本発明の好ましい実施の形態におけるバッテリー状態検知装置について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施の形態を示す各図のうち、図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係るバッテリー状態検知装置100がバッテリー90のバッテリーポスト91に取り付けられている状態を示す斜視図である。
本実施形態のバッテリー状態検知装置100は、図1に示すように、自動車等に搭載されたバッテリー90のバッテリーポスト91に取り付けられている。バッテリー状態検知装置100は、検出した電流などのバッテリー状態に関する検出結果を、図示しない外部装置に出力する機能を有する。出力先の外部装置としては、例えば、自動車のエンジンを制御するエンジンコントロールユニット(ECU)を挙げることができる。
本実施形態において、バッテリー90はDIN規格のバッテリーとして構成されている。バッテリー90の蓋体における上面の隅には直方体状の空間である凹部92が形成され、この凹部92の内部にバッテリーポスト91が配置されている。そして、バッテリー状態検知装置100の少なくとも大部分が、この凹部92に収容されている。
当該バッテリー状態検知装置100は、図1及び図2に示すように、バッテリーポスト91に接続されるポスト接続端子(第1接続端子)1と、ハーネス80に接続されるハーネス接続端子(第2接続端子)2と、コネクタ3と、ケーシング4と、シャント抵抗5と、回路基板6と、を主要な構成として備えている。これらのうち、ポスト接続端子(第1接続端子)は、バッテリーポスト端子(BP端子)などとも称されるものである。
バッテリー状態検知装置100に係る製造工程の詳細については後述するが、ポスト接続端子1は、金属板をプレス、折り曲げ加工、又は鍛造加工することにより形成されている。ポスト接続端子1には、バッテリーポスト91に接続するポスト接続部11と、ポスト接続部11から延設された板状の連結部12(図2(a)参照)と、が形成されている。
ポスト接続部11は、上下方向に延びる略筒状に形成されており、バッテリーポスト91を把持可能に構成されている。具体的には、上記の筒状の部分にバッテリーポスト91を挿入し、ポスト接続部11をバッテリーポスト91に外装した状態で、所定のホルダ22により、ポスト接続部11を加圧しながら挟みつけることにより、ポスト接続端子1がバッテリーポスト91に対して電気的及び機械的に接続される。なお、ホルダ22等を用いたポスト接続部11の接続構造については後述する。
連結部12は、ポスト接続部11の外周面下端から当該ポスト接続部11と離れる向きに延設され、シャント抵抗5(後述する)との連結部として構成されている(図2(a)参照)。なお、連結部12の、ポスト接続部11の下端に近接した部位は、上方に突出するよう成形されており、このことによって連結部12の剛性が高められている。
前述のハーネス接続端子2は、導電性を有するボルト(ここではスタッドボルト)として構成されている。一方、このハーネス接続端子2に接続されるハーネス80の端部には、図1に示すように、端子81が設けられている。当該端子81の略中央部には、ハーネス接続端子2を挿通可能な貫通孔(図示略)が形成されている。図1に示すように、ハーネス80の端子81にハーネス接続端子2を差し込み、更に図略のナット等を締め付けることにより、ハーネス接続端子2に対してハーネス80が電気的及び機械的に接続される。
前述のコネクタ3は、当該バッテリー状態検知装置100の検出結果をECUなどへ出力するためのインタフェースとして構成されている。その内部には、図1中に破線で示すように出力端子(カプラ端子)31が設けられている。この出力端子31は、同じく図1中に破線で示す回路基板6と電気的に接続されている。
前述のケーシング4は、樹脂により、細長い略直方体状に形成されている。ケーシング4は、ポスト接続部11より遠い側が開放された中空状に形成されており、その内部に、回路基板6等を収容するための収容空間が形成されている。このケーシング4は、シャント抵抗5の一部と、ポスト接続部11の連結部12の一部と、をそれぞれ成形金型内に挿入した状態でのインサート成形により構成されている(詳細は後述する)。
シャント抵抗5は、折曲加工された板状体により構成されている。さらに、シャント抵抗5は、第1導体51と、第2導体52と、抵抗値が既知である抵抗体53(例えばマンガニン)と、から構成されている。
シャント抵抗5においては、製造方法に係る図10(a)に折曲加工前の状態を示すように、何れも平板状の第1導体51、第2導体52、及び抵抗体53が、抵抗体53を間にして帯状に一体化されている。第1導体51及び第2導体52は、抵抗体53に一端面を突き当てた状態で、抵抗体53と接合されている。
第1導体51、抵抗体53、及び第2導体52が並べられる方向は、シャント抵抗5の長手方向と一致している(図10(a)参照)。さらに、図2(a),(b)に示すように、第2導体52が、長手方向の所定の位置において略直角に折り曲げられており、第2導体52の一部(ここでは長手方向の略1/2)が、ハーネス接続端子取付部(以下では「取付部」と称する)55となっている。取付部55においては、前述のようにスタッドボルトとして形成されたハーネス接続端子2が、予め形成されている第2導体貫通孔64に挿通され、根元の部位において、圧入等の方法により固定される。
シャント抵抗5には、回路基板6に接続する基板接続端子61,62が設けられている(図10(e)参照)。当該基板接続端子61,62は、細長い板状の金属部材の両端部を、同じ方向を向くようにそれぞれ垂直に折り曲げて形成されている。その折り曲げられた両端部は、回路基板6との接続部として機能し、回路基板6に半田付け等によって接続されている。
基板接続端子61,62の折り曲げられていない中間部は、シャント抵抗5の第1導体51及び第2導体52の板面のそれぞれに溶接(抵抗溶接など)によって取り付けられている。そして、回路基板6には、銅箔等の導電体から形成された回路パターン及びそれに実装された電子部品等によって電子回路が構成されている。以上により、シャント抵抗5は、当該基板接続端子61,62を介して、回路基板6に対して機械的に接続されるとともに、上記の電子回路に対して電気的に接続される。
回路基板6は、ポスト接続端子1から見てシャント抵抗5より遠い側に配置される(図10(h)参照)。また、回路基板6は、その厚み方向がシャント抵抗5の厚み方向と平行となるように配置される。回路基板6は、ケーシング4内に収容され、ケーシング4内に突設されたリブ(図示略)、位置決めピン(図10(h)中の符号83参照)、及び回転規制ピン(図示略)等に係止している。回路基板6の所定の部位は、矩形板状に成形されたウレタン樹脂(封止用樹脂)製の封止材(図示略)によって封止されている。そして、ケーシング4の開放端側に板状のアッパーケース85(ケース部材)が接合され、回路基板6がケーシング4内に封入される。
