JP6712369B2 - 抗ペプチド抗体の製造方法及び設計方法 - Google Patents
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Description
このように質量分析法の発達によりプロテオミクス技術は飛躍的に進歩し、生命科学の基礎研究分野のみならず、癌などの人の疾患の原因タンパク質を探索する医科学分野においても盛んに行われるようになった(例えば特許文献1)。
また、同位体ではなくシステイン残基に対する化学修飾を標識とするICAT法も提案されている(非特許文献1)。
このように、プロテオミクスにおいて新たに同定されたタンパク質に対する抗タンパク質抗体を作製するには、多大な時間、費用、労力を必要とするという問題があった。
(1)試料中のタンパク質を分離する分離工程
(2)分離工程により分離されたタンパク質を質量分析法によって同定する質量分析工程
(3)分離工程により分離されたタンパク質に特異的に結合する抗ペプチド抗体を用いた免疫測定法により、前記試料中に含まれる前記分離されたタンパク質を測定する免疫測定工程
(A)分離工程により分離されたタンパク質を構成するアミノ酸配列のうち特異性の高い4アミノ酸残基以上のアミノ酸配列を選択する選択工程
(B)前記選択工程で選択されたアミノ酸配列からなる部分ペプチドを合成するペプチド合成工程
(C)前記部分ペプチドを抗原として前記抗ペプチド抗体を作製する抗体作製工程
イオン性界面活性剤の存在下にタンパク質を置くと変性し、折り畳み構造がほどけた状態となり、通常、内部に折り畳まれているアミノ酸配列に対しても抗ペプチド抗体が結合可能となる。
該質量分析工程において最も高い強度で検出されるシグナルの50%以上の強度で検出されるシグナルに対応する1種又は2種以上のペプチド断片を構成するアミノ酸配列と少なくとも4アミノ酸残基が同一である、前記分離工程により分離されたタンパク質の部分ペプチドを抗原とする抗ペプチド抗体を前記免疫測定工程において用いる。
このような抗ペプチド抗体を用いることにより、質量分析の結果との相関性に優れた免疫測定結果を得ることができる。
すなわち、本発明は、抗原タンパク質をタンパク質分解酵素で処理したペプチド溶液を試料として質量分析を行った場合に、検出可能なシグナルに対応する1種又は2種以上のペプチド断片を構成するアミノ酸配列と少なくとも4アミノ酸残基が同一である、前記抗原タンパク質の部分ペプチドを第1の抗原候補とすることを特徴とする、抗原ペプチドの設計方法である。
このような形態とすることにより、より質量分析と相関性の高い結果を得ることができる免疫測定方法を実現できる抗ペプチド抗体の製造のための抗原ペプチドを設計することができる。
イオン性界面活性剤の存在下ではタンパク質は変性し、通常折り畳み構造の内部に収納されているアミノ酸配列も外部に露出する。そのため、抗原ペプチドの設計に当たり、タンパク質の三次元構造を考慮する必要が無い。
このような実施の形態とすることにより、より特異性の高い抗ペプチド抗体を製造できる抗原ペプチドを設計することができる。
また、本発明の設計方法は、プロテオミクスにおいて同定された特定のタンパク質を検出するために用いる抗ペプチド抗体の製造に応用することが有用である。
さらに、本発明の設計方法は、上述した免疫測定方法において用いる抗ペプチド抗体の製造に応用することが有用である。
すなわち、本発明は、抗原タンパク質をタンパク質分解酵素で処理したペプチド溶液を試料として質量分析を行った場合に、検出可能なシグナルに対応する1種又は2種以上のペプチド断片を構成するアミノ酸配列と少なくとも4アミノ酸残基が同一である、前記抗原タンパク質の部分ペプチドを抗原として用いることを特徴とする、抗ペプチド抗体の製造方法である。
このような形態とすることにより、より質量分析の結果と相関性の高い免疫測定方法を実現できる抗ペプチド抗体を製造することができる。
かかる形態とすることにより、特異性の高い抗ペプチド抗体を製造することができる。
また、本発明の製造方法及び設計方法によれば、質量分析と相関性の高い免疫測定方法を可能にする抗ペプチド抗体の製造、及び該抗ペプチド抗体の製造のための抗原ペプチドを設計することができる。
