以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。以下の説明では便宜上、図1の手前側及び奥側をそれぞれ「前」及び「後」とし、図1の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」、上側及び下側をそれぞれ「上」及び「下」とする。図1及び図2に示すように、実施形態による制震壁1は、上方に開口する箱状に形成された収容部2を備えている。収容部2は、前後の外壁3、4と、前外壁3と後外壁4の間に設けられた仕切り壁5と、前後の外壁3、4及び仕切り壁5の左端部に一体に設けられた左側壁6と、前後の外壁3、4及び仕切り壁5の右端部に一体に設けられた右側壁7と、前後の外壁3、4及び仕切り壁5の下端部に一体に設けられた底壁8を有している。これらの壁3〜8はいずれも、矩形状の鋼板で構成されており、前後の外壁3、4及び仕切り壁5は、前後方向及び左右方向に延びるとともに比較的大きな面積を有し、左右の側壁6、7は縦長に、底壁8は横長に、それぞれ形成されている。
また、前後の外壁3、4の上端部には、溜まり部3a、4aがそれぞれ設けられており、溜まり部3a、4aは、前後にそれぞれ突出するとともに、仕切り壁5よりも上方に若干、延びている。前後の外壁3、4及び仕切り壁5には、前後方向に貫通する複数の挿入孔3b、4b、5aがそれぞれ形成されている。各挿入孔3b、4b、5aには、ボルト9が前方から挿入されており、ボルト9には、後方からナット10が締め付けられている。なお、挿入孔3b、4b、5aには、後述する粘性体20の漏れを防止するための環状のシール(図示せず)が設けられている。また、前後の外壁3、4の上下方向の中央の各々には、補強材11が設けられており(前外壁3のもののみ図示)、補強材11は、断面がコ字状の溝型鋼で構成されるとともに、対応する外壁3、4の左右方向の全体に延びている。
これらのボルト9、ナット10及び補強材11は、後述する粘性体20の圧力により前後の外壁3、4が前方及び後方にそれぞれ膨らむのを防止するためのものである。また、挿入孔3bの縁部と挿入孔5aの縁部との間、及び、挿入孔5aの縁部と挿入孔4bの縁部との間にはそれぞれ、リング状のスペーサ(図示せず)が設けられており、これらのスペーサによって、前外壁3と仕切り壁5との間、及び、仕切り壁5と後外壁4との間に、所定の間隔がそれぞれ保持されている。また、底壁8の前端部及び後端部には、上下方向に貫通する複数のボルト孔が形成されており、これらのボルト孔は互いに左右方向に並んでいる。さらに、収容部2内には、前外壁3、仕切り壁5、左右の側壁6、7及び底壁8によって第1室2aが画成されており、後外壁4、仕切り壁5、左右の側壁6、7及び底壁8によって第2室2bが画成されている。
また、制震壁1は、矩形状の鋼板で構成されたフランジ15と、上述した収容部2に、上下方向及び左右方向に移動自在に部分的に収容された前後の内壁16、17を備えている。フランジ15は、横長に形成されており、底壁8と同じ前後方向及び左右方向の長さを有している。また、フランジ15の前端部及び後端部には、上下方向に貫通する複数のボルト孔が形成されており、これらのボルト孔は互いに左右方向に並んでいる。
上記の前後の内壁16、17の各々は、矩形状の鋼板で構成され、前後方向及び左右方向に延びるとともに、比較的大きな面積を有しており、その左右方向の長さが、前後の外壁3、4のそれよりも小さい。また、前後の内壁16、17の各々の上端は、フランジ15の下面に、第1及び第2裏当金18、19を用いた突合わせ溶接によって取り付けられている。この場合、この突合わせ溶接は次のようにして行われる。
すなわち、まず、フランジ15の下面の前後方向の中央部に、鋼材で構成された第1裏当金18を一体に設ける。第1裏当金18は、左右方向に延びており、その左右方向の長さが、フランジ15のそれよりも小さく、かつ前後の内壁16、17のそれよりも大きく、左右方向に直交する断面が四角形状に形成されている。第1裏当金18は、その上面がフランジ15の下面に接触した状態で、その前面18a及び後面18bの上端の左端部及び右端部が、フランジ15の下面の左端部及び右端部に溶接によりそれぞれ取り付けられるとともに、その後面18bの上端の左右方向の中央部が、フランジ15の下面の左右方向の中央部に、溶接により取り付けられる。図3(a)〜(c)は、この場合におけるフランジ15及び第1裏当金18を示しており、第1裏当金18は、フランジ15から下方に突出している。同図において、W1は、上述したように溶接された溶接金属である。
次に、第1裏当金18の下面に、複数、例えば3つの第2裏当金19、19、19を部分的に一体に設ける。各第2裏当金19は、第1裏当金18と同様、鋼材で構成され、その左右方向に直交する断面が四角形状に形成されていて、その左右方向の長さが第1裏当金18のそれの1/3よりも小さく設定されており、第1裏当金18と同じ前後方向の幅を有している。3つの第2裏当金19、19、19は、第1裏当金18の下面の左端部、中央部及び右端部にそれぞれ設けられる。