回路基板6は、当該回路基板6に実装されている上記の電子回路によって、基板接続端子61,62を介し、シャント抵抗5の第1導体51、第2導体52の電位差を測定することができる。測定された電位差の情報は、シャント抵抗5の抵抗体53に流れる電流の大きさを取得する等のために用いられる。
さらに、回路基板6は、コネクタ3内の出力端子31(図1参照)に電気的に接続されている。そして、回路基板6は、上記抵抗体53に発生する電位差から電流の大きさを計算し、この電位差及び電流の大きさ等に基づいてバッテリー90の状態を検知するとともに、その結果を、コネクタ3の出力端子31を介してECU等へ出力する。
このような回路基板6を収容したケーシング4の、バッテリー90への取り付けは、前述したポスト接続端子1やホルダ22等を用いて行われている。図2(a)、(b)に示すように、ポスト接続端子1には、C字状に一部を開放した前述のポスト接続部11と、ポスト接続部11に連続して一体成形されている把持部11a,11bとが備えられている。
把持部11a,11bの間には、接地用端子としても機能する所定の長さのバッテリーポスト端子ボルト(以下では「BP端子ボルト」と称する)21が挿入されている。BP端子ボルト21は、軸方向の一端に径方向へ張り出したフランジ部を有し、フランジ部を下方に向けて、把持部11a,11bの間に進入している。
ホルダ22は、角部を有するC字状(或いはコ字状)の断面を備えた板状体であり、BP端子ボルト21を貫通させるための丸孔22aを有している。ホルダ22は、開放端を下向きにし、把持部11a,11bの間から上方に突出したBP端子ボルト21を、丸孔22aに通している。そして、ホルダ22は、ポスト接続端子1の把持部11a,11bに上方から被せられている。
ホルダ22には、上方から締付ナット(締結部材)23、ホルダ22を強く押圧するための締付ナット(締結部材)23が取り付けられている。把持部11a,11bには、下方に拡がるテーパ面が形成されており、締付ナット23を回転させると、ホルダ22が軸方向に押圧される。この結果、把持部11a,11bの上面テーパ面が、把持部11a,11bを収縮する方向に押され、ポスト接続端子1がバッテリーポスト91に固定される。
なお、コネクタ3の下方においては、ケーシング4に凹部4eが形成されている。この凹部4eは、図1中に座標で示す上下方向については、コネクタ3の基端部からケーシング4の下端に達し、左右方向については、コネクタ3の左端から右端を幾分超える部位に達している。そして、この凹部4eにより、コネクタ3に所定の端子を接続する場合に手指や工具などの一部を入り込ませることが可能な作業スペースが確保されている。
続いて、シャント抵抗5の固定構造について説明する。本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、ポスト接続端子1の連結部12(図2(a)参照)は、ポスト接続部11の外周面の下端から後方(回路基板6に近づく向き)に延びる壁部として形成されている。そして、連結部12の後端部(回路基板6に近い端部)はほぼ垂直に折り曲げられ、当該部分に、シャント抵抗5を固定するためのシャント抵抗接続部13が形成されている(図10(d),(e)参照)。
シャント抵抗接続部13は、縦壁部として構成されており、左右方向及び上下方向に延びる壁面を有する。そして、シャント抵抗接続部13においてポスト接続部11側を向く面(固定面)に、シャント抵抗5(具体的には、第1導体51)の厚み方向一側の面が接触した状態で、例えば抵抗溶接等の適宜の方法によって固定されている。
これにより、シャント抵抗5を、その上下、左右、前後の各方向へのズレを生じることなく、シャント抵抗接続部13を介して支持することができる。また、本実施形態では、連結部12に対してシャント抵抗接続部13がL字状に接続している部分の内側にシャント抵抗5の一端部を配置しているので、シャント抵抗5の下端面を連結部12に接続するように溶接するのに加えて、シャント抵抗5の厚み方向一側の面をシャント抵抗接続部13に接続するように溶接することができる。この結果、シャント抵抗5の固定強度を向上させることができる。
シャント抵抗5は、前述のインサート成形により、取付部55を除く大部分をケーシング4の樹脂壁内に進入させている(図2(a),(b)参照)。そして、シャント抵抗5の、第1導体51から第2導体52の略1/2の部分までが、ケーシング4の樹脂材料により覆われ、板面や端面を密に樹脂材料に接した状態で、樹脂材料と一体に結合されている。
図2(a),(b)に示すように、ケーシング4には、第1及び第2の2つの幅方向規制部(幅方向固定部)71,72が突設されている。これらの第1幅方向規制部71及び第2幅方向規制部72は、ケーシング4の成形時に、ケーシング4の樹脂材料により一体に形成される。両幅方向規制部71,72は、ケーシング4の本体から所定量突出し、取付部55の外向きに露出した板面と略同程度の位置に達している。そして、両幅方向規制部71,72は、取付部55の幅方向(図1に示す座標の左右方向)における両端面に全長に亘って密に接し、取付部55を幅方向から挟んでいる。つまり、両幅方向規制部71,72は、取付部55の幅方向の両側にそれぞれ配置されており、取付部55の幅方向両端部を覆うように形成されている。
なお、第1幅方向規制部71と第2幅方向規制部72のうちの少なくとも一方、及び、第1長手方向規制部73と第2長手方向規制部74のうちの少なくとも一方は、シャント抵抗5の端面に接するのみでなく、シャント抵抗5の上面に回り込んで幾分(例えば数mm程度)被さり、当該上面に接するように成形されていてもよい。このようにすることで、取付部55の幅方向での固定をより一層強固に行うことができる。
第1幅方向規制部71及び第2幅方向規制部72は、第2導体52における取付部55以外の部分についても、幅方向における両端面に密に接している。具体的には、シャント抵抗5の第2導体52には、図2(a)に示すように、取付部55の基端側に連続した折曲部56や、折曲部56に連続してケーシング4の本体内に向かう平板状の基端側露出部57が形成されている。そして、両幅方向規制部71、72は、取付部55のみでなく、折曲部56や基端側露出部57に対しても幅方向の両端面に接し、折曲部56や基端側露出部57を幅方向から挟んでいる。
ここで、折曲部56を形成することにより、折曲部56を形成せずにシャント抵抗5の全体を平板状とした場合に比べ、例えば、シャント抵抗5の幅方向へ作用する力や、シャント抵抗5に作用する水平方向へのねじりの力などに対する強度が高められている。
