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JP6825781B2 - 剥離ナノカーボン材料の水性および有機懸濁液、その作製方法及びその使用 - Google Patents

剥離ナノカーボン材料の水性および有機懸濁液、その作製方法及びその使用 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ2014年6月12日出願、2015年2月13日出願、2015年5月13日出願の、欧州仮特許出願EP14172164、EP15155087およびEP151677536、並びに、2014年7月25日出願の、欧州特許出願EP14306204の優先権の利益を主張し、当該出願の内容全体が参照により本明細書に組込まれる。
本発明は、完全に剥離、すなわち、個別化されたナノカーボン材料の水性および有機懸濁液を調製する方法、並びに、複合物、フィルムおよび積層物を包含する、当該懸濁液の使用に関する。
本発明は、より具体的には、水性および有機ナノカーボン懸濁液(すなわち、インク組成物)、特に、完全剥離ナノカーボンの水性および有機懸濁液、並びにそのようなナノカーボン懸濁液の使用に関する。したがって、本発明は、水性および有機インクの調製およびその使用にも関する。
ナノカーボンを水性または有機懸濁液の形態で得られることに対しては、産業用途の観点から関心が大きく、より具体的にはこれらの懸濁液を所定の適用のために加工処理することに関して、関心が大きい。具体的には、ナノカーボンを所定の基材上に積層してナノカーボンフィルムを形成、または、ナノカーボン含有複合物を製造するために、そのような懸濁液が容易に用いられ得る。
以下の説明において、角括弧([])内の参照は、実施例後の引用文献の一覧を参照されたい。
カーボンは、4つの特有の結晶構造または構造群を持っていることが知られている:ダイアモンド、グラファイト、フラーレンおよびカーボンナノチューブである。
カーボンナノチューブの筒状構造は、特有の機械的、電気的または化学的特性をもたらす。そのため、カーボンナノチューブは、複合材料でよく使用される(Shaffer,M.S.P.,Windle,A.H.,“Fabrication and Characterization of Carbon Nanotube/poly(vinyl alcohol)Composites”,Adv.Mater.,11,pp 937−941(1999)[1])、hydrogen fuel cells(Ye,Y.,Ahn,C.C.,Witham,C.,Fultz,B.,Liu,J.,Rinzler,A.G.,Colbert,D.,Smith,K.A.,Smalley,R.E.,“Hydrogen Absorption And Cohesive
Energy Of Single−Walled Carbon Nanotubes”,App.Phys.Lett.,74,pp 307−2309(1999)[2];Liu,C.,Fan,Y.Y.,Liu,M.,Cong,H.T.,Cheng,H.M.,Dresselhaus.M.S.,“Hydrogen Storage
In Single−Walled Carbon Nanotubes At Room Temperature”,Science,286,pp 1127−1129(1999)[3];Kong,J.,Chapline,M.G.,Dai,H.,“
Functionalized Carbon Nanotubes For Molecular Hydrogen Sensors”,Adv.Mater.13,1384−1386(2001)[4]、supercapacitors(Aldissi,M.;Schmitz,B.;Lazaro,E.;Bhamidipati,M.;Dixon,B.,“Conducting Polymers in Ultracapacitor Applications”,56th Annu.Tech.Conf.−−Soc.Plast.Eng.,(Vol.2),pp 1197−1201(1998)[5];An,K.H.;Kim,W.S.;Park,Y.S.;Moon,J.−M.;Bae,D.J.;Lim,S.C.;Lee,Y.S.;Lee,Y.H.“Electrochemical Properties of High−Power Supercapacitors Using Single−Walled Carbon Nanotube Electrodes”,Adv.Funct.Mater.11,pp 387−392(2001)[6]、catalysis(Yu,R.,Chen,L.,Liu,Q.,Lin,J.,Tan,K.−L.,Ng,S.C.,Chan,H.S.O.,Xu,G.−Q.,Hor,T.S.A.“Platinum Deposition On Carbon Nanotubes Via Chemical Modification”,Chem,Mater.10,pp 718−722(1998)[7];(Planeix,J.M.;Coustel,N.;Coq,B.;Brotons,V.;Kumbhar,P.S.;Dutartre,R.;Geneste,P.;Bernier,P.;Ajayan,P.M.,“Application Of Carbon Nanotubes As Supports_in Heterogeneous Catalysis”,J.Am,Chem,Soc.116,pp 7935−7936(1994)[8])およびnanometric−size electronic components or systems(Tans,S.J.,Verschueren,A.R.M.,Dekker,C.,“Room−Temperature Transitor Based On A Single Carbon Nanotube”,Nature 393,pp 49−52(1998)[9];Bachtold,A.;Hadley,P.;Nakanishi,T.;Dekker,C.,“Logic Circuits With Carbon Nanotube Transistors”.Science 294 pp,1317−1320(2001)[10])。
科学界でも、グラフェン等に匹敵する特性、または、カーボンナノホーン、ナノダイアモンドおよびフラーレン等が示す価値の高い特性を有する代替炭素ナノ材料への関心が高まっている。
課題のひとつは、これらのナノカーボン材料を、溶液または懸濁液に加工して、特に複合材料、フィルムもしくは基材上の積層物を調製するための操作および工業的加工処理を可能にすることである。ナノカーボン形態(すなわち、カーボンナノチューブおよびグラフェン)の溶液または懸濁液を調製する研究にかけられた労力のほとんどは、大きな欠点を伴う方法につながった:結果として得られるカーボンナノチューブおよびグラフェン平面は、官能化および/もしくは変性されて、その電気的特性に悪影響を及ぼし、または、剥離が不十分となる。[Paton,K.R.et al.Scalable production of large quantities of defect free few−layer graphene by shear exfoliation in liquids.Nat.Mater.(2014)[23]]
有機溶媒中のカーボンナノチューブ溶液を調製するのに初めて成功した方法は、Penicaud et al.によって報告された(WO2005/073127[11])。Penicaud et al.はまた、グラフェンおよびカーボンナノホーンを有機
溶媒に溶解させる方法の先駆者でもあった:それぞれWO2009/056696[12]およびWO2011/154894[13]。これらの方法によって、個別化された(完全に剥離された)カーボンナノチューブ[Concentrated Solutions of Individualized Single Walled Carbon Nanotubes,A.Penicaud,F.Dragin,G.Pecastaings,M.He,E.Anglaret,Carbon(2014),67,360−367[24]]、グラフェン平面、および、カーボンナノホーン(欠陥なし)の取得が可能となり、基板上にこれらのナノカーボン形態の堆積物を載せたり、これらを複合物に組込む際等に有益である。しかし、これらの方法の欠点の1つに、ナノカーボン有機溶液が不活性雰囲気下で取り扱われなくてはいけないことがあり、工業規模の適用ではコスト高になり得る。
よって、これらの当該技術分野で公知の問題、欠点および障害を解決したナノカーボンを溶解する方法、より具体的には、ナノカーボン材料を所定の適用のために加工処理するために周囲雰囲気下で容易に用いられ得る完全剥離ナノカーボンの水性または有機懸濁液を得て、それによってナノカーボン組成物製造費を削減し、保管を容易にし、および大量のナノカーボンの取得可能性を高めることを可能にする方法が必要とされている。
第1の態様では、本発明は、具体的には、完全剥離ナノカーボン材料の水性または有機懸濁液を調製する方法を提供することでそのような必要性にこたえることを目的とし、当該方法は:
a)ナノカーボン層間化合物を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;および
c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;を含み、
溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全もしくは部分的に混和性であり、または、溶媒(B)もしくは溶媒混合物(B’)と完全もしくは部分的に混和性であり;
それによって、空気準安定性であるナノカーボン材料の水性または有機懸濁液が得られる。
本明細書全体で使用される表現「(B)または(B’)と水またはイオン性水溶液との脱気混合物」は、(B)または(B’)と水またはイオン性水溶液との混合物全体が脱気されていることを意味する。
有利には、溶媒Aまたは溶媒の混合物A’が関わり得るいずれかの変形例で(たとえば工程a))、溶媒Aまたは溶媒の混合物A’は、工程a)で用いる前に脱気され、ナノカーボン層間化合物(「ナノ炭化物塩」とも呼ぶ)を溶解し得る。
再酸化工程b)の後、その系は多少不安定になり、(以下で説明するように、ナノカーボン材料の表面上でのイオンの吸着によって)その系を安定させるために、工程c)が工程b)に続かなければならない。
有利には、工程c)は、工程b)の直後に実行され得ることが好ましい。
ナノカーボン材料がカーボンナノチューブである場合、工程b)を実行せずに直接工程c)に進むのが効果的であり得る。よって、完全に剥離された(個別化された)カーボンナノチューブの水性または有機分散液を調製する方法を提供し、当該方法は:
a)カーボンナノチューブアルカリ塩を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元カーボンナノチューブの有機溶液(カーボンナノチューバイド溶液とも呼ぶ)を得る工程;および、
c)工程a)で得た還元カーボンナノチューブの有機溶液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;を含み、溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全もしくは部分的に混和性であり、または、溶媒(B)もしくは溶媒混合物(B’)と完全または部分的に混和性であり;
それによって、カーボンナノチューブの空気準安定性の水性または有機分散液が得られる。
カーボンナノチューブアルカリ塩は、あらゆるCを有し得る:M比は当該技術分野で公知の方法で達成可能であり、Mは、Na、Li、K、RbまたはCs、好ましくはNa、LiまたはKといったアルカリ金属である。カーボンナノチューブは、様々な公知の方法で還元され得て、結果として得られるMCx塩は単離することができ、x値は、6〜500超の幅広い範囲である(xは整数)。たとえば、カーボンナノチューブは、Na、Li、K、RbまたはCs、好ましくはNa、LiまたはKといったいずれかのアルカリ金属存在下で直接還元され得る。よって、還元は、たとえば液相もしくは気相またはアンモニア中のアルカリ金属の存在下で直接実行され得る。アルカリ金属の存在下での還元方法は、当該技術分野で公知であり(たとえば[18]、[25]を参照)、上記の通り様々な可能範囲の化学量論組成を有するCNTアルカリ塩をもたらし、通常最大化学量論組成MC6〜MC8である。ここで、Mはアルカリ金属(アルカリ金属がカリウム金属である場合は最大化学量論組成KC6〜KC8)である。または、カーボンナノチューブは、以下で詳細を説明する通り、式A+-を有する適切なポリアリールアルカリ塩を、カーボンナノチューブと、不活性雰囲気下で反応させることで還元され得る(たとえば[11]、[18]、[49]、[50]を参照)。ここで、A+はアルカリ金属カチオンおよびB-は有機ラジカルのアニオンをさす。同様に、この方法でも、結果として得られるACx塩は単離することができ、x値は10〜500の幅広い範囲である(たとえばA=K)。
たとえば、アルカリ金属がKである時、カーボンナノチューブアルカリ塩は、KC6、KC8、KC25、KC100またはKC200の化学量論組成を有し得る。C含量がより大きい(K含量がより小さい)カーボンナノチューブアルカリ塩は、混合工程c)にかける時に示す欠陥がより少ないと予想され(たとえば、脱気水、脱気イオン性水溶液でクエンチなど)、C含量がより大きいカーボンナノチューブアルカリ塩が一般的に好まれる。有利には、カーボンナノチューブアルカリ塩はKC25、または、KC25以上のC含量であるナノチューブカリウム塩であり、たとえばKC25、KC100、KC200、KC370、KC500、または、C:Kの化学量論組成がKC25およびKC500の間の範囲であるナノチューブカリウム塩である。
カーボンナノチューブは、単層(SWCNT)、二層(DWCNT)、数層(FWCNT)または多層(MWCNT)カーボンナノチューブであり、好ましくは単層、二層、数層カーボンナノチューブであり、最も好ましくは単層カーボンナノチューブであり得る。
有利には、工程c)が関わり得るいずれかの変形例で、脱気有機溶媒(B)または有機溶媒の脱気混合物(B’)を工程c)で用いる場合、(B)および混合物(B’)は、好ましくはナノカーボンのカーボン表面と相互作用できるイオン種を含有し得る。好ましくは、イオン種は、ナノカーボンのカーボン表面上に吸着できる。よって、(B)および溶
媒混合物(B’)は、好ましくは、塩種の完全または部分的解離が可能である。イオン種は、ナノカーボンのカーボン表面上に吸着できるあらゆるイオンであり得る。たとえば、イオン種は、疎水性イオンであり得る。たとえば、適切な疎水性イオンとしては、たとえば、テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルボレートあるいはテトラフェニルアルソニウムといったフェニル置換イオンが挙げられる。イオン種としてはまた、OH-、H3+、アンモニウム(NH4 +)または置換アンモニウムイオンといった他のイオン、または、限定はしないがフェニル置換疎水性のイオン(たとえば少数に言及するだけでもテトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルボレートまたはテトラフェニルアルソニウム)といった、ナノカーボンとのπ−π相互作用が可能なイオン種も挙げられ得る。有利には、イオン種は、πの積み重ねの実体を有し、ナノカーボン表面上への吸着を促進可能なあらゆる種であり得る。そのようなイオン種の例は、ナフタレニル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルラジカルといった、極性部分(「極性頭部」)を有するポリ芳香族の実体を有するもの、およびそれらのそれぞれの群である。これらの中で、環境にやさしい塩から選ばれるイオン種が好まれる。その例は、1−ピレンスルホン酸塩、2−ナフトキシ酢酸塩または2−ナフタレンスルホン酸塩であり、好ましくは1−ピレンスルホン酸塩または2−ナフトキシ酢酸塩である。尿酸イオンも用いられ得る。
同様に、工程c)が関わり得るいずれかの変形例では、有利には、(B)または(B’)と水またはイオン性水溶液との脱気混合物を工程c)で用いる場合、結果として得られる脱気混合物は、好ましくはナノカーボンのカーボン表面と相互作用(たとえばカーボン表面上に吸着)できるイオン種を含有し得る。イオン種は、ナノカーボンのカーボン表面上に吸着できるあらゆるイオンであり得る。たとえば、イオン種は、疎水性イオン、または、上記のような、πの積み重ねの実体を有し、ナノカーボン表面上への吸着を促進可能なあらゆる種であり得る。たとえば、結果として得られる脱気混合物は、OH-、H3+、アンモニウム(NH4 +)または置換アンモニウムイオンのいずれかであるイオン種、または、限定はしないがフェニル置換疎水性のイオン(たとえば少数に言及するだけでもテトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルボレートまたはテトラフェニルアルソニウム)、または、ナフタレニル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルラジカルといった極性部分を有するポリアリール置換イオン(たとえば、1−ピレニルスルホネートイオン、2−ナフトキシアセテートイオン、2−ナフタレニルスルホネートイオン、好ましくは1−ピレニルスルホネートイオンまたは2−ナフトキシアセテートイオン)といった、ナノカーボンとのπ−π相互作用が可能なイオン種を含み得る。
