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JP6888240B2 - パウチ - Google Patents

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Description

本発明は食品等の内容物を収容可能なパウチに関する。
内容物が封入された状態で加熱手段により加熱されるパウチが知られている。パウチが加熱されることにより内容物から蒸気が発生し、その蒸気により内容物が蒸らされ、パウチの内部の圧力が上昇する。パウチの内部の圧力が上昇し続けた場合、パウチが破裂するおそれがある。このため、内容物から発生した蒸気をパウチの内部から外部に排出するための切り込みをパウチを構成するシートに予め形成する技術が従来のパウチに取り入れられている。
特許文献1はそのようなパウチの一例を開示している。このパウチのシートはナイロン樹脂により形成され、パウチの外面を構成する基材層、および、低密度ポリエチレン樹脂により形成され、基材層の内面に接合されたシーラント層が積層された積層構造を備える。基材層に切り込みが形成され、その切り込みがシーラント層により閉じられている。
パウチが加熱されることにより内部の圧力が上昇した場合、パウチが次第に膨張し、シーラント層のうちの基材層の切り込みと対応する部分が破断し、シーラント層および基材層を貫通する蒸気の通路が形成され、その通路から蒸気がパウチの外部に排出される。
特開2015−13441号公報
低密度ポリエチレン樹脂の融点は比較的低い。このため、レーザー加工により特許文献1のパウチの基材層に切り込みが形成される場合、レーザー加工により生じる熱によりシーラント層が溶融し、シートにピンホールが形成されるおそれがある。なお、特許文献1のパウチに限らず、融点が低い材料によりシーラント層が形成されるパウチであれば同様の課題が生じると考えられる。
本発明の目的はピンホールが形成されにくいパウチを提供することである。
〔1〕本発明に従うパウチの一形態は、内部に形成された収容空間に内容物を収容可能なパウチであって、前記内容物から発生した蒸気が通過するように切り込みまたは穴が形成された基材層、および、前記基材層の内面に接合されたシーラント層を含み、前記収容空間が形成されるようにシールされたシートを備え、前記シーラント層はポリオレフィン系樹脂を含む高密度層、および、ポリオレフィン系樹脂を含む低密度層が積層された積層構造を備える。
上記パウチによれば、基材層の切り込みまたは穴が基材層を貫通する第1の形態、および、基材層の切り込みまたは穴が基材層を貫通しない第2の形態が含まれる。第1の形態のパウチでは基材層の切り込みもしくは穴はシーラント層により閉じられる。
内容物が収容空間に収容され、収容空間が密封された状態において上記パウチが加熱された場合、内容物から発生する蒸気により収容空間の圧力が上昇する。このとき、内容物が蒸気により蒸らされる。
第1の形態のパウチによれば、シーラント層のうちの基材層の切り込みまたは穴に対応する部分が破断し、シーラント層および基材層を貫通する蒸気の通路が形成される。第2の形態のパウチによれば、シーラント層のうちの基材層の切り込みまたは穴に対応する部分に加え、基材層のうちの切り込みまたは穴の底が破断し、シーラント層および基材層を貫通する蒸気の通路が形成される。このため、収容空間の蒸気がその通路を介してパウチの外部に抜け、収容空間の圧力の上昇が抑えられ、収容空間の圧力が過度に上昇し、パウチが急激に破裂するおそれが低減される。
上記〔1〕に記載のパウチによればさらに次の効果が得られる。パウチのシーラント層は低密度層よりも融点が高い高密度層と低密度層とを含むため、シーラント層が低密度層だけにより構成される場合と比較してシートの融点が高く、レーザー加工により基材層に切り込みまたは穴が形成される場合にシーラント層にピンホールが形成されにくい。
一方、シーラント層全体を高密度層により構成した場合には次の課題をまねくおそれがある。高密度層は低密度層よりも延びにくいため、内容物の加熱にともないパウチの内部の圧力が上昇してもシーラント層が熱膨張する度合が小さく、シーラント層のうちの基材層の切り込みまたは穴と対応する部分が破断しない。このため、パウチの外部に蒸気が排出されず、パウチの内部の圧力が上昇し続け、圧力が一定の水準に達した段階でパウチが破裂するおそれがある。
