以下、本発明に係る燃料電池スタックについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の発電セル12が水平方向(矢印A方向)に積層された積層体14を備える。なお、複数の発電セル12は、重力方向(矢印C方向)に積層されていてもよい。燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車等の燃料電池車両に搭載される。
図2において、積層体14の積層方向(矢印A方向)一端には、ターミナルプレート16a、インシュレータ18a及びエンドプレート20aが外方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向他端には、ターミナルプレート16b、インシュレータ18b及びエンドプレート20bが外方に向かって、順次、配設される。
図1に示すように、エンドプレート20a、20bは、横長(縦長でもよい)の長方形状を有するとともに、各辺間には、連結バー24が配置される。各連結バー24は、両端をエンドプレート20a、20bの内面にボルト26を介して固定され、複数の積層された発電セル12に積層方向(矢印A方向)の締め付け荷重を付与する。なお、燃料電池スタック10では、エンドプレート20a、20bを端板とする筐体を備え、前記筐体内に積層体14を収容するように構成してもよい。
図3及び図4に示すように、発電セル12は、樹脂フィルム付きMEA(電解質膜・電極構造体)28が、第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32により挟持されることにより構成される。第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。第1金属セパレータ30と第2金属セパレータ32とは、外周を溶接、ろう付け、かしめ等により一体に接合され、接合セパレータ33を構成する。
発電セル12の長辺方向である矢印B方向(図4中、水平方向)の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔34a、冷却媒体入口連通孔36a及び燃料ガス出口連通孔38bが矢印C方向に配列して設けられる。酸化剤ガス入口連通孔34aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する。冷却媒体入口連通孔36aは、冷却媒体を供給する。燃料ガス出口連通孔38bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガス入口連通孔38a、冷却媒体出口連通孔36b及び酸化剤ガス出口連通孔34bが、矢印C方向に配列して設けられる。燃料ガス入口連通孔38aは、燃料ガスを供給する。冷却媒体出口連通孔36bは、冷却媒体を排出する。酸化剤ガス出口連通孔34bは、酸化剤ガスを排出する。酸化剤ガス入口連通孔34a及び酸化剤ガス出口連通孔34bと燃料ガス入口連通孔38a及び燃料ガス出口連通孔38bの配置は、本実施形態に限定されるものではない。要求される仕様に応じて、適宜設定すればよい。
図3に示すように、外周に枠形状の樹脂フィルム(枠部)46を有する樹脂フィルム付きMEA28は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)40と、前記固体高分子電解質膜40を挟持するカソード電極42及びアノード電極44とを有する。
固体高分子電解質膜40は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用してもよい。固体高分子電解質膜40は、カソード電極42及びアノード電極44よりも小さな平面寸法(外形寸法)を有する。
カソード電極42は、固体高分子電解質膜40の一方の面40aに接合される第1電極触媒層42aと、前記第1電極触媒層42aに積層される第1ガス拡散層42bとを有する。第1電極触媒層42aは、第1ガス拡散層42bよりも小さな外形寸法を有するとともに、固体高分子電解質膜40と同一未満の外形寸法に設定される。なお、第1電極触媒層42aは、固体高分子電解質膜40と同一の外形寸法を有していてもよいし、第1ガス拡散層42bと同一の外形寸法を有してもよい。
アノード電極44は、固体高分子電解質膜40の他方の面40bに接合される第2電極触媒層44aと、前記第2電極触媒層44aに積層される第2ガス拡散層44bとを有する。第2電極触媒層44aは、第2ガス拡散層44bよりも小さな外形寸法を有するとともに、固体高分子電解質膜40と同一未満の外形寸法に設定される。なお、第2電極触媒層44aは、固体高分子電解質膜40と同一の外形寸法を有していてもよいし、第2ガス拡散層44bと同一の外形寸法を有してもよい。
第1電極触媒層42aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、第1ガス拡散層42bの表面に一様に塗布されて形成される。第2電極触媒層44aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、第2ガス拡散層44bの表面に一様に塗布されて形成される。第1ガス拡散層42b及び第2ガス拡散層44bは、カーボンペーパ、カーボンクロス等からなる。
第1ガス拡散層42bの外周先端縁部と第2ガス拡散層44bの外周先端縁部との間には、枠形状(四角環状)を有する樹脂フィルム46が挟持される。樹脂フィルム46の内周端面は、固体高分子電解質膜40の外周端面に近接又は当接する。
図4に示すように、樹脂フィルム46の矢印B方向の一端縁部には、酸化剤ガス入口連通孔34a、冷却媒体入口連通孔36a及び燃料ガス出口連通孔38bが設けられる。樹脂フィルム46の矢印B方向の他端縁部には、燃料ガス入口連通孔38a、冷却媒体出口連通孔36b及び酸化剤ガス出口連通孔34bが設けられる。
樹脂フィルム46は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又はm−PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)又は変性ポリオレフィンで構成される。なお、樹脂フィルム46を用いることなく、固体高分子電解質膜40を外方に突出させてもよい。また、外方に突出した固体高分子電解質膜40の両側に枠形状のフィルムを設けてもよい。
図4に示すように、第1金属セパレータ30の樹脂フィルム付きMEA28に向かう面30aには、例えば、矢印B方向に延在する酸化剤ガス流路48が設けられる。図5に示すように、酸化剤ガス流路48は、酸化剤ガス入口連通孔34a及び酸化剤ガス出口連通孔34bに流体的に連通する。酸化剤ガス流路48は、矢印B方向に沿って直線状に延在する複数本の凸部48aの間に設けられた直線状の流路溝48bを有する。なお、凸部48a及び流路溝48bは、積層方向からの平面視で波状に延在していてもよい。