また、本発明の製造方法及び設計方法により提供される抗ペプチド抗体を用いれば、煩雑な工程を要する質量分析を行わずとも、簡易・簡便な免疫測定法により質量分析と相関した結果を得ることができる。そのため、本発明の製造方法及び設計方法によれば、質量分析では難しかった、多検体測定や日常的な管理測定を可能にする抗ペプチド抗体を提供することができる。
本発明の免疫測定方法は、以下の3工程を含む。
(1)試料中のタンパク質を分離する分離工程
(2)分離工程により分離されたタンパク質を質量分析法によって同定する質量分析工程
(3)分離工程により分離されたタンパク質に特異的に結合する抗ペプチド抗体を用いた免疫測定法により、前記試料中に含まれる前記分離されたタンパク質を測定する免疫測定工程
以下、各工程について詳細に説明する。
分離工程は試料中のプロテオームに含まれるタンパク質を分離する工程である。試料は生物学的な系であれば特に限定されず、例えば、細胞、胚、組織または個体である。細胞とは、例えば、培養細胞、単細胞生物の細胞である。胚には、多細胞生物の発生初期の段階にある種々の細胞または細胞集団が含まれる。組織は、組織切片であってもよい。個体は、単細胞生物の個体および多細胞生物の個体を含む。
各分離手法に供する際の試料の調製方法は常法に従い行うことができる。
電気泳動の際に用いるバッファー、ゲルの種類、質量分析工程に供する特定タンパク質のスポットの選定、ゲルからの特定のタンパク質のスポットの切り出しに関しては、常法に従い行うことができる。
質量分析工程は、分離工程により分離されたタンパク質を質量分析法によって同定する工程である。
質量分析工程においては、まず、分離工程において分離したタンパク質をタンパク質分解酵素により処理し、ペプチド断片とする。
免疫測定工程では、分離工程により分離されたタンパク質に特異的に結合する抗ペプチド抗体を用いた免疫測定法により、前記試料中に含まれる前記分離されたタンパク質を測定する。
具体的には、不溶性担体に結合した抗ペプチド抗体に特定タンパク質を捕捉させた後に、該特定タンパク質を認識する標識抗体(二次抗体)を用いるサンドイッチ法、不溶性担体に結合した特定タンパク質を認識する抗体に該特定タンパク質を捕捉させた後に、標識した抗ペプチド抗体(二次抗体)を用いるサンドイッチ法、また、不溶性担体に結合した抗ペプチド抗体に試料中の特定タンパク質を標識化抗原の存在下で反応させる競合法などの公知の免疫測定法を利用することができる。これらのうち、高感度であるという点でサンドイッチELISAが好ましい。
また、上記標識物質としては、アルカリフォスファターゼ、HRP等の酵素、抗体のFc領域、GFP等の蛍光物質などを具体的に例示することができる。
好適には、イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、ラウリルサルコシンナトリウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルピリジニウムおよびそれらの混合物から成る群より選択される。
特に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が好適なイオン性界面活性剤として挙げられる。
イオン性界面活性剤の濃度を前記範囲とすることによって、効率的に試料から特定タンパク質を抽出することができ、また、抗原−抗体反応の効率を向上させることができる。
具体的には、試料を含む水性溶媒をホモゲナイザーや超音波破砕機、すり鉢などで処理し、得られた縣濁液を遠心分離し、上清を回収することで、タンパク質溶液を得ることができる。
または、イオン性界面活性剤濃度が0.03%(W/V)以下にならない範囲で希釈したタンパク質溶液と抗ペプチド抗体を接触させることが好ましい。
また、固相化された抗タンパク質抗体に補足された抗原タンパク質に、抗ペプチド抗体を接触させることにより、抗原−抗体複合体を形成することもできる。
このような方法としてはラテックス凝集法や、ELISA法が好ましく例示できる。