上記〔1〕に記載のパウチによれば、上述のとおりシーラント層に高密度層および低密度層が含まれるため、シーラント層全体が高密度層により構成される場合と比較して、パウチの内部の圧力が上昇した場合におけるシーラント層の熱膨張の度合が大きい。このため、パウチの内部の圧力の上昇にともないシーラント層のうちの基材層の切り込みまたは穴と対応する部分が適切に破断し、パウチの内部の蒸気が外部に排出され、パウチが破裂するおそれが低減される。
〔2〕前記パウチの一例によれば、前記高密度層の密度は0.930g/cm〜0.940g/cmの範囲に含まれる。
レーザー加工によりシーラント層が溶融する度合はレーザー加工装置の出力に応じて異なる。高密度層の密度が上記範囲に含まれる場合、レーザー加工により切り込みまたは穴が形成される場合にシーラント層が溶けにくいレーザー加工装置の出力の範囲が広いことが試験により確認された。このため、上記パウチを製造する場合、多様な加工条件から実際に設定する加工条件を選択できる。
〔3〕前記パウチの一例によれば、前記低密度層の密度は0.915g/cm〜0.925g/cmの範囲に含まれる。
低密度層の密度が上記範囲に含まれる場合、内容物から発生した蒸気によりシーラント層のうちの基材層の切り込みまたは穴と対応する部分が一層破断しやすいことが試験により確認された。
〔4〕前記パウチの一例によれば、前記高密度層が前記基材層の内面に接合される。
低密度層よりも融点が高い高密度層が切り込みまたは穴が形成される基材層に接合されるため、レーザー加工により基材層に切り込みまたは穴が形成される場合にシーラント層にピンホールが一層形成されにくい。
〔5〕前記パウチの一例によれば、前記シーラント層における前記高密度層の重量の割合は60%〜80%の範囲に含まれる。
高密度層の重量の割合が60%以上の場合、レーザー加工により基材層に切り込みまたは穴が形成されるとき、シーラント層にピンホールが形成されにくいことが試験により確認された。一方、高密度層の重量の割合が80%以下の場合、内容物から発生した蒸気によりシーラント層のうちの基材層の切り込みまたは穴と対応する部分が破断しやすいことが試験により確認された。
〔6〕前記パウチの一例によれば、前記収容空間に収容された内容物を備える。
上記パウチによれば、上記〔1〕〜〔5〕に記載のパウチに準じた効果が得られる。
上記パウチによれば、ピンホールが形成されにくい。
第1実施形態のパウチの正面図。 図1のD2−D2線に沿う断面図。 収容空間に内容物が収容されたパウチの正面図。 図3のD4−D4線に沿う断面図。 シーラント層が破断したパウチの断面図。 加熱終了後のパウチの断面図。 サンプルパウチAおよびBの評価試験の結果を示す表。 サンプルパウチC、DおよびEの評価試験の結果を示す表。 サンプルパウチFおよびGの評価試験の結果を示す表。 第2実施形態のパウチの断面図。 サンプルパウチH、IおよびJの評価試験の結果を示す表。 サンプルパウチKおよびLの評価試験の結果を示す表。
(第1実施形態)
図1は内容物が封入されていないパウチ1の外観を示している。パウチ1は互いに対向する第1のシート10および第2のシート20、ならびに、第1のシート10の縁と第2のシート20の縁とが互いにシールされた部分であるシール部30を備える。第1のシート10および第2のシート20がシールされることにより、内容物を収容する収容空間2、および、収容空間2に内容物を入れるための開口40が対向する第1のシート10の内面と第2のシート20の内面との間に形成されている。なお、図1および図3に示されるドットはパウチ1のうちのシール部30である。
図2に示されるように、第1のシート10は内容物から発生した蒸気が通過するように切り込み11Aが形成された基材層11、および、基材層11の内面に接合されたシーラント層12が積層された積層構造を備える。切り込み11Aは基材層11を貫通している。シーラント層12には切り込み11Aが形成されていない。