前述のナノカーボン表面上のイオン吸着は、工程c)で得たナノカーボン材料の懸濁液の安定化を助長すると考えられている。
(B)または(B’)とイオン性水溶液との脱気混合物は、(B)または(B’)を水と混合する工程、次いで、ナノカーボンのカーボン表面と相互作用(たとえばカーボン表面上に吸着)できる1または複数の前述したイオン種をもたらす1または複数の適切な塩種を添加する工程を含む方法によって調製され得る。代替的に、または、さらに、(B)または(B’)とイオン性水溶液との脱気混合物は、(B)または(B’)を1または複数の前述したイオン種を含有するイオン性水溶液と混合する工程を含む方法によって調製され得る。結果として得られる混合物は、次に脱気され得る。
1つの変形例では、工程a)には、工程b)の前に、適切なイオン種を工程a)で得た還元ナノカーボンの有機溶液に添加することが続き得る。よって、完全剥離ナノカーボン材料の水性または有機分散液を調製する方法を提供し、当該方法は:
a)ナノカーボン層間化合物を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶
液を得る工程;
a’)適切なイオン種を、工程a)で得た還元ナノカーボンの有機溶液に、不活性雰囲気下で添加する工程;
b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機分散液を得る工程;および
c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機分散液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)または(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;を含み、
溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全または部分的に混和性であり、または、溶媒(B)または溶媒混合物(B’)と完全または部分的に混和性であり;
それによって、ナノカーボン材料を含む空気準安定性の水性または有機分散液が得られる。
本明細書で使用される「不活性雰囲気」という表現は、還元されたナノカーボン材料の中性状態への再酸化に傾倒しない気体または気体混合物を指す。たとえば、工程a)および/または工程a’)は、酸素および水分フリーの雰囲気下で行われ得る。有利には、工程a)および/または工程a’)は、アルゴン、ヘリウムまたは窒素ガス雰囲気下で行われ得る。
工程a’)で添加したイオン性塩種は、前述した1または複数のイオン種であり得、そのまま添加され、または、適切な有機溶媒中の溶液で添加され得る。有機溶媒は、脱気され得る。有機溶媒中の溶液で添加される場合、好ましくはイオン種は、工程a)で用いるのと同一の溶媒(A)または溶媒混合物(A’)中の溶液として添加される。溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、脱気され得る。
変形例「a)+a’)」では、イオン種が工程a)およびb)の間で添加されるため、工程c)は単に、工程b)で得た中性ナノカーボンの有機分散液を、適切な量の脱気水、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)または(B)もしくは(B’)と水との脱気混合物と混合することだけを含み得る。または、工程b)で得た中性ナノカーボンの有機分散液を、適切な量の脱気イオン性水溶液、イオン種含有脱気有機溶媒(B)、イオン種含有有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)とイオン性水溶液との脱気混合物と混合することで、より多くのイオン種が、工程c)を介して添加され得る。工程c)で添加されるイオン種は、工程a’)で添加されるのと同一または異なっていてよい。例示的な実施形態では、同一のイオン種は、工程a’)およびc)を介して添加される。
「変形例a)+a’)」に関して、(工程a’)単独または工程a’)およびc)を介して)添加されるイオン種の濃度は、A(A’)および溶液中のナノ炭化物塩の濃度によって選択/調節され得る。実際に、ナノ炭化物が多価電解質塩である場合、静電反発力の遮蔽により、一定の閾値を超えた塩添加の際に、凝集しやすい。したがって、添加され得るイオン塩の量は、好ましくは、ナノ炭化物の凝集を誘発しない/引き起こさないような量である。通常、工程a)後に添加されるイオン種の量は、還元ナノカーボンの有機溶液のイオン種濃度が好ましくは10mMを超え得ないような量である。たとえば、テトラフェニルホウ酸ナトリウムをイオン塩として用いる場合、有利には、添加される量は、還元ナノカーボンの有機溶液中のテトラフェニルボレートイオンの濃度が約1mMとなる量である。
同様に、カーボンナノチューブに関する上記の変形例で述べた通り、変形例「a)+a’)」に関して、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブであるとき、工程b)を実行
しないことが有利になり得る。よって、完全剥離(個別化)カーボンナノチューブの水性または有機分散液を調製する方法を提供し、当該方法は:
a)カーボンナノチューブアルカリ塩を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元カーボンナノチューブの有機溶液(カーボンナノチューバイド溶液とも呼ぶ)を得る工程;
a’)適切なイオン種を、工程a)で得た還元カーボンナノチューブの有機溶液に、不活性雰囲気下で添加する工程;および、
c)工程a‘)で得た有機溶液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;を含み、
溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全もしくは部分的に混和性であり、または、溶媒(B)もしくは溶媒混合物(B’)と完全または部分的に混和性であり;
それによって、カーボンナノチューブを含む空気準安定性の水性または有機分散液を得る工程を含む。有利には、工程c)は、カーボンナノチューバイド(すなわち、カーボンナノチューブアルカリ塩)の再酸化を同時に引き起こし、中性状態(カーボンナノチューブ)に戻す条件下で実行され得る。そのような条件としては:
−脱気されたプロトン性溶媒を工程c)で用いることが挙げられる。この条件は、脱気水、脱気イオン性水溶液、または、(B)もしくは(B’)と水もしくは工程b)のイオン性水溶液との脱気混合物が、工程c)で用いられる時に満たされ得る。工程c)が脱気有機溶媒(B)または有機溶媒の脱気混合物(B’)で実行されるときにも満たされ、ここで、有機溶媒(B)および混合物(B’)の有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノールまたはn−ヘキサノールといったアルコールから選択される。
−工程a)で得られた還元カーボンナノチューブの有機溶液を、適切な量の、酸素以外の適切な酸化剤を含有する脱気有機溶媒(B)または有機溶媒の脱気混合物(B’)で混合することで工程c)を実行することも当該条件として挙げられ、この場合、(B)および(B’)は、非プロトン性有機溶媒である。適切な酸化剤は、限定はしないがヨウ素、FeCl3、NOPF6を含む。
有利には、工程c)がカーボンナノチューバイドの再酸化を自発的に引き起こす条件下で実行される場合、混合工程はゆっくり行われてカーボンナノチューバイドをできるだけ穏やかな方法でクエンチし得る。たとえば、工程a)で得た還元カーボンナノチューブの有機溶液は、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物に滴下して添加され得る。
カーボンナノチューブアルカリ塩のC:M比に関するカーボンナノチューブ変形例について上記した変形例および実施形態はすべて、変形例「a)+a’)」に対して、必要に応じて変更しながら適用可能である。たとえば、アルカリ金属がKである時、カーボンナノチューブアルカリ塩は、KC6、KC8、KC25、KC100またはKC200の化学量論組成を有し得る。有利には、カーボンナノチューブアルカリ塩はKC25、または、KC25以上のC含量であるナノチューブカリウム塩であり、たとえばKC25、KC100、KC200、KC370、KC500、または、C:Kの化学量論組成がKC25およびKC500の間の範囲であるナノチューブカリウム塩である。
本明細書に記載する全ての変形例について、存在し得るあらゆる凝集体は、本明細書の他の箇所で説明されるように、穏やかな遠心分離で除去され得る(工程a1を参照)。
有利には、工程c)後に結果として得られるナノカーボン分散液は、長期(少なくとも数日間であり、より頻繁には数週間または数ヶ月)にわたって安定であり、溶媒Aまたは
溶媒の混合物A’を除去する必要なく加工処理を可能にし得る。
本明細書に記載する変形例全てにおいて、有利には、工程c)を実行する時、AまたはA’と、(i)水(または(ii)イオン性水溶液または(iii)BもしくはB’または(iv)水とBもしくはB’との混合物、または、(v)イオン性水溶液とBもしくはB’との混合物)との比は、分散安定性の単純な目視(または光学顕微鏡)観測によって適切に選択/調節/最適化され得る。
混合工程c)が脱気水、脱気イオン性水溶液、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物を伴う場合、結果として得られるナノカーボン材料懸濁液は、「水性懸濁液」または「水性分散液」と呼ばれる。
同様に、混合工程c)が単一の脱気有機溶媒(B)または有機溶媒の脱気混合物(B’)を伴う場合、結果として得られる懸濁液は、「有機懸濁液」または「有機分散液」と呼ばれる。
再酸化工程b)は、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た溶液を、空気(乾燥した空気を包含)または水にさらす時に、同時に起こり得る。
再酸化工程b)は、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボンの有機溶液を周囲雰囲気下(すなわち、酸素ガスおよび水分の存在下)に放置させることを単に含み得る。たとえば、還元ナノカーボンの有機溶液は、数秒〜数日間、たとえば15秒〜2時間、たとえば15秒〜1時間、好ましくは30秒〜1分間、周囲雰囲気下に放置され得る。代替的またはさらに、再酸化工程b)は、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボンの有機溶液を、酸素ガスといった酸素源にさらすことを含み得る。たとえば、酸素ガスまたは乾燥空気流を、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボンの有機溶液に通し、適切な時間、バブリングし得る。
再酸化工程b)はまた、酸素以外の適切な酸化剤(固体、気体、液体または溶液(すなわち溶媒に溶解された)形式)を、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボンの溶液に添加することで実行され得る。その場合、工程b)は、不活性雰囲気下で実行され得る。適切な酸化剤は、限定はしないがヨウ素、FeCl3、NOPF6を含み、工程b)は、不活性雰囲気下で実行されてもよい。
再酸化工程b)はまた、電気化学的にも達成され、不活性雰囲気下で実行されてもよい。よって、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボン溶液は、電気化学手段で酸化され;その場合、工程b)は不活性雰囲気下で実行されてもよい。
再酸化工程b)はまた、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボンの有機溶液を、適切な量の、酸素以外の適切な酸化剤を含有する脱気有機溶媒(B)または有機溶媒の脱気混合物(B’)と混合することで、工程c)を実行している間に達成され得るが、ここで、(B)および(B’)は非プロトン性有機溶媒である。適切な酸化剤は、限定はしないがヨウ素、FeCl3、NOPF6を含み;工程b)は、任意で不活性雰囲気下で実行されてもよい。
有利には、再酸化工程b)は、工程a)または変形例「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボンの溶液を、穏やかな方法でクエンチし、負電荷のナノカーボン化合物が中性になる効果を有する。
本発明に従った完全剥離ナノカーボン材料の懸濁液は、コロイド懸濁液の分野における熱力学的準安定性の従来の意味を取る。一般的に、所与の条件下で、コロイド懸濁液に複数の状態が原則的に可能である場合、最も低いポテンシャルが安定状態であり、他の状態は準安定として説明される。同様に、本明細書で用いられる「準安定懸濁液」とは、懸濁液が局所の最小熱力学的ポテンシャルに対応する平衡状態にあることを意味する。
本発明に従った完全剥離ナノカーボン材料の水性または有機懸濁液/分散液を指す場合、本明細書で用いられる語句「空気準安定性」は、「空気中で準安定」であることを意味し、酸素または水の影響を受けない、たとえば周囲空気の影響を受けない懸濁液/分散液を指す。
有利には、単一の非プロトン性有機溶媒が、工程a)および/または工程a’)で用いられ得る(すなわち、非プロトン性有機溶媒(A))。再度、単一の溶媒(A)は、脱気され得る。
有機溶媒混合物(A’)を工程a)および/または工程a’)で用いる場合、2成分、3成分またはそれより高次元の溶媒混合物(すなわち、2、3またはそれ以上の非プロトン性有機溶媒の混合物)であり得る。好ましくは、(A’)は、2成分または3成分、最も好ましくは2成分有機溶媒混合物であり得る。
有利には、工程a)および/または工程a’)で用いる非プロトン性有機溶媒(複数可)は極性であり得る。本明細書で用いられる、工程a)および/または工程a’)非プロトン性有機溶媒(複数可)を包含する有機溶媒を指す場合の「極性」は、比誘電率ε≧4を有するあらゆる有機溶媒を指す。
本明細書全体で、特に明記されない限り、全ての比誘電率値(ε)は、25℃の温度に対して提供される。すなわち、特に明記されない限り、「比誘電率ε≧n」という表現は、「25℃において比誘電率ε≧n」という意味である。
たとえば、非プロトン性有機溶媒(A)および有機溶媒混合物(A’)中の非プロトン性有機溶媒は、25℃において、比誘電率ε≧4、ε≧5、≧6、≧7、≧8、≧9または≧10を有し得る。工程a)および/または工程a’)で、単一の溶媒(A)または混合物(A’)として用いられ得る例示的な極性の非プロトン性有機溶媒としては、限定はしないが、テトラヒドロフラン(THF)、メチルTHF(Me−THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド(NMF)、スルホラン、アセトン、アセトニトリル、ニトロメタン、ジメトキシエタン(DME)、酢酸エチル、2−ブタノン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジクロロメタンまたはこれらのうち2つ以上の混合物が挙げられる。好ましくは、工程a)および/または工程a’)で、単一の溶媒(A)または混合物(A’)として用いられ得る極性の非プロトン性有機溶媒は、THF、DMSO、NMP、DMF、NMF、CPMEまたはスルホラン;好ましくはTHFまたはDMSOであり得る。好ましくは、単一の極性溶媒(A)が工程a)および/または工程a’)で用いられ、THFまたはDMSOから選択され得る。
前述の通り、溶媒Aまたは溶媒の混合物A’は、これらが関わり得るいずれかの変形例で、工程a)に工程a’)が続こうと直接工程b)が続こうと、工程a)で用いる前に脱気され、ナノカーボン層間化合物を溶解し得る。
有利には、有機溶媒(B)は、非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒混合物(A’)と混和性であるあらゆる有機溶媒であり得る。同様に、混合物(B’)の有機溶媒は、(A)または(A’)と混和性である2つ以上のいずれかの有機溶媒から構成され得る。有利には、(B)および混合物(B’)の溶媒は、塩種、たとえば上記のイオン種(たとえば、フェニル置換イオンといった疎水性イオン、たとえば少数に言及するだけでもテトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルボレートまたはテトラフェニルアルソニウム;尿酸イオン;ナフタレニル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルなどといった極性部分を有するポリアリール置換イオン(たとえば、1−ピレンスルホン酸塩、2−ナフトキシ酢酸塩または2−ナフタレンスルホン酸塩またはこれらの尿酸塩))をもたらす塩種の部分的または完全な解離を可能にするあらゆる有機溶媒であり得る。
