JP6803125B2 - 輪重推定方法 - Google Patents
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Description
輪重は、車両の重量を支える力としての静止輪重と、車両の運動に伴い発生する変動分との和で表される。
輪重は、例えば緩和曲線部における軌道の平面性不整、車体のねじれ、カント不足、車両の動揺、ばね下質量の振動、衝撃等によって変動する。
輪重は、車両の走行性能や軌道の状態を把握するために必要な情報であり、従来様々な手法によって輪重測定が試みられている。
非特許文献2には、輪軸を支持する軸箱の加速度及び軌道変位に基づいて、輪重、横圧の推定を行うことが記載されている。
これに対し、非特許文献2のように軸箱加速度を利用する場合、比較的高周波の輪重変動を推定することは可能である。
しかし、鉄道のレールは前後方向に離散的に設けられたまくらぎによって支持されており、まくらぎが載置されるバラスト道床の剛性も一様ではないため、車輪の走行に伴って車輪直下の軌道の剛性(ばね定数)は逐次変動することになる。
非特許文献2に記載された技術においては、このような軌道の剛性の変動による影響が考慮されておらず、輪重推定の妥当性に懸念がある。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、高周波成分を適切に推定可能な輪重推定方法を提供することである。
これによれば、輪重の低周波成分の実測値、及び、軸箱加速度から軌道の剛性を推定し、輪重よりも高周波までの測定が可能な軸箱加速度と、推定された軌道の剛性とに基づいて、直接測定することが困難な輪重変動の高周波成分を適切に推定することができる。
これによれば、車輪の転動(進行)に応じて時々刻々と変化する軌道の剛性の変動の影響を適切に反映させ、精度よく輪重を推定することができる。
これによれば、上述した効果と実質的に同様の効果に加え、軌道の減衰特性を考慮することにより、より精度よく輪重を推定することができる。
これによれば、車輪の転動(進行)に応じて時々刻々と変化する軌道の剛性及び減衰特性の変動の影響を適切に反映させ、精度よく輪重を推定することができる。
これによれば、輪重測定装置の測定上限周波数近傍までの輪重の実測値を用いて精度良く軌道の剛性を推定することができ、推定精度を向上することができる。
実施形態の輪重推定方法は、鉄道車両の車輪がレールに作用させる下向き荷重である輪重を、車輪に貼付したひずみゲージからなるブリッジ回路出力を利用して輪重を測定する荷重測定用輪軸(PQ輪軸)の測定上限周波数よりも高周波域まで推定するものである。
実施形態において、鉄道車両1は、一例として、車体前後に2軸ボギー台車を有する電車等の旅客車である。
図1に示すように、鉄道車両1は、車体10、台車枠20、まくらばね30、上下動ダンパ40、軸箱50、軸箱支持装置60、PQ輪軸100等を有して構成されている。
車体10は、下部に設けられ床板が取り付けられる台枠、台枠の側端部、前後端部から上方へ立ち上げられた側構、妻構、上部に設けられた屋根構等を有する六面体状に形成されている。
台車枠20は、上方から見た平面形が実質的に矩形状となる枠体として形成されている。
台車枠20は、車体10に対してボギー角付与可能なよう、鉛直軸周りに相対回転可能であり、かつ、車体10に対して上下方向に相対変位可能に取り付けられている。
車体10と台車枠20との前後方向相対変位は、図示しない牽引装置により拘束されている。
台車枠20には、図示しないブレーキ装置や、電動車の場合には主電動機等が搭載される。
まくらばね30は、車体10を支持して荷重を台車枠20に伝達するとともに、車体10と台車枠20との上下方向の相対変位に応じたばね反力を発生する。
まくらばね30は、例えば台車枠20の前後方向中央部において、まくらぎ方向に離間して一対が設けられる。
上下動ダンパ40は、台車枠20の左右にそれぞれ設けられる。
軸箱50は、車軸120の両端部に形成されたジャーナル部を回転可能に支持する軸受、及び、その潤滑装置や、車軸120の回転速度を検出する図示しない車速発電機等を有して構成されている。
軸箱50には、加速度センサ51が取り付けられている。
加速度センサ51は、軸箱50に作用する上下方向加速度を検出するものである。
加速度センサ51は、後述するPQ輪軸100を用いる輪重測定装置の測定上限周波数fpよりも高い測定上限周波数faを有する。