より具体的には、第1裏当金18の下面の左端部に位置する第2裏当金19は、その上面が第1裏当金18の下面に接触し、かつ、その前面19a、後面19b及び左側面19cが第1裏当金18の前面18a、後面18b及び左側面18cとそれぞれ面一の状態で、左側面19cの上端の前後方向の中央部が、第1裏当金18の左側面18cの下端の前後方向の中央部に溶接により取り付けられるとともに、右側面19dの上端の前後方向の中央部が、第1裏当金18の下面の左端部の前後方向の中央部に溶接により取り付けられている。また、第1裏当金18の下面の中央部に位置する第2裏当金19は、その上面が第1裏当金18の下面に接触し、かつ、その前面19a及び後面19bが第1裏当金の前面18a及び後面18bとそれぞれ面一の状態で、左右の側面19c、19dの上端の前後方向の中央部が、第1裏当金18の下面の左右方向及び前後方向の中央部に溶接により取り付けられている。
第1裏当金18の下面の右端部に位置する第2裏当金19は、その上面が第1裏当金18の下面に接触し、かつ、その前面19a、後面19b及び右側面19dが第1裏当金18の前面18a、後面18b及び右側面18cとそれぞれ面一の状態で、右側面19dの上端の前後方向の中央部が、第1裏当金18の右側面18dの下端の前後方向の中央部に溶接により取り付けられるとともに、左側面19cの上端の前後方向の中央部が、第1裏当金18の下面の右端部の前後方向の中央部に溶接により取り付けられている。図4(a)及び(b)ならびに図5(a)及び(b)は、この場合におけるフランジ15、第1及び第2裏当金18、19を示しており、第2裏当金19は、第1裏当金18から下方に突出している。これらの図において、W2は、上述したように溶接された溶接金属である。
なお、図4及び図5では便宜上、第1裏当金18の下面の右端部に位置する第2裏当金19の左側面19cの図示を省略するとともに、第1裏当金18の下面の左端部及び中央部にそれぞれ位置する第2裏当金19、19の右側面19d、19dの図示を省略しているが、これらの左右の側面19c、19d、19dにおける溶接金属W2の位置は、上述したように、図5(b)に示す第2裏当金19の左側面19cにおける溶接金属W2の位置と同じである。また、第2裏当金19は、前後の内壁16、17を仮付けするためのものであるので、第1裏当金18への第2裏当金19の取付けは、簡易な溶接によって行われ、これらの溶接金属W2の断面積(左右方向に直交する断面の面積)は、互いにほぼ同じで、比較的小さい。このため、第1裏当金18と第2裏当金19との溶接部分に、欠陥はほとんど生じないので、この溶接部分に対して、非破壊検査は行われない。
次に、前後の内壁16、17の各々の上端に、開先加工を施し、それにより、前内壁16の前面の上端の角部を斜めに切削するとともに、後内壁17の後面の上端の角部を斜めに切削し、レ形の開先を形成する。なお、開先の形状は、これに限らず、他の適当な形状を採用してもよい。
次いで、第2裏当金19に前内壁16を仮付けする。具体的には、前内壁16の上端とフランジ15の下面との間に若干の隙間を存した状態で、前内壁16の後面の上端及び上端部を、第1及び第2裏当金18、19の前面18a、19aにそれぞれ接触させる。その状態で、前内壁16の左側面の上端部を、左側の第2裏当金19の前面19aの左部に溶接により仮付けし、前内壁16の右側面の上端部を、右側の第2裏当金19の前面19aの右部に溶接により仮付けするとともに、前内壁16の後面の上端部の左右方向の中央部を、中央の第2裏当金19の下面の前端部に溶接により仮付けする。図6〜図8は、この場合におけるフランジ15、前内壁16、第1及び第2裏当金18、19を示している。
図6及び図7に示すように、フランジ15、第1及び第2裏当金18、19の左端部及び右端部(第2裏当金19については、3つの第2裏当金19、19、19の全体としての左端部及び右端部)は、前内壁16の左端部及び右端部よりも左右方向の外方にそれぞれ位置している。図6〜図8において、Wfl、Wfm、Wfrは、上述したように溶接された溶接金属である。なお、図8では図示の便宜上、これらの溶接金属Wfl、Wfm、Wfrにハッチングを付している。このことは、後述する図10、図12及び図15についても同様に当てはまる。
次に、後内壁17を、前内壁16と同様にして、第2裏当金19に仮付けする。具体的には、後内壁17の上端とフランジ15の下面との間に若干の隙間を存した状態で、後内壁17の前面の上端及び上端部を、第1及び第2裏当金18、19の後面18b、19bにそれぞれ接触させる。その状態で、後内壁17の左側面の上端部を、左側の第2裏当金19の後面19bの左部に溶接により仮付けし、後内壁17の右側面の上端部を、右側の第2裏当金19の後面19bの右部に溶接により仮付けするとともに、後内壁17の前面の上端部の左右方向の中央部を、中央の第2裏当金19の下面の後端部に溶接により仮付けする。
図9及び図10は、この場合におけるフランジ15、後内壁17、第1及び第2裏当金18、19を示している。これらの図において、Wrl、Wrm及びWrrは、上述したように溶接された溶接金属である。図9に示すように、フランジ15、第1及び第2裏当金18、19の左端部及び右端部(第2裏当金19については、3つの第2裏当金19、19、19の全体としての左端部及び右端部)は、後内壁17の左端部及び右端部よりも左右方向の外方にそれぞれ位置している。
次に、第1裏当金18及びフランジ15に前内壁16を本付けする。具体的には、前内壁16の上端を、第1裏当金18の前面18a及びフランジ15の下面に突合わせ溶接により取り付け、本付けする。図11及び図12は、この場合におけるフランジ15、前内壁16、第1及び第2裏当金18、19を示している。これらの図において、WFMは、上述したように溶接された溶接金属である。