基材層11は樹脂材料により形成されている。樹脂材料の一例はナイロン樹脂である。切り込み11Aはパウチ1の幅方向の中央に形成され、パウチ1の幅方向に延びている。切り込み11Aはシーラント層12により閉じられる。切り込み11Aは例えば炭酸ガスレーザー加工装置(以下「レーザー加工装置」)(図示略)により基材層11が加工されることにより形成される。
シーラント層12は基材層11の内面に接合される高密度層13、および、高密度層13の内面に接合される低密度層14を備える。高密度層13のうちの切り込み11Aに対応する部分である第1の通蒸予定部13Aは基材層11と接合されていない。このため、収容空間2の圧力の上昇によりパウチ1が熱膨張した場合、第1の通蒸予定部13A、および、低密度層14のうちの第1の通蒸予定部13Aと対応する部分である第2の通蒸予定部14Aは応力が集中し、シーラント層12の他の部分よりも破断しやすい。第1の通蒸予定部13Aおよび第2の通蒸予定部14Aが破断した場合、切り込み11A、第1の通蒸予定部13A、および、第2の通蒸予定部14Aによりパウチ1の外部と収容空間2とを連通する通路が形成される。
高密度層13を構成する材料はポリオレフィン系樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂の一例はポリエチレンである。高密度層13を構成する樹脂材料の密度、および、シーラント層12における高密度層13の重量の割合はピンホール耐性が良好である範囲で任意の値を取り得る。ピンホール耐性はレーザー加工装置を用いて第1のシート10の基材層11に切り込み11Aを形成する際に、シーラント層12におけるピンホールの形成のされにくさを評価する項目である。
ピンホール耐性に影響を及ぼす主要な因子は、高密度層13を構成する樹脂材料の密度、および、シーラント層12における高密度層13の重量の割合である。パウチ1ではピンホール耐性が良好となるように上記各因子の値が決められている。
ピンホール耐性の評価試験によれば、高密度層13を構成する樹脂材料の密度が0.930g/cm〜0.940g/cmの範囲に含まれる場合、ピンホール耐性が良好となりやすいことが確認された。一例によれば、高密度層13の密度は0.940g/cmである。
同評価試験によれば、シーラント層12における高密度層13の重量の割合が60%〜80%の範囲に含まれる場合、ピンホール耐性が良好となりやすいことが確認された。一例によれば、シーラント層12における高密度層13の重量の割合は80%である。
低密度層14を構成する材料はポリオレフィン系樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂の一例はポリエチレンである。低密度層14を構成する樹脂材料の密度、および、シーラント層12における低密度層14の重量の割合は通蒸適性が良好である範囲で任意の値を取り得る。通蒸適性は内容物が収容されたパウチ1が加熱されることにより、収容空間2の圧力が上昇して第1の通蒸予定部13Aおよび第2の通蒸予定部14Aが破断した後(以下「通蒸後」)の切り込み11Aの形状を評価する項目である。
通蒸後のパウチ1の幅方向における切り込み11Aの寸法が規定の寸法よりも大きい場合、通蒸適性が不良であると評価される。なお、規定の寸法は収容空間2の内圧が過度に上昇し、パウチ1が破裂して通蒸したために切り込み11Aの寸法が大きくなったと判定できる寸法である。一方、通蒸後のパウチ1の幅方向における切り込み11Aの寸法が規定の寸法よりも小さい場合、通蒸適性が良好であると評価される。
通蒸適性に影響を及ぼす主要な因子は、低密度層14を構成する樹脂材料の密度、および、シーラント層12における低密度層14の重量の割合である。パウチ1では通蒸適性が良好となるように上記各因子の値が決められている。なお、高密度層13を構成する樹脂材料の密度も通蒸適性に影響を及ぼすと考えられる。このため、低密度層14を構成する樹脂材料の密度、シーラント層12における低密度層14の重量の割合、および、高密度層13を構成する樹脂材料の密度の3種類の因子の値を調節することにより、良好な通蒸適性を確保することも可能である。
通蒸適性の評価試験によれば、低密度層14を構成する樹脂材料の密度が0.915g/cm〜0.925g/cmの範囲に含まれる場合、通蒸適性が良好になりやすいことが確認された。一例によれば低密度層14の密度は0.925g/cmである。