加速度センサ51の出力は、図示しない記録装置に伝達され記憶される。
軸箱支持装置60は、台車枠20に対する軸箱50の上下方向相対変位を許容するとともに、PQ輪軸100が台車枠20に対して鉛直軸周りに相対回転する操舵動作も許容する。
軸箱支持装置60は、軸ばり61、軸ばね62、軸ダンパ63等を有して構成されている。
軸箱50は、軸ばり61の台車枠20側とは反対側の端部に取り付けられている。
軸ばり61と台車枠20との接続部には、弾性体ブッシュ61aが設けられ、その弾性変形によって、輪軸100の操舵を許容するようになっている。
軸ばね62は、軸箱50の上部に設けられ、上端部、下端部をそれぞれ台車枠20、軸箱50に接続されている。
軸ダンパ63は、軸ばね62の側方に並行して配置され、上端部、下端部をそれぞれ台車枠20、軸箱50に接続されている。
図2は、実施形態の輪重推定方法におけるPQ輪軸の車輪の構成を示す図である。
図2(a)は車輪の回転中心軸方向かつ車幅方向外側から見た図であり、図2(b)は図2(a)のb−b部矢視断面図である。
なお、図2(a)には、周上における位置を示す符号としてイ、ロ、ハ・・・コの32文字を、車輪110の中心回りに等間隔(中心角にして10°間隔)に分散して付している。
車軸120の両端部に設けられたジャーナル部は、軸箱支持装置60を介して、台車枠20に対して、上下方向及びヨー方向(ステア方向)に相対変位可能に支持されている。
ハブ部111は、板部115に対して回転軸方向の厚みを増して形成され、その中心部には車軸120が圧入されるボス孔が形成されている。
リム部112は、レールに当接して転動するいわゆるタイヤ部分を構成する。
リム部112は、板部115に対して回転軸方向の厚みを増して形成されている。
踏面113には、曲線通過時に左右車輪の回転半径差をもたせて曲線を円滑に通過させるため、所定の円錐形状の踏面勾配が設けられている。
フランジ114は、PQ輪軸100の軌道に対する左右移動量を規制し、脱輪を防止する機能を有する。
フランジ114は、曲線通過時においては、外軌側においてレールの側面と当接し、PQ輪軸100の左右方向(まくらぎ方向)変位を規制する機能を有する。
板部115には、開口116が形成されている。
開口116は、板部115を車軸方向に貫通して形成された円形のものである。
開口116は、板部115の周方向に実質的に等間隔に分散して、例えば8個が設けられている。
ひずみゲージ131A,131Bは、符号イに相当する箇所(車軸回りにおける位相・角度位置)に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ133A,133Bは、符号リに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ134A,134Bは、符号ワに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ135A,135Bは、符号レに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ136A,136Bは、符号ナに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ137A,137Bは、符号ノに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ138A,138Bは、符号マに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ131a,131a’は、ひずみゲージ131A,131Bが設けられた開口116の内径側に配置されている。
ひずみゲージ131aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ131a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ131aとひずみゲージ131a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ133aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ133a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ133aとひずみゲージ133a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ135aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ135a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ135aとひずみゲージ135a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ137aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ137a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ137aとひずみゲージ137a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
輪重測定用ブリッジ回路は、ひずみゲージ131A,132A,136B,135B,132B,131B,135A,136Aを、順次環状に結線して構成されている。
輪重測定用ブリッジ回路においては、ひずみゲージ132A,136Bの間と、ひずみゲージ131B,135Aの間とに入力電力Einを印可するとともに、ひずみゲージ131a,131a’の間と、ひずみゲージ135a,135a’の間との電圧を出力電圧eoutとする。
出力電圧eoutは、図示しないスリップリング等を介して車上に設置された記録装置に伝達される。
荷重が作用する車輪110の周上の位置と、ひずみゲージを接着した位置との関係による出力電圧eoutの変動を、専用の処理装置で補正することにより、連続的な輪重を算出することが可能である。
レールRは、車輪110が載置される部材であって、左右一対が所定の軌間だけ離間させて実質的に平行に配置されている。
まくらぎSは、レールRの下部に配置され、レールRの軌間保持や、レールRから道床への荷重伝達を担う部材である。
まくらぎSは、例えばプレストレストコンクリートまくらぎ(PCまくらぎ)であって、車両の進行方向に所定の間隔で離散して複数配置されている。
レールRは、図示しない弾性締結装置を介してまくらぎSに取り付けられている。
また、レールRの下面部とまくらぎSの上面部との間には、図示しない軌道パッドが配置されている。
バラストBは、例えば砕石等であって、まくらぎSが載置される道床を構成するものである。
以上説明したPQ輪軸100を用いる連続法による輪重測定は、輪重pを連続的かつ直接測定できるものではあるが、測定原理や装置の構成上、時間分解能に制約があり、高周波の輪重変動を測定することは難しい。
そこで、本実施形態においては、加速度センサ51が検出する軸箱加速度αにおける低周波の成分と、PQ輪軸100が検出する輪重pとに基づいて、軌道のばね係数c(剛性)、及び、減衰係数c(減衰特性)を推定し、推定されたばね係数k、減衰係数c、軸箱加速度αに基づいて、PQ輪軸100の測定上限周波数fp以上の高周波を含む輪重pを推定している。
図4は、実施形態の輪重推定方法の概要を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
先ず、PQ輪軸100を用いた輪重pの測定と、加速度センサ51を用いた軸箱加速度αの測定とを同時に行い、それぞれの時間履歴に関するデータを、図示しない記録装置の記憶媒体に記録する。
ここで、輪重測定の上限周波数fpは、軸箱加速度測定の上限周波数faよりも低周波数となっている。
輪重p、軸箱加速度αの測定及び記録の終了後、ステップS02に進む。
次に、ステップS01において測定、記録した輪重p及び軸箱加速度αの測定データに基づいて、軌道のばね係数k及び減衰係数cを推定する。
ステップS02以降の処理は、例えば、地上施設等の車上以外の箇所(例えば研究室等)で、オフラインで行うことが可能である。
輪重pをレールRにかかる下向き荷重とみなし、軸箱加速度αをレールRの上下振動加速度とみなすと、軌道に力学モデルを適用することにより、軌道のばね係数k、減衰係数cを推定することが可能である。
軸箱加速度αは、以下の式1のように輪重pと、軌道支持ばねのばね係数k、減衰係数cなどの関数で表されることを利用し、周波数fp以下の軸箱加速度αと輪重pの測定値から、物性値k,cなどを推定する。
f(p|k,c)=α ・・・(式1)
図5に示すように、ばね係数kと減衰係数cは、測定時に走行した締結装置の数(まくらぎSの数と等しい)と同数存在する。