図12に示すように、また、図5(b)と図12から明らかなように、前内壁16の上端と第1裏当金18の前面18a及びフランジ15の下面とに溶接された溶接金属WFMの断面積(左右方向に直交する断面の面積)は、第1及び第2裏当金18、19の左右の側面18c、19c、18d、19dに溶接された溶接金属W2の断面積よりも大きい。
次に、図13に示すように、フランジ15の下面と第1裏当金18の後面18bの上端の左右方向の中央部とに溶接された溶接金属W1をガウジングにより除去する。次いで、後内壁17の本付けを、前内壁16のそれと同様にして行う。すなわち、後内壁17の上端を、第1裏当金18の後面18b及びフランジ15の下面に突合わせ溶接により取り付け、本付けする。図14及び図15は、この場合におけるフランジ15、前後の内壁16、17、第1及び第2裏当金18、19を示している。これらの図において、WRMは、上述したように溶接された溶接金属である。
図15に示すように、また、図5(b)と図15から明らかなように、後内壁17の上端と第1裏当金18の後面18b及びフランジ15の下面とに溶接された溶接金属WRMの断面積は、第1及び第2裏当金18、19の左右の側面18c、19c、18d、19dに溶接された溶接金属W2の断面積よりも大きい。
次に、前内壁16の上端と第1裏当金18の前面18a及びフランジ15の下面との溶接部分(以下「前内壁16の本溶接部分」という)、及び、後内壁17の上端と第1裏当金18の後面18b及びフランジ15の下面との溶接部分(以下「後内壁17の本溶接部分」という)の割れなどの欠陥の有無を、非破壊検査、例えば超音波探傷検査により判定する。これにより、これらの前後の内壁16、17の本溶接部分に対して、欠陥が有ると判定された場合には、ガウジングで欠陥部分を除去した後に、補修溶接を行う。
以上のようにしてフランジ15に取り付けられた前後の内壁16、17は、収容部2内の前記第1及び第2室2a、2bにそれぞれ収容されており、第1及び第2裏当金18、19によって、所定の間隔が前後の内壁16、17の間に保持されている。また、前後の内壁16、17の前面及び後面の各々には、複数のスペーサ(図示せず)が取り付けられており、これらのスペーサが対応する前外壁3、仕切り壁5及び後外壁4の1つに接触することによって、前外壁3と前内壁16との間、前内壁16と仕切り壁5との間、仕切り壁5と後内壁17との間、後内壁17と後外壁4との間に、比較的小さい所定の間隔がそれぞれ保持されている。
さらに、前後の内壁16、17には、前後方向に貫通する複数の横長の長孔16a、17aがそれぞれ形成されている(図2にはそれぞれ1つのみ図示)。これらの長孔16a、17aの各々は、前記ボルト9に対応して設けられており、上下方向の幅がボルト9の径よりもかなり大きくなっている。以上の構成により、前後の内壁16、17は、これらの長孔16a、17aの範囲内で、収容部2に対して上下方向及び左右方向に移動自在である。
なお、上述した製造方法では、後内壁17の仮付けを行った後に、前内壁16の本付けを行っているが、これとは逆に、前内壁16の本付けを行った後に、後内壁17の仮付けを行ってもよい。また、フランジ15に第1裏当金18を取り付けるために、フランジ15の下面に第1裏当金18の後面18bの上端の左右方向の中央部を溶接しているが、この溶接を行わなくてもよく、その場合には、図13を用いて説明したガウジングによる溶接金属W1の除去工程が不要になる。
また、制震壁1は、粘性体20をさらに備えている。粘性体20は、粘性が比較的高い流体、例えばポリイソブチレンから成る流体で構成されており、第1室2aにおける前内壁16と、前外壁3、仕切り壁5、左右の側壁6、7及び底壁8との間に充填されるとともに、第2室2bにおける後内壁17と、後外壁4、仕切り壁5、左右の側壁6、7及び底壁8との間に充填されている。
以上の構成の制震壁1は、構造物、例えば高層の建築物の上梁BUの下面に、フランジ15が取り付けられるとともに、この建築物の下梁BDの上面に、底壁8が取り付けられる。この場合、フランジ15の前記複数のボルト孔の各々及び上梁BUに形成された複数のボルト孔の各々に、ボルトを挿入するとともに、このボルトにナット(いずれも図示せず)を締め付けることによって、フランジ15が上梁BUの下面に固定される。同様に、底壁8の前記複数のボルト孔の各々及び下梁BDに形成された複数のボルト孔の各々に、ボルトを挿入するとともに、このボルトにナット(いずれも図示せず)を締め付けることによって、底壁8が下梁BDに固定される。
以上のように、実施形態によれば、収容部2が、上方に開口した箱状に形成されており、建物の下梁BDに連結される。また、鋼材で構成されたフランジ15が、水平方向に延びるとともに、下梁BDよりも上側の上梁BUに連結される。フランジ15には、鋼材で構成された第1裏当金18が一体に設けられており、第1裏当金18は、左右方向に延びる前面18a及び後面19aを有するとともに、フランジ15から下方に突出している。また、第1裏当金18には、鋼材で構成された第2裏当金19が一体に設けられている。第2裏当金19は、左右方向に延びる前面19a及び後面19bを有するとともに、第1裏当金18から下方に突出しており、その前面19a及び後面19bは、第1裏当金18の前面18a及び後面18bとそれぞれ面一になっている。