同評価試験によれば、シーラント層12における低密度層14の重量の割合が20%〜40%の範囲に含まれる場合、通蒸適性が良好になりやすいことが確認された。一例によれば、シーラント層12における低密度層14の重量の割合は20%である。
第2のシート20は基材層21、および、基材層21の内面に接合されたシーラント層22を含む。シーラント層22は基材層21の内面に接合される高密度層23、および、高密度層23の内面に接合される低密度層24を備える。なお、第2のシート20は第1のシート10と同一の積層構造を有するシートが用いられ、基材層21に切り込みが形成されていない点、および、シーラント層22に通蒸予定部が存在しない点を除いては第1のシート10と同じであるため、詳細な説明を省略する。
シール部30は第1のシート10の低密度層14の縁と第2のシート20の低密度層24の縁とが互いにシールされた部分である。シール部30はパウチ1の高さ方向に延びる第1の辺31および第2の辺32、ならびに、パウチ1の幅方向に延びる第3の辺33を含む。
第1の辺31には、パウチ1の高さ方向において切り込み11Aよりも第3の辺33に近い位置にノッチ3Aが形成されている。
第2の辺32はパウチ1の幅方向において第1の辺31と対向している。第2の辺32には、パウチ1の高さ方向において切り込み11Aよりも第3の辺33に近い位置にノッチ3Bが形成されている。
ノッチ3Bはパウチ1の幅方向においてノッチ3Aと対向している。エンドユーザーがノッチ3Aまたはノッチ3Bをきっかけとしてパウチ1を切り取る際に、図1の二点鎖線で示される切り取り線4が形成される。
開口40は第1のシート10の低密度層14の縁と第2のシート20の低密度層24の縁とが互いにシールされていない部分である。パウチ1の高さ方向において、開口40と一対のノッチ3A,3Bとの間に、切り込み11A、第1の通蒸予定部13A、および、第2の通蒸予定部14Aが形成されている。
パウチ1の使用方法とともに作用について説明する。
図3に示されるように、パウチ1は収容空間2に内容物100が収容された状態で開口40がシールされることにより内容物100が密封される。内容物100は固形具材110およびソース120を含む。
図4に示されるように、パウチ1は第1のシート10が第2のシート20よりも上側になるように電子レンジ等の加熱手段(図示略)に配置される。パウチ1が加熱手段により加熱されることにより、内容物100から蒸気が発生し、収容空間2の圧力が次第に上昇する。このため、第1のシート10と第2のシート20とが互いに離間する方向に膨張する。このとき、内容物100が蒸気により蒸らされる。なお、図4および図5の矢印は内容物100から発生した蒸気のイメージを示している。
図5に示されるように、第1のシート10が膨張することにより、シーラント層12のうちの第1の通蒸予定部13Aおよび第2の通蒸予定部14Aが破断し、シーラント層12と基材層11とを貫通する蒸気の通路が形成される。
図6に示されるように、収容空間2の蒸気がその通路を介してパウチ1の外部に抜け、収容空間2の圧力の上昇が抑えられる。このため、収容空間2の圧力が過度に上昇し、パウチ1が急激に破裂するおそれが低減される。なお、パウチ1の加熱が終了した後、エンドユーザーは一例として、シール部30を掴んでパウチ1を加熱手段の外部に取り出す。そして、ノッチ3Aまたはノッチ3B(図3参照)をきっかけとしてパウチ1を切り取り線4(図3参照)に沿って切り取った後、収容空間2から内容物100を取り出す。
図7〜図9を参照して、パウチ1の評価試験について説明する。
本願発明者は第1のシート10のシーラント層12の積層構造が異なる7つのパウチ(以下「サンプルパウチA〜G」)を用いて以下に説明するピンホール耐性および通蒸適性の評価試験を実施した。なお、サンプルパウチA〜Gはシーラント層12の積層構造以外については、第1実施形態のパウチ1と同一の構成であるため、第1実施形態と共通する構成については第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7〜図9に示されるとおり、サンプルパウチA〜Gはシーラント層12の層構造および層の密度が異なる。