第1幅方向規制部71及び第2幅方向規制部72の各々の先端部には、第1長手方向規制部(長手方向固定部)73、及び、第2長手方向規制部(長手方向固定部)74がそれぞれ一体に形成されている。第1及び第の長手方向規制部73,74は、対応する各幅方向規制部71,72から、略水平方向へL字状に曲がって向かい合うように延び、取付部55の先端面55aに達している。各長手方向規制部73,74は、取付部55の先端面55aに接しており、各長手方向規制部73,74と、取付部55の先端面55aとが接している部位の長さは、ここでは数mm程度となっている。そして、先端面55aの大部分は、図2(b)に示すように、両長手方向規制部73,74の間から露出している。なお、取付部55の長手方向における端部は、上述のように取付部55の幅方向の一部のみでなく、取付部55の幅方向の全長に渡って長手方向規制部により覆われていてもよい。
なお、図4(a)には、バッテリー状態検知装置100の背面を示しており、図4(b)には、取付部55の近傍の部位を拡大して示している。さらに、図4(b)に符号4fで示すのは、背面に開口した穴部である。この穴部4fは、取付部55の下方の部位において、樹脂成形されている部分の所定の奥行に達している。そして、穴部4fは、樹脂成形されている部分の肉厚を一定な程度に保ち成形に不具合が生じないようにすることや、適切な位置にリブを形成することなどの役割を果たしている。
さらに、本実施形態においては、取付部55の、先端面55aを含む先端部が、ケーシング4の背面4cの側に幾分突出している。このため、両長手方向規制部73,74は、ケーシング4の背面4c側へ張り出した位置に存在している。
なお、本実施形態においては、第1幅方向規制部71及び第2幅方向規制部72のそれぞれには、ケーシング4から略垂直に立ち上がった立壁部71a、72aが一体に形成されている。さらに、第1幅方向規制部71及び第2幅方向規制部72は、取付部55、折曲部56、及び基端側露出部57の側面形状に対応した形状を有している。そして、各幅方向規制部71、72の外観形状は、シャント抵抗5のケーシング4から露出した部分の外形に略整合し、当該部分の側面を立壁部71a,72aによって隠すものとなっている。
また、図2(b)に破線の楕円Aで囲って示すように、両幅方向規制部71,72のうち、第2幅方向規制部72と、ケーシング4の上側面4dとの境界部には、曲面部75が形成されており、第2幅方向規制部72と、ケーシング4の上側面4dとは、曲面部75を介して連続している。この曲面部75の曲率半径は、例えば1〜数mm程度となっている。
このようなシャント抵抗5の固定構造によれば、取付部55を、第1幅方向規制部71及び第2幅方向規制部72により、幅方向両側から挟み込んで固定しているので、シャント抵抗5の幅方向の固定を強固に行うことができる。そして、取付部55に幅方向(図1の座標における左右方向)への力が作用したような場合に、当該力をケーシング4へ分散させることができ、取付部55に発生する応力を低減することができる。
また、各幅方向規制部71,72の先端部には、第1長手方向規制部73及び第2長手方向規制部74がそれぞれ設けられている。これらの長手方向規制部73,74は、各幅方向規制部71,72から連続して取付部55の先端側に回り込み、先端面55aに接している。このため、取付部55に、長手方向(図1の座標における前後方向)への力が作用したような場合にも、当該力をケーシング4へ分散させることができ、取付部55に発生する応力を低減することができる。
さらに、本実施形態のバッテリー状態検知装置100においては、図2(a),(b)に示すように、ケーシング4に設けられた第1及び第2の幅方向規制部71,72や、第1及び第2の長手方向規制部73,74によって、ケーシング4とシャント抵抗5との結合強度が高められている。したがって、小型で且つ高強度なバッテリー状態検知装置100が実現されている。
また、ケーシング4の長手方向(図1の座標における左右方向)と、高さ方向(図1の座標における上下方向)のそれぞれについて、ポスト接続端子1、ハーネス接続端子2、及びコネクタ3等の分散配置により、負荷をケーシング4に分散したうえで、シャント抵抗5を、第1及び第2の幅方向規制部71,72や、第1及び第2の長手方向規制部73,74によって強固に固定している。したがって、ポスト接続端子1、ハーネス接続端子2、及びコネクタ3等の配置と、シャント抵抗5の固定構造とで、相乗的に応力の発生を抑制でき、各部の歪等の発生を、より確実に防止することができる。
また、取付部55に固定されるハーネス接続端子2には、ハーネス80を固定するナット(図示略)からの締付け力(締付トルク)や、ハーネス80の張力などが作用する。しかし、本実施形態のバッテリー状態検知装置100によれば、これらの力が単独で、或いは複合的に作用したとしても、両幅方向規制部71,72や、両長手方向規制部73,74によって、これらの力をケーシングに分散させることができ、取付部55に発生する応力を低減することができる。
続いて、本実施形態(第1実施形態)のバッテリー状態検知装置100における、各備品の配置に係る特徴的な構成について説明する。なお、以下の説明においては、各構成の相対的な位置関係等を説明するために、図1等に示す矢印に従って定義された「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、及び「下」を用いる場合がある。ただし、これらの向きの定義は便宜的なものであって、バッテリー状態検知装置100を設置する向きや凹部92の位置等は適宜変更することができる。前後方向と上下方向とは互いに垂直であり、前後方向と左右方向とは互いに垂直であり、上下方向と左右方向とは互いに垂直である。
このバッテリー状態検知装置100は、従来のバッテリー状態検知装置(例えば、特許文献1に開示するバッテリー状態検知装置)に比べて、ポスト接続端子1とケーシング4(回路基板6)とが並べられる方向での寸法、及びケーシング4の長手方向における寸法が、何れも小さく構成されている。
具体的に説明する。本実施形態において、バッテリーポスト91は上下方向を向くように配置されている。これに対応して、バッテリー状態検知装置100においては、図1に示すように、ポスト接続端子1が備えるポスト接続部11の軸方向が上下方向を向くように、当該ポスト接続端子1が配置されている。
図1に示すように、バッテリー90に形成される凹部92は、上側、前側及び左側を開放させるように形成されている。バッテリー状態検知装置100が備えるケーシング4は、ポスト接続端子1の後方に配置されている。また、細長い直方体状に構成されたケーシング4は、その厚み方向が前後方向になるように、その長手方向が左右方向になるように、また、その幅方向が上下方向になるように向けられている。そして、当該ケーシング4に収容される回路基板6も、その厚み方向、長手方向及び幅方向が、ケーシング4の厚み方向、長手方向及び幅方向とそれぞれ一致するように配置されている。