酸化剤ガス入口連通孔34aと酸化剤ガス流路48との間には、複数個のエンボス部を有する入口バッファ部50aが設けられる。酸化剤ガス出口連通孔34bと酸化剤ガス流路48との間には、複数個のエンボス部を有する出口バッファ部50bが設けられる。
第1金属セパレータ30の面30aには、プレス成形により、断面が波形状の酸化剤ガス流路48、入口バッファ部50a及び出口バッファ部50bと一体(又は個別)に第1シールライン52(シール用ビード部)が樹脂フィルム付きMEA28に向かって膨出成形される。
図3に示すように、第1シールライン52は、先端に向かって先細りの断面形状を有する。第1シールライン52の先端は、平坦形状である。ただし、第1シールライン52の先端は、凸状のR形状であってもよい。
図5及び図10に示すように、第1シールライン52は、積層方向からの平面視で波状に延在している。すなわち、第1シールライン52は、その延在方向と直交する方向に突出した第1凸部53と、第1凸部53の突出方向とは反対方向に突出した第2凸部55とを有する。
第1凸部53及び第2凸部55のそれぞれの突出端部は、円弧状に湾曲している。第1凸部53の突出長は、第2凸部55の突出長と略同一である。ただし、第1凸部53の突出長は、第2凸部55の突出長よりも長くても短くてもよい。第1シールライン52は、全長に亘って略一定幅に形成されている。ただし、第1シールライン52は、一定幅でなくてもよい。
図5において、第1シールライン52は、面30aの外周縁部を周回する外側ビード部52aを有する。第1シールライン52は、酸化剤ガス流路48、酸化剤ガス入口連通孔34a及び酸化剤ガス出口連通孔34bを周回し且つこれらを連通させる内側ビード部52bを有する。
第1シールライン52は、さらに燃料ガス入口連通孔38a、燃料ガス出口連通孔38b、冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bをそれぞれ周回する連通孔ビード部52cを有する。外側ビード部52a、内側ビード部52b及び連通孔ビード部52cは、面30a側に突出する凸形状を有する。なお、外側ビード部52aは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
冷却媒体入口連通孔36aを周回する連通孔ビード部52cと内側ビード部52bとの間には、入口通路部54aが面30a側に膨出形成される。冷却媒体出口連通孔36bを周回する連通孔ビード部52cと内側ビード部52bとの間には、出口通路部54bが面30a側に膨出形成される。入口通路部54a及び出口通路部54bは、第1金属セパレータ30の面30b側の後述する冷却媒体流路66に冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bを連通させる通路を構成する。
図3及び図5に示すように、外側ビード部52a、内側ビード部52b及び連通孔ビード部52cの凸部先端面には、樹脂材56aが印刷又は塗布等により固着される。樹脂材56aは、例えば、ポリエステルが使用される。なお、樹脂材56aは、外側ビード部52a、内側ビード部52b及び連通孔ビード部52cの平面形状を打ち抜いたシートを貼ることにより構成してもよい。また、樹脂材56aは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
図4に示すように、第2金属セパレータ32の樹脂フィルム付きMEA28に向かう面32aには、例えば、矢印B方向に延在する燃料ガス流路58が形成される。図6に示すように、燃料ガス流路58は、燃料ガス入口連通孔38a及び燃料ガス出口連通孔38bに流体的に連通する。燃料ガス流路58は、矢印B方向に沿って直線状に延在する複数本の凸部58aの間に設けられた直線状の流路溝58bを有する。なお、凸部58a及び流路溝58bは、積層方向からの平面視で波状に延在していてもよい。
燃料ガス入口連通孔38aと燃料ガス流路58との間には、複数個のエンボス部を有する入口バッファ部60aが設けられる。燃料ガス出口連通孔38bと燃料ガス流路58との間には、複数個のエンボス部を有する出口バッファ部60bが設けられる。
第2金属セパレータ32の面32aには、プレス成形により、断面が波形状の燃料ガス流路58、入口バッファ部60a及び出口バッファ部60bと一体(又は個別)に第2シールライン62(シール用ビード部)が樹脂フィルム付きMEA28に向かって膨出成形される。
図3に示すように、第2シールライン62は、先端に向かって先細りの断面形状を有する。第2シールライン62の先端は、平坦形状である。ただし、第2シールライン62の先端は、凸状のR形状であってもよい。
図6及び図8に示すように、第2シールライン62は、積層方向からの平面視で波状に延在している。すなわち、第2シールライン62は、その延在方向と直交する方向に突出した第1凸部63と、第1凸部63の突出方向とは反対方向に突出した第2凸部65とを有する。
第1凸部63及び第2凸部65のそれぞれの突出端部は、円弧状に湾曲している。第1凸部63の突出長は、第2凸部65の突出長と略同一である。ただし、第1凸部63の突出長は、第2凸部65の突出長よりも長くても短くてもよい。第2シールライン62は、全長に亘って略一定幅に形成されている。ただし、第2シールライン62は、一定幅でなくてもよい。
図6において、第2シールライン62は、面32aの外周縁部を周回する外側ビード部62aを有する。第2シールライン62は、燃料ガス流路58、燃料ガス入口連通孔38a及び燃料ガス出口連通孔38bを周回し且つこれらを連通させる内側ビード部62bを有する。
第2シールライン62は、さらに酸化剤ガス入口連通孔34a、酸化剤ガス出口連通孔34b、冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bをそれぞれ周回する連通孔ビード部62cを有する。外側ビード部62a、内側ビード部62b及び連通孔ビード部62cは、面32a側に突出する凸形状を有する。なお、外側ビード部62aは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
冷却媒体入口連通孔36aを周回する連通孔ビード部62cと内側ビード部62bとの間には、入口通路部64aが面32a側に膨出形成される。冷却媒体出口連通孔36bを周回する連通孔ビード部62cと内側ビード部62bとの間には、出口通路部64bが面32a側に膨出形成される。入口通路部64a及び出口通路部64bは、第2金属セパレータ32の面32b側の後述する冷却媒体流路66に冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bを連通させる通路を構成する。
図3及び図6に示すように、外側ビード部62a、内側ビード部62b及び連通孔ビード部62cの凸部先端面には、樹脂材56bが印刷又は塗布等により固着される。樹脂材56bは、例えば、ポリエステルが使用される。なお、樹脂材56bは、外側ビード部62a、内側ビード部62b及び連通孔ビード部62cの平面形状を打ち抜いたシートを貼ることにより構成してもよい。また、樹脂材56bは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