サンプルパウチAのシーラント層12の層構造は高密度層13だけにより構成される単層構造である。サンプルパウチBのシーラント層12の層構造は低密度層14だけにより構成される単層構造である。サンプルパウチC〜Gの層構造は高密度層13および低密度層14により構成される2層構造である。サンプルパウチC〜Fのシーラント層12における高密度層13の重量の割合は80%であり、シーラント層12における低密度層14の重量の割合は20%である。サンプルパウチGのシーラント層12における高密度層13の重量の割合は60%であり、シーラント層12における低密度層14の重量の割合は40%である。
サンプルパウチAの高密度層13の密度は0.935g/cmである。サンプルパウチBの低密度層14の密度は0.915g/cmである。
サンプルパウチCの高密度層13の密度は0.940g/cmであり、低密度層14の密度は0.915g/cmである。サンプルパウチDの高密度層13の密度は0.940g/cmであり、低密度層14の密度は0.925g/cmである。サンプルパウチEの高密度層13の密度は0.930g/cmであり、低密度層14の密度は0.915g/cmである。サンプルパウチFの高密度層13の密度は0.930g/cmであり、低密度層14の密度は0.920g/cmである。サンプルパウチGの高密度層13の密度は0.940g/cmであり、低密度層14の密度は0.915g/cmである。
本評価試験のピンホール耐性の評価方法について説明する。
本願発明者はサンプルパウチA〜Gごとにレーザー加工装置の駆動条件を変化させてピンホール耐性を評価した。レーザー加工装置の駆動条件は湿度条件、および、出力条件を含む。
湿度条件はレーザー加工装置が駆動する室内の湿度に関する条件である。本評価試験では15%RHおよび90%RHが選択された。なお、いずれの湿度条件においても室内の温度は25℃である。
出力条件は第1のシート10の基材層11に切り込み11A(図1参照)を形成する場合にレーザー加工装置により出力されるレーザーの出力の大きさに関する条件である。本評価試験では13W、17W、21W、25W、29W、および、33Wが選択された。なお、切り込み11Aの形成時におけるレーザー加工装置の移動速度であるスキャン速度は700mm/sである。
ピンホール耐性の評価は次の手順で実施された。最初に、内容物が収容されていないサンプルパウチA〜Gのいずれかがレーザー加工装置にセットされる。次に、レーザー加工装置により切り込み11Aが形成された第1のシート10のシーラント層12に紙が密着させられる。次に、第1のシート10の基材層11における切り込み11Aおよびその周辺がペンにより着色される。次に、シーラント層12と密着した紙がペンのインクにより着色されているか否かが目視により確認される。
シーラント層12にピンホールが形成されている場合、紙がペンのインクにより着色される。このため、紙がペンのインクにより着色されている場合、ピンホール耐性が不良と評価される。シーラント層12にピンホールが形成されていない場合、紙がペンのインクにより着色されない。このため、紙がペンのインクにより着色されていない場合、ピンホール耐性が良好と評価される。
本評価試験の通蒸適性の評価方法について説明する。
通蒸適性の評価は次の手順で実施された。最初に、内容物が収容されたサンプルパウチA〜Gのいずれかが加熱手段にセットされる。次に、サンプルパウチのシーラント層12の各通蒸予定部13A,14Aが破断し、破断した各通蒸予定部13A、14Aおよび切り込み11Aにより形成される蒸気の通路を介して蒸気が排出されるまで、加熱手段によりサンプルパウチが加熱される。次に、通蒸後の切り込み11Aの寸法がスケールにより測定される。
加熱されたサンプルパウチの収容空間2から蒸気が適切に排出されず、収容空間2の圧力が過度に上昇した場合、シーラント層12が急激に破断し、切り込み11Aが規定の寸法よりも長くなる。このため、通蒸後の切り込み11Aの寸法が規定の寸法よりも長い場合、通蒸適性が不良と評価される。加熱されたサンプルパウチの収容空間2から蒸気が適切に排出され、収容空間2の圧力が適正な範囲に維持された場合、シーラント層12が破断しても切り込み11Aの寸法が規定の寸法内に含まれる。このため、通蒸後の切り込み11Aの寸法が規定の寸法以下の場合、通蒸適性が良好と評価される。