このように、ケーシング4及び回路基板6を立てた姿勢で配置することで、本実施形態のバッテリー状態検知装置100の前後方向における幅を狭くすることができる。これにより、図1に示すように、バッテリーポスト91と凹部92の内壁面との間の狭いスペースにケーシング4を配置できるので、DIN規格のバッテリー90の凹部92にバッテリー状態検知装置100を収めることが可能になる。
そして、本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、図1に示すように、ポスト接続端子1及びコネクタ3は、ケーシング4の厚み方向の一側(図1においては、ケーシング4の前側)に配置されている。また、バッテリーポスト91の軸方向(上下方向)で見たときに、ハーネス接続端子2及びコネクタ3は、ケーシング4の厚み方向の一側(前側)に突出するよう構成されている。さらに、ハーネス接続端子2は、ポスト接続端子1の側に突出した位置には存在せず、ケーシング4の上部(右側の上部)に配置されている。
これにより、ポスト接続端子1、ハーネス接続端子2及びコネクタ3をケーシング4の長手方向の寸法内に収めて配置することが容易になる。この結果、バッテリー状態検知装置100の左右方向における寸法をケーシング4の長手方向の寸法と等しくすることができるので、バッテリー状態検知装置100の左右方向(ケーシング4の長手方向)における寸法を小型化できる。従って、図1に示すように、DIN規格のバッテリー90の凹部92でもバッテリー状態検知装置100を配置することが可能になる。
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、ポスト接続端子1にはBP端子ボルト21、ホルダ22、及び締付ナット23が取り付けられる。そして、締付ナット23を水平方向に回転させ、バッテリーポスト91の軸方向と平行に締め付けていくことでポスト接続端子1がバッテリーポスト91に固定される。このため、例えば前述の特許文献1に開示するバッテリー状態検知装置のような構成(バッテリーポスト端子(特許文献1中の符号101)を図略のボルト及びナットによって斜め方向に締め付ける構成)に比べて、ポスト接続端子1を締め付けるための部分の左右方向における寸法を小さく構成することができる。
上記で説明したように、本実施形態のバッテリー状態検知装置100は、ポスト接続端子1とケーシング4とが並べられる方向(図1の座標における前後方向)での寸法、及びケーシング4の長手方向(図1の座標における左右方向)における寸法が、何れも小さく構成され、また、ポスト接続端子1の締め付ける部分の左右方向における寸法も小さく構成されているので、バッテリー状態検知装置100の全体の構成が小さくなり、配置の自由度が高くなる。
従って、本実施形態のバッテリー状態検知装置100を、図1に示すように、ケーシング4の厚み方向が前後方向となるようにバッテリーポスト91に取り付けることができるとともに、ケーシング4の厚み方向が図1における左右方向となるように、バッテリーポスト91に取り付けることもできる。
具体的にいうと、上述したように、バッテリー90に形成される直方体状の凹部92は、上側、前側及び左側を開放させるように形成されている。また、凹部92において、開放側と反対側(下側、後側及び右側)には内壁部が形成されている。図1の構成では、バッテリー状態検知装置100のケーシング4が、直方体状の凹部92における後側の内壁部92aに、背面4cを近接させるように配置されている。
しかしながら、当該バッテリー状態検知装置100を、バッテリーポスト91の軸まわりに平面視で時計回りに90°回転するように向きを変更して、そのケーシング4の背面4cが凹部92における右側の内壁部92bに近接するように配置(図示略)してもよい。また、ケーシング4の背面4cが、凹部92の左側の開放部から露出するように配置(図示略)してもよい。さらに、図示は省略するが、ケーシング4を、その背面が凹部92の前側の開放部から露出するように配置してもよい。
知られているように、バッテリー90が取り付けられる車両の構成によって、バッテリー状態検知装置100に接続されるハーネスの配置が異なる。この点、本実施形態のバッテリー状態検知装置100においては、その構成のコンパクト化を実現できているので、上記のように当該バッテリー状態検知装置100の配置位置を柔軟に変化させることによって、ハーネスが様々な方向に配索される場合でも容易に接続することができる。
なお、ポスト接続部11の軸方向(上下方向)で見たときや、図3に示すようにポスト接続部11の径方向(図1の座標の前後方向)で見たときに、ハーネス接続端子2は、ケーシング4の長手方向一端側(右側)における上部に配置され、コネクタ3はケーシング4の長手方向他端側(左側)にそれぞれ配置されている。ポスト接続端子1のポスト接続部11の少なくとも一部は、水平方向及び上下方向に関して斜めの位置関係を有するハーネス接続端子2とコネクタ3との間の空間10に配置されている。言い換えれば、バッテリーポスト91の軸線(ポスト接続部11の軸線)を前後斜め、及び上下斜めに挟んで、ハーネス接続端子2が一方に、コネクタ3が他方側に配置されている。
以上により、バッテリー状態検知装置100の位置ズレ(バッテリーポスト91の軸を中心とするような回転方向の振れ回り)を防止する構成が実現される。即ち、組立作業時に配線が引っ張られる等の何らかの理由によって、ハーネス接続端子2に接続するハーネス80及びコネクタ3に接続する配線(図略)を介してケーシング4に力が加えられることがある。しかしながら、本実施形態のレイアウトによれば、ハーネス接続端子2及びコネクタ3に加わる力は、ケーシング4の長手方向における両側に分散される。従って、バッテリー状態検知装置100が位置ズレしにくくなり、その取付位置を好適に維持することができる。
更に、本実施形態のバッテリー状態検知装置100は、上記の構成により小型化が実現されているので、バッテリー90の凹部92に配置された状態で、ケーシング4と凹部92の内壁部92a,92bとの間にある程度の大きさの隙間を形成することができる。この結果、例えばバッテリーポスト91の位置等に誤差が生じたとしても、上記の隙間によって容易に吸収し、バッテリー状態検知装置100を問題なく取り付けることができる。
ここで、本実施形態においては、ケーシング4に、第1及び第2の幅方向規制部71,72や、第1及び第2の長手方向規制部73,74が設けられており、第1及び第2の長手方向規制部73,74が、ケーシング4の背面4cの側へ幾分突出している。このため、バッテリー状態検知装置100が位置ズレした場合に、両長手方向規制部73,74が、凹部92の後側の内壁部92aに、ケーシング4の本体よりも先に干渉して、位置規制に寄与する場合も想定できる。