ポリクローナルである抗ペプチド抗体を生産する場合には、まず、キャリアと結合した抗原(特定タンパク質もしくはその部分ペプチド)をアジュバントとよく混合して、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、トリ、ウマ等の動物に投与し免疫する。免疫してから所定の期間の経過後に全採血を行い、抗血清を得る。この抗血清を塩析、カラム等により精製し、ポリクローナルである抗ペプチド抗体を得ることができる。
また、モノクローナルである抗ペプチド抗体を生産する場合には、まず、キャリアと結合した抗原ペプチドを免疫動物に免疫し、抗体を産生しているリンパ球として例えばマウス脾臓細胞と、ミエローマ細胞とをポリエチレングリコール等にて細胞融合させ、ハイブリドーマを得る。この中より、抗原ペプチドに対する抗体を産生する細胞をスクリーニングし、その細胞を培養することによって、抗ペプチド抗体を得ることができる。
精製した特定タンパク質をマウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウサギ等の免疫動物に免疫して抗血清を得る。
より好ましくは、精製した特定タンパク質に対して、加熱処理、SDS等のイオン性界面活性剤による処理、また、イオン性界面活性剤と2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトールや亜硫酸ナトリウム等の還元剤を併用した処理を加えることによって、免疫原とする変性した特定タンパク質を得る。このようにして得られた変性した特定タンパク質をマウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウサギ等の免疫動物に免疫する。
具体的には、抗原ペプチドをクロマトグラフィー用の樹脂、例えば、CNBr活性化セファロースやHiTrap NHS−activated(Amersham Pharmacia社製)に共有結合で固相化し、該固相化樹脂に抗血清を供する。そして、該抗血清中に含まれる抗原ペプチドを構成するアミノ酸配列に特異的に結合するポリクローナル抗体を樹脂上に吸着させ、ついで、該樹脂上に吸着した前記ポリクローナル抗体を適切な緩衝液やカオトロピックイオン等を用いて溶出させる。これにより、抗原ペプチドに特異的に結合する抗ペプチド抗体を得ることができる。
また、上記精製の前に、変性した特定タンパク質が担持されたカラムを用いた中間精製を行ってもよい。
このような抗ペプチド抗体を用いることにより、免疫測定工程における測定結果と、質量分析工程における測定結果の相関性を向上させることができる。
また、共通アミノ酸配列の長さは、抗原ペプチドの長さの、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
共通アミノ酸配列のペプチド長を上記範囲とすることによって、信頼性の高い特定タンパク質の検出結果を得ることができる。
(A)分離工程により分離されたタンパク質を構成するアミノ酸配列のうち特異性の高い4アミノ酸残基以上のアミノ酸配列を選択する選択工程
(B)前記選択工程で選択されたアミノ酸配列からなる部分ペプチドを合成するペプチド合成工程
(C)前記部分ペプチドを抗原として前記抗ペプチド抗体を作製する抗体作製工程
以下、各工程について詳述する。
選択工程は、抗原ペプチドのアミノ酸配列を選択する工程である。具体的には、分離工程により分離されたタンパク質を構成するアミノ酸配列のうち特異性の高い4アミノ酸残基以上のアミノ酸配列を選択する工程である。
選択する特異性の高いアミノ酸配列は4アミノ酸残基以上であればよいが、好ましくは6アミノ酸残基以上、さらに好ましく10アミノ酸残基以上である。
特異性の高いアミノ酸配列の選定は通常用いられる相同性解析ソフトを用いることができる。
ペプチド合成工程は、選択工程で選択されたアミノ酸配列からなる部分ペプチド、つまり抗原ペプチドを合成する工程である。合成の方法は特に限定されず、化学的に合成する方法や、上述したように大腸菌等の宿主微生物もしくは培養細胞を形質転換し、形質転換した大腸菌等の宿主微生物・培養細胞を培養して産生させる生物学的な合成方法が挙げられる。
本工程は、上述の方法で合成した部分ペプチドを抗原として抗ペプチド抗体を作製する工程である。具体的には上記(イ)及び(ロ)の方法をそのまま適用することができる。
