以下、車両用開閉体制御装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両のドア1には、車体側に設けられたストライカ(図示略)に係合する周知のラッチ機構10(10a,10b)を有した複数のロック装置11(11a,11b)が設けられている。具体的には、このドア1には、そのロック装置11として、ドア1の後端部1aに設けられたリアロック11aと、ドア1の前端部1bに設けられたフロントロック11bと、が備えられている。そして、本実施形態のドア1は、そのリアロック11aに設けられた第1のラッチ機構10a及びフロントロック11bに設けられた第2のラッチ機構10bの係合力に基づいて、全閉状態に保持される構成となっている。
詳述すると、図2〜図5に示すように、本実施形態のドア1は、車幅方向(図4及び図5中、上下方向)に変位しつつ車両前後方向(図2、図4及び図5中、左右方向)に移動することにより、その車体12の側面12sに設けられたドア開口部13を開閉する所謂グライドドアとしての構成を有している。具体的には、本実施形態の車体12には、ドア開口部13の内側において、その車両前方側の前方周縁部14fに対して回動可能に連結された回動アーム20が設けられている。そして、本実施形態のドア1は、この回動アーム20に対して回動可能に連結されている。
即ち、本実施形態のドア1は、この回動アーム20を介してドア開口部13の前方周縁部14fに支持される。また、ドア1は、この回動アーム20の回動を伴いつつ、その開閉動作位置が変化する。そして、本実施形態では、これにより、このドア1が車両前方側に向かって開動作する所謂前開きの態様で、そのドア1を開閉動作させるグライドドア装置30が形成されている。
さらに詳述すると、本実施形態の回動アーム20は、略U字状に湾曲した第1及び第2のメインリンク31,32と、これら第1及び第2のメインリンク31,32の間を接続する第1及び第2の接続部材33,34を備えている。本実施形態の回動アーム20において、第1及び第2の接続部材33,34は、上下方向(図2及び図3中、上下方向)に延びる軸形状を有している。また、第1の接続部材33は、第1及び第2のメインリンク31,32の基端部31a,32aを接続するとともに、第2の接続部材34は、第1及び第2のメインリンク31,32における先端部31b,32bの近傍において、これら第1及び第2のメインリンク31,32間を接続する。そして、本実施形態の回動アーム20は、これにより、その第1及び第2のメインリンク31,32が、互いに略平行する状態で上下方向に離間した位置に配置される構成になっている。
また、本実施形態の回動アーム20は、その第1の接続部材33の上端部33a及び下端部33bが、それぞれ、ドア開口部13の前方周縁部14fに設けられた支持部材35,36によって、回動可能に軸支される。そして、本実施形態の回動アーム20は、これにより、この第1の接続部材33を連結軸L1として、そのドア開口部13の前方周縁部14fに対して回動可能に連結される構成になっている。
更に、本実施形態の回動アーム20は、その第1及び第2のメインリンク31,32の先端部31b,32bが、それぞれ、ドア1の内壁面に設けられた連結部材37,38に対して回動可能に連結される。尚、本実施形態のドア1において、これらの連結部材37,38は、それぞれ、そのドア1の閉動作側に位置する後端部1aと開動作側に位置する前端部1bとの間、詳しくは、車体12の側面12sに沿うように配置されるドア1の幅方向、略中央部分に設けられている。そして、本実施形態のドア1は、これにより、これら連結部材37,38が形成する連結軸L2周りに回動可能な状態で、その回動アーム20を介して車体12に支持される構成になっている。
また、本実施形態の車体12において、ドア開口部13の内側に設けられたサイドステップ40の下方には、箱型構造体41が設けられている。尚、本実施形態では、この箱型構造体41の側壁部41aが、そのドア開口部13から車幅方向外側に臨むサイドステップ40の側面部を構成する。更に、この箱型構造体41の下方には、当該箱型構造体41に対して回動可能に連結されたサブリンク43が設けられている。そして、本実施形態のドア1は、このサブリンク43の先端部43bに対し、その後方下端部1rbが相対回動可能に連結される構成になっている。
