JP6895215B2 - フローはんだ付け用フラックス組成物 - Google Patents
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Description
一方で、近年のはんだの鉛フリー化に伴い、高融点のはんだが用いられる傾向にある。最も利用されている鉛フリーはんだ合金は、スズ(Sn)−銀(Ag)−銅(Su)系のはんだ合金、いわゆるSAC系のはんだ合金である。このSAC系のはんだ合金は、従来のスズ−鉛の共晶はんだと比較して、酸化した銅箔へのぬれ広がりが悪くなる。そのため、SAC系のはんだ合金を用いたはんだ広がり試験で、80%以上となるようなフラックス組成物はなかった。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、並びに、(D)炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜4のアルコールからなる高級脂肪族エステルを含有することを特徴とするものである。
本明細書において、鉛フリーはんだとは、鉛を添加しないはんだ金属または合金のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、300質量ppm以下であることが好ましい。
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。水素添加ロジンとしては、完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸など)の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう)などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、およびアミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、およびグリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、およびジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、およびピコリン酸などが挙げられる。
本実施形態において、(B)成分は、スルーホールのぬれ上がりの観点から、コハク酸を含有することが好ましい。
本実施形態に用いる(C)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。この(C)成分としては、(C1)沸点100℃以下の水溶性溶剤を用いることが好ましい。
(C1)成分としては、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記(C2)成分としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(295℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271℃)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(259℃)、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(272℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(245℃)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(283℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(256℃)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(302℃)、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(242℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(274℃)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(243℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(255℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(275℃)およびイソボルニルシクロヘキサノール(310〜318℃)などが挙げられる。これらの中でも、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、イソボルニルシクロヘキサノールが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の温度は、上記の溶剤の沸点である。
本実施形態に用いる(D)高級脂肪族エステルは、炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜4のアルコールからなる高級脂肪族エステルである。この(D)成分は、活性作用が高温でも失活しにくいため、鉛フリーはんだを用いた場合のはんだぬれ性を向上できる。なお、脂肪族カルボン酸の炭素数が11以下の場合には、はんだぬれ性の向上効果が不十分である。他方、脂肪族カルボン酸の炭素数が25以上のものは入手が困難である。また、アルコールの炭素数が5以上の場合には、はんだぬれ性の向上効果が不十分である。脂肪族カルボン酸の炭素数は、12〜18であることが好ましく、18であることが特に好ましい。アルコールの炭素数は、2〜4であることが好ましく、4であることが特に好ましい。
これらの高級脂肪族エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
脂肪族カルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、α−リノレン酸、リノール酸、およびオレイン酸などが挙げられる。
アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコールなどが挙げられる。
次に、本実施形態のフラックス組成物を用いたはんだ付け方法について説明する。本実施形態のはんだ付け方法は、以下説明する部品取付工程、フラックス塗布工程およびはんだ付け工程を備える方法である。
電子基板としては、例えば、プリント配線基板などが挙げられる。
電子部品は、電子基板のスルーホールに挿入可能で、挿入後にはんだ付けをすることで実装する方法(いわゆるスルーホール実装)で用いるものである。電子部品としては、集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器およびコンデンサなどが挙げられる。
