<自律走行システム>
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず始めに、本発明に係る農作業車両の一例であるトラクタを自律走行させる自律走行システムについて、図1〜図4を参照して以下に説明する。以下の説明では、自律走行及び自律作業を行うトラクタを「無人トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称し、オペレータが直接操作することにより走行して作業を行うトラクタを「有人トラクタ」と称することがある。
なお、本実施形態において、無人トラクタと有人トラクタの違いは、オペレータの直接操作の有無であり、トラクタとしての構成は無人と有人とで共通である。即ち、無人トラクタであっても、オペレータが搭乗(乗車)して直接操作することができる(言い換えれば、有人トラクタとして使用することができる)。また、有人トラクタであっても、オペレータが降車して自律走行及び自律作業を行わせることができる(言い換えれば、無人トラクタとして使用することができる)。
更に、自律走行とは、図4に示すトラクタ1が備える自律走行制御装置51等によって、当該トラクタ1が走行のために備える構成が制御され、予め定められた経路に沿ってトラクタ1が走行することを意味する。また、本明細書において自律作業とは、トラクタ1が作業のために備える構成が自律走行制御装置51等によって制御され、予め定められた経路に沿ってトラクタ1が作業を行うことを意味する。
図1に示す如く、本実施形態の自律走行システムでは、オペレータにより操作される遠隔操作装置70が、圃場(作業領域)H1内のトラクタ1と無線通信を実行することで、測位衛星63との通信により位置情報(測位情報)を獲得するトラクタ1の自律走行が制御される。無人トラクタ1は、電話回線網などによる通信ネットワーク網N1を通じて、管理センターC1に据え付けられているサーバ100と通信し、トラクタ1の駆動情報を、位置情報(測位情報)や時刻情報と共に、サーバ100に送信される。サーバ100は、無人トラクタ1の駆動情報を位置情報及び時刻情報と共に蓄積し、作業履歴情報として記憶する。
圃場H1近傍には、基準局(可搬型基準局)60が設置されており、基準局60は、設置位置である基準点となる位置情報を備えており、測位衛星63からの信号(以下、「衛星信号」と呼ぶ)を測位アンテナ61で直接的に受信するとともに、無線通信アンテナ64で無人トラクタ1で受信した測位衛星63からの信号(以下、「車両信号」と呼ぶ)を間接的に受信する。
基準局60は、基準局通信装置62で、衛星信号及び車両信号から位置補正情報をRTK測位法などにより算出し、無線通信アンテナ64を通じてトラクタ1に送信する。トラクタ1は、測位アンテナ6(図2参照)にて測定した衛星測位情報を、基準局60から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報(例えば、緯度情報・経度情報)を求めている。
圃場H1内において、遠隔操作装置70は、通信ネットワーク網N1に通信接続することなく、トラクタ1と無線通信を行い、トラクタ1の駆動情報を、位置情報及び時刻情報と共に受信し、作業履歴情報として記憶する。オペレータは、圃場H1内の状況とトラクタ1の状態を目視で確認しながら、遠隔操作装置70を操作することにより、遠隔操作装置70と通信接続されたトラクタ1に対して、自律走行の開始及び停止を指示できる。
オペレータの事務所O1内において、遠隔操作装置70は、ONU(Optical Network Unit)又はモデムなどを介して通信ネットワーク網N1と通信接続されたルータなどのアクセスポイント90と通信接続する。遠隔操作装置70は、事務所O1内のアクセスポイント90と通信接続することで、通信ネットワーク網N1を介してサーバ100と通信可能となる。そして、遠隔操作装置70は、サーバ100と通信可能な状態となる。既に記憶しているトラクタ1の作業履歴情報をサーバ100に送信する。
サーバ100は、遠隔操作装置70からの作業履歴情報(以下、「追加作業履歴情報」と呼ぶ)を受信すると、既にトラクタ1から受信して記憶している作業履歴情報(以下、「基本作業履歴情報」と呼ぶ)を読み出す。そして、サーバ100は、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報とを照合することで、基本作業履歴情報に追加作業履歴情報を追加した更新作業履歴情報を生成し、操作したオペレータの名前やトラクタ1の機種などと共に記憶する。
外部端末装置(サービスツール)80は、トラクタ1の販売会社や製造会社のサービスマンによって所持される端末装置であって、トラクタ1と有線接続することで、トラクタ1と通信可能となる。外部端末装置80と接続したトラクタ1が、通信ネットワーク網N1を介してサーバ100と通信することで、例えば、トラクタ1内の制御装置などにおけるソフトウェア(ファームウェア)の更新やトラクタ1の故障診断などが実行される。
<トラクタ>
次いで、トラクタ1について、図2〜図4を参照して以下に説明する。図2及び図3に示すように、トラクタ1は、圃場H1を自律走行する機体2を備える。機体2には、作業機3が着脱可能に備えられる。当該作業機3は農作業に用いられる。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して機体2に装着することができる。機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。トラクタ1の機体である機体2は、その前部が左右一対の前輪7,7で支持され、その後部が左右一対の後輪8,8で支持されている。前輪7,7及び後輪8,8が走行部を構成している。
機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内にはトラクタ1の駆動源であるエンジン10等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。また、駆動源としては、エンジンに加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用しても良い。
