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JP6877994B2 - アパタイト型複合酸化物およびその製造方法、固体電解質型素子並びにスパッタリングターゲット - Google Patents

アパタイト型複合酸化物およびその製造方法、固体電解質型素子並びにスパッタリングターゲット Download PDF

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JP6877994B2 JP2016251527A JP2016251527A JP6877994B2 JP 6877994 B2 JP6877994 B2 JP 6877994B2 JP 2016251527 A JP2016251527 A JP 2016251527A JP 2016251527 A JP2016251527 A JP 2016251527A JP 6877994 B2 JP6877994 B2 JP 6877994B2
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Description

本発明は、固体電解質形燃料電池(SOFC)、イオン電池、空気電池などの電池の固体電解質、酸素濃縮器、酸素分離膜等の分離膜、さらには酸素センサーやスパッタリングターゲットなどに利用可能なアパタイト型複合酸化物およびその製造方法に関する。
機能性セラミックスとして、酸素イオンによる電気伝導を利用した複合酸化物が研究されている。例えば、特許文献1(特開平8−208333号公報)には、Ce等の希土類元素とケイ素酸化物とを主成分とする主構成相の結晶系が六方晶からなる複合酸化物は高いイオン導電率が得られることから、酸素センサーや固体電池などに適用できることが報告されている。
また、特許文献2(特開平11−71169号公報)や特許文献3(特開平11−130595号公報)には、(RE23x(SiO26(REはLa,Ce,Pr,Nd,Smから選択される元素であり、xは3.5<x<6の条件を満たす。)を主成分とする焼結体であって、その主構成相がアパタイト結晶構造である複合酸化物は、低温域でも高い導電性が得られることが報告されている。
さらに、特許文献4(国際公開2016/111110号)では、A9.33x[T6−y]O26.00+z(Aは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される元素であり、TはSiまたはGeであり、Mは、B、Ge、Zn、Sn、W、Moから選択される元素であり、xは−1〜1であり、yは1〜3であり、zは−2〜2であり、Mのモル数に対するAのモル数が3〜10であある)からなる配向性アパタイト型複合酸化物が提案されている。
特開平8−208333号公報 特開平11−71169号公報 特開平11−130595号公報 国際公開2016/111110号
上記したようなCe等の希土類元素とケイ素酸化物とを主成分とするアパタイト型複合酸化物は、400℃を超える高温域では導電性が失われてしまい、使用用途が制限される場合があった。
本発明者らは、上記課題に対して、Ce等の希土類元素とケイ素酸化物とを含むアパタイト型複合酸化物は、高温域においてアパタイト構造が蛍石構造を含む複合酸化物に変化してしまい、酸素空孔とゲスト陽イオンとの会合現象が生じることによって、導電性が低下してしまうことに気づいた。そして、さらに鋭意検討した結果、本発明者らは、セリウムシリケート複合酸化物において、第2族元素であるMg、Ca、Sr、Baの少なくとも1種を特定の割合で含有した焼結体とすることによって、高温域においてもアパタイト構造を維持でき、その結果、高温域においても高い導電性を実現できる複合酸化物が得られる、との知見を得た。本発明は係る知見によるものである。
したがって、本発明の目的は、高温域においてもアパタイト構造を維持でき、その結果、高温域においても高い導電性を実現できる複合酸化物を提供することである。また、本発明の別の目的は、当該複合酸化物の製造方法を提供することである。更に本発明の別の目的は、当該複合酸化物を用いた固体電解質型素子およびスパッタリングターゲットを提供することである。
本発明によるアパタイト型複合酸化物は、組成式:CeSi
(式中、
Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一つの元素であり、
