以下、図面を参照しながら本技術の実施の形態について説明する。なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.システムの構成
2.本技術の基準反射板を用いた検査の原理
3.基準反射板の設計
4.検査対象物の検査
(1)基準光源での基準反射板の測定
(2)測定光源での検査対象物の検査指標の測定
5.変形例
6.コンピュータの構成
<1.システムの構成>
(植生検査装置の構成)
図1は、本技術を適用した植生検査装置10の構成例を示す図である。なお、図1の説明では、図2乃至図4のグラフを適宜参照しながら説明する。
図1の植生検査装置10は、植物等の検査対象物50をセンシングして、その検査指標の測定を行うための装置である。ここで、センシングとは、対象物を測定することを意味する。また、センシングには、対象物(被写体)を撮像することを含み、可視光外の波長の光をセンシングする場合についても、撮像に含まれるものとする。
図1において、植生検査装置10は、基準反射板101、レンズ102、センサ103、露出制御部104、補正処理部105、及び、検査指標算出部106から構成される。ただし、基準反射板101は、植生検査装置10により、検査対象物50と同時に又は単独で測定(センシング)可能な所定の位置に設置される。なお、図1において、露出制御部104、補正処理部105、及び、検査指標算出部106などは、回路を含んで構成されるようにしてもよい。
図1では、検査対象物50として、植物を対象としており、その検査指標として、植生指数が算出される場合を説明する。植生指数は、植生の分布状況や活性度を示す指標である。以下の説明では、植生指数として、正規化植生指数(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)を説明する。
また、以下の説明においては、スペクトル比率とは、対象物からの光を分光して得られるスペクトルの関係を表した値である。ここで、正規化植生指数(NDVI値)を求める場合には、分光スペクトルとして、R(赤)成分の値とIR(赤外)成分の値が必要になるので、スペクトル比率は、R成分とIR成分との関係を表した値とされる。
この場合のスペクトル比率としては、例えば、R/IRを計算した値のほか、IR/Rを計算した値や、RとIRの値をそれぞれ独立して保持するなど、RとIRとの比率を表したもの、又はRとIRとの比率を求めることが可能なものであれば、どのような形式のデータであってもよい。以下の説明では、スペクトル比率として、R/IRを計算した値(以下、「R/IR比率」とも記述する)が用いられる場合を一例に説明する。
また、以下の説明においては、ある特定の光源下での基準反射板101の基準スペクトル比率(R/IR比率)を求めるための測定時における対象物を照射する光源を、基準光源L0と称する一方で、様々な光源下での検査対象物50の検査指標の測定時における対象物を照射する光源を、測定光源L1と称して区別する。
測定光源L1下において、検査対象物50からの反射光は、レンズ102を介してセンサ103に入射される。
図2は、検査対象物50としての植物の分光反射率特性を示す図である。図2においては、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は反射率を表している。また、植物A、植物B、及び、植物Cは、同じ種別の植物(例えば芝)であって、その植物の量や活力を表す植生が異なっている。図2に示すように、植生の異なる植物ごとに、分光反射率特性が異なっている。
また、測定光源L1下において、基準反射板101からの反射光は、レンズ102を介してセンサ103に入射される。ここで、基準反射板101は、検査対象物50の分光反射率に応じた特性(検査対象物50の分光反射率に等しい又はそれ近い特性)を有するように作成されている。
図3は、基準反射板101の分光反射率特性を示す図である。図3において、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は反射率を表している。図3に示すように、基準反射板101は、図2に示した植物の分光反射率特性に応じた分光反射率特性を有している。なお、この基準反射板101の設計方法の詳細な内容については、図7乃至図18を参照して後述する。
センサ103は、例えば、所定の波長帯域の光を透過する複数の光学フィルタを有する分光器と、複数の画素が行列状にセンサ面に配列されたセンシング素子から構成され、分光センシング機能を有している。センサ103は、レンズ102を介して入射される、対象物(検査対象物50と基準反射板101)からの光(反射光)を、分光器により分光して、センシング素子によりそのセンサ面に照射される光を検出することで、それぞれの分光成分の明るさに応じた測定信号(測定値)を出力する。
図示するように、センサ103の分光器では、例えば、縦×横が2×4となる8画素を1セットとし、その1セットを構成する各画素に対応して、それぞれ異なる波長帯域の光を透過する8種類の光学フィルタが配置される。すなわち、1セットの8画素に対応して、波長の短い方から順に、第1の青色光B1を透過する光学フィルタ、第2の青色光B2を透過する光学フィルタ、第1の緑色光G1を透過する光学フィルタ、第2の緑色光G2を透過する光学フィルタ、第1の赤色光R1を透過する光学フィルタ、第2の赤色光R2を透過する光学フィルタ、第1の赤外光IR1を透過する光学フィルタ、及び、第2の赤外光IR2を透過する光学フィルタが配置される。
そして、分光器は、このような8画素の光学フィルタを1セットとして、nセット(nは1以上の自然数)の光学フィルタが、センシング素子のセンサ面の全面に連続的に配置されて構成されている。なお、光学フィルタのセットは、8画素を1セットとした構成に限定されることなく、例えば、4画素を1セットとした構成などの他の形態を採用することができる。
ここで、植生指数として、正規化植生指数(NDVI値)を測定する場合には、R(赤)成分とIR(赤外)成分の測定値が必要になるので、センサ103は、対象物からの光(反射光)に応じて、R成分の値(Rチャネル(Rch)値)とIR成分の値(IRチャネル(IRch)値)を測定(センシング)し、露出制御部104及び補正処理部105に供給することになる。
なお、R成分の値(Rチャネル値)とは、例えば、第1の赤色光R1を透過する光学フィルタに対応する測定値、又は第2の赤色光R2を透過する光学フィルタに対応する測定値である。また、IR成分の値(IRチャネル値)とは、例えば、第1の赤外光IR1を透過する光学フィルタに対応する測定値、又は第2の赤外光IR2を透過する光学フィルタに対応する測定値である。
図4は、センサ103の分光感度特性を示す図である。図4において、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は分光感度を表している。ここで、検査対象物50が植物の場合には、その分光反射率特性は、可視領域での反射が小さくなり、近赤外領域での反射が大きくなることが知られている。これは、植物の光合成と関係しており、光合成に有効である可視領域の波長が吸収されることで、可視領域からの反射が小さくなる一方で、近赤外領域では、反射が相対的に大きくなるからである。センサ103は、このような植物の分光反射特性に対応するために、図4に示した分光感度特性を有している。
なお、センサ103としては、対象物を面で捉えるエリアセンサのほか、対象物を線で捉えるラインセンサを用いることができる。また、センシング素子に、R成分の画素とIR成分の画素が1画素ずつしか配置されていない場合でも、センサ又は測定対象物を移動させるための機構を設けることで、対象物をスキャンすることができる。
露出制御部104は、センサ103において、信号電荷が飽和せずにダイナミックレンジ内に入っている状態で測定(センシング)が行われるように、レンズ102等の光学系のシャッタ速度やアイリス(絞り)による開口量、又はセンサ103の電子シャッタのシャッタ速度などを制御することで、露出制御を行う。
補正処理部105は、センサ103から供給されるRチャネル値とIRチャネル値に基づいて、Rチャネル値とIRチャネル値とのスペクトル比率(R/IR比率)を補正する補正処理を行い、その補正後のスペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を、検査指標算出部106に供給する。
この補正処理では、基準反射板101の基準光源L0下における基準スペクトル比率(R/IR比率)と、測定光源L1下での測定(センシング)により得られた基準反射板101の測定スペクトル比率(R/IR比率)に基づいて、スペクトル比率(R/IR比率)の補正ゲインが算出され、この補正ゲインを用いて、測定光源L1下での測定(センシング)により得られた検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)が補正される。
検査指標算出部106は、補正処理部105から供給される補正後の検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を用い、植生指数を算出して出力する。ここでは、下記の式(1)を演算することで、植生指数として、(補正済みの)NDVI値を求めることができる。
NDVI = (IR - R) / (IR + R) = (1- R/IR) / (1 + R/IR) ・・・(1)
ただし、式(1)において、IRは、近赤外領域の反射率を表し、Rは、可視領域赤の反射率を表している。なお、この正規化植生指数(NDVI値)を算出するなどの、検査対象物50の検査方法の詳細な内容については、図19乃至図29を参照して後述する。
植生検査装置10は、以上のように構成される。図1の植生検査装置10においては、基準光源L0での基準反射板101の基準スペクトル比率(R/IR=A)を求めておくことで、その後の測定光源L1での検査対象物50の検査指標の測定の際には、基準反射板101の基準スペクトル比率(R/IR=A)と、測定光源L1での基準反射板101の測定スペクトル比率(R/IR比率)から求められる補正ゲインを用いて、測定光源L1での検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)が補正される。
例えば、図1の植生検査装置10において、測定光源L1での検査対象物50(特定の植物)のNDVI値として、0.6が測定された場合、0.6であるNDVI値は、基準光源L0での検査対象物50のNDVI値に相当するものであって、晴れや曇り、雨などの天候の変化によって光源が変化した場合でも、光源依存性が除去されているため、同一の検査対象物50(特定の植物)であれば、そのNDVI値として、0.6が測定されることになる。また、別の異なる植生の検査対象物50について、測定光源L1でのNDVI値として、例えば、0.3又は0.4などの値が測定された場合も同様であり、これらの値は基準光源L0での同検査対象物50のNDVI値に相当するものであって、光源依存性が除去された値として測定される。一方で、仮に、植生検査装置10とは異なり、光源依存性が除去されていない場合には、例えば、晴れや曇りなどの天候の変化によって光源が変化すると、同一の検査対象物(植物)であっても、NDVI値が異なる値として測定される。
<2.本技術の基準反射板を用いた検査の原理>
ここでは、図5及び図6を参照して、光源及び対象物(検査対象物50と基準反射板101)の分光特性が、センサ103の出力値、スペクトル比率(R/IR比率)、及び、測定光補正に対して、どのように作用するかを示すことで、植生検査装置10で行われる検査の原理について説明する。
なお、ここでは、比較のため、図5を参照して、分光反射率特性がフラットな基準反射板(以下、「フラット基準反射板101F」ともいう)を用いた場合を説明してから、図6を参照して、分光反射率特性が検査対象物50の分光反射率特性と等しい又は近い基準反射板101(図1)を用いた場合について説明する。
(基準反射板の分光反射率がフラットな場合)
図5は、基準反射板として、分光反射率がフラットな基準反射板101Fを用いた場合を説明する図である。なお、図5において、各グラフの横軸は波長を表し、縦軸は強度を表している。
図5のAのセンサ分光感度特性S(λ)の基準光源L0と測定光源L1の各グラフにおいて、左側の波形はRチャネルの分光感度特性を表し、右側の波形はIRチャネルの分光感度特性を表している。なお、図5のAの縦軸の強度は、センサ103が測定する光強度を表している。
図5のBの光源分光特性I(λ)において、基準光源L0のグラフは、その分光特性がフラットな場合を表し、測定光源L1のグラフは、その分光特性が、波長が長いほど強度が大きい特性であることを表している。なお、図5のBの縦軸の強度は、各光源が放射する光強度を表している。
図5のCの測定系総合分光特性は、S(λ)×I(λ)、すなわち、図5のAのセンサ分光感度特性S(λ)と、図5のBの光源分光特性I(λ)とを乗じた分光特性を表している。これは、それぞれの光源下における、光源の特性とセンサの特性の双方の特性を考慮した測定系の総合的な分光特性を表している。なお、図5のCの縦軸の強度は、図5のAの光強度と、図5のBの光強度とを乗じて得られる強度を表している。
以下の説明では、基準反射板101Fや検査対象物50などの対象物の測定(センシング)を想定し、センサ103の出力値であるRチャネル値とIRチャネル値を用いながら、説明を進めるものとする。ここでは、センサ103の出力値は、測定系総合分光特性S(λ)×I(λ)と、それぞれの対象物(基準反射板101Fと検査対象物50)の分光反射率特性であるO_Ref(λ)又はO_ISP(λ)を乗じて、それらを波長軸にて積分した値に比例している。
まず、基準光源L0下での基準反射板101Fの測定(センシング)によるスペクトル比率(R/IR比率)の測定と、測定光源L1下での基準反射板101Fの測定(センシング)によるスペクトル比率(R/IR比率)の測定と、測定光補正で用いられる補正ゲインの算出とを、図5のD及び図5のEを参照しながら説明する。
図5のDは、基準反射板101Fの分光反射率特性O_Ref(λ)を表しており、その値は、フラットとなっている。また、図5のEの基準反射板系総合分光特性は、図5のCの測定系総合分光特性S(λ)×I(λ)と、図5のDの基準反射板101Fの分光反射率特性O_Ref(λ)とを乗じて得られる特性を表している。そして、この特性を波長軸にて積分した値(図5のEの光強度を表す実線と波長軸とで囲まれる部分の面積)に、センサ103の出力値は比例することになる。なお、図5のDの縦軸の強度は、基準反射板101Fが反射する光の強度を表している。また、図5のEの縦軸の強度は、図5のCの光強度と、図5のDの光強度とを乗じて得られる強度を表している。
ここで、基準反射板101Fの測定時の基準光源L0下における、Rチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_Ref_L0_R = 1.0と、D_Ref_L0_IR = 1.0とする。この場合に、基準光源L0下における基準反射板101Fのスペクトル比率(R/IR比率)は、下記の式(2)により算出される。
R_Ref_L0 = D_Ref_L0_R / D_Ref_L0_IR = 1.0 / 1.0 = 1.0 ・・・(2)
また、検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定における、別の光源下では、基準反射板101Fのスペクトル比率(R/IR比率)を、式(2)の値に補正するための補正ゲインを算出する。ここで、測定光源L1下では、基準反射板101Fの測定時のRチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_Ref_L1_R = 0.25と、D_Ref_L1_IR = 1.0とする。この場合、測定光源L1下における基準反射板101Fのスペクトル比率(R/IR比率)は、下記の式(3)により算出される。