図4に示すように、互いに接合される第1金属セパレータ30の面30bと第2金属セパレータ32の面32bとの間には、冷却媒体入口連通孔36aと冷却媒体出口連通孔36bとに流体的に連通する冷却媒体流路66が形成される。冷却媒体流路66は、表面に酸化剤ガス流路48が形成された第1金属セパレータ30の裏面形状と、表面に燃料ガス流路58が形成された第2金属セパレータ32の裏面形状とが重なり合って形成される。
図3に示すように、積層体14は、積層方向(矢印A方向)の両端に位置する第1端部金属セパレータ30e及び第2端部金属セパレータ32eを有する。第2端部金属セパレータ32eは、積層体14の積層方向の一端(インシュレータ18a及びエンドプレート20aが位置する側の端)に位置し、第1端部金属セパレータ30eは、積層体14の積層方向の他端(インシュレータ18b及びエンドプレート20bが位置する側の端)に位置する。
図3及び図5において、第1端部金属セパレータ30eは、樹脂フィルム付きMEA28の樹脂フィルム46における積層方向の一端側(インシュレータ18a及びエンドプレート20aが位置する側)を指向する面46aに接触する第1金属セパレータ30と同一構成である。そのため、第1端部金属セパレータ30eの詳細な説明については省略する。
以下の説明では、第1端部金属セパレータ30eの第1シールライン52、外側ビード部52a、内側ビード部52b、連通孔ビード部52cを「第1端部シールライン52e」、「外側端部ビード部52ae」、「内側端部ビード部52be」、「連通孔端部ビード部52ce」と呼ぶ。
図3及び図6において、第2端部金属セパレータ32eは、樹脂フィルム付きMEA28の樹脂フィルム46における積層方向の他端側(インシュレータ18b及びエンドプレート20bが位置する側)を指向する面46bに接触する第2金属セパレータ32と同一構成である。
以下の説明では、第2端部金属セパレータ32eの第2シールライン62、外側ビード部62a、内側ビード部62b、連通孔ビード部62cを「第2端部シールライン62e」、「外側端部ビード部62ae」、「内側端部ビード部62be」、「連通孔端部ビード部62ce」と呼ぶ。
図2に示すように、ターミナルプレート16a、16bは、電気導電性を有する材料から構成され、例えば、銅、アルミニウム又はステンレススチール等の金属で構成される。ターミナルプレート16a、16bの略中央には、積層方向外方に延在する端子部68a、68bが設けられる。
端子部68aは、絶縁性筒体70aに挿入されてインシュレータ18aの孔部72a及びエンドプレート20aの孔部74aを貫通して前記エンドプレート20aの外部に突出する。端子部68bは、絶縁性筒体70bに挿入されてインシュレータ18bの孔部72b及びエンドプレート20bの孔部74bを貫通して前記エンドプレート20bの外部に突出する。
インシュレータ18a、18bは、絶縁性材料、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等で形成される。インシュレータ18a、18bの中央部には、積層体14に向かって開口される凹部76a、76bが形成され、前記凹部76a、76bの底面には、孔部72a、72bが設けられる。
インシュレータ18a及びエンドプレート20aの矢印B方向の一端縁部には、酸化剤ガス入口連通孔34a、冷却媒体入口連通孔36a及び燃料ガス出口連通孔38bが設けられる。インシュレータ18a及びエンドプレート20aの矢印B方向の他端縁部には、燃料ガス入口連通孔38a、冷却媒体出口連通孔36b及び酸化剤ガス出口連通孔34bが設けられる。
図3及び図7に示すように、インシュレータ18aの積層体14に向かう面19aには、第2端部シールライン62e(端部シール用ビード部)に当接するシール部材としての第1弾性シール部材80(外側シール部80a、内側シール部80b)が配設される第1凹部82(外側凹部82a、内側凹部82b)が形成されている。外側シール部80aと内側シール部80bとの積層方向の弾性係数は、互いに異なっていてもよい。第1弾性シール部材80の形状、寸法、材質は、良好なシール特性が得られるように適宜設定すればよい。
図3において、第1弾性シール部材80と第1凹部82の両側の側面83との間には、第1弾性シール部材80が積層方向と直交する方向(矢印B方向又は矢印C方向)に弾性変形可能なように所定の隙間Saが形成されている。
具体的には、第1凹部82の幅寸法W1は、第1弾性シール部材80の幅寸法W2よりも大きく、第1弾性シール部材80は第1凹部82の側面83に対して離間している(図8参照)。第1弾性シール部材80と第1凹部82の側面83との間隔は、略一定に設定されている。隙間Saは、第1弾性シール部材80の幅方向両側に設けられている。
第1弾性シール部材80は、例えば、横断面が矩形状に形成されており、弾性を有する高分子材料からなる。このような高分子材料としては、例えば、シリコンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。第1弾性シール部材80は、第1凹部82の底面83aに対して接着(接着剤による接着)又は融着されている。
第1弾性シール部材80の第2端部シールライン62eに向かう面81は、第2端部金属セパレータ32eをターミナルプレート16aに密着させるために、第1凹部82内に位置している。第1弾性シール部材80の面81は、固体高分子電解質膜40(積層体14の積層方向と直交する平面)に対して平行な平坦形状を有する。
第1凹部82及び第1弾性シール部材80は、積層方向からの平面視で直線状に延在している(図7参照)。図8に示すように、第1弾性シール部材80の面81の幅寸法W2は、第2端部シールライン62eの先端面(樹脂材56b)の幅寸法W3(最大幅寸法)よりも大きい。さらに、幅寸法W2は、第1凸部63の突出端と第2凸部65の突出端との間隔W4よりも大きい。詳細には、幅寸法W2は、間隔W4の120%〜200%の範囲に設定するのが好ましい。
図7において、第1凹部82は、外側端部ビード部62aeに対向する位置に形成された外側凹部82aと、内側端部ビード部62beに対向する位置に形成された内側凹部82bと、連通孔端部ビード部62ceに対向する位置に形成された連通孔用凹部82cとを有する。
第1弾性シール部材80は、外側凹部82a内に配設された外側シール部80aと、内側凹部82b内に配設された内側シール部80bと、連通孔用凹部82cに配設された連通孔シール部80cとを有する。
すなわち、外側シール部80aは、インシュレータ18aの面19aの外縁部の外側凹部82aを周回し、外側端部ビード部62aeに当接する。内側シール部80bは、内側凹部82bを周回し、内側端部ビード部62beに当接する。連通孔シール部80cは、第2端部金属セパレータ32eの酸化剤ガス入口連通孔34a、酸化剤ガス出口連通孔34b、冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bに対向する部位をそれぞれ周回し、連通孔端部ビード部62ceに当接する。
