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JP6314396B2 - 太陽電池モジュール用の封止材シート - Google Patents

太陽電池モジュール用の封止材シート Download PDF

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JP6314396B2 JP2013201647A JP2013201647A JP6314396B2 JP 6314396 B2 JP6314396 B2 JP 6314396B2 JP 2013201647 A JP2013201647 A JP 2013201647A JP 2013201647 A JP2013201647 A JP 2013201647A JP 6314396 B2 JP6314396 B2 JP 6314396B2
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Description

本発明は、太陽電池モジュール用の封止材シートに関する。
太陽電池モジュールは、長期に渡って、常時、強い紫外線、熱線、風雨等といった過酷な環境に曝されることになる。このため、太陽電池モジュールには、高度の耐候性、耐久性が求められる。よって、太陽電池モジュールを構成する各部材間には高い密着性が求められる。
太陽電池モジュール内に充填され、太陽電池素子を外部衝撃から保護し、又、太陽電池モジュール内への水分の侵出を防止するために使用される封止材シートとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が最も一般的なものとして使用されてきた。しかし、近年においては、EVA樹脂の欠点である長期間の使用における水蒸気バリア性の低下という問題を解決するものとして、EVA樹脂に代えて、低密度ポリエチレン樹脂を使用した太陽電池モジュール用の封止材シートが提案されている。
しかしながら、ポリエチレン樹脂は、EVAのように主鎖に極性基がないため、例えば、太陽電池モジュールの透明前面基板の材料であるガラス等、太陽電池モジュールの構成部材である基材との密着性が不十分であるという問題があった。
封止材シートの密着性を向上させるために封止材組成物に添加する密着性向上成分としては、従来シランカップリング剤が広く用いられている。近年においては、特定のシランカップリング剤の添加により、太陽電池モジュールの各部材を構成する金属やガラス等との間における密着性を向上させた封止材シートも提案されている(特許文献1参照)。
又、熱可塑性樹脂シートを積層した多層シートであって、密着に寄与する表面層にのみシランカップリング剤を添加して製造する封止材シートも提案されている(特許文献2参照)
又、直鎖低密度ポリエチレンにエチレン性不飽和シラン化合物を予めグラフト重合してなるシラン変性ポリエチレン系樹脂(以下、単に「シラン変性ポリエチレン樹脂」とも言う)を封止材組成物の原材料の一部として用いることにより、ガラス基板等に対する密着性を向上させた太陽電池モジュール用の封止材シートも提案されている(特許文献3参照)。
又、特定の密度範囲にある複数の低密度ポリエチレン樹脂を組合せた樹脂を用いることにより、透明性と柔軟性とをバランスよく向上させた熱可塑系の封止材シートも提案されている(特許文献4参照)。そして、この封止材シートを多層構造とした場合には、特段の密着性が要求される最外層部分に、上記のシラン変性ポリエチレン樹脂を偏在させることにより、高価なシラン変性ポリエチレン系樹脂の使用量を抑えながら、封止材シートの密着性を向上できることも開示されている。
特開2012−195561号公報 特開2013−176899号公報 特開2002−235048号公報 特開2011−3783号公報
特許文献1に記載の封止材シートにおけるシランカップリング剤の添加は、封止材シートの密着性の向上には寄与するが、一方で所謂ブリードアウトによる密着性向上機能の低下が問題となる場合がある。この問題は、特にシランカップリング剤との相溶性が悪いポリエチレン系樹脂に、シランカップリング剤を添加して用いる場合に顕著となる。
又、特許文献2の封止材シートは、熱可塑系の封止材シートであって、封止材組成物としての製造段階において、密着に寄与する表面層にのみシランカップリング剤を含有させることとしている。しかし、モノマー成分であるシランカップリング剤の一部は必ず中間層にも移行する。よって封止材シートの完成段階において、添加した全てのシランカップリング剤が表面層のみに偏在する多層シートは厳密には存在しえない。
ここで、特許文献3に記載のシラン変性ポリエチレン樹脂を用いることにより、シランカップリング剤のブリードアウトの問題を回避することはできる。更に、密着性向上成分を予め基剤樹脂にグラフト済みのシラン変性樹脂を、表面層にのみ用いることにより、密着性を向上させるための成分の全てを表面層にのみ偏在させて、表面層の密着性に着目した場合の密着性成分のコストパフォーマンスを最大化することも可能である。
しかしながら、例えば、特許文献4に記載の封止材シートのような、熱可塑性樹脂を用いた多層の封止材シートにおいて、密着成分を中間層には全く含有させない構成とした場合には、表面層と中間層の間の界面における層間の密着強度が不十分となり界面での層間剥離のリスクが高まるという問題が一方で生じる。よって、特許文献4に記載の熱可塑性のポリエチレン系樹脂からなる多層の封止材シートにおいては、層間剥離を防ぐために、実際には、他基材との密着には寄与しない中間層へもある程度の密着成分を添加することが必須となる。