R_Ref_L1 = D_Ref_L1_R / D_Ref_L1_IR = 0.25 / 1.0 = 0.25 ・・・(3)
よって、光源変化による補正ゲインは、下記の式(4)により算出される。
G_Ref_L1 = R_Ref_L0 / R_Ref_L1 = 1.0 / 0.25 = 4.0 ・・・(4)
なお、測定光源L1が、基準光源L0と一致する場合には、補正ゲインは、下記の式(5)により算出される。すなわち、この場合、下記の式(5)に示すように、非補正の場合と等価とされる。
G_Ref_L0 = R_Ref_L0 / R_Ref_L0 = 1.0 / 1.0 = 1.0 ・・・(5)
次に、それぞれの光源下における、検査対象物50の測定(センシング)によるスペクトル比率(R/IR比率)の測定と、式(4)により求めた補正ゲインを用いた測定光補正とを、図5のF及び図5のGを参照しながら説明する。
図5のFは、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)の一例を表しており、その値は、フラットとはならない。また、図5のGの検査対象物系総合分光特性は、図5のCの測定系総合分光特性S(λ)×I(λ)と、図5のFの検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)とを乗じて得られる特性を表している。そして、この特性を波長軸にて積分した値(図5のGの光強度を表す実線と波長軸とで囲まれる部分の面積)に、センサ103の出力値は比例することになる。なお、図5のFの縦軸の強度は、検査対象物50が反射する光の強度を表している。また、図5のGの強度は、図5のCの光強度と、図5のFの光強度とを乗じて得られる強度を表している。
ここで、検査対象物50の測定時の基準光源L0下における、Rチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_ISP_L0_R = 0.25と、D_ISP_L0_IR = 1.0とする。この場合に、基準光源L0下における検査対象物50のスペクトル比率(R/IR比率)は、下記の式(6)により算出される。
R_ISP_L0 = D_ISP_L0_R / D_ISP_L0_IR = 0.25 / 1.0 = 0.25 ・・・(6)
そして、この式(6)により求められるスペクトル比率(R/IR比率)に対する測定光補正は、式(5)により求められる補正ゲインを用いて、下記の式(7)により表され、不変とされる。
R_ISP_L0_comp = R_ISP_L0 × G_Ref_L0 = 0.25 × 1.0 = 0.25 ・・・(7)
一方で、測定光源L1下での検査対象物50の測定時のRチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_ISP_L1_R = 0.05と、D_ISP_L1_IR = 1.0とする。この場合に、測定光源L1下における検査対象物50のスペクトル比率(R/IR比率)は、下記の式(8)により算出される。
R_ISP_L1 = D_ISP_L1_R / D_ISP_L1_IR = 0.05 / 1.0 = 0.05 ・・・(8)
そして、この式(8)により求められるスペクトル比率(R/IR比率)に対する測定光補正は、式(4)により求められる補正ゲインを用いて、下記の式(9)により表される。
R_ISP_L1_comp = R_ISP_L1 × G_Ref_L1 = 0.05 × 4.0 = 0.2 ・・・(9)
以上のようにして測定光補正が行われるが、検査対象物50のスペクトル比率(R/IR比率)に対する、測定光補正における補正精度の観点で見ると、測定光源L1下での測定値(R_ISP_L1 = 0.05)は、基準光源L0下での測定値(R_ISP_L0 = 0.25)に対して、大きく異なっているが、式(9)を適用した測定光補正により、より近い値(R_ISP_L1_comp = 0.2)に補正されている。しかしながら、測定光補正を行ったとしても、依然として誤差が伴っている。
その理由であるが、図5のGの分光特性に対するセンサ103の出力値に対応するスペクトル比率(R/IR比率)への補正ゲインを、図5のEの分光特性に対するセンサ103の出力値に対応するスペクトル比率(R/IR比率)から求めているが、図5のGと図5のEとの間には、対象物の分光反射率の成分(O_Ref(λ)とO_ISP(λ))に大きな差異が存在することから、適用された補正ゲインが、検査対象物50に対して精度のよい補正ゲインとなっていないことに起因している。
(基準反射板の分光反射特性が検査対象物と等しい又は近い場合)
図6は、基準反射板として、分光反射率が検査対象物50の分光反射特性と等しい又は近い基準反射板101(図1)を用いた場合を説明する図である。なお、図6において、各グラフの軸は、図5のグラフの軸と同様とされる。
図6のAのセンサ分光感度特性S(λ)、図6のBの光源分光特性I(λ)、及び、図6のCの測定系総合分光特性S(λ)×I(λ)は、図5のAのセンサ分光感度特性S(λ)、図5のBの光源分光特性I(λ)、及び、図5のCの測定系総合分光特性S(λ)×I(λ)と同様であるため、その説明は省略する。
まず、基準光源L0下での基準反射板101の測定(センシング)によるスペクトル比率(R/IR比率)の測定と、測定光源L1下での基準反射板101の測定(センシング)によるスペクトル比率(R/IR比率)の測定と、測定光補正で用いられる補正ゲインの算出とを、図6のD及び図6のEを参照しながら説明する。
図6のDは、基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)を表している。ここでは、特性に変動のある検査対象物50の代表的な特性であるとする。例えば、検査対象物50が植物である場合に、その植生が特性として変動することになる。また、代表的な特性としては、例えば平均値などを採用することができる。また、図6のEの基準反射板系総合分光特性は、図6のCの測定系総合分光特性S(λ)×I(λ)と、図6のDの基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)とを乗じて得られる特性を表している。
ここで、基準反射板101の測定時の基準光源L0下における、Rチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_Ref_L0_R = 0.25と、D_Ref_L0_IR = 1.0とする。この場合に、基準反射板101に対する、基準光源L0下でのスペクトル比率(R/IR比率)は、下記の式(10)により算出される。
R_Ref_L0 = D_Ref_L0_R / D_Ref_L0_IR = 0.25 / 1.0 = 0.25 ・・・(10)
また、検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定における、別の光源下では、基準反射板101のスペクトル比率(R/IR比率)を、式(10)の値に補正するための補正ゲインを算出する。ここで、測定光源L1下では、基準反射板101の測定時のRチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_Ref_L1_R = 0.05と、D_Ref_L1_IR = 1.0とする。この場合、測定光源L1下における基準反射板101の比率R/IRは、下記の式(11)により算出される。
R_Ref_L1 = D_Ref_L1_R / D_Ref_L1_IR = 0.05 / 1.0 = 0.05 ・・・(11)
よって、光源変化による補正ゲインは、下記の式(12)により算出される。
G_Ref_L1 = R_Ref_L0 / R_Ref_L1 = 0.25 / 0.05 = 5.0 ・・・(12)
なお、測定光源L1が、基準光源L0と一致する場合には、補正ゲインは、下記の式(13)により算出される。すなわち、この場合、下記の式(13)に示すように、非補正の場合と等価とされる。
G_Ref_L0 = R_Ref_L0 / R_Ref_L0 = 0.25 / 0.25 = 1.0 ・・・(13)
次に、それぞれの光源下における、検査対象物50の測定(センシング)によるスペクトル比率(R/IR比率)の測定と、式(12)により求めた補正ゲインを用いた測定光補正とを、図6のF及び図6のGを参照しながら説明する。
図6のFは、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)の一例を表しており、その値は、フラットとはならない。なお、ここでは、基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)は、特性に変動がある検査対象物50(例えば、植物の植生など)の代表的な特性(例えば平均値など)に一致するように、基準反射板101を作成しているため、基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)と、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)とは、必ずしも一致するものではない。ただし、ここでは、最も効果的な例として、基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)と、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)とが一致している場合について説明する。
図6のGの検査対象物系総合分光特性は、図6のCの測定系総合分光特性S(λ)×I(λ)と、図6のFの検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)とを乗じて得られる特性を表している。
ここで、検査対象物50の測定時の基準光源L0下における、Rチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_ISP_L0_R = 0.25と、D_ISP_L0_IR = 1.0とする。この場合に、基準光源L0下における検査対象物50のスペクトル比率(R/IR比率)は、下記の式(14)により算出される。
R_ISP_L0 = D_ISP_L0_R / D_ISP_L0_IR = 0.25 / 1.0 = 0.25 ・・・(14)
そして、この式(14)により求められるスペクトル比率(R/IR比率)に対する測定光補正は、式(13)により求められる補正ゲインを用いて、下記の式(15)により表され、不変とされる。
R_ISP_L0_comp = R_ISP_L0 × G_Ref_L0 = 0.25 × 1.0 = 0.25 ・・・(15)
一方で、測定光源L1下での検査対象物50の測定時のRチャネル値とIRチャネル値を、それぞれ、D_ISP_L1_R = 0.05と、D_ISP_L1_IR = 1.0とする。この場合に、測定光源L1下における検査対象物50のスペクトル比率(R/IR比率)は、下記の式(16)により算出される。
R_ISP_L1 = D_ISP_L1_R / D_ISP_L1_IR = 0.05 / 1.0 = 0.05 ・・・(16)
そして、この式(16)により求められるスペクトル比率(R/IR比率)に対する測定光補正は、式(12)により求められる補正ゲインを用いて、下記の式(17)により表される。
R_ISP_L1_comp = R_ISP_L1 × G_Ref_L1 = 0.05 × 5.0 = 0.25 ・・・(17)
以上のようにして測定光補正が行われるが、検査対象物50のスペクトル比率(R/IR比率)に対する、測定光補正における補正精度の観点で見ると、測定光源L1下での測定値(R_ISP_L1 = 0.05)は、基準光源L0下の測定値(R_ISP_L0 = 0.25)に対して、大きく異なっているが、式(17)を適用した測定光補正により、同一の値(R_ISP_L1_comp = 0.25)に補正されている。
その理由であるが、図6のGの分光特性に対するセンサ103の出力に対応するスペクトル比率(R/IR比率)への補正ゲインを、図6のEの分光特性に対するセンサ103の出力に対応するスペクトル比率(R/IR比率)から求めているが、図6のGと図6のEにおける、対象物の分光反射率の成分(O_Ref(λ)とO_ISP(λ))が、同じ特性であることから、適用された補正ゲインが、検査対象物50に対して補正誤差を発生しない補正ゲインとなり得ていることに起因している。
なお、図6においては、基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)と、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)が等しい場合を説明したが、図6のように分光反射率特性が完全に等しくない場合でも、基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)として、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)と相関のないものや低いものではなく、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)と相関の高い代表的な特性を用いることで、測定光補正の誤差を最小限にすることができる。ここで、相関の高い又は低いを判定するための手法としては、例えば、基準反射板101の分光反射率特性O_Ref(λ)と、検査対象物50の分光反射率特性O_ISP(λ)との間の、各波長における差分絶対値を、波長軸にて積分した値の大小関係を用いることができる。
<3.基準反射板の設計>
次に、植生検査装置10(図1)により用いられる基準反射板101の設計方法について説明する。
(分光反射率設計装置の構成)
図7は、分光反射率設計装置の構成例を示す図である。
図7の分光反射率設計装置20は、植生検査装置10(図1)により用いられる基準反射板101の設計を行うための装置である。この分光反射率設計装置20による設計に応じた基準反射板101が作成(生成)されることになる。図7において、分光反射率設計装置20は、測定部201、算出部202、及び、決定部203から構成される。
測定部201は、植生の異なる植物の分光反射率を測定し、その測定値を、算出部202に供給する。
算出部202は、測定部201により測定される測定値に基づいて、作成される基準反射板101が持つべき分光反射率(目標分光反射率)となり得る分光反射率を算出し、決定部203に供給する。
決定部203は、算出部202により算出される分光反射率に基づいて、目標分光反射率を決定する。
次に、図7の分光反射率設計装置20により実行される、植生検査装置10(図1)により用いられる基準反射板101の設計処理について説明する。ここでは、基準反射板101の設計処理として、分光反射率の第1の設計処理乃至第3の設計処理の3つの設計方法を説明する。すなわち、分光反射率の第1の設計処理は、植生の異なる植物の平均分光反射率を目標分光反射率とするものであり、分光反射率の第2の設計処理は、平均分光反射率に、最小反射率に応じた調整ゲインを乗じることで算出される分光反射率特性を目標分光反射率とするものであり、分光反射率の第3の設計処理は、最大反射率に応じた調整ゲインを乗じることで算出される分光反射率特性を目標分光反射率とするものである。
(分光反射率の第1の設計処理)