本実施形態では、図7から理解されるように、外側シール部80aと内側シール部80bとは、互いに別体に設けられている。連通孔シール部80cのうち冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bを周回する部分については、外側シール部80aに対して別体であるとともに内側シール部80bに対して一体的に設けられている。
連通孔シール部80cのうち酸化剤料ガス入口連通孔34a及び酸化剤ガス出口連通孔34bを周回する部分については、外側シール部80a及び内側シール部80bに対して別体に設けられている。
なお、外側凹部82a、内側凹部82b及び連通孔用凹部82cは、互いに連通するように形成され、外側シール部80a、内側シール部80b及び連通孔シール部80cは、一体成形されていてもよい。また、外側シール部80a及び外側凹部82aは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
図3及び図9に示すように、インシュレータ18bの積層体14に向かう面19bには、第1端部シールライン52e(端部シール用ビード部)に当接するシール部材としての第2弾性シール部材84(外側シール部84a、内側シール部84b)が配設される第2凹部86(外側凹部86a、内側凹部86b)が形成されている。外側シール部84aと内側シール部84bとの積層方向の弾性係数は、互いに異なっていてもよい。第2弾性シール部材84の形状、寸法、材質は、良好なシール特性が得られるように適宜設定すればよい。
図3において、第2弾性シール部材84と第2凹部86の両側の側面87との間には、第2弾性シール部材84が積層方向と直交する方向(矢印B方向又は矢印C方向)に弾性変形可能なように所定の隙間Sbが形成されている。
具体的には、第2凹部86の幅寸法W5は、第2弾性シール部材84の幅寸法W6よりも大きく、第2弾性シール部材84は第2凹部86の側面87に対して離間している(図10参照)。第2弾性シール部材84と第2凹部86の側面87との間隔は、略一定に設定されている。隙間Sbは、第2弾性シール部材84の幅方向両側に設けられている。
第2弾性シール部材84は、例えば、横断面が矩形状に形成されており、弾性を有する高分子材料からなる。このような高分子材料としては、例えば、シリコンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。第2弾性シール部材84は、第2凹部86の底面87aに対して接着(接着剤による接着)又は融着されている。
第2弾性シール部材84の第1端部シールライン52eに向かう面85は、第1端部金属セパレータ30eをターミナルプレート16bに密着させるために、第2凹部86内に位置している。第2弾性シール部材84の面85は、固体高分子電解質膜40(積層体14の積層方向と直交する平面)に対して平行な平坦形状を有する。
第2凹部86及び第2弾性シール部材84は、積層方向からの平面視で直線状に延在している(図9参照)。図10に示すように、第2弾性シール部材84の面85の幅寸法W6は、第1端部シールライン52eの先端面(樹脂材56a)の幅寸法W7(最大幅寸法)よりも大きい。さらに、幅寸法W6は、第1凸部53の突出端と第2凸部55の突出端との間隔W8よりも大きい。詳細には、幅寸法W6は、間隔W8の120%〜200%の範囲に設定するのが好ましい。
図9において、第2凹部86は、外側端部ビード部52aeに対向する位置に形成された外側凹部86aと、内側端部ビード部52beに対向する位置に形成された内側凹部86bと、連通孔端部ビード部52ceに対向する位置に形成された連通孔用凹部86cとを有する。
第2弾性シール部材84は、外側凹部86a内に配設された外側シール部84aと、内側凹部86b内に配設された内側シール部84bと、連通孔用凹部86cに配設された連通孔シール部84cとを有する。
すなわち、外側シール部84aは、インシュレータ18bの面19bの外縁部の外側凹部86aを周回し、外側端部ビード部52aeに当接する。内側シール部84bは、内側凹部86bを周回し、内側端部ビード部52beに当接する。連通孔シール部84cは、第1端部金属セパレータ30eの燃料ガス入口連通孔38a、燃料ガス出口連通孔38b、冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bに対向する部位をそれぞれ周回し、連通孔端部ビード部52ceに当接する。
本実施形態では、図9から理解されるように、外側シール部84aと内側シール部84bとは、互いに別体に設けられている。連通孔シール部84cのうち第1端部金属セパレータ30eの冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bに対向する部位を周回する部分については、外側シール部84aに対して別体であるとともに内側シール部84bに対して一体的に設けられている。
連通孔シール部84cのうち第1端部金属セパレータ30eの燃料ガス入口連通孔38a及び燃料ガス出口連通孔38bに対向する部位を周回する部分については、外側シール部84a及び内側シール部84bに対して別体に設けられている。
なお、外側凹部86a、内側凹部86b及び連通孔用凹部86cは、互いに連通するように形成され、外側シール部84a、内側シール部84b及び連通孔シール部84cは、一体成形されていてもよい。また、外側シール部84a及び外側凹部86aは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
このような燃料電池スタック10では、第1シールライン52及び第2シールライン62が弾性変形するように、各連結バー24をエンドプレート20a、20bの内面にボルト26を介して固定することによって積層体14に積層方向の締め付け荷重が付与されている。そのため、第1シールライン52及び第2シールライン62は、樹脂フィルム46を積層方向から挟持するように弾性変形している。すなわち、樹脂フィルム46には、第1シールライン52の弾性力と第2シールライン62の弾性力とが作用しているため、酸化剤ガス、燃料ガス及び冷却媒体の漏れが防止される。
次に、このように構成される燃料電池スタック10の動作について説明する。
まず、図1に示すように、酸素含有ガス等の酸化剤ガス、例えば、空気は、エンドプレート20aの酸化剤ガス入口連通孔34aに供給される。水素含有ガス等の燃料ガスは、エンドプレート20aの燃料ガス入口連通孔38aに供給される。純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体は、エンドプレート20aの冷却媒体入口連通孔36aに供給される。
酸化剤ガスは、図4に示すように、酸化剤ガス入口連通孔34aから第1金属セパレータ30の酸化剤ガス流路48に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路48に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体28のカソード電極42に供給される。