具体的には、本実施形態のサブリンク43は、ドア開口部13の下縁部14bにおいて、その上下方向に延びる連結軸L3を有している。また、このサブリンク43は、ドア1の後方下端部1rbにおいて、その上下方向に延びる連結軸L4を有している。そして、本実施形態のサブリンク43は、これにより、上記第1及び第2のメインリンクが形成する回動アーム20とともに、そのドア1を車幅方向に変位しつつ車両前後方向に移動可能な状態で車体12に支持するリンク機構44を形成する構成になっている。
即ち、図4及び図5に示すように、本実施形態のドア1は、回動アーム20が、その車体12に対する連結軸L1を支点として、各図中、反時計回り方向に回動することにより、その車体12の側面12sから離間する態様で車幅方向外側(各図中、上側)に変位しつつ、車両前方側(各図中、左側)に移動する。更に、このとき、ドア1の後方下端部1rbに対して回動可能に連結されたサブリンク43もまた、その車体12に対する連結軸L3を支点として、各図中、反時計回り方向に回動する。そして、本実施形態のドア1は、これにより、その回動アーム20に連結される連結軸L2周りに揺動するかたちで(各図中、時計回りに回動)、車体12の側面12sに沿った連結姿勢を維持しつつ、その車体12の側面12sに設けられたドア開口部13を閉塞する全閉位置(図4参照)から開動作する構成になっている。
尚、本実施形態の回動アーム20は、このようなドア1の開動作時、その略U字をなす各メインリンク31,32に設定された湾曲形状の内側にドア開口部13の前方周縁部14fを配置する。そして、これにより、その車体12との干渉を回避する構成になっている。
同様に、このドア1は、各図中、回動アーム20が、時計回りに回動することによって、その車体12の側面12sから離間する態様で車幅方向内側(各図中、下側)に変位しつつ、車両後方側(各図中、右側)に移動する。更に、このときもまた、ドア1の後方下端部1rbに連結されたサブリンク43が、その車体12に対する連結軸L3を支点として、各図中、時計回り方向に回動する。そして、本実施形態のドア1は、これにより、その回動アーム20に連結される連結軸L2周りに揺動するかたちで(各図中、反時計回りに回動)、車体12の側面12sに沿った連結姿勢を維持しつつ、その開動作位置から全閉位置に閉開動作する構成になっている。
尚、図2及び図5に示すように、ドア開口部13の周縁部14には、その全周に亘り、弾力性を有した防水素材からなるウェザストリップ45が設けられている。即ち、本実施形態のドア1は、このウェザストリップ45を押し潰すかたちで全閉位置に移動する。そして、これにより、そのドア開口部13とドア1との間の隙間から車室内に雨水が侵入しないように構成されている。
また、図1に示すように、本実施形態のグライドドア装置30は、モータ50を駆動源としてドア1を駆動する駆動ユニット51を備えている。具体的には、図2及び図3に示すように、本実施形態の駆動ユニット51は、ドア開口部13の内側において、そのサイドステップ40の下方に設けられた箱型構造体41の内側に収容されている。また、この駆動ユニット51は、リンクアーム52を介して上記回動アーム20の連結部53に連結されている。即ち、本実施形態の駆動ユニット51は、モータ50の駆動力に基づき回動アーム20を回動させる。そして、これにより、そのドア1を開閉駆動する構成になっている。
詳述すると、図1に示すように、本実施形態の駆動ユニット51は、モータ50の回転を減速して上記リンクアーム52に出力する減速機構54を備えている。また、この駆動ユニット51は、そのモータ50と減速機構54との間に設けられたクラッチ機構55を備えている。尚、本実施形態のクラッチ機構55には、電磁クラッチが用いられている。そして、本実施形態の駆動ユニット51は、ドアECU60によって、そのモータ50の回転及びクラッチ機構55の係合状態が制御されている。
即ち、本実施形態のドアECU60は、モータ50に対する駆動電力の供給を通じて、そのモータ回転(出力及び回転方向)を制御する。また、このドアECU60は、同じく駆動電力の供給を通じて、そのクラッチ機構55の係合状態を制御、つまりはモータ50が発生する駆動力の伝達経路を接断(接続及び切断)する。そして、本実施形態のドアECU60は、これにより、駆動ユニット51の作動を制御することで、そのドア1を開閉動作させる構成になっている。