まず、図8のフローチャートを参照して、分光反射率の第1の設計処理を説明する。
ステップS11において、測定部201は、植生の異なる植物の分光反射率O_PLT_i(λ)を測定する。ここでは、測定部201は、分光器とセンシング素子から構成され、植生の異なる植物からの光を、プリズム又は回折格子を用いて分光し、分光されたそれぞれの波長ごとの光の強度を、センシング素子で測定(センシング)することになる。このような測定を行うことで、測定部201の分光感度帯域内の波長帯域における、各波長ごとの反射率(分光反射率)が測定される。
ただし、O_PLTの添字であるiは、検査対象物50に含まれる個体において、特性の異なる個体の番号を指す指標である。ここで、特性とは、例えば、同じ種別の植物(例えば芝)に対して、その植物の量や活力を表す植生を示している。また、λは波長を意味する。
ステップS12において、算出部202は、ステップS11の処理で測定された複数の測定値に基づいて、複数の分光反射率O_PLT_i(λ)の平均値である平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)を算出する。
ステップS13において、決定部203は、ステップS12の処理で算出された平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)を、目標分光反射率に決定する。
ステップS13の処理が終了すると、図8の分光反射率の第1の設計処理は終了される。
以上、分光反射率の第1の設計処理について説明した。この分光反射率の第1の設計処理においては、目標分光反射率として、複数の分光反射率の平均値が決定される。そして、このようにして決定された目標分光反射率に応じた基準反射板101が作成され、植生検査装置10(図1)により用いられる。
(分光反射率の第2の設計処理)
次に、図9のフローチャートを参照して、分光反射率の第2の設計処理を説明する。なお、図9の説明では、図10乃至図13のグラフを適宜参照しながら説明する。
ステップS31において、測定部201は、図8のステップS11の処理と同様に、植生の異なる植物の分光反射率O_PLT_i(λ)を測定する。具体的には、図10に示すように、例えば、植物A,植物B,植物Cは、同じ種別の植物(例えば芝)であって、その植生が異なっており、それらの植生が異なる植物ごとに、異なる分光反射率O_PLT_i(λ)が測定される。
ステップS32において、算出部202は、ステップS31の処理で測定された複数の測定値に基づいて、複数の分光反射率O_PLT_i(λ)の平均値である平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)を算出する。具体的には、図11に示すように、例えば、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)の分光反射率O_PLT_i(λ)が測定された場合には、それらの植物の分光反射率O_PLT_i(λ)の平均値が、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)として求められる(図11の実線のグラフ)。
ステップS33において、算出部202は、ステップS32の処理で算出された平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して、Rチャネル及びIRチャネルの各分光感度帯域内の平均反射率PLT_AVE_R,PLT_AVE_IRを算出する。
ステップS34において、算出部202は、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)の分光反射率O_PLT_i(λ)に対して、Rチャネル及びIRチャネルの各分光感度帯域内のそれぞれの平均反射率を算出し、その最小反射率PLT_MIN_R,PLT_MIN_IRを検索する。
ステップS35において、算出部202は、チャネルごとに、ステップS33の処理で算出された平均反射率(PLT_AVE_R,PLT_AVE_IR)と、ステップS34の処理で検索された最小反射率(PLT_MIN_R,PLT_MIN_IR)との比を算出する。以下、この平均反射率と最小反射率との比を、調整ゲインとも称する。ここでは、RチャネルとIRチャネルのチャネルごとに、調整ゲイン(gain1,gain2)が、下記の式(18)により算出される。
gain1 = PLT_MIN_R / PLT_AVE_R
gain2 = PLT_MIN_IR / PLT_AVE_IR ・・・(18)
ステップS36において、算出部202は、ステップS32の処理で算出された平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して、Rチャネル及びIRチャネルの各分光感度帯域内について、それぞれ、ステップS35の処理で算出された調整ゲイン(gain1,gain2)を乗じた分光反射率特性を算出する。そして、決定部203は、このようにして求められる分光反射率特性を、目標分光反射率に決定する。
具体的には、図12に示すように、Rチャネルの分光感度帯域内では、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して調整ゲイン(gain1)が乗じられ、IRチャネルの分光感度帯域内では、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して調整ゲイン(gain2)が乗じられて、各分光感度帯域内の平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が調整される。
すなわち、図13に示すように、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)の分光反射率O_PLT_i(λ)から求められる平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が、最小反射率(PLT_MIN_R,PLT_MIN_IR)に応じた調整ゲイン(gain1,gain2)により調整され、その調整後の分光反射率特性が、目標分光反射率として決定される(図13の実線のグラフ)。
ステップS36の処理が終了すると、図9の分光反射率の第2の設計処理は終了される。
以上、分光反射率の第2の設計処理について説明した。この分光反射率の第2の設計処理においては、各チャネル(RチャネルとIRチャネル)の分光感度帯域ごとに、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して、最小反射率に応じた調整ゲイン(gain1,gain2)を乗じることで算出される分光反射率特性が、目標分光反射率として決定される。そして、このようにして決定された目標分光反射率に応じた基準反射板101が作成され、植生検査装置10(図1)により用いられる。
ところで、後述する測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の第1の測定処理(図23)又は第2の測定処理(図25)において、検査対象物50と基準反射板101の測定時には、すべての対象物(例えば、様々な植物や基準反射板101)について、それぞれの測定値(Rチャネル値とIRチャネル値)が、センサ103のダイナミックレンジ内に入っている、すなわち、信号電荷が飽和していないことが望ましい。
ここで、分光反射率の第2の設計処理においては、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が、植物の特性変動の最小値(最小反射率)を保持するように、基準反射板101(の分光反射率)の設計を行っている。そのため、上記の検査対象物50と基準反射板101の測定時の露出制御対象を、検査対象物50(植物)に合わせて露出制御を行うことで、基準反射板101の測定値は、必ず飽和しないことが保証されるため、すべての対象物の測定値(Rチャネル値とIRチャネル値)を、センサ103のダイナミックレンジ内に入れる(飽和させない)ことが可能となる。
また、測定時の露出制御対象を検査対象物50(植物)に合わせた露出制御の際に、複数の検査対象物50の中の測定値が最大となる検査対象物50(植物)に対して、その測定値が、センサ103の出力値の最大値付近となるように露出制御を行うことで、基準反射板101又は反射率の低い検査対象物50(植物)に対しても、アンダー露出とならずに、S/N比の良好な、センサ103のダイナミックレンジを最大限に生かした測定(センシング)が可能となる。
(分光反射率の第3の設計処理)
次に、図14のフローチャートを参照して、分光反射率の第3の設計処理を説明する。なお、図14の説明では、図15乃至図18のグラフを適宜参照しながら説明する。
ステップS51において、測定部201は、図8のステップS11の処理と同様に、植生の異なる植物の分光反射率O_PLT_i(λ)を測定する。具体的には、図15に示すように、例えば、植物A,植物B,植物Cは、同じ種別の植物(例えば芝)であって、その植生が異なっており、それらの植生が異なる植物ごとに、異なる分光反射率O_PLT_i(λ)が測定される。
ステップS52において、算出部202は、ステップS51の処理で測定された複数の測定値に基づいて、複数の分光反射率O_PLT_i(λ)の平均値である平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)を算出する。具体的には、図16に示すように、例えば、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)の分光反射率O_PLT_i(λ)が測定された場合には、それらの植物の分光反射率O_PLT_i(λ)の平均値が、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)として求められる(図16の実線のグラフ)。
ステップS53において、算出部202は、ステップS52の処理で算出された平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して、Rチャネル及びIRチャネルの各分光感度帯域内の平均反射率PLT_AVE_R,PLT_AVE_IRを算出する。
ステップS54において、算出部202は、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)の分光反射率O_PLT_i(λ)に対して、Rチャネル及びIRチャネルの各分光感度帯域内のそれぞれの平均反射率を算出し、その最大反射率PLT_MAX_R,PLT_MAX_IRを検索する。
ステップS55において、算出部202は、チャネルごとに、ステップS53の処理で算出された平均反射率(PLT_AVE_R,PLT_AVE_IR)と、ステップS54の処理で検索された最大反射率(PLT_MAX_R,PLT_MAX_IR)との比を算出する。以下、この平均反射率と最大反射率との比についても、調整ゲインと称する。ここでは、RチャネルとIRチャネルのチャネルごとに、調整ゲイン(gain3,gain4)が、下記の式(19)により算出される。
gain3 = PLT_MAX_R / PLT_AVE_R
gain4 = PLT_MAX_IR / PLT_AVE_IR ・・・(19)
ステップS56において、算出部202は、ステップS52の処理で算出された平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して、Rチャネル及びIRチャネルの各分光感度帯域内について、それぞれ、ステップS55の処理で算出された調整ゲイン(gain3,gain4)を乗じた分光反射率特性を算出する。そして、決定部203は、このようにして求められる分光反射率特性を、目標分光反射率に決定する。
具体的には、図17に示すように、Rチャネルの分光感度帯域内では、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して調整ゲイン(gain3)が乗じられ、IRチャネルの分光感度帯域内では、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して調整ゲイン(gain4)が乗じられて、各分光感度帯域内の平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が調整される。
すなわち、図18に示すように、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)の分光反射率O_PLT_i(λ)から求められる平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が、最大反射率(PLT_MAX_R,PLT_MAX_IR)に応じた調整ゲイン(gain3,gain4)により調整され、その調整後の分光反射率特性が、目標分光反射率として決定される(図18の実線のグラフ)。
ステップS56の処理が終了すると、図14の分光反射率の第3の設計処理は終了される。
以上、分光反射率の第3の設計処理について説明した。この分光反射率の第3の設計処理においては、各チャネル(RチャネルとIRチャネル)の分光感度帯域ごとに、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)に対して、最大反射率に応じた調整ゲイン(gain3,gain4)を乗じることで算出される分光反射率特性が、目標分光反射率として決定される。そして、このようにして決定された目標分光反射率に応じた基準反射板101が作成され、植生検査装置10(図1)により用いられる。
ところで、後述する測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の第1の測定処理(図23)又は第2の測定処理(図25)において、検査対象物50と基準反射板101の測定時には、すべての対象物(例えば、様々な植物や基準反射板101)について、それぞれの測定値(Rチャネル値とIRチャネル値)が、センサ103のダイナミックレンジ内に入っている、すなわち、信号電荷が飽和していないことが望ましい。
ここで、分光反射率の第3の設計処理においては、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が、植物の特性変動の最大値(最大反射率)を保持するように、基準反射板101(の分光反射率)の設計を行っている。そのため、上記の検査対象物50と基準反射板101の測定時の露出制御対象を、基準反射板101に合わせて露出制御を行うことで、検査対象物50(植物)の測定値は、必ず飽和しないことが保証されるため、すべての対象物の測定値(Rチャネル値とIRチャネル値)を、センサ103のダイナミックレンジ内に入れる(飽和させない)ことが可能となる。
また、測定時の露出制御対象を基準反射板101に合わせた露出制御の際に、基準反射板101の測定値が、センサ103の出力値の最大値付近となるように露出制御を行うことで、反射率の低い検査対象物50(植物)に対しても、アンダー露出とならずに、S/N比の良好な、センサ103のダイナミックレンジを最大限に生かした測定(センシング)が可能となる。
なお、上述した分光反射率の第1の設計処理乃至第3の設計処理は、植生検査装置10(図1)により用いられる基準反射板101の分光反射率を設計するための設計方法の一例であって、植物などの検査対象物50の分光反射率に応じた特性を有する基準反射板101(の分光反射率)を設計可能な方法であれば、他の設計方法を採用するようにしてもよい。
<4.検査対象物の検査>
