本発明の偏光板保護フィルムは、前記一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂と、マット剤を含有し、前記式(i)で定義されるリターデーション値Roが、0〜10nmの範囲内であり、前記式(ii)で定義されるリターデーション値Rtが、−10〜10nmの範囲内であり、かつ膜厚が5.0〜15.0μmの範囲内であることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明においては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、マット剤の含有量を、フィルム全質量の0.1〜0.5質量%の範囲内とすることが、フィルム表面に適正な凹凸構造を形成することができるとともに、ヘイズ等の上昇を抑えることができる点で好ましい。
また、偏光板保護フィルムが、ポリエステル系可塑剤を含有することが、フィルム弾性率、すべり性、フィルム膜面硬度が向上し、その結果、高品位の面品質を得ることができる点で好ましい。
また、本発明の偏光板においては、偏光子を挟んで、視認側に第1の保護フィルムT1と、他方の面側に第2の保護フィルムT2を有する構成で、保護フィルムT1及び保護フィルムT2の少なくとも一方を、本発明の偏光板保護フィルムで構成することが、プロセス反り及び熱反りが改良され、平面性、面品質及び視野角特性に優れた偏光板を得ることができる。
更には、保護フィルムT1又は保護フィルムT2が、紫外線吸収剤を含有している構成が、熱反り耐性を更に改良することができる観点から好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《偏光板保護フィルム》
本発明の偏光板保護フィルムでは、下記一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂と、マット剤を含有し、下記式(i)で定義されるリターデーション値Roが、0〜10nmの範囲内であり、下記式(ii)で定義されるリターデーション値Rtが、−10〜10nmの範囲内であり、かつ膜厚が5.0〜15.0μmの範囲内であることを特徴とする。
本発明の偏光板保護フィルムとしては、更には、ポリエステル系可塑剤を含有することが好ましい。また、偏光板の保護フィルムとして適用する際、紫外線吸収剤を含有することが好ましい形態である。
以下、本発明の偏光板保護フィルムの各構成要素、特性値、製造方法等の詳細を以下に説明する。
〔一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂〕
本発明の偏光板保護フィルムは、フィルム構成材料として、下記一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂を含有することを特徴とする。
上記一般式(1)において、Rは、炭素数が1〜3の直鎖又は分岐アルキル基を表す。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はi−プロピル基を表す。
本発明に係る一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂の好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inhで0.2〜5cm3/gの範囲内、更に好ましくは0.3〜3cm3/gの範囲内、特に好ましくは0.4〜1.5cm3/gの範囲内である。
数平均分子量(Mn)は、8000〜100000の範囲内、更に好ましくは10000〜80000の範囲内、特に好ましくは12000〜50000の範囲内である。
重量平均分子量(Mw)は、100000〜180000の範囲内であることが好ましく、110000〜140000の範囲内であることがより好ましい。
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)が上記範囲内にあることによって、一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、本発明の偏光板保護フィルムとしての成形加工性が良好となる。
固有粘度〔η〕inhは、一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂をクロロホルムに溶解させた樹脂溶液を、ウベローデ型粘度計を用いて測定(測定温度30℃)することができる。
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK−GEL G6000HXL−G5000HXL−G5000HXL−G4000HXL−G3000HXL 直列)を用いて測定する。試料20mg±0.5mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、0.45mmのフィルターで濾過する。この溶液をカラム(温度40℃)に100ml注入し、検出器RI温度40℃で測定し、スチレン換算した値を用いる。
〔マット剤〕
本発明の偏光板保護フィルムには、マット剤を含有することを特徴の一つとする。
本発明の偏光板保護フィルムに適用可能なマット剤は、通常、フィルムの添加物として用いられるもので、フィルム面のすべり性の悪さを改良するためには、フィルム表面に凹凸を付与することが有効であり、有機微粒子又は無機微粒子を含有させて、フィルム表面の粗さを増加させ、いわゆるマット化することで、接着性を減少させ、耐擦過性の向上を図るために用いられるものである。
しかしながら、粗い表面にするほどヘイズの上昇を生じ、透明性が低下するため、適用可能なマット剤の平均粒径や含有量は限定される。本発明に使用するマット剤としては、平均粒径が1〜1000nmの範囲内でることが好ましく、より好ましくは1〜100nmの範囲内であり、特に好ましくは3〜50nmの範囲内である。
また、上記マット剤の添加量としては、フィルム100質量%に対して、球形、不定形微粒子を問わず、0.1〜0.5質量%の範囲内とすることが好ましい。
本発明において、マット剤を含有した偏光板保護フィルムの好ましいヘイズ値は、2.0%以下であり、1.2%以下が更に好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
マット剤を添加した偏光板保護フィルムの好ましい静摩擦係数は、1.5以下であり、1.0以下が特に好ましい。静摩擦係数が1.5以下であれば、偏光板保護フィルムは製膜及び加工における巻取り時に、ツレや巻きシワを生じず、従ってツレや巻きシワにより巻き姿が損なわれたり、ツレやシワによって不均一な張力が偏光板保護フィルムにかかったりすることがなく、フィルム面に意図しない不均一な光学特性が発現するといった問題が生じない。
本発明で適用可能なマット剤としては、一般的なフィルムに用いられるものであれば、特に制限はなく、またこれらのマット剤は2種以上混ぜて用いることもできる。本発明に係るマット剤としては、無機微粒子、高分子化合物を含む有機微粒子が挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、などの無機物微粒子が挙げられるが、更に、例えば、湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。無機微粒子としては、ケイ素を含むものが、濁度及びフィルムのヘイズを低減できる点で好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面修飾されているものが多いが、このようなものは、フィルムの表面ヘイズを低減できるため好ましい。表面修飾で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどを挙げることができる。
また、有機微粒子を構成する高分子化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、デンプン等があり、また、それらの粉砕分級物も挙げられる。あるいは、懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法若しくは分散法等により球型にした高分子化合物、又は無機化合物を用いることができる。
上記各マット剤の中でも、二酸化ケイ素微粒子(シリカ微粒子)であるのが好ましい。
(マット剤分散液に使用する有機溶媒)
マット剤分散液の調製において用いられる有機溶媒は、マット剤が分散し、分散液を調製できる範囲において、使用できる有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムのような塩素系溶媒、炭素数3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及びエーテルは、環状構造を有していてもよい。
本発明において、マット剤分散液の調製方法において用いられる有機溶媒は、1種類の有機溶媒を単独で用いてもよく、2種類以上の有機溶媒を任意の割合で混合して用いてもよい。
上記マット剤を分散する際に、上記の有機溶媒の量が少ないと十分な分散ができず、凝集体を発生し、異物故障の原因となる。逆に、有機溶媒の量が多い時には、微粒子の分散性には優れるものの、大量の分散液を調液することとなり、製造におけるハンドリングの面で好ましくない。したがって、上記有機溶媒の使用量は、上記マット剤100質量部に対して1000〜100000質量部の範囲内とするのが好ましく、1500〜40000質量部の範囲内とするのが更に好ましく、2000〜20000質量部の範囲内とするのが特に好ましい。
〔その他の添加剤〕
本発明の偏光板保護フィルムには、本発明の目的効果を損なわない範囲で、各種添加剤を適用することができる。
(ポリエステル系可塑剤)
本発明の偏光板保護フィルムにおいては、ポリエステル系可塑剤を適用することが、フィルム弾性率、すべり性、フィルム膜面硬度が向上し、その結果、高品位の面品質を得ることができる点で好ましい。
ポリエステル系可塑剤は、ジオールとジカルボン酸とを脱水縮合反応させた後、得られる反応生成物の分子末端の(ジオール由来の)ヒドロキシ基を、環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸のカルボキシ基と脱水縮合反応させて得られる化合物である。
ポリエステル系可塑剤は、下記一般式(2)で表される構造を有する。
一般式(2)
B−(G−A)n−G−B
上記一般式(2)において、Bは、環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸から誘導される基を表す。環構造とは、脂肪族炭化水素環、脂肪族ヘテロ環、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を有する構造をいい、好ましくは脂肪族炭化水素環又は芳香族炭化水素環を有する構造をいう。環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸は、炭素原子数5〜20の脂環式モノカルボン酸、炭素原子数7〜20の芳香族モノカルボン酸及びそれらの混合物でありうる。
炭素原子数5〜20の脂環式モノカルボン酸は、好ましくは炭素原子数6〜15の脂環式モノカルボン酸でありうる。脂環式モノカルボン酸の例には、4−ヒドロキシシクロヘキシル酢酸、3−ヒドロキシシクロヘキシル酢酸、2−ヒドロキシシクロヘキシル酢酸、4−ヒドロキシシクロヘキシルプロピオン酸、4−ヒドロキシシクロヘキシル酪酸、4−ヒドロキシシクロヘキシルグリコール酸、4−ヒドロキシ−o−メチルシクロヘキシル酢酸、4−ヒドロキシ−m−メチルシクロヘキシル酢酸、4−ヒドロキシ−p−メチルシクロヘキシル酢酸、5−ヒドロキシ−m−メチルシクロヘキシル酢酸、6−ヒドロキシ−o−メチルシクロヘキシル酢酸、2,4−ジヒドロキシシクロヘキシル酢酸、2,5−ジヒドロキシシクロヘキシル酢酸、2−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル酢酸、3−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル酢酸、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル酢酸、2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)シクロヘキシル酢酸、3−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)シクロヘキシル酢酸、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)シクロヘキシル酢酸等が含まれる。
炭素原子数7〜20の芳香族モノカルボン酸は、好ましくは炭素原子数7〜15の芳香族モノカルボン酸でありうる。芳香族モノカルボン酸の例には、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−o−トルイル酸、3−ヒドロキシ−p−トルイル酸、5−ヒドロキシ−m−トルイル酸、6−ヒドロキシ−o−トルイル酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−(ヒドロキシメチル)安息香酸、3−(ヒドロキシメチル)安息香酸、4−(ヒドロキシメチル)安息香酸、2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)安息香酸、3−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)安息香酸等が含まれる。