さらに、矩形状の鋼板で構成された前内壁16が、上下方向及び左右方向に延びていて、その後面の上端部が、第2裏当金19の前面19aに接触した状態で、第2裏当金19の下面に溶接により仮付けされており、前内壁16の上端は、フランジ15の下面及び第1裏当金18の前面18aに、突合わせ溶接により取り付けられている。また、矩形状の鋼板で構成された後内壁17が、上下方向及び左右方向に延びていて、その前面の上端部が、第2裏当金19の後面19bに接触した状態で、第2裏当金19の下面に溶接により仮付けされており、後内壁17の上端は、フランジ15の下面及び第1裏当金18の後面18bに、突合わせ溶接により取り付けられている。
さらに、前後の内壁16、17の上端部以外の部分は、上方から収容部2内の第1及び第2室2a、2bに移動自在にそれぞれ収容されており、収容部2内には、前後の内壁16、17との間に、粘性体20が設けられている。以上の構成の制震壁1では、例えば地震などにより建物が振動するのに伴い、上梁BUと下梁BDの間で左右方向の相対変位が発生すると、それに伴って前後の内壁16、17が収容部2に対して左右方向に移動し、前後の内壁16、17及び収容部2の間の粘性体20のせん断抵抗が、前後の内壁16、17及び収容部2を介して上下の梁BU、BDにそれぞれ作用することにより、建物の振動が抑制される。
この場合、前後の内壁16、17の上端部と第2裏当金19の下面との溶接部分(以下「仮付け溶接部分」という)は、仮付けした部分であるため、前述した従来の場合と同様、非破壊検査(例えば超音波探傷検査)で判定されるような欠陥が有っても、問題はない。また、前後の内壁16、17の上端部が仮付けされるのは、この従来の場合と異なり、第1裏当金18よりも下側の第2裏当金19の下面であり、仮付け溶接部分は、この第2裏当金19の分、前後の内壁16、17の上端、フランジ15の下面、第1裏当金18の前面18a及び後面18bから下方に離れた場所に位置している。
このため、前後の内壁16、17の本溶接部分(前後の内壁16、17の上端とフランジ15の下面及び第1裏当金18の前面18a及び後面18bとの溶接部分)の欠陥の有無を非破壊検査(例えば超音波探傷検査)により判定し、本溶接部分に欠陥があると判定されたときに補修溶接を行うような場合において、実際には、本溶接部分に欠陥が無く上記の仮付け溶接部分に欠陥が有るようなときに、前述した従来の場合と異なり、仮付け溶接部分の欠陥が本溶接部分の欠陥として誤判定されるのを防止することができる。したがって、補修溶接が本溶接部分に無駄に行われるのを防止でき、それにより、製造作業の効率を高めることができる。
また、前述したように、前内壁16の本溶接部分は、前内壁16の上端とフランジ15の下面、及び第1裏当金18の前面18aとの溶接部分であり、後内壁17の本溶接部分は、後内壁17の上端とフランジ15の下面、及び第1裏当金18の後面18bとの溶接部分である。これに対して、第2裏当金19の前面19a及び後面19bの左端部及び右端部が、前後の内壁16、17の左端部及び右端部よりも左右方向の外方にそれぞれ位置しており、前後の内壁16、17の左側面の上端部及び右側面の上端部が、左側の第2裏当金19の前面19a及び後面19bの左部、ならびに、右側の第2裏当金19の前面19a及び後面19bの右部に、溶接によりそれぞれ仮付けされている。すなわち、前後の内壁16、17の左側面の上端部及び右側面の上端部が、3つの第2裏当金19、19、19の全体としての前面19a及び後面19bの左端部及び右端部に、溶接によりそれぞれ仮付けされている。
これらの仮付けされた前後の内壁16、17の左側面の上端部と第2裏当金19の前面19a及び後面19bの左端部との溶接部分、及び、前後の内壁16、17の右側面の上端部と第2裏当金19の前面19a及び後面19bの右端部との溶接部分は、本溶接部分に対して、左右方向の外方にずれた場所に位置している。このため、非破壊検査を本溶接部分に対して行う場合に、これらの仮付けされた溶接部分についても、前述したような誤判定を防止することができる。また、前内壁16(後内壁17)が第2裏当金19に、前内壁16(後内壁17)の後面(前面)の上端部、前内壁16(後内壁17)の左右の側面の上端部から成る計3箇所の部分で仮付けされるので、この仮付けを強固に行うことができ、ひいては、前後の内壁16、17の突合わせ溶接を支障なく行うことができる。
また、第1裏当金18は、前後の内壁16、17が仮付けされる第2裏当金19をフランジ15に連結するものであるため、第1裏当金18をフランジ15に溶接により取り付ける場合に、フランジ15と第1裏当金18との溶接部分に非破壊検査で判定されるような欠陥が有っても、問題はない。さらに、第1裏当金18の左端部及び右端部が、前後の内壁16、17の左端部及び右端部よりも左右方向の外方にそれぞれ位置するとともに、その前面18a及び後面18bの左端部及び右端部が、フランジ15の下面の左端部及び右端部に溶接によりそれぞれ取り付けられている。