以上のようなピンホール耐性および通蒸適性の評価は、湿度条件が15%RHおよび90%RHのそれぞれの場合において、レーザー加工装置の出力条件を変化させて切り込み11Aを形成したサンプルパウチA〜Gを用いて行われた。
図7〜図9の「○」および「×」の記号はサンプルパウチA〜Gに関するピンホール耐性および通蒸適性の評価結果を示す。「○」は該当するサンプルパウチのピンホール耐性または通蒸適性が良好であることを示す。「×」は該当するサンプルパウチのピンホール耐性または通蒸適性が不良であることを示す。
評価試験の結果により示されるとおり、2層構造を備えるシーラント層12は単層構造を備えるシーラント層12と比較して、良好なピンホール耐性および通蒸適性が得られるレーザー加工装置の出力条件の範囲が広い。
パウチ1によれば、以下の効果が得られる。
(1)パウチ1のシーラント層12は低密度層14よりも融点が高い高密度層13と低密度層14とを含むため、シーラント層12が低密度層14だけにより構成される場合と比較して第1のシート10の融点が高く、レーザー加工により基材層11に切り込み11Aが形成される場合にシーラント層12にピンホールが形成されにくい。
一方、高密度層13は低密度層14よりも延びにくいため、内容物100の加熱にともないパウチ1の内部の圧力が上昇してもシーラント層12が熱膨張する度合が小さい。このため、サンプルパウチAのように、シーラント層12全体を高密度層13により構成すると、レーザー加工装置の出力が低い場合、シーラント層12のうちの基材層11の切り込み11Aと対応する部分が破断しないおそれがある。このため、パウチ1の外部に蒸気が排出されず、パウチ1の内部の圧力が上昇し続け、圧力が一定の水準に達した段階でパウチ1が破裂するおそれがある。
パウチ1によれば、上述のとおりシーラント層12に高密度層13および低密度層14が含まれるため、シーラント層12全体が高密度層13により構成される場合と比較して、パウチ1の内部の圧力が上昇した場合におけるシーラント層12の熱膨張の度合が大きい。このため、パウチ1の内部の圧力の上昇にともないシーラント層12のうちの基材層11の切り込み11Aと対応する部分である第1の通蒸予定部13Aおよび第2の通蒸予定部14Aが適切に破断し、パウチ1の内部の蒸気が外部に排出され、パウチ1が破裂するおそれが低減される。
(2)レーザー加工によりシーラント層12が溶融する度合はレーザー加工装置の出力に応じて異なる。高密度層13の密度が0.930g/cm〜0.940g/cmの範囲に含まれる場合、レーザー加工により切り込み11Aが形成される場合にシーラント層12が溶けにくいレーザー加工装置の出力の範囲が広いことが評価試験により確認された。このため、パウチ1を製造する場合、多様な加工条件から実際に設定する加工条件を選択できる。
(3)低密度層14の密度が0.915g/cm〜0.925g/cmの範囲に含まれる場合、内容物100から発生した蒸気によりシーラント層12のうちの基材層11の切り込み11Aと対応する部分である第1の通蒸予定部13Aおよび第2の通蒸予定部14Aが一層破断しやすいことが評価試験により確認された。
(4)低密度層14よりも融点が高い高密度層13が切り込み11Aが形成される基材層11に接合されるため、レーザー加工により基材層11に切り込み11Aが形成される場合にシーラント層12にピンホールが一層形成されにくい。
(5)高密度層13の重量の割合が60%以上の場合、レーザー加工により基材層11に切り込み11Aが形成される場合、シーラント層12にピンホールが形成されにくいことが評価試験により確認された。高密度層13の重量の割合が80%以下の場合、内容物100から発生した蒸気によりシーラント層12のうちの基材層11の切り込み11Aと対応する部分である第1の通蒸予定部13Aおよび第2の通蒸予定部14Aが破断しやすいことが試験により確認された。
(6)基材層11がナイロン樹脂により形成されているため、パウチ1の物理的強度が高められる。このため、例えば、内容物100が収容された状態のパウチ1が搬送されているときにパウチ1が傷つきにくく、内容物100が収容空間2から漏れ出しにくい。