本発明は、抗原ペプチドを構成するアミノ酸配列のうちから、質量分析法との相関性の高い免疫測定方法を実現可能な抗ペプチド抗体のための抗原ペプチドの設計方法にも関する。
本発明は、抗原タンパク質をタンパク質分解酵素で処理したペプチド溶液を試料として質量分析を行ったときの質量分析対象ペプチド断片と少なくとも4アミノ酸残基が同一である部分ペプチドを第1の抗原候補とすることを特徴とする。
第2の抗原候補を選択する際の具体的形態についても、上の「<1>(A)選択工程」の項目に記載した内容をそのまま適用することができる。
イオン性界面活性剤の存在下で抗原−抗体反応を行う免疫測定方法については、上の「<1>(3)免疫測定工程」の記載をそのまま適用することができる。
免疫測定法により抗原タンパク質を検出するために用いる抗ペプチド抗体の製造方法である。
本発明の製造方法は、抗原タンパク質をタンパク質分解酵素で処理したペプチド溶液を試料として質量分析を行った場合の質量分析対象ペプチド断片との共通アミノ酸配列(少なくとも4アミノ酸残基)を有する部分ペプチドを抗原ペプチドとすることを特徴とする。
イオン性界面活性剤の存在下で抗原−抗体反応を行う免疫測定方法については、上の「<1>(3)免疫測定工程」の記載をそのまま適用することができる。
本発明は、上述の設計方法により設計された抗原ペプチドにより製造された抗ペプチド抗体、及び上述の製造方法により製造された抗ペプチド抗体に関する。
本発明の抗ペプチド抗体は、質量分析と相関性の高い結果を得ることができる免疫測定方法を実現することができる。
そのため、本発明の抗ペプチド抗体は、質量分析により同定されたタンパク質の検出のために応用することが好ましい。さらには、本発明の抗ペプチド抗体をプロテオミクスにおいて同定されたタンパク質の検出のために応用すれば、プロテオミクス分野における昨今の課題であったプロテオーム中の特定タンパク質の定性的ないし定量的測定を実現することができる。
免疫測定工程と質量分析工程に供する試料としては抗原タンパク質の濃度が既知である標準溶液を用いることが好ましい。また、試料は抗原タンパク質以外のタンパク質及びペプチドを含まないことが好ましい。
このように両工程の結果が一致しない原因としては、質量分析におけるタンパク質の同定に誤りがあったことや、抗ペプチド抗体の特異性に問題があることが考えられる。
<1>分離工程
複数のタンパク質を含む、プロテオームを模した試料Aと試料Bを用意した。
試料Aと試料Bをそれぞれ固定化pH勾配等電点電気泳動用ゲルに泳動し、それぞれの試料に含まれるタンパク質を分離した。泳動後のゲルをクマシーブルーにより染色した染色図を図5に示す。
図5において点線で囲んだ試料Aの泳動図に特徴的なスポットを切り出し、ゲル内での還元、アルキル化及び消化(トリプシン)を行った。この消化物をサンプルとしてLC−TOFMSにより質量分析し、マススペクトルを得た。図6にその例を示す。図6上段はイオン化工程における電圧を強く設定しフラグメントイオンを生じさせたときのスペクトルである。図6下段はイオン化工程における電圧を弱く設定し、同ペプチド断片の2種のプロトン化イオン([M+H]+、[M+2H]2+)を生じさせたときのスペクトルである。
(1)抗原ペプチドの選択
表1にブタ血清アルブミンの全配列を示す。このブタ血清アルブミンをトリプシンで切断した場合、配列中リジン及びアルギニンが連続している場合も切断されると仮定すると、理論上87箇所での切断が起き、合計88の断片が生じる(表2)。
図7のクロマトグラムデータと表3の結果を比較すると、QTALVELLK配列(配列番号55)と、YLYEIAR配列(配列番号18)は質量分析において感度良く検出できるが、他種のタンパク質にも同一の配列が存在し、特異性に劣る。一方、FVIEIR配列(配列番号59)とGILA配列(配列番号60)はブタに特異的な配列であった。
PKFVIEIRGILAペプチド(配列番号61)を認識する抗ペプチド抗体は以下の手順により製造した。
(2−1)中間精製カラムと精製カラムの作製
以下の方法で中間精製カラムと精製カラムを作製した。