以上から分かる通り、低密度ポリエチレンをベース樹脂とした太陽電池モジュール用の封止材シートにおいては、密着性向上成分の基材樹脂への添加による密着性向上の方法について、更にコストパフォーマンスを高めるための改善の余地があった。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、低密度ポリエチレンをベース樹脂とした太陽電池モジュール用の封止材シートにおいて、一方で透明性、柔軟性、耐熱性及び耐久性等の諸物性を十分に好ましいレベルに維持しながら、シラン変性ポリエチレン系樹脂等、密着成分をグラフトした高価な樹脂の使用量を最小限に抑えながら、封止材シートの密着性を十分に向上させた太陽電池モジュール用の封止材シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、多層の封止材シートの各層を構成するためのベース樹脂を、いずれも熱架橋型の低密度ポリエチレンとした場合には、多層シートの層間においても架橋反応が進行することにより、上記の層間剥離のリスクを大幅に低減できることに想到した。そして、更に、そのような熱架橋型の低密度ポリエチレンを用いた多層シートにおいて、密着に寄与する表面層にのみ、予め密着向上成分をグラフト済みの樹脂を実質的に100%偏在させる構成とすることによって、太陽電池モジュール用の封止材シートにおいて求められる透明性、柔軟性、耐熱性及び耐久性を、十分に好ましいレベルに維持しながら、密着性向上のために添加する密着成分をグラフトした樹脂の使用量を最小限に抑えながら、封止材シートの密着性を十分に向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 太陽電池モジュール用の封止材シートであって、前記封止材シートは、中間層と最外層とを有する多層シートであり、前記中間層は、密度0.870g/cm以上0.910g/cm以下の低密度ポリエチレンからなるベース樹脂と、架橋剤と、を含有してなり、前記最外層は、前記低密度ポリエチレンからなるベース樹脂と、前記低密度ポリエチレンとその他の密着性樹脂とをコモノマーとして共重合してなる密着性共重合体樹脂と、架橋剤と、を含有してなり、前記中間層は、前記密着性共重合体樹脂を含有せず、前記最外層は、前記ベース樹脂と前記密着性共重合体樹脂からなる樹脂成分100質量部中の前記密着性共重合体樹脂の含有量が8質量部以上であり、前記中間層及び前記最外層は、前記樹脂成分100質量部に対する前記架橋剤の含有量が0.3質量部以上2.0質量部以下である封止材シート。
(2) 前記密着性共重合体樹脂が、α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなる共重合体である(1)に記載の封止材シート。
(3) 前記中間層及び前記最外層のゲル分率がいずれも0%である(1)又は(2)に記載の封止材シート。
(4) 前記多層シートが中間層の両面に最外層が積層された3層構造である(1)から(3)のいずれかに記載の封止材シート。
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材シートを封止材層として備える太陽電池モジュール。
(6) 前記封止材シートの最外層がガラス面と密着している(5)に記載の太陽電池モジュール。
(7) 前記封止材層のゲル分率が20%以上80%以下である(5)又は(6)に記載の太陽電池モジュール。
本発明の太陽電池モジュール用封止材シート及びその製造方法によれば、低密度ポリエチレンをベース樹脂とし、モジュール化に至るまでのいずれかの工程における架橋処理が行われることにより、透明性、柔軟性、及び耐熱性ともに優れた封止材シートとなる熱硬化型の封止材シートであって、基材間の密着性においても優れる太陽電池モジュール用の封止材シートを提供することができる。
本発明の封止材シートの層構成の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて、その層構成の一例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明に係る太陽電池モジュール用の封止材組成物(以下、単に「封止材組成物」とも言う)、太陽電池モジュール用の封止材シート(以下、単に「封止材シート」ともいう)及びその製造方法、太陽電池モジュール及びその製造方法の順に詳細に説明する。
<封止材組成物>
本発明に用いられる封止材組成物は、密度0.870g/cm以上0.910g/cm以下の低密度ポリエチレンと、架橋剤と、を必須成分として含有する。又、本発明の封止材シートは、後に詳細を説明する通り、中間層と最外層とを含む多層シートであるが、最外層を形成する封止材組成物は、更に、低密度ポリエチレンと、その他の密着性樹脂と、をコモノマーとして共重合してなる密着性共重合体樹脂(以下、単に「密着性共重合体樹脂」とも言う)を、必須成分として含有する。一方、中間層を形成する封止材組成物は密着性共重合体樹脂を含有しないものとする。
[ベース樹脂]
本発明の封止材組成物においては、ベース樹脂として、密度0.870g/cm以上0.910g/cm以下の低密度ポリエチレン(LDPE)を用いる。低密度ポリエチレンの密度を上記範囲内とすることで、封止材シートのシート加工性を維持しつつ、封止材シートに良好な柔軟性と透明性を付与することができる。
(低密度ポリエチレン)
上記低密度ポリエチレン(LDPE)は、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)であることが好ましく、メタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M−LLDPE)であることがより好ましい。メタロセン系直鎖低密度ポリエチレンは、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成されるものである。このようなポリエチレンは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一である。このため、分子量分布が狭く、所望の低密度にすることが容易であり、封止材シートに柔軟性を付与することができる。柔軟性が付与される結果、封止材シートと透明前面基板との密着性や封止材シートと裏面保護シートとの密着性等、封止材シートと基材との密着性が高まる。
又、メタロセン系直鎖低密度ポリエチレンは、結晶性分布が狭く、結晶サイズが揃っているので、結晶サイズの大きいものが存在しないばかりでなく、低密度であるために結晶性自体が低い。このため、シート状に加工した際の透明性に優れる。したがって、本発明の封止材組成物からなる封止材シートが透明前面基板と太陽電池素子との間に配置されても発電効率はほとんど低下しない。
