JP6822457B2 - 太陽電池モジュール用の封止材組成物、及び、太陽電池モジュール用の封止材シートの製造方法 - Google Patents
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Description
光安定剤(A):モノマーユニットの側鎖中に、ピペリジン環を三つ以上持つ分子量1000以上10000以下のヒンダードアミン系光安定剤
光安定剤(B):モノマーユニットの主鎖中にピペリジン環を一つだけ持つ分子量1000以上5000以下のヒンダードアミン系光安定剤
光安定剤(A):0.01質量%以上1.0質量%以下含有
光安定剤(B):0.01質量%以上1.0質量%以下含有
光安定剤(A):モノマーユニットの側鎖中に、ピペリジン環を三つ以上持つ分子量1000以上10000以下のヒンダードアミン系光安定剤
光安定剤(B):モノマーユニットの主鎖中にピペリジン環を一つだけ持つ分子量1000以上5000以下のヒンダードアミン系光安定剤
本発明の封止材シートは、中間層と最外層を含んでなる多層の封止材シートである。そして、多層の封止材シートの中間層を形成するための中間層用の封止材組成物は、波長変換剤を必須の成分として含有する。又、最外層を形成するための最外層用の封止材組成物も低密度ポリエチレン樹脂をベース樹脂とするが、中間層用の封止材組成物とは異なり、波長変換剤は含有しない。そして、中間層用の封止材組成物及び最外層用の封止材組成物は、ラジカル吸収能力への着目により選択された特定のHALSを必須成分とする。
中間層用の封止材組成物は、本発明の多層の封止材シートの中間層を成形するために用いる封止材組成物である。中間層用の封止材組成物は、ポリエチレン系樹脂からなる中間層用ベース樹脂と、有機系波長変換剤と、を必須の成分として含有する。
中間層用の封止材組成物のベース樹脂(以下「中間層用ベース樹脂」とも言う)として用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、又はメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M−LLDPE)を好ましく用いることができる。
末端ビニル基数=0.231/(d×t)×A(910cm−1)
ビニリデン基数=0.271/(d×t)×A(888cm−1)
トランスビニレン基数=0.328/(d×t)×A(965cm−1)
全二重結合数=末端ビニル基数+ビニリデン基数+トランスビニレン基数上記方法による2000炭素当たりの全二重結合数のことを言うものとする。
波長変換剤とは、太陽電池素子において吸収感度の低い波長領域の光を吸収感度の高い波長領域に波長変換して太陽池素子に入射させることによって、太陽電池モジュールの発電効率の向上に寄与する物のことを言う。無機系、有機系、或いは、それらのハイブリッド系の各種の波長変換剤が知られている。
本発明の封止材シートの中間層用の封止材組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤として、下記の光安定剤(A)が用いられているか、或いは、光安定剤(A)と下記の光安定剤(B)とを併用されていることを特徴とする。光安定剤(A)及び光安定剤(B)は、いずれも分子量1000以上の高分子量タイプである。これらの光安定剤((A)及び(B))は、最外層用の封止材組成物にも、中間層用の組成物と同様に添加されていることが好ましい。
光安定剤(A):モノマーユニットの側鎖中に、ピペリジン環を三つ以上持つ分子量1000以上10000以下のヒンダードアミン系光安定剤
光安定剤(B):モノマーユニットの主鎖中にピペリジン環を一つだけ持つ分子量1000以上5000以下のヒンダードアミン系光安定剤
中間層用の封止材組成物には、更には、架橋助剤が含有されることが好ましい。架橋助剤として、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する多官能モノマーを好ましく用いることができる。架橋助剤としてより好ましくは、多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基であるものを用いることができる。このような架橋助剤の添加により、低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ、低温柔軟性に優れる封止材シートを得ることができる。
最外層用の封止材組成物は、本発明の多層の封止材シートの両方の最外面に成形される最外層を成形するために用いる封止材組成物である。最外層用の封止材組成物は、ポリエチレン系樹脂からなるベース樹脂とし、好ましくは、シラン変性ポリエチレン系樹脂等の密着性共重合体樹脂を含有する。