さらに詳述すると、本実施形態の駆動ユニット51には、モータ50(又は減速機構54の減速ギヤ)の回転に同期したパルス信号Spを出力するパルスセンサ61が設けられている。そして、本実施形態のドアECU60は、このパルス信号Spをカウントすることによりドア1の移動位置X及び移動速度Vを検出する。
また、本実施形態のドアECU60には、ドア1の操作入力部62が操作されたことを示す操作入力信号Scrが入力される。尚、この場合における操作入力部62には、例えば、ドア1や車両に設けられた開閉スイッチ、或いは携帯機の操作ボタン等が該当する。そして、本実施形態のドアECU60は、この操作入力信号Scrに示される利用者の操作要求に基づいて、ドア1を開閉動作(又は停止)させるべく、その駆動ユニット51の作動を制御する構成になっている。
更に、本実施形態のドアECU60には、各ロック装置11(11a,11b)に設けられたハーフラッチスイッチ63(63a,63b)、フルラッチスイッチ64(64a,64b)、及びポールスイッチ65(65a,65b)が接続されている。そして、本実施形態のドアECU60は、これらの各センサスイッチ(63〜65)の出力信号Sw1〜Sw3に基づいて、各ロック装置11に設けられたラッチ機構10(10a,10b)の係合状態を検知する。
また、本実施形態の各ロック装置11には、それぞれ、モータ70を駆動源として、そのラッチ機構10をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移行させ、及びフルラッチ状態からアンラッチ状態に移行させるクローザ装置71(71a,71b)が設けられている。そして、本実施形態のドアECU60は、その各センサスイッチ(63〜65)の出力変化(出力信号Sw1〜Sw3)に示される各ラッチ機構10(10a,10b)の係合状態に基づいて、これら各ラッチ機構10に設けられたクローザ装置71の作動を制御する構成になっている。
詳述すると、図6〜図9に示すように、本実施形態の各ラッチ機構10(10a,10b)は、それぞれ、その支持軸72x,73x周りに回動可能に軸支されたラッチ72及びポール73を備えている。
図6に示すように、本実施形態のラッチ72は、その外周面に開口するストライカ係合溝74を有した略平板状の外形を成している。また、このラッチ72は、その支持軸72xに嵌挿された図示しない捩りコイルバネ(ラッチ付勢バネ)によって、図6中、反時計回り方向に回動付勢されている。更に、このラッチ72は、図示しないストッパ部に当接することにより、ドア開口部13の周縁部14に設けられたストライカ75に対し、そのストライカ係合溝74の開口端が臨む位置において、ラッチ付勢バネの付勢力に基づく回動が規制されるようになっている。そして、本実施形態のラッチ機構10は、これにより、ドア1の閉動作に伴って、そのラッチ72のストライカ係合溝74に対してストライカ75が係合する構成になっている。
一方、本実施形態のポール73は、その支持軸73xに嵌挿された図示しない捩りコイルバネ(ポール付勢バネ)によって、図6中、時計回り方向に回動付勢されている。また、ポール73には、そのポール付勢バネの付勢力に基づく回動によって、ラッチ72の外周面に近接する方向に移動する係合部73aが設けられている。更に、ポール73は、ストライカ係合溝74にストライカ75が係合した状態で、その係合部73aがラッチ72の外周面に係合するように構成されている。そして、本実施形態のラッチ機構10は、これにより、そのラッチ72のストライカ係合溝74に対してストライカ75が係合する状態を保持することが可能になっている。
即ち、図6〜図8に示すように、ストライカ係合溝74に係合したストライカ75は、ラッチ72を押圧しつつ、そのストライカ係合溝74内を奥側に向かって相対移動する。そして、これにより、そのラッチ付勢バネの付勢力に抗して、各図中、時計回り方向にラッチ72が回動する。
また、このとき、ポール73の係合部73aは、ポール付勢バネの付勢力に基づきラッチ72の外周面に押し当てられた状態で、見かけ上、その当接するラッチ72の外周面上を摺動する。そして、本実施形態のラッチ機構10は、これにより、その外周面に形成されたラッチ72側の第1係合部72aにポール73側の係合部73aが係合することで、ラッチ72の回動が規制されるようになっている。
