以下、添付図面を参照して、X線CT(Computed Tomography)装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下、X線CT装置を含む医用情報処理システムを例に挙げて説明する。なお、図1に示す医用情報処理システム100においては、サーバ装置と端末装置とがそれぞれ1台のみ示されているが、実際にはさらに複数のサーバ装置と端末装置とを含むことができる。また、医用情報処理システム100は、例えば、X線診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置などの医用画像診断装置を含むこともできる。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム100の構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報処理システム100は、X線CT装置1と、サーバ装置2と、端末装置3とを備える。X線CT装置1と、サーバ装置2と、端末装置3とは、例えば、病院内に設置された院内LAN(Local Area Network)4により、直接的、又は間接的に相互に通信可能な状態となっている。例えば、医用情報処理システム100にPACS(Picture Archiving and Communication System)が導入されている場合、各装置は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則って、医用画像等を相互に送受信する。
また、医用情報処理システム100においては、例えば、HIS(Hospital Information System)や、RIS(Radiology Information System)などが導入され、各種情報が管理される。例えば、端末装置3は、上記したシステムに沿って作成された検査オーダーをX線CT装置1やサーバ装置2に送信する。X線CT装置1は、端末装置3から直接受信した検査オーダー、或いは、検査オーダーを受信したサーバ装置2によって作成されたモダリティごとの患者リスト(モダリティワークリスト)から患者情報を取得して、患者ごとのX線CT画像データを収集する。そして、X線CT装置1は、収集したX線CT画像データや、X線CT画像データに対して各種画像処理を行うことで生成した画像データをサーバ装置2に送信する。サーバ装置2は、X線CT装置1から受信したX線CT画像データ及び画像データを記憶するとともに、X線CT画像データから画像データの生成を行い、端末装置3からの取得要求に応じた画像データを端末装置3に送信する。端末装置3は、サーバ装置2から受信した画像データをモニタなどに表示する。以下、各装置について説明する。
端末装置3は、病院内の各診療科に配置され、各診療科に勤務する医師によって操作される装置であり、PC(Personal Computer)やタブレット式PC、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話等である。例えば、端末装置3は、医師によって患者の症状や医師の所見などのカルテ情報が入力される。また、端末装置3は、X線CT装置1による検査をオーダーするための検査オーダーが入力され、入力された検査オーダーをX線CT装置1やサーバ装置2に送信する。すなわち、診療科の医師は、端末装置3を操作して、来院した患者の受付情報と電子カルテの情報とを読み出し、該当する患者の診察を行い、読み出した電子カルテにカルテ情報を入力する。そして、診療科の医師は、X線CT装置1による検査の要否に応じて、端末操作3を操作して検査オーダーを送信する。
サーバ装置2は、医用画像診断装置によって収集された医用画像(例えば、X線CT装置1によって収集されたX線CT画像データ及び画像データ)を記憶したり、医用画像に対して各種画像処理を行ったりする装置であり、例えば、PACSサーバなどである。例えば、サーバ装置2は、各診療科に配置された端末装置3から複数の検査オーダーを受信して、医用画像診断装置ごとに患者リストを作成して、作成した患者リストを各医用画像診断装置に送信する。一例を挙げると、サーバ装置2は、X線CT装置1による検査を実施するための検査オーダーを各診療科の端末装置3からそれぞれ受信して患者リストを作成し、作成した患者リストをX線CT装置1に送信する。そして、サーバ装置2は、X線CT装置1によって収集されたX線CT画像データ及び画像データを記憶し、端末装置3からの取得要求に応じて、X線CT画像データ及び画像データを端末装置3に送信する。
X線CT装置1は、患者ごとのX線CT画像データを収集して、収集したX線CT画像データや、X線CT画像データに対して各種画像処理を行うことで生成した画像データをサーバ装置2に送信する。図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示す図である。図2に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台10と、寝台装置20と、コンソール30とを有する。
架台10は、被検体P(患者)にX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール30に出力する装置であり、X線照射制御回路11と、X線発生装置12と、検出器13と、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)14と、回転フレーム15と、架台駆動回路16とを有する。
回転フレーム15は、X線発生装置12と検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台駆動回路16によって被検体Pを中心した円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
X線照射制御回路11は、高電圧発生部として、X線管12aに高電圧を供給する装置であり、X線管12aは、X線照射制御回路11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。X線照射制御回路11は、後述するスキャン制御回路33の制御により、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。
また、X線照射制御回路11は、ウェッジ12bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路11は、コリメータ12cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。なお、本実施形態は、複数種類のウェッジを、操作者が手動で切り替える場合であっても良い。
X線発生装置12は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置であり、X線管12aと、ウェッジ12bと、コリメータ12cとを有する。
