JP6833605B2 - 表面汚染密度分布算出装置、方法及びプログラム - Google Patents
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Description
しかし、汚染範囲が広い場合は、除染や遮蔽の作業を行うこと自体が、作業員の被ばくを増加させる原因となる。そこで、適切に評価された表面汚染密度分布に基づき作業計画を立案することにより、除染や遮蔽の作業を効率化し、作業員の被ばく低減を図る。
しかし、この管理エリアの全域に、検査装置を走査するのには時間がかかるため、比較的容易に測定することができる空間線量率に基づいて表面汚染密度分布を算出する技術が提案されている。
また、上述と同様にして、高さ、水平方向が異なる複数の空間線量率の測定データを入力情報とし、それらの応答関数を作成し、最尤法で表面汚染濃度を算出する技術が知られている。
一方、構造物等の情報を踏まえて応答関数を作成することにより、表面汚染密度分布の精度を向上させることは可能である。しかし、従来技術において、空間線量率と汚染濃度との関係性を表す応答関数は、その作成時間と評価精度との間に、二律背反の関係が存在した。このため、環境条件が多岐にわたる対象の各々に対し十分な精度を有する応答関数を個別に決定することは、表面汚染密度分布の測定効率の観点から現実的でない課題がある。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る表面汚染密度分布算出装置10は、対象エリア31内(図2)の複数位置における空間線量率を計測し作成した第1空間線量率分布データD1が保持される第1メモリ領域11と、対象エリア31に配置される第1構造物32を第1空間線量率分布データD1と共通の座標系で設定した第1構造物データD2が保持される第2メモリ領域12と、モデルエリア35(図3)の第2空間線量率分布データS1、モデルエリア35の第2構造物データS2及びモデルエリア35の第2表面汚染密度分布データS3の関係を示す演算式Tが保持される第3メモリ領域13と、この演算式Tに第1空間線量率分布データD1及び第1構造物データD2を入力し対象エリア31の第1表面汚染密度分布データD3を出力させる第1演算部21と、を備えている。
このようにして計測された第1空間線量率分布データD1は、第1メモリ領域11に保持される。
この第1構造物データD2には、天井や壁等といったガンマ線と相互作用する構造物の形状情報および位置情報を含むものであり、さらに構造物の密度、材質等といったガンマ線との相互作用(透過、散乱など)に影響を及ぼす情報も含まれる。
このために、計測した空間線量率から、換算により対象エリア31に存在する放射性物質33の汚染濃度である表面汚染密度(Bq/m2)を求める場合は、上述した条件を考慮する必要がある。
これら三つのデータS1,S2,S3は、実測データに基づく場合の他に、シミュレーション解析に基づいて得ることができる。一般に普及しているシミュレーション解析の一例であるモンテカルロ解析は、透過や遮蔽といった物質間の相互作用を考慮することにより、第2構造物データS2を仮想的に配置したモデルエリア35において、仮想的に設定した第2表面汚染密度分布データS3から放出されるガンマ線による第2空間線量率分布データS1を、高精度で計算することが可能である。
このような、機械学習としては、重回帰式分析で相関式を算出しても、ディープラーニングを用いてもよく、連続値で出力するだけでなく、汚染濃度をレベルに応じて分類するものでもよい。
このようにして、モデルエリア35の第2空間線量率分布データS1、第2構造物データS2及び第2表面汚染密度分布データS3の関係を示す演算式Tが、複数のモデルエリア35(35a,35b,35c…)から機械学習により作成される。そしてこの演算式Tは、第3メモリ領域13に保持される。
また、第2表面汚染密度分布データS3を構成する放射性物質の核種として、例えばCs137、Cs134、Co60のようにエネルギーや放出率が異なる核種を設定することもできる。
これにより、ガンマ線が飛程距離とともに広がり強度が減衰していく作用に加え、汚染源の大きさや、構造物による散乱や透過の作用を反映させた演算式Tを導くことが可能となる。この演算式Tは、特定のエリアや構造物に限定されることなく一般化されたものとなる。
このために、従来のような、対象エリア31に配置されている構造物を考慮して、空間線量率分布データと表面汚染密度分布データとの応答関数を正確に求めるといった必要性がない。これにより、例えば複雑な構造物が存在する管理エリア等であっても、対象エリア31に配置されている構造物におけるガンマ線の散乱や透過といった複雑な相互作用を考慮した表面汚染密度分布データを、時間を要することなく瞬時に導くことができる。