xは、6.0≦x≦9.6の範囲にあり、
yは、0.4≦y≦4.0の範囲にあるが、
但し、8.0≦(x+y)≦10.0を満足し、
zは、(1.5x+y+12)≦z≦(2x+y+12)の範囲にある。)
で表されるものである。
また、本発明の別の態様によるアパタイト型複合酸化物の製造方法は、
元素比がCe:M:Si=x:y:6(但し、M、x、およびyは上記した定義と同じである。)となるような混合物を形成するする工程と、
前記混合物を不活性ガス雰囲気下で焼結して、組成式:CeSi(但し、x、yおよびzは上記定義と同じである。)を有する焼結体とする工程と、
前記焼結体を、Ce元素中のCe(4価)の割合が20atm%以上となるように、酸素存在雰囲気下で熱処理する工程と、
を、この順に備えるものである。
また、本発明の別の態様による固体電解質型素子は、固体電解質と、前記固体電解質の表面に設けられた少なくとも一つの電極と、を備えた固体電解質型素子であって、前記固体電解質が、上記のアパタイト型複合酸化物からなるものである。
本発明の実施態様においては、前記固体電解質が多層構造を有し、前記多層構造の少なくとも1層が前記アパタイト型複合酸化物からなり、前記アパタイト型複合酸化物からなる層の表面に電極が設けられていてもよい。
さらに、本発明においては、上記のアパタイト型複合酸化物からなるスパッタリングターゲットも提供される。
本発明においては、セリウムシリケート複合酸化物において、第2族元素であるMg、Ca、Sr、Baの少なくとも1種を特定の割合で含有した焼結体とすることによって、高温域においてもアパタイト構造を維持でき、その結果、高温域においても高い導電性を有する複合酸化物を実現することができる。
実施例3において得られた熱処理後の複合酸化物のX線回折パターン。 実施例5において作製した酸素濃淡電池の起電力の評価結果。
<アパタイト型複合酸化物>
本発明によるアパタイト型複合酸化物は、組成式:CeSi(式中、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一つの元素であり、xは、6.0≦x≦9.6の範囲にあり、yは、0.4≦y≦4.0の範囲にあるが、但し、8.0≦(x+y)≦10.0を満足し、zは、(1.5x+y+12)≦z≦(2x+y+12)の範囲にある。)で表されるものである。上記したように、セリウムシリケート、即ち組成式:Ce(SiO(但し、mおよびnは実数)で表されるアパタイト型複合酸化物は、400℃以上の高温域では、アパタイト構造が蛍石構造を含む構造に変化し、導電性が低下する。これに対して、本発明のような第2族元素を所定割合で含有するセリウムシリケートとすることにより、高温域においてもアパタイト構造が維持されることは予想外であった。
本発明において、複合酸化物がアパタイト構造を有しているかどうかは、X線回折(XRD)によって確認することができる。例えば、MがCeやSrである複合酸化物では、XRDチャートにおいて、回折角2θ(deg)10°〜80°の範囲に所定の回折ピークを有しているかを確認することで、当該複合酸化物がアパタイト構造を有しているかどうかを確認することができる。例えば、MがSrである複合酸化物の粉末を用いてXRD分析を行い、得られた回折パターンとICSDカードを対比することにより、この複合酸化物が、空間群がP63/mに属したアパタイト結晶構造を有していることを確認することができる。
また、本発明によるアパタイト型複合酸化物は、主相がアパタイト構造を有していればよく、アパタイト構造を有する単結晶体以外の多結晶体も包含される。アパタイト型複合酸化物中に占めるアパタイト構造を有する主相の割合は、X線回折にて検出される全結晶相中の50mol%以上であることが好ましい。なお、主相の割合は上記X線回折(XRD)パターンの解析によって算出することができる。
上記組成式において、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一つの元素を表すが、導電性の観点から、これらの中でもCaが好ましい。
上記組成式において、xは、6.0≦x≦9.6の範囲であるが、好ましいxの下限値は6.1であり、より好ましくは6.2であり、特に好ましくは6.3である。また、好ましいxの上限値は、9.6であり、より好ましくは9.0であり、特に好ましくは8.6である。一方、xの下限値が6.0未満であると、アパタイト構造を有するものの、異相の割合が増加し導電性が低下する。また、xが9.6を超えると、Ce元素が優先的にアパタイト構造を形成するため、M元素の導入が困難となる。