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔38aから第2金属セパレータ32の燃料ガス流路58に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路58に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体28のアノード電極44に供給される。
従って、各電解質膜・電極構造体28では、カソード電極42に供給される酸化剤ガスと、アノード電極44に供給される燃料ガスとが、第2電極触媒層44a及び第1電極触媒層42a内で電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
次いで、カソード電極42に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極44に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔38bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体入口連通孔36aに供給された冷却媒体は、第1金属セパレータ30と第2金属セパレータ32との間に形成された冷却媒体流路66に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体28を冷却した後、冷却媒体出口連通孔36bから排出される。
この場合、本実施形態に係る燃料電池スタック10は、以下の効果を奏する。
インシュレータ18a、18b又はエンドプレート20a、20bの外周部には、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)に当接するシール部材(第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84)が設けられ、シール部材(第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84)の幅寸法W2、W6は、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)の最大幅寸法W3、W7よりも大きい。
このような構成によれば、シール部材(第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84)を端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)に確実に当接させることができるため、積層体14の積層方向端部において良好なシール性を確保することができる。
ところで、第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84を設けなかった場合、インシュレータ18aには第2端部シールライン62eの弾性力が片側からしか作用せず、インシュレータ18bには第1端部シールライン52eの弾性力が片側からしか作用しない。そのため、積層体14の積層方向端部のシール性の低下が惹起される。
しかしながら、インシュレータ18aに第2端部金属セパレータ32eの第2端部シールライン62eに当接する第1弾性シール部材80を設けている。そのため、第2端部シールライン62eには第1弾性シール部材80の弾性力が作用し、第1弾性シール部材80には第2端部シールライン62eの弾性力が作用する。
インシュレータ18bに第1端部金属セパレータ30eの第1端部シールライン52eに当接する第2弾性シール部材84を設けている。そのため、第1端部シールライン52eには第2弾性シール部材84の弾性力が作用し、第2弾性シール部材84には第1端部シールライン52eの弾性力が作用する。従って、積層体14の積層方向の両端部のシール性を向上させることができる。
第1シールライン52、第1端部シールライン52e、第2シールライン62及び第2端部シールライン62eが積層方向からの平面視で波状に延在している。そのため、これらシールラインが直線状に延在する場合と比較して、第1シールライン52、第1端部シールライン52e、第2シールライン62及び第2端部シールライン62eの剛性が向上する。
これにより、第1シールライン52、第1端部シールライン52e、第2シールライン62及び第2端部シールライン62eでのシール面圧の相対的な低下が抑制されるため、シール面圧のバラツキを抑制することができる。
第1弾性シール部材80の幅寸法W2は、第2端部シールライン62eの幅寸法W3(最大幅寸法)よりも大きい(図8参照)。これにより、第2端部シールライン62eの先端面(樹脂材56b)を第1弾性シール部材80に確実に接触させることができる。第2弾性シール部材84の幅寸法W6は、第1端部シールライン52eの幅寸法W7(最大幅寸法)よりも大きい(図10参照)。これにより、第1端部シールライン52eの先端面(樹脂材56a)を第2弾性シール部材84に確実に接触させることができる。
第2端部シールライン62eは、その延在方向と直交する方向に突出した第1凸部63と、第1凸部63の突出方向とは反対方向に突出した第2凸部65とを有する。第1弾性シール部材80の幅寸法W2は、第1凸部63の突出端と第2凸部65の突出端との間隔W4よりも大きい(図8参照)。これにより、第2端部シールライン62eの先端面を第1弾性シール部材80に一層確実に接触させることができる。
第1端部シールライン52eは、その延在方向と直交する方向に突出した第1凸部53と、第1凸部53の突出方向とは反対方向に突出した第2凸部55とを有する。第2弾性シール部材84の幅寸法W6は、第1凸部53の突出端と第2凸部55の突出端との間隔W8よりも大きい(図10参照)。これにより、第1端部シールライン52eの先端面を第2弾性シール部材84に一層確実に接触させることができる。
インシュレータ18aの面19aには第1弾性シール部材80が配設される第1凹部82が形成され、インシュレータ18bの面19bには第2弾性シール部材84が配設される第2凹部86が形成されている。これにより、積層体14が積層方向に大型化することを抑えることができる。
第1シールライン52及び第1端部シールライン52eは、酸化剤ガス流路48を周回するとともに酸化剤ガス入口連通孔34a、酸化剤ガス出口連通孔34b、燃料ガス入口連通孔38a、燃料ガス出口連通孔38b、冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bの周囲に設けられている。これにより、反応ガス(酸化剤ガス及び燃料ガス)並びに冷却媒体の漏れを確実に防止することができる。
