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JP3934750B2 - 酸化物イオン導電性セラミックス及びその製造方法 - Google Patents

酸化物イオン導電性セラミックス及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、酸化物イオンによる電気伝導を利用した酸化物イオン導電性セラミックス及びその製造方法に関し、特に希土類元素の酸化物と二酸化ケイ素とを用いた酸化物イオンイオン導電性セラミックスにおいて、低温域での高いイオン導電性を示し、排ガス中又は溶融金属中の酸素センサや固体電池などの電気化学デバイスに用いることができる酸化物イオン導電性セラミックス及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酸化物イオンによる電気伝導を利用した各種の酸化物イオン導電性セラミックスについての研究開発が行われており、このような酸化物イオン導電性セラミックスとしては、蛍石構造をとる(ZrO20.92(Y230.08、(Bi230.75(Y230.25、(CeO20.75(Gd230.25など、またベロブスカイ型酸化物であるLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.23や、BaTh0.9Gd0.13 などが高いイオン導電性を示すことでよく知られている。
【0003】
そして、(ZrO20.92(Y230.08や(ZrO20.85(MgO)0.15を代表とする安定化ジルコニアからなる酸化物イオン導電性セラミックスは、排ガス中や溶融金属中における酸素濃度を測定する酸素センサや固体電解質型燃料電池などへの応用が提案され、すでに実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、安定化ジルコニアは蛍石構造をとるため、ゲスト陽イオンのモル比を上げて酸素空孔を増やそうとすると、酸素空孔とゲスト陽イオンとの会合現象が起こって、逆に酸化物イオン導電率が低下し、このため、安定化ジルコニアの場合には、本質的に酸化物イオン導電率に限界があり、最も高い酸化物イオン導電性を示す(ZrO20.92(Yb230.08においても、低温域である300℃での酸化物イオン導電率は8×10-6S/cmと低くなっていた。
【0005】
一方、現在知られている低温域で最も高い酸化物イオン導電性を示す酸化物イオン導電性セラミックスとしては、(Bi230.75(Y230.25とBaTh0.9Gd0.13とが知られており、これらの導電率は200℃で1×10-6S/cm、300℃で1.5×10-4S/cmであるが、安定化ジルコニアに較べると、焼結体の緻密性や機械的強度などに欠けるという問題があった。
【0006】
また、近年においては、特開平8−208333号公報に示されるように、希土類元素の酸化物と二酸化ケイ素を主成分とし、主構成相の結晶系が六方晶からなる酸化物イオン導電性セラミックスが提案された。
【0007】
ここで、このような酸化物イオン導電性セラミックスは、低温域での酸化物イオンの導電性は安定化ジルコニアとほぼ同じであるが、その結晶構造のためにさらに高い導電性が期待できるものであった。
【0008】
しかし、同公報に示されているものにおいても、必ずしも酸化物イオンの導電性が十分であるとはいえず、また同公報に示されているものにおいては、このような酸化物イオン導電性セラミックスを得るにあたり、アルミナ製の焼成治具を用いて焼結を行なうため、1650℃付近以上で焼成体がアルミナ製の焼成治具と反応し、高い温度での焼成が行えず、酸化物イオン導電性セラミックスの緻密性が十分ではなかった。
【0009】
このため、同公報に示されているものにおいては、高い酸化物イオン導電性を得ることが困難であり、また酸素センサの電解質に用いた場合に、酸素ガスが透過するなどの問題があった。
【0010】
この発明は、酸化物イオン導電性セラミックスにおける上記のような様々な問題を解決することを課題とするものであり、低温域においても酸化物イオンの導電率が高く、十分な機械的強度を持つと共に、高い緻密性の組織を有し、酸素センサの電解質に用いた場合に、酸素ガスが透過するなどの問題がない酸化物イオン導電性セラミックスを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明においては、上記のような課題を解決するため、請求項1に示すように、1750〜1850℃の温度で焼成された(RE23x(SiO26(REはLa,Ce,Pr,Nd,Smから選択される元素であり、xは3.5<x<6の条件を満たす。)を主成分とする焼結体であって、その主構成相がアパタイト結晶構造であり、300℃における導電率が1.8×10 -5 S/cm以上である酸化物イオン導電性セラミックスを開発したのである。