一般的に、塩種のイオン化を支持するあらゆる有機溶媒が溶媒(B)または混合物(B’)として用いられ得る。工程c)で、溶媒(B)または混合物(B’)として用いられ得る例示的な有機溶媒としては、限定はしないが:
−(A)および(A’)に関して列挙した上記の極性非プロトン性溶媒;
−メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノールといったアルコール;
−酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルといったエステル;
−アセトン、ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンといったケトン;
−ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンといった芳香族溶媒;
−クロロホルムといったハロゲン化溶媒が挙げられる。
有利には、有機溶媒(B)および混合物(B’)の有機溶媒は、水混和性であり得る。たとえば、有機溶媒(B)および混合物(B’)の有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノールまたはn−ヘキサノールといったアルコールから選択され得る。
溶媒混合物(B’)の場合、溶媒混合物(B’)全体はナノカーボン材料の懸濁液を安定化させるのに十分なイオン化を支持することが前提で、混合物の1または複数の成分は、それ自体では塩種のイオン化を支持しない非極性有機溶媒であり得る。たとえば、溶媒混合物(B’)は、ベンゼン、トルエン、メチルナフタレン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、1,4−ジオキサンといった1または複数の非極性有機溶媒を、混合物(B’)全体は適切な塩種(すなわち、上記したものといった、ナノカーボン表面の表面に吸着可能なイオン種を作製可能な塩種)の解離を可能にするように、上記の通り、塩種のイオン化を支持することができるのに十分な量の少なくとも1つの有機溶媒と一緒に混合されて含有し得る。たとえば、イオン種は、限定はしないがフェニル置換疎水性のイオン(たとえばテトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルボレートまたはテトラフェニルアルソニウム)といった疎水性イオン、ナフタレニル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルなどといった極性部分を有するポリアリール置換イオン(たとえば、1−ピレンスルホン酸塩、2−ナフトキシ酢酸塩または2−ナフタレンスルホン酸塩またはこれらの尿酸塩、好ましくは1−ピレンスルホン酸塩または2−ナフトキシ酢酸塩)であり得る。たとえば、(B’)は、(i)アルコールといった水混和性有機溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノールまたはn−ヘキサノール)、および、(ii)ベンゼン、ト
ルエン、メチルナフタレン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、1,4−ジオキサンといった1または複数の非極性有機溶媒の混合物であり得る。たとえば、(B’)は、メタノールおよびトルエンの混合物であり得る。
有利には、工程c)は、工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の(B)または(B’)と水またはイオン性水溶液との脱気混合物と混合することを伴い得る。
たとえば、水またはイオン性水溶液および有機溶媒(B)の脱気混合物であり得る、(B)と水またはイオン性水溶液との脱気混合物を工程c)で用い得るが、その比は、100%の水またはイオン性水溶液/0%の(B)から、0%の水またはイオン性水溶液/100%の(B)の範囲のいずれかである。同様に、水またはイオン性水溶液および水混和性有機溶媒混合物(B’)の脱気混合物であり得る、(B’)と水またはイオン性水溶液との脱気混合物を工程c)で用い得るが、その比は、100%の水またはイオン性水溶液/0%の(B’)から、0%の水またはイオン性水溶液/100%の(B’)の範囲のいずれかである。たとえば、50%水/50%(B)または(B’)の脱気混合物を用い得る(たとえば、50%水/50%メタノールまたは50%水/50%エタノール)。
有利には、工程c)で用いる水(単独または(B)もしくは(B’)との混合)のpHを調節して、イオン強度を変化させ得る。たとえば、pHは、限定されないが、HCl、HNO3、酢酸、NaOH、KOH、NH4OHといったあらゆる塩基または酸の添加によって調節され得る。当該技術分野で公知のあらゆる塩基または酸を用いて、工程c)で用いる脱気水(単独または(B)もしくは(B’)との混合)のイオン強度を調節し得る。好ましくは、pH調節は、脱気の前に実行され得る。
次に続く6つの段落は、好ましくは(必ずしも不可欠ではないが)、工程a’)が実行されず工程b)が直接工程a)に続く場合の工程c)で参照されるイオン性水溶液(単独または(B)または(B’)との混合)に関し、工程c)が関わり得る本明細書のあらゆる変形例に適用可能である。
上記の水のpH調節のように、イオン性水溶液のpHにより、イオン強度を変化させ得る。pH調節は、限定されないが、HCl、HNO3、酢酸、NaOH、KOH、NH4OHといったあらゆる塩基または酸の添加によって達成され得る。当該技術分野で公知のあらゆる塩基または酸を用いて、イオン性水溶液のイオン強度を調節し得る。好ましくは、pH調節は、脱気の前に実行され得る。
有利には、イオン性水溶液は、OH-、H3+、アンモニウム(NH4 +)、または、テトラ置換アンモニウムイオンといった置換アンモニウムイオン、たとえば、テトラアルキルアンモニウム塩、たとえばBu4+などのアルキルアンモニウム塩といったイオン種を含有し得る。
有利には、イオン性水溶液は、限定されないが、フェニル置換イオン、ポリアリール置換イオン、尿酸イオン、BF4 -、PF6 -またはAsF6 -といった疎水性イオンを含有し得る。
有利には、イオン種は、OH-、H3+、または、ナノカーボンとのπ−π相互作用が可能な疎水性イオン、たとえば、限定されないが、テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルボレートまたはテトラフェニルアルソニウムといったフェニル含有イオンおよび/またはナフタレニル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルラジカルなどといった極
性部分を有するポリアリール置換イオン(たとえば、1−ピレニルスルホネートイオン、2−ナフトキシアセテートイオン、2−ナフタレニルスルホネートイオン、好ましくは1−ピレニルスルホネートイオンまたは2−ナフトキシアセテートイオン)のいずれかであるイオンであり得る。
有利には、イオン性水溶液は、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(B-Ph4Na+)の水溶液であり得る。テトラフェニルホウ酸ナトリウムの濃度は1mmol/lであり得る。
有利には、イオン性水溶液は、塩化テトラフェニルアルソニウム(As+Ph4Cl-)の水溶液であり得る。塩化テトラフェニルアルソニウムの濃度は1mmol/lであり得る。
有利には、工程a)は、−22〜202℃、たとえば、20〜25℃の温度で実行され得る。
一般的には、本発明に従った方法、より具体的には工程a)は、攪拌の有無を問わず実行され得る。攪拌システムを用いる場合、機械または磁気攪拌システム、または、穏やかな超音波処理であり得る。有利には、当該方法は機械攪拌で実行され得る。有利には、当該方法は磁気攪拌で実行され得る。
本発明の方法は、超音波処理を含む攪拌システムで実装され得るが、超音波処理は必ずしも必要ではないことに留意する。実際に、本方法の顕著な利点は中性ナノカーボン材料から出発する穏やかな溶解方法に基づいており、このことによって、超音波処理の使用および結果として悪影響となるサイズ縮小を確実に回避する。よって、本発明の方法は、大きなサイズの完全剥離ナノカーボン材料を得ることを可能にする。
本発明の方法の一変形例では、工程a)および/または工程a’)はさらに遠心分離工程a1)を含み、ナノカーボン層間化合物を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に溶解し、任意で工程a’)に従って適切な塩を添加した後に、工程a)および/または工程a’)で得た還元ナノカーボンの有機溶液から、あらゆる非溶解画分を分離することが可能になる。当業者であれば、検知可能な凝集体を含まない還元ナノカーボン有機溶液を得るのに適切な遠心分離条件を決定する方法を知っているであろう。たとえば、遠心分離は、100から200000gの間で0.1〜24時間実行され得る。特定の実施形態では、遠心分離工程は、2800gで1時間実行される。
有利には、遠心分離中の還元ナノカーボンの有機溶液における凝集体の存在は、裸眼で確認され得る。よって、還元ナノカーボンの有機溶液のサンプルを遠心分離中に様々な間隔で取り、遠心分離により裸眼で見える凝集体を伴わない溶液を得ることが可能かどうかを決定し得る。裸眼検査により、およそ1ミリメートルの10分の1(100ミクロン)の最小サイズで、凝集体の検知が可能となる。
有利には、遠心分離中の還元ナノカーボンの有機溶液における凝集体の存在は、光学顕微鏡を用いて確認され得る。よって、還元ナノカーボンの有機溶液のサンプルを遠心分離工程中に様々な間隔で取り、遠心分離により、光学顕微鏡で見える凝集体を伴わない溶液をいつ得ることができるのかを決定し得る。光学顕微鏡検査により、およそ1ミクロンオーダーが最小サイズである凝集体の検知が可能となる。たとえば、溶液サンプルを10〜100の倍率を有する光学顕微鏡で分析し得る。
有利には、工程c)で用いる、脱気水、イオン性水溶液、有機溶媒(B)、有機溶媒混
合物(B’)または(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液の混合物、並びに、溶媒AおよびA’は、使用前に脱気される場合、あらゆる溶解(主に窒素および酸素)ガスを取り除く当該技術分野で公知の一般的方法で脱気され得る。たとえば、AおよびA’、並びに、工程c)で用いる脱気水、イオン性水溶液、有機溶媒(B)、有機溶媒混合物(B’)または(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液の混合物は、脱気する液体を減圧下および攪拌下(機械または磁気攪拌)に置くことで脱気され得る。たとえば、150mlの水は、撹拌しながら30分間、0.2mbarの真空に適用することで脱気され得る。他の実施例では、工程c)で用いる脱気水または脱気イオン性水溶液は、凍結脱気、好ましくは複数のサイクル、たとえば3サイクルで脱気され得る。
工程c)で用いる、水、イオン性水溶液、有機溶媒(B)、有機溶媒混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液の混合物を脱気することは重要である。
AまたはA’を工程a)および/または工程a’)で使用する前に脱気することは利点ではあるが必ずしも必要ではない:本発明の方法は、使用前のA/A’の脱気の有無を問わず、効果的に首尾良く実行され得る。
多くの文献で記される通り、ナノカーボンは、水、または多くの有機溶媒に不溶性である。界面活性物質を利用して水中、または、いくつかの有機溶媒中にナノカーボンが懸濁され得ても、双方の場合で、ナノカーボン分散液は、広範囲のせん断または超音波処理を費やして得られ、それによってナノカーボンを傷つけ、サイズを縮小することになる。さらに、ナノカーボンは、その加工処理の最後に、剥離が不十分となる。[11−13]で説明する通りにナノカーボン塩を極性の非プロトン性溶媒に溶解することは、ナノカーボンの完全な剥離を可能にする([24]も参照)が、空気への敏感性という犠牲が伴う(すなわち、結果として得られる混合物は空気の影響を受けやすい)。
特定の理論に束縛されることは望まないが、工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、脱気有機溶媒混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する場合、溶媒(複数可)(水または有機溶媒(B)または(B’))に接触するあらゆる疎水性材料(ナノカーボン)の表面に広範囲のガス層が不在であることが、イオンの疎水性表面上への吸着を強化することが一般的に主張されており、それによって、ナノカーボンの懸濁液を安定化し、水性または有機媒体中において完全剥離ナノカーボンの空気の影響を受けない系を初めて提供する。
本明細書で用いられる「溶解」という語句は、本発明の文脈でナノカーボン材料を指す場合、本明細書で定義される通り、完全剥離ナノカーボン材料の溶液の形成を指す。
本明細書で使用される「ナノカーボンの溶液」は、ナノカーボン材料が当該技術分野で従来理解される通り、溶媒中の真溶液であることを意味する。有利には、ナノカーボン溶液は均質である。たとえば、ナノカーボン溶液は、遠心分離の後、ナノカーボン材料の凝集体を含有しない。凝集体が溶液に不在であることは、裸眼で確認され得る。よって、溶液のサンプルを遠心分離後に取って、裸眼で見える凝集体を伴わない溶液を得られるかどうかを決定し得る。裸眼検査によって、およそ1ミリメートルの10分の1(100ミクロン)の最小サイズであるあらゆる可能な凝集体を検知できる。好ましくは、溶液中の凝集体の不在は、光学顕微鏡を用いて確認され得る。光学顕微鏡検査によって、1ミクロンの最小サイズを有する凝集体の検知が可能になる。例示的な実施形態では、サンプル溶液を10〜100の倍率を有する光学顕微鏡で分析し得る。より根本的には、「溶液」という語句は、溶質および溶媒が永遠に混合されたままであり、一定期間の後に相分離しない
熱力学的に安定した系を指す。溶液は、ナノ粒子(ナノチューブおよびグラフェンの場合)が光の波長の大きさ程度のサイズを少なくとも1つ有する場合、コロイド粒子の拡散によって、チンダル現象を示し得る。
本明細書で用いられる「懸濁液」という語句は、「分散液」と同じ意味で用いられ、当該技術分野で従来理解される「分散液」を指す。
本明細書で用いられる「ナノカーボンの懸濁液」または「ナノカーボンの分散液」は、ナノカーボン材料が溶媒中に懸濁または分散された組成を指す。すなわち、懸濁液は、溶媒中に懸濁または分散されたナノカーボン材料の固形粒子を含有する。有利には、「ナノカーボンの懸濁液」または「ナノカーボンの分散液」という用語は、本発明の文脈で、完全に剥離されたナノカーボン(すなわち、個別化されたナノカーボン)を指す。たとえば、ナノカーボンがカーボンナノチューブである場合、「完全剥離」とは、通常凝集されたナノチューブの束形態である出発カーボンナノチューブが、個別のカーボンナノチューブに分離されていることを指す。同様に、ナノカーボンがグラフェンである場合、「完全剥離」とは、凝集/積み重なったグラフェン平面から構成される出発グラファイト材料が、個別のグラフェン平面に分離されていることを意味する。溶媒は、水、イオン性水溶液、または、1または複数の有機溶媒と水またはイオン性水溶液との混合物であり、これらは全て、本明細書に記載される通り、完全または部分的に脱気され、この場合、ナノカーボンの懸濁液は、「ナノカーボンの水性懸濁液」または「ナノカーボンの水性分散液」と呼ばれる。溶媒は、本明細書に記載される通り、脱気有機溶媒または2以上の有機溶媒の脱気混合物であり、この場合、ナノカーボンの懸濁液は、「ナノカーボンの有機懸濁液」または「ナノカーボンの有機分散液」と呼ばれる。本発明の文脈内で、懸濁液または分散液は、根本的に、準安定系として定義され、すなわち相が一定期間後に最終的に分離する系である。
ナノカーボンの懸濁液および溶液の双方は、当該技術分野では従来「インク」と呼ばれ得る。しかし、本発明の文脈では、たとえばナノカーボンの水性または有機懸濁液がナノカーボンのフィルムまたは積層物の製造に用いられる場合、「インク」という語句は、本発明の方法で取得可能な完全剥離ナノカーボンの懸濁液を指す。