これらの中でも、偏光板保護フィルムに十分な疎水性を付与し、偏光子の水分による劣化を抑制しやすい点から、芳香環を含むヒドロキシ基含有モノカルボン酸(ヒドロキシ基を含む芳香族モノカルボン酸)が好ましい。
式中、Gは、炭素原子数2〜12のアルキレンジオール、炭素原子数6〜12のシクロアルキレンジオール、炭素原子数4〜12のオキシアルキレンジオール及び炭素原子数6〜12のアリーレンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される基を表す。
炭素原子数2〜12のアルキレンジオールの例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が含まれる。
炭素原子数6〜12のシクロアルキレンジオールの例には、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、水素化ビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)ブタン等が含まれる。
炭素原子数4〜12のオキシアルキレンジオールの例には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が含まれる。
炭素原子数6〜12のアリーレンジオールの例には、ビスフェノールA、ビスフェノールB等が含まれる。
ジオールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。中でも、シクロオレフィン系樹脂との相溶性に優れる点で、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールが好ましい。
式中、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸、炭素原子数6〜12のシクロアルキレンジカルボン酸、及び炭素原子数8〜16のアリーレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される基を表す。
炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸の例には、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が含まれる。
炭素原子数6〜16のシクロアルキレンジカルボン酸の例には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸等が含まれる。
炭素原子数8〜16のアリーレンジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等が含まれる。
ジカルボン酸は、1種又は2種以上の混合物として使用される。ジカルボン酸は、アルキレンジカルボン酸とアリーレンジカルボン酸の混合物であることが好ましい。アルキレンジカルボン酸とアリーレンジカルボン酸の含有割合は、アルキレンジカルボン酸:アリーレンジカルボン酸=40:60〜99:1であることが好ましく、50:50〜90:10であることがより好ましい。
式中、nは、0以上の整数を表す。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、好ましくは300〜30000、より好ましくは300〜700の範囲内であり、より好ましくは300〜600である。数平均分子量が一定以上であると、ブリードアウトを抑制しやすい。数平均分子量が一定以下であると、シクロオレフィン系樹脂との相溶性を損ないにくくヘイズ上昇を抑制しやすい。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されうる。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8330」)を用いて、下記の測定条件で、エステル化合物の標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を測定することができる。
(測定条件)
カラム:「TSK gel SuperHZM−M」×2本及び「TSK gel SuperHZ−2000」×2本
ガードカラム:「TSK SuperH−H」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、縮合又は重縮合の反応時間によって調整することができる。
ポリエステル系可塑剤の酸価は、好ましくは0.5mgKOH/g以下、より好ましくは0.3mgKOH/g以下である。ポリエステル系可塑剤の水酸基価は、好ましくは25mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下である。
ポリエステル系可塑剤の合成は、常法によりジカルボン酸、ジオール、及び末端封止用モノカルボン酸のエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法、又はジカルボン酸及び末端封止用モノカルボン酸の酸クロライドとジオールとの界面縮合法のいずれかの方法で行うことができる。ジオールとジカルボン酸の仕込み比は、分子末端がジオールとなるように調整される。
一般式(2)で表される構造を有するポリエステル系可塑剤のシクロオレフィン系樹脂に対する添加量は2〜10質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、3〜7質量%の範囲内である。添加量は、2質量%以上の場合で、偏光板保護フィルム硬度上昇の効果が認められ、10質量%以下であると、高温環境下における寸法安定性及びヘイズの安定性を高める観点から好ましい。
(紫外線吸収剤)
偏光子を挟んで、視認側に第1の保護フィルムT1と、他方の面側に第2の保護フィルムT2を有する偏光板とした時、保護フィルムT1及び保護フィルムT2の少なくとも一方が、本発明の偏光板保護フィルム構成し、更に保護フィルムT1又は保護フィルムT2が、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい形態の一つである。
本発明の偏光板保護フィルムに適用する紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ液晶の表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない特性を備えていることが好ましい。
本発明に適用可能な紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
本発明に適用可能な紫外線吸収剤としては、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり、好ましく使用できる。
より好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。
例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、下記一般式(b)で示される化合物を用いることができる。
上記一般式(b)において、R1、R2、R3、R4およびR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノもしくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していてよい。
以下に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109)
更に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、下記一般式(c)で表される化合物が好ましく用いられる。
上記一般式(c)において、Yは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、またはフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基を表し、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基でアリル基、2−ブテニル基等を表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシ基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)等が挙げられる。
以下に一般式(c)で表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明に係る偏光板保護フィルムは、紫外線吸収剤を2種以上含有することもできる。
本発明においては、紫外線吸収剤としては、特に、下記で示す「2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール」が本発明の第2の保護フィルムの紫外線吸収性と低リターデーションを両立した上で薄いフィルムを提供することができるため、好ましく用いられる。
本発明に係る偏光板保護フィルムは、紫外線吸収剤を2種以上含有することもできる。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が10〜100μmの場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
本発明の偏光板保護フィルムには、酸化防止剤を適用することができる。
酸化防止剤は、例えば、偏光板保護フィルム中の残留溶媒のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により偏光板保護フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、フィルム中に含有させることが好ましい。
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系の各化合物を好ましく用いることができる。
例えば、BASFジャパン株式会社から市販されている「Irgafos XP40、Irgafos XP60」等が挙げられる。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から市販されている「Sumilizer TPL−R」及び「Sumilizer TP−D」を挙げることができる。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、BASFジャパン株式会社から市販されている「Irganox 1076」、「Irganox 1010」、(株)ADEKAから市販されている「アデカスタブ AO−50」等を挙げることができる。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から「Sumilizer GM」及び「Sumilizer GS」という商品名で市販されている。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、BASFジャパン株式会社から市販されている「Tinuvin144」及び「Tinuvin770」、株式会社ADEKAから市販されている「ADK STAB LA−52」を挙げることができる。
上記リン系化合物としては、例えば、住友化学株式会社から市販されている「SumilizerGP」、株式会社ADEKAから市販されている「ADK STAB PEP−24G」、「ADK STAB PEP−36」及び「ADK STAB 3010」、BASFジャパン株式会社から市販されている「IRGAFOS P−EPQ」、堺化学工業株式会社から市販されている「GSY−P101」を挙げることができる。
(剥離助剤)
本発明の偏光板保護フィルムは、金属支持体との密着性が高いことから、金属支持体から剥離しやすくし、剥離時の伸びを抑制して得られるフィルムの厚さを均一にするために、剥離助剤を含有させることが好ましい。
剥離助剤は、炭素数8〜22の直鎖又は分岐アルキル基を有する酸、アルコール、金属塩、非イオン性界面活性剤又は非反応性4級アンモニウム塩型界面活性剤の少なくとも一種であることが好ましく、それらを偏光板保護フィルムに含有される一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂の全質量に対して、0.1〜1.0質量%の範囲内で含有することで剥離性を高めることができる。
剥離助剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。また、塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
また、これらの市販品としては、クラリアントジャパン(株)製ホスタスタットHS−1、竹本油脂(株)製エレカットS−412−2、エレカットS−418、花王(株)製ネオペレックスG65等が挙げられる。