次に、上述の設計方法に応じて作成された基準反射板101を用いる植生検査装置10(図1)により行われる、検査対象物50の検査方法について説明する。ここでは、例えば、植生検査装置10は、基準光源L0下における基準反射板101の測定を行った後に、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定を行うことになる。したがって、以下、基準光源L0での基準反射板101の測定と、測定光源L1での検査対象物50の検査指標の測定について、その順に説明する。
(1)基準光源での基準反射板の測定
(基準光源での基準反射板測定時の植生検査装置の機能的構成)
図19は、基準光源L0での基準反射板101の測定時における植生検査装置10(図1)の機能的構成を示す図である。
なお、図19においては、植生検査装置10(図1)を構成するブロックのうち、基準光源L0での基準反射板101の測定時に特に関係するブロックである、センサ103と補正処理部105のみを図示している。また、以下の説明では、基準光源L0の一例として、5500Kの色温度の光源が用いられる場合について説明する。
センサ103は、基準光源L0(例えば5500Kの色温度の光源)下における基準反射板101からの反射光に応じたRチャネル値(D_Ref_5500K_R)と、IRチャネル値(D_Ref_5500K_IR)を測定し、補正処理部105に供給する。なお、ここでは、Rチャネル値とIRチャネル値は、例えば、二次元配列構造のデータとして出力される。
補正処理部105は、基準光源L0での基準反射板101の測定が行われる場合には、基準光源L0(例えば5500Kの色温度の光源)下における、基準反射板101の基準スペクトル比率(R/IR比率)を算出して、その値を記憶する。図19において、補正処理部105は、基準反射板R/IR比率算出部111と、記憶部112から構成される。
基準反射板R/IR比率算出部111は、センサ103から供給される、Rチャネル値(D_Ref_5500K_R)とIRチャネル値(D_Ref_5500K_IR)を用い、基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を算出する。基準反射板R/IR比率算出部111は、算出された基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を示す情報を、記憶部112に記憶する。
以上のように、植生検査装置10では、基準光源L0での基準反射板101の測定時において、基準光源L0(例えば5500Kの色温度の光源)下における基準反射板101の基準スペクトル比率(R/IR比率)が算出され、記憶部112にあらかじめ記憶されることになる。
(基準光源下における基準反射板の測定処理)
次に、図20のフローチャートを参照して、図19の植生検査装置10により実行される、基準光源L0下における基準反射板101の測定処理について説明する。なお、図20の基準反射板101の測定処理は、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の第1の測定処理(図23)又は第2の測定処理(図25)に先行して実行される。
ここで、図20のフローチャートの処理を実行する前に、基準光源L0が決定される。ここでは、例えば、ユーザにより、又はあらかじめ規定された値に従い、基準光源L0として、5500Kの色温度の光源が決定される。例えば、図21に示すように、2800K,5500K,10000K等の異なる特性を有する色温度の光源の中から、5500Kの色温度の光源が、基準光源L0として決定される。なお、この場合において、2800Kの色温度の光源と、10000Kの色温度の光源は、測定光源L1とすることができる。
図20に戻り、ステップS111において、センサ103は、事前に決定された基準光源L0(例えば5500Kの色温度の光源)下で、基準反射板101のRチャネル値(D_Ref_5500K_R)と、IRチャネル値(D_Ref_5500K_IR)を測定(センシング)する。
ステップS112において、基準反射板R/IR比率算出部111は、ステップS111の処理で測定されたRチャネル値(D_Ref_5500K_R)とIRチャネル値(D_Ref_5500K_IR)に基づいて、下記の式(20)を演算することで、基準光源L0(例えば5500Kの色温度の光源)下における基準反射板101の基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を算出する。
R_Ref_5500K = D_Ref_5500K_R / D_Ref_5500K_IR ・・・(20)
ステップS113において、基準反射板R/IR比率算出部111は、ステップS112の処理で算出された基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を示す情報を、記憶部112に記憶させる。
以上、基準光源L0下における基準反射板101の測定処理について説明した。この基準反射板101の測定処理においては、基準光源L0(例えば5500Kの色温度の光源)下における基準反射板101の基準スペクトル比率(R/IR比率)が算出され、記憶部112に記憶される。
(2)測定光源での検査対象物の検査指標の測定
次に、測定光源L1での検査対象物50の検査指標の測定について説明するが、ここでは、NDVI値を算出するための演算を実行する際に、その演算で用いられる値の正規化を行わない場合の構成と処理(図22,図23)について説明してから、その演算で用いられる値の正規化を行う場合の構成と処理(図24,図25)についても説明する。
(測定光源での検査指標測定時の植生検査装置の第1の機能的構成)
図22は、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定時における植生検査装置10(図1)の第1の機能的構成を示す図である。
なお、図22においては、植生検査装置10(図1)を構成するブロックのうち、測定光源L1での検査対象物50の検査指標の測定時に特に関係するブロックである、センサ103、補正処理部105、及び、検査指標算出部106のみを図示している。
センサ103は、測定光源L1(例えば2800Kや10000Kの色温度の光源)下における基準反射板101からの反射光に応じたRチャネル値(D_Ref_env_R)と、IRチャネル値(D_Ref_env_IR)を測定し、補正処理部105に供給する。また、センサ103は、測定光源L1下における検査対象物50からの反射光に応じたRチャネル値(D_ISP_env_R)と、IRチャネル値(D_ISP_env_IR)を測定し、補正処理部105に供給する。なお、ここでは、Rチャネル値とIRチャネル値は、例えば、二次元配列構造のデータとして出力される。
また、センサ103から供給される値は、所定のセンシングタイミングにおける各画素単位の値であるが、各画素単位でなく複数画素の平均値が供給されてもよいし、所定のタイミングを含む時間方向に出力値を積分した値が供給されてもよい。また、植生検査装置10は、センサから供給されたデータに基づき、複数画素の平均値や所定のタイミングを含む時間方向に出力値を積分した値を算出して、その値を補正処理に用いてもよい。
補正処理部105は、測定光源L1での検査対象物50の検査指標の測定が行われる場合には、基準光源L0での基準反射板101の基準スペクトル比率(R/IR比率)と、測定光源L1での基準反射板101の測定スペクトル比率(R/IR比率)に基づいて、スペクトル比率の補正ゲインを算出し、この補正ゲインを用いて、測定光源L1での検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を補正する。
補正処理部105は、記憶部112、補正ゲイン算出部113、及び、測定光補正部114から構成される。なお、記憶部112には、基準光源L0下における基準反射板の測定処理(図20)により、基準光源L0下の基準反射板101の基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を示す情報があらかじめ記憶されている。
補正ゲイン算出部113は、スペクトル比率の補正ゲインを算出する。補正ゲイン算出部113は、基準反射板R/IR比率算出部121、及び、R/IR比率変動比算出部122から構成される。
基準反射板R/IR比率算出部121は、センサ103から供給される、Rチャネル値(D_Ref_env_R)とIRチャネル値(D_Ref_env_IR)を用い、測定光源L1下の基準反射板101の測定スペクトル比率(R_Ref_env)を算出し、R/IR比率変動比算出部122に供給する。
R/IR比率変動比算出部122は、記憶部112に記憶された基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を示す情報を読み出す。R/IR比率変動比算出部122は、基準反射板R/IR比率算出部121から供給される(測定光源L1下の基準反射板101の)測定スペクトル比率(R_Ref_env)と、記憶部112から読み出された(基準光源L0下の基準反射板101の)基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)に基づいて、スペクトル比率の補正ゲイン(G_Ref_env)を算出し、測定光補正部114に供給する。
測定光補正部114は、スペクトル比率の補正ゲインを用い、測定光源L1での検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を補正する。測定光補正部114は、検査対象物R/IR比率算出部123、及び、ゲイン補正部124から構成される。
検査対象物R/IR比率算出部123は、センサ103から供給される、Rチャネル値(D_ISP_env_R)とIRチャネル値(D_ISP_env_IR)を用い、測定光源L1下の検査対象物50の測定スペクトル比率(R_ISP_env)を算出し、ゲイン補正部124に供給する。
ゲイン補正部124には、補正ゲイン算出部113(のR/IR比率変動比算出部122)からの補正ゲイン(G_Ref_env)が供給される。ゲイン補正部124は、R/IR比率変動比算出部122から供給される補正ゲイン(G_Ref_env)に基づいて、検査対象物R/IR比率算出部123から供給される(測定光源L1下の検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_env)を補正し、その補正後の測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)を、検査指標算出部106に供給する。
検査指標算出部106は、補正後の(測定光源L1下の検査対象物50の)測定スペクトル比率を用い、検査対象物50の検査指標(NDVI値)を算出する。検査指標算出部106は、NDVI値算出部131から構成される。
NDVI値算出部131は、補正処理部105(の測定光補正部114のゲイン補正部124)から供給される補正後の(測定光源L1下の検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)に基づいて、検査対象物50の検査指標としての正規化植生指数(NDVI値)を算出し、出力する。
以上のように、植生検査装置10では、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定において、基準光源L0と測定光源L1での基準反射板101のスペクトル比率(R/IR比率)に応じた補正ゲインが算出され、この補正ゲインに応じて測定光源L1での検査対象物50のスペクトル比率(R/IR比率)が補正され、補正後のスペクトル比率(R/IR比率)から検査指標(NDVI値)が算出される。
なお、上述した説明では、植生検査装置10が、基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を算出する場合を示したので、図22の基準反射板R/IR比率算出部121は、図19の基準反射板R/IR比率算出部111と同一のブロックとすることができる。ただし、基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を算出するのは、植生検査装置10と異なる他の装置であってもよく、その場合には、当該他の装置によって、基準光源L0下で基準反射板101を測定することで算出された基準スペクトル比率が、植生検査装置10に提供されることになる。そして、植生検査装置10は、当該他の装置から提供された基準スペクトル比率を記憶して、測定時にその基準スペクトル比率を利用することになる。
(検査指標の第1の測定処理)
図23のフローチャートを参照して、図22の植生検査装置10により実行される、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の第1の測定処理について説明する。なお、この検査指標の第1の測定処理は、基準光源L0下における基準反射板101の測定処理(図20)が行われた後に実行される。
ステップS131において、露出制御部104(図1)は、測定光源L1下で、基準反射板101及び検査対象物50のすべてが飽和しないように露出を決定する。
この露出制御では、基準反射板101のRチャネル値及びIRチャネル値、並びに検査対象物50のRチャネル値及びIRチャネル値の4つの値のすべてが、センサ103からのセンサ出力値として、飽和せずにダイナミックレンジ内に入っている状態で、測定(センシング)が行われるように露出の制御が行われる。
具体的には、例えば、センサ103の電子シャッタのシャッタ速度や、レンズ102等の光学系のシャッタ速度及びアイリス(絞り)による開口量のうち、1つ又は複数を変化させることで露出量が決定される。この露出量の決定は、植生検査装置10が自動で制御してもよいし、あるいは測定者が手動で行うようにしてもよい。
ステップS132において、センサ103は、測定光源L1下で、基準反射板101のRチャネル値(D_Ref_env_R)及びIRチャネル値(D_Ref_env_IR)を測定する。
ステップS133において、基準反射板R/IR比率算出部121は、ステップS132の処理で測定されたRチャネル値(D_Ref_env_R)及びIRチャネル値(D_Ref_env_IR)に基づいて、下記の式(21)を演算することで、測定光源L1下における、基準反射板101の測定スペクトル比率(R_Ref_env)を算出する。
R_Ref_env = D_Ref_env_R / D_Ref_env_IR ・・・(21)
ステップS134において、R/IR比率変動比算出部122は、検査対象物50の測定スペクトル(R/IR比率)を補正するための、スペクトル比率の補正ゲイン(G_Ref_env)を算出する。
具体的には、R/IR比率変動比算出部122は、基準光源L0下における基準反射板の測定処理(図20)によって、記憶部112にあらかじめ記憶されている、基準光源L0下の基準反射板101の基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を示す情報を読み出す。そして、R/IR比率変動比算出部122は、記憶部112から読み出された基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を用いて、下記の式(22)を演算することで、スペクトル比率の補正ゲイン(G_Ref_env)を算出する。
G_Ref_env = R_Ref_5500K / R_Ref_env ・・・(22)
ステップS135において、センサ103等は、測定光源L1下で、検査対象物50のRチャネル値(D_ISP_env_R)及びIRチャネル値(D_ISP_env_IR)を測定する。