第2シールライン62及び第2端部シールライン62eは、燃料ガス流路58を周回するとともに燃料ガス入口連通孔38a、燃料ガス出口連通孔38b、酸化剤ガス入口連通孔34a、酸化剤ガス出口連通孔34b、冷却媒体入口連通孔36a及び冷却媒体出口連通孔36bの周囲に設けられている。これにより、反応ガス(酸化剤ガス及び燃料ガス)並びに冷却媒体の漏れを確実に防止することができる。
本実施形態では、第1端部金属セパレータ30eが第1金属セパレータ30と同一構成であるとともに第2端部金属セパレータ32eが第2金属セパレータ32と同一構成である。すなわち、第1端部金属セパレータ30e及び第2端部金属セパレータ32eを専用品にしなくてもよいため、燃料電池スタック10の部品の種類を少なくすることができ、燃料電池スタック10の製造工数の削減を図ることができる。
ところで、例えば、燃料電池スタック10の発電が開始されると燃料電池スタック10の温度が上昇し、燃料電池スタック10の発電が停止されると燃料電池スタック10の温度が下降する。一般的に、接合セパレータ33の線膨張係数とインシュレータ18a、18bの線膨張係数との差は比較的大きい。
しかしながら、本実施形態では、第2端部シールライン62eがインシュレータ18aではなく第1弾性シール部材80に当接している。そのため、例えば、図11に示すように、熱膨張又は熱収縮によってインシュレータ18aと第2端部シールライン62eの位置関係が矢印C方向にずれた場合であっても、第1弾性シール部材80が弾性変形することにより、第2端部シールライン62e及び第1弾性シール部材80の接触位置がずれることを抑えることができる。
これと同様に、第1端部シールライン52eがインシュレータ18bではなく第2弾性シール部材84に当接している。そのため、例えば、熱膨張又は熱収縮によってインシュレータ18bと第1端部シールライン52eの位置関係が矢印C方向にずれた場合であっても、第2弾性シール部材84が弾性変形することにより、第1端部シールライン52e及び第2弾性シール部材84の接触位置がずれることを抑えることができる。従って、燃料電池スタック10の温度変化によって積層体14の積層方向端部のシール性が低下することを抑えることができる。
なお、第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62eのインシュレータ18a、18bに対する位置ずれは、燃料電池スタック10に対して積層方向と直交する方向に振動や荷重が作用した場合等にも発生し得る。
また、第1弾性シール部材80と第1凹部82の側面83との間には所定の隙間Saが形成され、第2弾性シール部材84と第2凹部86の側面87との間には所定の隙間Sbが形成されている。そのため、第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84を容易且つ確実に弾性変形させることができる。
さらに、第1弾性シール部材80における積層体14に向かう面81が平坦形状であるため、第2端部シールライン62eを第1弾性シール部材80の面81に対して効率的に密着させることができる。また、第2弾性シール部材84における積層体14に向かう面85が平坦形状であるため、第1端部シールライン52eを第2弾性シール部材84の面85に対して効率的に密着させることができる。
本発明は上述した構成に限定されない。例えば、第1弾性シール部材80をインシュレータ18aの面19aに設けるとともに第2弾性シール部材84をインシュレータ18bの面19bに設けてもよい。この場合、第1凹部82及び第2凹部86を設ける必要がないため、インシュレータ18a、18bの構成を簡素化することができる。
また、上述した実施形態では、第1弾性シール部材80をインシュレータ18aに設けるとともに第2弾性シール部材84をインシュレータ18bに設けている。しかしながら、図12に示すように、インシュレータ18a、18bが接合セパレータ33よりも一回り小さい場合等には、エンドプレート20aに形成した第1凹部82に第1弾性シール部材80を設けるとともにエンドプレート20bに形成した第2凹部86に第2弾性シール部材84を設けてもよい。
ただし、第1弾性シール部材80をエンドプレート20aの面29aに設けるとともに第2弾性シール部材84をエンドプレート20bの面29bに設けてもよい。この場合、エンドプレート20a、20bの構成を簡素化することができる。
上述した実施形態では、第1金属セパレータ30には、樹脂フィルム46に接触するように積層体14の積層方向に向かって突出した第1シールライン52が形成されている。また、第2金属セパレータ32には、樹脂フィルム46に接触するように積層体14の積層方向に向かって突出した第2シールライン62が形成されている。
しかしながら、本発明では、図13に示すように、第1シールライン52及び第2シールライン62は、樹脂フィルム46が設けられていない電解質膜・電極構造体28の外周部に接触するように設けられていてもよい。
図14に示すように、燃料電池スタック10は、上述した第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84に代えてシール部材としての第1弾性シール部材90及び第2弾性シール部材92を備えていてもよい。第1弾性シール部材90は、上述した第1弾性シール部材80と同様、外側シール部90a、内側シール部90b及び図示しない連通孔シール部を含む。第2弾性シール部材92は、上述した第2弾性シール部材84と同様、外側シール部92a、内側シール部92b及び図示しない連通孔シール部を含む。
第1弾性シール部材90は、弾性を有する高分子材料からなる。このような高分子材料としては、上述した第1弾性シール部材80と同様のものが挙げられる。第1弾性シール部材90は、第2端部シールライン62eに当接するシール本体94と、シール本体94に設けられた固定部96とを含む。
シール本体94は、横断面が矩形状に形成されている。シール本体94と第1凹部82の両側の側面83との間には、シール本体94が積層方向と直交する方向(矢印B方向又は矢印C方向)に弾性変形可能なように所定の隙間Scが形成されている。換言すれば、シール本体94は、第1凹部82の両側の側面83から離間している。シール本体94と側面83との間隔は、第1弾性シール部材90の延在方向に沿って略一定に設定されている。隙間Scは、シール本体94の幅方向両側に設けられている。
シール本体94の第2端部シールライン62eに向かう面91は、第1凹部82内に位置している。シール本体94の面91は、固体高分子電解質膜40に対して平行な平坦形状を有する。
シール本体94の面91の幅寸法W9は、上述した第1弾性シール部材80の面81の幅寸法W2(図8参照)と同様に設定されている。すなわち、幅寸法W9は、第2端部シールライン62eの先端面(樹脂材56b)の幅寸法W3(最大幅寸法、図8参照)よりも大きい。幅寸法W9は、第1凸部63の突出端と第2凸部65の突出端との間隔W4(図8参照)よりも大きい。
固定部96は、シール本体94における積層体14とは反対側に一体的に設けられている。固定部96は、第1凹部82の両側の側面83に当接している。換言すれば、固定部96は、第1凹部82の両側の側面83によって挟持されている。これにより、第1弾性シール部材90が第1凹部82に対して幅方向に位置ずれすることを抑えることができる。また、燃料電池スタック10の製造時に、第1弾性シール部材90が第1凹部82から脱落することを抑制できる。