アルコールの例としては、オクタン−1−オール、ノナン−1−オール、デカン−1−オール、ウンデカン−1−オール、ドデカン−1−オール、トリデカン−1−オール、テトラデカン−1−オール、ペンタデカン−1−オール、ヘキサデカン−1−オール、ヘプタデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ノナデカン−1−オール、イコサン−1−オール、ヘネイコサン−1−オール、ドコサン−1−オール等が挙げられ、オクタデカン−1−オール(ステアリルアルコール)が好ましい。
また、剥離助剤として、非イオン性界面活性剤を用いることも有用であり、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノココエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ひまし油などのポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。またこれらの市販品としては、第一工業製薬(株)製エパン等が挙げられる。
さらに、剥離助剤として、非反応性4級アンモニウム塩型界面活性剤を用いることも好ましく、中でもメチル基を2個以下有する非反応性4級アンモニウム塩型界面活性剤が有用である。なお、これらの界面活性剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
これら非反応性4級アンモニウム塩型界面活性剤としては、市販品を使用することができ、例えば、ADEK社製の商品名「アデカコールCC−36」、「アデカコールCC−42」、第一工業製薬(株)製の「カチオンL−207」、「カチオーゲンES−L」、「カチオーゲンES−O」、「カチオーゲンES−OW」、「カチオーゲンES−WS−L−9」、「カチオーゲンES−P」、「カチオーゲンDDM−PG」、「カチオーゲンS」、「カチオーゲンD2」、「カチオーゲンBC−50」等を挙げることができる。
(衝撃補強材)
本発明の偏光板保護フィルムには、耐衝撃性を高めるために、衝撃補強材として、コア・シェルタイプのアクリル微粒子、スチレン−共役ジエン系化合物又はブチルアクリレート化合物の少なくとも一種を含有することが好ましい。
特に、特開2009−84574号公報に記載の(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体に(メタ)アクリル系樹脂がグラフトされたコア・シェルタイプのグラフト共重合体や、国際公開第2009/047924号に記載されているコア・シェルタイプのアクリル微粒子、また、特開2013−83907号公報に記載のスチレン−ブタジエン系の弾性有機微粒子などの衝撃補強材を含有することが好ましい。
例えば、コア・シェルタイプのアクリル微粒子は、メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキルアクリレート1〜20質量%及び多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%の混合物を重合して得られる最内硬質層と、アルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%及び多官能性グラフト剤0.5〜5質量%の混合物を重合して得られる軟質層と、メチルメタクリレート80〜99質量%、アルキルアクリレート1〜20質量%の混合物を重合して得られる最外硬質層とを有する。
また、スチレン−共役ジエン系化合物としては、スチレン−ブタジエン系共重合体であることが好ましい。当該共重合体はゴム状弾性体であっても、また弾性有機微粒子であってもよく、具体的には、弾性有機微粒子はコア・シェルタイプの粒子であることが好ましい。
軟質重合体は、共役ジエン単量体由来の構造単位と、必要に応じて他の単量体由来の構造単位とを含む。共役ジエン単量体の例には、1,3−ブタジエン(以下、単に「ブタジエン」と称することもある。)、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、ミルセンなどが含まれ、好ましくはブタジエン、イソプレンである。他の単量体の例には、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン成分が含まれる。軟質重合体における共役ジエン単量体由来の構造単位の含有割合は、通常、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
他の重合体の例には、アクリロニトリルとスチレンの共重合体や、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステルを主成分とする重合体などが含まれる。
市販品としては、例えば、メタブレンC−140A、C−215A(以上、三菱レイヨン(株)製)、タフプレン126、アサフレックス800、アサフレックス825(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、TR2000 、TR2250(以上、JSR(株)製)などが挙げられる。
他のゴム状弾性体としては、アクリル酸エステル系ゴム状重合体が挙げられ、ブチルアクリレートを主成分としたアクリル酸エステル系重合体を主成分とするゴム状重合体が好ましい。
〔偏光板保護フィルムの光学特性〕
本発明の偏光板保護フィルムは、下記式(i)で定義されるリターデーション値Roが、0〜10nmの範囲内であり、下記式(ii)で定義されるリターデーション値Rtが、−10〜10nmの範囲内であることを特徴とする。
式(i)
Ro=(nx−ny)×d
式(ii)
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
上記式(i)及び(ii)において、Roはフィルムの面内方向のリターデーション値、Rtはフィルムの厚さ方向のリターデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率(屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
面内方向のリターデーション値Ro、及びフィルムの厚さ方向のリターデーション値Rtは自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。
上記で規定する式(i)で定義されるリターデーション値Roが、0〜10nmの範囲内、式(ii)で表されるリターデーション値Rtが−10〜10nmの範囲内とは、面内方向のリターデーション値Ro(nm)及びフィルムの厚さ方向のリターデーション値Rt(nm)がほぼゼロの偏光板保護フィルムであること意味する。
偏光板保護フィルムのフィルム面内のリターデーション値Ro及びフィルムの厚さ方向のリターデーション値Rtをほぼゼロとすることにより、当該偏光板保護フィルム側に液晶セルに貼合したとき、得られる液晶表示装置における黒表示時の光漏れを効果的に防止することができる。また、偏光板保護フィルムの厚さを低減することができるため、偏光板および液晶表示装置の更なる薄型軽量化を図ることが可能となるため好ましい。
上記条件を達成する方法として、特に制限はないが、フィルム成膜時の延伸条件を適性制御する方法が好適である。
〔偏光板保護フィルムの製造方法〕
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から、成膜方法としては、溶液流延成膜法と溶融流延成膜法が選択でき、特に溶液流延成膜法であることが、ノルボルネン系樹脂の分布状態を制御してパネルベンドを抑制する効果に加えて、均一で平滑な表面を得ることができ、更にヘイズ及びイエローインデックス(YI)を低減する観点から好ましい。
〈溶液流延法〉
以下、本発明の偏光板保護フィルムの製造に好適な溶液流延法による製造例について説明する。
本発明の偏光板保護フィルムの製造は、本発明に係る一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂と、マット剤、必要に応じ、ポリエステル系可塑剤等の化合物を溶媒に溶解させてドープを調製し、濾過する工程、調製したドープをベルト状又はドラム状の金属支持体上に流延しウェブを形成する工程、形成したウェブを金属支持体から剥離してフィルムとする工程、フィルムを延伸、乾燥する工程、及び乾燥させたフィルムを冷却後ロール状に巻き取る工程により行われる。
以下、各工程について説明する。
(1)溶解工程
ノルボルネン系樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で当該樹脂、場合によって、その他の化合物を撹拌しながら溶解してドープを形成する工程、あるいは当該樹脂溶液に、その他の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
本発明の偏光板保護フィルムを溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、ノルボルネン系樹脂及びその他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、例えば、主たる溶媒として、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することができ、塩化メチレン又は酢酸エチルであることが特に好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の範囲内で炭素数が1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ないときは非塩素系有機溶媒系でのノルボルネン系樹脂及びその他の化合物の溶解を促進する役割もある。本発明の偏光板保護フィルムの成膜においては、得られる偏光板保護フィルムの平面性を高める点から、アルコール濃度が0.5〜15.0質量%の範囲内にあるドープを用いて成膜する方法を適用することができる。
特に、塩化メチレン及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、ノルボルネン系樹脂及びその他の化合物を、計15〜45質量%の範囲内で溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素数が1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からメタノール及びエタノールが好ましい。
ノルボルネン系樹脂又はその他の化合物の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載のような冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のノルボルネン系樹脂の濃度は、10〜40質量%の範囲内であることが好ましい。溶解中又は後のドープに化合物を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
ドープの濾過については、好ましくはリーフディスクフィルターを具備する主濾過器で、ドープを、例えば、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10〜100倍の濾材で濾過することが好ましい。
本発明において、濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さいほうが好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明において、ドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲内がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲内の濾材が更に好ましい。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
本発明において、濾過の際のドープの流量が、10〜80kg/(h・m2)の範囲内であることが好ましく、20〜60kg/(h・m2)であることがより好ましい。ここで、濾過の際のドープの流量が10kg/(h・m2)以上であれば、効率的な生産性となり、濾過の際のドープの流量が80kg/(h・m2)以下であれば、濾材にかかる圧力が適正となり、濾材を破損させることがなく好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下であることがより好ましく、2500kPa以下であることが更に好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積とを適宜選択することでコントロールできる。
次いで、図を交えて、本発明の偏光板保護フィルムを溶液流延法で製造する具体的な構成例を説明する。以下の説明において、構成要素の後の括弧内に記載の数字は、図に記載している符号を示してある。
図1は、本発明の偏光板保護フィルムの製造に適用可能な溶液流延成膜装置の一例を示す模式図である。
仕込み釜(41)で調製したドープを濾過器(44)で大きな凝集物を除去し、ストック釜(42)へ送液する。その後、ストック釜(42)より主ドープ溶解釜(1)へ各種添加液を添加する。