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置100においては、図1中に二点鎖線で示すように、ハーネス80を、様々な方向でハーネス接続端子2へ配線することが可能である。
具体的に説明すると、本実施形態のバッテリー状態検知装置100においては、シャント抵抗5の取付部55は、図2(a),(b)示すように、ポスト接続部11から離れる側(後側)に垂直に曲げて形成されている。取付部55はケーシング4に近い部分で曲げられているので、ケーシング4との境界部から折曲部56までの距離が短くなり、取付部55の根元部の強度が、十分に高く確保される。
取付部55は、その厚み方向を上下方向に向けた平板状に形成されている。この取付部55には、ハーネス接続端子2が垂直に突出するように、圧入等の適宜の方法で固定されている。以上により、ハーネス接続端子2への配線であるハーネス80を、上下方向に垂直な平面内で自由に配置することができる。なお、図1には、ハーネス80の配置に関する複数の変形例が二点鎖線で示されている。
ハーネス接続端子2に接続されたハーネス80が意図に反して回転することを防止するために、ハーネス80の端子81には回転止め部82が設けられている。回転止め部82は、例えば図1に示すように、端子81の先端の一部を折り曲げることにより構成することができる。ただし、この回転止め部82は省略することもできる。
このように、本実施形態では、ハーネス接続端子2をケーシング4の上方に配置できるので、ハーネス接続端子2の周囲のスペースを広く確保することができる。この結果、ハーネス接続端子2への配線の自由度を向上させることができる。
また、本実施形態では、ハーネス接続端子2とコネクタ3とが、バッテリーポスト91の軸方向(上下方向)にズレて配置されている。具体的には、図1及び図2に示すように、ハーネス接続端子2は、ケーシング4の上方に配置されている。また、ハーネス接続端子2は、ポスト接続端子1が備えるポスト接続部11より上方に配置されている。ハーネス接続端子2は、ケーシング4の右側における真上の部位に位置し、ポスト接続部11に対して、斜め上方に配置されている。一方、コネクタ3は、バッテリーポスト91の軸方向に垂直な向きでポスト接続部11の上部に並ぶように配置され、ケーシング4の前面から前方に突出するように設けられている。
即ち、バッテリーポスト91の根元に近い側にポスト接続部11が配置され、バッテリーポスト91の根元から遠い側にはハーネス接続端子2が配置される。さらに、ケーシング4の高さ方向(図1の座標における上下方向)について、バッテリーポスト91とハーネス接続端子2との間に、コネクタ3が配置されており、いわば3段階の振分け装置が実現されている。これにより、組立作業時に配線が引っ張られる等の何らかの理由によって、ハーネス接続端子2に接続するハーネス80及びコネクタ3に接続する配線(図略)を介してケーシング4に力が加えられても、その力が上下方向で分散される。従って、バッテリー状態検知装置100が位置ズレしにくくなるとともに、ポスト接続部11における接続の緩み等を防止することができる。
また、バッテリーポスト91の軸方向で見た場合には、ケーシング4の長手方向においてポスト接続部11(バッテリーポスト91)の一側ではハーネス接続端子2が斜め方向の後側に配置され、ポスト接続部11の他側にはコネクタ3が配置される。バッテリーポスト91の軸方向で見た場合に、ポスト接続部11、とコネクタ3は、ケーシング4の厚み方向において何れも同じ側に配置され、ハーネス接続端子2はケーシング4に重なって配置されている。また、バッテリーポスト91の軸方向で見た場合に、ポスト接続部11とコネクタ3は、ケーシング4の長手方向に沿って並んで配置され、ハーネス接続端子2はケーシング4の上方に配置されている。これにより、バッテリー状態検知装置100を全体的に小型化することができる。
さらに、ポスト接続端子1は、回路基板6の厚み方向(前後方向)に当該回路基板6と並んで配置されている。回路基板6の厚み方向の一方側(前側)において、ポスト接続端子1のポスト接続部11の少なくとも一部は、ハーネス接続端子2とコネクタ3との間の空間10に配置されている。
これにより、前述の特許文献1に示された従来例のように回路基板(106)やケース(104)の軸方向一側にバッテリーポスト端子(101)を配置する構成に比べて、図1に示すように、ケーシング4とポスト接続端子1とが並ぶ方向におけるバッテリー状態検知装置100の寸法(前後方向の寸法)を小さくすることができる。
また、従来例のように、回路基板(106)やケース(104)の長手方向の両端側から長手方向に沿って更に突出するようにハーネス接続部(102)及びコネクタ(103)をそれぞれ配置する構成に比べて、図1に示すように、ケーシング4(回路基板6)の長手方向におけるバッテリー状態検知装置100の寸法(左右方向の寸法)を小さくすることができる。この結果、上記の2つの方向におけるバッテリー状態検知装置100の省スペース化が両立でき、装置全体の小型化を実現することができる。
また、上下方向で見たときに、ハーネス接続端子2とコネクタ3とがポスト接続端子1の両側に配置されているので、それらに接続する配線に何らかの理由で力が加えられても、その力がバッテリー状態検知装置100の1箇所に集中して作用することを回避できる。従って、バッテリー状態検知装置100が位置ズレしにくくなるので、バッテリー状態検知装置100の取付位置を好適に維持することができる。
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、ハーネス接続端子2は、バッテリーポスト91の軸方向において、ポスト接続端子1に対しても、コネクタ3に対しても、(上側に)ズレた位置に配置されている。
これにより、ハーネス接続端子2の周囲のスペースを広く確保することができるので、ハーネス接続端子2への配線の配置自由度を向上することができる。また、ハーネス接続端子2とコネクタ3とが上下方向にズレて配置されているので、それらに接続する配線に何らかの理由で力が加えられても、その力がバッテリー状態検知装置100の上下方向における1箇所に集中して作用することなく、上下方向に分散される。従って、バッテリー状態検知装置100が位置ズレしにくくなるので、バッテリー状態検知装置100の取付位置を好適に維持することができる。
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、シャント抵抗5は、細長い板状に形成され、その長手方向が上下方向になるように配置されている部分を有する。シャント抵抗5は、下から順に配置された第1導体51と、抵抗体53と、第2導体52と、を備える。ハーネス接続端子2は第2導体52に設けられている。