直鎖低密度ポリエチレンのα−オレフィンとしては、好ましくは分枝を有しないα−オレフィンが好ましく使用され、これらの中でも、炭素数が6〜8のα−オレフィンである1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテンが特に好ましく使用される。α−オレフィンの炭素数が6以上8以下であることにより、封止材シートに良好な柔軟性を付与することができるとともに良好な強度を付与することができる。その結果、封止材シートと太陽電池モジュールを構成するその他の基材との密着性が更に高まる。
低密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR)は、JIS−K6922−2により測定した190℃、荷重2.16kgにおけるMFR(本明細書においては、特に条件の記載がない場合には、この測定条件による測定値を「MFR」と言うものとする。)が、0.5g/10分以上40g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以上40g/10分以下であることがより好ましい。
本発明の封止材シートは、熱架橋による硬化処理を行うことを前提とする所謂熱硬化型の封止材シートである。このため、ベースとなる低密度ポリエチレンの高温時の過剰な流動性を十分に抑制することができる。このため、上記範囲のような高いMFRであっても好適に使用することができる。
尚、本発明の封止材シートは2以上の層により構成される多層シートであるが、各層を形成するベース樹脂の差異については特段の限定はない。最外層を形成するベース樹脂を中間層を形成するベース樹脂よりも相対的に低密度の樹脂としてもよいし、或いは、ベース樹脂については、全く同種のポリエチレン樹脂を用いることもできる。これらは、封止材シートに望む様々な物性やコストの問題まで勘案して上記範囲において柔軟に決定すればよい。
[密着性共重合体樹脂]
本発明の封止材組成物のうち、最外層を形成するための封止材組成物については、シラン変性ポリエチレン系樹脂に代表される密着性共重合体樹脂を含有させる。本発明における密着性共重合体樹脂としては、密着性向上成分が予め重合している樹脂であれば、必ずしもシラン変性ポリエチレン系樹脂に限定されるものではない。その他のエポキシ変性、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリエチレン系樹脂等であってもよい。不飽和カルボン酸の例としては、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が挙げられ、その誘導体の例としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸等のエステル及び無水物が挙げられる。但し、ベース樹脂との相溶性や、ガラス基板等の他の太陽電池モジュール構成部材との密着性等の観点から、シラン変性ポリエチレン系樹脂を特に好ましく用いることができる。以下、密着性共重合体樹脂がシラン変性ポリエチレン系樹脂である場合について、本発明の好ましい実施形態の一具体例としてその詳細を説明する。
(シラン変性ポリエチレン系樹脂)
シラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる低密度ポリエチレン、好ましくは直鎖低密度ポリエチレンに、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなる樹脂である。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける封止材シートの他の部材への密着性を向上することができる。尚、本明細書におけるシラン変性ポリエチレン系樹脂とは、例えば、下記の製造方法によって製造することができるシラン変性ポリエチレン系樹脂のことを言い、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン樹脂の少なくとも一部が、エチレン性不飽和シラン化合物とグラフト重合してなる樹脂のことを示す概念である。尚、上記の主鎖となる樹脂は、上記封止材組成物のベース樹脂と同様、密度0.870g/cm以上0.910g/cm以下のポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
シラン変性ポリエチレン系樹脂は、例えば、特開2003−46105号公報に記載されている通り、以下の方法で製造できる。例えば、α−オレフィンの1種ないし2種以上と、エチレン性不飽和シラン化合物の1種ないし2種以上と、必要ならば、その他の不飽和モノマ−の1種ないし2種以上とを、所望の反応容器を使用し、例えば、圧力500〜4000Kg/cm位、好ましくは、1000〜4000Kg/cm位、温度、100〜400℃位、好ましくは、150〜350℃位の条件下で、ラジカル重合開始剤、及び、必要ならば連鎖移動剤の存在下で、同時に、或いは、段階的にランダム共重合させ、更には、その共重合によって生成するランダム共重合体を構成するシラン化合物の部分を変性ないし縮合させて、シラン変性ポリエチレン系樹脂を製造することができる。
主鎖のポリエチレン系樹脂としては、エチレン−αオレフィン共重合体である直鎖低密度ポリエチレンを用いることが好ましく、メタロセン系直鎖低密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。メタロセン系直鎖低密度ポリエチレンは、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成されるものである。このようなポリエチレンは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一である。このため、分子量分布が狭く、上記のような超低密度にすることが可能であり封止材シートに対して柔軟性を付与できる。封止材シートに柔軟性が付与される結果、封止材シートとガラス等の透明前面基板との密着性を高めることができる。