ボンネット9の後方には、オペレータが搭乗するキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、オペレータが操向操作するためのステアリングハンドル12と、オペレータが座ることが可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、農業用作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
図示は省略するが、上記の操作装置としては、例えばモニタ装置、スロットルレバー、主変速レバー、昇降レバー、PTOスイッチ、PTO変速レバー及び複数の油圧変速レバー等が挙げられる。これら操作装置は、座席13の近傍又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバーは、エンジン10の回転速度を設定するものである。主変速レバーは、ミッションケース22の変速比を変更操作するものである。昇降レバーは、機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するものである。PTOスイッチは、ミッションケース22の後端側から外向きに突出したPTO軸(動力取出軸)への動力伝達を継断操作するものである。すなわち、PTOスイッチがON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチがOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止する。PTO変速レバーは、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うものである。油圧変速レバーは、油圧外部取出バルブを切換操作するものである。
図1に示すように、機体2の下部には、その骨組を構成するシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、ミッションケース22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。ミッションケース22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、ミッションケース22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、ミッションケース22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図4に示すように、トラクタ1は、機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)を制御するための制御部として、車両バス回線18を介して相互に通信可能としたエンジン制御装置15、本機制御装置16、及び作業機制御装置17を備える。エンジン制御装置15の出力側が、エンジン5に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置41と電気的に接続されている。一方、エンジン制御装置15の入力側が、エンジン5の回転速度を検出する回転速度センサ31などと電気的に接続している。
本機制御装置16の出力側が、エンジン5からの動力を変速させる油圧式変速装置などを含む変速装置42や、リアアクスル24における左右の後輪8への動力伝達に制動をかける左右のブレーキ装置26などと電気的に接続されている。一方、本機制御装置16の入力側が、後輪8の回転速度を検出する車速センサ32、機体2の傾斜角及び傾斜角速度を検出する傾斜角センサ33などと電気的に接続されている。また、作業機制御装置17の出力側が、作業機昇降アクチュエータ44と電気的に接続されるとともに、作業機制御装置17の入力側が、作業機3の姿勢や動作状態などを検出する作業機センサ34と電気的に接続される。
また、トラクタ1は、車両バス回線18と接続した車両搭載端末装置19を備えており、車両搭載端末装置19は、無線電話回線などを介して通信ネットワーク網N1に接続できる。すなわち、トラクタ1は車両搭載端末装置19で通信ネットワーク網N1と通信接続することにより、管理センターC1のサーバ100と通信可能となる。更に、トラクタ1は、車両バス回線18と可能な外部端子(図示省略)を備えており、サービスマンにより操作されるコンピュータなどの外部端末装置(サービスツール)80を車両バス回線18に対して電気的に接続可能に構成されている。
コモンレール装置41は、エンジン10の各気筒に燃料を噴射するものである。この場合、エンジン10の各気筒に対するインジェクタの燃料噴射バルブがエンジン制御装置15で開閉制御されることによって、燃料供給ポンプによって燃料タンクからコモンレール装置41に圧送された高圧の燃料が各インジェクタからエンジン10の各気筒に噴射され、各インジェクタから供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。
変速装置42は、具体的には例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置であり、ミッションケース22に備えられている。変速装置42を本機制御装置16により制御して斜板の角度を適宜に調整することにより、ミッションケース22の変速比を所望の変速比にすることができる。
昇降アクチュエータ44は、例えば作業機3を機体2に連結している三点リンク機構を動作させることにより、作業機3を退避位置(農作業を行わない位置)又は作業位置(農作業を行う位置)の何れかに上げ下げするものである。昇降アクチュエータ44を作業機制御装置17により制御して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、例えば圃場領域の所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。