次に図1を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
第2実施形態に係る表面汚染密度分布算出装置の第3メモリ領域13には、第1空間線量率分布データD1及び第1構造物データD2の少なくとも一方に基づいて選択される複数の演算式T(T1,T2,T3…)が保持されており、第1演算部21は対象エリア31を分割したメッシュ毎に演算式Tを複数の中から選択し実行する。
そこで、演算式Tを作成するためのデータ(第2空間線量率分布データS1、第2構造物データS2、第2表面汚染密度分布データS3)を条件に応じて複数のグループに分類する。そしてこの分類されたグループ毎に演算式Tを算出する。
このようなグループの分類方法として例えば、第1空間線量率分布データD1の線量データの平均値と最大値の相関を評価する方法等が挙げられる。
このように注目位置37(図3)の周囲に汚染が少ない場合、最大値と平均値の比が大きくならず、おおむね線形の相関が得られる。一方で、注目位置37の近傍に汚染がある場合、汚染箇所に近い空間線量率は大きく変化するため、最大値と平均値の比が大きくなる。
このような関係を利用して、空間線量率分布の最大値/平均値の値に対し設けた閾値に応じて、モデルエリア35おメッシュをいくつかのグループに分類し、それぞれのグループ毎に演算式T(T1,T2,T3…)を作成する。これにより汚染の評価精度を向上させることができる。
汚染のある位置の近傍においては、空間線量率の変化率が大きく計測される。そのため、空間線量率の変化率として、位置による空間線量率の1次微分、2次微分の値をグループ分類の閾値に用いることで、表面汚染密度の評価精度を向上させることができる。
このようなモデルエリア35のメッシュのグループへの分類は、構造物との距離による分類、図4に示すような空間線量率分布による分類と組み合わせることができ、そのようにして分類したグループ毎に演算式Tを算出することも可能である。さらに、核種データに基づく分類を組み合わせることも可能である。
次に図6を参照して本発明における第3実施形態について説明する。なお、図6において図1と共通の構成又は機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第3実施形態に係る表面汚染密度分布算出装置10は、さらに、演算式Tに第1構造物データD2及び第1表面汚染密度分布データD3を入力し仮想的空間線量率分布データD4を出力させる第2演算部22と、この仮想的空間線量率分布データD4と第1空間線量率分布データD1との差分値D5を計算する差分計算部25と、この差分値D5に基づいて演算式Tを修正する修正部26と、を備えている。
そこで、第2演算部22において、第1構造物データD2と第1演算部21の出力である第1表面汚染密度分布データD3とを入力とし、仮想的空間線量率分布データD4を出力する逆演算を行う。
不適合と判定された場合は、修正部26において、差分値D5に基づき演算式Tを修正した修正演算式T´が新たに適用される。
なお、この修正演算式T´は、別の演算式Tが再選定される場合や、機械学習部15で
再度学習を行い新たな演算式Tを作成していく場合もある。
対象エリア31内の複数位置における空間線量率を計測する(S11)。そして、対象エリア31の第1空間線量率分布データD1を作成し第1メモリ領域11に保持する(S12)。次に対象エリア31に配置される第1構造物32を第1空間線量率分布データD1と共通の座標系で設定した第1構造物データD2を第2メモリ領域12に保持する(S13)。
機械学習により、複数個(n個)のモデルエリア35の第2空間線量率分布データS1、第2構造物データS2及び第2表面汚染密度分布データS3の関係を示す演算式Tを作成し、第3メモリ領域13に保持する(S17)。
次に、仮想的空間線量率分布データD4と第1空間線量率分布データD1との差分値D5を計算し(S20)、この差分値D5に基づいて演算式Tの適合性を判断する(S21)。ここで不適合の判断がなされれば、演算式Tを修正して、再度(S18)の演算を試行する。そして、適合の判断がなされれば、(S18)で直近に演算された第1表面汚染密度分布データD3がそのまま採用されて、フローは終了する(END)。
例えば上述の説明において、構造物としての壁に周囲を囲まれたエリアが放射能汚染されている場合を想定し、その表面汚染密度分布を導く実施形態を示したが、本発明の適用はこのような場合に限定されるものではなく、あらゆる構造物の配置形態に適用することが可能である。
また、表面汚染密度分布算出装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、表面汚染密度分布算出プログラムにより動作させることが可能である。