その後、主ドープは、主濾過器(3)にて濾過され、これにマット剤分散液や紫外線吸収剤添加液等が導管(16)よりインライン添加される。
多くの場合、主ドープには、返材が10〜50質量%程度含まれることがある。
返材とは、例えば本発明の偏光板保護フィルムを細かく粉砕した物で、偏光板保護フィルムを成膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えた偏光板保護フィルム原反が使用される。
また、ドープ調製に用いられるノルボルネン系樹脂の原料としては、あらかじめ樹脂及びその他の化合物などをペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(2)流延工程
(2−1)ドープの流延
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ(30)に送液し、無限に移送する無端の金属支持体(31)、例えば、ステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
流延(キャスト)工程における金属支持体(31)は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲内、好ましくは1.5〜3mの範囲内、更に好ましくは2〜2.8mの範囲内とすることができる。
流延工程の金属支持体(31)の表面温度は−50℃〜溶媒が沸騰して発泡しない温度以下、更に好ましくは−30〜100℃の範囲内に設定される。温度が高いほうがウェブの乾燥速度を速くできるので好ましいが、あまり高すぎるとウェブが発泡して平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては、0〜100℃の範囲内で適宜決定され、5〜30℃の範囲内が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体(31)の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いるほうが熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体(31)の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は、溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
ダイとしては、ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすいことから、加圧ダイ(30)が好ましい。加圧ダイ(30)には、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体(31)の表面は鏡面となっている。成膜速度を上げるために、加圧ダイ(30)を金属支持体(31)上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層してもよい。
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブという。)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率がよく好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか、赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒の範囲内で当該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
(4)剥離工程
剥離工程とは、金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを剥離位置(33)で剥離する工程である。剥離されたウェブは、フィルムとして次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置(33)における温度は、好ましくは10〜40℃の範囲内であり、更に好ましくは11〜30℃の範囲内である。
剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲内として、剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
ウェブの残留溶媒量は下記式(I)で定義される。
式(I)
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体とフィルムとを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mの範囲内であるが、剥離の際にシワが入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本発明においては、当該金属支持体(31)上の剥離位置(33)における温度を−50〜40℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜30℃の範囲内とするのが最も好ましい。
(5)乾燥及び延伸工程
(乾燥工程)
金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させる。ウェブの乾燥は、ウェブを上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、テンター乾燥機のようにウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は、好ましくはフィルムのガラス転移温度(Tg)以下であって、100℃以上の温度で10〜60分の範囲内の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は、100〜200℃の範囲内、更に好ましくは110〜160℃の範囲内で乾燥が行われる。
なお、乾燥工程は、予備乾燥工程と本乾燥工程とに分けて行うこともできる。
(延伸工程)
本発明の偏光板保護フィルムは、延伸処理することでフィルム内の分子の配向を制御することができ、平面性を向上させ、強靭性を得たりすることができる。
本発明の偏光板保護フィルムは、長手方向(MD方向ともいう。)及び/又は幅手方向(TD方向ともいう。)に延伸することが好ましく、少なくとも長手方向又は幅手方向に延伸倍率として1.01〜10倍の範囲内で延伸することが好ましい。
延伸操作は、多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸を行う場合には、MD方向とTD方向の同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
・長手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→斜め方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮する場合も含まれる。
延伸開始時の残留溶媒量は、2〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
残留溶媒量が2質量%以上であれば、膜厚偏差が小さくなり、平面性の観点から好ましく、10質量%以下であれば、表面の凹凸が減り、平面性が向上し好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムは、延伸後の膜厚が所望の範囲になるようにMD方向及び/又はTD方向に、好ましくはTD方向に、フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+15)〜(Tg+50)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、延伸応力を低下できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性に優れた偏光板保護フィルムが得られる。延伸温度は、(Tg+20)〜(Tg+40)℃の範囲内で行うことが好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムは、ウェブを少なくともMD方向又はTD方向に1.01〜10倍の範囲内で延伸することが好ましいが、延伸の範囲は、元幅に対して1.1〜10倍の範囲内であることが好ましく、1.2〜8倍の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であればフィルムが強靱となり、フィルムを薄膜化でき、フィルムの平面性を向上させることができる。
MD方向に延伸するために、剥離張力を130N/m以上で剥離することが好ましく、150〜170N/mの範囲内で剥離することが特に好ましい。剥離後のウェブは高残留溶媒状態であるため、剥離張力と同様の張力を維持することで、MD方向への延伸を行うことができる。ウェブが乾燥し、残留溶媒量が減少するにしたがって、MD方向への延伸率は低下する。
なお、MD方向の延伸には、ローラーの周速差を利用したローラー延伸機を用いることができ、延伸倍率は、ベルト支持体の回転速度とローラー延伸機の運転速度とから算出できる。
TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップ又はピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
TD方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に250〜500%/minの延伸速度で延伸することが、フィルムの平面性を向上する観点から好ましい。
延伸速度が250%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、500%/min以下であれば、フィルムが破断することなく処理することができ好ましい。
好ましい延伸速度は、300〜400%/minの範囲内である。延伸速度は、下記式(II)によって定義されるものである。
式(II)
延伸速度(%/min)=[(d1/d2)−1]×100(%)/t
上記式(II)において、d1は、延伸後の樹脂フィルムの延伸方向の幅寸法を表す。d2は、延伸前の樹脂フィルムの延伸方向の幅寸法を表す。tは、延伸に要する時間(min)を表す。
本発明の偏光板保護フィルムの面内リターデーション値Ro及び厚さ方向のリターデーション値Rtは、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。
本発明の偏光板保護フィルムは、下記式(i)により定義されるリターデーション値(Ro)が0〜10nmの範囲内にあり、下記式(ii)により定義されるリターデーション値(Rt)が−10〜10nmの範囲内にあることが、特にリターデーションを必要としない偏光板保護フィルムとして具備する場合に好ましい。偏光板保護フィルムは、少なくともMD方向又はTD方向に延伸倍率を調整しながら延伸することもできる。
式(i)
Ro=(nx−ny)×d(nm)
式(ii)
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
式中、Roはフィルムの面内方向のリターデーション値、Rtはフィルムの厚さ方向のリターデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率(屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
(ナーリング加工)
所定の熱処理又は冷却処理の後、巻取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。さらに、幅手両端部には、ナーリング加工をすることが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスローラーを押し当てることにより形成することができる。エンボスローラーには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
本発明の偏光板保護フィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μmの範囲内、幅5〜20mmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの成膜工程において乾燥終了後、巻取りの前に設けることが好ましい。
(6)巻取り工程
巻取り工程は、ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければよい。
〈溶融流延法〉
本発明の偏光板保護フィルムは、溶融流延法によって成膜することもできる。溶融流延法は、本発明に係る一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂及びその他の化合物を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性の溶融物を流延することをいう。
溶融流延法では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、本発明に係る一般式(1)で表されるノルボルナン骨格を有するノルボルネン系樹脂やその他の化合物をフィーダーで押出機に供給して一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