上述のような制御装置15〜17を備えるトラクタ1は、キャビン11内に搭乗したオペレータの各種操作に基づき、制御装置15〜17が車両バス回線18を介して相互に通信して、トラクタ1の各部(機体2、作業機3等)を制御することで、圃場内を走行しながら農作業を実行可能に構成されている。加えて、実施形態のトラクタ1は、例えばオペレータが搭乗しなくても、遠隔操作装置70により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行させることが可能となっている。
具体的には、図4に示すように、このトラクタ1は自律走行を可能とするための自律走行制御装置51等の各種の構成が追加されている。更に、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(の機体)の位置情報を取得するために必要な測位アンテナ6等の各種の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場上を自律走行することが可能となっている。
次に、自律走行のためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、トラクタ1は、図2〜図4に示すように、自律走行制御装置51、操舵制御装置52、測位測量装置53、無線通信ルータ(小電力データ通信装置)54、操舵アクチュエータ43、測位アンテナ6、及び無線通信アンテナユニット48等を備える。
自律走行制御装置51及び操舵制御装置52は、車両バス回線18を介して、エンジン制御装置15、本機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと相互に通信可能に構成されている。また、自律走行制御装置51は、車両バス回線18による操縦用通信系統とは別系統となる自律走行用通信系統における自律走行バス回線56を介して、測位測量装置53及び無線通信ルータ54それぞれと相互通信可能となっている。
操舵アクチュエータ43は、例えば、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリング軸)の中途部に設けられ、ステアリングハンドル12の回動角度(操舵角)を調整するものである。予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、操舵制御装置52は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を算出し、算出した回動角度でステアリングハンドル12が回動するように操舵アクチュエータ43を制御する。
また、操舵制御装置52は操舵角センサ35からステアリングハンドル12の回転角度の検出信号を受けるとともに、車両バス回線18を介して、エンジン制御装置15、本機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと通信することで、トラクタ1の車速に応じた操舵を実行できる。なお、操舵アクチュエータ43はステアリングハンドル12の回動角度を調整するものではなくトラクタ1の前輪7の操舵角を調整するものであってもよく、その場合、旋回走行を行ったとしてもステアリングハンドル12は回転しない。
測位アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。測位アンテナ6は、キャビン11における屋根14の上面に配置されている。測位アンテナ6で受信された信号は、測位測量装置53に入力されて、測位測量装置53でトラクタ1(厳密には、測位アンテナ6)の位置情報が、例えば緯度・経度情報として算出される。当該測位測量装置53で算出された位置情報は、自律走行制御装置51により取得されて、トラクタ1の制御に利用される。
測位測量装置53は、無線通信アンテナユニット48における第1無線通信アンテナ48aと電気的に接続しており、特定小電力無線による第1無線通信ネットワーク(例えば、920MHz帯の無線通信ネットワーク)を通じて、後述する基準局(可搬型基準局)60と通信を行う。無線通信アンテナユニット48は、キャビン11における屋根14の上面に配置されている。測位測量装置53は、第1無線通信アンテナ48aを介して、圃場近接位置に設置された基準局60から補正情報(測位補正情報)を受信することによりトラクタ1(移動局)の衛星測位情報を補正して、トラクタ1の現在位置を求める。例えば、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
本実施形態では、例えば、RTK測位を適用しており、移動局側となるトラクタ1に測位アンテナ6を備えるのに加えて、基準局測位アンテナ61を備えた基準局60が備えられている。基準局60は、例えば、圃場の周囲等、トラクタ1の走行の邪魔にならない位置(基準点)に配置されている。基準局60の設置位置となる基準点の位置情報は予め設定されている。基準局60には、トラクタ1の測位測量装置53及び第1無線通信アンテナ48aによる通信装置との間で構築される第1無線通信ネットワークを介して通信可能な基準局通信装置62が備えられている。
RTK測位では、基準点に設置された基準局60と、位置情報を求める対象の移動局側となるトラクタ1の測位アンテナ6との両方で測位衛星63からの搬送波位相(衛星測位情報)を測定している。基準局60では、測位衛星63から衛星測位情報を測定する毎に又は設定周期が経過する毎に、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成して、基準局通信装置62からトラクタ1の第1無線通信アンテナ48aに補正情報を送信している。トラクタ1(移動局に相当する)の測位測量装置53は、測位アンテナ6にて測定した衛星測位情報を、基準局60から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報(例えば、緯度情報・経度情報)を求めている。