なお、図23では、植生検査装置10がステップS132の処理において測定光源L1下で、基準反射板101を測定し、ステップS135の処理において測定光源L1下で、検査対象物50を測定する処理の流れとなっているが、基準反射板101と検査対象物50を同時に測定する場合には、ステップS135の処理は、ステップS132の処理と同じタイミングで行われる。すなわち、植生検査装置10は、ステップS132とステップS135の測定処理を同時に行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。なお、ステップS133,S134,S136などの各算出処理で測定結果が必要とされるよりも前のタイミングにおいて、ステップS132とステップS135の測定処理が行われる。
ステップS136において、検査対象物R/IR比率算出部123は、ステップS135の処理で測定されたRチャネル値(D_ISP_env_R)及びIRチャネル値(D_ISP_env_IR)に基づいて、下記の式(23)を演算することで、測定光源L1下における、検査対象物50の測定スペクトル比率(R_ISP_env)を算出する。
R_ISP_env = D_ISP_env_R / D_ISP_env_IR ・・・(23)
ステップS137において、ゲイン補正部124は、ステップS134の処理で算出された補正ゲイン(G_Ref_env)を用い、下記の式(24)を演算することで、ステップS136の処理で算出された測定光源L1下における検査対象物50の測定スペクトル比率(R_ISP_env)を補正する。
R_ISP_env_comp = R_ISP_env × G_Ref_env ・・・(24)
ただし、式(24)を演算することで求められるR_ISP_env_compは、基準光源L0下における検査対象物50のスペクトル比率(R_ISP_5500K)と等しくなる(ほぼ等しくなる)。
ステップS138において、NDVI値算出部131は、ステップS137の処理で補正された検査対象物50の測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)を用いて、下記の式(25)を演算することで、検査対象物50の検査指標としての正規化植生指数(NDVI値)を算出する。
NDVI = (1 - R_ISP_env_comp) / (1 + R_ISP_env_comp) ・・・(25)
以上、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の第1の測定処理について説明した。この検査指標の第1の測定処理においては、基準光源L0と測定光源L1での基準反射板101のスペクトル比率(R_Ref_5500K,R_Ref_env)に応じた補正ゲイン(G_Ref_env)が算出され、この補正ゲイン(G_Ref_env)を用いて、測定光源L1での検査対象物50のスペクトル比率(R_ISP_env)が補正され、補正後のスペクトル比率(R_ISP_env_comp)を用いて、検査対象物50の検査指標(NDVI値)が算出される。
これにより、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の測定時において、測定光源L1が変化した場合でも、スペクトル比率の補正ゲイン(G_Ref_env)により、測定光源L1での検査対象物50のスペクトル比率(R_ISP_env)を補正(測定光補正)することで、基準光源L0での検査対象物50のスペクトル比率(R_ISP_5500K)と等価(同値)になるようにしているため、光源依存性を良好に除去(排除)することができる。その結果、正確な測定光補正を行うことができる。例えば、晴れや曇り、雨などの天候の変化によって光源が変化する場合でも、同一の検査対象物50(例えば芝などの植物)に対しては、同一の値の検査指標(NDVI値)が測定されることになる。
(測定光源での検査指標測定時の植生検査装置の第2の機能的構成)
図24は、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定時における植生検査装置10(図1)の第2の機能的構成を示す図である。
図24の植生検査装置10は、上述した図22の植生検査装置10の構成と比べて、検査指標算出部106の構成が異なっている。すなわち、図24の検査指標算出部106には、NDVI値算出部131の前段に、補正後の(測定光源L1下の検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)に対する光源・センサ成分の正規化を行うための正規化部132と記憶部133がさらに設けられている。
ここで、このような正規化を行う理由であるが、正規化植生指数(NDVI値)等の植生指数は、光源とセンサの測定系には依存せずに、対象物の分光反射率特性のみで定義されるのが、一般的である。すなわち、光源(基準光源L0)と、センサ(センサ103)と、対象物(検査対象物50)の特性のうち、対象物の特性のみで定義される。
したがって、基準光源L0の分光特性(例えば5500Kの色温度の光源の分光が、フラット分光から乖離している要素など)と、センサ103の分光特性(例えばRチャネルとIRチャネルの感度比など)を排除することが望ましい。そのため、基準光源L0の分光特性とセンサ103の分光感度特性のみを考慮した正規化用のスペクトル比率(R_Flat_5500K)をあらかじめ算出(測定)しておいて、記憶部133に記憶されるようにする。これにより、補正後の(測定光源L1下の検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)を、正規化用のスペクトル比率(R_Flat_5500K)により除算することで、基準光源L0とセンサ103の成分が正規化されることになる。
ただし、基準光源L0下におけるフラット分光での対象物の測定(センシング)を想定した場合のRチャネル値とIRチャネル値を、D_Flat_5500K_R,D_Flat_5500K_IRとした場合に、正規化用のスペクトル比率(R_Flat_5500K)は、下記の式(26)を演算することで求められる。
R_Flat_5500K = D_Flat_5500K_R / D_Flat_5500K_IR ・・・(26)
図24の説明に戻り、正規化部132は、記憶部133に記憶された正規化用のスペクトル比率(R_Flat_5500K)を示す情報を読み出す。正規化部132は、記憶部133から読み出された正規化用のスペクトル比率(R_Flat_5500K)に基づいて、補正処理部105(の測定光補正部114のゲイン補正部124)から供給される補正後の(測定光源L1下の検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)を正規化し、正規化後のスペクトル比率(R_ISP_norm)を、NDVI値算出部131に供給する。
NDVI値算出部131は、正規化部132から供給される正規化後のスペクトル比率(R_ISP_norm)に基づいて、検査対象物50の検査指標としての正規化植生指数(NDVI値)を算出し、出力する。
なお、図24においては、補正処理部105の記憶部112と、検査指標算出部106の記憶部133は、説明の都合上、別々の記憶部として構成されているが、1つの記憶部として構成されるようにしてもよい。
(検査指標の第2の測定処理)
次に、図25のフローチャートを参照して、図24の植生検査装置10により実行される、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の第2の測定処理について説明する。
ステップS151乃至S157においては、図23のステップS131乃至S137と同様に、基準光源L0と測定光源L1での基準反射板101のスペクトル比率(R_Ref_5500K,R_Ref_env)に応じた補正ゲイン(G_Ref_env)が算出され、この補正ゲイン(G_Ref_env)を用いて、測定光源L1での検査対象物50の測定スペクトル比率(R_ISP_env)が補正される。
なお、図25においても、植生検査装置10がステップS152の処理において測定光源L1下で、基準反射板101を測定し、ステップS155の処理において測定光源L1下で、検査対象物50を測定する処理の流れとなっているが、基準反射板101と検査対象物50を同時に測定する場合には、ステップS155の処理は、ステップS152の処理と同じタイミングで行われる。すなわち、植生検査装置10は、ステップS152とステップS155の測定処理を同時に行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。なお、ステップS153,S154,S156などの各算出処理で測定結果が必要とされるよりも前のタイミングにおいて、ステップS152とステップS155の測定処理が行われる。
ステップS158において、正規化部132は、ステップS157の処理で補正された(測定光源L1での検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)に対して、光源・センサ成分の正規化を行う。
具体的には、正規化部132は、記憶部133にあらかじめ記憶されている正規化用のスペクトル比率(R_Flat_5500K)を示す情報を読み出す。そして、正規化部132は、記憶部133から読み出された正規化用のスペクトル比率(R_Flat_5500K)を用いて、下記の式(27)を演算することで、補正後の(測定光源L1での検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_env_comp)に対する光源・センサ成分の正規化を行う。
R_ISP_norm = R_ISP_env_comp / R_Flat_5500K ・・・(27)
ステップS159において、NDVI値算出部131は、ステップS158の処理で正規化された(補正後の検査対象物50の)測定スペクトル比率(R_ISP_norm)を用いて、下記の式(28)を演算することで、検査対象物50の検査指標としての正規化植生指数(NDVI値)を算出する。
NDVI = (1 - R_ISP_norm) / (1 + R_ISP_norm) ・・・(28)
以上、検査指標の第2の測定処理について説明した。この検査指標の第2の測定処理においては、基準光源L0と測定光源L1での基準反射板101のスペクトル比率(R_Ref_5500K,R_Ref_env)に応じた補正ゲイン(G_Ref_env)が算出され、この補正ゲイン(G_Ref_env)を用いて、測定光源L1での検査対象物50のスペクトル比率(R_ISP_env)が補正され、この補正後のスペクトル比率(R_ISP_env_comp)が正規化され、この正規化後のスペクトル比率(R_ISP_norm)を用いて、検査対象物50の検査指標(NDVI値)が算出される。
ここで、図26乃至図29を参照して、本技術の基準反射板101を用いることによる光源依存性の除去についてより詳細に説明する。図26は、3種類の基準反射板101の分光反射率特性を示す図である。
図26において、3種類の基準反射板101のうち、理想的な基準反射板101Iは、その分光反射率特性として、検査対象物50(植物)の分光反射率に応じた特性(ほぼ等しい特性)を有している。この理想的な基準反射板101Iを用いて測定光補正を行った場合における、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)のNDVI値を、図27に示している。
図27においては、5500Kの色温度の光源が基準光源L0となり、2800Kの色温度の光源と10000Kの色温度の光源が測定光源L1となるが、それらの異なる色温度の光源下において測定された各植物のNDVI値は、近似した値となっている。すなわち、各植物のNDVI値の間に生じる差が小さいほど、各色温度の光源の依存性がより良好に除去されていると言えるため、理想的な基準反射板101Iを用いることで、光源依存性を良好に除去することができる。
また、図26には、比較のために、理想的な基準反射板101Iの他に、高性能な基準反射板101Hと、他の基準反射板101Oの分光反射率特性が示されている。高性能な基準反射板101Hは、理想的な基準反射板101Iの分光反射率特性と比べれば、検査対象物50(植物)の分光反射率特性と同じ特性を有しているとは言えないが、比較的近い特性(許容範囲内の特性)を有している。
この高性能な基準反射板101Hを用いて測定光補正を行った場合における、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)のNDVI値を、図28に示している。図28においては、基準光源L0(5500Kの色温度の光源)と、測定光源L1(2800K,10000Kの色温度の光源)下において測定された各植物のNDVI値は、近似した値となっている。すなわち、高性能な基準反射板101Hを用いることで、光源依存性を良好に除去することができる。
図26に戻り、他の基準反射板101Oは、検査対象物50(植物)の分光反射率特性とは、異なる特性を有している。この他の基準反射板101Oを用いて測定光補正を行った場合における、植生の異なる同じ種別の植物(植物A,植物B,植物C)のNDVI値を、図29に示している。図29においては、基準光源L0(5500Kの色温度の光源)と、測定光源L1(2800K,10000Kの色温度の光源)下において測定された各植物のNDVI値は、大きく差のある値(異なる値)となっている。すなわち、他の基準反射板101Oを用いた場合には、測定光補正に誤差が生じてしまい、光源依存性を除去することはできない。
このように、理想的な基準反射板101Iと、高性能な基準反射板101Hを用いた場合には、光源依存性を良好に除去することができる。すなわち、分光反射率設計装置20(図7)により設計される基準反射板101としては、理想的な基準反射板101Iを作成することが理想ではあるが、そのような検査対象物50の分光反射率特性を正確に反映した基準反射板101Iを作成することができない場合でも、検査対象物50の分光反射率特性にある程度近い特性(許容範囲内の特性)を有している高性能な基準反射板101Hを作成すれば、この基準反射板101Hによって、光源依存性を除去することが可能となる。つまり、基準反射板101は、植物等の検査対象物50の特性を認識した上で、作成されることになる。
また、複数の基準反射板101が存在する場合には、複数の基準反射板101の中から、理想的な基準反射板101I(又は高性能な基準反射板101H)に準じた基準反射板101を選択することで、選択された基準反射板101によって、光源依存性を除去することが可能となる。
さらに、分光反射率の第2の設計処理(図9)により決定された目標分光反射率に応じて作成された基準反射板101を用いた場合、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が、植物の特性変動の最小値(最小反射率)を保持するように、基準反射板101の設計が行われているため、検査指標の測定処理(図23,図25)において、測定時の露出制御対象を、検査対象物50(植物)に合わせて露出制御を行うことで、基準反射板101の測定値は、必ず飽和しないことが保証されることになる。その結果として、すべての対象物(検査対象物50(植物)と基準反射板101)の測定値(Rチャネル値とIRチャネル値)を、センサ103のダイナミックレンジ内に入れる(飽和させない)ことが可能となる。