また、上記組成式において、yは、0.4≦y≦4.0の範囲であるが、複合酸化物のアパタイト構造を高温環境下においても保持する観点から、好ましいyの下限値は0.5であり、より好ましくは0.5であり、特に好ましくは0.8である。また、好ましいyの上限値は、4.0であり、より好ましくは3.8である。特に、複合酸化物のアパタイト構造を高温環境下においても保持する観点からは、yの範囲は0.8≦y≦3.8であることが好ましい。一方、yの下限値が0.4未満であると、アパタイト構造を有していた複合酸化物が、高温域において、主相が蛍石構造を有する、CeO、SiOおよびMOからなる複合酸化物となってしまい導電性が低下する。また、yの上限値が4.0を超えると、異相MSiO相の割合が多くなり導電性が低下する。
上記組成式において、xおよびyは、それぞれ上記した範囲であるが、複合酸化物がアパタイト構造を有するためには、x+yが、8.0以上、10.0以下である必要がある。即ち、結晶構造中で、6つのSiO4面体サイトに対して、CeおよびM元素が8〜10つのサイトに位置することで、空間群がP63/mに属したアパタイト結晶構造となる。
また、上記組成式において、zは、(1.5x+y+12)≦z≦(2x+y+12)の範囲である。z(即ち、O元素の割合)が上記範囲であることにより、アパタイト構造を有意に保持できる。
上記組成式で表されるアパタイト型複合酸化物においては、Ce元素は、Ce(3価)およびCe(4価)の状態で存在している。良好な導電性を実現するためには、単位格子中にCe(3価)よりもCe(4価)の方が多く存在していることが好ましい。複合酸化物中の全Ce元素においてCe(4価)の割合が20atm%以上であることがより好ましく、特に25atm%以上であることがより好ましい。Ce(4価)の割合が多くなることにより結晶構造中の酸素量が増加するため、優れた導電性を実現することができる。アパタイト型複合酸化物中のCe元素がCe(3価)またはCe(4価)のいずれの状態で存在しているかは、X線光電子分光法(XPS)やオージェ電子分光法(AES)等の公知の元素分析手法を用いて同定することができる。例えば、XPS分析を行い、Ce(3価)由来のピーク(886eV)とC(4価)由来のピーク(917eV)とのピーク面積比を求めることによって、全Ce元素におけるCe(3価)またはCe(4価)の存在割合を求めることができる。
次に、本発明によるアパタイト型複合酸化物を製造する方法について説明する。
<粉末成形・焼結法>
先ず、酸化セリウム(IV)、即ちCeOと、第2族元素(Mg、Ca、Sr、Ba)の酸化物および/またはその炭酸塩(即ち、MOおよび/またはMCO)と、二酸化ケイ素、即ちSiOとを、元素比でCe:M:Si=x:y:6(但し、xおよびyは、上記した数値範囲である)となるように混合し、混合物を得る。これらの酸化物は、粉末状のものを使用することが好ましく、通常は、粒子径が0.5〜5μm程度、好ましくは0.5〜3.0μm程度の粉末を用いる。各酸化物の割合が、元素比でCe:M:Si=x:y:6となるように秤量し混合すればよい。なお、粒子径は、レーザー回折・散乱法による累積平均粒子径(D50)を意味するものとする。
混合方法としては、各酸化物の粉末を均一に混合できるのであれば特に制限はなく、公知の湿式混合または乾式混合を採用することができる。一例として、秤量した各酸化物を乳鉢等に投入して、粉末を粉砕しながら混和することにより均一な混合物を得ることができる。また、乳鉢以外にも、ボールミル等の撹拌機を使用してもよい。上記したように粒子径を0.5μm〜3.0μmとすることにより、焼結体密度を高めることができる。
得られた混合物は、必要に応じて、焼結させる前に、予め仮焼を行ってもよい。仮焼は、通常、1000〜1300℃程度で行う。また、仮焼は、通常は大気中または酸素存在雰囲気下で行われる。仮焼時間は、仮焼温度や仮焼雰囲気に応じて適宜設定すればよい。仮焼を行った混合物は、塊状物となる場合もあるが、その場合は、必要に応じて公知の方法により粉砕すればよい。