本明細書で用いられる「ナノカーボン」または「ナノカーボン材料」という語句は、規則的に並んだナノメートル寸法の炭素系構造を意味する。「ナノメートル寸法の炭素系構造」という表現は、そのサイズが、少なくとも1つの空間寸法において、グラフェン平面のおよその厚さ〜数ナノメートルの範囲である材料を指す。たとえば、少なくとも1つの空間寸法における材料のサイズは、0.3から20nmの間、好ましくは0.3から10nmの間、最も好ましくは0.3から2nmの間である。ナノカーボンとしては、カーボンナノチューブ、ナノダイアモンド、カーボンナノホーン、グラフェンおよびフラーレン型の材料(たとえば、C60およびC60ポリマー、C70およびそれ以上のフラーレン)、または、水素化または部分水素化グラフェン(たとえば、グラフィン(graphyne)、グラファン(graphane))といった、これらのいずれかの水素化または部分水素化形態が挙げられる。他の規則的に並んだ炭素形態、たとえばカップ状に積み重なったナノカーボン、カーボンナノコーンなど、または、これらの水素化または部分水素化形態も「ナノカーボン」という語句に包含される。ナノカーボンとしては、i)単一の画定可能な構造(たとえば、個別のカーボンナノチューブ(単層(SWCNT)、二層(DWCNT)、数層(FWCNT)または多層(MWCNT))、グラファイトから剥離されたグラフェン平面、または、個別のカーボンナノホーン、ナノダイアモンド、フラーレン)を有するナノカーボン化合物;またはii)ナノカーボン構造の凝集体(たとえば、未処理(pristine)カーボンナノチューブ、積み重なったグラフェン平面(すなわちグラファイトまたは乱層構造(turbostratic)炭素)、未処理ナノダ
イアモンドもしくは未処理カーボンナノホーンが挙げられる。
「ナノカーボン層間化合物」または「NIC」は、本発明で、少なくとも2つの負電荷または正電荷の個別ナノカーボンを含み、それぞれ正電荷または負電荷の対イオンが挿入された化合物を指す。ナノカーボンアルカリ塩は、NICの一例であり、個別ナノカーボン構造は、負の電荷を有し、対イオンはアルカリイオンである。ナノカーボン構造がグラフェン平面である場合、このNICは、GIC(「グラファイト層間化合物」)と呼ぶ。
本発明で用いられる「未処理カーボンナノチューブ」は、当該技術分野で従来理解される通りの、束の形態であるカーボンナノチューブの凝集体を指す。本出願では、「還元カーボンナノチューブ」という表現は、負の電荷を有し正アルカリ金属対イオンによって中和されるカーボンナノチューブの束を指す。「個別化されたカーボンナノチューブ」または「個別カーボンナノチューブ」という表現は、個別のナノチューブに剥離されたカーボンナノチューブの束、すなわちそれぞれ分離されたナノチューブを指す。
本発明で用いられる「未処理カーボンナノホーン」は、当該技術分野で従来理解される通りの、カーボンナノホーンの球状凝集体を指す。本発明における「カーボンナノホーン」は、一般的に、閉じた部分が外側に向いている、複数の角(ホーン)形状本体の「ダリア状」凝集体、および、それぞれが複数の角形状本体から構成される複数の群の集合体を包含するように意図される。
上で定義したカーボンナノホーンは、本明細書で簡潔にするため「CNHs」(複数形として)とも呼ばれ得る。
CNHは一般的に、カーボンナノチューブのように筒状構造を有し、円筒状に丸まったグラファイトシートから形成され、カーボンナノホーンの一端は円錐の形状である。通常、CNHは、円錐部分が角のように突き出て、筒状部分が中心に位置し、ファンデルワールス力および/または共有結合によってまとまった形式で凝集している。本発明で用いられる未処理CNHは、従来の方法で得られたものであり得る。
たとえば、未処理カーボンナノホーンとしては、不活性ガス雰囲気下で原材料の炭素物質にレーザー光を照射する従来のレーザーアブレーション方法によって通常得られるものといった、球状型の凝集体に集合したカーボンナノホーンが挙げられる(たとえば、Iijima et al.,Chem.Phys.Lett.,309(1999)165−170[14];and Azami et al.,J.Phys.Chem.,(2008),112,1330−1334[15]を参照)。本明細書で使用される表現「未処理カーボンナノホーン」は、一般的に、用いられる合成方法を問わず、球状型の凝集体に集合したカーボンナノホーンを指す。たとえば、US特許7,501,024[16]に記載されるカーボンナノホーンが挙げられる。
「未処理カーボンナノホーン」と同じ意味で用いられ得る別の語句は、「カーボンナノホーン凝集体」であり得る。そのような凝集体は、ダリア形状、芽形状、種形状、またはこれらの形状の中間の形状を有し得る。
一般的に、カーボンナノホーン凝集体の各ナノホーンは、少なくとも1つの筒部分、および、筒部分の一端においかぶさる円錐部分1つによって形成される。ナノホーンは、2つ以上の筒部分を有し得る(すなわち、分岐し得る)。たとえば、3つの筒部分を有し得る(トリポッド)。これらは、たとえばZhang et al.,J.Phys.Chem.C,113,11184−11186 (2009)[17]で報告されている。
本発明で用いる「グラファイト層間化合物」または「GIC」は、負電荷または正電荷の個別グラフェン平面を少なくとも2つ含み、それぞれ正電荷または負電荷の対イオンが挿入された化合物を指す。グラファイトアルカリ塩は、GICの一例であり、グラフェン平面は、負の電荷を有し、対イオンはアルカリイオンである。GICは、式MCxを有する2成分化合物の形態であり、Mは、アルカリ金属の正電荷の対イオン(M+)であり、xは6から200の間の整数である。より具体的には、アルカリ金属はカリウムであり得る。たとえば、GICは、式KC8を有する2成分化合物であり得る。
他の実施形態では、GICは、式M(Solv)yxを有する3成分化合物の形態であり、Mはアルカリ金属イオン(M+)、Solvは、非プロトン性溶媒分子、xは6から200の間の整数、yは0から4の間の整数である。溶媒分子は、芳香族溶媒分子(たとえばベンゼンまたはトルエン)であり、または、求核性溶媒分子(たとえば、その構造が少なくとも1つの酸素原子を有する、THFといった溶媒)であり得る。たとえば、GICは、式K(THF)C24またはK(THF)224を有する3成分化合物であり得る。
本明細書で用いられる「還元グラフェン」は、1または複数の負電荷の個別グラフェン平面(複数可)を指す。負電荷は、それぞれの個別グラフェン平面を形成する炭素原子上に非局在化する。
有利には、グラファイト層間化合物は、式MCxの2成分化合物の形態であり、Mはアルカリ金属の正電荷の対イオン(M+)であり、xは6から200の間の整数である。より具体的には、アルカリ金属はカリウムであり得る。たとえば、グラファイト層間化合物は、式KC8の2成分化合物であり得る。
有利には、グラファイト層間化合物は、構造M(Solv)yxを有する3成分化合物であり、Mはアルカリ金属イオン、Solvは、構造が少なくとも1つの酸素原子を有する求核性溶媒、xは6から200の間の整数、yは0から4の間の整数である。たとえば、アルカリ金属はカリウムであり、溶媒はTHFであり、および、グラファイト層間化合物は、構造K(THF)yxを有する3成分化合物であり、xは6から200の間の整数、yは0から4の間の整数である。特定の実施形態、グラファイト層間化合物は、構造K(THF)C24またはK(THF)224を有する3成分化合物である。
ナノカーボン層間化合物
有利には、ナノカーボン層間化合物(NIC)は、当該技術で公知のあらゆる方法で調製され得る。たとえば、NICは、対応するナノカーボン材料の還元によって調製され得る。例示的な方法としては、ナノカーボン材料を、気相または液相のアルカリ金属で還元すること;ナノカーボン材料の電気化学的還元;および、ナノカーボン材料を、式A+-のアルカリ金属塩の存在下で還元することが挙げられ、ここで、A+はアルカリ金属カチオン、B-は有機ラジカルのアニオンである。Doped Carbon Nanotubes,A.Penicaud,P.Petit,J.E.Fischer,in Carbon Meta−Nanotubes:Synthesis,Properties
and Applications,1st Ed.Marc Monthioux Ed.,John Wiley&Sons(2012),41−111[18]を参照されたい。
還元がアルカリ金属またはアルカリ金属塩を伴う場合、アルカリ金属は、本発明の実施を可能にするあらゆるアルカリ金属であり得る。たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムから選択され得る。好ましくは、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムであり得る。
たとえば、NICは、Na、Li、K、RbまたはCs、好ましくはNa、LiまたはKといったいずれかのアルカリ金属存在下で直接ナノカーボン材料を還元することで調製され得る。よって、還元は、たとえば液相もしくは気相またはアンモニア中のアルカリ金属の存在下で直接実行され得る。アルカリ金属の存在下での調製方法は、当該技術分野で十分に公知である。当業者であれば、たとえば気相またはアンモニア中のアルカリ金属の存在下で還元方法を実行するための適切な実験条件を特定する方法を知っているであろう。たとえば、GICSは、アルゴン雰囲気下で,グラファイトおよびKを100℃(Kは液体)で反応させることで調製され得る。さらに、当業者であれば“Synthesis
of graphite intercalation compounds”,A.Herold in Chemical physics of intercalation,A.P.Legrand and S.Flandrois Eds,NATO
ASI Series,series B,Vol.172,pp.3−45(1987)、たとえば[19]に記載される方法から引き出せるであろう。当該文献に記載される方法は、カーボンナノチューブ、ナノダイアモンド、カーボンナノホーンおよびフラーレンといった他の種類のナノカーボン材料の調製にも適応され得る。当業者は、ナノカーボンのアルカリ還元に関するさらなる教示に関して次の文献を参照し得る:
カーボンナノチューブのアルカリ金属ドーピング:Lee,R.S.,Kim,H.J.,Fischer,J.E.&Thess,A.letters to nature Conductivity enhancement in single−walled carbon nanotube bundles doped with K and Br. Nature 255−257(1997).[25]
カーボンナノホーンのアルカリ金属ドーピング:WO2011/154894 [13]
フラーレンのアルカリ金属ドーピング:Hebard, A.F.; Rosseinsky, M. J.; Haddon, R. C.; Murphy, D.W.; Glarum, S. H.; Palstra, T.T.M.; Ramirez,
A.P.; Kortan, A.R. Nature, 1991, 350, 600.[26]
ナノカーボン材料の還元はまた、アルカリ金属から得られたアルカリ金属塩の存在下で実行され得る。たとえば、還元は、式A+-を有するポリアリールアルカリ塩の存在下で実行され、ここで、A+はアルカリイオンのカチオン、B-は、ポリ芳香族化合物のアニオンである。そのようなポリアリールアルカリ塩およびそれらを調製する方法がたとえば次で記載されている:
グラファイト層間化合物に関して:WO2009/056696[12];C.Stein,J.Poulenard,L.Bonnetain,J.Gole,C.R.Acad.Sci.Paris 260,4503(1965)[20];“Synthesis of graphite intercalation compounds”,A.Herold in Chemical physics of intercalation,A.P.Legrand and S.Flandrois,Eds,NATO ASI Series,series B,Vol.172,pp.3−45(1987)[21];F.Beguin and R.Setton New ternary lamellar compounds of graphite,Carbon 13,293−)295(1975)[22];
カーボンナノチューブに関して:WO2005/073127[11]
カーボンナノホーンに関して:WO2011/154894[13]
有利には、ポリ芳香族化合物は、ナフタレン、ベンゾフェノン、フルオレノン、ベンゾキノンあるいはアントラキノン、好ましくはナフタレンであり得る。有利には、ポリアリールアルカリ塩は、ポリアリールカリウム塩(すなわち、A+がK+である式A+-の塩
)であり得る。有利には、式A+-のポリアリールアルカリ塩はナフタレンカリウム塩(Naph-+)であり得る。
ナノカーボン材料の還元は電気化学的にも実行され得る。ナノカーボン材料の電気化学的還元は、溶液に存在する対カチオンの挿入によって生じる[Hodge,S.A.,Fogden,S.,Howard,C.A.,Skipper,N.T.& Shaffer,M.S.P.Electrochemical Processing of Discrete Single−Walled Carbon Nanotube Anions.ACS Nano 7,1769−1778(2013).[27]。
有利には、ナノカーボン層間化合物は、式A+-を有するポリアリールアルカリ塩を、ナノカーボン材料に、不活性雰囲気下で添加することで調製され、ここで:
+はアルカリイオンのカチオンであり、および、
-はポリ芳香族化合物のアニオンである。
有利には、ポリ芳香族化合物は、ナフタレン、ベンゾフェノン、フルオレノン、ベンゾキノンあるいはアントラキノンから選択され得る。
有利には、本発明の方法の工程a)のナノカーボン層間化合物が、ナノカーボン材料を式A+-のアルカリ金属塩の存在下で上記の通り還元されて調製される場合、ナノカーボン層間化合物の形成後および当該化合物を工程a)で非プロトン性有機溶媒に溶解する前に、ろ過工程が実行され得る。たとえば、ナノカーボン層間化合物の調製が、アルカリ金属から得たアルカリ金属塩の存在下での還元を伴う場合(たとえば、式A+-を有するポリアリールアルカリ塩の存在下)、上で詳細を記した通り、ろ過によって液相(たとえばTHF中のK+Napht-の溶液)を、ナノカーボン層間化合物を含む固相から分離することが可能になり得る。結果として得られる、アルカリ金属が挿入されたナノカーボンは、1または複数回、適切な溶媒で洗浄され得る。そのように洗浄されたナノカーボン層間化合物は、ついで、非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中に溶解される前に乾燥され得る。
1つの変形例では、方法(上記のいずれかの実施形態/変形例)は、非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)を工程c)で得た水性または有機混合物から取り除く工程d)をさらに含んでいてもよい。よって、当該方法は:
a)ナノカーボン層間化合物を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;
c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;
ここで、溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全または部分的に混和性であり、または、溶媒(B)もしくは溶媒混合物(B’)と完全もしくは部分的に混和性であり;および、
d)非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)を工程c)で得た水性または有機混合物から取り除き;
それによって、ナノカーボン材料の空気準安定性の水性または有機懸濁液を得る工程を含む。
例示的な実施形態では、上記の通り、工程a)には、工程b)の実行前に工程a’)が
続き、および/または、遠心分離工程a1)をさらに含み得る。
例示的な実施形態では、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブの時、工程b)を実行しないことが有利になり得る。よって、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブである時、当該方法は、工程c)が「工程a)で得た還元カーボンナノチューブの有機溶液を…と混合する」ことを指し、および/または、前述の通り遠心分離工程a1)をさらに含み得る点を除いて、直前に説明した工程a)、c)およびd);または工程a)、a’)、c)およびd)を含み得る。
工程d)の変形例:
空気準安定性であるナノカーボン材料の水性懸濁液に関して
有利には、非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)は水混和性であり得る。
有利には、非プロトン性有機溶媒(A)は極性であり得る。同様に、有利には、混合物(A’)の非プロトン性有機溶媒は極性であり得る。よって、溶媒(A)、混合物(A’)を構成する溶媒は、有利には、比誘電率ε≧4を有し得る。
有利には、非プロトン性有機溶媒(A)は、水よりも低い沸点を有し得る(すなわち、溶媒の沸点は1気圧(1.01325×105Pa)で<100℃である)。同様に、有