【0012】
ここで、この発明の請求項1における酸化物イオン導電性セラミックスは、その主構成相がアパタイト結晶構造で、空間群がP63/m、REx(SiO461.5x-12(8≦x≦9.33)のアパタイト組成を有し、またRE2SiO5などの結晶質及びいくつかのガラス成分質などを少量含むものであり、低温域においても酸化物イオンの導電率が高く、十分な機械的強度を持つと共に高い緻密性の組織を有するようになる。なお、この発明の請求項1における酸化物イオン導電性セラミックスにおいて、上記のREがLa,Ce,Pr,Nd,Smから選択される元素としたのは、Smよりイオン半径の小さな他の希土類元素であるEu,Gd等の場合、酸化物イオンの導電率が十分に向上されないためである。
【0013】
また、この発明においては、上記のような酸化物イオン導電性セラミックスを製造するにあたり、請求項3に示すように、La,Ce,Pr,Nd,Smから選択される少なくとも1つの希土類元素の酸化物と二酸化ケイ素とを含む原料を、(RE 2 3 x (SiO 2 6 (REはLa,Ce,Pr,Nd,Smから選択される元素であり、xは3.5<x<6の条件を満たす。)となる割合で混合した後、この混合物を仮焼し、この仮焼物を粉砕し、成形した後、この成形物を1750〜1850℃の温度で焼成するようにしたのである。
【0014】
そして、この請求項3に示すようにして酸化物イオン導電性セラミックスを製造すると、上記のように低温域においても酸化物イオンの導電率が高く、十分な機械的強度を持つと共に高い緻密性の組織を有する請求項1の酸化物イオン導電性セラミックスが得られる。
【0015】
ここで、上記の希土類元素の酸化物としては、La23,CeO2,Pr611,Nd23 ,Sm23を使用することができ、また二酸化ケイ素としては、沈降性シリカ,シリカゲル,結晶性シリカなどを使用することができる。
【0016】
また、上記のように希土類元素の酸化物と二酸化ケイ素とを含む原料を混合させた混合物を仮焼するにあたっては、一般に1000〜1300℃の温度で行なうようにする。
【0017】
また、このように仮焼した仮焼物を粉砕して成形した後、この成形物を1750〜1850℃の温度で焼成するにあたっては安定化ジルコニア焼結体を主成分とする焼成治具上にて1750〜1850℃の温度で焼成することが好ましい。
【0018】
そして、このように安定化ジルコニア焼結体を主成分とする焼成治具上において1750〜1850℃の温度で焼成すると、焼成物が上記の焼成治具と反応するということがなく、低温域における酸化物イオンの導電率が高く、より十分な機械的強度を持つと共に、高い緻密性の組織を有する酸化物イオン導電性セラミックスが得られるようになる。
【0019】
【実施例】
次に、この発明に係る酸化物イオン導電性セラミックス及びその製造方法について実施例を挙げて具体的に説明すると共に、比較例を挙げ、この発明の実施例に係る酸化物イオン導電性セラミックスが高い酸化物イオン導電性を有することを明らかにする。なお、この発明における酸化物イオン導電性セラミックス及びその製造方法は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0020】
(実施例1,2、参考例1〜3及び比較例1,2)
これらの実施例1,2、参考例1〜3及び比較例1,2においては、その原料として、純度99.9%以上のLa23,CeO2,Pr611,Nd23,Sm23,Eu23,Gd23の希土類酸化物と、二酸化ケイ素SiO2 として試薬級の沈降性シリカを使用した。
【0021】
そして、上記の各希土類酸化物とSiO2とを、それぞれ希土類元素とSiとのモル比が10:6になるように配合し、これらをボールミルを使用してアルコール中にて混練した後、この混練物を乾燥し、その後、これらをそれぞれ1200℃で仮焼した。次いで、各仮焼物をそれぞれボールミルにおいてアルコール中で粉砕して微粉末とし、得られた各微粉末にそれぞれバインダーとしてポリビニルアルコールを添加してスプレー造粒した。