押出機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化できる程度になるべく低温で加工することが好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム成膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム成膜することも可能である。
上記ペレットを一軸や二軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルター等で濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップし、冷却ローラー上で固化させることにより、偏光板保護フィルムを成膜する。
供給ホッパーから押出機へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入する等して安定に調整することが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し、接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量とにより密度を変え、濾過精度を調整できる。
酸化防止剤や粒子等の添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラーと弾性タッチローラーで偏光板保護フィルムをニップする際のタッチローラー側の偏光板保護フィルム温度は、フィルムのTg〜(Tg+110)℃の温度範囲にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するローラーは、公知のローラーが使用できる。
弾性タッチローラーは、挟圧回転体ともいう。弾性タッチローラーとしては、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラーからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ローラーに接する工程を通過後、延伸操作により延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のローラー延伸機やテンター等を好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成するノルボルネン系樹脂のTg〜(Tg+60)℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きや擦り傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は、凹凸のパターンを側面に有する金属リングを用いて加熱や加圧をすることにより加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、偏光板保護フィルムが変形しており製品として使用できないので切除され、再利用される。
〈偏光板保護フィルムの物性〉
(波長分散性)
本発明の偏光板保護フィルムは、波長450nm、550nmにおけるリターデーション(Ro)の値をそれぞれRo(450)、Ro(550)としたとき、Ro(450)/Ro(550)で算出される値が、1.01より小さいことが好ましい。
(ヘイズ)
本発明の偏光板保護フィルムは、ヘイズ値が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。ヘイズを1.0%以下とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学用途のフィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。
ヘイズ値は、JIS K 7136に準拠して、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色工業(株)製)にて測定される。
(イエローインデックス:YI)
本発明の偏光板保護フィルムは、YIが1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。YIを1.0以下とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学用途のフィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。特に本発明の偏光板保護フィルムを溶液流延法で製造することは、YIを低減する観点から好ましい製造方法である。
本発明でいうイエローインデックス(YI)は、JIS K 7105−6.3に記載の方法で求めることができる。具体的なイエローインデックス値の測定方法としては、日立製作所製の分光光度計U−3200と付属の彩度計算プログラム等を用いて、色の三刺激値X、Y、Zを求め、下式に従ってイエローインデックス値を求める。
イエローインデックス(%)=100(1.28X−1.06Z)/Y
(全光線透過率)
本発明の偏光板保護フィルムの全光線透過率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは93%以上である。全光線透過率は、JIS K 7573「プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定することができる。
(平衡含水率)
本発明の偏光板保護フィルムは、25℃・55%RHにおける平衡含水率が3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。平衡含水率を3%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。
(フィルム長、幅、膜厚)
本発明の偏光板保護フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明の偏光板保護フィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
偏光板保護フィルムの膜厚は、表示装置の薄型化、生産性の観点から、10〜100μmの範囲内であることが好ましく、10〜40μmの範囲内であることがより好ましい。膜厚が10μm以上であれば、一定以上のフィルム強度や位相差を発現させることができる。膜厚が100μm以下であれば、所望の位相差を具備し、かつ偏光板及び表示装置の薄型化に適用できる。
(透湿度)
偏光板保護フィルムの40℃・90%RHにおける透湿度は、300g/(m2・day)以下であることが好ましく、200g/(m2・day)以下であることがより好ましく、10〜100g/(m2・day)の範囲内であることが好ましい。これは、高温高湿環境下において、透過した水分による偏光子の寸法変化を抑制するためである。透湿度は、JIS Z 0208に記載の方法に準拠して40℃・90%RHの条件にて測定される。
(引裂き強度)
偏光板保護フィルムの23℃・55%RH下における引裂き強度は、15mN以上であることが好ましく、20mN以上であることがより好ましく、30mN以上であることが更に好ましい。引裂き強度の上限は、例えば、50mN程度である。
偏光板保護フィルムの引裂き強度は、以下の方法で測定されうる。すなわち、偏光板保護フィルムを切り取って、幅50mm×長さ64mmのサンプルフィルムを得る。該サンプルフィルムを、23℃・55%RH下で24時間調湿した後、ISO6383/2−1983に準拠してエルメンドルフ引裂き強度を測定する。エルメンドルフ引裂き強度は、東洋精機(株)軽加重引裂き試験機を用いて測定され得る。引裂き強度は、23℃・55%RH下で、フィルムの長さ方向(MD方向)に引き裂いた場合と、フィルムの幅方向(TD方向)に引き裂いた場合のそれぞれについて行い、それらの平均値として求められる。
偏光板保護フィルムの引裂き強度は、例えば、ノルボルネン系樹脂の分子量などで調整され得る。引裂き強度を大きくするためには、例えば、ノルボルネン系樹脂の分子量を大きくしたりすればよい。
〈λ/4位相差フィルム〉
本発明の偏光板においては、必要に応じてλ/4位相差フィルムを用いることもできる。
λ/4位相差フィルムとは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に、又は、円偏光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムをいう。そのために、λ/4位相差フィルムは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内の位相差値Roが実質的に1/4である。
所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内の位相差値Roが実質的にλ/4であるとは、温度23℃・55%RHの環境下、波長550nmで測定した面内の位相差値Ro(550)が120〜180nmの範囲内であり、同条件下、波長550nmで測定した面内位相差値Ro(550)に対する波長450nmで測定したRo(450)の比の値(Ro(450)/Ro(550))が0.72〜1.05の範囲内であることを意味する。
また、同条件下、波長650nmで測定した面内位相差値Ro(650)に対する波長550nmで測定した面内位相差値Ro(550)の比の値(Ro(550)/Ro(650))は0.83〜1.05の範囲内であるが、Ro(450)/Ro(550)とのバランスが重要であることから、Ro(450)/Ro(550)が0.72〜1.05の範囲内にある場合には、Ro(550)/Ro(650)は0.83〜1.05の範囲内であることが好ましい。
フィルムの面内の位相差値Roは、前記式(i)により定義される。
面内位相差値Ro(550)を高める場合には、フィルム膜厚dを高めることが簡単な手段ではあるが、経済性、表示装置の厚さの増大、光透過率低下による光取出し効率低下の観点から好ましくない。
λ/4位相差フィルムにおいては、フィルム膜厚dはおおむね20〜100μmの範囲内であるが、40〜80μmの範囲内が好ましく、40〜65μmの範囲内であることが、本発明の効果をより発現できる観点から特に好ましい。
λ/4位相差フィルムの面内の遅相軸と、後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層することにより、円偏光板が得られる。
本発明でいう「実質的に45°」とは、45±5°の範囲内であることを意味する。λ/4位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41〜49°の範囲内であることが好ましく、42〜48°の範囲内であることがより好ましく、43〜47°の範囲内であることが更に好ましく、44〜46°の範囲内であることが最も好ましい。
《偏光板》
本発明の偏光板は、偏光子を挟んで、視認側に第1の保護フィルムT1と、他方の面側に第2の保護フィルムT2を有し、保護フィルムT1及び保護フィルムT2の少なくとも一方が、上記説明した本発明の偏光板保護フィルムであることを特徴とする。更には、当該保護フィルムT1又は保護フィルムT2が、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい態様であり、さらに好ましくは当該保護フィルムT1及び保護フィルムT2が、いずれも本発明の偏光板保護フィルムであり、かつ紫外線吸収剤を含有している態様である。
他の仕様としては、上述したように、本発明の偏光板保護フィルムは、面内方向のリターデーション値Ro(nm)及びフィルムの厚さ方向のリターデーション値Rt(nm)がほぼゼロの偏光板保護フィルムであることから、液晶セル側、すなわち第2の保護フィルムT2として本発明の偏光板保護フィルムを貼合し、反対側の面には、従来公知の偏光板保護フィルムを貼合するといった構成とすることもできる。
一方のフィルムとして適用可能な従来公知の偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC4FR、KC4KR、KC4DR、KC4SR、KC8UY、KC6UY、KC6UA、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上、コニカミノルタ(株)製)等が挙げられる。
図2は、本発明の偏光板の構成の一例を示す概略断面図である。
図2において、偏光板(101A)は、偏光子(104)を挟んで、視認側に第1の保護フィルム(T1)が、液晶セル側に第2の保護フィルム(T2)が、それぞれ接着剤層(103A及び103B)を介して配置されている構成が代表的であり、第1の保護フィルム(T1)及び第2の保護フィルム(T2)の少なくとも一方が、本発明の偏光板保護フィルムであることが特徴であるが、好ましくは液晶セル側に配置する第2の保護フィルム(T2)であり、さらに好ましくは第1の保護フィルム(T1)及び第2の保護フィルム(T2)が、いずれも本発明の偏光板保護フィルムである構成である。
本発明の偏光板においては、本発明の偏光板保護フィルム等は、適宜表面処理され、水系接着剤又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて貼合される。