また、表面汚染密度分布算出装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
Claims (10)
- 対象エリア内の複数位置における空間線量率を計測し作成した第1空間線量率分布データが保持される第1メモリ領域と、
前記対象エリアに配置される第1構造物を前記第1空間線量率分布データと共通の座標系で設定した第1構造物データが保持される第2メモリ領域と、
モデルエリアの第2空間線量率分布データ、前記モデルエリアの第2構造物データ及び前記モデルエリアの第2表面汚染密度分布データの関係を示す演算式が保持される第3メモリ領域と、
前記演算式に、前記第1空間線量率分布データ及び前記第1構造物データを入力し、前記対象エリアの第1表面汚染密度分布データを出力させる第1演算部と、を備えることを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 請求項1に記載の表面汚染密度分布算出装置において、
前記第3メモリ領域には、前記第1空間線量率分布データ及び第1構造物データの少なくとも一方に基づいて選択される複数の前記演算式が保持されており、
前記第1演算部は、前記対象エリアを分割したメッシュ毎に前記演算式を複数の中から選択し実行することを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の表面汚染密度分布算出装置において、
前記演算式に、前記第1構造物データ及び前記第1表面汚染密度分布データを入力し、仮想的空間線量率分布データを出力させる第2演算部と、
前記仮想的空間線量率分布データと前記第1空間線量率分布データとの差分値を計算する差分計算部と、
前記差分値に基づいて前記演算式を修正する修正部と、を備えることを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表面汚染密度分布算出装置において、
前記演算式は、前記第1構造物の前記対象エリアにおける距離情報をパラメータとして規定されていることを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表面汚染密度分布算出装置において、
前記演算式は、前記第1空間線量率分布データにおける平均線量値をパラメータとして規定されていることを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の表面汚染密度分布算出装置において、
前記演算式は、前記第1空間線量率分布データにおける距離情報をパラメータとして規定されていることを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の表面汚染密度分布算出装置において、
前記演算式は、前記第1空間線量率分布データにおける平均線量値と最大線量値との比をパラメータとして規定されていることを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表面汚染密度分布算出装置において、
前記演算式は、前記対象エリアに存在する放射性核種の種類をパラメータとして規定されていることを特徴とする表面汚染密度分布算出装置。 - 対象エリア内の複数位置における空間線量率を計測し作成した第1空間線量率分布データが保持されるステップと、
前記対象エリアに配置される第1構造物を前記第1空間線量率分布データと共通の座標系で設定した第1構造物データが保持されるステップと、
モデルエリアの第2空間線量率分布データ、前記モデルエリアの第2構造物データ及び前記モデルエリアの第2表面汚染密度分布データの関係を示す演算式が保持されるステップと、
前記演算式に、前記第1空間線量率分布データ及び前記第1構造物データを入力し、前記対象エリアの第1表面汚染密度分布データを出力させるステップと、を含むことを特徴とする表面汚染密度分布算出方法。 - コンピュータに、
対象エリア内の複数位置における空間線量率を計測し作成した第1空間線量率分布データを保持させるステップ、
前記対象エリアに配置される第1構造物を前記第1空間線量率分布データと共通の座標系で設定した第1構造物データを保持させるステップ、
モデルエリアの第2空間線量率分布データ、前記モデルエリアの第2構造物データ及び前記モデルエリアの第2表面汚染密度分布データの関係を示す演算式を保持させるステップ、
前記演算式に、前記第1空間線量率分布データ及び前記第1構造物データを入力し、前記対象エリアの第1表面汚染密度分布データを出力させるステップ、を実行させることを特徴とする表面汚染密度分布算出プログラム。
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