なお、本実施形態ではGNSS−RTK法を利用した高精度の衛星測位システムを利用しているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。GNSS−RTKは、位置のわかっている基準局の情報に基づいて、補正して精度を高めた測位方式で、基準局からの情報の配信方法の違いで複数の方式が存在する。本発明はGNSS−RTK方式には依存しないので、本実施例では詳細は割愛する。
また、測位測量装置53は、衛星測位によるトラクタ1(機体2)の位置情報だけでなく、慣性測量による前後左右の傾斜角情報を計測可能になっている。測位測量装置53で計測された傾斜角情報は、自律走行制御装置51により位置情報(緯度・経度情報)と対応付けた状態で取得されて、トラクタ1の制御に利用される。なお、測位測量装置53は、圃場面に対する測位アンテナ6の高さ位置、ひいてはトラクタ1(機体2)の車高を計測することも可能である。
無線通信アンテナユニット48は、トラクタ1のキャビン11の屋根14の上面に配置されており、周波数帯域の異なる第1及び第2無線通信ネットワークと通信接続する第1及び第2無線通信アンテナ48a,48bを備えている。第1無線通信ネットワークは、基準局60による測位補正情報を通信させるべく、例えば、データ伝送速度の速い920MHz帯の特定小電力無線などで構築される。第2無線通信ネットワークは、画像データなどのデータ容量の多いデータを高速で通信でさせるべく、例えば、2.4GHz帯の小電力データ通信システムなどで構築される。なお、アンテナ48a,48bの一部はキャビン11内に配置してもよい。
第1無線通信アンテナ48aは、測位測量装置53と電気的に接続しており、第2無線通信アンテナ48bは、無線通信ルータ54と電気的に接続している。第2無線通信アンテナ48bと接続された無線通信ルータ54は、第2無線通信ネットワークを通じて、トラクタ1外部のオペレータにより操作される画像表示可能な遠隔操作装置70と通信を行う。無線通信ルータ54は、遠隔操作装置70からの制御信号を受信し、自律走行バス回線56を介して自律走行制御装置51に送信する。
また、無線通信ルータ54は、トラクタ1の前方を撮影するカメラ36と第2無線通信ネットワークを介した無線通信を行うことで、カメラ36の撮影画像を受信する。カメラ36は、キャビン11の上側位置に取り付けられ、キャビン11前方のボンネット6周辺などの圃場の状態を撮影する。本実施形態では、カメラ36は、無線通信アンテナユニット48に一体に取り付けられるものとしているが、キャビン11の屋根14の側方位置や後方位置などの複数箇所に取り付けられるものとしても構わない。
遠隔操作装置70は、具体的には、タッチパネルを備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。オペレータは、遠隔操作装置70のタッチパネルに表示された情報(例えば、自律走行を行うときに必要な圃場の情報等)を参照して確認することができる。また、オペレータは、遠隔操作装置70を操作して、トラクタ1の自律走行制御装置51に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信する。なお、実施形態の遠隔操作装置70はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、トラクタ1とは異なる他のトラクタに搭載されるモニタ装置を遠隔操作装置とすることもできる。
自律走行制御装置51は、遠隔操作装置70により生成された走行経路とトラクタ1の位置情報とを比較し、トラクタ1を走行経路に沿って所定の作業を行わせながら所定の走行速度にて自律走行させるために、トラクタ1の操舵角、目標のエンジン回転数や変速比等を算出して、車両バス回線18を通じて、各制御装置15〜17,52と通信する。これにより、トラクタ1は、当該走行経路に沿って自律走行しつつ、作業機3による農作業を行うことができる。このように、トラクタ1が自律走行する圃場領域(走行領域)内の経路を、以下の説明において「走行ルート」と称する場合がある。また、圃場領域(走行領域)においてトラクタ1の作業機3による農作業の対象となる領域(作業領域)は、圃場領域の全体から枕地及び余裕代を除いた領域として定められ、オペレータ等が後述の登録点の登録作業を実行したときにこれら登録点とトラクタ1の作業幅とに基づいて設定される。
自律走行制御装置51は、遠隔操作装置70に対してオペレータが停止操作を実行したとき、エンジン制御装置15との通信により、コモンレール装置41における燃料噴射を停止させるとともに、本機制御装置16との通信により、変速装置42を中立状態とした上で、後述のブレーキ装置26による制動動作を作用させる。このとき、自律走行制御装置52は、操舵制御装置51との通信により、ハンドル12を中立位置とするように操舵アクチュエータ43を制御して、左右の前輪7,7の方向を直進方向に向けるものとしてもよい。
自律走行制御装置51は、測位測量装置53における基準局60との通信状態(第1通信ネットワークにおける通信状態)、及び無線通信ルータ54における遠隔操作装置70との通信状態(第2通信ネットワークにおける通信状態)それぞれを、自律走行バス回線56を介して確認する。自律走行制御装置51は、第1及び第2通信ネットワークのいずれかでの通信状態が遮断されたことを確認すると、エンジン制御装置15及び変速制御装置16などと通信することで、トラクタ1の自律走行を停止させる。なお、自律走行制御装置51は、測位測量装置53、及び無線通信ルータ54がそれぞれ、通信相手からの信号を所定期間以上受信しない場合に、当該通信相手との通信が遮断されたものと判定する。
更に、トラクタ1には、ブレーキペダルや駐車ブレーキレバーの操作と自動制御という2つの系統によって、左右の後輪8,8にブレーキを掛ける左右一対のブレーキ装置26,26を設けている。すなわち、左右両方のブレーキ装置26,26は、ブレーキペダル(又は駐車ブレーキレバー)の制動方向への操作によって、左右両方の後輪8,8にブレーキを掛けるように構成されている。また、ハンドル12の回動角度が所定角度以上になれば、本機制御装置16の指令によって、旋回内側の後輪8に対するブレーキ装置26が自動的に制動動作をするように構成されている(いわゆるオートブレーキ)。