利には、混合物(A’)の非プロトン性有機溶媒は、水よりも低い沸点を有し得る。
有利には、工程a)および/または工程a’)の非プロトン性有機溶媒(A)または混合物(A’)の非プロトン性有機溶媒は完全に水と混和性であり得る。そのような溶媒としては、限定はしないがテトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン(DME)などが挙げられる。
工程a)および/または工程a’)の非プロトン性有機溶媒(A)または混合物(A’)の非プロトン性有機溶媒は、部分的に水と混和性であり得る。そのような溶媒としては、限定はしないが酢酸エチル、2−ブタノン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)などが挙げられる。
有利には、工程a)および/または工程a’)で用いる水混和性非プロトン性有機溶媒(A)またはその混合物(A’)は、沸点が水よりも低く、比誘電率がε≧4である、あらゆる非プロトン性有機溶媒あり得る。非プロトン性有機溶媒は、完全に水と混和性または部分的に水と混和性であり得る。有利には、水混和性非プロトン性有機溶媒(A)またはその混合物(A’)は、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン(DME)、酢酸エチル、2−ブタノン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、石油エーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)などであり得る。有利には、水混和性非プロトン性有機溶媒(A)またはその混合物(A’)は、テトラヒドロフラン(THF)であり得る。
有利には、工程d)における非プロトン性有機溶媒(A)またはその混合物(A’)の除去は、蒸発により行い得る。有利には、蒸発は、当該技術で公知のあらゆる従来の方法により行い得る。たとえば、回転式蒸発装置が用いられ得るか、または、蒸発のために溶媒混合物を単に放置し得る。有利には、これら全ての方法で、混合物を加熱しないように気をつけるべきである。
例示的な実施形態では、単一の非プロトン性有機溶媒(A)を用い、当該方法は:
a)ナノカーボン層間化合物を、沸点が水よりも低く、比誘電率がε≧4である水混和性非プロトン性有機溶媒に、不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;
c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;および、
d)水混和性有機非プロトン性溶媒を工程c)の水性混合物から除去し、それによって完全剥離ナノカーボンの水性懸濁液を得る工程を含む。
同様に、例示的な実施形態では、工程a)には、上記の通り、工程b)の実行前に工程a’)が続き、および/または、遠心分離工程a1)をさらに含み得る。
同様に、例示的な実施形態では、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブの時、工程b)を実行しないことが有利になり得る。よって、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブの時、当該方法は、工程c)が「工程a)で得た還元カーボンナノチューブの有機溶液を…と混合する」ことを指し、および/または、前述の通り遠心分離工程a1)をさらに含み得る点を除いて、直前に説明した工程a)、c)およびd);または工程a)、a’)、c)およびd)を含み得る。
空気準安定性であるナノカーボン材料の有機懸濁液に関して
有利には、工程c)は、工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気有機溶媒(B)または有機溶媒の脱気混合物(B’)と混合することを伴い得る。
有利には、有機溶媒(B)は、工程a)および/または工程a’)で用いる非プロトン性有機溶媒(A)または混合物(A’)の非プロトン性有機溶媒よりも高い沸点を有し得る。同様に、有利には、混合物(B’)の有機溶媒は、工程a)および/または工程a’)で用いる非プロトン性有機溶媒(A)または混合物(A’)の非プロトン性有機溶媒よりも高い沸点を有し得る。
たとえば、有機溶媒(B)または混合物(B’)の有機溶媒の比誘電率は、ε≧4、≧6、≧8または≧10であり得る。上記の工程c)で用いられ得る例示的な有機溶媒(B)または混合物(B’)の有機溶媒としては、限定はしないが、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、並びに、限定はしないがエタノールまたはイソプロパノールといったアルコールが挙げられる。
例示的な実施形態では、単一の非プロトン性有機溶媒(A)を用い、当該方法は:
a)ナノカーボン層間化合物を、比誘電率がε≧4である非プロトン性有機溶媒(A)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;
c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、比誘電率がε≧2であり、沸点が工程a)および/または工程a’)の非プロトン性有機溶媒(A)よりも大きい適切な量の脱気有機溶媒(B)と混合する工程;および、
d)非プロトン性有機溶媒(A)を工程c)の水性混合物から除去し、それによって溶媒(B)中の、完全剥離ナノカーボンの有機懸濁液を得る工程を含む。
同様に、例示的な実施形態では、工程a)には、上記の通り、工程b)の実行前に工程a’)が続き、および/または、遠心分離工程a1)をさらに含み得る。
同様に、例示的な実施形態では、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブの時、工程b)を実行しないことが有利になり得る。よって、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブの時、当該方法は、工程c)が「工程a)で得た還元カーボンナノチューブの有機溶液を…と混合する」ことを指し、および/または、前述の通り遠心分離工程a1)をさらに含み得る点を除いて、直前に説明した工程a)、c)およびd);または工程a)、a’)、c)およびd)を含み得る。
フィルム/積層物
1つの変形例では、方法は、工程c)またはd)の完全剥離ナノカーボンの水性または有機懸濁液を、所定の基材に積層する工程d1)をさらに含んでいても良い。工程d1)は、工程d)の有無を問わず実行され得る。
よって、例示的な実施形態では、当該方法は:
a)ナノカーボン層間化合物を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;
c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;
ここで、溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全もしくは部分的に混和性であり、または、溶媒(B)もしくは溶媒混合物(B’)と完全もしくは部分的に混和性であり;
それによって、ナノカーボン材料の空気準安定性の水性または有機懸濁液を得る工程;および、
d1)工程c)で得た完全剥離ナノカーボンの水性または有機懸濁液を基材上に積層する工程を含む。
他の例示的な実施形態では、当該方法は:
a)ナノカーボン層間化合物を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;
c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;
ここで、溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全もしくは部分的に混和性であり、または、溶媒(B)もしくは溶媒混合物(B’)と完全もしくは部分的に混和性であり;
d)非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)を工程c)で得た水性または有機混合物から取り除き;
それによって、ナノカーボン材料の空気準安定性の水性または有機懸濁液を得る工程;および、
d1)工程d)で得た完全剥離ナノカーボンの水性または有機懸濁液を基材上に積層する工程を含む。
同様に、フィルム/積層物の変形例の例示的な実施形態では、工程a)には、上記の通り、工程b)の実行前に工程a’)が続き、および/または、遠心分離工程a1)をさらに含み得る。
同様に、例示的な実施形態では、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブの時、工程b)を実行しないことが有利になり得る。よって、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブの時、当該方法は、工程c)が「工程a)で得た還元カーボンナノチューブの有機溶液を…と混合する」ことを指し、および/または、前述の通り遠心分離工程a1)をさらに含み得る点を除いて、直前に説明した工程a)、c)、d)およびd1);または、工程a)、c)およびd1);または、工程a)、a’)、c)、d)およびd1);または、工程a)、a’)、c)およびd1)を含み得る。
積層が実行され、溶媒(複数可)が除去されると、ナノカーボン化合物は次いで表面と相互作用し、表面上で安定した状態を維持する。
よって、本発明の方法に従って取得可能な、空気準安定性である完全剥離ナノカーボンの水性または有機懸濁液のナノカーボン材料を基材上に積層するための使用も提供される。たとえば、本発明の方法に従って取得可能な、空気準安定性である完全剥離ナノカーボンの水性または有機懸濁液は、透明電導フィルムの調製のために用いられ得る。
積層工程は、ある量のナノカーボンの水性懸濁液または有機懸濁液を基材上に単に積層(ドロップキャスティング)し、続いて水性および/または有機溶媒を蒸発させてナノカーボン化合物を単離することで実行され得る。
積層工程d1)は、たとえばブラシまたはナノカーボン懸濁液のフィルムを基材上に積層するのが可能なほかのあらゆる道具を用いた適用によっても実行され得る。
ナノカーボン積層はまた、浸漬コーティングでも実行され得る。たとえば、基材をある時間の間ナノカーボンの水性または有機懸濁液に浸漬し、ナノカーボン材料の基材上への吸着を可能にし得る。基材は次いで、均一のコーティングを得るために好ましくは均一の速度で水性または有機懸濁液から除去され、水および/または有機溶媒を次いで基材から蒸発させ得る。
ナノカーボン積層はまた、スピンコーティングでも実行され得る。たとえば、ナノカーボンの水性または有機懸濁液の滴を回転する基材上に積層するが、これは、高温度であってもよい。好ましくは、回転は、均一のコーティングを得るために全プロセスの間で一定に保たれ、水および/または溶媒を次いで蒸発させる。スピンコーティングが高温度で実行される場合、温度は10℃から200℃の間であり得る。
ナノカーボン積層は、スプレーコーティングによって、任意で加熱された基材上に実行され得る。
ナノカーボン積層は、ロール対ロールの積層、ドクターブレードコーティングなどといった、様々な方法のコーティングで実施され得る。
そのような方法は、当業者には公知であり、当業者であれば、基材の性質、基材およびナノカーボン間の相互作用、ナノカーボン水性懸濁液または有機懸濁液による基材の湿潤
性といったパラメーターおよび当業者が理解するほかの関連したパラメーターによって、実験条件を適応させる方法を知っている。
用いられ得る基材としては、非制限的であるが、セラミックス、金属、ガラス、シリカ、シリコン、モリブデナイト(MoS2)、雲母、グラファイトおよび/またはプラスチックが挙げられる。有利には、基材は、カーボンナノチューブ、ナノダイアモンド、カーボンナノホーン、グラフェンおよびフラーレン型の材料を積層するのに使用および/または適応され得るあらゆる公知の基材であり得る。たとえば、基材は、HOPG(高度配向パイロライトグラファイト)、Si/SiO2ウェイファー、雲母、ガラス、MoS2およびその目的に適切な各種プラスチックであり得る。
例示的な実施形態では、基材は、ナノカーボン材料を積層する前に官能基付与または修飾され得る。一般的に、当業者に公知のいずれの表面改質方法も用いることができる。改質の種類の選択は、基材の性質、用いる水溶液(水またはイオン性溶液)、用いる有機溶媒(A、A’、B、B’)およびナノカーボン積層物の質を改善するために基材表面で所望される物理化学的相互作用によって変化し得る。
上記された変形例および実施形態は:
−用いるナノカーボンの種類;
−カーボンナノチューブの任意であるチューブ開口処理;
−ナノカーボン層間化合物およびそれらを調製する方法;
−工程a)および/または工程a’)の非プロトン性有機溶媒;
−工程a)で得た還元ナノカーボンの有機溶液;
−再酸化工程b);
−有利には、カーボンナノカーボン材料がカーボンナノチューブであり得る場合の再酸化工程b)の省略;
−任意の遠心分離工程a1);
−工程c)の溶媒(水およびイオン性水溶液を包含)の脱気手段;
−塩種のイオン化を支持できるだけのイオン種の含量および能力を含む、工程c)の有機溶媒(B)および(B’);
−工程c)で、単独または(B)もしくは(B’)と混合して用いる水のpH調節;
−単独または(B)もしくは(B’)との混合物で、工程c)で言及されるイオン性水溶液のpH調節;
−工程d)で非プロトン性有機溶媒を除去する手段;
−工程c)またはd)で得られるナノカーボンの懸濁液の使用/適用;

に関して、すべて、以下で説明する複合物の適用も含めて、上記の「工程d)の変形例」および「フィルム/積層物」の実施形態に、必要に応じて変化させて適用可能である。
別の態様では、本発明は、本発明に従った方法で取得可能な、空気準安定性である完全剥離ナノカーボンの水性懸濁液も提供する。
さらに別の態様では、本発明は、本発明に従った方法で取得可能な、空気準安定性である完全剥離ナノカーボンの有機懸濁液も提供する。
さらに別の態様では、本発明は、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液であって、水性または有機懸濁液のラマンスペクトルが左右対称の2Dバンド(「G’バンド」とも呼ぶ)を示すことを特徴とし、これは、ローレンツ関数に当てはめられ得、調整済み決定係数R2は0.98より大きく、半値全幅(FWHM)は≦45cm-1、好ましくは≦40cm-1、より好ましくは≦35cm-1、最も好ましくは≦30cm-1である。有利には、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液
は、界面活性物質フリーであり得る。
空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液はまた、吸収分光で特徴付けられ得る。例示的な実施形態では、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液は、UV可視吸収ピークをλmax=269nmで示す。有利には、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液は、界面活性物質フリーであり得る。
空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機分散液はまた、界面活性物質がないことで特徴付けられ得る。よって、本発明はまた、界面活性物質を含まず、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機分散液も提供する。
完全剥離グラフェンの水性懸濁液の溶媒は、水もしくはイオン性水溶液と脱気有機溶媒(B)の脱気混合物、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、BもしくはB’と非プロトン性有機溶媒(A)もしくは非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)との脱気混合物であり得る。
完全剥離グラフェンの有機懸濁液の溶媒は、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、BもしくはB’と非プロトン性有機溶媒(A)もしくは非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)との脱気混合物であり得る。
例示的な実施形態では、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液は、それのみではないが、主に単層のグラフェンを含有する。
例示的な実施形態では、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液に存在する単層グラフェンは、懸濁液中の炭素材料の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%に相当する。すなわち、例示的な実施形態では、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液に存在する多層グラフェンは、懸濁液中の炭素材料の50%未満、より好ましくは25%未満、最も好ましくは10%未満に相当する。