X線管12aは、図示しない高電圧発生部により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。X線管12aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線ビームを発生する。例えば、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、フル再構成用に被検体Pの全周囲でX線を連続曝射したり、ハーフ再構成用にハーフ再構成可能な曝射範囲(180度+ファン角)でX線を連続曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、予め設定された位置(管球位置)でX線(パルスX線)を間欠曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11は、X線管12aから曝射されるX線の強度を変調させることも可能である。例えば、X線照射制御回路11は、特定の管球位置では、X線管12aから曝射されるX線の強度を強くし、特定の管球位置以外の範囲では、X線管12aから曝射されるX線の強度を弱くする。
ウェッジ12bは、X線管12aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ12bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
コリメータ12cは、後述するX線照射制御回路11の制御により、ウェッジ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
架台駆動回路16は、回転フレーム15を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置12と検出器13とを旋回させる。
検出器13は、被検体Pを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が被検体Pの体軸方向(図2に示すZ軸方向)に沿って複数列配列されている。具体的には、第1の実施形態における検出器13は、被検体Pの体軸方向に沿って320列など多列に配列されたX線検出素子を有し、例えば、被検体Pの肺や心臓を含む範囲など、広範囲に被検体Pを透過したX線を検出することが可能である。
データ収集回路14は、DASであり、検出器13が検出したX線の検出データから、投影データを収集する。例えば、データ収集回路14は、検出器13により検出されたX線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理、チャンネル間の感度補正処理等を行なって投影データを生成し、生成した投影データを後述するコンソール30に送信する。例えば、回転フレーム15の回転中に、X線管12aからX線が連続曝射されている場合、データ収集回路14は、全周囲分(360度分)の投影データ群を収集する。また、データ収集回路14は、収集した各投影データに管球位置を対応付けて、後述するコンソール30に送信する。管球位置は、投影データの投影方向を示す情報となる。なお、チャンネル間の感度補正処理は、後述する前処理回路34が行なっても良い。
寝台装置20は、被検体Pを載せる装置であり、図2に示すように、寝台駆動装置21と、天板22とを有する。寝台駆動装置21は、天板22をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動させる。天板22は、被検体Pが載置される板である。
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行うステップアンドシュート方式を実行する。
コンソール30は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された投影データを用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、図2に示すように、入力回路31と、ディスプレイ32と、スキャン制御回路33と、前処理回路34と、記憶回路35と、画像再構成回路36と、処理回路37とを有する。
入力回路31は、X線CT装置1の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路37に転送する。例えば、入力回路31は、操作者から、X線CT画像データの撮影条件や、X線CT画像データを再構成する際の再構成条件、X線CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。また、入力回路31は、被検体に対する検査を選択するための操作を受け付ける。また、入力回路31は、画像上の部位を指定するための指定操作を受け付ける。
ディスプレイ32は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路37による制御のもと、X線CT画像データから生成された画像データを操作者に表示したり、入力回路31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。また、ディスプレイ32は、スキャン計画の計画画面や、スキャン中の画面などを表示する。また、ディスプレイ32は、被曝情報を含む仮想患者画像や画像データなどを表示する。なお、ディスプレイ32によって表示される仮想患者画像については、後に詳述する。
スキャン制御回路33は、処理回路37による制御のもと、X線照射制御回路11、架台駆動回路16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10における投影データの収集処理を制御する。具体的には、スキャン制御回路33は、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する撮影及び診断に用いる画像を収集する本撮影(スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。ここで、第1の実施形態に係るX線CT装置1においては、2次元のスキャノ画像及び3次元のスキャノ画像を撮影することができる。
例えば、スキャン制御回路33は、X線管12aを0度の位置(被検体に対して正面方向の位置)に固定して、天板を定速移動させながら連続的に撮影を行うことで2次元のスキャノ画像を撮影する。或いは、スキャン制御回路33は、X線管12aを0度の位置に固定して、天板を断続的に移動させながら、天板移動に同期して断続的に撮影を繰り返すことで2次元のスキャノ画像を撮影する。ここで、スキャン制御回路33は、被検体に対して正面方向だけでなく、任意の方向(例えば、側面方向など)から位置決め画像を撮影することができる。