以上の構成から明らかなように、フランジ15と第1裏当金18との溶接部分は、前後の内壁16、17の本溶接部分に対して、左右方向の外方にずれた場所に位置している。このため、例えば非破壊検査を前後の内壁16、17の本溶接部分に対して行った場合に、フランジ15と第1裏当金18との溶接部分の欠陥が本溶接部分の欠陥として誤判定されるのを防止できるので、この誤判定に応じた補修溶接が本溶接部分に無駄に行われるのが防止され、ひいては、製造作業の効率を高めることができる。同じ理由により、前内壁16の本溶接部分の突合わせ溶接を行う際に、フランジ15の下面と第1裏当金18の前面18aとに溶接された溶接金属W1を除去する必要がないので、このことによっても、製造作業の効率を高めることができる。
さらに、第2裏当金19が、第1裏当金18に溶接により取り付けられている。第2裏当金19は前後の内壁16、17の仮付けに用いられるものであるため、第2裏当金19と第1裏当金18との溶接部分に、非破壊検査で判定されるような欠陥が有っても、問題はない。これに対して、実施形態によれば、図4及び図5に示すように、第2裏当金19と第1裏当金18とに溶接された溶接金属W2が、第1裏当金18の左右の側面18c、18dの下端及び第2裏当金19の左右の側面19c、19dの上端の前後方向の中央部に設けられており、前後の内壁16、17の上端とフランジ15の下面及び第1裏当金18の前面18a及び後面18bとにそれぞれ溶接された溶接金属WFM、WRMの直ぐ下に設けられておらず、この溶接金属WFM、WFRから前後方向に離れた位置に設けられている。
このため、非破壊検査を本溶接部分に対して行ったときに、第2裏当金19と第1裏当金18との溶接部分の欠陥が本溶接部分の欠陥として誤判定されるのを防止できるので、この誤判定に応じた補修溶接が本溶接部分に無駄に行われるのが防止され、ひいては、製造作業の効率を高めることができる。
また、3つの第2裏当金19、19、19が、互いに左右方向に並んだ状態で、第1裏当金18に部分的に一体に設けられている。このため、第2裏当金19を第1裏当金18に全体的に設けた場合と比較して、制震壁1の製造コスト(材料費)を削減することができる。
次に、図16〜図23を参照しながら、上述した実施形態の第1〜第8変形例について、実施形態と異なる点を中心に説明する。これらの図16〜23では、実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。図16は、第1変形例によるフランジ31及び第1裏当金32を示している。この第1変形例は、上述した実施形態と比較して、フランジ31及び第1裏当金32が鋳造により互いに一体成形されている点のみが異なっており、前者31及び後者32の寸法は、実施形態のフランジ15及び第1裏当金18のそれとそれぞれ同じである。
また、第1変形例では、図示しないものの、実施形態の場合と同様にして、第2裏当金19が第1裏当金32に取り付けられ、前後の内壁16、17が、第2裏当金19に溶接により仮付けされるとともに、フランジ31及び第1裏当金32に突合わせ溶接により本付けされる。このことは、後述する第2及び第3変形例についても同様に当てはまる。
以上のように、第1変形例によれば、フランジ31及び第1裏当金32が鋳造により互いに一体成形されているので、両者を互いに別体に成形するとともに、溶接などで一体に設ける場合と比較して、制震壁の製造工数を削減することができる。
また、図17は、実施形態の第2変形例によるフランジ41及び第1裏当金42を示している。この第2変形例は、実施形態と比較して、第1裏当金42がフランジ41に3つのボルト43、43、43を用いて取り付けられている点のみが異なっており、フランジ41及び第1裏当金42の寸法は、実施形態のフランジ15及び第1裏当金18のそれとそれぞれ同じである。
図17に示すように、フランジ41の左端部、左右方向の中央部及び右端部の各々には、その前後方向の中央部に、下方に開口するねじ穴が形成されている。また、第1裏当金42の左端部、左右方向の中央部及び右端部の各々には、上記のねじ穴に対応してボルト収容孔が形成されている。このボルト収容孔は、対応するボルト43の頭部を収容するための下側の拡径部と、ボルト43のねじ部が挿入される上側の縮径部で構成されており、上下方向に貫通するとともに、対応するねじ穴に連続している。各ボルト43は、対応する第1裏当金42のボルト収容孔に下方から挿入されるとともに、フランジ41のねじ穴にねじ込まれている。この状態では、ボルト43の頭部は、上記の拡径部に収容されるとともに、上記の縮径部に接触しており、ボルト43の頭部の頂面は、第1裏当金42の下面と面一になっている。
以上のように、第2変形例によれば、第1裏当金42がフランジ41にボルト43を用いて取り付けられているので、実施形態の場合と異なり、図13を用いて説明したガウジングにより溶接金属W1を除去する工程を不要にすることができる。
なお、第2変形例では、ボルト43を、下方から第1裏当金42を介して、フランジ41にねじ込んでいるが、これとは上下を逆にして、ボルトを、上方からフランジを介して、第1裏当金にねじ込んでもよい。あるいは、L字型の取付金具の一片をフランジの下面に接触させるとともに、この取付金具の他片を第1裏当金の水平方向の端部を構成する面に接触させた状態で、取付金具を介してボルトをフランジ及び第1裏当金のねじ穴にねじ込むことによって、フランジに第1裏当金を取り付けてもよい。また、ボルト43の数は、3つに限らず任意である。