具体的には、本実施形態では、このラッチ72側の第1係合部72aは、ストライカ係合溝74の開口端、詳しくは、そのストライカ75が係合することにより押圧される側の側壁面に設定されている。そして、本実施形態のラッチ機構10は、これにより、そのラッチ付勢バネによる付勢方向、つまりはストライカ係合溝74からストライカ75が排出される方向の回動を規制することで、そのラッチ72にストライカ75が係合する状態を保持する構成になっている(ハーフラッチ状態)。
図1及び図10に示すように、本実施形態のドアECU60は、ハーフラッチスイッチ63(63a,63b)の出力変化、及びポールスイッチ65(65a,65b)の出力変化に基づいて、この状態、つまりは、そのドア1に設けられた各ラッチ機構10(10a,10b)がハーフラッチ状態に移行したことを検知する。また、ドアECU60は、これらの各ラッチ機構10がハーフラッチ状態に移行したことを検知した場合には、その駆動ユニット51のモータ50を停止させる(ドア駆動停止)。そして、本実施形態のドアECU60は、その後、これらの各ラッチ機構10をフルラッチ状態に移行させるべく、その各クローザ装置71(71a,71b)の作動を制御する(クローザ制御)。
即ち、図8及び図9に示すように、本実施形態のラッチ機構10は、クローザ装置71に駆動されることにより、そのハーフラッチ状態に対応する回動位置からラッチ付勢バネの付勢力に抗してラッチ72がクローズ方向(各図中、時計回り方向)に回動するように構成されている(クローズ動作)。また、ポール73は、ラッチ72の周面に形成された第2係合部72bに係合することにより、そのラッチ72がクローズ方向に回動した位置において、ラッチ付勢バネの付勢力に基づくラッチ72の回動を規制するように構成されている。そして、本実施形態のラッチ機構10は、これにより、そのラッチ72のストライカ係合溝74に係合するストライカ75を相対移動不能に拘束するフルラッチ状態に移行する構成になっている。
図10に示すように、本実施形態のドアECU60は、フルラッチスイッチ64(64a,64b)の出力変化、及びポールスイッチ65(65a,65b)の出力変化に基づいて、この状態、つまりは、各ラッチ機構10(10a,10b)がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移行したことを検知する。そして、その後、ドア1の開作動を要求する操作入力信号Scrが検出された場合には、これら各ラッチ機構10の係合状態を解除、即ちフルラッチ状態からアンラッチ状態に移行させるべく、その各クローザ装置71(71a,71b)の作動を制御する(クローザ制御)。
即ち、図6及び図9に示すように、本実施形態のラッチ機構10は、クローザ装置71に駆動されることにより、そのポール73がポール付勢バネの付勢力に抗して、各図中、反時計回り方向に回動するように構成されている。また、ラッチ72は、これによりポール73との係合による回動規制が解除されることで、そのラッチ付勢バネの付勢力に基づいて、リリース方向(各図中、反時計回り方向)に回動する。そして、本実施形態のラッチ機構10は、これによりストライカ75の拘束を解除し、当該ストライカ75をストライカ係合溝74から排出することで、図6に示されるようなアンロック状態に復帰する構成になっている。
尚、図1に示すように、本実施形態のドア1には、このドア1を手動で開閉するためのドアハンドル80(アウターハンドル80a及びインナーハンドル80b)が設けられている。即ち、このドアハンドル80は、リモコン81を介して各ロック装置11(11a,11b)のラッチ機構10(10a,10b)に接続されており、利用者は、このドアハンドル80を操作することで、車体12に対するドア1の拘束を解除することができる。そして、本実施形態のドア1は、このドアハンドル80を把持部として開閉動作させることが可能となっている。
(ドア閉動作時におけるクラッチ制御)
次に、本実施形態のドアECU60が実行するドア閉動作時におけるクラッチ制御の態様について説明する。
上記のように、グライドドアとしての構成を有する本実施形態のドア1は、その閉動作時、このドア1を回動可能に軸支する連結軸L2周りの揺動によって、その閉動作方向に位置する後端部1a側が、開動作方向に位置する前端部1b側よりも先に全閉位置に到達する。そして、これにより、そのドア1の後端部1aに設けられた第1のラッチ機構10aの方が、前端部1bに設けられた第2のラッチ機構10bよりも先に、その車体12側に設けられたストライカ75に対して係合する状態となる。