【0022】
次に、このようにして得た各造粒物をそれぞれ100MPaでペレット状に加圧成形し、これらをそれぞれマグネシア安定化ジルコニア(ZrO20.915(MgO20.085で構成された焼成治具上において、下記の表1に示す焼成温度で焼成し、同表に示す組成式になった実施例1〜5及び比較例1,2の各酸化物イオン導電性セラミックスを作製した。このように焼成した場合、各酸化物イオン導電性セラミックスは1650℃付近の温度以上で緻密化が認められ始めた。なお、表1に示した上記の焼成温度は、各酸化物イオン導電性セラミックスにおいて最も高い密度が得られた温度である。
【0023】
ここで、このようにして得た実施例1,2、参考例1〜3及び比較例1,2の各酸化物イオン導電性セラミックスを粉末X線回折によって測定した結果、実施例1,2、参考例1〜3及び比較例1,2の各酸化物イオン導電性セラミックスにおいては、その主構成相の結晶構造が、図1に示すようなアパタイト結晶構造になっており、空間群がP63/m、REx(SiO461.5x-12(8≦x≦9.33)のアパタイト組成で、少量のRE2 SiO5の回折ピークも観測された。なお、その他に、粉末X線回折で測定できない微量のいくつかの結晶質といくつかのガラス成分質も存在するものと考えられる。
【0024】
そして、これらの各酸化物イオン導電性セラミックスにおける酸化物イオンの導電は、SiO4の四面体と6hと4fサイトに位置する希土類元素により作られた2aサイトにおいて起こっているものと考えられる。
【0025】
次に、上記の各酸化物イオン導電性セラミックスの両面に白金ペーストを塗布し、1000℃で焼き付けて電極を形成した後、加熱炉中で温度を変化させ、インピーダンスメーターにて周波数100Hz〜10MHzで複素インピーダンス解析を行ない、各酸化物イオン導電性セラミックスについて、全抵抗成分(粒内抵抗+粒界抵抗)から導電率G(S/cm)を求めて、温度の変化に伴う導電率Gの変化の状態を図2に示すと共に、200℃と300℃における導電率Gを下記の表1に示し、さらにこの表1に各酸化物イオン導電性セラミックスの酸化物イオン導電に関する活性化エネルギーE(kJ/mol)を示した。
【0026】
ここで、上記の図2はアレニウスプロットであり、絶対温度(K)の逆数を横軸に、縦軸には導電率Gと絶対温度Tの積を対数で示した。なお、これらの関係は下記のアレニウスの式で示される。
【0027】
GT=G0 exp(−E/kT)
G0 :伝導因子、E:活性化エネルギー、k:ボルツマン定数
【0028】
【表1】
Figure 0003934750
【0029】
この結果、酸化物イオン導電性セラミックスにおける希土類元素が、La,Ce,Pr,Nd,Smで構成された実施例1,2及び参考例1〜3の各酸化物イオン導電性セラミックスは、Smよりイオン半径の小さな他の希土類元素であるEu,Gdで構成された比較例1,2の各酸化物イオン導電性セラミックスに比べて、低温域における酸化物イオンの導電率が高くなっていた。
【0030】
(比較例3,4)
これらの比較例においては、一般に使用されている高い導電性を示す酸化物イオン導電性セラミックスを用いるようにし、比較例3では(ZrO20.92(Yb230.08を、比較例4では(Bi230.75(Y230.25を用いた。なお、これらの酸化物イオン導電性セラミックスの作製は、公知の酸化物混合法で行なった。
【0031】
そして、比較例3,4の酸化物イオン導電性セラミックスについても、上記の実施例1,2、参考例1〜3及び比較例1,2の場合と同様にして、温度の変化に伴う導電率(S/cm)の変化の状態を図2に合わせて示した。
【0032】
この結果、上記の実施例1,2及び参考例1〜3の各酸化物イオン導電性セラミックスは、高い導電性を示す酸化物イオン導電性セラミックスである比較例3の(ZrO20.92(Yb230.08に匹敵する以上の高い導電性を示しており、また実施例1,2及び参考例1〜3の各酸化物イオン導電性セラミックスは、300℃以下の低温域における導電率が、現在知られている低温域で最も高い導電性を示す酸化物イオン導電性セラミックスである比較例4の(Bi230.75(Y230.25よりも高くなっており、特に、(La235(SiO26の組成からなる参考例1の酸化物イオン導電性セラミックスは、200℃の導電率が1.3×10-5S/cmであって、上記の比較例4の酸化物イオン導電性セラミックスよりも13倍高い導電率を示した。