直鎖低密度ポリエチレンのα−オレフィンとしては、好ましくは分枝を有しないα−オレフィンが好ましく使用され、これらの中でも、炭素数が6〜8のα−オレフィンである1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテンが特に好ましく使用される。α−オレフィンの炭素数が6以上8以下であることにより、封止材シートに良好な柔軟性を付与することができるとともに良好な強度を付与することができる。その結果、封止材シートとガラス等の透明前面基板との密着性が更に高まる。
直鎖低密度ポリエチレンとグラフト重合させるエチレン性不飽和シラン化合物として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランより選択される1種以上を使用することができる。
又、本発明の封止材組成物に用いるシラン変性ポリエチレン系樹脂は、上述の通り、直鎖低密度ポリエチレンと、エチレン性不飽和シラン化合物のグラフト共重合体である。エチレン性不飽和シラン化合物のグラフト率は、ペレット化した測定対象の樹脂を平坦にカットし、日本分光FT/IR 610のATR法にて測定を行った。SiCのピークは、1090cm−1、CHのピークは1465cm−1を利用して強度比とした。本発明の封止材組成物は、このようにして算出したグラフト率、即ち、シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比(SiCピーク値/CHピーク値)が、0.15以上0.85以下であり、0.2以上0.65以下であることが好ましい。このように、エチレン性不飽和シラン化合物を、封止材シートとして成型する前の段階で予め、上記値程度にまでグラフト共重合させておくことには、封止材シートとして成型した後に不飽和シラン化合物をグラフト共重合する場合と比較して、架橋剤を減らせること、及び、耐久性を向上させること等のメリットがある。
シラン変性ポリエチレン系樹脂におけるエチレン性不飽和シラン化合物の含量であるグラフト量は、シラン変性ポリエチレン系樹脂のベース樹脂中の含有量で0.001〜15質量%、好ましくは、0.01〜5質量%、特に好ましくは、0.05〜2質量%となるように適宜調整すればよい。本発明において、エチレン性不飽和シラン化合物の含量が多い場合には、機械的強度及び耐熱性等に優れるが、含量が過度になると、引っ張り伸び及び熱融着性等に劣る傾向にある。
本発明の封止材シートの最外層を形成するための封止材組成物に用いるシラン変性ポリエチレン系樹脂の最外層における含有量は、封止材組成物のベース樹脂と密着性共重合体樹脂からなる封止材シートの樹脂成分100質量部中の含有量が、8質量部以上20質量部以下であることが好ましい。本発明において、シラン変性ポリエチレン系樹脂の上記含有量が8質量部以上であれば、機械的強度及び耐熱性等に優れるが、含量が過度になると、引っ張り伸び及び熱融着性等に劣る傾向にある。尚、本明細書において封止材シートの樹脂成分とは、上記の通り、封止材組成物のベース樹脂と密着性共重合体樹脂とからなる樹脂成分のことを言うものとする。
以上説明したシラン変性ポリエチレン系樹脂を太陽電池モジュール用の封止材組成物の成分として使用することにより、密着性、強度、耐久性等に優れ、且つ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、その他の諸特性に優れる封止材シートとすることができる。シラン変性ポリエチレン系樹脂を用いることによってこのように様々な効用を得ることができるが、とりわけ、太陽電池モジュールを製造する加熱圧着等の製造条件に影響を受けることなく、封止材シートに極めて優れた熱融着性、即ち、太陽電池モジュールを構成するガラス基材等との優れた密着性を付与しうる点を最大の利点としてあげることができる。
但し、シラン変性ポリエチレン系樹脂は、その他のベース樹脂等と比較して高価であるため、その使用量が過剰な場合は封止材シート製造のコストパフォーマンスの悪化につながる場合もある。本発明の封止材シートは、上記の密着性向上効果に特に着目し、シラン変性ポリエチレン系樹脂に代表される密着性共重合体樹脂を多層シートの最外層にのみ偏在させることによって、封止材シート製造のコストパフォーマンスを大きく改善した点を特徴とするものである。
本発明用の封止材組成物に含まれる上記のベース樹脂及び密着性共重合体樹脂からなる樹脂成分の含有量は、封止材組成物の全成分中で好ましくは10質量%以上99質量%以下、より好ましくは50質量%以上99%質量以下であり、更に好ましくは90質量%以上99%質量以下である。上記組成範囲を逸脱しない範囲で他の樹脂を含んでいてもよい。これらは、例えば添加用樹脂として用いてもよく、後述のその他の成分をマスターバッチ化するために使用してもよい。但し、前述した通り、中間層用の封止材組成物には、密着性共重合体樹脂からなる樹脂は含まれない。
[架橋剤]
架橋剤は公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。
中間層及び最外層における架橋剤の含有量は、それぞれの層における封止材シートの樹脂成分100質量部に対する含有量が、いずれも、0.3質量部以上2.0質量部以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下の範囲である。架橋剤の上記含有量を0.3質量部以上とすることにより、本発明の封止材シートに用いる低密度のポリエチレン系樹脂にも十分な耐熱耐久性を付与することができる。架橋剤の上記含有量が0.3質量部未満であると、耐熱性の向上が不充分となり、一方、架橋剤の上記含有量が、1.5質量部を超えると架橋工程における架橋の進行が過剰となり、モジュール化の際の他部材の凹凸への追従性が不十分となり好ましくない。
[架橋助剤]