例示的な実施形態では、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液中の単層グラフェンは、≧0.01g/L、好ましくは≧0.05g/L、好ましくは≧0.10g/L、好ましくは≧0.16g/Lの濃度で存在する。
さらに他の態様では、本発明はまた、界面活性物質を含まない、空気準安定性である、個別化されたカーボンナノチューブの水性または有機懸濁液も提供する。懸濁液中の個別化されたカーボンナノチューブの存在は、光ルミネセンスで特徴付けられ得る。この技術は、2002年から、個別化されたカーボンナノチューブの存在の証拠として使用されている([38]参照)。
本明細書で用いられる「界面活性物質」という語句は、1mMまたは0.05%w/wの濃度(一番低い方)および25℃で、水−ヘキサンの界面張力を2mN/m超で低下させるあらゆる物質を指す。
有機または水性溶媒中のカーボンナノチューブの懸濁液が報告されており、そのうちいくつかは個別化されたカーボンナノチューブを含有し得る。しかし、全ての場合で、個別化されたカーボンナノチューブの懸濁液は、界面活性剤の存在下における超音波処理によって得られたものであった。そのような報告の一例が、O’Connell et al.による研究[38]である。
対照的に、本発明に従った個別化されたカーボンナノチューブの水性または有機懸濁液は、界面活性物質を含まない。さらに、個別化されたカーボンナノチューブは、(ナノチューブを傷つける)超音波処理を経ては得られない。その代わりに、穏やかな溶解技術を用いて、公知のカーボンナノチューブの懸濁液よりも高品質な個別化されたカーボンナノチューブ(欠陥/傷がより少ない、個別化されたカーボンナノチューブ)の水性または有機懸濁液を得る。
したがって、界面活性物質が一切存在せず、裸眼または光学顕微鏡で見える凝集体が不在であることを特徴とする、完全に個別化されたカーボンナノチューブの水性または有機懸濁液も提供される。カーボンナノチューブの有機または水性懸濁液を光学顕微鏡で検査することは、およそ1ミクロンの最小サイズを有する可能な凝集体の検知が可能になる。たとえば、懸濁液サンプルを10〜100の倍率を有する光学顕微鏡で分析し、カーボンナノチューブ凝集体の不在を確認し得る。
カーボンナノチューブは、強い凝集傾向を有し、界面活性物質が不在だと、カーボンナノチューブが本発明の方法に従った懸濁液中に配置されない限りは、凝集する。だからこそ、カーボンナノチューブの水性または有機懸濁液を調製する公知の方法は全て、カーボンナノチューブを懸濁液中に維持させるために界面活性物質の使用を採用するのである。本出願で初めて、発明者らは、空気準安定性である個別化されたカーボンナノチューブの懸濁液を、界面活性物質を一切含まずに調製する方法、並びに、界面活性物質を含まない個別化されたカーボンナノチューブの水性または有機懸濁液を提供する。
例示的な実施形態では、個別化されたカーボンナノチューブの水性懸濁液の溶媒は、水もしくはイオン性水溶液と脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、BもしくはB’と非プロトン性有機溶媒(A)もしくは非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)との脱気混合物であり得る。
個別化されたカーボンナノチューブの有機懸濁液の溶媒は、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、BもしくはB’と非プロトン性有機溶媒(A)もしくは非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)との脱気混合物であり得る。
例示的な実施形態では、カーボンナノチューブは、単層(SWCNT)、二層(DWCNT)、数層(FWCNT)または多層(MWCNT)カーボンナノチューブであり、好ましくは単層、二層、数層カーボンナノチューブであり、最も好ましくは単層カーボンナノチューブであり得る。
例示的な実施形態では、カーボンナノチューブは、有利には、工程a)の前に、チューブ開口前処理にかけ得る。当業者であれば、チューブを開口する公知の方法について十分な情報源を見つけられるだろう。たとえば、Doped Carbon Nanotubes,J.Sloan,M.Monthioux,in Carbon Meta−Nanotubes:Synthesis,Properties and Applications,1st Ed.Marc Monthioux Ed.,John Wiley&Sons(2012),225−271[48]を参照。
たとえば、カーボンナノチューブは、空気中で一定の重量を落とすまで加熱することで開かれ得る。そうするために、サンプルを熱重量測定装置(TGA)内に配置し、空気中での重量低下が加熱の際にモニターされ得る。次いで、オーブン内に配置された空気中の本当のサンプルを、TGAと同じ加熱勾配で加熱し、特定の重量低下に対応する特定の温度に到達した時にオーブンから取り出し得る。実際の体重低下は、結果として得られたサ
ンプルの重量を量ることで確認し得る。ナノチューブの源次第で、最適な重量低下は、十分なナノチューブ開口とナノチューブの破壊および材料消失のつりあいをとることで(すなわち、(i)十分なナノチューブ開口と、(ii)ナノチューブ破壊および材料消失との間の許容できる比が得られる時に)、決定され得る。
読者も理解するとおり、市販のCNTには既に開口されているものもある。CNTを開口し得るかどうかの決定は、穏やかな超音波処理を伴ってCNTを水中に分散させることで達成され得る。CNTが底に落ちたら、開口している。浮遊していたら、閉口している。
開口したCNTは、本発明の方法で、従来のCNTとまったく同じように加工処理され得る。有利には、本発明の方法における開口したCNTの使用は、チューブ開口前処理にかけない従来のCNTで方法を実行するよりも、濃縮および安定した分散液をもたらす。
完全剥離グラフェンおよび個別化カーボンナノチューブの水性または有機懸濁液は、本発明に従った、本明細書で記載したあらゆる変形例を用いた方法で取られ得る。したがって、上記された変形例および実施形態は:
−用いる出発ナノカーボンの種類(グラファイトまたはカーボンナノチューブ);
−非プロトン性有機溶媒(A)または(A’);
−塩種のイオン化を支持できるだけのイオン種の含量および能力を含む、有機溶媒(B)および(B’);
−単独または(A)、(A’)、(B)および/もしくは(B’)との混合物で用いられる水のpH;
−単独または(A)、(A’)、(B)および/もしくは(B’)との混合物で用いられるイオン性水溶液のpH;
−以下で説明する複合物の適用も含めた、完全剥離グラフェンまたは個別化カーボンナノチューブの水性または有機懸濁液の使用/適用;
に関して、すべて、上記の完全剥離グラフェンおよび個別化されたカーボンナノチューブの水性または有機懸濁液の実施形態に、必要に応じて変化させて適用可能である。
複合物
別の態様では、本発明は、複合材料の調製のため、本発明の方法で取得可能な水性ナノカーボン懸濁液(水性インク)の使用も提供する。
さらに別の態様では、本発明は、複合材料の調製のため、本発明の方法で取得可能な有機ナノカーボン懸濁液(有機インク)の使用も提供する。
例示的な実施形態では、本発明は、複合材料の調製のため、空気準安定性である完全剥離グラフェンの水性または有機懸濁液の使用も提供し、当該グラフェンは、グラフェンのラマンスペクトルが左右対称の2Dバンド(「G’バンド」とも)を示すことを特徴とし、これは、ローレンツ関数に当てはめられ、調整済み決定係数R2は0.98より大きく、半値全幅(FWHM)は≦45cm-1、好ましくは≦40cm-1、より好ましくは≦35cm-1、最も好ましくは≦30cm-1である。
例示的な実施形態では、本発明は、複合材料の調製のため、界面活性物質を含まず空気準安定性である、個別化されたカーボンナノチューブの水性または有機懸濁液の使用も提供する。
たとえば、複合材料は、本発明に従った水性または有機ナノカーボンインク、好ましくは有機ナノカーボンインクをポリマー溶液またはポリマー混合物と混合する工程を含む方
法によって取得され得る。ポリマーは、本発明に従った水性または有機ナノカーボンインクと混合するのに適切なあらゆるポリマーであり得る。
有利には、本発明の方法で取得可能な完全剥離ナノカーボンおよび/または水性もしくは有機ナノカーボンインクは、コンデンサーまたはトランジスタといった、電子または超小型電部品を作製するのに用いられ得る。
有利には、複合材料は、ナノカーボン粒子に加え、複合材料に従来用いられるほかの材料、たとえば充填剤を含み得る。
前記複合材料の組成物に用いられる充填剤は、ナノメートルおよび/またはミクロメートルのサイズを有し得る。
本明細書で使用される「ナノメートルサイズの材料」は、少なくとも1つの空間寸法において、サイズが数ナノメートルである材料を指す。たとえば、少なくとも1つの空間寸法における材料のサイズは、0.3から20nmの間、好ましくは0.3から2nmの間である。
本明細書で使用される「ミクロメートルサイズの材料」は、サイズが1から100ミクロンの間である材料を指す。
複合材料は、ミクロメートルサイズの充填剤のみ、または、ナノメートルサイズの充填剤のみ、または、ミクロおよびナノメートルサイズ充填剤の混合物を含み得る(たとえば、ナノメートルおよびミクロメートルの充填剤を同一材料内に含む複合材料が記載されているFR 2 873 381 [30]を参照)。
本明細書に記載する方法は、ナノカーボン構造の分野において研究の発展を妨害する現在の大きな問題を解決する:空気に安定または準安定である、完全剥離ナノカーボンの液体調合物の欠如である。よって、本発明は、周囲環境下で取り扱われ得る、完全剥離ナノカーボン懸濁液を提供する。さらに、これらのインクは、界面活性物質を含まない。
本発明の発明者らは、ナノカーボンを、水、イオン性水溶液、2成分の水−有機溶液または完全剥離ナノカーボン含有有機溶媒に懸濁させる一般的な方法を発展させた最初の研究者である。超音波処理または攪拌で調製された水性界面活性物質含有調合物に関する様々な報告が科学的な文献でなされている。[Paton,K.R.et al.Scalable production of large quantities of defect free few−layer graphene by shear exfoliation in liquids.Nat.Mater.13,624−630(2014)][23]。しかし、前記出版物の題目にもある通り、結果として得られる「グラフェン」は、完全に剥離されておらず、厚さの分布は、5層周辺を最大に1層から15層の間である。よって、本発明に従ったインク(ナノカーボン水性懸濁液)は、少なくとも2つの側面において非常に優れている:(i)ナノカーボンが完全に剥離されており(図6(AFMの高さ分布が1枚の層でピーク)および図11(フィルム厚は2層以下の均一厚を示す)を参照)、(ii)インクが界面活性物質を含まない。
同様に、ナノカーボン塩の極性の非プロトン性溶媒への溶解が報告されている(参照文献[11−13]および[24]を参照)。しかし、結果として得られるナノカーボン混合物は、空気の影響を受け、周囲雰囲気下では取り扱いできない。本発明の、水またはイオン性水溶液が有機溶媒(B)または有機溶媒混合物(B’)で置き換えられる変形例では、空気準安定性である完全剥離ナノカーボンの有機懸濁液が得られ、これは、今までに
聞いたことのないものである。
産業的な観点から、ナノテクノロジーおよび複合材料産業において、水性および/または有機ナノカーボン懸濁液/インクを得る可能性は、明らかに重要な要素である。なぜなら、そのような懸濁液/インクはこの分野で技術的な発展を達成するのに不可欠な要素だからである。
この発見は、ナノカーボン材料を水または水溶液(すなわち、2成分の水−有機溶媒溶液)または有機溶媒に溶解するのは不可能だと見なされた当業者の既成概念とは逆行する。
よって、本発明の方法は、(われわれが知る限り)初めて、完全剥離ナノカーボンの水性懸濁液(水性インク)をもたらすという点で非常に効果的なものである。
さらに、別の態様では、本発明の方法は、(われわれが知る限り)初めて、空気準安定性である完全剥離ナノカーボンの有機懸濁液(有機インク)をもたらすという点で非常に効果的なものである。
例示的な目的で提示する添付の図面に例示される通り、次に続く実施例を読めば、当業者には他の利点も容易に明らかになる。
図1Aは、水中グラフェン懸濁液(i)および水(ii)の2.33eVでのラマンスペクトル、並びに、水除去後に得られるグラフェンスペクトル(iii)を示す。さらに、参照文献32の実験の詳細に従って調製した胆汁酸塩とのグラフェン懸濁液のスペクトルは(iv)で表される。スペクトル(i)を有するグラフェン懸濁液は、実施例1bに従って調製された。脱気された分散液の優れた剥離が、スペクトル(iii)とスペクトル(iv)を比較した2Dバンドの形状及び高さから容易に分かる。スペクトル(iii)および(iv)は、水の屈曲ピークで基準化した(ピークには「*」を付けている)、同一セル内の分散液のスペクトル(iii)および(iv)から、それぞれ純水に関するスペクトルの減算によって取得した。図1B〜1Dは、実施例1bに従って調製されたグラフェン懸濁液から得た、2.33eVでの水中単層グラフェン(「SLG」)の2D、D、GおよびD’ピークの典型的なあてはめを示す。2D線におけるかすかな非対称性は、水のバックグラウンド減算が完全でないためである。図1Bに示す2Dバンドは、0.9895の調整済み決定係数R2を有する。図1Eは、実施例1bに従って調製したグラフェン懸濁液に関して、ラマン2Dバンドを時間の関数として(1.94eV)示しており、素晴らしい時間安定性を示している。 図2は、実施例1bの水中グラフェン懸濁液の、異なるエネルギーでのラマンスペクトルを示す。グラフェンスペクトルは全て、水ピークで基準化した、同一セル内グラフェン懸濁液から純水に関するスペクトルを減算することで得た。同一の手順が、水のシグナルがGバンドから離れている重水にも適用され、同様の結果が得られたことに留意されたい。Gバンドは、全エネルギーで1587+/−2cm-1に位置する。約1300cm-1におけるDバンドおよび約2600cm-1における2Dバンドは分散しており、その位置はエネルギーとともに予想通りに動く。強対称(ローレンツの線形状)かつ狭い(半値全幅(FWHM)=28cm−1)2Dバンドは、単一グラフェン層の特徴である。 図3は、実施例1bのグラフェン懸濁液由来のグラフェン積層物のラマンスペクトルを示す。 図4は、実施例1aの水中グラフェン懸濁液の吸収スペクトルを示す。 図5は、実施例1aのグラフェン懸濁液由来のグラフェン薄片の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。 図6は、原子間力顕微鏡の高さ画像(6B)および実施例1aのグラフェン懸濁液由来のグラフェン薄片に関連した高さの統計(6A)を示す。閾値を0.51nmに設定した場合(すなわち単層(0.34nm)および二層(0.68nm)のそれぞれの予測される厚さの中間)、示す画像は92%の単層および7%の二層グラフェン薄片を有する。 図7は、水(左の瓶)および実施例1bの水中グラフェン懸濁液(右の瓶)に照射したレーザー光を示す。レーザーは、分散されずに水を通り(左)、一方で、グラフェン分散液(右)は、大きな(コロイドサイズ)グラフェン薄片による光分散のために、チンダル現象を示している。 図8は、90度で測定した動的光散乱法(DLS)データを示し、調製から2週間後も顕著な変化が一切ない、実施例1aの水中グラフェン分散液の散乱特性を示している。 図9は、90度で測定した動的光散乱法(DLS)データを示し、調製から2週間後も顕著な変化が一切ない、負電荷の塩で安定させた実施例1aの水中グラフェン分散液の散乱特性を示している。 図10は、90度で測定した動的光散乱法(DLS)データを示し、調製から2週間後も顕著な変化が一切ない、正電荷の塩で安定させた実施例1aの水中グラフェン分散液の散乱特性を示している。 図11は、実施例1aの水中グラフェン分散液から真空ろ過によって調製したグラフェン薄フィルムの透過率スペクトルを示す。 図12Aは、本発明に従った水性グラフェン分散液調製の例示的な方法を示す。具体的には、KC8、グラファイト層間化合物(GIC)を、単層グラファイトグラフェニドポリイオンの形態で、THFに不活性雰囲気下で溶解する。グラフェニドイオンは次いでTHF中で空気にさらされることでグラフェンに酸化され、すぐに脱気水に移される。水性グラフェン懸濁液の安定性は個別グラフェン平面間の相互作用によって決定される。通常の実験条件では、水に溶解したガス(約1mM)がグラフェン表面上に吸着し、分散された物体間に広範囲に引付けあう相互作用を引き起こし、凝集を引き起こす(図1A左下)。逆に、水が脱気されている場合(溶解したガスを除去)、水−イオンは容易にグラフェン表面に吸着し、分散された物体間に特定の電荷を付与する。反発する静電相互作用力は分散された材料の安定を支持する(図1A右下)。図12Bは、実施例1bに従って得た0.16g/Lの空気安定性の水性SLG分散液の複数の瓶を示す。図12Cは、実施例1bの水中グラフェン分散液のUV可視吸収スペクトルを示し、基材上の単層グラフェンの吸収に関して報告された正確な波長での吸収ピークを示している[39]。 表1:図1Aに対応するデータ:2.33eVにおける位置(cm-1)、半値全幅(FWHM、cm-1)および関連する強度比。 表2:図2に対応するデータ:励起エネルギーを関数とした位置ω(cm-1)、線幅Γ(cm-1)、および関連強度比。*I2D/IGは、近赤外線での水の強い吸収バンドにより、1.17eVでは適切に測定できなかった。