フラックス組成物の塗布装置としては、スプレーフラクサー、および発泡式フラクサーなどを採用できる。これらの中でも、塗布量の安定性の観点から、スプレーフラクサーが好ましい。
フラックス組成物の塗布量は、はんだ付け性の観点から、30mL/m2以上180mL/m2以下であることが好ましく、40mL/m2以上150mL/m2以下であることがより好ましく、50mL/m2以上120mL/m2以下であることが特に好ましい。
溶融はんだを接触させる方法としては、溶融はんだを電子基板に接触できる方法であればよく、特に限定されない。このような方法としては、例えば、電子基板に噴流する溶融はんだに接触させる方法(フローはんだ付け法)を採用してもよい。また、溶融はんだの入ったはんだ槽を電子基板に接触させる方法を採用してもよい。
はんだ付けの条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Au−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、溶融はんだの温度は、230℃以上280℃以下(好ましくは、250℃以上270℃以下)に設定すればよい。また、プリヒート温度としては、加熱温度80℃以上130℃以下(好ましくは、90℃以上120℃以下)に設定すればよい。
((A)成分)
ロジン系樹脂:商品名「中国ロジンX」、荒川化学工業社製
((B)成分)
活性剤A:コハク酸
活性剤B:アジピン酸
活性剤C:トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(TDBD)、丸善油化商事社製
((C1)成分)
溶剤A:イソプロピルアルコール
((C2)成分)
溶剤B:トリプロピレングリコールモノブチルエーテル
((D)成分)
高級脂肪酸エステルA:ステアリン酸ブチル、商品名「エキセパールBS」、島田商会社製
高級脂肪酸エステルB:ステアリン酸エチル
高級脂肪酸エステルC:パルチミン酸イソプロピル
高級脂肪酸エステルD:ラウリン酸メチル
(他の成分)
二塩基酸エステル:コハク酸ジイソプロピル、丸善油化商事社製
ロジン系樹脂3質量%、活性剤A1.5質量%、活性剤B0.5質量%、活性剤C1質量%、高級脂肪酸エステルA0.5質量%、溶剤A90.5質量%および溶剤B3質量%を容器に投入し、混合してフラックス組成物を得た。
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
フラックス組成物の特性(はんだ広がり、ぬれ上がり)を以下のような方法で評価した。得られた結果を表1に示す。
(1)はんだ広がり
銅板(大きさ:50mm×50mm、厚み:0.5mm)を、600番耐水研磨紙にて研磨し、さらにイソプロピルアルコールにて洗浄した後、150℃乾燥機中にて1時間の酸化処理を施して試験片を得た。
次に、試験片上に、0.05mLのフラックス組成物を塗布して、その上に、はんだリング(直径φ1.6mm線はんだを、直径φ3.2mmの棒に巻き付けた1巻)を載せ、これをセラミック板の上に置く。そして、このセラミック板を、255℃に設定されたはんだバス上に置き、試験片を加熱した。その後、はんだが溶融してから30秒間加熱を続け、水平に引き上げ放冷して、評価用試料を得た。
この評価用試料について、マイクロメーターで広がったはんだの高さ(H)を測定し、広がり率(Sr)を下記数式(F1)より求めた。
Sr=(D−H)/D×100 ・・・(F1)
D=1.24V1/3 ・・・(F2)
Sr:広がり率(%)
H:広がったはんだの高さ(mm)
D:試験に用いたはんだを球とみなした場合の直径(mm)
V:試験に用いたはんだの質量/密度
なお、試験は、(i)はんだリング1および(ii)はんだリング2について、それぞれ行う。
(i)はんだリング1のはんだ合金組成:Sn3.0Ag0.5Cu
(ii)はんだリング1のはんだ合金組成:Sn0.3Ag0.7Cu
そして、広がり率に基づいて、以下の基準に従って、はんだ広がりを評価した。なお、広がり率(%)についても表1に示す。
〇:広がり率が、80%以上である。
×:広がり率が、80%未満である。
(2)ぬれ上がり
直径1.0mmおよび0.8mmのスルーホールを有する基板(厚み:1.6mm)に、リフロー処理を3回施して、試験片を得た。ここでのリフロー条件は、プリヒート温度が150〜200℃(80秒間)で、温度200℃以上の時間が80秒間で、ピーク温度が250℃である。
次に、この試験片に、スプレーフラックサーにて、フラックス組成物を塗布(塗布量:110mL/m2)し、その後、フローはんだ付けを行い、評価用試料を得た。ここでのフローはんだ付け条件は、プリヒート温度が100〜120℃(30〜60秒間)で、はんだ温度が250℃で、はんだ合金組成がSn3.0Ag0.5Cuである。
この評価用試料について、直径1.0mmおよび0.8mmの各120箇所の観察を行い、スルーホール端面の全周にはんだがぬれ上がった箇所を「OK」とし、ぬれ上がり率を下記数式(F3)より求めた。
ぬれ上がり率(%)={(φ1.0のOK数/120)+(φ0.8のOK数/120)}×100 ・・・(F3)
そして、ぬれ上がり率に基づいて、以下の基準に従って、ぬれ上がりを評価した。なお、ぬれ上がり率(%)についても表1に示す。
◎:ぬれ上がり率が、80%以上である。
○:ぬれ上がり率が、70%以上80%以下である。
×:ぬれ上がり率が、70%未満である。
Claims (2)
- (A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、並びに、(D)炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜4のアルコールからなる高級脂肪族エステルを含有し、
前記(C)成分の配合量が、当該フラックス組成物100質量%に対して、70質量%以上95質量%以下であり、
(D)成分の配合量が、当該フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下である
ことを特徴とするフローはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1に記載のフローはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(C)成分が、(C1)1013hPaにおける沸点が100℃以下の水溶性溶剤と、(C2)1013hPaにおける沸点が120℃以上320℃以下のグリコール系溶剤またはテルペン系溶剤とを含有する
ことを特徴とするフローはんだ付け用フラックス組成物。
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