(7)第1のシート10は融点が低い低密度層14が最も内側に積層され、第2のシート20は融点が低い低密度層24が最も内側に積層されている。このため、低密度層14と低密度層24とをシールしやすく、シール部30を形成しやすい。
(第2実施形態)
図10を参照して、第2実施形態のパウチ200について説明する。第2実施形態のパウチ200は第1実施形態のパウチ1とシーラント層12の積層構造、および、シーラント層22の積層構造が異なる点で相違し、その他の点は第1実施形態のパウチ1と実質的に同一である。なお、第1実施形態と共通する構成については第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
パウチ200のシーラント層12は基材層11の内面に接合される低密度層14、および、低密度層14の内面に接合される高密度層13を備える。
パウチ200のシーラント層22は基材層11の内面に接合される低密度層24、および、低密度層24の内面に接合される高密度層23を備える。
図11および図12を参照して、パウチ200の評価試験について説明する。
本願発明者は第1のシート10のシーラント層12の積層構造が異なる5つのパウチ(以下「サンプルパウチH〜L」)を用いてピンホール耐性および通蒸適性の評価試験を実施した。なお、サンプルパウチH〜Lはシーラント層12の積層構造以外について第2実施形態のパウチ200と同一の構成であるため、第2実施形態と共通する構成については第2実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。また、評価試験の評価項目の内容についても第1実施形態で説明した評価試験の評価項目の内容と同一であるため説明を省略する。
図11および図12に示されるとおり、サンプルパウチH〜Lはシーラント層12の層構造および層の密度が異なる。
サンプルパウチH〜Lの層構造は高密度層13および低密度層14により構成される2層構造である。サンプルパウチH〜Lのシーラント層12における低密度層14の重量の割合は20%であり、シーラント層12における高密度層13の重量の割合は80%である。サンプルパウチLのシーラント層12における低密度層14の重量の割合は40%であり、シーラント層12における高密度層13の重量の割合は60%である。
サンプルパウチHの低密度層14の密度は0.915g/cmであり、高密度層13の密度は0.940g/cmである。サンプルパウチIの低密度層14の密度は0.925g/cmであり、高密度層13の密度は0.940g/cmである。サンプルパウチJの低密度層14の密度は0.915g/cmであり、高密度層13の密度は0.930g/cmである。サンプルパウチKの低密度層14の密度は0.920g/cmであり、高密度層13の密度は0.920g/cmである。サンプルパウチLの低密度層14の密度は0.915g/cmであり、高密度層13の密度は0.940g/cmである。
評価結果により示されるとおり、2層構造を備えるシーラント層12はサンプルパウチA,B(図7参照)のような単層構造を備えるシーラント層12よりも良好なピンホール耐性および通蒸適性が得られるレーザー加工装置の出力条件の範囲が広い。
パウチ1によれば、上記(1)〜(3)、(5)、および、(6)に準じた効果に加えて、以下の効果が得られる。
(7)融点が高い高密度層13が最も内側に積層されるため、内容物100が収容された状態のパウチ200が加熱されることにより、内容物100、または、内容物100から発生する高温の蒸気とシーラント層12とが接触してもシーラント層12が溶けにくい。このため、パウチ200の耐熱性が高められる。
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従うパウチが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うパウチは、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
・変形例のパウチ1、または、変形例のパウチ200によれば、基材層11およびシーラント層12の積層方向において基材層11を貫通しない切り込み11Aが形成される。この場合、第1の通蒸予定部13Aおよび第2の通蒸予定部14Aに加え、基材層11のうちの切り込み11Aの底が破断し、シーラント層12および基材層11を貫通する蒸気の通路が形成される。