〔偏光子〕
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子としては、ポリビニルアルコール水溶液を成膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行った偏光子が用いられ得る。
偏光子の膜厚は、5.0〜15.0μmの範囲内であり、特に5.0〜10.0μmの範囲内であることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れている上に、色ムラが少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
また、偏光板は薄膜とすることが好ましいことから、偏光子の厚さは2.0〜15.0μmの範囲内であることが、偏光板の強度と薄膜化を両立する観点から特に好ましい。
このような薄膜の偏光子としては、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許4751481号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で、積層フィルム型の偏光子を作製することが好ましい。
〔偏光板の製造方法〕
(1.水系接着剤を用いた偏光板の作製)
本発明の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。本発明の偏光板保護フィルムの偏光子側をコロナ処理、プラズマ処理又はエキシマ光処理等の表面処理を行い、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水系接着剤)を用いて貼り合わせることができる。
その場合、同様に位相差フィルムと偏光子とが、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水系接着剤)により貼合されていることが好ましい。位相差フィルムとして、セルロースエステルフィルムを用いる場合は、表面がケン化処理されていることが好ましい。
偏光子との貼合の向きは、例えば、偏光子の吸収軸と偏光板保護フィルムの遅相軸が直交するように貼合することが好ましい。
(2.活性エネルギー線硬化型接着剤を用いた偏光板の作製)
本発明の偏光板においては、本発明の偏光板保護フィルムと偏光子の少なくとも一方の面とが、活性エネルギー線硬化型接着剤により貼合されていることが好ましい態様である。その場合、同様に上記位相差フィルムと偏光子とが、活性エネルギー線硬化型接着剤により貼合されていることが好ましい。さらに、同一種類の活性エネルギー線硬化型接着剤により貼合されていることが好ましい。
本発明においては、本発明の偏光板保護フィルムと偏光子との貼合、あるいは、他の偏光板保護フィルムと偏光子との貼合に活性エネルギー線硬化型接着剤を適用することにより、高生産性で、偏光板の変形を抑制しやすく、平面性に優れた特性を得ることができる。
(活性エネルギー線硬化型接着剤の組成)
偏光板の製造に適用可能な活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、並びに光ラジカル重合及び光カチオン重合を併用したハイブリッド型組成物が知られている。
光ラジカル重合型組成物としては、特開2008−009329号公報に記載のヒドロキシ基やカルボキシ基等の極性基を含有するラジカル重合性化合物及び極性基を含有しないラジカル重合性化合物を特定割合で含む組成物等が知られている。特に、ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の好ましい例には、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が含まれる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、N置換(メタ)アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物などが含まれる。(メタ)アクリルアミドは、アクリアミド又はメタクリアミドを意味する。
また、光カチオン重合型組成物としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が挙げられる。ただし、これら以外の活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられてもよい。
本発明に用いる活性線硬化型接着剤としては、上記公報に記載されているような紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
以下、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いた偏光板の製造方法の一例を説明する。
本発明の偏光板の製造工程としては、主には、
1)偏光子と本発明の偏光板保護フィルムとの接着面のうち、少なくとも一方の面に、活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
2)接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとを接着し、貼り合わせる貼合工程と、
3)接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとが接着された状態で接着剤層を硬化させる硬化工程、
を挙げることができる。また、偏光板保護フィルムの偏光子を接着する面に対し、易接着処理する前処理工程を有していてもよい。
(前処理工程)
前処理工程では、偏光子と接着する偏光板保護フィルムの表面に易接着処理を施す工程である。偏光子の両面に、偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを活性エネルギー線硬化型接着剤を介して接着する場合には、偏光板保護フィルムのそれぞれの接着面に対し、易接着処理が施される。
次工程である接着剤塗布工程では、易接着処理された表面が偏光子との貼合面として扱われるので、偏光板保護フィルムの両表面のうち、活性エネルギー線硬化型樹脂層と貼合する面に、易接着処理を施す。易接着処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ光処理等が挙げられる。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着面のうち少なくとも一方の面側に、活性エネルギー線硬化型接着剤が塗布される。偏光子又は偏光板保護フィルムの表面に直接、活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の湿式塗布方式が利用できる。また、偏光子と偏光板保護フィルムの間に、活性エネルギー線硬化型接着剤を流延させたのち、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
上記の方法により活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布した後は、貼合工程で処理される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布した場合、そこに偏光板保護フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で偏光板保護フィルムの表面に活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と偏光板保護フィルムの間に活性エネルギー線硬化型接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と偏光板保護フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを接着する場合であって、両面とも活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して偏光板保護フィルム及び位相差フィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に偏光板保護フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と偏光板保護フィルム側、また偏光子の両面に偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の偏光板保護フィルム及び位相差フィルム側)からローラー等で挟んで加圧することになる。ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の活性エネルギー線硬化型接着剤に活性エネルギー線を照射して、カチオン重合性化合物(例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物)やラジカル重合性化合物(例えば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物等)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂層を硬化させ、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して重ね合わせた偏光子と偏光板保護フィルム、あるいは偏光子と位相差フィルムとを接着させる。偏光子の片面に偏光板保護フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は偏光板保護フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ活性エネルギー線硬化型接着剤を介して偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを重ね合わせた状態で、活性エネルギー線を照射し、両面の活性エネルギー線硬化型接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
硬化に適用される活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができるが、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般には電子線や紫外線が好ましく用いられる。
紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプ、シンクロトロン放射光等も用いることができる。これらの中でも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVの範囲内のエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
電子線の照射条件は、接着剤を硬化することができる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5〜300kVの範囲内であり、更に好ましくは10〜250kVの範囲内である。加速電圧が5kV以上であれば、電子線が接着剤まで十分到達し、所望の硬化条件を得ることができ、加速電圧が300kV以下であれば、接着ユニットを通る浸透力が過度に強くなることがなく、透明偏光板保護フィルムや偏光子にダメージを与えることを抑制することができる。
照射線量としては、5〜100kGyの範囲内であり、更に好ましくは10〜75kGyの範囲内である。照射線量が5kGy以上であれば、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化が十分となり、100kGy以下であれば、偏光板保護フィルムや偏光子にダメージを与えることがなく、機械的強度の低下や黄変を防止することができ、所定の光学特性を得ることができる。
紫外線の照射条件は、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化することができる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は、積算光量で50〜1500mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、100〜500mJ/cm2の範囲内であるのが更に好ましい。
上記製造方法を連続ラインで行う場合、ライン速度は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/minの範囲内であり、より好ましくは5〜300m/minの範囲内、更に好ましくは10〜100m/minの範囲内である。ライン速度が1m/min以上であれば、適切な生産性を確保することができ、透明な偏光板保護フィルムへのダメージを抑制でき、耐久性試験などに耐え得る偏光板を作製することができる。また、ライン速度が500m/min以下であれば、得られる接着剤の硬化が十分となり、目的とする接着性を得ることができる。