一方で、分光反射率の第3の設計処理(図14)により決定された目標分光反射率に応じて作成された基準反射板101を用いた場合、平均分光反射率O_PLT_AVE(λ)が、植物の特性変動の最大値(最大反射率)を保持するように、基準反射板101の設計が行われているため、検査指標の測定処理(図23,図25)において、測定時の露出制御対象を、基準反射板101に合わせて露出制御を行うことで、検査対象物50(植物)の測定値は、必ず飽和しないことが保証されることになる。その結果として、すべての対象物(検査対象物50(植物)と基準反射板101)の測定値(Rチャネル値とIRチャネル値)を、センサ103のダイナミックレンジ内に入れる(飽和させない)ことが可能となる。
このようなことから、分光反射率の第2の設計処理(図9)又は分光反射率の第3の設計処理(図14)により決定された目標分光反射率に応じて作成された基準反射板101を用いた場合には、検査指標の測定処理(図23,図25)において、測定時の露出制御対象を、検査対象物50(植物)又は基準反射板101のいずれか一方とすればよく、検査対象物50(植物)と基準反射板101を別々に露出制御する必要がないため、簡便な露出制御を行うことができる。
<5.変形例>
(反射板をモザイク状に配置)
上述した説明では、基準反射板101は、1つの反射板から構成されるとして説明したが、2枚以上の反射板から構成されるようにしてもよい。図30は、2枚の反射板をモザイク状に配した基準反射板101を示す図である。図30において、基準反射板101は、反射率の異なる反射板1と反射板2が、空間的にモザイク状に配置されて構成されている。
図31は、2枚の反射板がモザイク状に配された基準反射板101の合成反射率特性を示す図である。図31において、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は反射率を表している。図31に示すように、反射板1と反射板2は、それぞれ異なる反射率を有しており、これらの反射率を合成することで、合成反射率が得られる(図31の実線のグラフ)。このようにして得られる合成反射率が、目標分光反射率として決定され、この目標分光反射率に応じた基準反射板101が作成される。
すなわち、分光反射率の設計処理において、基準反射板101を作成するための目標分光反射率が、1つの反射板では実現できない場合に、複数の反射板を組み合わせて、それらの反射板の反射率を合成することで、植物等の検査対象物50の特性に応じた目標分光反射率を実現できるようにする。換言すれば、反射板1と反射板2のRチャネル値とIRチャネル値を測定して、重み付け加算又は空間的に積分することで、等価的に、それぞれの反射板の分光反射率を重み付け加算した特性を有する反射板(仮想的な反射板)を測定(センシング)して、Rチャネル値とIRチャネル値を測定することと等価とされる。
なお、図30と図31においては、反射板1と反射板2の2枚の反射板が配される例を示したが、2枚以上の複数の反射板を組み合わせて、基準反射板101が構成されるようにすることができる。また、複数の反射板の配置方法であるが、モザイク状の配置に限らず、目標分光反射率を実現できるような他の配置を採用するようにしてもよい。さらに、例えば、上述した重み付け加算時の重みや、基準反射板101に配される反射板1と反射板2との間の面積比を変更するなどにより、基準反射板101の合成反射率特性が変更されるようにしてもよい。
(基準反射板の取り付け例)
基準反射板101は、センサ103により測定可能な位置に設置されるが、例えば、センサ103を搭載したカメラの前方の所定の位置に取り付けることができる。図32は、カメラの前方に基準反射板101を取り付けた場合の例を示す図である。
図32のAにおいて、植生検査装置10としてのカメラには、棒状の部材が取り付けられ、その先端(対象物側の先端)に、円形の形状からなる基準反射板101が取り付けられている。また、図32のBには、植生検査装置10としてのカメラにより測定(センシング)される対象物として、検査対象物50となるスタジアムの芝(芝生)と、円形の形状からなる基準反射板101とが、同一の画角内に存在していることを示している。
このような、検査対象物50と基準反射板101を同時に測定可能な状態で、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の測定処理(図23,図25)は実行される。これにより、例えば、植生検査装置10としてのカメラにより、スタジアムの芝(芝生)と、基準反射板101とを同時に測定(センシング)するだけで、カメラの画角内の芝の正規化植生指数(NDVI値)が得られるので、その結果を表示することで、迅速にスタジアムの芝の状態を確認することができる。
なお、測定光源L1下における検査対象物50の検査指標の測定処理(図23,図25)に先行して、基準光源L0下における基準反射板101の測定処理(図20)を実行しておく必要があるが、この測定処理(図20)は、基準反射板101のみが画角内に存在している状態で実行される。
ただし、基準光源L0下における基準反射板101の測定処理(図20)は、基準反射板101を作成し、その基準反射板101を使用するカメラ(植生検査装置10)を決定した時点で、一度だけ必要となる処理であり、一旦、記憶部112に、基準光源L0(例えば5500Kの色温度の光源)下における基準反射板101の基準スペクトル比率(R_Ref_5500K)を記憶してしまえば、それ以降は、基準反射板101とカメラ(植生検査装置10)との組み合わせを変えない限りは、処理を行う必要はない。
また、図32においては、基準反射板101の形状が円形であるとして説明したが、基準反射板101は、検査対象物50(図32の例では芝(芝生))の分光反射率特性に応じた特性を有していれば、その形状は、例えば楕円形や四角形等の他の形状であってもよい。
なお、上述したカメラ(植生検査装置10)としては、例えば、レンズを介して入射される光(反射光)を複数の波長帯に分光してそれぞれの光を2次元のセンサ面上に結像することで、マルチスペクトルの信号を得るマルチスペクトルカメラを用いることができる。また、上述したカメラ(植生検査装置10)には、マルチスペクトルカメラのほか、例えば、いわゆるハイパースペクトルカメラなどの分光センシング機能を有するカメラを用いることができる。
(検査対象物と検査指標)
上述した説明では、検査対象物50として、植物(例えば芝など)を例に説明したが、検査対象物50は、植物以外の対象物であってもよい。例えば、食品の製造工場において、本技術の検査装置(植生検査装置10)によって、製造される食品を、検査対象物50として検査指標を測定することで、工場内の光源に依存せずに、食品の検査指標を測定することができる。これにより、例えば、工場内の照明光が変化した場合でも、食品のランク分けを行うことができる。
また、上述した説明では、植物を検査対象物50としたときの検査指標として、正規化植生指数(NDVI値)を一例に説明したが、正規化植生指数(NDVI値)以外の他の植生指数が測定されるようにしてもよい。例えば、他の植生指数としては、比植生指数(RVI:Ratio Vegetation Index)や差植生指数(DVI:Difference Vegetation Index)などを用いることができる。
ここで、比植生指数(RVI値)は、下記の式(29)を演算することで算出される。
RVI = IR / R ・・・(29)
また、差植生指数(DVI値)は、下記の式(30)を演算することで算出される。
DVI = IR - R ・・・(30)
ただし、式(29)と、式(30)において、IRは、近赤外領域の反射率を表し、Rは、可視領域赤の反射率を表している。なお、ここでは、IRとRをパラメータとする植生指数のみを例示しているが、赤以外の他の可視領域の光の反射率などをパラメータとして用いて他の植生指数を測定することは、勿論可能である。スペクトル比率は、RとIRとの組み合わせには限られるものではない。センサ103からは、RGBIRの出力として、RとIR以外のGやB等、他の波長帯域の成分が出力されてもよい。
(植生検査装置の他の構成例)
図33には、植生検査装置10が、センサ103、補正処理部105、及び、検査指標算出部106を有する場合の構成が示されている。この構成は、上述した図22の構成に対応しており、植生検査装置10が、センサ103や補正処理部105、検査指標算出部106等のすべての機能を有している場合の構成となる。
上述した説明では、図33に示した構成のように、植生検査装置10がすべての機能を有する場合について説明したが、植生検査装置10(図1)の一部の機能を、他の装置が有するようにしてもよい。以下、図34乃至図36を参照して、植生検査装置10(図1)の一部の機能を、他の装置が有する場合の構成について説明する。なお、図34乃至図36において、上述した図22を構成するブロックと同一の部分には同一の符号が付してあり、その説明は適宜省略する。また、図示はしないが、図24の構成の場合も同様である。
(植生検査システムの第1の構成例)
図34は、植生検査システムの第1の構成例を示す図である。
図34において、植生検査システム11は、測定装置60及び処理装置70から構成される。ここで、測定装置60と処理装置70は、共に通信機能を有しており、所定の規格に準拠した無線通信又は有線通信を利用して、データをやりとりすることができる。例えば、処理装置70が、インターネット上に設けられたサーバである場合、測定装置60は、インターネットを介して処理装置70にアクセスし、データを送信することになる。
測定装置60は、センサ103、補正処理部105、及び、通信部107から構成される。また、補正処理部105は、記憶部112、補正ゲイン算出部113、及び、測定光補正部114から構成される。
補正ゲイン算出部113は、記憶部112に記憶された基準スペクトル比率(R/IR比率)を参照して、センサ103からの出力値から算出される基準反射板101の測定スペクトル比率(R/IR比率)に応じた補正ゲインを算出し、測定光補正部114に供給する。
測定光補正部114は、補正ゲイン算出部113からの補正ゲインを用い、センサ103からの出力値から算出される検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を補正し、通信部107に供給する。通信部107は、測定光補正部114から供給される補正後の(検査対象物50の)測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を、例えば無線通信等を利用して、処理装置70に送信する。
処理装置70は、検査指標算出部106及び通信部108から構成される。また、検査指標算出部106は、NDVI値算出部131から構成される。通信部108は、測定装置60から送信されてくる、補正後の(検査対象物50の)測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を受信し、NDVI値算出部131に供給する。NDVI値算出部131は、通信部108から供給される補正後の(検査対象物50の)測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を用い、検査対象物50の検査指標としての正規化植生指数(NDVI値)を算出して出力する。
(植生検査システムの第2の構成例)
図35は、植生検査システムの第2の構成例を示す図である。
図35において、植生検査システム11は、測定処理装置80及び記憶装置90から構成される。ここで、測定処理装置80と記憶装置90は、共に通信機能を有しており、所定の規格に準拠した無線通信又は有線通信を利用して、データをやりとりすることができる。例えば、記憶装置90が、インターネット上に設けられたサーバである場合、測定処理装置80は、インターネットを介して記憶装置90にアクセスし、データを受信することになる。
測定処理装置80は、センサ103、補正処理部105、検査指標算出部106、及び、通信部107から構成される。また、補正処理部105は、補正ゲイン算出部113、及び、測定光補正部114から構成される。検査指標算出部106は、NDVI値算出部131から構成される。
通信部107は、検査対象物50の測定時に、例えば無線通信等を利用して、記憶装置90から基準スペクトル比率(R/IR比率)を受信し、補正ゲイン算出部113に供給する。補正ゲイン算出部113は、通信部107から供給される基準スペクトル比率(R/IR比率)を参照して、センサ103からの出力値から算出される基準反射板101の測定スペクトル比率(R/IR比率)に応じた補正ゲインを算出し、測定光補正部114に供給する。
測定光補正部114は、補正ゲイン算出部113からの補正ゲインを用い、センサ103からの出力値から算出される検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を補正し、検査指標算出部106に供給する。NDVI値算出部131は、測定光補正部114から供給される補正後の(検査対象物50の)測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を用い、検査対象物50の検査指標としての正規化植生指数(NDVI値)を算出して出力する。
例えば、基準スペクトル比率(R/IR比率)が、測定処理装置80と異なる他の装置で算出される場合には、当該他の装置により算出された基準スペクトル比率(R/IR比率)が、記憶装置90に記憶される。ただし、当該他の装置が直接、基準スペクトル比率(R/IR比率)を、測定処理装置80に提供するようにしてもよい。また、記憶装置90は、基準スペクトル比率(R/IR比率)のほか、正規化用のスペクトル比率を記憶するようにしてもよい。また、基準スペクトル比率や正規化用のスペクトル比率は、測定処理装置80とは異なる別の装置に転用することも可能である。
(植生検査システムの第3の構成例)
図36は、植生検査システムの第3の構成例を示す図である。
図36において、植生検査システム11は、測定装置60及び処理装置70から構成される。ここで、測定装置60と処理装置70は、共に通信機能を有しており、所定の規格に準拠した無線通信又は有線通信を利用して、データをやりとりすることができる。例えば、処理装置70が、インターネット上に設けられたサーバである場合、測定装置60は、インターネットを介して処理装置70にアクセスし、データを送信することになる。
測定装置60は、センサ103及び通信部107から構成される。センサ103は、基準反射板101と検査対象物50のRチャネル値とIRチャネル値を測定し、通信部107に供給する。通信部107は、センサ103から供給されるRチャネル値とIRチャネル値を、例えば無線通信等を利用して、処理装置70に送信する。
処理装置70は、補正処理部105、検査指標算出部106、及び、通信部108から構成される。また、補正処理部105は、記憶部112、補正ゲイン算出部113、及び、測定光補正部114から構成される。検査指標算出部106は、NDVI値算出部131から構成される。
通信部108は、測定装置60から送信されてくる、基準反射板101と検査対象物50のRチャネル値とIRチャネル値を受信し、基準反射板101のRチャネル値とIRチャネル値を補正ゲイン算出部113に供給し、検査対象物50のRチャネル値とIRチャネル値を測定光補正部114に供給する。
補正ゲイン算出部113は、記憶部112に記憶された基準スペクトル比率(R/IR比率)を参照して、通信部108からの各チャネル値から算出される基準反射板101の測定スペクトル比率(R/IR比率)に応じた補正ゲインを算出し、測定光補正部114に供給する。
測定光補正部114は、補正ゲイン算出部113からの補正ゲインを用い、通信部108からの各チャネル値から算出される検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を補正し、NDVI値算出部131に供給する。NDVI値算出部131は、測定光補正部114から供給される補正後の(検査対象物50の)測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を用い、検査対象物50の検査指標としての正規化植生指数(NDVI値)を算出して出力する。