また、図18は、実施形態の第3変形例によるフランジ51及び第1裏当金52を示している。この第3変形例は、実施形態と比較して、第1裏当金52がフランジ51に、凹部51aと凸部52aの嵌合によって取り付けられている点のみが異なっており、フランジ51及び第1裏当金52の寸法は、実施形態のフランジ15及び第1裏当金18のそれとそれぞれ同じである。
図18に示すように、上記の凹部51aは、フランジ51の下面の左端部、左右方向の中央部及び右端部にそれぞれ設けられており、これらの3つの凹部51a、51a、51aはいずれも、フランジ51の前後方向の中央部に配置されている。また、上記の凸部52aは、第1裏当金52の上面の左端部、左右方向の中央部及び右端部にそれぞれ一体に設けられている。これらの3つの凸部52a、52a、52aは、第1裏当金52の前後方向の中央部に配置されている。各凸部52aは対応する凹部51aに、きつく嵌合しており、それにより、上述したように、第1裏当金52がフランジ51に取り付けられている。
以上のように、第3変形例によれば、フランジ51の下面及び第1裏当金52の上面に、凹部51a及び凸部52aがそれぞれ設けられており、凸部52aが凹部51aに嵌合することによって、第1裏当金52がフランジ51に取り付けられている。このため、第2変形例の場合と同様、図13を用いて説明したガウジングにより溶接金属W1を除去する工程を不要にすることができる。
なお、第3変形例では、フランジ51に凹部51aを、第1裏当金52に凸部52aを、それぞれ設けているが、これとは逆に、フランジに凸部を、第1裏当金に凹部を、それぞれ設けてもよい。また、凹部51a及び凸部52aの数はそれぞれ、3つに限らず任意である。
また、図19は、実施形態の第4変形例によるフランジ15、第1及び第2裏当金61、62を示している。この第4変形例は、実施形態と比較して、3つの第2裏当金62、62、62の各々が第1裏当金61に、左右一対のボルト63、63を用いて取り付けられている点のみが異なっており、第1及び第2裏当金61、62の寸法は、実施形態の第1及び第2裏当金18、19のそれとそれぞれ同じである。また、フランジ15への第1裏当金61の取付けは、実施形態の場合と同様にして溶接により行われる。
図19に示すように、第1裏当金61の左端部、左右方向の中央部及び右端部の各々には、その前後方向の中央部に、下方に開口する左右一対のねじ穴が形成されている。また、各第2裏当金62の前後方向の中央部には、上下方向に貫通する左右一対の挿入孔が形成されている。左右一対のボルト63、63の各々は、対応する第2裏当金62の挿入孔に下方から挿入されるとともに、対応する第1裏当金61のねじ穴にねじ込まれている。また、実施形態と同様、第2裏当金62の前面及び後面は、第1裏当金61の前面及び後面とそれぞれ面一になっている。
また、第4変形例では、図示しないものの、実施形態の場合と同様にして、前後の内壁16、17が、第2裏当金62に溶接により仮付けされるとともに、フランジ15及び第1裏当金61に突合わせ溶接により本付けされる。このことは、後述する第5〜第8変形例についても同様に当てはまる。
以上のように、第4変形例によれば、第2裏当金62が第1裏当金61にボルト63を用いて取り付けられているので、この取付けを溶接により行うとともに第2裏当金と第1裏当金との溶接部分を本溶接部分に近い位置に設けた場合と異なり、この溶接部分の欠陥が本溶接部分の欠陥として誤判定されるようなことがないので、製造作業の効率を高めることができる。
なお、第4変形例では、ボルト63を、第2裏当金62を介して第1裏当金61にねじ込むことによって、第1裏当金61に第2裏当金62を取り付けているが、次のようにして取り付けてもよい。すなわち、第1裏当金の水平方向の端部に位置する2つの第2裏当金については、上下方向に延びるI字型の取付金具の上部の主面を第1裏当金の水平方向の端部を構成する面に接触させるとともに、I字型の取付金具の下部の主面を第2裏当金の水平方向の端部を構成する面に接触させた状態で、ボルトを、取付金具を介して第1及び第2裏当金のねじ穴にねじ込むことによって、第1裏当金に第2裏当金を取り付けてもよい。
また、第1裏当金の水平方向の中央部に位置する第2裏当金については、L字型の取付金具の一片を第1裏当金の下面に接触させるとともに、この取付金具の他片を第2裏当金の水平方向に直交する面に接触させた状態で、ボルトを、取付金具を介して第1及び第2裏当金のねじ穴にねじ込むことによって、第1裏当金に第2裏当金を取り付けてもよい。さらに、第2裏当金62に対するボルト63の数は、2つに限らず任意である。
また、第4変形例では、フランジ15に第1裏当金61を溶接により取り付けているが、第1変形例と同様、フランジ及び第1裏当金を鋳造により互いに一体に構成してもよい。あるいは、第3変形例と同様、凹部及び凸部を用いて、フランジに第1裏当金を取り付けてもよい。
また、図20は、実施形態の第5変形例によるフランジ71、第1及び第2裏当金72、73を示している。この第5変形例は、実施形態と比較して、上述した第4変形例の3組の左右一対のボルト63、63を延長した3組の左右一対のボルト74、74を用いて、第2裏当金73が第1裏当金72に取り付けられるとともに、第1裏当金72がフランジ71に取り付けられている点のみが、異なっており、第1及び第2裏当金71、72の寸法は、実施形態の第1及び第2裏当金18、19のそれとそれぞれ同じである。