本発明においては、炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマーが架橋助剤として用いることができる。又、より好ましくは、多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基であるものが用いられる。これによって適度な架橋反応を促進させてゲル分率を80%以下とするとともに、本発明においてはこの架橋助剤が直鎖低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ透明性を維持する。これによってより透明性と低温柔軟性に優れる封止材シートを得ることができ、具体的にはEVAと同程度の透明性や低温柔軟性を得ることができる。
具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等のポリアリル化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート等のポリ(メタ)アクリロキシ化合物、二重結合とエポキシ基を含むグリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル及びエポキシ基を2つ以上含有する1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物を挙げることができる。これらは単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらのなかでも、低密度ポリエチレンに対する相溶性が良好で、架橋反応を促進させて、結晶性を低下させ透明性を維持し、低温での柔軟性を付与する観点からTAICが好ましく使用できる。
架橋助剤の含有量としては、封止材シートの樹脂成分中の含有量が、0.01質量%〜3質量%程度含まれることが好ましい。この範囲内であれば、適度な架橋反応を促進させて、モジュール化後の封止材層に好ましい柔軟性を保持しながら、同時に十分な耐熱性を付与することができる。
[ラジカル吸収剤]
本発明においては、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋助剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整して架橋処理後の封止材シートのゲル分率を細かく調整することができる。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の使用量は、樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部〜3質量部含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量部〜2.0質量部の範囲である。この範囲内であれば適度に架橋反応を抑制してゲル分率を80%以下に制御し、封止材シートの好ましい柔軟性を保持することができる。
[その他の成分]
封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、本発明の封止材組成物から作製された封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ樹脂成分100質量部に対して、0.001質量部〜5質量部の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
耐候性マスターバッチとは、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤及び上記の酸化防止剤等をポリエチレン等の樹脂に分散させたものであり、これを封止材組成物に添加することにより、封止材シートに良好な耐候性を付与することができる。耐候性マスターバッチは、適宜作製して使用してもよいし、市販品を使用してもよい。耐候性マスターバッチに使用される樹脂としては、本発明に用いる直鎖低密度ポリエチレンでもよく、上記のその他の樹脂であってもよい。尚、これらの光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤及び酸化防止剤は、それぞれ1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
<封止材シート>
本発明の封止材シートは、密着性共重合体樹脂を含有しない中間層形成用の封止材組成物と、所定含有量の密着性共重合体樹脂を含有する最外層形成用の封止材組成物とを、それぞれ各層用の原材料とし、従来公知の多層シートの成形方法で成形加工することによって得られるものである。即ち、本発明の封止材シートは、中間層と、中間層の少なくともいずれか一方、好ましくは両方の最外面に配置される最外層と、を含む複数の層によって構成される多層の封止材シートである。以下、本発明の好ましい一実施形態として、図1を参照しながら、単層である中間層の上下に各1層計2層の最外層を含む3層構造の封止材シート1について説明する。但し、本発明はこの実施形態に限られるものではない。
封止材シート1は、中間層11を有し、中間層11の両面に最外層12が配置されている。但し、例えば、中間層の片面のみに最外層が配置されている2層構造の封止材シートや、中間層が多層構造を有し当該中間層内にその他の機能層が配置されている封止材シートであっても、本発明の構成要件を備える中間層と最外層を備え、且つ、本発明のその他の構成要件を備える封止材シートである限り本発明の範囲内である。
中間層11は、封止材シート1において、基板層として主たる部分を構成する層である。中間層11は、架橋を十分に進行させることにより十分な耐熱性が付与されており、これにより、太陽電池モジュールの耐久性を向上させることができる。
最外層12は、封止材シート1において、封止材シートの最外面に配置され、表面材料として従たる部分を構成する層である。最外層12は、密着性共重合体樹脂の配合による密着性向上効果により好ましい密着性が付与されており、これにより、太陽電池モジュールとしての一体化工程時におけるモールディング特性や基材密着性を向上させることができる。