固定部96は、第1凹部82の底面83a側に向かって凸状に突出した湾曲面96aが形成されている。湾曲面96aの一部は、第1凹部82の底面83aに対して当接している。なお、湾曲面96aと第1凹部82の底面83aとは、互いに接着又は融着されていない。ただし、湾曲面96aの一部は、第1凹部82の底面83aに対して接着(接着剤による接着)又は融着されていてもよい。この場合、第1弾性シール部材90が第1凹部82に対して幅方向に位置ずれすることを一層抑えることができる。また、燃料電池スタック10の製造時に、第1弾性シール部材90が第1凹部82から脱落することを一層抑制できる。
第2弾性シール部材92は、弾性を有する高分子材料からなる。このような高分子材料としては、上述した第1弾性シール部材90と同様のものが挙げられる。第2弾性シール部材92は、第1端部シールライン52eに当接するシール本体98と、シール本体98に設けられた固定部100とを含む。
シール本体98は、横断面が矩形状に形成されている。シール本体98と第2凹部86の両側の側面87との間には、シール本体98が積層方向と直交する方向(矢印B方向又は矢印C方向)に弾性変形可能なように所定の隙間Sdが形成されている。換言すれば、シール本体98は、第2凹部86の両側の側面87から離間している。シール本体98と側面87との間隔は、第2弾性シール部材92の延在方向に沿って略一定に設定されている。隙間Sdは、シール本体98の幅方向両側に設けられている。
シール本体98の第1端部シールライン52eに向かう面95は、第2凹部86内に位置している。シール本体98の面95は、固体高分子電解質膜40に対して平行な平坦形状を有する。
シール本体98の面95の幅寸法W10は、上述した第2弾性シール部材84の面85の幅寸法W6(図10参照)と同様に設定されている。すなわち、幅寸法W10は、第1端部シールライン52eの先端面(樹脂材56a)の幅寸法W7(最大幅寸法、図10参照)よりも大きい。幅寸法W10は、第1凸部53の突出端と第2凸部55の突出端との間隔W8(図10参照)よりも大きい。
固定部100は、シール本体98における積層体14とは反対側に一体的に設けられている。固定部100は、第2凹部86の両側の側面87に当接している。換言すれば、固定部100は、第2凹部86の両側の側面87によって挟持されている。これにより、第2弾性シール部材92が第2凹部86に対して幅方向に位置ずれすることを抑えることができる。また、燃料電池スタック10の製造時に、第2弾性シール部材92が第2凹部86から脱落することを抑制できる。
固定部100は、第2凹部86の底面87a側に向かって凸状に突出した湾曲面100aが形成されている。湾曲面100aの一部は、第2凹部86の底面87aに対して当接している。なお、湾曲面100aと第2凹部86の底面87aとは、互いに接着又は融着されていない。ただし、湾曲面100aの一部は、第2凹部86の底面87aに対して接着(接着剤による接着)又は融着されていてもよい。この場合、第2弾性シール部材92が第2凹部86に対して幅方向に位置ずれすることを一層抑えることができる。また、燃料電池スタック10の製造時に、第2弾性シール部材92が第2凹部86から脱落することを一層抑制できる。
このような第1弾性シール部材90及び第2弾性シール部材92によれば、上述した第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84と同様の効果を奏する。
インシュレータ18a、18bには、シール部材(第1弾性シール部材90及び第2弾性シール部材92)が配設される凹部(第1凹部82及び第2凹部86)が形成されている。
シール部材(第1弾性シール部材90及び第2弾性シール部材92)は、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)に当接するシール本体94、98と、シール本体94、98に設けられた固定部96、100とを有する。シール本体94、98は、凹部(第1凹部82及び第2凹部86)を形成する側面83、87に対して離間し、固定部96、100は、凹部(第1凹部82及び第2凹部86)を形成する側面83、87に挟持されている。
このような構成によれば、シール部材(第1弾性シール部材90及び第2弾性シール部材92)が凹部(第1凹部82及び第2凹部86)に対して幅方向に位置ずれすることを抑えることができる。
第1弾性シール部材90及び第2弾性シール部材92は、図12に示すエンドプレート20a、20bに形成された第1凹部82及び第2凹部86のそれぞれに配設されていてもよい。
図15に示すように、燃料電池スタック10は、上述した第1弾性シール部材80及び第2弾性シール部材84に代えて第1シール部材110及び第2シール部材112を備えていてもよい。第1シール部材110は、第2端部シールライン62eに対向する位置に設けられている。
第1シール部材110は、第1金属板114と第1弾性シール部材116を有する。第1金属板114と第1弾性シール部材116とは、積層方向に互いに重ねて配置されている。第1金属板114は、電気絶縁性を有する支持部材であるインシュレータ18aに支持されるとともに、第2端部シールライン62eと第1弾性シール部材116との間に配置されている。
第1金属板114は、インシュレータ18aに当接するとともに、インシュレータ18aに対し、積層方向(矢印A方向)に対して垂直な方向に摺動可能である。第2端部シールライン62eの先端面(凸部)と第1弾性シール部材116とは、積層体14の積層方向から見て互いに重なる位置に設けられている。
第1金属板114は、第2端部金属セパレータ32eと同系統の金属材料からなる。第1金属板114は、第2端部金属セパレータ32eと同じ材料からなることが好ましいが、第2端部金属セパレータ32eと線膨張係数が略同一であれば、第2端部金属セパレータ32eと異なる組成の金属材料により構成されてもよい。第1金属板114は、第2端部シールライン62eに対向する連続した一枚のプレートである。
第1金属板114の幅寸法W11は、上述した第1弾性シール部材80の面81の幅寸法W2(図8参照)と同様に設定されている。すなわち、幅寸法W11は、第2端部シールライン62eの先端面(樹脂材56b)の幅寸法W3(最大幅寸法、図8参照)よりも大きい。幅寸法W11は、第1凸部63の突出端と第2凸部65の突出端との間隔W4(図8参照)よりも大きい。
インシュレータ18aには、第1弾性シール部材116を収容する溝118が設けられている。溝118は、第2端部シールライン62eに対向する位置に設けられている。第1金属板114は、溝118を跨いで配置されている。第1弾性シール部材116は、第1金属板114と溝118の底部との間に弾性圧縮状態で挟持されている。従って、第1弾性シール部材116は、第1金属板114と溝118の底部とに密着して気密シールを形成している。