また、スキャン制御回路33は、スキャノ画像の撮影において、被検体に対する全周分の投影データを収集することで、3次元のスキャノ画像を撮影する。図3は、第1の実施形態に係るスキャン制御回路33による3次元のスキャノ画像撮影を説明するための図である。例えば、スキャン制御回路33は、図3に示すように、ヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンによって被検体に対する全周分の投影データを収集する。ここで、スキャン制御回路33は、被検体の胸部全体、腹部全体、上半身全体、全身などの広範囲に対して本撮影よりも低線量でヘリカルスキャン或いはノンヘリカルスキャンを実行する。ノンヘリカルスキャンとしては、例えば、上述のステップアンドシュート方式のスキャンが実行される。
このように、スキャン制御回路33が被検体に対する全周分の投影データを収集することで、後述する画像再構成回路36が、3次元のX線CT画像データ(ボリュームデータ)を再構成することができ、図3に示すように、再構成したボリュームデータを用いて任意の方向から位置決め画像を生成することが可能になる。ここで、位置決め画像を2次元で撮影するか、或いは、3次元で撮影するかは、操作者によって任意に設定する場合でもよく、或いは、検査内容に応じて予め設定される場合でもよい。
図2に戻って、前処理回路34は、データ収集回路14によって生成された投影データに対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みの投影データを生成する。具体的には、前処理回路34は、データ収集回路14によって生成された位置決め画像の投影データ及び本撮影によって収集された投影データのそれぞれについて、補正済みの投影データを生成して、記憶回路35に格納する。
記憶回路35は、前処理回路34により生成された投影データを記憶する。具体的には、記憶回路35は、前処理回路34によって生成された、位置決め画像の投影データ及び本撮影によって収集される診断用の投影データを記憶する。また、記憶回路35は、後述する画像再構成回路36によって生成された画像データや仮想患者画像を記憶する。また、記憶回路35は、後述する処理回路37による処理結果を適宜記憶する。なお、仮想患者画像及び処理回路37による処理結果については、後述する。
画像再構成回路36は、記憶回路35が記憶する投影データを用いてX線CT画像データを再構成する。具体的には、画像再構成回路36は、位置決め画像の投影データ及び診断に用いられる画像の投影データから、X線CT画像データをそれぞれ再構成する。ここで、再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。或いは、画像再構成回路36は、逐次近似法を用いて、X線CT画像データを再構成することもできる。
また、画像再構成回路36は、X線CT画像データに対して各種画像処理を行うことで、画像データを生成する。そして、画像再構成回路36は、再構成したX線CT画像データや、各種画像処理により生成した画像データを記憶回路35に格納する。
処理回路37は、架台10、寝台装置20及びコンソール30の動作を制御することによって、X線CT装置1の全体制御を行う。具体的には、処理回路37は、スキャン制御回路33を制御することで、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。また、処理回路37は、画像再構成回路36を制御することで、コンソール30における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、処理回路37は、記憶回路35が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。
また、処理回路37は、図2に示すように、検出機能37a、位置照合機能37b、算出機能37c、設定機能37d及び表示制御機能37eを実行する。ここで、例えば、図2に示す処理回路37の構成要素である検出機能37a、位置照合機能37b、算出機能37c、設定機能37d及び表示制御機能37eが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路35に記録されている。処理回路37は、各プログラムを記憶回路35から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路37は、図2の処理回路37内に示された各機能を有することとなる。なお、本実施形態で説明する算出機能37cは、特許請求の範囲に記載した算出部に対応する。また、設定機能37dは、特許請求の範囲に記載した設定部に対応する。また、表示制御機能37eは、特許請求の範囲に記載した出力制御部に対応する。また、検出機能37aは、特許請求の範囲に記載した検出部に対応する。
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable GateArray:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
検出機能37aは、3次元画像データに含まれる被検体における複数の部位をそれぞれ検出する。具体的には、検出機能37aは、画像再構成回路36によって再構成された3次元のX線CT画像データ(ボリュームデータ)に含まれる臓器などの部位を検出する。例えば、検出機能37aは、位置決め画像のボリュームデータ及び診断に用いられる画像のボリュームデータのうち少なくとも一方について、解剖学的な特徴点(Anatomical Landmark)に基づいて臓器などの部位を検出する。ここで、解剖学的な特徴点とは、特定の骨や臓器、血管、神経、内腔などの部位の特徴を示す点である。すなわち、検出機能37aは、特定の臓器や骨などの解剖学的な特徴点を検出することによって、ボリュームデータに含まれる骨や臓器、血管、神経、内腔などを検出する。また、検出機能37aは、人体の特徴的な特徴点を検出することで、ボリュームデータに含まれる頭部、首、胸部、腹部、足などの位置を検出することもできる。なお、本実施形態で説明する部位は、骨や臓器、血管、神経、内腔などにこれらの位置も含めたものを意味する。以下、検出機能37aによる部位の検出の一例について説明する。
例えば、検出機能37aは、位置決め画像のボリュームデータ、或いは、診断に用いられる画像のボリュームデータにおいて、ボリュームデータに含まれるボクセルの値から解剖学的な特徴点を抽出する。そして、検出機能37aは、教科書などの情報における解剖学的な特徴点の3次元的な位置と、ボリュームデータから抽出した特徴点の位置とを比較することによって、ボリュームデータから抽出した特徴点の中から不正確な特徴点を除去して、ボリュームデータから抽出した特徴点の位置を最適化する。これにより、検出機能37aは、ボリュームデータに含まれる被検体の各部位を検出する。一例を挙げると、検出機能37aは、まず、教師あり機械学習アルゴリズムを用いて、ボリュームデータに含まれる解剖学的な特徴点を抽出する。ここで、上記した教師あり機械学習アルゴリズムは、正しい解剖学的な特徴点が手動で配置された複数の教師画像を用いて構築されたものであり、例えば、ディシジョンフォレスト(decision forest)などが利用される。