なお、システムとは、複数の装置が論理的に集合した物をいう。また、図34乃至図36の構成は、植生検査装置10が有する機能の一部を他の装置が有する場合の構成の一例であって、他の構成を採用することもできる。例えば、図35と図36の構成において、検査指標算出部106(のNDVI値算出部131)が他の装置により提供されるようにすることができる。
また、図33の植生検査装置10、又は、図34乃至図36の植生検査システム11(の処理装置70又は測定処理装置80)において、検査指標算出部106の後段に、表示制御部(不図示)を設けて、当該表示制御部が、検査指標算出部106(のNDVI算出部131)により算出された正規化植生指数(NDVI値)に基づいて、NDVI画像を表示部(不図示)に表示させるようにしてもよい。ただし、NDVI画像を表示する表示部は、植生検査装置10又は植生検査システム11(の処理装置70又は測定処理装置80)の内部に設けられてもよいし、それらの装置の外部に設けられる表示装置(不図示)であってもよい。
(測定装置の具体例)
図37には、図34又は図36の測定装置60の具体例として、定点観測を行う定点測定装置60Aと、移動観測を行う移動測定装置60Bと、人工衛星からの測定を行う衛星測定装置60Cを例示している。
図37のAに示した定点測定装置60Aは、固定脚61Aによって、検査対象物50を測定(センシング)することが可能な位置に固定され、そこで測定された測定信号(測定値)を、例えば無線通信等を利用して、処理装置70(図34又は図36)に送信する。処理装置70は、定点測定装置60Aから送信されてくる測定信号を処理することで、定点測定装置60Aにより定点測定された検査対象物50の検査指標(NDVI値)を求めることができる。
図37のBに示した移動測定装置60Bは、例えば無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)であって、プロペラ状の回転翼61Bが回転することで飛行し、上空から、検査対象物50を測定(空撮)する。移動測定装置60Bは、そこで測定された測定信号(測定値)を、例えば無線通信等を利用して、処理装置70(図34又は図36)に送信する。処理装置70は、移動測定装置60Bから送信されてくる測定信号を処理することで、移動測定装置60Bにより移動測定された検査対象物50の検査指標(NDVI値)を求めることができる。
なお、移動測定装置60Bは、無線操縦のほか、例えば、飛行ルートを座標データとしてあらかじめ記憶しておくことで、GPS(Global Positioning System)などの位置情報を用いて自律飛行するようにしてもよい。また、図37のBでは、移動測定装置60Bが、回転翼61Bを有する回転翼機であるとして説明したが、移動測定装置60Bは、固定翼機であってもよい。
図37のCに示した衛星測定装置60Cは、人工衛星61Cに搭載される。この人工衛星61Cにおいて、衛星測定装置60Cによる測定(人工衛星61Cからの撮像)で得られる測定信号(例えば衛星画像に応じた測定値)は、所定の通信経路を介して処理装置70(図34又は図36)に送信される。処理装置70は、衛星測定装置60Cから送信されてくる測定信号を処理することで、人工衛星61Cから測定された検査対象物50の検査指標(NDVI値)を求めることができる。
(基準透過板を用いた測定)
ところで、上述した説明では、植生検査装置10が、基準反射板101を利用して、検査対象物50の検査指標(NDVI値)を算出する場合について説明したが、基準反射板101の反射率特性の代わりに、透過率特性を利用することができる。
例えば、検査対象物50の分光反射率特性に近い分光透過率特性を有する透過フィルタ(以下、基準透過板という)を用いることで、基準反射板101を用いた場合と同様に、補正ゲインを求めて、測定光源L1での検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を補正して、検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定時における光源依存性を除去することができる。
上述した説明では、基準反射板101の設計処理として、分光反射率の第1の設計処理乃至第3の設計処理を説明したが、これらの設計処理と同様にして、基準透過板の設計を行うことができる。
すなわち、分光反射率の第1の設計処理(図8)では、植生の異なる植物の平均分光反射率を、目標分光反射率として、基準反射板101を設計していた。ここで、基準透過板を用いる場合には、植生の異なる植物の平均分光透過率を、目標分光透過率として、基準透過板を設計すればよい。
また、分光反射率の第2の設計処理(図9乃至図13)では、平均分光反射率に、最小反射率に応じた調整ゲインを乗じることで算出される分光反射率特性を、目標分光反射率として、基準反射板101を設計していた。ここで、基準透過板を用いる場合には、平均分光透過率に、最小透過率に応じた調整ゲインを乗じることで算出される分光透過率特性を、目標分光透過率として、基準透過板を設計すればよい。
また、分光反射率の第3の設計処理(図14乃至図18)では、平均分光反射率に、最大反射率に応じた調整ゲインを乗じることで算出される分光反射率特性を、目標分光反射率として、基準反射板101を設計していた。ここで、基準透過板を用いる場合には、平均分光透過率に、最大透過率に応じた調整ゲインを乗じることで算出される分光透過率特性を、目標分光透過率として、基準透過板を設計すればよい。
以下、基準反射板101の代わりに、上述の設計処理で設計される基準透過板を用いて、検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定を行う場合の構成について説明する。
ただし、基準透過板を用いた測定では、基準透過板からの透過光を測定するためのセンサ103を設ける必要があるため、複数のセンサ103が必要となる。この場合において、複数のセンサ103を同一の筐体内に内蔵した構成(以下、単眼の構成という)と、複数のセンサ103を別々の筐体内に格納した構成(以下、複眼の構成という)とがある。以下の説明では、単眼の構成と、複眼の構成について、その順に説明する。
(1)単眼の構成の場合
(植生検査装置の構成)
図38は、単眼の構成を採用した場合の植生検査装置の外観の構成例を示す斜視図である。
図38において、植生検査装置12では、その筐体の左側面側と上面側に、光入射部12Aと光入射部12Bが形成され、そこから光が入射される。また、植生検査装置12の内部には、センサ103−1とセンサ103−2が設けられている。なお、光入射部12Aと光入射部12Bは、内部がくり抜かれた円筒状の形状からなるが、カバーとしての役割も有している。
すなわち、植生検査装置12において、光入射部12A側からの光(反射光)は、光軸Laに沿って入射され、センサ103−1のセンサ面により受光される。そして、センサ103−1は、検査対象物50からの光(反射光)に応じたRチャネル値とIRチャネル値を測定し、その結果得られる測定信号(測定値)を、後段の補正処理部105に出力する。
また、植生検査装置12において、光入射部12B側からの光(太陽光)は、光軸Lbに沿って入射される。
ここで、図38の点線で表された円Cの内側には、植生検査装置12における光入射部12B側の一部を拡大して図示している。ここに示すように、円筒状の形状からなる光入射部12Bの内側には、光軸Lb上に、基準透過板151が設けられる。基準透過板151は、例えば、上述した分光反射率の第1の設計処理乃至第3の設計処理(図7乃至図18)と同様の設計処理で設計され、平均分光透過率特性、最小透過率に応じた分光透過率特性、又は最大透過率に応じた分光透過率特性を有している。なお、光入射部12Bにおいて、基準透過板151は、図中の矢印の方向に取り付けられる。
すなわち、光入射部12B側からの光(太陽光)は、基準透過板151により透過され、その透過光が、センサ103−2のセンサ面により受光される。そして、センサ103−2は、基準透過板151により透過された光(透過光)に応じたRチャネル値とIRチャネル値を測定し、その結果得られる測定信号(測定値)を、後段の補正処理部105に出力する。
以上のように、植生検査装置12では、単眼の構成を採用しているため、同一の筐体内に設けられたセンサ103−1とセンサ103−2によって、検査対象物50により反射された反射光と、基準透過板151により透過された透過光とが測定される。次に、図39を参照して、図38に示した植生検査装置12の内部の詳細な構成について説明する。
図39において、植生検査装置12は、基準透過板151、レンズ102、センサ103−1及びセンサ103−2、露出制御部104−1及び露出制御部104−2、補正処理部105、及び、検査指標算出部106から構成される。
ただし、図39の植生検査装置12において、上述した図1の植生検査装置10を構成するブロックと同一の部分には、同一の符号が付してあり、その説明は適宜省略する。
すなわち、図39においては、図1と比べて、基準反射板101の代わりに、基準透過板151が設けられ、さらに、レンズ102側の系列に設けられるセンサ103−1と露出制御部104−1とは別に、基準透過板151側の系列にも、センサ103−2と露出制御部104−2が設けられている。なお、上述したように、レンズ102とセンサ103−1とは、光軸La上に設けられる。また、基準透過板151とセンサ103−2とは、光軸Lb上に設けられる。
図39において、基準透過板151は、例えば、ディフューズ板(拡散板)などから構成される。例えば、基準透過板151は、上述した分光反射率の第1の設計処理乃至第3の設計処理(図7乃至図18)と同様の設計処理で設計されることで、平均分光透過率特性、最小透過率に応じた分光透過率特性、又は最大透過率に応じた分光透過率特性を有している。
なお、基準透過板151としては、検査対象物50の分光反射率特性に近い分光透過率特性を有する透過板を用いることもできるが、図30に示した基準反射板101と同様に、測定したい波長ごとに複数の透過板から構成されるようにしてもよい。
センサ103−1は、センサ103(図1)と同様に、レンズ102を介して入射される、検査対象物50からの光(反射光)を検出し、その結果得られる測定信号(測定値)を出力する。露出制御部104−1は、露出制御部104(図1)と同様に、レンズ102やセンサ103−1の各部を制御することで、露出制御を行う。
センサ103−2は、センサ103(図1)と同様に、基準透過板151により透過される光(透過光)を検出し、その結果得られる測定信号(測定値)を出力する。露出制御部104−2は、露出制御部104(図1)と同様に、センサ103−2の各部を制御することで、露出制御を行う。
補正処理部105は、センサ103−1及びセンサ103−2から供給される測定信号(測定値)に基づいて、Rチャネル値とIRチャネル値とのスペクトル比率(R/IR比率)を補正する補正処理を行い、その補正後のスペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を、検査指標算出部106に供給する。
検査指標算出部106は、補正処理部105から供給される補正後の検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を用い、検査対象物50の検査指標(NDVI値)を算出して出力する。
植生検査装置12は、以上のように構成される。
ここで、この植生検査装置12により実行される処理を具体的に説明すると、次のようになる。すなわち、植生検査装置12においては、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定に先行して、基準光源L0での基準透過板151の基準スペクトル比率(R/IR比率)があらかじめ求められる。ここでは、上述の図19及び図20に示した基準光源L0での基準反射板101の測定と同様に、基準光源L0での基準透過板151の測定が行われる。
その後、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定の際に、植生検査装置12では、基準透過板151の基準スペクトル比率(R/IR比率)と、測定光源L1での基準透過板151の測定スペクトル比率(R/IR比率)から求められる補正ゲインを用いて、測定光源L1での検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)が補正され、検査対象物50の検査指標(NDVI値)が測定される。
ここでは、上述の図22及び図23、又は図24及び図25に示した測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定と同様に、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定が行われる。このように、植生検査装置12においては、検査対象物50に応じた特性を有する基準透過板151を用いて算出される補正ゲインに基づいた補正が行われることで、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定時における光源依存性を除去することが可能となる。
また、光源(太陽光)の変化を補正するために、基準反射板101を用いた場合には、その鏡面反射の影響を取り除く必要があるが、植生検査装置12では、基準反射板101の代わりに、基準透過板151を用いて、光源(太陽光)をダイレクトに測定しているため、基準反射板101を用いた場合のような、鏡面反射の影響を考慮する必要はない。
ただし、植生検査装置12では、同一の筐体内に、センサ103−1とセンサ103−2の複数のセンサが設けられているため、センサごとに、例えばRチャネルとIRチャネルの感度比などの分光特性にバラツキが生じることも想定される。そこで、植生検査装置12では、図24に示した構成を採用して、例えば、基準光源L0の分光特性と、センサ103−1及びセンサ103−2の分光特性を考慮した正規化用のスペクトル比率をあらかじめ算出しておくことが望ましい。これにより、植生検査装置12では、補正後の測定スペクトル比率を、あらかじめ算出しておいた正規化用のスペクトル比率により除算して、基準光源L0と各センサの成分を正規化することが可能となり、センサごとの分光特性のバラツキを抑制することができる。
(2)複眼の構成の場合
(植生検査装置の構成)
図40は、複眼の構成を採用した場合の植生検査装置の外観の構成例の斜視図である。
図40において、植生検査装置13は、測定部14、測定部15、及び、処理部16から構成される。また、植生検査装置13において、測定部14と処理部16、及び、測定部15と処理部16とは、所定のインターフェースを介して接続されている。
図40において、測定部14には、その筐体の左側面側に、内部がくり抜かれた円筒状の形状からなる光入射部14Aが形成され、そこから光が入射される。また、測定部14の内部には、センサ103−1が設けられている。
すなわち、測定部14において、光入射部14A側からの光(反射光)は、光軸Lcに沿って入射され、センサ103−1のセンサ面により受光される。そして、センサ103−1は、検査対象物50からの光(反射光)に応じたRチャネル値とIRチャネル値を測定し、その結果得られる測定値を、所定のインターフェースを介して、処理部16に出力する。