【0033】
次に、(La235(SiO26の組成からなる参考例1の酸化物イオン導電性セラミックスと、(ZrO20.92(Yb230.08の組成からなる比較例3の酸化物イオン導電性セラミックスと、(Bi230.75(Y230.25の組成からなる比較例4の酸化物イオン導電性セラミックスとを用いて、それぞれ濃淡電池セルを作製した。
【0034】
ここで、濃淡電池セルを作製するにあたっては、各酸化物イオン導電性セラミックスの両面に白金ペーストを塗布し、これを900℃で焼き付けて多孔性の白金電極を形成した。
【0035】
そして、このように作製した各濃淡電池セルの一方を、0.21atmの空気圧にしてO2濃度Poを一定にする一方、もう一方のO2濃度Pを1×10-4〜0.21atmの空気圧の範囲で変化させ、400〜700℃の温度において得られる起電力EMFを測定し、得られた起電力変化率(mV/decade)とネルンスト式から求めた反応電子数nを、理論値と合わせて下記の表2に示した。
【0036】
EMF=(RT/nF)ln(P/Po)
R:気体定数、F:ファラデー定数、T:絶対温度、n:反応電子数
【0037】
【表2】
Figure 0003934750
【0038】
この結果、比較例3の酸化物イオン導電性セラミックスを用いて作製した濃淡電池セルにおいては500℃の温度で、比較例4の酸化物イオン導電性セラミックスを用いて作製した濃淡電池セルにおいては600℃の温度で理論値に対応した値になっていたのに対して、参考例1の酸化物イオン導電性セラミックスを用いて作製した濃淡電池セルにおいては450℃の低い温度で理論値に対応した値になっており、低い温度で酸素センサとして機能した。
【0039】
また、上記の参考例1及び比較例3,4の各酸化物イオン導電性セラミックスをそれぞれ3×4×40mmの大きさに加工し、これらの各酸化物イオン導電性セラミックスについてJIS R 1601に基づいて3点曲げ強さを測定し、その結果を下記の表3に示した。
【0040】
【表3】
Figure 0003934750
【0041】
この結果、(La235(SiO26の組成からなる参考例1の酸化物イオン導電性セラミックスにおいては、その3点曲げ強さが(ZrO20.92(Yb230.08の組成からなる比較例3の酸化物イオン導電性セラミックスに比べると低くなっていたが、(Bi230.75(Y230.25の組成からなる比較例4の酸化物イオン導電性セラミックスの2倍の100MPa以上であり、反応焼結窒化ケイ素セラミックスの強度に匹敵し、酸素センサなどのデバイスに使用する場合において充分な強度を有していた。
【0042】
参考例4〜6及び比較例5,6)
これらの参考例4〜6及び比較例5,6においては、上記の参考例1の場合と同様に、純度99.9%以上のLa23からなる希土類酸化物と、二酸化ケイ素SiO2として試薬級の沈降性シリカとを使用した。
【0043】
そして、これらの参考例4〜6及び比較例5,6においては、配合させるLaとSiとのモル比を上記の参考例1の場合と変更させると共に、下記の表4に示す焼成温度で焼成させるようにし、それ以外は、上記の参考例1の場合と同様にして、同表に示す組成式になった参考例4〜6及び比較例5,6の各酸化物イオン導電性セラミックスを作製した。
【0044】
そして、このようにして得た参考例4〜6及び比較例5,6の各酸化物イオン導電性セラミックスについて、上記の実施例1,2、参考例1〜3及び比較例1,2の場合と同様にして、その主構成相の結晶構造を調べ、その結果を下記の表4に示すと共に、各酸化物イオン導電性セラミックスの両面に多孔性の白金電極を形成し、全抵抗成分(粒内抵抗+粒界抵抗)から導電率G(S/cm)を求め、温度の変化に伴う導電率Gの変化の状態を図3に示し、また200℃と300℃における導電率Gを下記の表4に示した。
【0045】
【表4】
Figure 0003934750
【0046】
この結果、酸化物イオン導電性セラミックスにおける主構成相の結晶構造がアパタイト構造になっている参考例4〜6の各酸化物イオン導電性セラミックスは、酸化物イオン導電性セラミックスにおける主構成相の結晶構造がアパタイト構造になっていない比較例5,6の各酸化物イオン導電性セラミックスに比べて、低温域における酸化物イオンの導電率が高くなっていた。
【0047】
実施例3〜5、参考例7及び比較例7〜9)