基準局60は、補正情報を配信する基準局無線通信アンテナ64と、測位衛星63からの信号を受信する基準局測位アンテナ61と、無線通信アンテナ64及び測位アンテナ61それぞれと電気的に接続された基準局通信装置62とを備える。基準局60は、移動局となるトラクタ(作業車両)1の位置特定における基準点に設置される。基準点に設置された可搬型基準局60は、基準局測位アンテナ61で受信した測位衛星63からの信号を基準局通信装置62に送り、基準局通信装置62において、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成する。そして、基準局60は、基準局通信装置62で生成した補正情報を、第1無線通信ネットワークを介して配信する。なお、基準局60は、複数部材に分解可能に構成されており、分解した各部材は、所定のケースに収容して運搬可能な大きさに構成されるものとしてもよい。
<自律走行システムにおける基本処理動作>
次に、図5〜図8を参照しながら、圃場H1における無人トラクタ1の自律走行における基本処理動作について、以下に説明する。図5〜図8に示すように、圃場H1内の無人トラクタ1に対してキースイッチがONとなると、各制御装置15〜17,51,52、測位測量装置53、及び無線通信ルータ54が電源投入されるとともに、エンジン10が駆動してアイドリング状態となる。このとき、無人トラクタ1は、左右ブレーキ装置26の制動作用により停止状態となっている。一方、遠隔操作装置70の電源が投入されると、タッチパネルで構成されるディスプレイが表示されるとともに、装置側ソフトウェアを起動する。
無人トラクタ1は、自律走行制御装置51により無線通信ルータ54の通信動作を制御することで、無線通信ルータ54は、第2無線通信ネットワークを通じて通信可能な遠隔操作装置70の検索を開始する。すなわち、無線通信ルータ54は、無人トラクタ1固有のトラクタID(識別子)を含んだ通信確認信号を生成して、第2無線通信アンテナ48bより送信する。遠隔操作装置70は、自律走行システムで通信可能な無人トラクタ1のトラクタIDを予め記憶している。そして、遠隔操作装置70は、トラクタIDを含む通信確認信号を受信したとき、受信したトラクタIDが予め記憶したトラクタIDと一致する場合に、無人トラクタ1の無線通信ルータ54との通信を認証する。
遠隔操作装置70は、無人トラクタ1との通信を認証した後、通信確認信号に対する応答信号を生成して、無人トラクタ1の無線通信ルータ54に送信する。なお、遠隔操作装置70は、自機器固有の装置ID(識別子)を含んだ応答信号を生成し、第2無線通信ネットワークを通じて無線通信ルータ54に送信する。無人トラクタ1は、自律走行システムで通信可能な遠隔操作装置70の装置IDを、自律走行制御装置51又は無線通信ルータ54で予め記憶している。従って、無人トラクタ1は、第2無線通信アンテナ48bを介して無線通信ルータ54で応答信号を受信すると、受信した応答信号における装置IDと、予め記憶した装置IDとが一致する場合に、遠隔操作装置70との通信を認証する。
上述のようにして、無人トラクタ1(無線通信ルータ54)と遠隔操作装置70との間で通信が確立すると、無人トラクタ1は、通信が確立したことをサーバ100に通知する。このとき、無人トラクタ1は、無人トラクタ1のトラクタID及び遠隔操作装置70の装置IDを、車両搭載用端末装置19より通信ネットワーク網N1を介してサーバ100に送信する。
また、無人トラクタ1のキースイッチがONとされて、測位測量装置53が電源投入されると、アンテナ6,48aを通じて測位衛星63及び基準局60それぞれと通信することで、無人トラクタ1の位置情報(緯度・経度情報)を算出している。そして、上述の無人トラクタ1(無線通信ルータ54)及び遠隔操作装置70間の認証処理後に、サーバ100に対して、トラクタID及び装置IDと共に、無人トラクタ1の位置情報を送信する。
サーバ100は、トラクタID及び装置IDより自律走行システム使用可能なトラクタ1及び遠隔操作装置であることを確認すると、無人トラクタ1とサーバ100との通信を可能とすべく、無人トラクタ1を認証する。サーバ100は、無人トラクタ1を認証すると、無人トラクタ1から受信した位置情報を中心とする地図情報を読み出して、読み出した地図情報を無人トラクタ1に送信する。このとき、サーバ100は、トラクタID及び装置IDより、無人トラクタ1を操作するオペレータに対して割り当てられた圃場(作業領域)を確認し、作業対象となる圃場(作業領域)の情報を地図情報に付加して、無人トラクタ1に送信する。
無人トラクタ1は、車両搭載端末装置19でサーバ100から地図情報を受信すると、受信した地図情報を自律走行制御装置51を介して無線通信ルータ54に与えて、当該地図情報を無線通信ルータ54より遠隔操作装置70に送信する。地図情報を受信した遠隔操作装置70は、受信した地図情報に基づいて、オペレータに割り当てられた圃場(作業領域)を含む地図をディスプレイ(図示省略)に表示する。
オペレータは、遠隔操作装置70のディスプレイ(図示省略)を構成するタッチパネルを操作するなどして、ディスプレイ上に表示された地図上から、無人トラクタ1による作業対象となる圃場(作業領域)を指定する。また、オペレータは、遠隔操作装置70に対して無人トラクタ1による作業(耕運作業、播種作業、施肥作業、代掻き作業、畝立て作業など)を行うための作業機及び作業機の大きさなどを指定する。
遠隔操作装置70は、指定された圃場及び作業機による作業に基づいて、演算により無人トラクタ1が移動する作業ルート(作業経路)を生成し、作業ルートをディスプレイ(図示省略)上に表示する。その後、遠隔操作装置70は、オペレータの操作により、生成された作業ルートが選択された後、自律走行の開始の操作を受け付けると、自律走行を許可する応答信号を生成し、無人トラクタ1(無線通信ルータ54)に送信する。この自律走行許可信号となる応答信号には、オペレータにより指定された圃場(作業領域)、作業機及び作業ルートが含まれる。