インシュレータ18aは、溝118が形成された凹部120を有する。凹部120は、第2端部シールライン62eに対向する位置に設けられている。第1金属板114は、凹部120に収容されている。第1金属板114の外周端114eと、当該外周端114eに対向する凹部120の側壁面121との間には、第1金属板114の熱膨張を許容するための隙間Seが設けられている。凹部120は、ターミナルプレート16aを収容する凹部76aの全周に亘って囲んでいる。
第2シール部材112は、第1端部シールライン52eに対向する位置に設けられている。第2シール部材112は、第2金属板122と第2弾性シール部材124を有する。第2金属板122と第2弾性シール部材124とは、積層方向に互いに重ねて配置されている。第2金属板122は、電気絶縁性を有する支持部材であるインシュレータ18bに支持されるとともに、第1端部シールライン52eと第2弾性シール部材124との間に配置されている。
第2金属板122は、インシュレータ18bに当接するとともに、インシュレータ18bに対し、積層方向(矢印A方向)に対して垂直な方向に摺動可能である。第1端部シールライン52eの先端面(凸部)と第2弾性シール部材124とは、積層体14の積層方向から見て互いに重なる位置に設けられている。
第2金属板122は、第1端部金属セパレータ30eと同系統の金属材料からなる。第2金属板122は、第1端部金属セパレータ30eと同じ材料からなることが好ましいが、第1端部金属セパレータ30eと線膨張係数が略同一であれば、第1端部金属セパレータ30eと異なる組成の金属材料により構成されてもよい。第2金属板122は、第1端部シールライン52eに対向する連続した一枚のプレートである。
第2金属板122の幅寸法W12は、上述した第2弾性シール部材84の面85の幅寸法W6(図10参照)と同様に設定されている。すなわち、幅寸法W12は、第1端部シールライン52eの先端面(樹脂材56a)の幅寸法W7(最大幅寸法、図10参照)よりも大きい。幅寸法W12は、第1凸部53の突出端と第2凸部55の突出端との間隔W8(図8参照)よりも大きい。
インシュレータ18bには、第2弾性シール部材124を収容する溝126が設けられている。溝126は、第1端部シールライン52eに対向する位置に設けられている。第2金属板122は、溝126を跨いで配置されている。第2弾性シール部材124は、第2金属板122と溝126の底部との間に弾性圧縮状態で挟持されている。従って、第2弾性シール部材124は、第2金属板122と溝126の底部とに密着して気密シールを形成している。
インシュレータ18bは、溝126が形成された凹部128を有する。凹部128は、第1端部シールライン52eに対向する位置に設けられている。第2金属板122は、凹部128に収容されている。第2金属板122の外周端122eと、当該外周端122eに対向する凹部128の側壁面129との間には、第1金属板114の熱膨張を許容するための隙間Sfが設けられている。凹部128は、ターミナルプレート16bを収容する凹部76bの全周に亘って囲んでいる。
図15において、シール部材(第1シール部材110及び第2シール部材112)は、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)に対向する位置に重ねて配置された金属板(第1金属板114及び第2金属板122)及び弾性シール部材(第1弾性シール部材116及び第2弾性シール部材124)を有する。金属板(第1金属板114及び第2金属板122)は、インシュレータ18a、18bにより支持されるとともに、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)と弾性シール部材(第1弾性シール部材116及び第2弾性シール部材124)との間に配置されている。
つまり、弾性シール部材(第1弾性シール部材116及び第2弾性シール部材124)よりも剛性が高く且つインシュレータ18a、18bにより支持された金属板(第1金属板114及び第2金属板122)が、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)と弾性シール部材(第1弾性シール部材116及び第2弾性シール部材124)との間に配置される。このため、全体が弾性材料により構成されるシール部材を用いた場合と異なり、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)の傾きを防止することができる。
また、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)が金属板(第1金属板114及び第2金属板122)で支持されるため、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)の積層方向位置の変動をなくし、金属セパレータ(第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32)に過大な圧縮荷重が加えられることを抑制することができる。
さらに、金属板(第1金属板114及び第2金属板122)及び端部金属セパレータ(第1端部金属セパレータ30e及び第2端部金属セパレータ32e)は、いずれも金属製であり線膨張係数が互いに近いため、温度変化に伴う熱膨張時又は熱収縮時に金属板(第1金属板114及び第2金属板122)と端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)との接触位置がずれることを防止することができる。従って、端部シール用ビード部(第1端部シールライン52e及び第2端部シールライン62e)において良好なシール性を確保することができる。
本実施形態では、第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32の間に樹脂フィルム付きMEA28を挟持した発電セル12を構成し、各発電セル12間に冷却媒体流路66を形成する、所謂、各セル冷却構造を採用している。これに対して、例えば、3枚以上の金属セパレータと2枚以上の電解質膜・電極構造体(MEA)を備え、前記金属セパレータと前記電解質膜・電極構造体とを交互に積層したセルユニットを構成してもよい。その際、各セルユニット間には、冷却媒体流路が形成される、所謂、間引き冷却構造が構成される。
間引き冷却構造では、単一の金属セパレータの一方の面に燃料ガス流路が形成され且つ他方の面に酸化剤ガス流路が形成される。従って、一枚の金属セパレータが電解質膜・電極構造体間に配置される。
シール部材(第1弾性シール部材80、90、第2弾性シール部材84、92、第1シール部材110及び第2シール部材112)は、第1シールライン52及び第2シールライン62と同じように、積層方向からの平面視で波状に延在していてもよい。
本発明に係る燃料電池スタックは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。