続いて、混合物(仮焼を行った場合には、その仮焼体)を加圧形成して焼結させる。焼結は、粉末焼結法および薄膜焼結法のいずれを採用してもよい。例えば、粉末焼結法を採用する場合は、加圧条件下または常圧条件下で焼結を行う。加圧は、公知の成形機、例えば、ラバープレス成形機、押出成形機、ホットプレス成形機等を用いて行うことができる。また、加圧とともに、所望の形状に成形してもよい。例えば、円盤状や円柱状の形状に加圧成形することができる。
焼結温度は、混合物の組成等によって適宜設定することができるが、概ね700〜1700℃程度、好ましくは800〜1600℃、1〜20時間で行う。また、焼結は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下において行うのが好ましい。即ち、酸素含有量が少ない雰囲気下(酸素濃度が1.0%以下、より好ましくは0.01%以下のような雰囲気下)で焼結を行うことにより、焼結体である複合酸化物中のセリウムは4価の状態よりも3価の状態が多くなり、アパタイト構造を採りやすくなる。例えば、窒素雰囲気下で、CeOと、MOおよび/またはMCOと、SiOとの混合物を焼結させて得られる複合酸化物中のCe(3価)の割合は、Ce元素全体に対して60〜100atm%程度となり、Ce(4価)の割合は、Ce元素全体に対して0〜40atm%程度となる。不活性雰囲気以外であっても、酸素含有量が少ない雰囲気であればよく、例えば真空雰囲気や還元雰囲気であってもよい。
昇温速度や焼結時間は、原料組成や焼結温度によって適宜変更すればよいが、例えば、50〜200℃/時間の昇温速度で昇温して焼結した後、50〜300℃/時間の降温速度で室温まで冷却するのが典型的である。
このようにして得られた焼結体は、上記したように焼結体中のセリウム元素全体に占めるCe(3価)の割合が多くなっている。本発明においては、導電性をより向上させるために、焼結体を酸素存在雰囲気下において熱処理を行う。酸素存在雰囲気下での熱処理により、焼結体中のCe(3価)の一部がCe(4価)となり、格子間酸素が移動し易くなるため、導電性が向上するものと考えられる。すなわち、本発明においては、焼結時にCe(3価)リッチな状態とすることによって、より完全なアパタイト構造を有する焼結体を得て、その後に、熱処理により焼結体中のCe(3価)の一部をCe(4価)と酸化させることによって、アパタイト構造を維持しながら優れた導電性を有する複合酸化物を得るものである。本発明においては、Ce元素中のCe(4価)の割合が20atm%以上であるようなアパタイト型複合酸化物とすることが好ましい。なお、上記のような熱処理を経た後のアパタイト型複合酸化物は、Ce元素中のCe(4価)の割合が90atm%以下となるのが典型的である。
熱処理の温度は、500〜900℃であることが好ましく、より好ましくは700〜850℃である。また、熱処理時間は、10分〜3時間であることが好ましく、より好ましくは20分〜2時間である。酸素存在雰囲気としては、酸素濃度が5%以上の雰囲気が好ましく、典型的には大気圧雰囲気(酸素濃度が約21%程度)であるが、酸素濃度のより高い雰囲気下で熱処理を行ってもよい。このような熱処理条件を採用することにより、複合酸化物におけるCe元素中のCe(4価)の割合を20atm%以上とすることができる。熱処理温度が500℃未満ではCe(3価)の一部をCe(4価)に酸化させるのが不十分な場合があり、Ce(4価)の割合を20atm%以上とすることが困難となる。一方、熱処理温度が900℃を超えるとアパタイト結晶構造が消失しはじめる。
<スパッタリング膜焼結法>
本発明によるアパタイト型複合酸化物は、上記した粉末成形・焼結法以外の方法によっても製造することができる。その一例として、スパッタリング法により、元素比がCe:M:Si=x:y:6(但し、M、x、およびyは上記した定義と同じである。)となるような薄膜混合物(前駆体)を形成する方法を説明する。
先ず、粉末成形・焼結法により形成した焼結体ないしその熱処理体をスパッタリングターゲットとし、対向電極上に設置した基板を配置する。続いて、真空チャンバ内で両電極間に高周波電圧を印加しスパッタリングすることで、薄膜混合物(前駆体)を得る。このスパッタリングは、公知のスパッタリング装置を用いて実施することができる。
スパッタリング前の基板は、必要に応じて予備加熱等を行ってもよい。また、スパッタリング成膜の直前には、チャンバ内を1×10−3〜1×10−5Paの高真空状態にするのが好ましい。さらに、スパッタリング成膜時には、放電効率を高めるために、Ar,He,Ne,Kr,Xe,Rnなどの不活性ガスでチャンバ内を充填し、圧力を0.5Pa〜30Pa程度に調整することが好ましい。また、異常析出やスパークを防止しながら効率的に成膜できる点から、スパッタリング成膜時の電力密度(電力値/成膜面積)を0.5〜2.0W/cmとすることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.8W/cmである。