即ち、図10に示すように、ドア1の各ロック装置11(11a,11b)に設けられたポールスイッチ65(65a,65b)は、これらのロック装置11を構成する各ラッチ機構10(10a,10b)がアンラッチ状態からハーフラッチ状態に移行する過程において、それぞれ、一度ずつ、オン/オフする(図6〜図8参照)。また、各ハーフラッチスイッチ63(63a,63b)は、このとき、それぞれ、その各ポールスイッチ65(65a,65b)のオンタイミングとオフタイミングとの間のタイミングで、オンからオフに変化する。そして、本実施形態のドア1においては、これら各センサスイッチ(63,65)の出力変化に基づき検出されるハーフラッチ状態への移行タイミングが、フロントロック11bに設けられた第2のラッチ機構10bよりもリアロック11aに設けられた第1のラッチ機構10aの方が早くなっている。
この点を踏まえ、本実施形態のドアECU60は、これら第1及び第2のラッチ機構10a,10bの両方がハーフラッチ状態に移行したことを検知した場合に、そのドア1を閉方向に駆動する駆動ユニット51のモータ50を停止させる。そして、その後、同じタイミングで、これら各ラッチ機構10のクローザ制御を開始することにより、そのクローズ動作の同期性を高める構成になっている。
尚、ポールスイッチ65(65a,65b)は、これら各ラッチ機構10(10a,10b)がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移行する過程においてもまた、それぞれ、一度ずつ、オン/オフする(図8及び図9参照)。また、各フルラッチスイッチ64(64a,64b)は、このとき、それぞれ、その各ポールスイッチ65(65a,65b)のオンタイミングとオフタイミングとの間のタイミングで、オンからオフに変化する。そして、本実施形態のドアECU60は、これら各センサスイッチ(63,65)の出力変化に基づいて、各ラッチ機構10(10a,10b)がフルラッチ状態に移行したことを検知する。
また、本実施形態のドアECU60は、駆動ユニット51のモータ50を停止した後、その駆動ユニット51に設けられたクラッチ機構55の係合力Fを低減する。そして、これにより、クラッチ機構55の滑り動作を許容する状態で、そのクラッチ機構の係合状態を保持する構成になっている。
詳述すると、本実施形態のドアECU60は、その電磁クラッチとして構成されたクラッチ機構55に供給する駆動電力のデューティDを変化させることにより、そのクラッチ機構55が発生する係合力Fを制御する。そして、駆動ユニット51のモータ50を停止した場合には、そのデューティDをドア1の駆動時における値(D=100%)よりも低い値(D=Da)に下げることにより、クラッチ機構55が発生する係合力Fを、そのドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力Faに制御する(Fa<F0)。
更に、本実施形態のドアECU60は、時間経過に従って、そのクラッチ機構55に供給する駆動電力のデューティDを徐々に低減することにより、当該クラッチ機構55が発生する係合力Fが、上記第1の係合力Faから徐々に低くなるように制御する。そして、駆動ユニット51のモータ50を停止した時点から所定時間Taの経過後に、そのクラッチ機構55に対する駆動電力の供給を停止することで(D=0%)、当該クラッチ機構55を非係合状態に制御する構成になっている。
即ち、本実施形態の駆動ユニット51は、その停止したモータ50のコギングトルクや減速機構54の摩擦力等に基づいて、停止状態にあるドア1に対して制動力を付与する。また、この駆動ユニット51の制動力は、そのクラッチ機構55の係合力Fを低減して当該クラッチ機構55の滑り動作を許容することにより弱くなる。更に、これにより、ドア1は、このドア1が全閉位置に移動する際に押し潰したウェザストリップ45の復元力、或いは、その連結軸L2周りの揺動によって第2のラッチ機構10bよりも先に係合状態に移行した第1のラッチ機構10aがストライカ75を押し戻そうとする力に基づいて、緩やかに、その開動作方向に押し戻されることになる。そして、本実施形態のドアECU60は、これにより、ドア1が急峻に押し戻されることによる当たり音の発生を防ぎつつ、円滑に、第1のラッチ機構10aが第2のラッチ機構10bよりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放する構成になっている。