最外層用の封止材組成物のベース樹脂(以下「最外層用のベース樹脂」とも言う)として用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、又はメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M−LLDPE)を適宜好ましく用いることができる。
最外層用の封止材組成物には、ベース樹脂に加えて、シラン変性ポリエチレン系樹脂が含有されることが好ましい。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる低密度ポリエチレン、好ましくは直鎖低密度ポリエチレンに、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなる樹脂である。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける封止材シートの他の部材への密着性を向上することができる。尚、本明細書におけるシラン変性ポリエチレン系樹脂とは、例えば、下記の製造方法によって製造することができるシラン変性ポリエチレン系樹脂のことを言い、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン樹脂の少なくとも一部が、エチレン性不飽和シラン化合物とグラフト重合してなる樹脂のことを示す概念である。尚、上記の主鎖となる樹脂は、上記ベース樹脂と同様、密度0.870g/cm3以上0.900g/cm3以下のポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
最外層用の封止材組成物にも、ベース樹脂に加えて、ヒンダードアミン系光安定剤として、光安定剤(A)を単独で、或いは、光安定剤(A)及び光安定剤(B)を併用で、上述した中間層への添加時と同様の配合で含有させることが好ましい。
中間層用及び最外層用の各封止材組成物には、いずれについても、必要に応じて、適宜、以下の添加物を含有させることができる。
中間層用及び最外層用の各封止材組成物には、必要最小限度の架橋剤を含有させてもよいが、架橋剤はいずれの層にも添加しないことがより好ましい。上記の中間層への架橋助剤の添加によって、十分に適切な架橋を進行させることができる一方で、有機過酸化物等の架橋剤を別途添加したには、太陽電池モジュールとの一体化のための熱ラミネート処理時に、デガスによる発泡等の問題が生じるリスクが高まるからである。架橋剤を添加する場合、公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
中間層用及び最外層用の各封止材組成物には、いずれについても、適宜、密着性向上剤を添加することにより、更に、他基材との密着耐久性を高めることができる。密着性向上剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤等を好ましく用いることができる。尚、これらは単独で又は二種以上を混合して使用することもできる。
中間層用及び最外層用の各封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、各種フィラー、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれの封止材組成物に対して0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材シートに対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
本発明の封止材シートは、中間層と、中間層の両面に配置される最外層によって構成される多層の封止材シートである。そして、中間層のみに、好ましくは特定分子量範囲にある、上述の有機系波長変換剤を添加し、更に、中間層及び最外層に、上記の特定の1種又は2種類HALSを選択し、各層に適量添加して、製造したものである。
[シート化工程]
上記においてそれぞれその詳細を説明した中間層用及び最外層用の各組成物の溶融成形は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。多層シートとしての成形方法としては、一例として、二種以上の溶融混練押出機による共押出により成形する方法が挙げられる。
上記のシート化工程後の未架橋の封止材シートに対して、電離放射線による架橋処理を施す架橋工程を、シート化工程の終了後、且つ、封止材シートを他の部材と一体化する太陽電池モジュール一体化工程の開始前に行うことが好ましい。この架橋処理によってゲル分率が2%以上80%以下となる封止材シートとする。