均等物
以下に続く代表的な実施例は、本発明の例示に役立てることを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、そのように理解されるべきではない。実際に、以下に続く実施例および本明細書で引用した学術誌および特許文献への参照を包含する、本明細書で例示および記載したものに加え、本発明の様々な変更およびさらに多くの実施形態が、本文献の全内容から、当業者には明らかになるであろう。引用された参考文献の内容は、技術水準を例示するために、参照によって本明細書に組込まれることもさらに理解されたい。
次に続く実施例は、様々な実施形態および均等物で本発明の手法に順応され得る、重要な追加の情報、例証および教示を含む。
例証
本発明の方法よびその適用は、本発明の方法が実践され得る実施形態のいくつかを例示する実施例によってさらに理解され得る。しかし、これらの実施例は本発明を限定しないことを理解されたい。本発明の変形例は、公知のものまたはさらに発展したものでも、本明細書に記載され、その後の特許請求の範囲で請求される本発明の範囲に包含されると考えられる。
ここで、本発明を特定のナノカーボン材料を用いて例証するが、本発明をこれらのナノカーボン材料に限定する意図はないことを理解されたい。
実施例1:水中グラフェン懸濁液の調製
実施例1a:
200mgのKC8(STREM Chemicals社)を、不活性雰囲気下で10
0mLのTHFに分散させ、この混合物をきつく密閉し、4日間磁気攪拌機(800rpm)で混合した。攪拌後、分散液を一晩放置し、大きなグラファイト凝集体を形成させ、底に沈殿させた。混合物を10mLガラス瓶内で、30002000rpmで20分間遠心分離した。溶液の上から3分の2をピペットで抽出し、使用のために保存した。光学吸収測定および光分散測定をこのサンプルに実施した。
蒸留水を30分間脱気し、75℃の水浴で30分間加熱した。グラフェニド溶液を1分間、周囲条件下で酸化させた。注射器のポンプを用いて、THF中グラフェニド溶液4ml(2部)を、やさしく攪拌しながら6ml(3部)の脱気水に一滴ずつ添加し、WGrTHF3:2というラベルのサンプルを調製した(図8)。2時間ごとにやさしく攪拌しながら、THFを室温で72時間蒸発させ、グラフェン濃度が0.35mg/mLの透明の水中グラフェン分散液を得た。異なる濃度(0.53mg/mL)の水中グラフェン分散液も、同体積のTHF中還元グラフェン溶液(6mL)を同体積の水(6mL)に添加することで調製した。(これを、実施例2および3で繰り返した。)
実施例1b:
グラフェニド溶液
108mgのKC8を、不活性雰囲気下で18mLの蒸留THFに分散させ、この混合物をきつく密閉し、6日間磁気攪拌機(900rpm)で混合した。攪拌後、分散液を一晩放置し、大きなグラファイト凝集体を形成させ、底に沈殿させた。混合物を10mLガラス瓶内で、3000rpmで20分間遠心分離した。溶液の上から3分の2をピペットで抽出し、使用のために保存した。
THFから水へのグラフェンの移動
グラフェニド溶液を1分間、周囲条件下で酸化させた。THF中グラフェニド溶液を脱気水に添加することでグラフェンを水に移し、次にTHF蒸発を行った。短くまとめると、慎重に洗浄した磁気テフロンバーの攪拌機を脱気される水(200mL)に導入して、ガス気泡核の形成を誘導した。水を、0.2mbarの圧力下の穏やかな攪拌にかけ、30分間の脱気を行った。次いで、フラスコへの気圧を大気圧まで穏やかに増大して戻した。4mLの脱気水を既に洗浄した20mLのガラス瓶に移し;続いて、ステンレス鋼の針を用いてやさしく攪拌しながら、ピペットで滴下しながらグラフェニド溶液(1分間の空
気による酸化後)を添加した。瓶を開けたまま埃のない環境で放置し、最初の10時間は1時間ごと、そのあとは時折ステンレス鋼の針を用いてやさしく攪拌しながら、THFを室温で蒸発させ、かすかに濃色の水中グラフェン分散液を得た。異なる体積のTHFグラフェニド溶液を一定体積比の脱気水に混合することで、異なる水中グラフェン濃度を作製した。THFの蒸発後、グラフェンをきつく密閉した瓶に保存した。吸収分光測定、ラマン分光測定、動的光散乱法を用いて、分散液の特性評価を行った。
透過型電子顕微鏡:グラフェン分散液を、TEMによる特性評価のために、穴のあいた炭素格子にドロップキャスティングを行った。材料の構造および形態上の特性評価を、折りこまれた端の局所の厚さの測定のためにグラファイトの縁である(0,0,2)の画像を形成する解像度を維持しながら、グラフェンへの光線による損傷を減らすために120kVの加速電圧で操作したFEI Tecnai F20 ST透過型電子顕微鏡(TEM)で実施した。EDAXエネルギー分散X線分光計(EDX)を用いながら、TEM中in−situで局所元素分析を行った。異なるグラフェン分散液を用いて、AFM特性評価のための積層物を作成した。雲母上にAFM積層物を作成するために用いたグラフェン分散液は、脱気水が脱気された1mMのAsPh4Cl水溶液に置き換わった以外は、上記と同様の条件およびプロトコルを用いて作製された。結果として得られるグラフェン分散液を、AFM分析のために、新たに切断した雲母表面にドロップキャストした。
実施例1bの全体の結果を図12Aに示している。通常の実験条件では、水に溶解したガス(約1mM)がグラフェン表面上に吸着し、分散された物体間に広範囲に引付けあう相互作用を引き起こし、凝集を引き起こす。逆に、水が脱気されている(溶解したガスを除去している)場合、水−イオンは容易にグラフェン表面に吸着し、分散された物体間に特定の電荷を付与する。反発する静電相互作用力は分散された材料の安定を支持する。電気泳動測定は、分散したグラフェンは水中で負電荷になり、OH−の優先的な吸着が起こっていることを示す。
グラフェンサンプルを、ラマン分光測定法で特性評価した(ラマン分光測定法は、層の数、多層の場合は積み重なる順番、ドーピング、欠陥の量および性質を決定するのにとりわけ強力なツールである)。分散液のラマンスペクトルを図1Aおよび2に報告しており、グラフェンに典型的なスペクトルを示している。
多くの文献および会社は、≪グラフェン≫または≪単層グラフェン≫分散液、懸濁液もしくは溶液を主張するが、本発明の前にはそのような分散液は存在していなかった。機械エネルギーを用いてグラファイトを分散させることで(これは「グラフェン分散液」を調製するのに通常用いられる技術である)、熱力学に逆行し、グラファイト中のグラフェンの効率的な充填をばらばらにする。よって、結果として得られる分散液は、分布の尾を形成する単層で厚くなる統計的分布となるはずである。これは、実際にたとえば[23]で見られる。
対照的に、参照文献[12]および[47]の有機溶媒中のグラフェニド溶液といったすでに完全に剥離した系からはじめると、発明者らは、必要なものはグラフェンの再凝集を回避するためのエネルギーバリアのみであることを発見した。本発明の方法において、水、イオン性水溶液、有機溶媒(B)、有機溶媒の混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との混合物(工程c)を脱気することは、天然に存在するOH-イオンを除いて、他に添加剤を追加する必要なくそのバリアを産出する。最後に、pHを低下もしくは増大させること、または、アンモニウム(NH4 +)もしくはテトラ置換アンモニウムイオンといった置換アンモニウムイオン、たとえばテトラアルキルアンモニウム塩、たとえばBu4+といったアルキルアンモニウム塩;限定されないがBF4 -、PF6 -またはAsF6 -といった疎水性イオン;尿酸イオン;テトラフェニルホ
スホニウム、テトラフェニルボレート(B-Ph4Na+)もしくはテトラフェニルアルソニウム(As+Ph4Cl-);といったフェニル含有イオン;ナフタレニル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルラジカルなどといった極性部分を有するポリアリール置換イオン(たとえば、1−ピレンスルホン酸塩、2−ナフトキシ酢酸塩または2−ナフタレンスルホン酸塩またはこれらの尿酸塩、好ましくは1−ピレンスルホン酸塩または2−ナフトキシ酢酸塩)といった他のイオンを添加することで、より高いグラフェン濃度が得られる。
単層性:
本発明に従った完全剥離グラフェンの水分散液のラマンスペクトルが図1で報告されている(たとえば、図1Aのスペクトル(iii))。30cm-1未満の半値全幅(FWHM)の狭く左右対称の2D(G’とも呼ぶ)バンドといったSLGの典型的な特徴を示している。2D、D、GおよびD’ピークの良好なあてはめは、単一のローレンツ線を用いて得られる(図1B〜D)。本発明に従ったグラフェンの脱気された水性分散液のラマンスペクトルを、参照[32]に従って調製した超音波処理を用いたコール酸ナトリウム(SC)懸濁液(図1Aのスペクトル(iv))といった他の水性分散液と比較するのが面白い。剥離の質は、本発明に従って脱気された分散液に関する2Dバンドがより鋭くより強い(スペクトル(iii))一方で、Dバンドは超音波処理を用いた分散液(スペクトルiv)に比べてかすかに向上しただけであることから、容易にわかる。最後に、本発明に従った完全剥離グラフェンのこれらの水性分散液の安定性が図1Eに示されており、ここでは、ラマン2Dバンドの時間による発展が提示されている。少なくとも5週間の保管後に、明らかな変化は一切見られない。同様に、光分散実験は、5週間にわたって変化を一切示さない。単層グラフェン(SLG)の重要なラマンサインは、2D(G’)バンドの形状および幅である。多層、AB積み重ね(Bernal)数層グラフェンは、複数のローレンツ線であてはめられた複雑な形状を有する2Dバンド示す[40]。非整合積層グラファイト(Turbostratic graphite)、すなわちc軸に沿って相関していないグラフェン層を有するグラファイトは、50cm-1のFWHMを有するローレンツ2Dバンドを示す[40、41]。一方で、SLGの2DバンドはFWHMが20から35cm-1間の単一のローレンツ関数で、2.33eVの励起線に関して、ほとんどの基材上でうまくあてはめられ得る[35、42−44]。同様に、懸濁したグラフェンは、28+/−2cm-1の2DのFWHMを示す[45]。したがって、純粋なローレンツ形状および28cm-1のFWHM(および119cm-1/eVの分散液)を有する、2681cm-1(2.33eV)で観察された2Dバンドは、本発明に従ったグラフェンの脱気された水性分散液が、それのみではないが、主に単層のグラフェンを含有することを示す。さらに、本発明に従って脱気された水性グラフェン分散液のラマン2Dバンドの位置および幅は、SiO2上で支持されるグラフェンのものとかなりマッチしている[46]。ラマンスペクトルのほかの特徴は、SLGに関する文献と一致している。
よって、我々は、界面活性物質または他の安定剤を一切伴わない、大部分が単層グラフェンである水中分散液を作製し、当該分散液は、2Dバンドがローレンツ形状であり、40cm−1未満の全幅を有するラマンスペクトルによって特徴付けられる。
最小欠陥
欠陥を誘導したバンドDおよびD’(励起エネルギーを関数とした位置ω(cm−1)および線幅Γ(cm−1)および関連強度比に関するデータ)の分析から、欠陥の量および性質に関してさらに情報を得られ得る。
Tuinstra&Koenig[37]およびFerrari&Robertson[33、34]に続き、Cancado et al.は、調節した量の欠陥を有するグラフェンのラマンスペクトルを分析した[35]。具体的に、ID/IG比は、欠陥濃度の
関数として最大を経る。
ステージII欠陥グラフェンに関する40〜60cm−1(Dバンド)および30〜40cm−1(Dバンド)の範囲で観察される値に比べて、Gバンドが分散的でなく、DおよびGバンドの双方が低い線幅(それぞれ2.33eVで27および21cm-1)を有するため[35]、本明細書に記載する脱気された水性分散液は、低欠陥範囲(<<ステージI>>と呼ぶ)に属する[33]。
2.33eVにおける1.5のID/IG値は、0.06%の欠陥に相当し、ほとんどは端である。したがって、導入される欠陥の量は、問題なく最小と考えられ得る。さらに、これらはほとんど、450℃での積層物の加熱処理によって、ID/IG値を0.7まで下げ、除去可能である(図3)。図1Aでは、脱気された水性分散液およびに参照[32]従って調製し超音波処理を経たコール酸ナトリウム(NaC)のスペクトルが一緒に示されている。剥離の質は、脱気された分散液に関する2Dバンドがより鋭くより強いことから、容易にわかる。
一般的な考察:
我々の知る限りで、現在まで、液体に分散した高収率SLGのラマン調査の報告は一切なされていない。現在までに達成された一番高いSLG収率は、グラファイトの超音波処理、次いでNMPでの超遠心分離によるものであった:c≒1.8g/lに対して21%SLG[31]およびc≒0.11g/lに対して33%SLG[36]。一方で、Lotya et alは、分散剤としてコール酸ナトリウムを用いた、水性懸濁液に分散したグラフェン薄片のいくつかのラマン特性を報告しているが(c≒0.3g/l)、薄片は、SLGが約20%の1〜10枚の積み重なった層からなっていた[32]。超音波処理を高せん断混合に置き換えた、数枚のグラフェン層の測定可能な方法が最近報告された。これは、5層から最大約15層を中心にした幅広い厚さ分布を示す[23]。よって、脱気された水性分散液は、グラフェンが全て単層として存在し、0.16mg/mlの合理的な濃度を有する、初めての液体調製物である。
実施例2:AsPh4Clの水溶液中のグラフェン懸濁液の調製
脱気水が脱気された1mMのAsPh4Cl水溶液に置き換わった以外は、実施例1と同様の条件およびプロトコルを用いて、サンプル+WGrTHF3:2を調製した(図10)。
グラフェン濃度が0.35mg/mLであるAsPh4Clの水溶液中の透明なグラフェン懸濁液を得る。
実施例3:NaBPh4の水溶液中のグラフェン懸濁液の調製
脱気水が脱気された1mMのNaBPh4水溶液に置き換わった以外は、実施例1と同様の条件およびプロトコルを用いて、サンプル−WGrTHF3:2を調製した(図9)。
グラフェン濃度が0.35mg/mLであるNaBPh4の水溶液中の透明なグラフェン懸濁液を得る。
実施例4:水中カーボンナノチューブ懸濁液の調製
KC8化学量論組成のSWCNTの塩、気相反応を利用して調製した。11.5mgのSWCNT(OCSiAl社のTubal)および5.25mgのカリウムを不活性雰囲気下で別々にパイレックスチューブに添加し、チューブを10-4mbarまで真空にし、密閉した。SWCNTおよびカリウムを含有するチューブを2日間250℃で加熱した。
0.5mgのSWCNTの生成塩を、900rpmで24時間、磁気攪拌機上で10mLのTHFに分散させた。混合物を4000rpmで30分間遠心分離にかけた。溶液の上から3分の2をピペットで抽出し、使用のために保存した。光学吸収測定および光分散測定をこのサンプルに実施した。
蒸留水を30分間脱気した。注射器のポンプを用いて、THF中の還元SWCNT溶液2ml(1部)を、やさしく攪拌しながら2ml(1部)の脱気水に一滴ずつ添加し、サンプルW_SWCNT_THFを調製した。2時間ごとにやさしく攪拌しながら、THFを室温で72時間蒸発させ、透明の水中SWCNT懸濁液を得た。光学吸収測定および光分散測定をこのサンプルに実施した。この懸濁液を用いて、ドロップキャスティングおよびスタンピングを利用して異なる基材上に積層物を作成した。
実施例5:水およびDMSO中カーボンナノチューブの分散液の調製
カーボンナノチューブの塩を、カリウムおよびSWCNTを250℃の真空チューブ内で3日間反応させることで調製した。2mgの結果として得られた塩を3日間不活性雰囲気下で攪拌しながら20mlのDMSOにさらした。結果として得られた溶液を3000rpmで20分間、遠心分離にかけ、0.067mg/mLのDMSO中還元SWNT溶液を得た。不活性雰囲気下のグローブボックス内で、このDMSO中還元SWNTの溶液1部を、NaTPhB DMSO溶液(1mM)を1部添加することで希釈し、DMSO中のNaTPhBで還元したSWNT溶液(0.5mM)を得た。ここで、NaTPhBはテトラフェニルホウ酸ナトリウムである。結果として得られる溶液を同体積の脱気したNaTPhB水溶液(1mM)に、ポリプロピレンピペットで注入した。蒸留水中のNaTPhBの溶液を30分間脱気することで、脱気NaTPhB水溶液を得た。この注入技術によって、2つの液体をさらに攪拌の必要なく混合するのが可能であった。結果として得られる分散液を閉じ、ラマン分光測定、吸収分光測定を用いた特性評価のためにおよび薄フィルム積層のために保管した。