図20に示すように、フランジ71の左端部、左右方向の中央部及び右端部の各々には、その前後方向の中央部に、下方に開口する左右一対のねじ穴が形成されている。また、第1裏当金72の左端部、左右方向の中央部及び右端部の各々には、その前後方向の中央部に、上下方向に貫通する左右一対の挿入孔が形成されている。さらに、第2裏当金73の前後方向の中央部には、第4変形例と同様、上下方向に貫通する左右一対の挿入孔が形成されている。左右一対のボルト74、74の各々は、対応する第2及び第1裏当金73、72の挿入孔に下方から挿入されるとともに、対応するフランジ71のねじ穴にねじ込まれている。また、実施形態と同様、第2裏当金73の前面及び後面は、第1裏当金72の前面及び後面とそれぞれ面一になっている。
以上により、第5変形例によれば、前述した第2及び第4変形例による効果を同様に得ることができる。また、フランジ71に第1裏当金72を取り付けるためのボルトと、第1裏当金72に第2裏当金73を取り付けるためのボルトとが、互いに共通のボルト74で構成されているので、それぞれ別個のボルトで構成した場合と比較して、制震壁の製造コストを削減することができる。
なお、第5変形例では、ボルト74を、下方から第2及び第1裏当金73、72を介して、フランジ71にねじ込んでいるが、これとは上下を逆にして、ボルトを、上方からフランジ及び第1裏当金を介して、第2裏当金にねじ込んでもよい。あるいは、L字型の取付金具の一片をフランジの下面に接触させるとともに、この取付金具の他片を第1及び第2裏当金の水平方向の端部を構成する面に接触させた状態で、ボルトを、取付金具を介してフランジ、第1及び第2裏当金のねじ穴にねじ込むことによって、フランジに第1裏当金を取り付けるとともに、第1裏当金に第2裏当金を取り付けてもよい。また、第2裏当金73に対するボルト74の数は、2つに限らず任意である。
さらに、第5変形例では、フランジ71に第1裏当金72を取り付けるためのボルト74と、第1裏当金72に第2裏当金73を取り付けるためのボルト74とを、互いに共通のボルトで構成しているが、互いに別個のボルトで構成してもよい。
また、図21は、実施形態の第6変形例によるフランジ15、第1及び第2裏当金81、82を示している。この第6変形例は、実施形態と比較して、3つの第2裏当金82、82、82の各々が第1裏当金81に、凹部81aと凸部82aの嵌合によって取り付けられている点のみが異なっており、第1及び第2裏当金81、82の寸法は、実施形態の第1及び第2裏当金18、19のそれとそれぞれ同じである。また、フランジ15への第1裏当金81の取付けは、実施形態の場合と同様にして溶接により行われる。このことは、後述する第7及び第8変形例についても同様に当てはまる。
図21に示すように、上記の凹部81aは、第1裏当金81の下面の左端部、左右方向の中央部及び右端部にそれぞれ設けられており、これらの3つの凹部81a、81a、81aはいずれも、第1裏当金81の前後方向の中央部に配置されている。また、上記の凸部82aは、3つの第2裏当金82、82、82の各々の上面の前後方向の中央部に一体に設けられている。各凸部82aは対応する凹部81aに、きつく嵌合しており、それにより、上述したように、第2裏当金82が第1裏当金81に取り付けられている。また、実施形態と同様、第2裏当金82の前面及び後面は、第1裏当金81の前面及び後面とそれぞれ面一になっている。
以上のように、第6変形例によれば、第1裏当金81の下面及び第2裏当金82の上面に、凹部81a及び凸部82aがそれぞれ設けられており、凸部82aが凹部81aに嵌合することによって、第2裏当金82が第1裏当金81に取り付けられている。このため、第1裏当金への第2裏当金の取付けを溶接により行うとともに第2裏当金と第1裏当金との溶接部分を本溶接部分に近い位置に設けた場合と異なり、この溶接部分の欠陥が本溶接部分の欠陥として誤判定されるようなことがないので、製造作業の効率を高めることができる。
なお、第6変形例では、第1裏当金81に凹部81aを、第2裏当金82に凸部82aを、それぞれ設けているが、これとは逆に、第1裏当金に凸部を、第2裏当金に凹部を、それぞれ設けてもよい。また、第6変形例では、フランジ15に第1裏当金18を溶接により取り付けているが、第1変形例と同様、フランジ及び第1裏当金を鋳造により互いに一体に構成してもよい。あるいは、フランジに第1裏当金を、第2変形例と同様にボルトを用いて取り付けてもよく、第3変形例と同様に凹部及び凸部を用いて取り付けてもよい。これらの場合にも、第2及び第3変形例について前述したバリエーションを適用してもよいことは、もちろんである。これらのフランジへの第1裏当金の取付けのバリエーションは、後述する第7及び第8変形例についても、同様に適用可能である。
また、図22は、実施形態の第7変形例によるフランジ15、第1及び第2裏当金18、91、91を示している。この第7変形例は、実施形態と比較して、第2裏当金91、91が、前後の内壁16、17用の前後一対の裏当金に分割されている点のみが異なっている。図示しないものの、これら一対の第2裏当金91、91は、実施形態の第2裏当金19と同様、第1裏当金18の下面の左端部、左右方向の中央部及び右端部の各々に一体に設けられている。また、各第2裏当金91の左右方向及び前後方向の長さは、実施形態の第2裏当金19のそれらとそれぞれ同じであり、第2裏当金91の前後方向の幅は、第1裏当金18の前後方向の幅の1/2よりも小さくなっている。