測定部15には、その筐体の上面側に、内部がくり抜かれた円筒状の形状からなる光入射部15Aが形成され、そこから光が入射される。また、測定部15の内部には、センサ103−2が設けられている。すなわち、測定部15において、光入射部15A側からの光(太陽光)は、光軸Ldに沿って入射される。
ここで、図40の点線で表された円Cの内側には、測定部15における光入射部15A側の一部を拡大して図示している。ここに示すように、円筒状の形状からなる光入射部15Aの内部には、光軸Ld上に、基準透過板171が設けられる。基準透過板171は、基準透過板151(図38)と同様に、例えば、平均分光透過率特性、最小透過率に応じた分光透過率特性、又は最大透過率に応じた分光透過率特性を有している。
すなわち、測定部15において、光入射部15A側からの光(太陽光)は、基準透過板171により透過され、その透過光が、センサ103−2のセンサ面により受光される。そして、センサ103−2は、基準透過板171により透過された光(透過光)に応じたRチャネル値とIRチャネル値を測定し、その結果得られる測定値を、所定のインターフェースを介して、処理部16に出力する。
処理部16は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)やパーソナルコンピュータなどから構成される。処理部16には、測定部14と測定部15から、所定のインターフェースを介して測定値が入力される。処理部16は、測定部14と測定部15からの測定値に基づいて、検査対象物50の検査指標(NDVI値)を求める。
以上のように、植生検査装置13では、複眼の構成を採用しているため、異なる筐体内に設けられたセンサ103−1とセンサ103−2によって、検査対象物50により反射された反射光と、基準透過板171により透過された透過光とが測定される。次に、図41を参照して、図40に示した植生検査装置13の内部の詳細な構成について説明する。
図41において、植生検査装置13は、測定部14、測定部15、及び、処理部16から構成される。測定部14は、レンズ102、センサ103−1、露出制御部104−1、及び、I/F部172−1から構成される。また、測定部15は、基準透過板171、センサ103−2、露出制御部104−2、及び、I/F部172−2から構成される。また、処理部16は、補正処理部105、及び、検査指標算出部106から構成される。
ただし、図41の植生検査装置12において、上述した図1の植生検査装置10を構成するブロックと同一の部分には、同一の符号が付してあり、その説明は適宜省略する。すなわち、図41においては、図1と比べて、その構成要素が、測定部14と、測定部15と、処理部16とに分かれて配置されるとともに、測定部14及び測定部15と、処理部16との接続部に、I/F部172−1とI/F部172−2が設けられている。
また、図41においては、図1と比べて、基準反射板101の代わりに、基準透過板171が設けられ、さらに、レンズ102側の系列に設けられるセンサ103−1と露出制御部104−1とは別に、基準透過板171側の系列にも、センサ103−2と露出制御部104−2が設けられている。なお、上述したように、レンズ102とセンサ103−1とは、光軸Lc上に設けられる。また、基準透過板171とセンサ103−2とは、光軸Ld上に設けられる。
測定部14において、センサ103−1は、レンズ102を介して入射される、検査対象物50からの光(反射光)を検出し、その結果得られる測定値を出力する。露出制御部104−1は、レンズ102やセンサ103−1の各部を制御することで、露出制御を行う。I/F部172−1は、センサ103−1からの測定値を、処理部16に出力する。
測定部15において、センサ103−2は、基準透過板171により透過される光(透過光)を検出し、その結果得られる測定値を出力する。露出制御部104−2は、センサ103−2の各部を制御することで、露出制御を行う。I/F部172−2は、センサ103−2からの測定値を、処理部16に出力する。
処理部16において、補正処理部105には、測定部14のI/F部172−1からの測定値と、測定部15のI/F部172−2からの測定値が入力される。
補正処理部105は、測定部14及び測定部15から入力される測定値に基づいて、Rチャネル値とIRチャネル値とのスペクトル比率(R/IR比率)を補正する補正処理を行い、その補正後のスペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を、検査指標算出部106に供給する。
検査指標算出部106は、補正処理部105から供給される補正後の検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)を示す情報を用い、検査対象物50の検査指標(NDVI値)を算出して出力する。
植生検査装置13は、以上のように構成される。
ここで、この植生検査装置13により実行される処理を具体的に説明すると、次のようになる。すなわち、植生検査装置13においては、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定に先行して、基準光源L0での基準透過板171の基準スペクトル比率(R/IR比率)があらかじめ求められる。ここでは、上述の図19及び図20に示した基準光源L0での基準反射板101の測定と同様に、基準光源L0での基準透過板171の測定が行われる。
その後、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定の際に、植生検査装置13では、基準透過板171の基準スペクトル比率(R/IR比率)と、測定光源L1での基準透過板171の測定スペクトル比率(R/IR比率)から求められる補正ゲインを用いて、測定光源L1での検査対象物50の測定スペクトル比率(R/IR比率)が補正され、検査対象物50の検査指標(NDVI値)が測定される。
ここでは、上述の図22及び図23、又は図24及び図25に示した測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定と同様に、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定が行われる。このように、植生検査装置13においては、検査対象物50に応じた特性を有する基準透過板171を用いて算出される補正ゲインに基づいた補正が行われることで、測定光源L1での検査対象物50の検査指標(NDVI値)の測定時における光源依存性を除去することが可能となる。また、植生検査装置13においても、基準透過板171を用いているため、基準反射板101を用いた場合のような、鏡面反射の影響を考慮する必要はない。
ただし、植生検査装置13では、異なる筐体内に、センサ103−1とセンサ103−2の複数のセンサが設けられているため、植生検査装置12と同様に、センサごとに、分光特性にバラツキが生じることが想定される。そこで、植生検査装置13においても、植生検査装置12と同様に、図24に示した構成を採用して、正規化用のスペクトル比率をあらかじめ算出しておくことで、センサごとの分光特性のバラツキを抑制することができる。
<6.コンピュータの構成>
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。図42は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示す図である。
コンピュータ900において、CPU(Central Processing Unit)901,ROM(Read Only Memory)902,RAM(Random Access Memory)903は、バス904により相互に接続されている。バス904には、さらに、入出力インターフェース905が接続されている。入出力インターフェース905には、入力部906、出力部907、記録部908、通信部909、及び、ドライブ910が接続されている。
入力部906は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部907は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記録部908は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部909は、ネットワークインターフェースなどよりなる。ドライブ910は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブル記憶媒体911を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータ900では、CPU901が、ROM902や記録部908に記録されているプログラムを、入出力インターフェース905及びバス904を介して、RAM903にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ900(CPU901)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブル記憶媒体911に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線又は無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータ900では、プログラムは、リムーバブル記憶媒体911をドライブ910に装着することにより、入出力インターフェース905を介して、記録部908にインストールすることができる。また、プログラムは、有線又は無線の伝送媒体を介して、通信部909で受信し、記録部908にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM902や記録部908に、あらかじめインストールしておくことができる。
ここで、本明細書において、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に行われる必要はない。すなわち、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含む。また、プログラムは、1のコンピュータ(プロセッサ)により処理されるものであってもよいし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上述した複数の実施の形態の全て又は一部を組み合わせた形態を採用することができる。
また、本技術は、以下のような構成をとることができる。
(1)
検査対象物に応じた特性を有する基準反射板又は基準透過板の基準光源下における基準スペクトル情報、及び、測定光源下でのセンシングにより得られた前記基準反射板又は前記基準透過板の測定スペクトル情報に基づいて、スペクトルの補正ゲインを算出する補正ゲイン算出部と、
算出された前記補正ゲインに基づいて、前記測定光源下でのセンシングにより得られた前記検査対象物の測定スペクトル情報を補正する補正部と
を備える検査装置。
(2)
前記基準スペクトル情報は、基準スペクトル比率であり、
前記基準反射板又は前記基準透過板の測定スペクトル情報は、前記基準反射板又は前記基準透過板の測定スペクトル比率であり、
前記検査対象物の測定スペクトル情報は、前記検査対象物の測定スペクトル比率である
(1)に記載の検査装置。
(3)
前記基準反射板は、特性の異なる複数の前記検査対象物の分光反射率に応じた特性を有するとともに、前記基準スペクトル比率、前記基準反射板の測定スペクトル比率、及び、前記検査対象物の測定スペクトル比率の対象となる各成分に応じた波長帯域ごとに乗じられる調整ゲインを変更した特性を有している
(2)に記載の検査装置。
(4)
前記調整ゲインは、対象となる各成分に応じた波長帯域ごとに、その波長帯域内の分光反射率における平均反射率と、最小反射率又は最大反射率との比から求められる
(3)に記載の検査装置。
(5)
補正された前記検査対象物の測定スペクトル比率に基づいて、前記検査対象物の検査指標を算出する検査指標算出部をさらに備える
(2)乃至(4)のいずれかに記載の検査装置。
(6)
前記補正ゲイン算出部は、前記基準反射板又は前記基準透過板の基準スペクトル比率を、前記基準反射板又は前記基準透過板の測定スペクトル比率で除算することで、前記補正ゲインを算出し、
前記補正部は、前記検査対象物の測定スペクトル比率と、前記補正ゲインとを乗算することで、前記検査対象物の測定スペクトル比率を補正する
(2)乃至(5)のいずれかに記載の検査装置。
(7)
前記基準反射板と前記基準透過板のうち、前記基準反射板が用いられる場合に、前記測定光源下において、前記検査対象物と前記基準反射板とをセンシングするセンサ部をさらに備える
(1)乃至(6)のいずれかに記載の検査装置。
(8)
前記基準反射板は、空間的にモザイク状に配置された2枚以上の反射板を含む
(1)乃至(7)のいずれかに記載の検査装置。
(9)
前記検査対象物は、植物であり、
前記基準スペクトル比率、前記基準反射板又は前記基準透過板の測定スペクトル比率、及び、前記検査対象物の測定スペクトル比率は、R(赤)成分の値とIR(赤外)成分の値との比率であり、
前記検査指標は、正規化植生指数(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)である
(2)乃至(8)のいずれかに記載の検査装置。
(10)
あらかじめ算出された前記基準スペクトル比率を記憶する記憶部をさらに備え、
前記補正ゲイン算出部は、前記記憶部から読み出された前記基準スペクトル比率に基づいて、前記補正ゲインを算出する
(2)乃至(9)のいずれかに記載の検査装置。
(11)
前記センサ部は、前記検査対象物と前記基準反射板を同時にセンシングする
(7)に記載の検査装置。
(12)
前記基準反射板は、前記センサ部を有するカメラの画角内に存在するように、所定の位置に取り付けられる
(11)に記載の検査装置。
(13)
前記基準透過板は、特性の異なる複数の前記検査対象物の分光透過率に応じた特性を有するとともに、前記基準スペクトル比率、前記基準透過板の測定スペクトル比率、及び、前記検査対象物の測定スペクトル比率の対象となる各成分に応じた波長帯域ごとに乗じられる調整ゲインを変更した特性を有している
(2)に記載の検査装置。
(14)
前記調整ゲインは、対象となる各成分に応じた波長帯域ごとに、その波長帯域内の分光透過率における平均透過率と、最小透過率又は最大透過率との比から求められる
(13)に記載の検査装置。
(15)
前記基準反射板と前記基準透過板のうち、前記基準透過板が用いられる場合に、前記測定光源下において、前記検査対象物をセンシングする第1のセンサ部と、前記基準透過板をセンシングする第2のセンサ部とをさらに備える
(1)、(2)、(13)、又は(14)に記載の検査装置。
(16)
検査対象物に応じた特性を有する基準反射板又は基準透過板の基準光源下における基準スペクトル情報、及び、測定光源下でのセンシングにより得られた前記基準反射板又は前記基準透過板の測定スペクトル情報に基づいて、スペクトルの補正ゲインを算出し、
算出された前記補正ゲインに基づいて、前記測定光源下でのセンシングにより得られた前記検査対象物の測定スペクトル情報を補正する
ステップを含む検査方法。
(17)
コンピュータを、
検査対象物に応じた特性を有する基準反射板又は基準透過板の基準光源下における基準スペクトル情報、及び、測定光源下でのセンシングにより得られた前記基準反射板又は前記基準透過板の測定スペクトル情報に基づいて、スペクトルの補正ゲインを算出する補正ゲイン算出部と、
算出された前記補正ゲインに基づいて、前記測定光源下でのセンシングにより得られた前記検査対象物の測定スペクトル情報を補正する補正部と
して機能させるプログラム。