本実施形態においては、まくらぎSの上下に、それぞれ並行に配置されたばね要素及び減衰要素を有するものとして、軌道のモデル化を行った。
軸箱加速度αと輪重pは、測定データ全てを並べたベクトルとして表現することが可能であり、例えば3000Hzサンプリングで0.5秒分であれば、1500次である。
このとき、軌道のばね定数kは、例えば、1500行×1500列の行列として表現することができる。
軸箱加速度αは、軌道のばね定数kの行列に輪重pのベクトルを乗じたものであることから、周波数fpまでの輪重pのベクトルと、周波数fpまでの軸箱加速度αのベクトルとが既知であれば、推定することが可能である。
軌道のばね係数kの推定後、ステップS03に進む。
次に、推定したばね係数k、減衰係数cなどの物性値と、軸箱加速度αの測定値を用いて、高周波までを含んだ輪重pを、以下の式2のように推定する。
p=f−1(α|k,c) ・・・(式2)
図6に示すように、PQ輪軸による輪重測定の場合には、高周波側の分解能が加速度センサに対して比較的低く、比較的低い周波数(測定上限周波数fp以下)の輪重変動しか測定することはできない。
これに対し、実施形態の輪重推定方法においては、加速度センサの測定上限周波数faと実質的に同等の高い周波数までを含む輪重変動を推定することができる。
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
輪重推定方法や、鉄道車両、軌道の構成は、上述した実施形態に限らず適宜変更することができる。
例えば、鉄道車両の車種や、台車、軸箱支持装置、これらに設けられるばね要素、減衰要素などの構成は、適宜変更することができる。
また、軌道の構成も実施形態のものに限らず、本発明はスラブ道床を有するもの等の他種の軌道における輪重測定にも適用することができる。
また、輪重測定に用いられるPQ輪軸の形状やひずみゲージの貼付手法、ブリッジ回路の結線方法なども実施形態のものは一例であって、適宜変更することが可能である。
また、実施形態では、軌道のばね係数k、減衰係数cをともに推定しているが、簡易的な手法として、ばね係数kのみを推定する構成としてもよい。
20 台車枠 30 まくらばね
40 上下動ダンパ 50 軸箱
51 加速度センサ 60 軸箱支持装置
61 軸ばり 61a 弾性体ブッシュ
62 軸ばね 63 軸ダンパ
100 PQ輪軸 110 車輪
111 ハブ部 112 リム部
113 踏面 114 フランジ
115 板部 116 開口
120 車軸
131A〜138A,131B〜138B 輪重測定用のひずみゲージ
131a〜137a,131a’〜137a’ 横圧測定用のひずみゲージ
R レール S まくらぎ
B バラスト
Claims (5)
- 車輪に取り付けたひずみゲージの出力を用いて前記車輪の輪重を測定する輪重測定装置によって測定された輪重測定データと、前記車輪が設けられた輪軸を支持する軸箱に取り付けられた加速度センサによって測定された軸箱加速度測定データのうち所定の周波数よりも低周波数の成分とに基づいて軌道の剛性を推定し、
推定された前記軌道の剛性と、前記軸箱加速度測定データとに基づいて前記所定の周波数よりも高周波の成分を含む輪重を推定すること
を特徴とする輪重推定方法。 - 前記軌道の剛性は、当該軌道の長手方向に沿って離散的に配置された複数の箇所についてそれぞれ推定されること
を特徴とする請求項1に記載の輪重推定方法。 - 車輪に取り付けたひずみゲージの出力を用いて前記車輪の輪重を測定する輪重測定装置によって測定された輪重測定データと、前記車輪が設けられた輪軸を支持する軸箱に取り付けられた加速度センサによって測定された軸箱加速度測定データのうち所定の周波数よりも低周波数の成分とに基づいて軌道の剛性及び減衰特性を推定し、
推定された前記軌道の剛性及び減衰特性と、前記軸箱加速度測定データとに基づいて前記所定の周波数よりも高周波の成分を含む輪重を推定すること
を特徴とする輪重推定方法。 - 前記軌道の剛性及び減衰特性は、当該軌道の長手方向に沿って離散的に配置された複数の箇所についてそれぞれ推定されること
を特徴とする請求項3に記載の輪重推定方法。 - 前記所定の周波数は、前記輪重測定装置における測定上限周波数の近傍に設定されること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の輪重推定方法。
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