上記のようにして得られた薄膜混合物(前駆体)は、スパッタリング工程を実施した直後においては、粉末成形・焼結法における混合物、即ち、CeOと、MOと、SiOとで構成された混合物と化学的には同じ組成となるため、薄膜混合物(前駆体)に対して、焼結および熱処理を行うことにより、上記した組成式:CeSi(但し、x、yおよびzは上記定義と同じである。)で表されるアパタイト型複合酸化物を得ることができる。焼結条件および熱処理条件については、上記した粉末成形・焼結法と同様である。
本発明によるアパタイト型複合酸化物を製造する方法として上記2つの好ましい方法を例示したが、これらに限定されるものではなく、ゾル・ゲル法や水熱合成法、湿式合成法等の公知の手法によってもアパタイト型複合酸化物を得ることができる。
<アパタイト型複合酸化物の用途>
本発明によるアパタイト型複合酸化物の使用形態の一例として、アパタイト型複合酸化物からなる固体電解質と、前記固体電解質の表面に設けられた少なくとも一つの電極と、を備えた固体電解質型素子を挙げることができる。固体電解質の形状は限定的ではない。例えば平膜形状の他、円筒形状のような形態などもあり得る。例えば、アパタイト型複合酸化物からなる固体電解質の形状が円筒形状の場合、通常はその内周面と外周面に電極を形成する。
固体電解質は、多層構造を有していてもよい。その場合、多層構造の少なくとも1層が前記アパタイト型複合酸化物からなり、前記アパタイト型複合酸化物からなる層の表面に電極が設けられた構造としてもよい。本発明によるアパタイト型複合酸化物は、表面抵抗が比較的小さい材料でもあるため、表面抵抗が高い固体電解質をアパタイト型複合酸化物からなる層で挟持したような積層構造とし、アパタイト型複合酸化物からなる層の表面に電極を形成することにより、より導電性の高い固体電解質型素子とすることができる。即ち、アパタイト型複合酸化物かなる層が、他の固体電解質と電極との間に設ける中間層として機能する。このような多層構造は、他の固体電解質の表面にスパッタリング法等によって、アパタイト型複合酸化物かなる薄膜の層を形成することにより作製することができる。他の固体電解質としては、特に制限なく使用できるが、本発明によるアパタイト型複合酸化物と熱膨張係数が近いものを使用することが好ましく、例えば、特許文献4に記載のランタンシリケート系複合酸化物等を好適に使用することができる。
上記したような固体電解質型素子は、燃料電池(SOFC)のセルとして使用することもできる。例えば、該電極接合体のアノード電極に燃料ガスを供給し、カソード電極に酸化剤(空気、酸素等)を供給して350〜1000℃で動作させると、当該カソード電極で電子を受け取った酸素原子がO2-イオンとなり、固体電解質を介してアノード電極に到達し、ここで水素と結びつき電子を放出することで発電することができる。
また、上記したような固体電解質型素子を酸素センサーとして使用することもできる。例えば、当該電極接合体の片側を基準ガスにさらし、その反対側を測定雰囲気にさらすと、測定雰囲気の酸素濃度に応じて起電力が発生する。よって、例えば基準ガスを大気、測定雰囲気を内燃機関からの排気ガスとすることで、排気ガスの空燃比コントロールに利用することができる。
さらに、上記したような固体電解質型素子は酸素分離膜や酸素富化素子として使用することもできる。例えば、燃料電池(SOFC)のセルとして使用する場合と同様に、カソード電極に空気を供給して350〜1000℃で動作させると、カソードで電子を受け取った酸素原子がO2-イオンとなり、固体電解質を介してアノード電極に到達し、ここで電子を放出してO2-イオン同士が結びつくことで酸素分子のみを透過させることができる。