具体的には、図11のフローチャートに示すように、ドアECU60は、ドア1の閉駆動時には、駆動ユニット51のモータ50を、そのドア1が閉動作する方向に回転させるとともに(ステップ101)、このドア1に設けられた第1及び第2のラッチ機構10a,10bが、それぞれ、ハーフラッチ状態にあるか否かを判定する(ステップ102)。そして、これらの第1及び第2のラッチ機構10a,10bの何れかがハーフラッチ状態にない場合(ステップ102:NO)には、再び上記ステップ101を実行する。
また、ドアECU60は、これらの第1及び第2のラッチ機構10a,10bが、共にハーフラッチ状態にあると判定した場合(ステップ102:YES)には、その駆動ユニット51のモータ50を停止する(ステップ103)。そして、そのクラッチ機構55の係合力Fを、そのドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力Faに制御する(クラッチ係合力低減制御、ステップ104)。
次に、ドアECU60は、上記ステップ103において駆動ユニット51のモータ50を停止してから所定時間Taが経過したか否かを判定する(ステップ105)。そして、所定時間Taが経過していないと判定した場合(ステップ105:NO)には、時間経過に従って、その係合力Fが第1の係合力Faから徐々に低くなるように制御する(クラッチ係合力徐減制御、ステップ106)。
そして、本実施形態のドアECU60は、上記ステップ105において、モータ50の停止から所定時間Taが経過したと判定した場合(ステップ105:YES)に、そのクラッチ機構55を非係合状態に制御する構成になっている(クラッチ非係合制御、ステップ107)。
尚、図10に示すように、本実施形態のドアECU60は、そのクローザ制御を開始してから実際に各ラッチ機構10(10a,10b)がクローズ動作を始めるまでの空走時間(タイムラグ)を考慮して、これら各ラッチ機構10(10a,10b)のクローザ制御を開始した後に、クラッチ機構55を非係合状態に制御する。そして、本実施形態のグライドドア装置30は、これにより、より円滑に、各ラッチ機構10(10a,10b)をフルラッチ状態に移行させて、そのドア1を全閉状態に保持することが可能になっている。
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)車両用開閉体制御装置としてのグライドドア装置30は、モータ50を駆動源として車両のドア1を開閉動作させる駆動ユニット51と、この駆動装置としての駆動ユニット51の作動を制御するドアECU60と、を備える。開閉体としてのドア1は、車体12に対して回動可能に連結された回動アーム20に支持されることにより当該回動アーム20に連結される連結軸L2周りに揺動する状態で開閉動作する。また、制御装置としてのドアECU60は、ドア1の後端部1aに設けられた第1のラッチ機構及びドア1の前端部1bに設けられた第2のラッチ機構がハーフラッチ状態に移行したことを検知することにより、その駆動ユニット51のモータ50を停止する。そして、ドアECU60は、モータ50の停止後、このモータ50が発生する駆動力の伝達経路に設けられたクラッチ機構55の係合力を低減することにより、その滑り動作を許容する状態で当該クラッチ機構55の係合状態を保持する。
即ち、モータ50を停止した駆動ユニット51がドア1に付与する制動力は、そのクラッチ機構55の係合力Fを低減して当該クラッチ機構55の滑り動作を許容することにより弱くなる。その結果、ドア1は、このドア1が全閉位置に移動する際に押し潰したウェザストリップ45の復元力、或いは、その連結軸L2周りの揺動によって第2のラッチ機構10bよりも先に係合状態に移行した第1のラッチ機構10aがストライカ75を押し戻そうとする力に基づいて、緩やかに、その開動作方向に押し戻されることになる。そして、これにより、ドア1が急峻に押し戻されることによる当たり音の発生を防ぎつつ、円滑に、その第1のラッチ機構10aが第2のラッチ機構10bよりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。従って、上記構成によれば、より安定的に、ドア1を全閉状態に保持することができる。
(2)ドアECU60は、駆動ユニット51のモータ50を停止した後、クラッチ機構55の係合力Fをドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力Faに制御する(Fa<F0)。そして、ドアECU60は、時間経過に従って、そのクラッチ機構55の係合力Fが、この第1の係合力Faから徐々に低くなるように制御する。