そして、検出機能37aは、身体における解剖学的な特徴点の3次元的な位置関係を示すモデルと、抽出した特徴点とを比較することで、抽出した特徴点を最適化する。ここで、上記したモデルは、上述した教師画像を用いて構築されたものであり、例えば、点分布モデルなどが利用される。すなわち、検出機能37aは、正しい解剖学的な特徴点が手動で配置された複数の教師画像に基づいて部位の形状や位置関係、部位に固有な点などが定義されたモデルと、抽出した特徴点とを比較することで、不正確な特徴点を除去して、特徴点を最適化する。
以下、図4A,4B,5,6を用いて、検出機能37aによる部位の検出処理の一例を説明する。図4A,4B,5,6は、第1の実施形態に係る検出機能37aによる部位の検出処理の一例を説明するための図である。なお、図4A,4Bにおいては、2次元上に特徴点を配置しているが、実際には、特徴点は3次元的に配置される。例えば、検出機能37aは、ボリュームデータに対して教師あり機械学習アルゴリズムを適用することで、図4Aに示すように、解剖学的な特徴点とみなすボクセルを抽出する(図中の黒点)。そして、検出機能37aは、抽出したボクセルの位置を、部位の形状や位置関係、部位に固有な点などが定義されたモデルにフィッティングさせることで、図4Bに示すように、抽出したボクセルのうち不正確な特徴点を除去して、より正確な特徴点に対応するボクセルのみを抽出する。
ここで、検出機能37aは、抽出した特徴点(ボクセル)に対して、各部位の特徴を示す特徴点を識別するための識別コードを付与し、識別コードと各特徴点の位置(座標)情報とを対応づけた情報を画像データに付帯させて記憶回路35に格納する。例えば、検出機能37aは、図4Bに示すように、抽出した特徴点(ボクセル)に対して、C1、C2、C3などの識別コードを付与する。ここで、検出機能37aは、検出処理を行ったデータごとにそれぞれ識別コードを付帯させて、記憶回路35に格納する。具体的には、検出機能37aは、位置決め画像の投影データ、非造影下で収集された投影データ、及び、造影剤によって造影された状態で収集された投影データのうち、少なくとも1つの投影データから再構成されたボリュームデータに含まれる被検体の部位を検出する。
例えば、検出機能37aは、図5に示すように、位置決め画像のボリュームデータ(図中、位置決め)から検出した各ボクセルの座標に識別コードを対応付けた情報をボリュームデータに付帯させて記憶回路35に格納する。一例を挙げると、検出機能37aは、位置決め画像のボリュームデータから標識点の座標を抽出して、図5に示すように、「識別コード:C1、座標(x1, y1, z1)」、「識別コード:C2、座標(x2, y2, z2)」などをボリュームデータに対応付けて格納する。これにより、検出機能37aは、位置決め画像のボリュームデータにおけるどの位置にどのような特徴点があるかを識別することができ、これらの情報に基づいて臓器などの各部位を検出することができる。
また、検出機能37aは、例えば、図5に示すように、診断用の画像のボリュームデータ(図中、スキャン)から検出した各ボクセルの座標に識別コードを対応付けた情報をボリュームデータに付帯させて記憶回路35に格納する。ここで、検出機能37aは、スキャンにおいて、造影剤によって造影されたボリュームデータ(図中、造影Phase)と、造影剤によって造影されていないボリュームデータ(図中、非造影Phase)とから、それぞれ標識点の座標を抽出して、抽出した座標に識別コードを対応付けることができる。
一例を挙げると、検出機能37aは、診断用の画像のボリュームデータのうち、非造影Phaseのボリュームデータから標識点の座標を抽出して、図5に示すように、「識別コード:C1、座標(x’1, y’1, z’1)」、「識別コード:C2、座標(x’2, y’2, z’2)」などをボリュームデータに対応付けて格納する。また、検出機能37aは、診断用の画像のボリュームデータのうち、造影Phaseのボリュームデータから標識点の座標を抽出して、図5に示すように、「識別コード:C1、座標(x’1, y’1, z’1)」、「識別コード:C2、座標(x’2, y’2, z’2)」などをボリュームデータに対応付けて格納する。ここで、造影Phaseのボリュームデータから標識点を抽出する場合、造影されることで抽出可能となる標識点が含まれる。例えば、検出機能37aは、造影Phaseのボリュームデータから標識点を抽出する場合、造影剤によって造影された血管などを抽出することができる。従って、造影Phaseのボリュームデータの場合、検出機能37aは、図5に示すように、造影することで抽出された血管などの標識点の座標(x’31, y’31, z’31)〜座標(x’34, y’34, z’34)などに、それぞれの血管を識別するための識別コードC31、C32、C33及びC34などを対応付ける。
上述したように、検出機能37aは、位置決め画像、或いは、診断用の画像のボリュームデータにおけるどの位置にどのような標識点があるかを識別することができ、これらの情報に基づいて臓器などの各部位を検出することができる。例えば、検出機能37aは、検出の対象となる対象部位と、対象部位の周辺の部位との解剖学的な位置関係の情報を用いて、対象部位の位置を検出する。一例を挙げると、検出機能37aは、対象部位を「肺」とした場合、肺の特徴を示す識別コードに対応付けられた座標情報を取得するとともに、「肋骨」や「鎖骨」、「心臓」、「横隔膜」など、「肺」の周囲の部位を示す識別コードに対応付けられた座標情報を取得する。そして、検出機能37aは、「肺」と周囲の部位との解剖学的な位置関係の情報と、取得した座標情報とを用いて、ボリュームデータにおける「肺」の領域を抽出する。
例えば、検出機能37aは、「肺尖:鎖骨の2〜3cm上方」や、「肺の下端:第7肋骨の高さ」などの位置関係の情報と、各部位の座標情報とから、図6に示すように、ボリュームデータにおいて「肺」に相当する領域R1を抽出する。すなわち、検出機能37aは、ボリュームデータにおける領域R1のボクセルの座標情報を抽出する。検出機能37aは、抽出した座標情報を部位情報と対応付けてボリュームデータに付帯させて記憶回路35に格納する。同様に、検出機能37aは、図6に示すように、ボリュームデータにおいて「心臓」に相当する領域R2などを抽出することができる。
また、検出機能37aは、人体における頭部や胸部などの位置を定義する特徴点に基づいて、ボリュームデータに含まれる位置を検出する。ここで、人体における頭部や胸部などの位置は任意に定義することができる。例えば、第7頸椎から肺の下端までを胸部と定義すると、検出機能37aは、第7頸椎に対応する特徴点から肺の下端に対応する特徴点までを胸部として検出する。なお、検出機能37aは、上述した解剖学的な特徴点を用いた方法以外にも種々の方法により部位を検出することができる。例えば、検出機能37aは、ボクセル値に基づく領域拡張法などによりボリュームデータに含まれる部位を検出することができる。
