,e_wo)が大きく変動してしまうおそれがある。
一方、本実施の形態に係る電力変換装置1では、ゲインファクタKoを変化させることにより、中性点電圧についてのループ制御において、ループゲインを変化させるようにした。これにより、例えば、U相負荷とW相負荷とが互いにバランスしている場合(平衡負荷状態)では、ゲインファクタKoを小さくすることにより、ループゲインを低くすることができる。これにより、電力変換装置1では、制御動作の安定性を高めることができる。また、電力変換装置1では、U相負荷とW相負荷とが互いにアンバランスである場合(不平衡負荷状態)では、ゲインファクタKoを大きくすることにより、ループゲインを高くすることができる。これにより、電力変換装置1では、実効値の差ΔErmsを小さくすることができる。その結果、電力変換装置1では、負荷状態が急に変化した場合でも、制御動作の安定性を高めつつ、交流出力電圧(電圧e_uo,e_wo)の変動を抑制することができる。
また、電力変換装置1では、制御部30は、検出値に基づいてコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを求め、これらのコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいてゲインファクタKoを求めるようにした。具体的には、例えば制御部30A(図6A)は、絶対値演算部61〜64およびローパスフィルタ71〜74が、出力電圧のコモンモード成分であるコモンモード電圧Ecm、推定負荷電流のコモンモード成分であるコモンモード負荷電流Ildcm、出力電圧の差分モード成分である差分モード電圧Edm、および推定負荷電流の差分モード成分である差分モード負荷電流Ilddmを求め、パラメータ演算部43が、これらのコモンモード電圧Ecm、コモンモード負荷電流Ildcm、差分モード電圧Edm、および差分モード負荷電流Ilddmに基づいてコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを求め、ゲイン演算部50が、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいて、ゲインファクタKoを求めるようにした。このように、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを用いることにより、電力変換装置1では、例えば負荷状態が平衡負荷状態であるかどうかについての情報を得ることができ、例えば負荷状態が平衡負荷状態である場合にはゲインファクタKoを低くし、負荷状態が不平衡負荷状態である場合にはゲインファクタKoを高くすることができる。このように、電力変換装置1では、負荷状態に応じてゲインファクタKoを求めることができるので、例えば、負荷状態が平衡負荷状態から不平衡負荷状態に急に変化した場合でも、制御動作の安定性を高めつつ、交流出力電圧(電圧e_uo,e_wo)の変動を抑制することができる。
図12の例では、U相負荷およびW相負荷を線形負荷にした。次に、U相負荷およびW相負荷を半波整流負荷にした場合の動作について説明する。
図14は、半波整流負荷に電力を供給する場合における、電力変換装置1のシミュレーション結果を表すものであり、(A)は電圧e_uo,e_woの波形を示し、(B)は推定負荷電流i_ld1,i_ld2の波形を示し、(C)は電圧e_uoの実効値Euormsおよび電圧e_woの実効値Ewormsの波形を示し、(D)はゲインファクタKoを示す。この例では、U相負荷およびW相負荷を半波整流負荷にしているので、電流は一方向にのみ流れるので、推定負荷電流i_ld1,i_ld2の波形は、半波波形である(図14(B))。
この例では、タイミングt3において、U相負荷およびW相負荷のうちのW相負荷が開放状態になる。これにより、このタイミングt3以降において、推定負荷電流i_ld2が略“0”(ゼロ)になる(図14(B))。これに伴い、W相の交流電圧に係る電圧e_woの振幅が増大するとともに、U相の交流電圧に係る電圧e_uoの振幅が減少し、電圧e_uoの実効値Euormsと電圧e_woの実効値Ewormsとの差ΔErmsが大きくなる(図14(A),(C))。その後、ゲインファクタKoが徐々に大きくなることにより、この実効値Euorms,Ewormsの差ΔErmsは徐々に小さくなっていく(図14(C),(D))。
その後、タイミングt4において、W相負荷が接続状態になる。これにより、このタイミングt4以降において、推定負荷電流i_ld2の波形が半波波形に戻る(図14(B))。これに伴い、電圧e_uoの実効値Euormsと電圧e_woの実効値Ewormsとの差ΔErmsが小さくなる(図14(A),(C))。その後、ゲインファクタKoが徐々に小さくなっていく(図14(D))。
この例では、負荷を半波整流負荷にしたが、これに限定されるものではなく、例えば、非線形負荷(整流負荷)であっても同様に動作することができる。