上記構成によれば、円滑且つ速やかに、その第1のラッチ機構10aが第2のラッチ機構10bよりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。そして、これにより、そのドア1が閉動作する際の質感を高めることができる。
(3)ドアECU60は、駆動ユニット51のモータ50を停止した後、第1及び第2のラッチ機構10a,10bをクローズ動作させるべく第1及び第2のクローザ装置を制御する。そして、そのクローザ制御を開始した後に、クラッチ機構55を非係合状態に制御する。
上記構成によれば、クローザ制御を開始してから実際に各ラッチ機構10(10a,10b)がクローズ動作を始めるまでに空走時間(タイムラグ)がある場合であっても、円滑に、第1及び第2のラッチ機構10a,10bをフルラッチ状態に移行させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、グライドドアとしての構成を有したドア1を前開き状態で開閉動作させるグライドドア装置30に具体化した。しかし、これに限らず、車両後方側に開動作する後ろ開きのドアに適用してもよい。また、このドア1と同様に、車体12に対して回動可能に連結された回動アーム20に支持されることにより当該回動アーム20に連結される連結軸L2周りに揺動する状態で開閉動作する構成を有するものであれば、例えば、グライドスライドドア等、他の形式の車両ドアに適用してもよい。そして、例えば、サンルーフやトランクリッド等、ドア以外の開閉体を対象とする車両用開閉体制御装置に適用してもよい。
・上記実施形態では、ドア1は、連結軸L2周りの揺動によって、その後端部1a側が前端部1b側よりも先に全閉位置に到達することとした。しかし、これに限らず、その前端部1b側が後端部1a側よりも先に全閉位置に到達する構成に適用してもよい。
・上記実施形態では、リアロック11a及びフロントロック11bのそれぞれにクローザ装置71(71a,71b)が設けられることとした。しかし、これに限らず、その第1及び第2のラッチ機構10a,10bを一つのクローザ装置71でクローズ動作させる構成に適用してもよい。そして、そのクローザ制御の形態についてもまた、必ずしも第1及び第2のラッチ機構10a,10bが同期的にクローズ動作するものでなくともよい。
・上記実施形態では、ドアECU60は、モータ50の停止後、クラッチ機構55の係合力Fをドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力Faに制御するとともに、時間経過に従って、そのクラッチ機構55の係合力Fが、この第1の係合力Faから徐々に低くなるように制御することとした。
しかし、これに限らず、図12に示すように、モータ50の停止後、所定時間Tc、そのクラッチ機構55の係合力Fをドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力Fcに保持する構成としてもよい(D=Dc)。
・更に、図13及び図14に示すように、モータ50の停止後、クラッチ機構55の係合力Fをドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力(F=Fd,Ff)に制御した後(D=Dd,Df)、クラッチ機構55の係合力Fを、この第1の係合力とは異なる第2の係合力(F=Fe,Fg)に制御する構成としてもよい(D=De,Dg)。
即ち、クラッチ機構55の係合力Fを低減することにより顕在化するドア1を開動作方向に押し戻す力は、その係合力Fを低減した直後が最も大きい。そして、このドア1を押し戻す力は、そのドア1が大きく押し戻されるほど弱くなる。従って、上記の構成によれば、その変化する押し戻し力を、より有効に利用することができる。その結果、より効果的に、その一方のラッチ機構10(10a)が他方のラッチ機構10(10b)よりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。
例えば、図13に示す例において、ドアECU60は、モータ50の停止後、所定時間Td、クラッチ機構55の係合力Fをドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力Fdに制御する。そして、その後、所定時間Te、クラッチ機構55の係合力Fを、この第1の係合力Fdよりも低い第2の係合力Feに制御する。