位置照合機能37bは、3次元画像データに含まれる被検体における複数の部位それぞれの位置と、仮想患者データに含まれる人体における複数の部位それぞれの位置とを照合する。ここで、仮想患者データとは、人体における複数の部位それぞれの標準的な位置を表す情報である。すなわち、位置照合機能37bは、被検体の部位と標準的な部位の位置とを照合して、照合結果を記憶回路35に格納する。例えば、位置照合機能37bは、人体の部位が標準的な位置に配置された仮想患者画像と、被検体のボリュームデータとをマッチングする。
ここで、まず、仮想患者画像について説明する。仮想患者画像は、年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの体格などに関わるパラメータに関する複数の組み合わせに応じた標準的な体格などを有する人体について実際にX線で撮影した画像として予め生成されて、記憶回路35に格納される。すなわち、記憶回路35は、上述したパラメータの組み合わせに応じた複数の仮想患者画像のデータを記憶する。ここで、記憶回路35によって記憶される仮想患者画像には、解剖学的な特徴点(特徴点)が対応づけて記憶される。例えば、人体には、パターン認識等の画像処理により比較的容易にその形態的特徴等に基づいて画像から抽出できる多数の解剖学的な特徴点がある。これら多数の解剖学的な特徴点の身体におけるその位置や配置は年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの体格等に従っておおよそ決まっている。
記憶回路35によって記憶される仮想患者画像は、これら多数の解剖学的な特徴点が予め検出され、検出された特徴点の位置データがそれぞれの特徴点の識別コードとともに仮想患者画像のデータに付帯又は関連付けされて記憶される。図7は、第1の実施形態に係る記憶回路35によって記憶される仮想患者画像の一例を示す図である。例えば、記憶部35は、図7に示すように、臓器などの部位を含む3次元の人体に、解剖学的な特徴点と特徴点を識別するための識別コード「V1」、「V2」及び「V3」などとが関連付けられた仮想患者画像を記憶する。
すなわち、記憶回路35は、3次元の人体画像の座標空間における特徴点の座標と対応する識別コードとを関連付けて記憶する。一例を挙げると、記憶回路35は、図7に示す識別コード「V1」に対応づけて、対応する特徴点の座標を記憶する。同様に、記憶回路35は、識別コードと特徴点の座標とを対応づけて記憶する。なお、図7においては、臓器として肺、心臓、肝臓、胃、腎臓などのみが示されているが、実際には、仮想患者画像は、さらに多数の臓器、骨、血管、神経などが含まれる。また、図7においては、識別コード「V1」、「V2」及び「V3」に対応する特徴点についてのみ示されているが、実際にはさらに多数の特徴点が含まれる。
位置照合機能37bは、検出機能37aによって検出された被検体のボリュームデータ中の特徴点と、上述した仮想患者画像中の特徴点とを識別コードを用いてマッチングして、ボリュームデータの座標空間と仮想患者画像の座標空間とを関連付ける。図8は、第1の実施形態に係る位置照合機能37bによる照合処理の一例を説明するための図である。ここで、図8においては、スキャノ画像から検出した特徴点と仮想患者画像から検出された特徴点との間で同一の特徴点を示す識別コードが割り当てられた3組の特徴点を用いてマッチングを行う場合について示すが、実施形態はこれに限定されるものではなく、任意の組の特徴点を用いてマッチングを行うことができる。
例えば、位置照合機能37bは、図8に示すように、仮想患者画像において識別コード「V1」、「V2」及び「V3」で示される特徴点と、スキャノ画像において識別コード「C1」、「C2」及び「C3」で示される特徴点とをマッチングする場合、同一の特徴点間の位置ずれが最小となるように座標変換することにより、画像間の座標空間を関連付ける。例えば、位置照合機能37bは、図8に示すように、解剖学的に同じ特徴点「V1(x1,y1,z1)、C1(X1,Y1,Z1)」、「V2(x2,y2,z2)、C2(X2,Y2,Z2)」、「V3(x3,y3,z3)、C3(X3,Y3,Z3)」の間の位置ズレの合計「LS」を最小化するように、以下の座標変換行列「H」を求める。
LS = ((X1,Y1,Z1)-H(x1,y1,z1))
+((X2,Y2,Z2)-H(x2,y2,z2))
+((X3,Y3,Z3)-H(x3,y3,z3))
位置照合機能37bは、求めた座標変換行列「H」により、仮想患者画像上に指定されたスキャン範囲を位置決め画像上のスキャン範囲に変換することができる。例えば、位置照合機能37bは、座標変換行列「H」を用いることで、図8に示すように、仮想患者画像上に指定されたスキャン範囲「SRV」を位置決め画像上のスキャン範囲「SRC」に変換することができる。図9は、第1の実施形態に係る座標変換によるスキャン範囲の変換例を示す図である。例えば、図9の仮想患者画像上に示すように、操作者が仮想患者画像上でスキャン範囲「SRV」を設定すると、位置照合機能37bは、上述した座標変換行列を用いて、設定されたスキャン範囲「SRV」をスキャノ画像上のスキャン範囲「SRC」に変換する。
これにより、例えば、仮想患者画像上で識別コード「Vn」に対応する特徴点を含むように設定されたスキャン範囲「SRV」は、スキャノ画像上で同一の特徴点に対応する識別コード「Cn」が含まれるスキャン範囲「SRC」に変換されて設定される。なお、上述した座標変換行列「H」は、被検体ごとに記憶回路35に記憶されて、適宜読み出されて使用される場合であってもよく、或いは、スキャノ画像が収集されるごとに算出される場合であってもよい。このように第1の実施形態によれば、プリセット時の範囲指定のために仮想患者画像を表示し、その上で位置・範囲を計画しておくことで、位置決め画像(スキャノ画像)の撮影後に、計画された位置・範囲に対応する位置決め画像上の位置・範囲を自動で数値設定することが可能である。
図2に戻って、算出機能37cは、検出機能37aによって検出された部位の被曝情報を算出する。設定機能37dは、算出機能37cによって算出された被曝情報に基づいて、X線照射条件を設定する。表示制御機能37eは、種々の表示情報をディスプレイ32に表示するように制御する。例えば、表示制御機能37eは、記憶回路35が記憶する各種画像データをディスプレイ32に表示するように制御する。また、表示制御機能37eは、被曝情報をディスプレイ32に表示するように制御する。なお、算出機能37c、設定機能37d及び表示制御機能37cの詳細については、後に詳述する。
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、部位ごとの被曝を考慮した撮影を容易に行うことを可能とする。上述したように、従来のX線CT装置においては、部位ごとの被曝情報を画像などに重ねて表示する技術が知られている。そこで、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、以下、詳細に説明する処理回路37による制御により、部位ごとの被曝情報の表示に加えて、部位ごとの被曝を考慮した撮影を容易に行うことを可能とする。