無人トラクタ1は、自律走行許可信号となる応答信号を無線通信ルータ54で受信すると、エンジン制御装置15、本機制御装置16、作業機制御装置17、及び操舵制御装置52を通じて自律走行制御装置51による各部の制御動作が実行され、無人トラクタ1の自律走行が開始される。このとき、無人トラクタ1は、自律走行制御装置51で、受信した応答信号より、オペレータに指定された圃場(作業領域)、作業機及び作業ルートを確認する。そして、自律走行制御装置51が、エンジン制御装置15、本機制御装置16、作業機制御装置17、及び操舵制御装置52と通信することで、圃場内において設定された作業ルートに沿って機体2を設定車速で移動させながら、作業機3を設定値で駆動させる。
無人トラクタ1は、自律走行を開始すると、機体2及び作業機3の駆動状態(エンジン回転数、機体2の車速、エンジン負荷、機体2の傾き姿勢、作業機3の傾き姿勢、作業機3の昇降位置、左右のブレーキ装置26の制動操作、ハンドル10の操舵角、PTOスイッチの切換など)を、位置情報と共に、サーバ100に送信する。また、無人トラクタ1は、遠隔操作装置70に対しても、機体2及び作業機3の駆動状態を示す駆動状態情報を、位置情報及び時刻情報と共に送信する。なお、位置情報は、測位衛星63及び基準局60それぞれから受信した情報に基づき、測位測量装置53で算出した緯度・経度情報であり、時刻情報は、無人トラクタ1の制御装置15〜17,52,53のいずれかで計時された時刻を示す情報である。
自律走行中の無人トラクタ1は、時間T1毎に、車両搭載端末装置19をサーバ100に通信接続して、機体2及び作業機3の駆動状態を示す駆動状態情報及び位置情報、を、通信ネットワーク網N1を介してサーバ100に送信する。サーバ100は、時間T1毎に受信した駆動状態情報及び位置情報を、標準時による受信時刻(又は送信時刻)と共に、指定された圃場(作業領域)を示す圃場ID(識別子)及びトラクタIDと関連づけて記憶する。なお、標準時による受信時刻(送信時刻)は、サーバ100が無人トラクタ1より駆動状態情報及び位置情報を受信(送信)した際の時刻であり、圃場(作業領域)が日本国内にある場合は日本標準時による時刻としてもよいし、世界標準時による時刻としてもよい。
また、無人トラクタ1は、時間T1をn等分した時間T2毎に、無線通信ルータ54より通信確認信号とともに、機体2及び作業機3の駆動状態を示す駆動状態情報、位置情報、及び時刻情報を、第2無線通信ネットワークを介して、遠隔操作装置70に送信する。遠隔操作装置70は、無人トラクタ1(無線通信ルータ54)からの通信確認信号を受信すると、自律走行許可信号となる応答信号を無人トラクタ1(無線通信ルータ54)に対して返信する。また、遠隔操作装置70は、時間T2毎に受信した駆動状態情報、位置情報、及び時刻情報を、指定された圃場(作業領域)を示す圃場ID及びトラクタIDと関連づけて記憶する。このとき、遠隔操作装置70に記憶される駆動状態情報の項目数が、サーバ100に記憶される駆動状態情報の項目数よりも多いものとしても構わない。
無人トラクタ1は、無線通信ルータ54において、時間T2毎に送信した通信確認信号に対して、遠隔操作装置70からの応答信号の返信の有無を確認し、遠隔操作装置70からの応答信号の返信が所定時間以上又は所定回数以上なかったとき、自律走行を停止させる。すなわち、オペレータが無人トラクタ1から離れた位置に移動したことにより、遠隔操作装置70が無線通信ルータ54との通信可能範囲外に位置した場合、遠隔操作装置70と無線通信ルータ54との間の通信が遮断される。このとき、自律走行制御装置51は、オペレータによる無人トラクタ1の監視が困難な距離であるものと判定し、無人トラクタ1の自律走行を停止する。また、無人トラクタ1は、作業中に自律走行を停止すると、サーバ100に対して、作業中に自律走行が停止されることを通知する。
また、遠隔操作装置70が、自律走行停止の操作を受け付けると、遠隔操作装置70は、無人トラクタ1(無線通信ルータ54)との通信を遮断し、応答信号の返信を停止する。これにより、無人トラクタ1は、無線通信ルータ54において、通信確認信号に対する応答信号の返信がないことを確認するため、自律走行制御装置51により自律走行を停止させる。従って、人や動物などが圃場(作業領域)H1内へ侵入した場合や、無人トラクタ1が作業ルートから外れた場合に、無人トラクタ1を監視するオペレータが、遠隔操作装置70のディスプレイ上に表示される停止ボタン(図示省略)をタッチ操作することで、無人トラクタ1を停止することができ、自律走行システムを安全に稼働できる。
<情報収集システム>
本実施形態の自律走行システムは、サーバ100及び遠隔操作装置70が自律走行中の無人トラクタ1の駆動状態情報を受信して記憶する情報収集システムを含んでいる。以下では、自律走行システムにおける情報収集システムについて、図6〜図14を参照して説明する。以下の説明において、図9及び図10に示すように、作業対象となる圃場(作業領域)H1が、圃場ID(識別子)「HD」が割り付けられた圃場HDであり、緯度XD及び経度YDに無人トラクタ1が位置する時刻が、無人トラクタ1内の時計により計時された時刻(以下、「本機時刻」と呼ぶ)では、時刻TMDとなる一方、標準時では、時刻TDとなるものとする。また、以下の説明において、無人トラクタ1のトラクタID(識別子)が「A1」であり、遠隔操作装置70の装置ID(識別子)が「B1」であるものとする。
図6〜図10に示すように、圃場HDで自律走行中の無人トラクタ1は、時間T2毎に、各制御装置15〜17,52を通じて取得する駆動状況情報を自律走行制御装置51により取得するとともに、測位側量装置53により無人トラクタ1の位置情報(緯度・経度情報)を算出する。そして、無人トラクタ1は、時間T1毎に、取得した駆動状況情報及び位置情報を、車両搭載端末装置19よりサーバ100に送信する一方、時間T2毎に、取得した駆動状況情報及び位置情報を、無人トラクタ1内の時計で計時された本機時刻による時刻情報と共に、無線通信ルータ54より遠隔操作装置70に送信する。
