JP6718546B1 - 船舶 - Google Patents
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Abstract
Description
低速肥形船においては、船体構造は、船首部、中央平行部及び船尾部に分けられる。抵抗のうち、造波抵抗は、主として船首部形状の影響が大きく、粘性抵抗は、主として船尾形状の影響が大きく、それぞれ独立して取り扱うことができる。また、抵抗以外の推進性能は、主として船尾形状に影響される。
船首部形状及び船尾部形状、並びに載荷量を確保するために重要な中央平行部と船首部、船尾部との容積配分をどのようにするかによって低燃費船とすることができる。
多種の化学精製液体を運ぶ船舶は、通常の輸送船より多くの船倉を有し、船体内の船長および船幅方向に、より多くの隔壁を有する。また、隔壁材としてステンレススチールが用いられることが多く、船体重量が重くなり燃料消費量が他の船種より多い船舶となりやすい。したがって、通常の輸送船よりも、より低燃費の船が求められている。
図1は船体側面図であり、全長(Loa)に対し船首垂線(FP)と船尾垂線(AP)間の長さを垂線間長(Lpp)という。本文中ではLppをLと表記することもある。喫水には構造喫水(Ts)と計画喫水(Td)がある。本文中ではTsをdと表記することもある。
図2は船体正面線図であり、化学液体積載船の一例が示されている。図3はTs、Tdにおける水線形状を示す図である。
船の肥大度を表す係数として方形係数(Cb)は以下のように定義される。
Cb=∇/(L・B・d) ここに∇:排水容積
また、以下の柱状係数(Cp)も肥大度を表す係数である。
Cp=∇/(L・AM) ここにAM:構造喫水線下の中央横断面積
CbとCpには、以下の関係がある。
Cb=Cp・CM ここにCM:中央横断面係数
また、粘性抵抗Rvは船体と面積が等しい平板(相当平板)の摩擦抵抗Rfと、船体が膨らみを有することから粘性によって生じる渦等の抵抗を、形状影響係数Kを用いてK・Rfとし、Rv=Rf(1+K) と表すことができる。
図4に示すように、これらの成分は波の波長(λ)と船長(Lpp)の比により変わってくる。船体運動に基づく波浪中抵抗増加Raw(0)は波長と船長がほぼ一致するλ/Lppが1付近で最も大きくなる。これより波長が短くても長くても抵抗増加は減少する。一方、船首部からの反射波に基づく抵抗増加Raw(1)は波長が短いほど大きくなる。波長が長くなるとともに減少し、λ/Lppが1付近ではこの成分による抵抗増加はほとんど生じない。
低速肥形船群の長さ6メートル模型の水槽試験を行い、造波抵抗係数を水線長(LWL)及び船幅(B)で整理した図を図7及び図8に示す。
供試模型船の主要目等は下記の表1に示すとおりである。
ここで、CwL、CwBはそれぞれ船長、船幅を基に無次元化した造波抵抗係数であり、以下の定義で示される。
CwL=Rw/(0.5ρv2Lpp2) 、CwB=Rw/(0.5ρv2B2)
Rw:造波抵抗(Kgf)、ρ:水の密度、:船速v(m/s)
低速肥形船では造波は主として船首部で生成され、船尾からの造波は小さくまた船首波と船尾波の干渉も小さい。したがって、船首部が全く同じ長さ幅で船長が異なる2船型においては、同一船速での造波抵抗は、ほぼ一致する。このとき造波抵抗係数とフルード数を、船幅を基準に無次元化すると、2船型間で、同一船速のFnBは同一であるから、FnBベースの造波抵抗係数は、ほぼ一致する。しかし、船長を基準にすると、2船型間で同一船側のFnLが異なるため、バラツキが生じる。
したがって船幅ベースのフルード数、造波抵抗係数を用いると、まとまった造波抵抗係数曲線群となる。
図8からBベースの造波抵抗係数CwBは、FnB=0.425を超えると急増する。したがって、FnB=v/(g・B)1/2≦0.425、すなわちB≧(v/0.425)2/gが望ましい。V=14.5ノットの場合、B≧31.4mとなる。
He/B=Le/B・(1−We)、Hr/B=Lr/B・(1−Wr)
ここで、
We:船首部横断面曲線の面積(leで無次元化した値)
Wr:船尾部横断面曲線の面積(lrで無次元化した値)
Le:船首端FPから船首平行部端位置までの距離(Le=le・Lpp)
Lr:船尾端APから船尾平行部端位置までの距離(Lr=lr・Lpp)
である。