具体的には、第1の実施形態に係るX線CT装置1においては、被検体に対する第1のスキャンによって収集された投影データから再構成された3次元画像データに含まれる被検体の部位の第2のスキャンで事前に設定されたX線照射条件での被曝情報を算出する。そして、X線CT装置1は、部位の被曝情報に基づいて、被検体に対する第2のスキャンのX線照射条件を調整して設定する。すなわち、本実施形態に係るX線CT装置1では、本スキャンによってX線が照射される部位ごとに、本スキャンで受ける被曝の情報を算出し、算出した被曝情報に基づいて本スキャンにおけるX線の照射条件を調整する。
例えば、現在のX線CT装置1においては、本スキャンにおけるX線の照射条件は、スキャン範囲(スキャン対象)に応じて予め設定されている。本実施形態に係るX線CT装置1では、予め設定された照射条件でX線を照射した場合にスキャン対象の部位がどの程度被曝するかを算出して、算出した被曝が所定の閾値を超えないようにX線の照射条件を調整することで、部位ごとの被曝を考慮した撮影を行う。
以下、スキャノ画像を用いて本スキャンのスキャン範囲を決定して、決定したスキャン範囲に含まれる部位ごとの被曝情報を算出する場合を例に挙げて説明する。図10は、第1の実施形態に係るスキャン範囲の設定の一例を示す図である。ここで、図10においては、スキャン計画の計画画面を示し、計画画面に仮想患者画像とスキャノ画像を示す。なお、図10においては、仮想患者画像とスキャノ画像のみが示されているが、実際には、スキャン計画の計画画面で表示される種々のものが表示される。
例えば、表示制御機能37eは、スキャノ画像が収集されると、図10に示すように、仮想患者画像とスキャノ画像とをディスプレイ32に表示して、本スキャンのスキャン範囲の設定を受け付ける。ここで、図10に示すように、スキャノ画像が収集されると、上述したように、検出機能37aが、スキャノ画像のボリュームデータに含まれる部位を検出する。そして、位置照合機能37bが、検出された部位の特徴点に基づいて、実際に収集されたスキャノ画像の座標情報と仮想患者画像の座標情報との照合処理を実行する。これにより、例えば、図10の右側の示すスキャノ画像上で本スキャンのスキャン範囲が設定された場合でも、設定されたスキャン範囲を仮想患者画像上の正確な位置に配置することができる。或いは、逆に仮想患者画像上に本スキャンのスキャン範囲が設定された場合でも、設定されたスキャン範囲をスキャノ画像上の正確な位置に配置することができる。
また、例えば、仮想患者画像を使って、部位でスキャン範囲を設定することも可能である。例えば、仮想患者画像上で心臓や肺、或いは、胸部、腹部などの部位を指定することで、対応するスキャン範囲を自動で設定することができる。例えば、図10に示すスキャン範囲「R11」は上述したいずれの方法でも設定することができる。
例えば、図10に示すように、スキャノ画像の収集後に本スキャンのスキャン範囲「R11」が設定されると、算出機能37cは、スキャン範囲「R11」に含まれる部位を抽出して、抽出した部位ごとの本スキャンにおける被曝情報を算出。例えば、算出機能37cは、スキャン範囲「R11」の座標情報に基づいて、「R11」に含まれる「肺」、「心臓」、「肝臓」、「胃」、「腎臓」などの部位を抽出する。
そして、算出機能37cは、抽出した部位ごとに、被曝情報を算出する。ここで、算出機能37cは、例えば、「DLP(Dose Length Product)」を用いて部位ごとの実効線量を算出する。ここで、「DLP(mGy・cm)」は、CTDI(CT Dose Index)ファントムによって計測された吸収線量「CTDIVol(mGy)」に体軸方向のX線照射範囲を乗じたものである。「CTDIVol(mGy)」は、頭部用の直径「160mm」のCTDIファントム及び腹部用の直径「320mm」のCTDIファントムによって予めそれぞれ種々の条件で計測され、X線CT装置1に記憶される。すなわち、DLPは、X線の照射条件ごとに対応する「CTDIVol(mGy)」とX線照射範囲から算出される。
算出機能37cは、本スキャンのX線照射条件に応じて算出される「DLP」に「組織・臓器」ごとの係数を乗じることで、部位ごとの実効線量を算出する。例えば、算出機能37cは、胸部及び腹部であるスキャン範囲「R11」を対象とした本スキャンでは、腹部用の直径「320mm」のCTDIファントムを用いて予め計測されたCTDIに基づいて算出されるスキャンプロトコルに応じた「DLP」に「組織・臓器」ごとの係数を乗じることで、例えば、図11に示すような部位ごとの被曝情報を算出する。図11は、第1の実施形態に係る算出機能37cによって算出される被曝情報の一例を示す図である。
例えば、算出機能37cは、図11に示すように、スキャン範囲「R11」に含まれる部位である「領域内部位」ごとに、被曝情報「実効線量(mSv)」を算出する。一例を挙げると、算出機能37cは、スキャン条件に応じて算出される「DLP」の値に「肺」の係数を乗じることにより、「肺」の「実効線量:aaaa(mSv)」を算出する。同様に、算出機能37cは、「DLP」の値に「心臓」の係数を乗じることにより、「心臓」の「実効線量:bbbb(mSv)」を算出する。また、算出機能37cは、「DLP」の値に「肝臓」の係数を乗じることにより、「肝臓」の「実効線量:cccc(mSv)」を算出する。このように、算出機能37cは、本スキャンのスキャン条件に応じて算出される「DLP」の値に部位ごとの係数を乗じることで、各部位における実効線量を算出する。
ここで、算出機能37cは、部位ごとの係数として種々の係数を用いることができる。図12は、第1の実施形態に係る部位ごとの実効線量を算出するための係数の一例を示す図である。図12においては、「ICRP(International Commission on Radiological Protection)」において定義された係数を示す。例えば、図12に示すように、(組織・臓器:係数)=(生殖器:0.08)、(赤色骨髄:0.12)、(結腸:0.12)、(肺:0.12)、(胃:0.12)、(膀胱:0.04)、(乳房:0.12)、(肝臓:0.04)、(食道:0.04)、(甲状腺:0.04)、(皮膚:0.01)、(脳:0.01)などが定義されている。
例えば、算出機能37cは、図12の係数を参照して、「DLP」の値に「肺」の係数「0.12」を乗じることにより、「肺」の「実効線量:aaaa(mSv)」を算出する。なお、部位ごとの実効線量を算出するための係数は、図12に示す例以外にも種々のものがある。算出機能37cは、それらの係数を適宜使い分けてもよい。例えば、人種ごとに推奨されている係数が異なることから、被検体の人種に応じて、係数を使い分けるようにしてもよい。