以上のようにして得られた偏光板において、活性エネルギー線硬化型接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常0.01〜10μmの範囲内であり、好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。
《液晶表示装置》
上記本発明の偏光板保護フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明の偏光板は、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、薄膜の偏光板が要求されるIPS型液晶表示装置である。
液晶表示装置には、通常視認側の偏光板とバックライト側の偏光板の2枚の偏光板が用いられるが、本発明の偏光板を両方の偏光板として用いることも好ましく、片側の偏光板として用いることも好ましい。
IPS型液晶表示装置における上記偏光板の貼合の向きは、特開2005−234431号公報を参照して行うことができる。
本発明に用いる液晶セルは、液晶層と、前記液晶層を挟持する一対の基板とを含み、前記一対の基板の厚さが0.3〜0.7mmの範囲内のガラス基板であることが、液晶表示装置の薄型化、軽量化の観点から好ましい。
図3は、上記説明した本発明の偏光板(101A)及び(101B)を液晶セル(101C)の両面に配置した液晶表示装置(100)の構成の一例を示す概略断面図である。
図3において、液晶層(107)の両面を、透明基材としてガラス基板(108A及び108B)で挟持して液晶セル(101C)を構成し、それぞれのガラス基板(108A及び108B)のそれぞれの表面に、粘着層(106)を介して、図2に示す構成の偏光板(101A及び101B)が配置されて、液晶表示装置(100)を構成している。
当該偏光板(101A及び101B)において、本発明の偏光板保護フィルムは、少なくとも偏光板保護フィルム102A、102B又は105A、105Bの位置に貼合されていることが好ましい。偏光板保護フィルムはそれぞれ紫外線硬化型接着剤103A〜10Dによって偏光子104A、Bに貼合されている。
例えば、IPS型液晶表示装置に具備する場合には、偏光板保護フィルム105A(T2)及び105B(T3)が本発明の偏光板保護フィルムであることが好ましい。
液晶セル(101C)は、液晶物質の両面を配向膜、透明電極及びガラス基板(108A及び108B)が配置されて構成している。
耐久性、平面性等に優れた本発明の偏光板を液晶表示装置に具備することにより、液晶セルを構成するガラス基材を薄膜化してもパネルベンドが生じにくくすることができ、その結果、薄膜化が達成された液晶表示装置を得ることができる。
液晶セル(101C)に用いることのできるガラス基板(108A及び108B)を構成する材質としては、例えば、ソーダライムガラス、ケイ酸塩ガラスなどが挙げられ、ケイ酸塩ガラスであることが好ましく、具体的には、シリカガラス又はホウケイ酸ガラスであることがより好ましい。
ガラス基板を構成するガラスは、アルカリ成分を実質的に含有していない無アルカリガラスであること、具体的には、アルカリ成分の含有量が1000ppm以下であるガラスであることが好ましい。ガラス基板中のアルカリ成分の含有量は、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。アルカリ成分を含有するガラス基材は、フィルム表面で陽イオンの置換が発生し、ソーダ吹きの現象が生じやすい。それにより、フィルム表層の密度が低下しやすく、ガラス基板が破損しやすいからである。
液晶表示装置を構成する液晶セルのガラス基板(108A及び108B)の厚さは、0.3〜0.7mmの範囲内であることが好ましい。このような厚さとすることは、液晶表示装置の薄型化形成に寄与することができる点で好ましい。
ガラス基板は、公知の方法、例えばフロート法、ダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法などにより成形されうる。なかでも、成形時にガラス基材の表面が成形部材と接触せず、得られるガラス基材の表面に傷がつきにくいことなどから、オーバーフローダウンドロー法が好ましい。
また、このようなガラス基板は、市販品としても入手することができ、例えば、旭硝子社製の無アルカリガラス AN100(厚さ500μm)、コーニング社製のガラス基板 EAGLE XG(r) Slim(厚さ300μm、400μm等)、日本電気硝子社製のガラス基材(厚さ100〜200μm)等を挙げることができる。
また、図3に示すような偏光板(101A、101B)と、液晶セル(101C)を構成するガラス基材(108A、108B)とは、粘着層(106)を介して接着されている。
粘着層としては、両面テープ、例えば、リンテック社製の厚さ25μmの両面テープ(基材レステープ MO−3005C)等や、あるいは前記活性光線硬化型樹脂層の形成に用いる組成物を適用することができる。
本発明の偏光板が用いられた液晶表示装置は、本発明の効果以外にも、層間の密着性に優れ、退色耐性、表示画像のエッグムラ耐性等に優れる利点を有する。
偏光板の位相差フィルム側の表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面との貼合は、公知の手法により行われる。場合によっては、接着層を介して貼合されてもよい。
本発明の偏光板を用いることで、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、パネルベンドが抑制され、表示ムラ、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
《偏光板保護フィルムの用途》
本発明の偏光板保護フィルムは、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の各種表示装置用の偏光板保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板保護フィルムは、位相差フィルムとしての機能を兼ねることも可能である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
《偏光板保護フィルムの作製》
(偏光板保護フィルム101の作製)
〈ドープ(D−1)の調製〉
下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過してドープ(D−1)を調製した。
ノルボルネン系樹脂1(重量平均分子量:120000) 100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
〈ウェブの形成〉
上記調製したドープ(D−1)を成膜ラインで流延し、ドープ(D−1)が自己支持性を持つまで金属支持体上で乾燥した後にウェブとしてはぎ取って、テンターに導入した。
〈偏光板保護フィルムの作製〉
次いで、テンターで、延伸率5%、テンター内温度140℃として、幅手方向(TD)にフィルムを延伸し搬送させた。テンター離脱直後から100N/mのテンションでローラー搬送を行い、更に140℃で乾燥して、フィルムを巻取り長4000mで巻き取り、偏光板保護フィルム101を作製した。偏光板保護フィルム101の乾燥膜厚は、5.0μmであった。なお、偏光板保護フィルム101には剥離フィルムを付与した。剥離可能な剥離フィルムとしては、粘着剤付きポリエチレンテレフタレートフィルム「マスタック NBO−0424」(藤森工業(株)製、厚さ68μm)を用いた。
〈リターデーション値の測定〉
上記作製した偏光板保護フィルム101について、フィルム面内のリターデーション値Ro、及びフィルム膜厚方向のリターデーション値Rtを、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出した結果、Roが5nm、Rtが5nmであった。
(偏光板保護フィルム102〜104の作製)
上記偏光板保護フィルム101の作製において、乾燥膜厚を5.0μmから、それぞれ10.0μm、15.0μm、20.0μmに変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム102〜104を作製した。
(偏光板保護フィルム105〜108の作製)
上記偏光板保護フィルム101〜104の作製において、下記で調製した微粒子添加液1を用い、マット剤であるR812を、ノルボルネン系樹脂1に対し0.10質量%となるように添加した以外は同様にして、偏光板保護フィルム105〜108を作製した。なお、偏光板保護フィルム105には剥離フィルムを付与しない構成とした。
上記の方法で測定した偏光板保護フィルム105〜108のRoは5nm、Rtは5nmであった。
〈微粒子添加液1の調製〉
(微粒子添加液の調製)
微粒子(アエロジルR812:日本アエロジル株式会社製、一次平均粒子径:7nm、略称:R812) 4質量部
ジクロロメタン 48質量部
エタノール 48質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
さらに、アトライターにて分散を行った後、日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
(偏光板保護フィルム109〜112の作製)
上記偏光板保護フィルム105〜108の作製において、マット剤であるR812のノルボルネン系樹脂1に対する添加量を、0.30質量%に変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム109〜112を作製した。
(偏光板保護フィルム113〜116の作製)
上記偏光板保護フィルム105〜108の作製において、マット剤であるR812のノルボルネン系樹脂1に対する添加量を、0.50質量%に変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム113〜116を作製した。
(偏光板保護フィルム117〜128の作製)
上記偏光板保護フィルム105〜116の作製において、マット剤をR812から、アエロジルR972V(略称:R972V、東新化成株式会社製、一次平均粒子径:16nm)に変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム117〜128を作製した。
(偏光板保護フィルム129〜132の作製)
上記偏光板保護フィルム110の作製において、製膜時のテンターでの幅手方向(TD)における一軸延伸率を適宜調整して、表2に記載のRoとした以外は同様にして、Ro値がそれぞれ、20nm、0nm、10nm、15nmである偏光板保護フィルム129〜132を作製した。
(偏光板保護フィルム133〜136の作製)
上記偏光板保護フィルム110の作製において、製膜時のテンターでの幅手方向(TD)における一軸延伸方式に代えて、幅手方向(TD)及び長手方向(MD)に同時延伸する二軸延伸方式に変更し、かつ延伸条件を適宜調整して、Rt値をそれぞれ、−15nm、−10nm、10nm、15nmに変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム133〜136を作製した。
(偏光板保護フィルム137〜140の作製)
上記偏光板保護フィルム122の作製において、製膜時のテンターでの幅手方向(TD)における一軸延伸率を適宜調整して、表2に記載のRoとした以外は同様にして、Ro値がそれぞれ、20nm、0nm、10nm、15nmである偏光板保護フィルム137〜140を作製した。
(偏光板保護フィルム141〜144の作製)
上記偏光板保護フィルム122の作製において、製膜時のテンターでの幅手方向(TD)における一軸延伸方式に代えて、幅手方向(TD)及び長手方向(MD)に同時延伸する二軸延伸方式に変更し、かつ延伸条件を適宜調整して、Rt値をそれぞれ、−15nm、−10nm、10nm、15nmに変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム141〜144を作製した。
(偏光板保護フィルム145の作製)
上記偏光板保護フィルム106の作製において、マット剤であるR812のノルボルネン系樹脂1に対する添加量を、0.70質量%に変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム145を作製した。
(偏光板保護フィルム146の作製)
上記偏光板保護フィルム118の作製において、マット剤であるR972Vのノルボルネン系樹脂1に対する添加量を、0.70質量%に変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム146を作製した。
(偏光板保護フィルム147の作製)
上記偏光板保護フィルム106の作製において、ノルボルネン系樹脂1における側鎖(R)のアルキル基を、メチル基からエチル基(−C2H5)に変更したノルボルネン系樹脂2を用いた以外は同様にして、偏光板保護フィルム147を作製した。
(偏光板保護フィルム148の作製)
上記偏光板保護フィルム106の作製において、ノルボルネン系樹脂1における側鎖(R)のアルキル基を、メチル基からn−プロピル基(−C3H7)に変更したノルボルネン系樹脂3を用いた以外は同様にして、偏光板保護フィルム148を作製した。
(偏光板保護フィルム149の作製)
上記偏光板保護フィルム106の作製において、ノルボルネン系樹脂1における側鎖(R)のアルキル基を、メチル基からn−ブチル基(−C4H9)に変更したノルボルネン系樹脂4を用いた以外は同様にして、偏光板保護フィルム149を作製した。