実施例1〜5に関して、水中ナノカーボン懸濁液は、光散乱測定、吸収分光測定およびラマン分光測定によって溶液中で特性評価した。
混合セルロースエステル膜(ミリポア(Millipore)社、孔径0.025μm、直径47mm)上への真空ろ過によって、薄フィルムを調製した。浸漬コーティング、ドロップキャスティングおよびスタンピングを利用して、ガラスおよびシリコン基材上に、フィルムを積層した。
本出願および上記の例示的な実施例を読む際、当業者は、本明細書で定義するとおり、本方法は一般的な範囲を有し、ナノカーボン材料に通常適用可能であることを認識するだろう。
本発明の実施形態をいくつか説明したが、基本的な実施例を修正し、本発明の方法およびそこから得られる完全剥離ナノカーボン材料を利用する他の実施形態を提供し得ることは明らかである。よって、本発明の範囲は、例を用いて説明した具体的な実施例よりも添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
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Claims (35)

  1. 完全剥離ナノカーボン材料の水性または有機懸濁液を調製する方法であって:
    a)ナノカーボン層間化合物を非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
    b)再酸化(電子の除去)して還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;および
    c)工程b)で得た中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、脱気有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気混合物(B’)、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;を含み、
    溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、水と完全もしくは部分的に混和性であり、または、溶媒(B)もしくは溶媒混合物(B’)と完全もしくは部分的に混和性であり;それによって、空気準安定性であるナノカーボン材料の水性または有機懸濁液が得られる、前記方法。
  2. 前記工程a)で得た前記還元ナノカーボンの有機溶液に、不活性雰囲気下で適切なイオン種を添加する工程a’)を、前記工程b)の前に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ナノカーボン材料がカーボンナノチューブであり、前記ナノカーボン層間化合物が式MCxを有するカーボンナノチューブアルカリ塩であり、ここで、xは6〜500の範囲の整数であり、Mは、アルカリ金属である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ナノカーボン材料がカーボンナノチューブであり、前記ナノカーボン層間化合物が式KCxを有するカーボンナノチューブアルカリ塩であり、ここで、xは整数であり、C:K化学量論組成はKC6およびKC500間のいずれかの範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 工程c)で用いられる:
    −脱気水
    −脱気イオン性水溶液
    −脱気有機溶媒(B)
    −有機溶媒の脱気混合物(B’)
    −(B)または(B’)と水またはイオン性水溶液との脱気混合物
    が、それぞれイオン種を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記イオン種が、ナノカーボンのカーボン表面上に吸着できるイオンである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記イオン種が、OH-、H3+、アンモニウム(NH4 +)または置換アンモニウムイ
    オン、疎水性イオン、または、ナノカーボンとのπ−π相互作用が可能なイオン種を包含する、請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記イオン種が疎水性イオンである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記疎水性イオンがフェニル置換イオン、ポリアリール置換イオン、尿酸イオン、BF4 -、PF6 -、AsF6 -である、請求項8に記載の方法。
  10. (B)または(B’)とイオン性水溶液との脱気混合物が工程c)で用いられる方法であり、前記混合物は、
    (i)(B)または(B’)と水を混合し、次いで、前記ナノカーボンのカーボン表面上に吸着できるイオン種を1または複数でもたらす、1または複数の適切な化合物を添加する工程;又は、
    (ii)(B)または(B’)とナノカーボンのカーボン表面上に吸着できるイオン種を1または複数含有するイオン性水溶液を混合する工程;を含む方法によって調製される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記イオン種が、1または複数のOH-、H3+;アンモニウム(NH4 +)または置換
    アンモニウムイオン;疎水性イオン;尿酸イオン;フェニル含有イオン;または、極性部分を有するポリアリール置換イオンから選択されるから選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 再酸化工程b)が、工程a)または変化形「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た溶液を空気または水にさらす時に同時に起こり、または、再酸化工程b)が、
    −工程a)または変化形「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た前記還元ナノカーボンの有機溶液を周囲雰囲気下に放置させること;
    −酸素ガスまたは乾燥空気を、工程a)または変化形「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た前記還元ナノカーボンの有機溶液にバブリングすること;
    −酸素以外の適切な酸化剤を、工程a)または変化形「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た前記還元ナノカーボンの溶液に添加し;
    −工程a)または変化形「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た前記還元ナノカーボンの有機溶液を、適切な量の、酸素以外の適切な酸化剤を含有する脱気有機溶媒(B)または有機溶媒の脱気混合物(B’)と混合し、ここで、(B)および(B’)は非プロトン性有機溶媒であることが前提であり;または、
    −工程a)または変化形「a)+a’)」を用いる場合は工程a’)で得た還元ナノカーボン溶液を、電気化学手段で酸化することによって実行される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記酸化剤が1または複数のヨウ素、FeCl3またはNOPF6から選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 有機溶媒混合物(A’)を工程a)および/または工程a’)で用いる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記有機溶媒混合物(A’)が、2成分、3成分またはそれより高次元の溶媒混合物である、請求項14に記載の方法。
  16. 工程a)および/または工程a’)で用いられる前記非プロトン性有機溶媒(複数可)(A)または(A’)の比誘電率がε≧4である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記非プロトン性有機溶媒(A)が、テトラヒドロフラン(THF)、メチル−THF(Me−THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド(NMF)、スルホラン、アセトン、アセトニトリル、ニトロメタン、ジメトキシエタン(DME)、酢酸エチル、2−ブタノン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)またはジクロロメタンから選択され;混合物(A’)はこれらのうち2つ以上の混合物から選択される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)を工程c)で得た水性または有機混合物から取り除く工程d)をさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 単一の非プロトン性有機溶媒が工程a)および/または工程a’)で用いられる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 工程c)またはd)で得た完全剥離ナノカーボンの前記水性または有機懸濁液を、基材に積層する工程d1)をさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 工程c)で溶媒(B)または混合物(B’)として用いられる前記有機溶媒が、非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒混合物(A’)と混和性であるあらゆる有機溶媒である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 工程c)で溶媒(B)または混合物(B’)として用いられる前記有機溶媒が、塩種のイオン化を支持でき、および/または塩種の部分的または完全な解離を可能にするあらゆる有機溶媒である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 前記塩種が、ナノカーボンのカーボン表面上に吸着できるイオン種のいずれか1つをもたらす、請求項22に記載の方法。
  24. 工程c)で単一の溶媒(B)または混合物(B’)として用いられる前記有機溶媒が:−テトラヒドロフラン(THF)、メチル−THF(Me−THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド(NMF)、スルホラン、アセトン、アセトニトリル、ニトロメタン、ジメトキシエタン(DME)、酢酸エチル、2−ブタノン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)またはジクロロメタンから選択され;混合物(A’)はこれらのうち2つ以上の混合物;
    −アルコール;
    −エステル;
    −ケトン;
    −芳香族溶媒;または、
    −ハロゲン化溶媒から選択される、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 前記溶媒混合物(B’)が全体として十分なイオン化を支持し、ナノカーボン材料の懸濁液を安定化させることが前提で、混合物(B’)が、それ自体では塩種のイオン化を支持しない非極性有機溶媒を1または複数含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 混合物(B’)が全体として適切な塩種の解離を可能にするように、混合物(B’)が、1または複数の非極性有機溶媒を、塩種のイオン化を支持することができるのに十分な量の少なくとも1つの有機溶媒と一緒に混合されて含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 混合物(B’)が、(i)水混和性有機溶媒、および、(ii)1または複数の非極性有機溶媒の混合物である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
  28. a)ナノカーボン層間化合物を、沸点が水よりも低く、25℃で比誘電率がε≧4である水混和性の非プロトン性有機溶媒に、不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
    b)再酸化(電子の除去)して前記還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;
    c)工程b)で得た前記中性ナノカーボンの有機懸濁液を、適切な量の脱気水、脱気イオン性水溶液、または、(B)もしくは(B’)と水もしくはイオン性水溶液との脱気混合物と混合する工程;および、
    d)前記水混和性の非プロトン性有機溶媒を工程c)の水性混合物から除去し、それによって完全剥離ナノカーボンの水性懸濁液を得る工程を含む、請求項1に記載の完全剥離ナノカーボン材料の水性懸濁液を調製する方法。
  29. 工程a)の前記水混和性の非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン(DME)、酢酸エチル、2−ブタノン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、石油エーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)である、請求項28に記載の方法。
  30. a)ナノカーボン層間化合物を、25℃で比誘電率がε≧4である非プロトン性有機溶媒(A)に不活性雰囲気下で溶解し;それによって還元ナノカーボンの有機溶液を得る工程;
    b)再酸化(電子の除去)して前記還元ナノカーボン材料をもとの中性状態に戻し、前記有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中の中性ナノカーボン材料の有機懸濁液を得る工程;
    c)工程b)で得た前記中性ナノカーボンの有機懸濁液を、25℃で比誘電率がε≧2であり、沸点が工程a)の前記非プロトン性有機溶媒(A)よりも大きい、適切な量の脱気有機溶媒(B)と混合する工程;および、
    d)前記非プロトン性有機溶媒(A)を工程c)の水性混合物から除去し、それによって溶媒(B)中の、完全剥離ナノカーボンの有機懸濁液を得る工程を含む、請求項1に記載の完全剥離ナノカーボン材料の空気準安定性である有機懸濁液を調製する方法。
  31. 工程c)の前記有機溶媒(B)が、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、または、アルコールから選択される、請求項30に記載の方法。
  32. 工程c)が、工程b)で得た前記中性ナノカーボンの有機懸濁液を適切な量の脱気イオン性水溶液または(B)もしくは(B’)とイオン性水溶液との脱気混合物と混合することを伴い;および、前記イオン性水溶液が、OH-、H3+、BF4 -、P 6 -、AsF6 -
    、尿酸イオン、アンモニウムまたは置換アンモニウムイオン、テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムまたはテトラフェニルアルソニウムイオン、または、1−ピレニルスルホネートイオン、2−ナフトキシアセテートイオン、2−ナフタレニルスルホネートイオンを含有する水溶液である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記ナノカーボン材料が、カーボンナノチューブ、ナノダイアモンド、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレン種類の材料、カップ状に積み重なったカーボンナノチューブもしくはカーボンナノコーン、または、これらのいずれかの水素化または部分水素化形態である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
  34. 溶媒Aまたは溶媒の混合物A’が工程a)またはa’)で用いられる前に脱気される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記ナノカーボンがカーボンナノチューブであり、CNTが、工程a)の前に、チューブ開口前処理にかけられる、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
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