上述したように、算出機能37cによって被曝情報が算出されると、設定機能37dは、部位の被曝情報に基づいて、被検体に対する第2のスキャンのX線照射条件を調整して設定する。具体的には、設定機能37dは、被曝情報に基づいて、検出機能37aによって検出された部位の被曝が所定の閾値以下となるように第2のスキャンのX線照射条件を設定する。図13は、第1の実施形態に係る部位ごとの閾値を説明するための図である。例えば、図13に示すように、部位ごとに「実効線量(mSv)」の閾値が設けられる。
例えば、設定機能37dは、「肺」の「実効線量:aaaa」と「閾値:dddd」とを比較して、「実効線量:aaaa」が閾値を超えていた場合には、「実効線量:aaaa」が「閾値:dddd」以下となるように、X線の照射条件を調整する。すなわち、設定機能37dは、部位ごとに閾値と比較して、各部位の実効線量が閾値以下となるようにX線の照射条件を調整する。一例を挙げると、設定機能37dは、管電圧(kV)、管電流(mA)、照射時間などの条件を調整することにより、各部位の実効線量が閾値以下となるように、X線の照射条件を調整する。
表示制御機能37eは、部位ごとの被曝情報をディスプレイ32に表示させるように制御する。例えば、表示制御機能37eは、算出機能37cによって算出された部位ごとの実効線量の情報や、X線の照射条件などの情報をディスプレイ32に表示させるように制御する。また、表示制御機能37eは、設定機能37dによってX線の照射条件の調整された後の部位ごとの実効線量の情報や、X線の照射条件などの情報をディスプレイ32に表示させるように制御する。
図14A及び図14Bは、第1の実施形態に係るX線の照射条件に関する表示情報の一例を示す図である。ここで、図14A及び図14Bにおいては、スキャン範囲「R11」における本スキャン時の管電流の変調カーブを示す。例えば、表示制御機能37eは、図14Aに示すように、横軸を管電流とし、管電流の変調カーブ51をスキャノ画像上に示した表示情報をディスプレイ32に表示させる。
ここで、図14Aに示す変調カーブ51は、体軸方向での管電流の変調を示す。すなわち、「Head first」でスキャンを開始して徐々に管電流を上昇させ、肩の付近で最大の管電流となり、その後増減される変調カーブ51が示される。例えば、設定機能37dは、部位ごとの実効線量が閾値以下となるように、図14Aに示すような体軸方向に管電流を変調させる。
また、図14Bは、X−Y平面における管電流の変調カーブ52を示す。ここで、変調カーブ52は、中心からの距離が管電流の大きさを表す。すなわち、Y軸方向(Lateral方向)での管電流が最大となり、「AP(Anterior Posterior)方向」で管電流が最低となる。例えば、設定機能37dは、部位ごとの実効線量が閾値以下となるように、図14Bに示すようなX−Y平面での管電流を変調させる。表示制御機能37eは、設定機能37dによる調整前後で、図14A及びBに示すようなX線の照射条件を操作者に提示することで、照射条件の変更の許諾を受ける。
また、表示制御機能37eは、X線の照射条件に関する情報のほかにも、被検体の種々の被曝情報をディスプレイ32に表示させるように制御する。図15〜図18は、第1の実施形態に係る被曝に関する表示情報の一例を示す図である。例えば、表示制御機能37eは、図15に示すように、仮想患者画像の部位に被曝情報を重ねた表示情報をディスプレイ32に表示させる。ここで、表示制御機能37eは、算出機能37cによって算出された調整前の部位ごとの被曝情報を仮想患者画像に重ねて表示させる。例えば、操作者によって仮想患者画像上の「心臓」が選択された場合に、表示制御機能37eは、図15に示すように、心臓の実効線量「ggggmSv」を仮想患者画像に重ねて表示する。
ここで、表示制御機能37eは、図15に示すように、選択された部位のみの被曝情報を表示させることもできるが、算出機能37cによって実効線量が算出されたすべての部位について被曝情報を同時に表示させることもできる。また表示制御機能37eは、設定機能37dによってX線の照射条件が調整された後の条件で算出された実効線量についても同様に仮想患者画像上に表示させることができる。
また、表示制御機能37eは、図16に示すように、仮想患者画像に体厚及び表面積の情報を加えて表示情報をディスプレイ32に表示させることも可能である。ここで、図16においては、各仮想患者画像の下に体厚のスケールを示す。正面を向いている仮想患者画像の下にあるスケールは、仮想患者画像の「Lateral」方向での体厚の大きさを示す。すなわち、正面を向いている仮想患者画像上の曲線53が、実際の被検体における「Lateral」方向の体厚を示す曲線である。例えば、曲線53に示すように、首における「Lateral」方向の体厚がもっと薄く、肩付近における「Lateral」方向の体厚が最も厚い。
また、横を向いている仮想患者画像の下にあるスケールは、仮想患者画像の「AP」方向での体厚の大きさを示す。すなわち、横を向いている仮想患者画像上の曲線54が、実際の被検体における「AP」方向の体厚を示す曲線である。例えば、曲線54に示すように、首における「AP」方向の体厚がもっと薄く、胸部付近における「AP」方向の体厚が最も厚い。
さらに、表示制御機能37eは、図16に示すように、仮想患者画像の横に縦方向に自由に移動させられる矢印を配置して、操作者は入力回路31を介してこの矢印を縦方向にスライド操作することで、その位置における被検体の表面積を表示させることも可能である。ここで、例えば、表示制御機能37eは、矢印から伸びる点線と曲線53との交点である体厚を「体厚:m cm」と表示させ、矢印から伸びる点線と曲線54との交点である体厚を「体厚:l cm」と表示させる。また、点線の位置における被検体の「表面積:n cm2」を矢印の横に示す。すなわち、操作者は、入力回路31を介して矢印をスライドさせることで、実際の被検体の表面積や体厚の情報を表示する表示情報をディスプレイ32に表示させる。
なお、上述した表示情報はあくまでも一例であり、表示制御機能37eは、その他の情報を適宜表示させることができる。例えば、表示制御機能37eは、実際の被検体の表面積や体厚の過去情報を表示させることもできる。かかる場合には、例えば、記憶回路35が、被検体ごとに表面積や体厚の情報を記憶する。そして、表示制御機能37eは、現時点の被検体の過去情報を記憶回路35から読み出して、ディスプレイ32に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能37eは、図16に示す表面積や体厚の表示部分に、過去の情報を同時に表示させたり、操作者による切り替え操作に応じて過去の情報を表示させたりする。
ここで、被検体の表面積や体厚は、収集したスキャノ画像のボリュームデータから算出することができる。また、被検体の各部位における表面積や体厚についても、検出機能37aによる検出結果と、スキャノ画像のボリュームデータから算出することができる。また、被検体の体厚については、X線の減弱の仕方によって算出する場合であってもよい。また、図示していないが、部位ごとの体積を算出してもよい。これらの算出は、算出機能37cによって実行されてもよい。