電力変換装置1では、例えば制御部30A(図6A)の絶対値演算部61〜64およびローパスフィルタ71〜74が、コモンモード電圧Ecm、コモンモード負荷電流Ildcm、差分モード電圧Edm、および差分モード負荷電流Ilddmを求め、パラメータ演算部43が、これらのコモンモード電圧Ecm、コモンモード負荷電流Ildcm、差分モード電圧Edm、および差分モード負荷電流Ilddmに基づいてコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを求めるようにした。これにより、電力変換装置1では、例えば、電流が負である部分について、その絶対値に基づいて演算を行うことができるので、線形負荷、半波整流負荷、非線形負荷(整流負荷)のような様々な種類の負荷が接続された場合でも、コモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmを求めることができ、このコモンモードパラメータXcmおよび差分モードパラメータXdmに基づいて、負荷状態に応じたゲインファクタKoを求めることができる。その結果、電力変換装置1では、例えば、負荷状態が平衡負荷状態から不平衡負荷状態に急に変化した場合でも、制御動作の安定性を高めつつ、交流出力電圧(電圧e_uo,e_wo)の変動を抑制することができる。
また、電力変換装置1では、ノードN1から端子T21,T31への経路に、ACリアクトル24Uを設けるとともに、ノードN2から端子T22,T32への経路に、ACリアクトル24Wを設け、一方、スイッチング素子SW5のエミッタおよびスイッチング素子SW6のコレクタの接続点(ノードN3)から端子T33への経路にACリアクトルを設けないようにした。すなわち、スイッチング素子SW5のエミッタおよびスイッチング素子SW6のコレクタの接続点(ノードN3)と、端子T33とを、ACリアクトルを介さずに直接的に接続するようにした。これにより、電力変換装置1では、ACリアクトルを省くことができるので、装置を小型にすることができる。
[効果]
以上のように本実施の形態では、中性点電圧についてのループ制御において、ループゲインを変化させるようにしたので、負荷状態が急に変化した場合でも、制御動作の安定性を高めつつ、交流出力電圧の変動を抑制することができる。
本実施の形態では、周期的関数であるサイン関数を用いて、容量素子に流れる電流を推定したので、微分演算を行わないので、ノイズが生じるおそれを低減することができる。
本実施の形態では、スイッチング素子SW5のエミッタおよびスイッチング素子SW6のコレクタの接続点から端子T33への経路にACリアクトルを設けないようにしたので、装置を小型にすることができる。
[変形例1]
上記実施の形態では、スイッチング素子SW5のエミッタおよびスイッチング素子SW6のコレクタの接続点(ノードN3)から端子T33への経路にACリアクトルを設けないようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、ノードN1から端子T21,T31への経路や、ノードN2から端子T22,T32への経路と同様に、スイッチング素子SW5のエミッタおよびスイッチング素子SW6のコレクタの接続点(ノードN3)から端子T33への経路にもACリアクトルを設けてもよい。この場合、ノードN3および端子T33は、このACリアクトルを介して間接的に接続される。
[変形例2]
上記実施の形態では、図1に示したように、電圧e_uo,e_woを検出する電圧検出部26U,26Wを設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、さらに交流出力電圧e_uwを直接検出する電圧検出部を設けてもよい。以下に、本変形例に係る電力変換装置1Gについて詳細に説明する。
図15は、電力変換装置1Gの一構成例を表すものである。電力変換装置1Gは、DC/ACインバータ20Gを備えている。DC/ACインバータ20Gは、電圧検出部26Gと、制御部30Gとを有している。電圧検出部26Gは、交流出力電圧e_uwを検出するものである。電圧検出部26Gの一端はU相電圧線ULに接続され、他端はW相電圧線WLに接続されている。電圧検出部26Gは、W相電圧線WLにおける電圧からみたU相電圧線ULにおける電圧を電圧e_uwとして検出する。そして、電圧検出部26Gは、検出した電圧e_uwについての情報を制御部30Gに供給するようになっている。制御部30Gは、電圧検出部21から供給された直流バス電圧Vdcについての情報、電流検出部23U,23Wから供給された電流i_inv1,i_inv2についての情報、電圧検出部26Uから供給された電圧e_uoについての情報、電圧検出部26Wから供給された電圧e_woについての情報、電圧検出部26Gから供給された電圧e_uwについての情報、および電圧検出部19から供給された系統電圧e_gridについての情報に基づいて、スイッチング素子SW1〜SW6に供給するゲート信号S1〜S6を生成するものである。
図16は、制御部30Gにおける、電圧振幅一定制御に係る回路の一構成例を表すものである。制御部30Gは、上記実施の形態に係る制御部30(図3)から減算部31を削除したものである。電圧制御部38には、電圧検出部26Gにより検出された交流出力電圧e_uwが供給されるようになっている。すなわち、上記実施の形態に係る電力変換装置1では、電圧e_uo,e_woに基づいて、式EQ1の第1式を用いることにより、交流出力電圧e_uwを求めたが、本変形例に係る電力変換装置1Gでは、交流出力電圧e_uwを、電圧検出部26Gにより直接検出している。
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、本技術を、系統連系運転モードM1および自立運転モードM2を含む2つの運転モードで動作可能な電力変換装置1に適用したが、これに限定されるものではない。これに代えて、系統連系運転を行う機能を有さずに、単相3線を用いて負荷装置に電力を供給する電力変換装置に適用してもよい。
また、例えば、図8に示したシミュレーション条件に記載の各パラメータの設定値は、一例であり、適宜変更してもよい。