上記したような多層構造を有する固体電解質型素子は、他の固体電解質の表面にスパッタリング法等によって、アパタイト型複合酸化物かなる薄膜の層を形成することにより作製することができる。また、本発明によるアパタイト型複合酸化物は、上記したように薄膜を形成する際に用いるスパッタリングターゲットとしても使用することができる。スパッタリングターゲットは、上記した粉末成形・焼結法によって形成できるが、焼結前の粉末成形物に対して、熱間静水圧プレス(HIP)や冷間等方圧加圧(CIP)を施して所望の形状に成形した後に焼結して得ることも可能である。得られたスパッタリングターゲットは、表面を平滑化するための加工、例えば機械的な研磨加工に付すことができる。このことによって、異常放電やスプラッシュの発生が効果的に抑制され、より良好な薄膜をより安定的に形成できるようになる。
次に本発明の実施形態について以下の実施例を参照して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
CeOとCaOとSiOの各粉体を、元素比でCe:Ca:Siが8.6:1.0:6となるように配合した後、乳鉢で粉砕し、Ptるつぼを使用して大気雰囲気下1300℃で5時間仮焼を行った。次いで、得られた仮焼物を遊星ボ−ルミルで粉砕し、窒素雰囲気中(酸素濃度0.01%以下)にて粉砕物をホットプレス機により25MPaの加圧下で成形し、窒素雰囲気中(酸素濃度0.01%以下)で焼結することで、円板状(直径20mm、厚み2.0mm)の焼結体を得た。焼結は、200℃/時間の昇温速度にて1500℃を3時間保持し、200℃/時間の降温速度にて冷却することにより行った。
続いて、上記のようにして得られた焼結体の表面をダイヤモンド砥石で研磨した後、熱処理を行うことにより、複合酸化物を得た。熱処理は、大気圧雰囲気(酸素濃度20.9%)下で、700℃で3時間行った。
<実施例2〜4および比較例1〜3>
CeOとCaOとSiOとの配合比率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合酸化物を作製し、実施例1と同様にして、組成および結晶構造を同定し、C(3価)、Ce(4価)の元素比率を確認した。また、実施例4については、CaOに代えてSrOを使用し、CeOとSrOとSiOとの配合比率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合酸化物を作製し、実施例1と同様にして、組成および結晶構造を同定し、C(3価)、Ce(4価)の元素比率を確認した。
<X線回折分析>
上記実施例および比較例にて得られた焼結後の試料ならびに熱処理後の試料について、粉末X線回折を行うことにより、焼結体の組成および結晶構造を特定した。実施例3の熱処理後の試料について、X線回折パターンを図1に示す。図1のX線回折パターンから明らかなように、回折角2θが10°〜80°の範囲において、アパタイト結晶構造に起因する回折ピーク(27°、31°、48°等)が存在することから、実施例3の熱処理後の複合酸化物は、アパタイト結晶構造を有していることがわかる。また、焼結体のX線光電子分光を行うことにより、焼結体中のCe元素において3価と4価のセリウム元素比率を確認した。得られた結果は下記の表1に示される通りであった。
<導電率評価>
得られた円板状の複合酸化物の両面にスパッタリング法を用いて150nm厚の白金膜を製膜して電極を形成した後、加熱炉中で温度を変化させ、インピーダンス測定装置にて周波数0.1Hz〜32MHzで複素インピーダンス解析を行なった。全抵抗成分から600℃での伝導率(S/cm)を求めた。導電性の評価基準は以下の通りとした。
A:1×10−3S/cm以上
B:0.5×10−3S/cm以上、1×10−3S/cm未満
C:0.5×10−3S/cm未満
得られた評価結果は、下記表1に示される通りであった。
Figure 0006877994
<起電力応答性評価>
<実施例5>
先ず、固体電解質として、国際公開2016/111110号の実施例1に記載されたアパタイト型焼結体の調製方法と同様にして、直径が20mmの円板状のアパタイト型焼結体(組成式:La9.83Si4.831.1726.16)を作製した。
得られたアパタイト型焼結体(以下、LSBO層と言う)の両面に、上記の実施例3で得られた焼結体をスパッタリングターゲットとして使用して、高周波スパッタリング装置により、下記の製膜条件にて、厚み300nmの中間層として、薄膜混合物(前駆体)を作製し、層構成が「薄膜混合物層/LSBO層/薄膜混合物層」である積層体を得た。
・真空到達圧力:1.0×10−4Pa
・スパッタリングガス:Ar
・成膜時圧力:1.0Pa
・電力密度:1.53W/cm
・成膜時間:180分
・膜厚:300nm