このように表面積や体厚が算出された場合、表示制御機能37eは、図16に示すように、単純な実効線量だけではなく、表面積、体厚、或いは、体積を考慮した被曝情報を提示することができる。例えば、表示制御機能37eは、図16に示すように、心臓について、「実効線量:gggg mSv」に加えて、実効線量に表面積補正をかけた「hhhh mSv」や、体厚補正をかけた「iiii mSv」などを算出して、表示させることができる。ここで、現在、被検体の体格に見合った線量の指標値が注目されており、例えば、「米国医学物理学会:AAPM(American Association of Physicist in Medicine)」では、「CTDI」を体厚で補正した「SSDE(Size Specific Dose Estimation)」などが知られている。本実施形態によれば、体厚だけではなく、表面積や体積を用いた新たな線量の指標値を提供することも可能となる。
ここで、本実施形態に係るX線CT装置1においては、3次元のスキャノ画像を収集する。これにより、X線CT装置1においては、被検体の体厚の長さや、ビューごとのX線吸収量を正確に算出することができる。従って、X線CT装置1は、上述した「SSDE」を含め、被検体の体格に見合った線量の指標値をより正確に提供することができる。
また、表示制御機能37eは、図17に示すように、被曝量に応じて画像をカラー化した表示情報を表示させることも可能である。また、表示制御機能37eは、図18に示すように、スキャンのタイムシーケンスに合わせて、DPLを表示させたり、部位ごとの実効線量をグラフ化して表示させたりすることができる。例えば、表示制御機能37eは、図18に示すように、横軸を実効線量(mSv)として各部位のグラフをスキャン計画画面に同時に表示させることもできる。
次に、図19を用いて、第1の実施形態に係るX線CT装置1の処理について説明する。図19は、第1の実施形態に係るX線CT装置1による処理の手順を示すフローチャートである。図19に示すステップS101及びステップS102は、処理回路37が記憶回路35から処理機能に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS101では、処理回路37が、検査が開始されたか否かを判定する。そして、ステップS102では、処理回路37が、スキャン制御回路33、画像再構成回路36などを制御することで、3次元の位置決め画像を収集する。
図19のステップS103は、入力回路31によって実行されるステップである。ステップS103では、入力回路31が位置決め画像に基づいてスキャン範囲の設定を受け付ける。図19のステップS104は、処理回路37が記憶回路35から算出機能37cに対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS104では、処理回路37が、スキャン条件に基づいて、被曝情報を算出する。
図19のステップS105は、処理回路37が記憶回路35から設定機能37dに対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS105では、処理回路37が、部位ごとの被曝が所定の閾値以下となるようにスキャン条件を設定する。図19のステップS106は、処理回路37が記憶回路35から表示制御機能37eに対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS106では、処理回路37が、被曝情報を表示する。
上述したように、第1の実施形態によれば、データ収集回路14は、被検体を透過したX線を検出することで投影データを収集する。算出機能37cは、被検体に対する第1のスキャンによって収集された投影データから再構成された3次元画像データに含まれる被検体の部位の第2のスキャンで事前に設定されたX線照射条件での被曝情報を算出する。設定機能37dは、部位の被曝情報に基づいて、被検体に対する第2のスキャンのX線照射条件を調整して設定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、部位ごとの被曝を考慮した撮影を容易に行うことを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、検出機能37aは、3次元画像データに含まれる被検体の部位を検出する。設定機能37dは、被曝情報に基づいて、検出機能37aによって検出された部位の被曝が所定の閾値以下となるように第2のスキャンのX線照射条件を設定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、適切に被曝を軽減することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、算出機能37cは、検出機能37aによって検出された部位の大きさを算出し、算出した大きさに応じた第2のスキャンにおける被曝情報を算出する。設定機能37dは、被曝情報に基づいて、第2のスキャンのX線照射条件を設定する。また、算出機能37cは、被検体の体厚を算出し、算出した体厚に応じた第2のスキャンにおける被検体の部位の被曝情報を算出する。設定機能37dは、算出機能37cによって算出された被曝情報に基づいて、第2のスキャンにおける被検体の部位の被曝が所定の閾値以下となるように第2のスキャンのX線照射条件を設定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、より正確な被曝評価を行うことを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能37eは、算出機能37cによって算出された被検体の部位の被曝情報を出力するように制御する。また、表示制御機能37eは、3次元画像データから生成された表示画像及び人体モデル画像のうち少なくとも一方に被曝情報を示した画像を出力するように制御する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、被曝情報を提供することができる。
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上記した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
また、第1の実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、第1の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、各実施形態によれば、部位ごとの被曝を考慮した撮影を容易に行うことを可能とする。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。