次に、本発明の太陽電池モジュールの好ましい一実施形態について、図2を参照しながら説明する。図2は、波長変換機能を備える本発明の封止材シート1を太陽電池素子3の受光面側に配置した太陽電池モジュール10について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、入射光の受光面側から、透明前面基板4、受光面側用の封止材シート1、太陽電池素子3、非受光面側用の封止材シート2、及び裏面保護シート5が順に積層されている。
以下において説明する封止材組成物の原料を、封止材組成物中の含有量が、それぞれ下記表1の割合になるように混合し、それぞれ実施例、比較例、参考例の封止材シートの内層用及び外層用封止材シートを作成するための封止材組成物とした。それぞれの封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minで内層用及び外層用封止材シートを作製し、これらの内層用及び外層用封止材シートを積層して、1層又は3層の太陽電池モジュール用封止材シート(実施例、比較例及び参考例)とした。これらの封止材シートは、いずれも、厚さ600μm、外層:内層:外層の厚さの比を1:5:1とした。尚、封止材組成物の原料としては、以下の原料を使用した。
メタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M−LLDPE):密度0.880g/cm3、190℃でのMFRが3.5g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンをベース樹脂として用いた(表1中「PE」と記載)。
シラン架橋性樹脂:密度0.881g/cm3であり、190℃でのMFRが2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とからなるシラン架橋性樹脂をベース樹脂に混合するシラン変性ポリエチレン樹脂として用いた。この樹脂の密度は0.884g/cm3、190℃でのMFRが1.8g/10分である(表1中「S−PE」と記載)。
ヒンダードアミン系光安定剤として、密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ヒンダードアミン系光安定化剤(BASF製:Chimassorb2020)2.28質量部を混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを作成した。(表1中「HALS1」と記載)
ヒンダードアミン系光安定剤として、密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ヒンダードアミン系光安定化剤(ケミプロ化成株式会社製:KEMISTAB62)2.28質量部を混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを作成した。(表1中「HALS2」と記載)
波長変換剤として、密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、トリアゾール誘導体(数平均分子量:3233)1質量部を混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチ(MB)を作成した。
実施例、比較例の封止材シートについて、保存安定試験(温度40℃、湿度90%RH、3月間)を行い、保存安定試験前後の光学特性(HAZE)(JIS K7136、株式会社村上色彩研究所、ヘーズ・透過率系HM150により測定)及びガラス密着性を評価した。光学特性は、ヘーズが5.0%以下を“○”とし、ヘーズが5.0%超を“×”とした。ガラス密着性は、剥離試験装置(「株式会社エー・アンド・デイ」社製、商品名「TENSILON RTA−1150−H」)を用いて、180度ピールにて剥離条件50mm/minで23℃にて測定を行い、剥離で、30N/15mmを“◎”とし、20N/15mm以上を“○”、20N/15mm未満を“×”とした。その結果を表2に示す。
ガラス基板上(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に、15mm幅にカットした実施例、比較例の封止材シートを積層し、150℃、18分で、真空加熱ラミネータで処理を行い、それぞれについて太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。
11 中間層
12 最外層
2 非受光面側用の封止材シート
3 太陽電池素子
4 透明前面基板
5 裏面保護シート
10 太陽電池モジュール
Claims (12)
- 太陽電池モジュール用の封止材シートの製造に用いる封止材組成物の組合せであって、
前記封止材シートは、中間層と、その両面に配置される最外層と、を含んでなる多層シートであり、
前記封止材組成物の組合せは、中間層用の封止材組成物と最外層用の封止材組成物と、からなり、