一般に、封止材シートが熱可塑系のポリエチレン樹脂シートを積層してなる多層シートである場合には、各層間の界面での十分な密着性を担保するために、例えば、他の基材との密着に関与しない中間層へも、必要最小限の密着成分を添加する必要があることは上述した通りである。これに対し本発明の封止材シート1は、中間層11と最外層12とを架橋剤を含有する熱硬化系のポリエチレン樹脂で構成するものであるため、上記の各層間の界面における密着性については、最終的に上記各層間の界面でも進行する架橋反応の結果、十分に好ましい程度にまで向上するため、各層間の界面の密着性担保のために、中間層11への密着成分を添加する必要がない。よって、密着性に直接寄与する最外層12のみに密着成分を偏在させることが可能であり、これにより、封止材シート製造のコストパフォーマンスを大きく改善することができる。
中間層11と両最外層12を含む封止材シート1の総厚さは200μm以上800μm以下であることが好ましい。200μm未満であると充分に衝撃を緩和することができず、800μmを超えてもそれ以上の効果が得られず不経済であるので好ましくない。
封止材シート1における各層の厚さの比率については、最外層12:中間層11:最外層12とn厚さ比が、1:2:1〜1:30:1の範囲であることが好ましい。各層の厚さ比をこの範囲とすることによって、封止材シート1の耐熱性と密着性のいずれをも良好な範囲に保持することができる。
<封止材シートの製造方法>
本発明の封止材シートは、上記の封止材組成物を、その融点を超える温度で溶融成形するシート化工程によって未架橋封止材シートを得て、その後、太陽電池モジュールとしての一体化までのいずれかの段階で、架橋処理が施され、最終的に架橋済みのシート状又はフィルム状の封止材シートとなる。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。
[シート化工程]
上記封止材組成物の溶融成形は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。その際、成形温度の下限は封止材組成物の融点を超える温度であればよく、上限は使用する架橋剤の1分間半減期温度に応じて、押し出し製膜中に架橋が開始しない温度であればよく、それらの範囲内であれば特に限定されない。
本発明における封止材シートとは、このシート化工程によって得た未架橋の封止材シートのことを言う。この封止材シートのゲル分率は0%である。但し、本発明の封止材シートは、この未架橋の封止材シートを、太陽電池モジュールとしての一体化の工程までのいずれかの段階で架橋させて、最終的な使用形態におけるゲル分率が20%以上80%以下となるようにすることを前提とするものである。よって、架橋処理後のゲル分率が20%以上80%以下であって、且つ、その他の要件について本発明の構成要件を備えるものであれば、当然に本発明の範囲内である。尚、最終的な使用形態である太陽電池モジュールの封止材層を構成する段階におけるゲル分率を20%以上80%以下とすることによって、封止材シートに太陽電池モジュールの封止材層に求められる十分な耐熱性と好ましい柔軟性を付与することができる。
[架橋工程]
上記のシート化工程後の封止材シートを架橋処理を施す架橋処理工程を、シート化工程の終了後、且つ、封止材シートを他の部材と一体化する太陽電池モジュールとしての一体化工程の開始前、或いは、太陽電池モジュールとしての一体化工程において行う。上述の通り、この架橋工程によって封止材シートのゲル分率は最終的に20%以上80%以下となる。
架橋方法は加熱処理によることが好ましい。架橋条件は特に限定されない。加熱処理による架橋を行う場合、一般的な架橋処理条件の範囲内で、トータルな処理結果として、上記のゲル分率となるように適宜設定すればよい。
尚、架橋処理は、電離放射線の照射によっても行うことができる。架橋処理を電離放射線の照射によって行う場合も、個別の架橋条件は特に限定されず、トータルな処理結果として、上記のゲル分率となるように適宜設定すればよい。具体的には、電子線(EB)、α線、β線、γ線、中性子線等の電離放射線によって行うことができるが、なかでも電子線を用いることが好ましい。電子線照射における加速電圧は、被照射体であるシート厚みによって決まり、厚いシートほど大きな加速電圧を必要とする。例えば、0.5mm厚みのシートでは100kV以上、好ましくは200kV以上で照射する。加速電圧がこれより低いと架橋が充分に行われない。照射線量は10kGy〜1000kGy、好ましくは10〜300kGyの範囲である。照射線量が10kGyより小さいと充分な架橋が行われず、又1000kGyを超えると発生する熱によるシートの変形や着色等が懸念されるようになる。尚、両面側から照射してもよい。又、照射は大気雰囲気下でもよく窒素雰囲気下であってもよい。
上記の架橋工程を経ることによって、封止材シートのゲル分率は、最終的に20%以上80%以下となる。この架橋済みの封止材シートのゲル分率は30%以上80%以下であることが更に好ましい。架橋済みの封止材シートのゲル分率を上記範囲のとすることによって、封止材シートに太陽電池モジュールの封止材層に求められる十分な耐熱性と好ましい柔軟性を付与することができる。
尚、ゲル分率(%)とは、封止材シート0.1gを樹脂メッシュに入れ、60℃トルエンにて4時間抽出したのち、樹脂メッシュごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の質量比較を行い残留不溶分の質量%を測定しこれをゲル分率としたものである。
<太陽電池モジュール>
図2は、本発明の封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて、その層構成の一例を示す断面図である。本発明の太陽電池モジュール10は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。本発明の太陽電池モジュール10は、前面封止材層3及び背面封止材層5の少なくとも一方の封止材層に本発明の封止材シート1を使用する。特に透明前面基板2と対向する前面封止材層3として、封止材シート1の最外層12が透明前面基板2のガラス面と密着する態様で配置されることが好ましい。
<太陽電池モジュールの製造方法>
太陽電池モジュール10は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。