すなわち、無人トラクタ1は、本機時刻TMDm1で測定された位置情報(緯度XDm1,経度YDm1)と、本機時刻TMDm1に取得された駆動状況情報RDm1とを、サーバ100に送信する一方で、この位置情報(緯度XDm1,経度YDm1)及び駆動状況情報RDm1を、本機時刻TMDm1と共に、遠隔操作装置70に送信する。その後、本機時刻TMDm1から時間T2経過した本機時刻TMDm2(=TDm1+T2)に、無人トラクタ1は、位置情報(緯度XDm2,経度YDm2)と、駆動状況情報RDmとを取得すると、位置情報(緯度XDm2,経度YDm2)及び駆動状況情報RDmを本機時刻TMDm2と共に遠隔操作装置70に送信する。
無人トラクタ1は、位置情報及び駆動状況情報の取得動作と、遠隔操作装置70への送信動作とを、時間T2毎にn回分繰り返し、本機時刻TMDm1から時間T1経過した本機時刻TMD(m+1)1(=TDm1+T1)となると、取得した位置情報(緯度XD(m+1)1,経度YD(m+1)1)及び駆動状況情報RD(m+1)1をサーバ100に送信すると同時に、この位置情報(緯度XD(m+1)1,経度YD(m+1)1)及び駆動状況情報RD(m+1)1を、本機時刻TMD(m+1)1と共に、遠隔操作装置70に送信する。
サーバ100は、無人トラクタ1から時間T1毎に位置情報と駆動状況情報とを受信すると、受信した位置情報及び駆動状況情報に、通信ネットワーク網N1上のタイムサーバ(NTP(Network Time Protocol)サーバ)などから取得される標準時と、圃場HDの圃場ID「HD」を追加した後、無人トラクタ1のトラクタID「A1」及び遠隔操作装置70の装置ID「B1」と関連づけて記憶する。すなわち、サーバ100は、図11に示すように、位置情報(緯度XD(m1,経度YDm1)及び駆動状況情報RDm1を受信すると、通信ネットワーク網N1から取得した標準時TDm1と圃場ID「HD」を追加して、トラクタID「A1」及び装置ID「B1」に対する作業履歴情報(基本作業履歴情報)として記憶する。
一方、遠隔操作装置70は、無人トラクタ1から時間T2毎に位置情報と駆動状況情報と本機時刻(時刻情報)を受信すると、受信した位置情報、駆動状況情報、及び本機時刻に、圃場HDの圃場ID「HD」を追加した後、無人トラクタ1のトラクタID「A1」及び遠隔操作装置70の装置ID「B1」と関連づけて記憶する。すなわち、サーバ100は、図12に示すように、位置情報(緯度XDm1,経度YDm1)、駆動状況情報RDm1、及び本機時刻TMDm1を受信すると、圃場ID「HD」を追加して、トラクタID「A1」及び装置ID「B1」に対する作業履歴情報(追加作業履歴情報)として記憶する。
無人トラクタ1が、作業を終了するまで、時間T1毎にサーバ100と通信すると同時に、時間T2毎に遠隔操作装置70と通信することで、位置情報及び駆動状況情報を含む作業履歴情報がサーバ100及び遠隔操作装置70それぞれに記憶される。また、無人トラクタ1は、圃場HA〜HFのいずれかから別の圃場HA〜HFのいずれかに移動するべく、あぜ道S1を走行する際においても、位置情報及び駆動状況情報をサーバ100及び遠隔操作装置70に送信する。このとき、あぜ道S1には圃場IDが割り付けられていないため、サーバ100及び遠隔操作装置70において、位置情報及び駆動状況情報は、圃場IDの追加がない状態で、作業履歴情報として記憶される。
図13及び図14に示すように、オペレータは、無人トラクタ1による作業を完了すると、事務所O1に戻り、遠隔操作装置70をアクセスポイント90に対して通信接続させる。これにより、遠隔操作装置70は、アクセスポイント90を介して通信ネットワーク網N1と通信接続されるため、サーバ100と通信可能となり、装置側ソフトウェアの更新をサーバ100に対して要求する。このとこい、遠隔操作装置70は、自機器の装置IDをサーバ100に送信することで、サーバ100は、遠隔操作装置70からの更新要求を確認すると共に、遠隔操作装置70との通信を認証する。
サーバ100と遠隔操作装置70との通信が確立されると、遠隔操作装置70は、自律走行を実行する際に認証した無人トラクタ1のトラクタID「A1」と共に、トラクタID「A1」の無人トラクタ1に対する追加作業履歴情報を読み出す。なお、追加作業履歴情報は、トラクタID「A1」に関連づけて記憶されている位置情報、駆動状況情報、圃場ID、及び時刻情報(本機時刻)で構成されている。遠隔操作装置70は、読み出したトラクタID「A1」と追加作業履歴情報をサーバ100に送信する。
サーバ100は、遠隔操作装置70から受信したトラクタID「A1」により、作業履歴の照合の対象となる無人トラクタ1を特定する。そして、サーバ100は、通信認証時に受信した装置ID「B1」と、無人トラクタ1を特定するトラクタID「A1」とにより、遠隔操作装置70より受信した追加作業履歴情報と照合する基本作業履歴情報を読み出す。その後、サーバ100は、読み出した基本作業履歴情報と、受信した追加作業履歴情報とを比較し、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報とにおける一致箇所となる特徴点を検出する。
基本作業履歴情報及び追加作業履歴情報で一致する特徴点の検出方法について、簡単に説明する。なお、基本作業履歴情報が、時間T1毎の位置情報、駆動状況情報、及び圃場IDにより構成される一方、追加作業履歴情報が、時間T2毎の位置情報、駆動状況情報、及び圃場IDにより構成される。以下に、作業履歴情報の特徴点の検出方法について、複数の検出方法を例示する。
作業履歴情報の特徴点の検出方法の第1例として、まず、基本作業履歴情報及び追加作業履歴情報に対して、作業履歴の有無を確認することで、圃場H1での作業開始点又は作業終了点を検出する。そして、検出した作業開始点又は作業終了点における位置情報を比較する。すなわち、無人トラクタ1があぜ道S1から圃場H1に入ったときの位置情報と、又は、圃場H1からあぜ道S1に出たときの位置情報とを比較する。このとき、位置情報に差がある場合は、追加作業履歴情報における作業開始点又は作業終了点の前後の作業履歴を確認し、基本作業履歴情報の位置情報と一致する作業開始点又は作業終了点における作業履歴を特徴点として検出する。