前記中間層用の封止材組成物及び前記最外層用の封止材組成物は、密度0.870g/cm3以上0.970g/cm3以下の低密度ポリエチレンをベース樹脂とし、
前記中間層用の封止材組成物のベース樹脂の全二重結合数が、前記最外層用のベース樹脂の全二重結合数よりも多く、
前記中間層用の封止材組成物は、有機系波長変換剤を含有し、
前記最外層用の封止材組成物は、前記有機系波長変換剤を含まず、
前記中間層用の封止材組成物及び前記最外層用の封止材組成物には、ヒンダードアミン系光安定剤が含有されており、
前記ヒンダードアミン系光安定剤として、下記の光安定剤(A)と下記の光安定剤(B)とが、併用されていて、
前記ヒンダードアミン系光安定剤のうち、質量比で1/2以上のヒンダードアミン系光安定剤が、前記光安定剤(A)である、
封止材組成物の組合せ。
光安定剤(A):モノマーユニットの側鎖中に、ピペリジン環を三つ以上持つ分子量1000以上10000以下のヒンダードアミン系光安定剤
光安定剤(B):モノマーユニットの主鎖中にピペリジン環を一つだけ持つ分子量1000以上5000以下のヒンダードアミン系光安定剤 - 前記中間層用の封止材組成物のベース樹脂の全二重結合数は、0.5個以上4.0個以下である、請求項1に記載の封止材組成物の組合せ。
- 前記光安定剤(A)が、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン−N−(2,2,6,6−テトラメメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物であり、
前記光安定剤(B)が、ブタン二酸1−[2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル]、である請求項1又は2に記載の封止材組成物の組合せ。 - 前記中間層用の封止材組成物における、前記光安定剤(A)及び(B)の含有量が以下の通りである請求項1から3のいずれかに記載の封止材組成物の組合せ。
光安定剤(A):0.01質量%以上1.0質量%以下含有
光安定剤(B):0.01質量%以上1.0質量%以下含有 - 前記有機系波長変換剤が数平均分子量100以上1000以下の波長変換剤である請求項1から4のいずれかに記載の封止材組成物の組合せ。
- 前記有機系波長変換剤が、ピラジン、ピリジン、トリアゾールのうちいずれか一の誘導体又はそれらの混合物である請求項1から5のいずれかに記載の封止材組成物の組合せ。
- 前記最外層用の封止材組成物は、シラン変性ポリエチレン系樹脂を更に含有する請求項1から6のいずれかに記載の封止材組成物の組合せ。
- 太陽電池モジュール用の封止材シートの製造方法であって、
密度0.870g/cm3以上0.970g/cm3以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする中間層用の封止材組成物からなる中間層に、密度0.870g/cm3以上0.970g/cm3以下のポリエチレン系樹脂からなる最外層用の封止材組成物からなる最外層を、積層して、多層シートを成形するシート化工程を含み、
前記中間層用の封止材組成物のベース樹脂の全二重結合数が、前記最外層用のベース樹脂の全二重結合数よりも多く、
前記中間層用の封止材組成物には、有機系波長変換剤が、0.05質量%以上0.5質量%以下含有されており、
前記最外層用の封止材組成物には、波長変換剤が含有されておらず、
前記中間層及び前記最外層には、ヒンダードアミン系光安定剤が含有されており、
前記ヒンダードアミン系光安定剤として、下記の光安定剤(A)と下記の光安定剤(B)とを、併用し、
前記ヒンダードアミン系光安定剤のうち、質量比で1/2以上のヒンダードアミン系光安定剤が、下記の光安定剤(A)である、
太陽電池モジュール用の封止材シートの製造方法。
光安定剤(A):モノマーユニットの側鎖中に、ピペリジン環を三つ以上持つ分子量1000以上10000以下のヒンダードアミン系光安定剤
光安定剤(B):モノマーユニットの主鎖中にピペリジン環を一つだけ持つ分子量1000以上5000以下のヒンダードアミン系光安定剤 - 前記中間層用の封止材組成物のベース樹脂の全二重結合数は、0.5個以上4.0個以下である、請求項8に記載の封止材シートの製造方法。
- 前記有機系波長変換剤が数平均分子量100以上1000以下の波長変換剤である請求項8又は9に記載の封止材シートの製造方法。
- 前記有機系波長変換剤が、ピラジン、ピリジン、トリアゾールのうちいずれか一の誘導体又はそれらの混合物である請求項8から10のいずれかに記載の封止材シートの製造方法。
- 前記多層シートに電離放射線の照射によって架橋処理を行う架橋工程と、を更に含んでなる請求項8から11のいずれかに記載の封止材シートの製造方法。
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