これらの実施例3〜5、参考例7及び比較例7〜9においては、上記の参考例1の場合と焼成温度だけを下記の表5に示すように変更させ、それ以外は、上記の参考例1の場合と同様にして、(La235(SiO26の組成からなる各酸化物イオン導電性セラミックスを作製した。そして、これらの実施例3〜5、参考例7及び比較例7〜9の各酸化物イオン導電性セラミックスについて、その主構成相の結晶構造を調べたところ、上記の参考例1の場合と同じアパタイト構造になっていた。
【0048】
次に、これらの実施例3〜5、参考例7及び比較例7〜9の各酸化物イオン導電性セラミックスの両面に多孔性の白金電極を形成し、全抵抗成分(粒内抵抗+粒界抵抗)から導電率G(S/cm)を求め、200℃と300℃における各導電率Gと活性化エネルギーE(kJ/mol)とを上記の参考例1のものと合わせて下記の表5に示した。
【0049】
【表5】
Figure 0003934750
【0050】
この結果、(La235(SiO26の組成からなる酸化物イオン導電性セラミックスを得るにあたり、その焼成温度を1700℃以上にした実施例3〜5、参考例1,7の各酸化物イオン導電性セラミックスは、その焼成温度が1700℃未満の比較例7〜9の各酸化物イオン導電性セラミックスに比べて、低温域での酸化物イオンの導電率が高くなっており、特に、焼成温度を1750〜1850℃にした実施例3〜5の各酸化物イオン導電性セラミックスは、参考例1,7の酸化物イオン導電性セラミックスに比べてさらに活性化エネルギーが低くなっていた。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明の請求項1における酸化物イオン導電性セラミックスは、1700〜1850℃の温度で焼成された(RE23x(SiO26(REはLa,Ce,Pr,Nd,Smから選択される元素であり、xは3.5<x<6の条件を満たす。)を主成分とする焼結体であって、その主構成相がアパタイト結晶構造になっているため、低温域においても酸化物イオンの導電率が高く、十分な機械的強度を持つと共に、高い緻密性の組織を有し、酸素センサや固体電池などの電気化学デバイスなどの用途において優れた特性を発揮することができるようになった。
【0052】
また、この発明の請求項3に示すように、La,Ce,Pr,Nd,Smから選択される少なくとも1つの希土類元素の酸化物と二酸化ケイ素とを含む原料を所定の割合で混合した後、この混合物を仮焼し、この仮焼物を粉砕して成形した後、この成形物を1700〜1850℃の温度で焼成すると、上記のように低温域においても酸化物イオンの導電率が高く、十分な機械的強度を持つと共に、高い緻密性の組織を有する酸化物イオン導電性セラミックスが得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アパタイト結晶構造を示した図である。
【図2】 実施例1,2、参考例1〜3及び比較例1,2の各酸化物イオン導電性セラミックスの両面に電極を形成して測定したアレニウスプロットを示した図である。
【図3】 参考例4〜6及び比較例5,6の各酸化物イオン導電性セラミックスの両面に電極を形成して測定したアレニウスプロットを示した図である。

Claims (3)

  1. 1750〜1850℃の温度で焼成された(RE23)x(SiO26(REはLa,Ce,Pr,Nd,Smから選択される元素であり、xは3.5<x<6の条件を満たす。)を主成分とする焼結体であって、その主構成相がアパタイト結晶構造であり、300℃における導電率が1.8×10 -5 S/cm以上であることを特徴とする酸化物イオン導電性セラミックス。
  2. 200℃における導電率が1.7×10 -6 S/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物イオン導電性セラミックス。
  3. La,Ce,Pr,Nd,Smから選択される少なくとも1つの希土類元素の酸化物と二酸化ケイ素を含む原料を、(RE 2 3 x (SiO 2 6 (REはLa,Ce,Pr,Nd,Smから選択される元素であり、xは3.5<x<6の条件を満たす。)となる割合で混合した後、この混合物を仮焼し、この仮焼物を粉砕し、成形した後、この成形物を1750〜1850℃の温度で焼成することを特徴とする請求項1に記載の酸化物イオン導電性セラミックスの製造方法。
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