これにより、シャント抵抗5の配置スペースを低減できるので、バッテリー状態検知装置100の省スペース化を実現できる。そして、上記のような簡単な構成で、上下方向において、ハーネス接続端子2をポスト接続端子1及びコネクタ3と離して配置することが容易になり、当該ハーネス接続端子2への配線の配置自由度を向上することが容易に実現できる。
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、ポスト接続端子1は、回路基板6に近づく向きに延びる板状の連結部12を備える。連結部12の回路基板6に近い端部には、折り曲げられて形成されたシャント抵抗接続部13が設けられる。シャント抵抗5は、シャント抵抗接続部13に固定されている。
これにより、シャント抵抗5を折曲げ状のシャント抵抗接続部13に固定するので、シャント抵抗5の向きの自由度を向上することができる。
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、シャント抵抗接続部13は、ポスト接続部11側を向く固定面を有する。シャント抵抗5は、細長い板状に形成される。シャント抵抗5の長手方向一側の端面(下端面)が、連結部12と接続される。シャント抵抗5の厚み方向一側の面(後側を向く面)が、シャント抵抗接続部13の前記固定面と接続される。
これにより、シャント抵抗5の2つの面を介して当該シャント抵抗5が固定されるので、固定部分の強度を容易に向上させることができ、シャント抵抗5の位置を好適に維持することができる。
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置100において、シャント抵抗5は、ケーシング4の一側(上側)から突出する取付部55を備える。ハーネス接続端子2は、取付部55に設けられている。これにより、取付部55の根元部の強度を向上させることができる。また、シャント抵抗5の長手方向におけるバッテリー状態検知装置100全体の構成をコンパクト化することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
先ず、本実施形態(第1実施形態)のバッテリー状態検知装置100におけるシャント抵抗5の固定構造は、図5及び図6に示す実施形態(第2実施形態)のバッテリー状態検知装置100sのように変形することが可能である。
第2実施形態においては、第2幅方向規制部72と、ケーシング4の上側面4dとの間の境界部に、補強部76が形成されている。この補強部76は、ケーシング4の成形時に、成形用の樹脂を用いて一体に形成されている。図5(a),(b)に示すように、この補強部76は、第2幅方向規制部72とケーシング4の上側面4dとの間を埋めており、第2幅方向規制部72とケーシング4の上側面4dとを、図6(a)に示すように、所定の傾斜角度θで形成された傾斜面76aにより連続させている。
第2実施形態では、傾斜面76aの傾斜角度θは、ケーシング4の上側面4dを基準として、上方へ45°に設定されている。さらに、補強部76の上部(頂上部)は、第2幅方向規制部72の上端部に達するとともに、第2幅方向規制部72より上方には達しないよう形成されている。また、補強部76の下部(裾部)は、ケーシング4の長手方向における、中間部の近傍よりも幾分手前の部位に位置している。
補強部76の前後方向の端面における形状は、ケーシング4に略整合する形状となっており、補強部76の幅(前後方向の寸法)は、ケーシング4の上側面4dの形状の寸法に合わせて、部位により幾分異なっている。
このような補強部76を設けることにより、第2幅方向規制部72に係る剛性を高めることができる。そして、シャント抵抗5における取付部55の近傍で、ハーネス接続端子2から伝わる力をより多くケーシング4で負担することができ、バッテリー状態検知装置100sの強度を向上することが可能になる。
なお、補強部76の傾斜角度θは、45°に限らず他の角度(例えば30°など)とすることも可能である。この場合、補強部76の高さを変更せず、補強部76となる部分の体積を、傾斜角度を45°とした場合よりも大とすることが可能である。また、傾斜角度を30°のようにした場合には、補強部76の高さを、傾斜角度が45°である場合よりも低くすることが可能である。
さらに、出願人は、第1実施形態及び第2実施形態に係るバッテリー状態検知装置100,100sに関して、所定の方法による応力検証(応力解析)を行った。応力検証にあたっては、ハーネス接続端子2について、軸周りに所定の大きさのトルク(締付トルク)を印加する条件の下で、部分破壊の可能性や、防水性の確認を行った。そして、いずれの条件においても、許容値を超えるような応力は発生しなかった。
さらに、バッテリー状態検知装置は、図7に示す第3実施形態のように構成することも可能である。図7に示すバッテリー状態検知装置100tは、第1実施形態のバッテリー状態検知装置100(図2(a),(b)参照)と比較すると、シャント抵抗5の取付部55tが、折り曲げられておらず、ケーシング4の上方に突出している。ハーネス接続端子2は、ケーシング4の前面側(前側)から背面側(後側)へ水平に延び、先端をケーシング4の背面側に向けている。ここで、この第3実施形態においては、取付部55tを「突出部」と称することも可能である。
このようなタイプのバッテリー状態検知装置100tに対しては、図示は省略するが、ハーネス(図1の符号80参照)は、端子(図1の符号81参照)を縦にし、取付部55tと略平行に向けた状態や、所定程度傾いた状態で、端子(同じく符号81参照)にハーネス接続端子2を差込む。そして、図略のナット等が締め付けられ、ハーネス接続端子2に対してハーネス80(図1の符号80参照)が電気的及び機械的に接続される。
図7に示すバッテリー状態検知装置100tによれば、ハーネス接続端子2の大部分(或いは全て)を、ケーシング4の幅方向(図1の座標における左右方向)内に収めた状態で、ハーネス接続端子2を設置できる。そして、ハーネス接続端子2を、ケーシング4の幅方向内に突出させずに配置でき、バッテリー状態検知装置100tを小型化することが可能である。また、シャント抵抗5に、例えば第1実施形態のような折曲部56を形成しないことから、折り曲げられた部分に応力集中が生じることを防止できる。
次に、バッテリー状態検知装置の製造工程について、第1実施形態のバッテリー状態検知装置100を例として、図10を参照して簡単に説明する。
先ず、図10(a)に示すように、シャント抵抗5が、第1導体51、抵抗体53、第2導体52を接合して平板状に形成される。本実施形態においては、シャント抵抗5の長手方向について、第1導体51と抵抗体53は同程度の長さに形成されており、第2導体52は、第1導体51や抵抗体53よりも数倍程度長く形成されている。第2導体52の先端側の部位には、真円状の第2導体貫通孔64が形成されている。