《偏光板の作製》
下記の方法に従って、偏光板101〜149を作製した。
(偏光子の作製)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、得られたポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム(質量比=0.5/8)の濃度0.3質量%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながら染色した。その後、得られたポリビニルアルコールフィルムを、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6.0倍となるように延伸した。その後、得られたポリビニルアルコールフィルムを、40℃のオーブンにて3分間乾燥して、厚さ10μmの偏光子を得た。
(偏光板の作製)
偏光膜の表面に、n−ブチルアクリレートが90質量%、エチルアクリレートが7質量%、アクリル酸が3質量%からなるアクリル系樹脂100部と、トリレンジイソシアナート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物の75質量%酢酸エチル溶液からなる架橋剤の2部とを混合して得られた粘着剤を用いて、上記作製した偏光板保護フィルムを図2に記載のT2(105A)の位置に、市販のトリアセチルセルロースフィルム(厚さ40μm、コニカミノルタ社製)を図2に記載のT1(102A)の位置に、それぞれ偏光子(104)の片面に粘着させ、メタルハライドランプを280〜320nmの波長における積算光量が320mJ/cm2となるように第1の保護フィルム側から照射して、両面の接着剤を硬化させて、各偏光板を得た。
《偏光板保護フィルムの評価》
〔フィルム面品質1の評価〕
上記作製した偏光板保護フィルムを1m×1mのサイズに裁断したのち、蛍光灯下及びグリーンランプ下にて、製膜時に発生した表面の異物・キズ・押され跡・スジ・ムラ等の欠陥の有無を目視観察し、下記の基準に従ってランク付けを行った。
○ 欠陥が全く見られず、極めて良好な面品質である
× フィルム表面で欠陥がやや目立ち、フィルムの適用分野によっては実用上問題となる品質である
《偏光板の評価》
〔偏光板の作製〕
下記の方法に従って、偏光板101〜149を作製した。
(偏光子の作製)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、得られたポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム(質量比=0.5/8)の濃度0.3質量%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながら染色した。その後、得られたポリビニルアルコールフィルムを、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6.0倍となるように延伸した。その後、得られたポリビニルアルコールフィルムを、40℃のオーブンにて3分間乾燥して、厚さ10μmの偏光子を得た。
(偏光板サンプルの作製)
偏光膜の表面に、n−ブチルアクリレートが90質量%、エチルアクリレートが7質量%、アクリル酸が3質量%からなるアクリル系樹脂100部と、トリレンジイソシアナート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物の75質量%酢酸エチル溶液からなる架橋剤の2部とを混合して得られた粘着剤を用いて、上記作製した偏光板保護フィルムを図2に記載のT2(105A)の位置に、市販のトリアセチルセルロースフィルム(厚さ40μm、コニカミノルタ社製)を図2に記載のT1(102A)の位置に、それぞれ偏光子(104)の片面に粘着させ、メタルハライドランプを280〜320nmの波長における積算光量が320mJ/cm2となるように第1の保護フィルム側から照射して、両面の接着剤を硬化させて、各偏光板を得た。
〔プロセス反り1の評価〕
上記作製した各偏光板を、23℃・55%RHの環境下で厚さ100μm、10cm×10cmのガラス板に粘着剤を用いて、偏光板保護フィルムT2(105A)がガラス板側になるように貼合し、測定用サンプルを作製した。
次いで、測定用サンプルを23℃・80%RHの環境下で24時間放置した後、平面の金属板上に静置し、金属板表面からの試料サンプルのカールによる凹凸の高さを測定した。試料サンプルが凸状のカールであれば、金属面から中央部の最大高さを測定し、試料サンプルが凹状のカールであれば、端部における金属面からの最大高さを測定した。次いで、下記の基準に従って、プロセス反り1の判定を行った。
◎ 凹凸の高さが、5mm未満である
○ 凹凸の高さが、5mm以上、10mm未満である
× 凹凸の高さが、10mm以上である
〔熱反り1の評価〕
プロセス反りの評価で作製したのと同様の測定用サンプルを用い、85℃の環境下で500時間の加熱処理を行った後、プロセス反りにおける評価と同様にして、試料サンプルの凹凸の測定を行い、下記の基準に従って、熱反り1の評価を行った。
◎ 凹凸の高さが、5mm未満である
○ 凹凸の高さが、5mm以上、10mm未満である
× 凹凸の高さが、10mm以上である
〔視野角特性の評価〕
(液晶表示パネルの作製)
LGエレクトロニクス社製(29UM57−P)の偏光板を剥がして、上記作製した各偏光板を貼り合わせて使用した。詳しくは、図3で示すように、29UM57−Pの液晶セル(101C)の両面に、偏光板(101A、101B)を二枚貼り合わせ、当該液晶セル側に上記作製した偏光板保護フィルム(図3における105A、105B)が配置されるように粘着層を介して貼付して、各液晶表示パネルを作製した。
(評価)
液晶表示パネルに白画像を表示させたときの、表示画面の方位角45°方向、極角60°方向におけるXYZ表示系のY値を、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」により測定した。同様に、液晶表示パネルに黒画像を表示させたときの、表示画面の方位角45°方向、極角60°方向におけるXYZ表示系のY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。コントラスト比の測定は、温度23℃、相対湿度55%の暗室内にて行った。測定したコントラスト比を基に、下記の基準に従って、視野角特性の評価を行った。
○ コントラスト比が80以上である
× コントラスト比が80未満である
以上により得られた結果を、表3に示す。
表3に記載の結果より明らかなように、本発明の偏光板保護フィルムは、比較例に対し、欠陥等の発生がなく、面品質に優れるとともに、当該偏光板保護フィルムを偏光板に組み入れることにより、プロセス反り耐性及び熱反り耐性に優れ、かつ視野角特性が良好であることが分かる。
実施例2
《偏光板保護フィルムの作製》
(偏光板保護フィルム110Aの作製)
実施例1に記載の偏光板保護フィルム106の作製において、下記の紫外線吸収剤TINUVIN Ti928(BASFジャパン社製、略称:Ti928)を、ノルボルネン系樹脂1に対し、3.5質量%添加した以外は同様にして、偏光板保護フィルム110Aを作製した。
(偏光板保護フィルム110Bの作製)
実施例1に記載の偏光板保護フィルム106の作製において、上記の紫外線吸収剤TINUVIN Ti928(BASFジャパン社製、略称:Ti928)を、ノルボルネン系樹脂1に対し、7.0質量%添加した以外は同様にして、偏光板保護フィルム110Bを作製した。
《偏光板の作製》
実施例1に記載の偏光板110の作製において、視認側の偏光板保護フィルムT1及び液晶セル側の偏光板保護フィルムT2の構成を、表4に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、偏光板201〜206を作製した。
《偏光板保護フィルムの評価:フィルム面品質1の評価》
実施例1で作製した上偏光板保護フィルム110と、上記作製した偏光板保護フィルム110A、110Bについて、実施例1に記載の方法と同様にして、フィルム面品質1の評価を行った。
《偏光板の評価》
実施例1の偏光板の作製と同様にして、表4に記載の偏光板保護フィルムT2(液晶セル側)と偏光板保護フィルムT1(視認側)の組み合わせで、偏光板201〜207を作製した。
〔プロセス反り2の評価〕
上記作製した各偏光板を、23℃・55%RHの環境下で厚さ100μm、10cm×10cmのガラス板に粘着剤を用いて、偏光板保護フィルムT2(105A)がガラス板側になるように貼合し、測定用サンプルを作製した。
次いで、測定用サンプルを30℃・80%RHの環境下で72時間放置した後、平面の金属板上に静置し、金属板表面からの試料サンプルのカールによる凹凸の高さを測定した。試料サンプルが凸状のカールであれば、金属面から中央部の最大高さを測定し、試料サンプルが凹状のカールであれば、端部における金属面からの最大高さを測定した。次いで、下記の基準に従って、プロセス反り2の判定を行った。ランクが△以上であれば、実用上許容される品質であると判定した。
◎ 凹凸の高さが、3mm未満である
○ 凹凸の高さが、3mm以上、6mm未満である
△ 凹凸の高さが、6mm以上、10mm以下である
× 凹凸の高さが、10mm以上である
〔熱反り2の評価〕
プロセス反りの評価で作製したのと同様の測定用サンプルを用い、90℃の環境下で600時間の加熱処理を行った後、プロセス反りにおける評価と同様にして、試料サンプルの凹凸の測定を行い、下記の基準に従って、熱反り2の評価を行った。
◎ 凹凸の高さが、3mm未満である
○ 凹凸の高さが、3mm以上、6mm以下である
△ 凹凸の高さが、6mm以上、10mm未満である
× 凹凸の高さが、10mm以上である
〔視野角特性の評価〕
実施例1に記載の方法と同様にして、視野角特性の評価を行った。
以上により得られた結果を、表4に示す。
表4に記載の結果より明らかなように、本発明の偏光板保護フィルムでは、T2又はT1のいずれか一方に紫外線吸収剤を添加すること、さらに好ましくは、T2及びT1の双方に紫外線吸収剤を添加することにより、特に、プロセス反り耐性及び熱反り耐性が向上することが分かる。
実施例3
《偏光板保護フィルムの作製》
〔偏光板保護フィルム301の作製〕
実施例1に記載の偏光板保護フィルム110の作製において、可塑剤として、下記ポリエステル系可塑剤A(フタル酸:アジピン酸=5:5、末端=安息香酸、数平均分子量:500)を、ノルボルネン系樹脂1に対し、1.0質量%添加した以外は同様にして、偏光板保護フィルム301を作製した。
〔偏光板保護フィルム302〜304の作製〕
上記偏光板保護フィルム301の作製において、ポリエステル系可塑剤Aの添加量を、それぞれ3.0質量%、5.0質量%、10質量%に変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム302〜304を作製した。
〔偏光板保護フィルム305の作製〕
実施例1に記載の偏光板保護フィルム110の作製において、可塑剤として、下記ポリエステル系可塑剤B(テレフタル酸:コハク酸=7:3、末端=p−オキシ−安息香酸、数平均分子量:600)を、ノルボルネン系樹脂1に対し、1.0質量%添加した以外は同様にして、偏光板保護フィルム305を作製した。
〔偏光板保護フィルム306〜308の作製〕
上記偏光板保護フィルム305の作製において、ポリエステル系可塑剤Bの添加量を、それぞれ3.0質量%、5.0質量%、10質量%に変更した以外は同様にして、偏光板保護フィルム306〜308を作製した。
《偏光板の作製》
実施例1に記載の偏光板110の作製において、液晶セル側の偏光板保護フィルムT2を、上記作製した偏光板保護フィルム301〜308に変更した以外は同様にして、偏光板301〜308を作製した。
《偏光板保護フィルムの評価:フィルム面品質1の評価》
実施例1で作製した上偏光板保護フィルム110と、上記作製した偏光板保護フィルム301〜308について、実施例1に記載の方法と同様にして、フィルム面品質1の評価と、下記に記載のフィルム面品質2の評価を行った。
〔フィルム面品質2の評価〕
上記作製した偏光板保護フィルム301〜308と、実施例1で作製した偏光板保護フィルム110について、それぞれの表面を走査型電子顕微鏡(1000倍)で観察し、フィルム表面の凹凸状態を観察し、下記の基準に準じて、フィルム面品質2(表面平滑性)の評価を行った。本発明では、△以上であれば、実用上許容される品質であると判定した。
◎ 凹凸の発生がほとんどなく、平面性の高い表面である
○ 表面で極弱い凹凸がわずかにみられるが、良好な平面性である
△ 表面に弱い凹凸が散見されるが、実用上許容される品質である
× 表面に強い凹凸が多発しており、平面性として問題となる品質である
《偏光板の評価》
実施例1で作製した偏光板110と、上記作製した偏光板301〜308について、実施例1に記載の方法と同様にして、プロセス反り1、熱反り1及び視野角特性の評価を行った。
以上により得られた結果を、表5に示す。
表5に記載の結果より明らかなように、本発明の偏光板保護フィルムでは、ポリエステル系可塑剤を共存させることにより、更に、フィルム表面における微細の凹凸構造が低減され平面性に優れた偏光板保護フィルムを得ることができる。