そして、He/BとHr/Bとの間には、He/B+Hr/B=Lpp/B・(1−Cp)の関係がある。
He/Bが小さいと船首が肥えており、Hr/Bが小さいと船尾が肥えていることになる。He/Bが大きいほうが船首部は痩せており、造波抵抗は小さくなる。また、Hr/Bが小さいと船尾部が肥えており、船尾粘性抵抗の増加、プロペラ流入速度の低下、船尾流場の不均一が強まることによるプロペラキャビテーションの悪質化が生じ、燃料消費量の増加(推進性能の低下)、針路不安定化、船尾振動の増加など船舶の運航特性の劣化につながる。
rWは2船速について計算され、造波抵抗と関連するフルード数Fnで示されている。
対象船の船速(14.5ノット)であるフルード数Fn=0.18の結果によるとHe/Bが0.25より小さくなる(船首肥大度が大きくなる)と造波抵抗が急増する。低燃費船とするためにはこのような肥大度は避けるべきである。一方、船首肥大度を小さくしすぎると、船尾肥大度(Hr/B)が増大し、粘性抵抗が増えて推進性能が悪化するので、He/Bには後述する上限値がある。
水線代表角度:θ = 「船首垂線位置FPより2.5%L船尾側位置(図15の9.75位置)における半幅(b0)位置(図15のE点)」と、「中心面上船首垂線位置FP」とを結んだ直線(図15の(e))と中心面とのなす角
したがって、このとき水線代表角度θは46度から56度となる。構造喫水Tsまたは計画喫水Tsにおいて水線代表角度θを46度≦θ≦56度とする船首構造とすることにより、平水中及び波浪中を考慮した推進性能の観点から最適な船舶とすることができる。
また、船尾は通常主機、補機などが配置され作業性も含めて必要なスペースが確保されなければならない。船尾を必要以上に痩せさせHr/Bを大きくすると、主機室が船首側に移動し、貨物層が狭くなり必要な積載量が確保できなくなるおそれがある。したがって、その点も考慮して船尾肥大度(Hr/B)を決める必要がある。
船尾後端没水深度fは、船尾直後での剥離による粘性抵抗増加や、船尾造波抵抗に大きく影響を与え、fが小さい程、船尾後端の剥離域が狭く粘性抵抗が減少する。なお、この粘性抵抗は、通常、形状影響係数Kに含まれるとして取り扱われる。
想定した実船の構造喫水Ts=13.3m、型深さD=16mと一定とし、Lpp、Bが変化したときにLW(ライトウェイト)はLpp・(B+D)に比例すると仮定して排水量を求め、Cbを決定した。
なお、中央横断面係数CMは、全て0.9927である。
また、同様に、56,000DWTの主要目、LW、排水量、Cb、L/B及びL/B(1−Cp)の値を以下の表3に示す。なお、表3では、同様にBを限界B値=31.4mよりやや小さいB=30m以上とした。
ケース1 53,000DWT Lpp=190m、B=33m、
Cb=0.78、L/B(1−Cp)=1.23
ケース2 56,000DWT Lpp=170m、B=35.5m、
Cb=0.84、L/B(1−Cp)=0.75
ケース3 56,000DWT Lpp=180m、B=35m、
Cb=0.81、L/B(1−Cp)=0.95
ケース4 53,000DWT Lpp=177m、B=35.28m、
Cb=0.78、L/B(1−Cp)=1.08
ケース5 56,000DWT LPP=182.7m、B=33.06m、
Cb=0.84、L/B(1−Cp)=0.85
である。これらの5ケースについて、船幅Bは、全て限界B値以上である。
ケース1〜5の試設計船の載貨重量、船長と船幅及びCbの関係を図18に、ケース1〜5の試設計船のL/BとCb及びL/B(1−Cp)の関係を図19に示す。
図19からも明らかなとおり、ケース3の肥大度が中程度であり、ケース1の肥大度が最小、ケース2が最大で、ケース4はケース1と3の中間、ケース5はケース2とケース3の中間の値となっている。
したがって、運航性能がよくとも、運行コストと初期コストを総合考慮した当該船舶のトータルの採算性がよいとは必ずしも言えない。
表4から、船尾柱状係数Cba=0.79以上となっており、船尾肥大度が大きすぎるため、推進性能が劣化し、振動騒音問題を引き起こす可能性もある。
したがって、ケース2の肥大度(L/B(1−Cp))=0.75は、実船として成り立つ限界を超えているものと思われる。