尚、本発明の太陽電池モジュール10において、前面封止材層3及び背面封止材層5以外の部材である透明前面基板2、太陽電池素子4及び裏面保護シート6は、従来公知の材料を特に制限なく使用することができる。又、本発明の太陽電池モジュール10は、上記部材以外の部材を含んでもよい。尚、本発明の封止材シートは単結晶型に限らず、薄膜型その他の全ての太陽電池モジュールに適用できる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<太陽電池モジュール用の封止材シートの製造>
以下において説明する封止材組成物の原材料を組成物中の含有量比が下記表1の割合(質量部)若しくは、以下に記載の定量割合(質量部)となるように混合し、それぞれ実施例、比較例の封止材の中間層用及び最外層用の樹脂シートを製造するための封止材組成物とした。それぞれの封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度100℃、引き取り速度1.1m/minで中間層用及び最外層用の単層の各樹脂シートを作製し、これらの各樹脂シートを積層して、中間層と両最外層に配置される最外層を備える実施例1〜4及び比較例1〜12の3層構造の封止材シートとした。実施例、比較例の各封止材シートの厚さは、いずれも、総厚さ600μmとした。又、3層構造とした各封止材シートの各層の厚さの比については、下記表1にそれぞれ記載する通りの比率とした。
実施例、比較例の封止材シート用の単層の各樹脂シートを形成するための封止材組成物の原材料としては、以下の原材料を使用した。
ベース樹脂1(表1中で「PE」と示す):ポリエチレン系樹脂(LLDPE)。エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm、MFRが30g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。
ベース樹脂2(表1中で「EVA」と示す):エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)。酢酸ビニル含量33%(三井デュポンポリケミカル製、商品名「EVAFLEX/EV150Rグレード」)
密着性共重合体樹脂(表1中で「S変樹脂」と示す):シラン変性ポリエチレン系樹脂。上記ベース樹脂1、100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm、MFRが24g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂。
架橋剤(表1中で「架橋剤」と示す):t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックスTBEC」)
シランカップリング剤(表1中で「SC剤」と示す):ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM1003」)
以下の原材料については、組成物の樹脂成分100質量部に対する含有量比(質量部)が下記に示す定量割合となるように、実施例、比較例の各封止材組成物に添加した。
架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製、商品名「タイク」)。実施例、比較例の各封止材組成物に、いずれも0.5質量部。
UV吸収剤:ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12。実施例、比較例の各封止材組成物に、0.3質量部。
耐候安定剤:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Tinuvin770。実施例、比較例の各封止材組成物に、いずれも0.2質量部。
酸化防止剤:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076。実施例、比較例の各封止材組成物に、いずれも0.05質量部。
Figure 0006314396
<評価例1:初期密着性>
実施例、比較例の各封止材シートをガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に密着させて、150℃、5分間の真空引きによる真空加熱ラミネータ処理を行い、100kPaにて10分間プレスを行った。更にその後、150℃オーブン内で60分間架橋処理を行い、評価用試料を作成した。上記の評価用試料において、ガラス基板上に密着している封止材シートを15mm幅にカットし、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、ガラス密着強度を測定し、評価した。評価は以下の基準で行った。
A:50N/15mm以上
B:45N/15mm以上50N/15mm未満
C:40N/15mm以上45N/15mm未満
D:40N/15mm未満
評価結果を「初期密着性」として表2中に記す。
<評価例2:保管後密着性維持率>
上記の各評価用試料について、一定期間保管後の密着性を測定し、その維持率を検証した。各評価用試料を、温度30℃、湿度90%Rhの保存条件で1ヶ月間保管後に、上記と同一の試験方法でガラス密着強度を再測定し、初期ガラス密着強度に対する密着強度の維持率(%)を算出し評価した。評価は以下の基準で行った。
A: 95%以上
B: 85%以上95%未満
C: 80%以上85%未満
D: 80%未満
評価結果を「保管後密着性維持率」として表2中に記す。
<評価例3:耐候密着性維持率>
上記の各評価用試料について、下記ダンプヒート(D.H.)試験後のガラス密着強度の初期ガラス密着強度に対しての維持率を測定した。D.H.試験は、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で評価用試料の耐久性試験を500時間行った。試験後の評価用試料について、上記と同一の試験方法でガラス密着強度を再測定し、初期ガラス密着強度に対する密着強度の維持率(%)を算出し評価した。評価は以下の基準で行った。
A: 95%以上
B: 85%以上95%未満
C: 80%以上85%未満
D: 80%未満
評価結果を「耐候密着維持率」として表2中に記す。
<評価例4:保管後MFR維持率>