さらに、図22に示すように、前内壁16に対応する第2裏当金91は、その後面の上端が、第1裏当金18の上面の前後方向の中央部に溶接により取り付けられており、その前面が第1裏当金18の前面18aと面一になっている。また、後内壁17に対応する第2裏当金91は、その前面の上端が、第1裏当金18の上面の前後方向の中央部に溶接により取り付けられ、その後面が第1裏当金18の後面18bと面一になっており、前後一対の第2裏当金91、91の間には、隙間が設けられている。
以上のように、第7変形例によれば、前後の第2裏当金91、91の幅の各々が、第1裏当金18の幅の1/2よりも小さく、それらの全体としての幅が第1裏当金18の幅よりも小さいので、制震壁の製造コスト(材料費)を削減することができる。また、実施形態の場合と同様、溶接金属W2が溶接金属WFM、WRMから離れた位置に設けられているため、非破壊検査を本溶接部分に対して行ったときに、第2裏当金91と第1裏当金18との溶接部分の欠陥が本溶接部分の欠陥として誤判定されるのを防止できるので、この誤判定に応じた補修溶接が本溶接部分に無駄に行われるのが防止され、ひいては、製造作業の効率を高めることができる。
なお、第7変形例では、第1裏当金18に第2裏当金91を、溶接により取り付けているが、第4及び第5変形例と同様にボルトを用いて取り付けてもよく、第6変形例と同様に、凹部及び凸部を用いて取り付けてもよい。これらの場合にも、第4〜第6変形例について前述したバリエーションを適用してもよいことは、もちろんである。これらの第1裏当金への第2裏当金の取付けのバリエーションは、後述する第8変形例についても、同様に適用可能である。
また、図23は、実施形態の第8変形例によるフランジ15、第1及び第2裏当金18、101を示している。この第8変形例は、実施形態と比較して、第2裏当金101が第1裏当金18と同じ材料(鋼材)及び同じ寸法で構成されている点のみが異なっている。図23に示すように、第2裏当金101の左右の側面の上端の前後方向の中央部は、第1裏当金18の左右の側面の下端の前後方向の中央部に溶接によりそれぞれ取り付けられており、第2裏当金101の前面及び後面は、第1裏当金18の前面及び後面とそれぞれ面一になっている。
以上のように、第8変形例によれば、第1及び第2裏当金18、101が、互いに同じ材料及び同じ寸法で構成されているので、制震壁を容易に構成することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態及び第1〜第8変形例(以下、総称する場合「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明における内壁を前後の内壁16、17で構成しており、その数が2つであるが、1つでもよく、あるいは、3つ以上でもよい。このように1つの内壁を用いる場合には、第1裏当金の第1接触面と反対側の面の下端に第2裏当金の第2接触面と反対側の面の上端を溶接により取り付けてもよい。その場合には、第2裏当金と第1裏当金とに溶接された溶接金属を、実施形態の場合よりも、内壁の上端とフランジの下面及び第1接触面とに溶接された溶接金属から、第1及び第2接触面に直交する方向(前後方向)により離れた位置に設けることができる。このことは、3つ以上の内壁を用いる場合にも、同様に当てはまる。
また、実施形態では、第1裏当金18(32、42、52、61、72、81)の水平方向の長さを、フランジ15のそれよりも小さく設定しているが、図24に示す従来の場合と同様に、大きく設定してもよい。この場合において、実施形態や、第4変形例、第6〜第8変形例のように、フランジへの第1裏当金の取付けを溶接により行うときには、フランジの水平方向に直交する一方の側面及び他方の側面に、第1裏当金の上面の水平方向の一端部及び他端部を溶接によりそれぞれ取り付けてもよい。
さらに、実施形態及び第1〜第7変形例では、第2裏当金19(62、73、82、91)の数は、3つであるが、2つ又は4つ以上でもよい。また、実施形態では、第1及び第2裏当金18(32、42、52、61、72、81)、19(62、73、82、91、101)を、互いに別個の鋼材で構成しているが、互いに共通の鋼材で鋳造などにより一体成形してもよい。この場合、第1及び第2裏当金を構成する鋼材の上下方向の長さは、その下面がその上端から下方に離れることによって、前述した仮付け溶接部分の欠陥が本溶接部分の欠陥として誤判定されるのが防止できるような値に、設定される。
さらに、実施形態では、第1及び第2裏当金18(32、42、52、61、72、81)、19(62、73、82、91、101)を、前後の内壁16、17用の共通の裏当金として構成しているが、前内壁用の第1及び第2裏当金と、後内壁用の第1及び第2裏当金として別個に構成してもよい。また、実施形態では、粘性体20は、ポリイソブチレンから成る流体であるが、他の適当な粘性体でもよく、例えばシリコンオイルなどでもよい。さらに、実施形態では、下梁BD及び上梁BUに、収容部2及びフランジ15をそれぞれ、直接、連結しているが、間柱などを介して連結してもよい。また、実施形態では、本発明における第1及び第2部位はそれぞれ、建築物の下梁BD及び上梁BUであるが、構造物の他の適当な部位でもよく、例えば、構造物の地下構造体及び基礎梁でもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。