このような構成を採用しても、上記実施形態と同様、円滑且つ速やかに、その一方のラッチ機構10(10a)が他方のラッチ機構10(10b)よりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。そして、これにより、そのドア1が閉動作する際の質感を高めることができる。
また、図14に示す例において、ドアECU60は、モータ50の停止後、所定時間Tf、クラッチ機構55の係合力Fをドア1の駆動時(F=F0)よりも低い第1の係合力Ffに制御する。そして、その後、所定時間Tg、クラッチ機構55の係合力Fを、この第1の係合力Ffよりも高い第2の係合力Fgに制御する。
即ち、このような構成を採用することで、第1の係合力Ffをより低い値に設定することが可能になる。そして、これにより、より速やかに、その一方のラッチ機構10(10a)が他方のラッチ機構10(10b)よりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。
・上記実施形態では、駆動ユニット51のモータ50を停止した後、クローザ制御の開始後に、クラッチ機構55を非係合状態に制御することとした(図10参照)。
しかし、これに限らず、図15に示すように、クラッチ機構55を非係合状態にした後に、第1及び第2のラッチ機構10a,10bをクローズ動作させるべくクローザ装置71を制御する構成としてもよい。
尚、この例においては、上記実施形態と同様、クラッチ機構55の係合力Fを第1の係合力Fhに低減した後、時間経過に従って、そのクラッチ機構55の係合力Fが、この第1の係合力Fhから徐々に低くなるように制御する。そして、モータ50の停止から所定時間Thの経過後に、そのクラッチ機構55を非係合状態に制御する構成になっている。
このような構成を採用することで、より確実に、その一方のラッチ機構10(10a)が他方のラッチ機構10(10b)よりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。更に、これにより、先に係合状態に移行した一方側のラッチ機構10(10a)について、そのラッチ72がハーフラッチ位置を超えてストライカ75に押し込まれた状態を解消することも可能になる。その結果、これら第1及び第2のラッチ機構10a,10bについて、そのクローザ動作の同期性を高めることができる。そして、これにより、より円滑なドア1の閉動作と質感の向上を図ることができる。
・また、時間経過に従って、クラッチ機構55の係合力Fを第1の係合力(Fa,Fh、D=Da,Dh)から徐々に変化させる場合(例えば、図10及び図15参照)、そのクラッチ機構55の係合力Fが第2の係合力(Fb,Fi)に到達した場合(D=Db,Di)に、当該クラッチ機構55を非係合状態に制御する構成としてもよい。そして、この場合についてもまた、その終了時における第2の係合力は、開始時における第1の係合力よりも低くても、高くてもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記第2の係合力は、前記第1の係合力よりも低く設定されること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。これにより、円滑且つ速やかに、その一方のラッチ機構が他方のラッチ機構よりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。
(ロ)前記第2の係合力は、前記第1の係合力よりも高く設定されること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。このような構成を採用することで、第1の係合力をより低い値に設定することが可能になる。そして、これにより、より速やかに、一方のラッチ機構が他方のラッチ機構よりも先に係合状態に移行することにより生じた偏荷重を開放することができる。
(ハ)前記クローザ装置として、前記第1のラッチ機構をクローズ動作させる第1のクローザ装置と、前記第2のラッチ機構をクローズ動作させる第2のクローザ装置と、を備えること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。