上記のようにして得られた積層体を、窒素雰囲気中、900℃で1時間の条件で焼結し、薄膜混合物(前駆体)が焼結されて中間層となった、層構成が「中間層/LSBO/中間層」である焼結積層体を得た。続いて得られた焼結積層体の両側の表面(即ち、中間層の表面)に、Agペーストを塗布して電極を形成し、窒素雰囲気中、900℃でさらに焼結を行い、層構成が「電極/中間層/LSBO層/中間層/電極」である固体電解質型素子を作製した。
次いで、上記のようにして得られた固体電解質型素子を用いて酸素濃淡電池(酸素濃度を作製し、一方の側の電極を参照極とし、他方の電極を検知電極として、ポテンシオスタット(Solartron社製)を用いて起電力評価を行った。先ず、大気圧雰囲気中(酸素濃度20.9%)で700℃、30分間の前処理を行った後、評価温度600℃および500℃のそれぞれにおいて、参照極側の酸素濃度を大気圧雰囲気(酸素濃度20.9%)に固定し、検知電極側の酸素濃度を、20%、40%、60%と段階的に変化させた。その際の起電力応答曲線(起電力の時間変化曲線)から、起電力の応答性の有無を確認した。その結果、図2に示すとおり、検知電極側の酸素濃度の変化に応じて起電力の応答があることが確認できた。
<比較例4>
中間層を形成する際の焼結体として、実施例3の焼結体に代えて比較例1の焼結体を使用した以外は、実施例5と同様にして固体電解質型素子を作製し、起電力応答性の評価を行った。その結果、検知電極側の酸素濃度の変化に応じて、起電力の応答があることは確認できなかった。

Claims (10)

  1. 組成式:CeSi
    (式中、
    Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一つの元素であり、
    xは、6.0≦x≦9.6の範囲にあり、
    yは、0.4≦y≦4.0の範囲にあるが、
    但し、8.0≦(x+y)≦10.0を満足し、
    zは、(1.5x+y+12)≦z≦(2x+y+12)の範囲にある。)
    で表され、
    前記組成式において、Ce元素中のCe(4価)の割合が、20atm%以上である、アパタイト型複合酸化物。
  2. 前記組成式において、MがCaである請求項1に記載のアパタイト型複合酸化物。
  3. 前記組成式において、yが、0.8≦y≦3.8の範囲である請求項1または2に記載のアパタイト型複合酸化物。
  4. 元素比がCe:M:Si=x:y:6(但し、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一つの元素であり、6.0≦x≦9.6であり、0.4≦y≦4.0であるが、但し、8.0≦(x+y)≦10.0である。)となるような混合物を形成する工程と、
    前記混合物を不活性ガス雰囲気下で焼結して、組成式:CeSi
    式中、
    xは、6.0≦x≦9.6の範囲にあり、
    yは、0.4≦y≦4.0の範囲にあるが、
    但し、8.0≦(x+y)≦10.0を満足し、
    zは、(1.5x+y+12)≦z≦(2x+y+12)の範囲にある。)
    を有する焼結体とする工程と、
    前記焼結体を、Ce元素中のCe(4価)の割合が20atm%以上となるように、酸素存在雰囲気下で熱処理する工程と、
    を、この順に備えるアパタイト型複合酸化物の製造方法。
  5. 前記焼結が700〜1700℃で行われる請求項に記載の方法。
  6. 前記熱処理が500〜900℃で行われる請求項またはに記載の方法。
  7. 固体電解質と、前記固体電解質の表面に設けられた少なくとも一つの電極と、を備えた固体電解質型素子であって、
    前記固体電解質が、請求項1〜のいずれか一項に記載のアパタイト型複合酸化物からなる、固体電解質型素子。
  8. 前記固体電解質が多層構造を有し、前記多層構造の少なくとも1層が前記アパタイト型複合酸化物からなり、前記アパタイト型複合酸化物からなる層の表面に電極が設けられている、請求項に記載の固体電解質型素子。
  9. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のアパタイト型複合酸化物からなる薄膜。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載のアパタイト型複合酸化物からなるスパッタリングターゲット。
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