残りのもののうち、ケース3とケース5は最適値がHe/B=0.25〜0.45の間にあるが、ケース1とケース5は、最適値がHe/B=0.45より大きい所にある。しかし、既に述べたとおり、肥大度が小さい(L/B(1−Cp)が大きい)と同じ載貨重量でもLW(ライトウェイト)が大きくなり初期コストが増加する。また、段落0037で述べたとおり、肥大度が小さい(L/B(1−Cp)が大きい)と船尾肥大度も小さくなり、主機室が船首側に移動し、貨物層が狭くなり必要な積載量が確保できなくなるおそれがある。したがって、あまり大きなL/B(1−Cp)の値は採用すべきではない。
そして、図12から、He/BとLe/Bの関係、図16からHe/Bとθの関係がそれぞれ求められるので、Le/B=1.15B〜1.65B、θ=46度〜56度が望ましい。なお、L/B(1−Cp)とHe/B が定まると、Hr/Bは、He/B+Hr/B=L/B(1−Cp)より、定まるので、Hr/Bの範囲を特段定める必要はない。
Lpp=178.8m B=35.0m 型深さD=18.5m、構造喫水(Ts)=13.25、Cp=0.8206(L/B=5.109、L/B・(1−Cp)=0.916)である。
船速=14.5ノットであるので、B=35mとし、限界B値=31.4mより大きい。採用したHe/B=0.3609であり、(Le)/B=1.39である。またHr/B=0.5541、Cba=0.8113である。
この船は試運転及び実際の航海において、想定とおりの優秀な性能を示した。
2 船首バルブ
3 船首部
4 平行部
5 船尾部
6 プロペラ
7 舵
A.P. 船尾垂線
B 船幅(型幅)
Dp プロペラ直径
F.P. 船首垂線
He/B 船首肥大度
Hr/B 船尾肥大度
Loa 全長
Lpp 垂線間長
LWL 水線長
Le F.P.から船首平行部端位置までの距離
Lr A.P.から船尾平行部端位置までの距離
θ 船首水線代表角度
Ts 構造喫水
Td 計画喫水
Claims (4)
- 垂線間長(Lpp)/船幅(B)=5〜6、構造喫水で無次元化した方形係数(Cb)=0.78〜0.84であって、船速(v)の船幅(B)ベースフルード数(v/(g・B)1/2)が0.425以下となる限界B値以上の船幅を有し、
船体前半部各位置での構造喫水線下の正面断面形状が、水線から下に向かう垂直線と、それに接して船底に至る円を含む楕円の一部または、それに接して漸次幅を減少する曲線によって構成される船首バルブなし船であって、
プロペラの直径が、計画喫水(Td)の65%以上であり、船尾後端の船底からの高さが、計画喫水(Td)の95%〜100%である船舶において、
船体平行部の船首端位置と船首垂線(FP)位置との間の船長方向長さ(Le)が、船幅(B)に対し、1.15B≦Le≦1.65Bの関係にあることを特徴とする船舶。 - 構造喫水線形状または計画水線形状において、船首垂線(FP)から垂線間長(Lpp)の2.5%後方位置の水線幅位置と船首垂線(FP)とを結ぶ直線の角度が46度〜56度の間にあり、かつL/B(1−Cp)が1.05より小さいことを特徴とする請求項1記載の船舶。
- 全長(Loa)170m以上195m以下、船幅(B)30m以上36m以下、構造喫水(Ts)が13m以上13.5m以下、載荷重量5万2千トン以上5万7千トン以下の化学液体積載船において、
船速(v)の船幅(B)ベースフルード数(v/(g・B)1/2)が0.425以下となる限界B値以上の船幅を有し、
船体前半部各位置での構造喫水線下の正面断面形状が、水線から下に向かう垂直線と、それに接して船底に至る円を含む楕円の一部または、それに接して漸次幅を減少する曲線によって構成される船首バルブなし船であって、
プロペラの直径が、計画喫水(Td)の65%以上であり、船尾後端の船底からの高さが、計画喫水(Td)の95%〜100%であって、
船体平行部の船首端位置との間の船首垂線(FP)位置の船長方向長さ(Le)が、船幅(B)に対し、1.15B≦Le≦1.65Bの関係にあることを特徴とする船舶。 - 構造喫水線形状または計画水線形状において、船首垂線(FP)から垂線間長(Lpp)の2.5%後方位置の水線幅位置と船首垂線(FP)とを結ぶ直線の角度が46度〜56度の間にあり、かつL/B(1−Cp)が0.8〜1.05の間にあることを特徴とする請求項3記載の船舶。
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