続いて、図10(b)に示すように、ハーネス接続端子2となるスタッドボルトが、第2導体貫通孔64に通され、基端側のフランジ部を第2導体52に係止させた状態で圧入加工される。スタッドボルトは、軸方向を第2導体52の厚み方向に向けた状態で、第2導体52に固定される。
図10(c)に示すように、シャント抵抗5が、第2導体52における、ハーネス接続端子2よりも抵抗体53の側に偏倚した部位で、プレス等により、幅方向を折目として厚み方向に折り曲げられる。シャント抵抗5の折り曲げ角度は略90°であり、第2導体には、前述の取付部55や折曲部56が形成される。第2導体52の、折曲部56よりも抵抗体53の側の部分は、前述した基端側露出部57を構成する部分となる。
続いて、図10(d)に示すように、シャント抵抗5を、取付部55の側を上方として、ポスト接続端子1のシャント抵抗接続部13に、溶接等により固定する。さらに、図10(e)に示すように、シャント抵抗5の第1導体51及び第2導体52に、基板接続端子61,62を、上下に離間して対向した状態で、溶接等によって取り付ける。基板接続端子61,62は、左右の先端を、取付部55の先端面55aと同じ方向に向けている。
さらに、シャント抵抗5が固定されたポスト接続端子1、及び、コネクタ3の出力端子31を、図略の金型内に挿入した状態で、所定の樹脂を当該金型内に注入することにより、図10(f)に示すように、ケーシング4をインサート成形する(ケーシング成形工程)。なお、上記のようにケーシング4をインサート成形することにより、シャント抵抗5が取り付けられた複雑な形状のポスト接続端子1に適合するケーシング4を容易に構成して、内部の構造を好適に保護することができる。また、図10(a)〜(f)に示す工程を工程1(ケーシング成形工程)として分類し、以降に説明する図10(g)〜(h)の工程を、工程1に続く工程2(基板封止工程)として分類することが可能である。
続いて、図10(g)に示すように、BP端子ボルト21、ホルダ22、及び締付ナット23が、ポスト接続端子1に組み付けられて組立品(ホルダやナットのアセンブリ)となる。この際、ポスト接続端子1の把持部11a,11bに通されたBP端子ボルト21に、ホルダ22と締付ナット23が組み付けられる。そして、ホルダ22の向きを保ったまま、締付ナット23をBP端子ボルト21に対して回転させ、ホルダ22を軸方向に押圧する。これにより、シャント抵抗5等がインサートされたケーシング4と、ホルダ22等のアセンブリとが一体化される。
図10(h)は、図10(g)のケーシング4等を、ポスト接続端子1の側に90°倒して、ケーシング4の開放端を情報に向けた状態を示している。図10(h)に示す状態においてウレタン樹脂を用いたポッティング(ウレタンポッティング)が行われ、ケーシング4の内部に所定量のウレタン樹脂が注入される。この一方で、前述の回路基板6が、電子部品の実装の後、所定の検査工程を経て、図10(h)に示すようにケーシング4に組み合される。そして、回路基板6は、ウレタン樹脂の上方から、ケーシング4に収容される。
回路基板6は、長方形の一隅部を切欠いた外形を有しており、ケーシング4の四方の内壁は、回路基板6の外形に略整合する形状で形成されている。ケーシング4の内部においては、回路基板6が、ケーシング4の厚み方向の所定の位置(この状態での所定の深さ)で略水平に支持される。回路基板6には、所定数のスルーホール78や位置決め孔79等が形成されている。
回路基板6は、位置決め孔79に、ケーシング4の内壁に形成された位置決めピン83を通して位置決めされている。回路基板6のスルーホール78には、ケーシング4内に突出したコネクタ3の出力端子(カプラ端子)31や、シャント抵抗5の基板接続端子61,62が差し込まれ、これらの端子が回路基板6にはんだ付けされる。
ケーシング4の内部においては、回路基板6の電子部品が、ポッティングされたウレタン樹脂に到達しており、回路基板6の実装面や、シャント抵抗5の基板接続端子61,62の先端部等が、ウレタン樹脂に浸漬される。そして、回路基板6の実装面や基板接続端子61,62の先端部がウレタン樹脂によりコーティングされ、凝固したウレタン樹脂が前述の封止材(図示略)となって、回路基板6に対する防湿や防塵等の対策が施される。
図10(i)に示すように、ケーシング4の開放端に、ケーシング4の蓋となる長方形状のアッパーケース85が装着される。アッパーケース85は、ケーシング4の開放端に整合する形状や寸法で形成されており、その外周縁部を、ケーシング4の開放端における外周縁部に沿わせ、超音波溶着等の方法によりケーシング4に接合されている。そして、キャリブレーション(較正)や所定の機能検査を経て、図10(j)に示す本実施形態のバッテリー状態検知装置100が完成する。
このように、本実施形態のバッテリー状態検知装置100は、ケーシング成形工程(図10(a)〜(f)参照)と、基板封止工程(図10(g)〜(j)参照)とを含む方法で製造されている。ケーシング成形工程(図10(a)〜(f)参照)では、シャント抵抗5の一部を収容するケーシング4を、当該シャント抵抗5と一体化させるようにインサート成形する。基板封止工程(図10(g)〜(j)参照)では、ケーシング4に回路基板6を収容した状態で、回路基板6の部分的なモールドや、アッパーケース85の接合を行う。
これにより、シャント抵抗5の位置や形状に合わせたケーシング4を容易に形成することができる。また、回路基板6に部分的なモールドが行われるとともに、ケーシング4の開放端がアッパーケース85により密に閉じられているので、水や異物等の進入を回避でき、回路基板6を良好に保護することができる。
なお、図10(c)に示すハーネス接続端子2の向きを逆にし、シャント抵抗5の折曲げ加工を省略することで、図7に示す第3実施形態のバッテリー状態検知装置100tを形成することが可能である。
また、上述した第1実施形態から第3実施形態のバッテリー状態検知装置100,100s,100tは、以下に説明するような各種の変形も可能である。例えば、右から順にハーネス接続端子2、ポスト接続端子1、コネクタ3を配置する構成に限定せず、必要に応じて、ハーネス接続端子2とコネクタ3との位置を入れ替えても良い。即ち、図示は省略するが、バッテリー状態検知装置の右側から順に、コネクタ3、ポスト接続端子1、ハーネス接続端子2を配置しても良い(第1変形例)。この構成のバッテリー状態検知装置も、第1実施形態から第3実施形態に示すバッテリー状態検知装置100等と同様に、小型化を良好に実現することができる。また、図1に示すコネクタ3に代えて、大型のコネクタを用いても良い。