・変形例のパウチ1、または、変形例のパウチ200によれば、基材層11およびシーラント層12の積層方向において、切り込み11Aがシーラント層12の中間部分までにわたり形成される。
・変形例のパウチ1、または、変形例のパウチ200によれば、基材層11を貫通する穴、または、基材層11を貫通しない穴が基材層11に形成される。基材層11を貫通する穴が基材層11に形成される場合、穴は基材層11およびシーラント層12の積層方向において、シーラント層12の中間部分までにわたり形成されてもよい。また、基材層11を貫通しない穴が基材層11に形成される場合、シーラント層12のうちの基材層11の穴に対応する部分に加え、基材層11のうちの穴の底が破断し、シーラント層12および基材層11を貫通する蒸気の通路が形成される。
・変形例のパウチ1、または、変形例のパウチ200によれば、シーラント層12における高密度層13の重量の割合が60%よりも小さい、または、80%よりも大きい。
・変形例のパウチ1、または、変形例のパウチ200によれば、基材層11がポリエチレンテレフタレート樹脂、または、二軸延伸ポリプロピレン樹脂を含む材料により形成される。
・変形例のパウチ1、または、変形例のパウチ200によれば、高密度層13が硬質ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂を含む材料により形成される。
・変形例のパウチ1、または、変形例のパウチ200によれば、低密度層14が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂を含む材料により形成される。
1,200:パウチ
2 :収容空間
10 :第1のシート(シート)
11 :基材層
11A :切り込み
12 :シーラント層
13 :高密度層
14 :低密度層
100 :内容物

Claims (7)

  1. 内部に形成された収容空間に内容物を収容可能なパウチであって、
    前記内容物から発生した蒸気が通過するように切り込みまたは穴が形成された基材層、および、前記基材層の内面に接合されたシーラント層を含み、前記収容空間が形成されるようにシールされたシートを備え、
    前記シーラント層はポリオレフィン系樹脂を含む高密度層、および、前記高密度層に接合され、ポリオレフィン系樹脂を含む低密度層を備え、
    前記シーラント層は前記切り込みまたは穴に対応し、前記基材層と接合されていない通蒸予定部を備え、
    前記高密度層の密度は0.930g/cm〜0.940g/cmの範囲に含まれる
    パウチ。
  2. 前記低密度層の密度は0.915g/cm より大きく0.925g/cm 以下の範囲に含まれる
    請求項1に記載のパウチ。
  3. 内部に形成された収容空間に内容物を収容可能なパウチであって、
    前記内容物から発生した蒸気が通過するように切り込みまたは穴が形成された基材層、および、前記基材層の内面に接合されたシーラント層を含み、前記収容空間が形成されるようにシールされたシートを備え、
    前記シーラント層はポリオレフィン系樹脂を含む高密度層、および、前記高密度層に接合され、ポリオレフィン系樹脂を含む低密度層を備え、
    前記シーラント層は前記切り込みまたは穴に対応し、前記基材層と接合されていない通蒸予定部を備え、
    前記低密度層の密度は0.915g/cm より大きく0.925g/cm 以下の範囲に含まれる
    パウチ。
  4. 前記高密度層の密度は0.930g/cm〜0.940g/cmの範囲に含まれる
    請求項3に記載のパウチ。
  5. 前記高密度層が前記基材層の内面に接合される
    請求項1〜4のいずれか一項に記載のパウチ。
  6. 前記シーラント層における前記高密度層の重量の割合は60%〜80%の範囲に含まれる
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のパウチ。
  7. 前記収容空間に収容された内容物を備える
    請求項1〜6のいずれか一項に記載のパウチ。
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