作業履歴情報の特徴点の検出方法の第2例として、まず、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報の時刻が一致する作業履歴を読み出し、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報の位置情報と駆動状態情報を比較する。このとき、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報の位置情報及び駆動状態情報の両方が一致する場合は、更に、基本作業履歴情報及び追加作業履歴情報における時間T1毎の作用履歴による位置情報及び駆動状態情報の一致を確認する。基本作業履歴情報と追加作業履歴情報の位置情報及び駆動状態情報を複数の作業履歴で一致しない場合は、追加作業履歴情報の作業履歴を時間T2毎にずらして、基本作業履歴情報の位置情報及び駆動状態情報と一致する作業履歴を検索した後、再び、時間T1毎に変化させた作業履歴の比較を行う。そして、時間T1毎に変化させた複数の作業履歴で位置情報及び駆動状態情報が一致することを確認すると、一致を確認した作業履歴を特徴点として検出する。
作業履歴情報の特徴点の検出方法の第3例として、まず、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報の時刻が一致する作業履歴を読み出し、基本作業履歴情報の位置情報(「基本履歴位置情報」と呼ぶ)による無人トラクタ1の位置(「基本履歴位置」と呼ぶ)と追加作業履歴情報の位置情報(「追加履歴位置情報」と呼ぶ)による無人トラクタ1の位置(「追加履歴位置」と呼ぶ)との距離を算出する。また、基本作業履歴情報の作業履歴に基づく無人トラクタ1の車速と、追加作業履歴情報作業履歴に基づく無人トラクタ1の車速とに基づいて、無人トラクタ1の車速を予測する。
そして、基本履歴位置と追加履歴位置との距離を予測した車速により除算することで、基本作業履歴情報及び追加作業履歴情報それぞれから読み出した作業履歴における時間差(「予測時間差」と呼ぶ)を予測する。追加作業履歴情報に対して、比較のために読み出した作業履歴から予測時間差だけ前後させた時刻の作業履歴を読み出し、基本作業履歴情報の作業履歴と比較する。そして、基本作業履歴情報の作業履歴の位置情報に近づいた位置情報を有する追加作業履歴情報の作業履歴を確認すると、当該作業履歴の前後の作業履歴における位置情報を、基本作業履歴情報の作業履歴の位置情報と比較し、基本作業履歴情報の作業履歴の位置情報と一致する作業履歴を検出して、特徴点とする。
基本作業履歴情報と追加作業履歴情報において、駆動状態情報、位置情報、及び圃場IDのそれぞれが一致する特徴点となる作業履歴を検出すると、基本作業履歴情報において特徴点となる作業履歴より標準時による時刻Txを抽出するとともに、追加作業履歴情報において特徴点となる作業履歴より本機時刻TMxを抽出する。そして、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報との時間差(Tx−TMx)を算出すると、追加作業履歴情報における時刻情報(本機時刻)を、算出した時間差(Tx−TMx)により補正する。
追加作業履歴情報における時刻情報を補正した後、基本作業履歴情報と補正後の追加作業履歴情報とを再び照合して、追加作業履歴情報のうち、基本作業履歴情報に不足している情報を検出して、基本作業履歴情報に組み込むことで、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報を合成する。すなわち、図15に示すように、基本作業履歴情報における時間T1毎の作業履歴の間に、追加作業履歴情報における時間T2毎の作業履歴を補間することにより、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報を合成する。なお、追加作業履歴情報における駆動状態情報の項目数が、基本作業履歴情報における駆動状態情報の項目数より多い場合は、基本作業履歴情報で不足した項目の駆動状態情報が追加作業履歴情報より補間される。
サーバ100は、合成した作業履歴情報を記憶して、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報の照合による作業履歴情報の合成を完了すると、作業履歴情報の合成処理の完了を示す完了通知を遠隔操作装置70に送信する。このとき、サーバ100は、無人トラクタ1における本機時刻と標準時刻との時間ずれを表す補正時間を、完了通知と共に遠隔操作装置70に送信する。そして、サーバ100は、遠隔操作装置70に完了通知を送信すると、遠隔操作装置70との通信を遮断する。
一方、遠隔操作装置70は、サーバ100からの完了通知を受信すると、記憶している追加作業履歴情報を削除した後、無人トラクタ1における本機時刻と標準時刻との時間ずれを表す補正時間をディスプレイ(図示省略)上に表示する。これにより、遠隔操作装置70を操作するオペレータは、無人トラクタ1における本機時刻の時間ずれを確認することで、例えば、サービスマンに依頼し、表示された補正時間に基づいて、外部端末装置(サービスツール)80などにより無人トラクタ1の本機時刻を標準時刻に合わせることができる。
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。すなわち、上述の実施形態では、圃場内において単一のトラクタ1で作業されるものとしたが、複数のトラクタ1で作業されるものとしてもよい。このとき、例えば、図16に示すように、圃場内において農作業の一部が無人トラクタ1により行われるとともに、残りの農作業は有人トラクタ1Aにより行う。無人トラクタ1及び有人トラクタ1Aにより農作業の協調作業、追従作業、随伴作業等を実行することで、単一の圃場において農作業を分担して行える。また、上記の協調作業では、ある圃場において農作業を無人トラクタ1が行い、それと同時に別の圃場において農作業を有人トラクタ1Aが行うものとしてもよい。更に、図17に示すように、複数の無人トラクタ1,1A,1Bにより、上記協調作業、追従作業、随伴作業のいずれかを実行させるものとしても構わない。