これまでに説明したバッテリー状態検知装置100等は、バッテリー90における正極及び負極のうち何れのバッテリーポスト91に取り付けられても良い。また、このように、これまでに説明したバッテリー状態検知装置100等は小型化が良好に実現できているので、DIN規格のバッテリー90に対して取り付ける電極の正負が制限されない。
また、ケーシング4の外形形状に関しても変形が可能である(第2変形例)。これまでに説明した各実施形態や変形例では、ケーシング4の上側を向く面は平坦であるが、ケーシング4の上部に膨らみ部(図示略)を形成してもよい。この膨らみ部をコネクタ3の上側(コネクタ3の挿抜方向で見たときにコネクタ3の上側)に形成することにより、コネクタ3に端子を接続する際に、作業者がケーシング4を保持するために掴む部分を確保することができるので、作業性を向上できる。
これまでに説明した各実施形態や変形例では、コネクタ3は、コネクタ3の長手方向(言い換えると、出力端子31が配列される方向)と左右方向とが一致するように配置されている。コネクタ3の長手方向の向きはこれに限定されず、コネクタ3の長手方向が垂直方向(具体的には上下方向)と一致していても良い。
また、これまでに説明したように、コネクタ3を、コネクタ3の長手方向と左右方向とが一致するように配置した場合、図8のバッテリー状態検知装置100z(第3変形例)に示すように、コネクタ3の下側において、ケーシング4に切欠き4bを形成することもできる。切欠き4bを形成することで、コネクタ3に端子を接続する際に、作業者がケーシング4を保持するために手を入れるスペースを形成することができるので、作業性を向上できる。なお、切欠き4bを形成して作業性を向上させる構成は、上記各実施形態や各変形例に適用することもできる。
上記各実施形態や各変形例では、ボルトとして構成されたハーネス接続端子2にハーネス80が取り付けられている。しかしながら、これに限定されず、ハーネス接続端子2とハーネス80とが電気的に接続することができれば、他の構成でも可能である。更に、ハーネス接続端子2を設けずに、ハーネス80を溶接等の方法で直接にシャント抵抗5の第2導体52に接続してもよい。
また、上記各実施形態や各変形例では、シャント抵抗5の全周を取り囲むようにケーシング4をインサート成形しているが、これに限定されず、図9に示す第4変形例のように、シャント抵抗5の一部が、ケーシング4の内壁面に露出するようにインサート成形を行い、ケーシング4の内部に、モールド樹脂7を注入して、シャント抵抗5や回路基板の封止を行うことも可能である。
図9に示す例では、ケーシング4の成形時に、シャント抵抗5の位置を規制するために、規制部41,42が形成される。規制部41,42は、シャント抵抗5の幅方向両側を規制するように、その両側にそれぞれ1つずつ設けられている。具体的に説明すると、ケーシング4は、シャント抵抗5の厚み方向一側の面を覆い、他側の面(ケーシング4の開放側である後側の面)を露出させるようにインサート成形される。そして、規制部41,42、シャント抵抗5において露出している面の幅方向両端部を覆うように構成されている。これにより、シャント抵抗5がケーシング4によって厚み方向及び幅方向で挟まれるので、シャント抵抗5を動かさないように容易に、且つ好適に固定することができる。
この第4変形例に係る回路基板6の封止は、以下のように行うことが可能である。例えば、回路基板6がケーシング4に組み付けられた後には、ケーシング4の内部の隙間を埋めるように当該ケーシング4の開放側からモールド樹脂7を注入して、当該ケーシング4をモールドにより封止する(モールド封止工程)。このように樹脂で封止することにより、水、油、塵埃等の異物の侵入を回避できるので、ケーシング4に封止された回路基板6を保護することができる。
また、樹脂が硬化することで、モールド樹脂7がケーシング4に固定される。ここで、ケーシング4に対するモールド樹脂7の密着力(保持力)は、ケーシング4とモールド樹脂7の接触面積に比例する。従って、例えばケーシング4の内側の側面(厚み方向が上下方向又は左右方向に一致する部分の内面、回路基板6の外縁に臨む面)に凹凸を形成することで、ケーシング4に対するモールド樹脂7の密着力を向上することができる。なお、凹凸の形状は任意であり、例えば円形状又は多角形状(例えば、矩形状又は三角形状)の凸部又は凹部が形成される構成であっても良い。なお、凹凸はケーシング4の内側の側面の全体に形成しても良いし、一部のみに形成しても良い。凹凸をケーシング4の内側の側面の一部のみに形成する場合、例えば回路基板6が配置される箇所よりも開放側(後側)に形成されていることが好ましい。
なお、本実施形態では、図9に示すように、ケーシング4の開放側の端面(後側を向く面)と、モールド樹脂7の外部に露出する面(後側を向く面)と、は前後方向における位置が一致している。この構成に代えて、ケーシング4の開放側の端面が、モールド樹脂7の外部に露出する面よりも後側に位置するように構成しても良い。これにより、例えば工具又はバッテリー90等がモールド樹脂7に接触しないように保護することができる。なお、モールド樹脂7よりもケーシング4の方が硬いので、モールド樹脂7を好適に保護することができる。なお、ケーシング4の開放側の端面の全部が、モールド樹脂7よりも後側であっても良いし、ケーシング4の開放側の端面の一部のみがモールド樹脂7よりも後側であっても良い。
なお、ケーシング4に注入されたモールド樹脂7が外部に露出する面は、ケーシング4の背面に存在する。そして、モールド樹脂7の、ケーシング4の外部に露出する面は、バッテリー状態検知装置100をバッテリー90に取り付けたときに、略垂直な面となる。これにより上部から落ちてきた水、油、塵埃等の異物がモールド樹脂7に付着しても、自重によってすぐに落下することになる。従って、水分等がモールド樹脂7の部分に長時間滞在することを防止できるので、ケーシング4に収容される回路基板6を一層良好に保護することができる。
なお、これまでに説明した各実施形態(第1〜第3実施形態)の何れのバッテリー状態検知装置100,100s,100tに対して、各変形例のうちの第1〜第4変形例を適用することが可能である。さらに、各実施形態や各変形例に係るバッテリー状態検知装置100等は、DIN規格以外のバッテリーに取り付けられていても良い。また、バッテリーポスト91の向きは、上下方向に限定されず、横向き(図1等における左右方向や前後方向)に配置されていてもよい。
さらに、前述したバッテリー状態検知装置の製造工程は一例であり、一部の工程の順序を変更したり、2つの工程を同時に行ったり、他の工程を追加したりしても良い。
また、これまでの各実施形態や変形例における記述は、本発明に係るバッテリー状態検知装置及びその製造方法の一例を示すものであり、本発明は、これに限定されるものではない。本発明におけるバッテリー状態検知装置及びその製造方法の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。