150mM NaCl、0.6% SDS、0.1M Na2SO3を含む20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に精製ブタ血清アルブミンを10mg/mLの濃度で溶解し、沸騰水中に10分間浸漬した後、流水で冷却した。
このようにして得た変性したブタ血清アルブミン25mgを5mg/mL樹脂の濃度で5mLのクロマトグラフィー用の樹脂に結合して、中間精製カラムを作製した。
135℃で処理したブタ血清アルブミンを免疫したウサギから得た抗血清を40,000×gで20分間遠心分離して上清を得た。
この上清150mLを中間精製カラムに1mL/minの流速で通じた後、60mLのPBSで洗浄した。
その後、中間精製カラムに0.1M Glycine−HCl緩衝液(pH2.3)を通じることにより、カラムに吸着したポリクローナル抗体を溶出した。
こうして得られた抗体量は約70mgであった(A280=1.4=1mg/mLとして計算)。
上記操作を4回繰り返し、約280mgのポリクローナルな抗変性豚血清アルブミン抗体を得た。
中間精製工程で得られたポリクローナルな抗変性豚血清アルブミン抗体を、PKFVIEIRGILAペプチド(配列番号61)を担持した精製カラムに通じた後、15mLのPBSで洗浄した。
その後、精製カラムに0.1M Glycine−HCl緩衝液(pH2.3)を通じることにより、カラムに吸着したポリクローナルな抗ペプチド抗体を溶出した。
このようにして、ブタ血清アルブミンのC末端の前記アミノ酸配列に特異的に結合するポリクローナルな抗ペプチド抗体を約2mg得た。
(1)固相化プレートの作製
精製工程で得られた抗ペプチド抗体を50mM 炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)によって1μg/mLに調製し、0.1mLずつ96穴マイクロプレートに分注して室温で2時間静置した。
その後、ウェルから当該抗体溶液を捨て、150mM NaClと0.02% Tween20を含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した後、1mg/mLの卵白アルブミンを含む同緩衝液を200μLずつ分注して室温で2時間静置した。このようにして、精製工程で得たポリクローナルな抗ペプチド抗体が固相化された固相化プレートを作製した。固相化プレートは使用時まで4℃で保存した。
精製カラムにより吸着されなかった前記抗変性ブタ血清アルブミンポリクローナル抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼで標識し標識抗体を調製した。
この溶液を150mM NaCl、0.05% Tween 20、1mg/mL BSAを含む20mM Tris−HCl(pH7.4)で希釈することで、表1に示す濃度の変性ブタ血清アルブミン標準溶液を調製した。
表4に前記標準溶液における変性ブタ血清アルブミンの濃度と、比色定量の結果を示し、図8に検量線を示す。
ELISAの検量線の作成に用いたものと同じ変性ブタ血清アルブミン標準溶液のうち、0μg/mL、10μg/mL、20μg/mL、40μg/mLの変性ブタ血清アルブミンを含むものをトリプシンによって酵素消化した。そして、このトリプシン酵素消化液を試料として、四重極型分析部を2つ備えたタンデム型であるLC−MS/MSによる質量分析を行った。具体的には、変性ブタ血清アルブミン標準溶液をトリプシンによって酵素消化することによって生じたGILAペプチド(配列番号60)とFVIEIRペプチド(図9下段)(配列番号59)に対応するイオンをMRMトランジションとして、面積値に基づく定量分析を行った。結果を表5に示し、図10及び11に検量線を示す。
水及び牛乳にそれぞれ10μg/mL、20μg/mL、40μg/mLの濃度となるように、精製ブタ血清アルブミンを添加したブタ血清アルブミン添加食品を調製した。また、陰性対照として精製ブタ血清アルブミンを添加していない水及び牛乳も用意した。
これらブタ血清アルブミン添加/非添加食品を試料として、上で作製した固相化プレートを用いてELISAを行った。ELISAは試料を希釈した状態で行った。その結果得られた比色定量の結果を図8の検量線に当てはめることで、各試料におけるブタ血清アルブミンの定量値を算出した。結果を表6に示す。