上記の各評価用試料について、JIS−K6922−2の方法に準じて、100℃、荷重2.16kgにおけるMFRを測定した。この測定値を初期MFR値とした。そして、その後、一定期間保管後のMFRを測定し、MFRの維持率を検証した。各評価用試料を、温度30℃、湿度90%Rhの保存条件で1ヶ月間保管後に、上記と同一の試験方法でMFRを再測定し、初期MFR値に対するMFRの維持率(%)を算出し評価した。評価は以下の基準で行った。評価は以下の基準で行った。
A: 95%以上
B: 92%以上95%未満
C: 89%以上92%未満
D: 89%未満
評価結果を「保管後MFR維持率」として表2中に記す。
Figure 0006314396
<評価例5:太陽電池モジュール化時におけるゲル分率>
実施例、比較例の各封止材シートの製膜後架橋処理前、及び、架橋処理後のそれぞれのゲル分率を測定した。架橋処理の条件は、150℃、真空引き4分、加圧100kPaにて6分の条件で真空加熱ラミネータ処理を行い各部材を圧着した後、オーブンに投入し150℃で60分保持する条件とした。製膜後架橋処理前、及び、この条件での架橋処理後のそれぞれの封止材シートについて、上述の通りのゲル分率測定方法、即ち、封止材シート0.1gを樹脂メッシュに入れ、60℃トルエンにて4時間抽出したのち、樹脂メッシュごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の質量比較を行い残留不溶分の質量%を測定する方法により、ゲル分率を測定した。測定結果を表3に記す。
Figure 0006314396
表1及び表2より、本発明の封止材シートは、最外層にのみ密着成分が偏在する構成であり、且つ、初期密着性及び耐候環境下における密着性の維持率についても優れた封止材シートであることが分かる。又、高価な密着性共重合体樹脂を密着に寄与する層に偏在させているものであることより、製造時のコストパフォーマンスにおいても好ましいものであることも分かる。
又、表1及び表2より、密着向上成分として、モノマーの密着向上成分(シランカップリング剤)を添加した比較例1〜4及び7〜8においては、最外層への密着成分の添加量が過小な場合に密着強度が不足するのみならず、中間層に同成分が含有されない場合にも初期密着性や耐候密着性維持率の低下がおこることが確認された。これは、上述した層間界面での密着耐久性の不足に起因するものであり、一方では、製膜時からその後の保管中にモノマー成分の中間層への分散や、或いは、ブリードアウトが起こるためでもあると考えられる。
又、中間層にも一定の密着性共重合体樹脂(シラン変性ポリエチレン系樹脂)を含有させた比較例5〜6及び9〜10は、密着強度については特段の問題はないものの、MFRの維持率が必要な水準を維持できなくなることが分かる。又、実施例と比較して密着性向上のための添加成分のコストパフォーマンスが低いことも明らかである。
又、最外層にのみ密着成分が偏在するものであっても、密着性共重合体樹脂の含有量が本発明所定の含有量比達していない比較例11〜12は、特に耐候密着性維持率の低下が顕著となることが分かる。
又、表3より、本発明の製造方法によれば、熱硬化型の樹脂からなる封止材シートについて安定した製膜処理を経た上で、後の架橋処理を経た使用段階におけるゲル分率を20%以上80%以下とすることができることが分かる。これにより封止材シートに太陽電池モジュールの封止材層に求められる十分な耐熱性と好ましい柔軟性を付与することができる。
1 封止材シート
11 中間層
12 最外層
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
10 太陽電池モジュール

Claims (7)

  1. 太陽電池モジュール用の封止材シートであって、
    前記封止材シートは、中間層と最外層とを有する多層シートであり、
    前記中間層は、密度0.870g/cm以上0.910g/cm以下の低密度ポリエチレンからなるベース樹脂と、架橋剤と、を含有してなり、
    前記最外層は、前記低密度ポリエチレンからなるベース樹脂と、低密度ポリエチレンとその他の密着性樹脂とをコモノマーとして共重合してなる密着性共重合体樹脂と、架橋剤と、を含有してなり、
    前記中間層は、前記密着性共重合体樹脂を含有せず、
    前記最外層は、前記ベース樹脂と前記密着性共重合体樹脂からなる樹脂成分100質量部中の前記密着性共重合体樹脂の含有量が8質量部以上であり、
    前記中間層及び前記最外層は、前記樹脂成分100質量部に対する前記架橋剤の含有量が0.3質量部以上2.0質量部以下であって、
    下記の保管後MFR維持率算出方法により測定した保管後MFR維持率が、92%以上である、封止材シート。
    保管後MFR維持率算出方法:試料について、JIS−K6922−2の方法に準じて、100℃、荷重2.16kgにおけるMFRを測定する。この測定値を初期MFR値とし、その後、一定期間保管後のMFRを測定し、MFRの維持率を検証する。各試料を、温度30℃、湿度90%Rhの保存条件で1ヶ月間保管後に、上記と同一の試験方法でMFRを再測定し、初期MFR値に対するMFRの維持率(%)を算出する。
  2. 前記密着性共重合体樹脂が、α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなる共重合体である請求項1記載の封止材シート。
  3. 前記中間層及び前記最外層のゲル分率がいずれも0%である請求項1又は2に記載の封止材シート。
  4. 前記多層シートが中間層の両面に最外層が積層された3層構造である請求項1からのいずれかに記載の封止材シート。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材シートを封止材層として備える太陽電池モジュール。
  6. 前記封止材シートの最外層がガラス面と密着している請求項に記載の太陽電池モジュール。
  7. 前記封止材層のゲル分率が20%以上80%以下である請求項又はに記載の太陽電池モジュール。
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