上記<6>で調製したブタ血清アルブミン添加/非添加食品を試料として、上記<5>と同様の方法でLC−MS/MSによりブタ血清アルブミンの質量分析を行った。その結果得られた各試料におけるGILAペプチドイオン(配列番号60)とFVIEIRペプチドイオン(配列番号59)の面積値を図10又は11の検量線に当てはめることで、各試料におけるブタ血清アルブミンの定量値を算出した。結果を表7及び8に示す。
上記<6>のELISAの結果と上記<7>のLC−MS/MSの結果について相関性の検定を行った。具体的には、同一の試料をELISA及びLC−MS/MSにより測定して得られた結果についてP値を求めた。LC−MS/MSについては、GILAペプチドイオン(配列番号60)とFVIEIRペプチドイオン(配列番号59)を検出した結果について、それぞれELISAの結果との相関性を求めた。結果を表9に示す。
この結果は、本発明の免疫測定方法による測定結果は、共通するアミノ酸配列を有するペプチドを測定対象とする質量分析による測定結果と相関性が高く、精度に優れていることを示している。
Claims (6)
- 免疫測定法により抗原タンパク質を検出できる抗ペプチド抗体の製造方法であって、
前記抗原タンパク質をタンパク質分解酵素で処理したペプチド溶液を試料として質量分析を行う質量分析工程と、
前記質量分析工程で検出されたシグナルに対応する1種又は2種以上のペプチド断片を第1の抗原候補の選択のために選出するペプチド断片選出工程と、
前記ペプチド断片選出工程で選出されたペプチド断片を構成するアミノ酸配列と少なくとも4アミノ酸残基が同一である、前記抗原タンパク質の部分ペプチドを抗原として選択する抗原選択工程と、
を含み、前記抗原選択工程で選択された前記部分ペプチドを抗原として用い、前記ペプチド断片選出工程において、前記質量分析工程で最も高い強度で検出されるシグナルの50%以上の強度で検出されるシグナルに対応するペプチド断片を選出することを特徴とする、抗ペプチド抗体の製造方法。 - 前記免疫測定法が、イオン性界面活性剤の存在下で抗原―抗体反応を行う方法であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 免疫測定法により抗原タンパク質を検出するために用いる抗ペプチド抗体の製造のための抗原ペプチドの設計方法であって、
前記抗原タンパク質をタンパク質分解酵素で処理したペプチド溶液を試料として質量分析を行う質量分析工程と、
前記質量分析工程で検出されたシグナルに対応する1種又は2種以上のペプチド断片を第1の抗原候補の選択のために選出するペプチド断片選出工程と、
前記ペプチド断片選出工程で選出されたペプチド断片を構成するアミノ酸配列と少なくとも4アミノ酸残基が同一である、前記抗原タンパク質の部分ペプチドを第1の抗原候補として選択する抗原選択工程と、
を備え、前記ペプチド断片選出工程において、前記質量分析工程で最も高い強度で検出されるシグナルの50%以上の強度で検出されるシグナルに対応する1種又は2種以上のペプチド断片を選出することを特徴とする、抗原ペプチドの設計方法。 - 前記免疫測定法が、イオン性界面活性剤の存在下で抗原―抗体反応を行う方法であることを特徴とする、請求項3に記載の設計方法。
- 質量分析またはプロテオミクスにおいて同定された特定のタンパク質を検出するために用いる抗ペプチド抗体の製造のための抗原ペプチドの設計方法である、請求項3又は4に記載の設計方法。
- 以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするプロテオーム中の特定タンパク質の免疫測定方法において用いる抗ペプチド抗体の設計方法である、請求項3〜5の何れか一項に記載の設計方法。
(1)試料中のタンパク質を分離する分離工程
(2)分離工程により分離されたタンパク質を質量分析法によって同定する質量分析工程
(3)分離工程により分離されたタンパク質に特異的に結合する抗ペプチド抗体を用いた免疫測定法により、前記試料中に含まれる前記分離されたタンパク質を測定する免疫測定工程
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