以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
図1(a)を用いて、光電変換デバイス11および光電変換デバイス11を備えた情報処理システムSYSを説明する。情報処理システムSYSは測距装置1を備え、さらに情報処理装置2、制御装置3、駆動装置4、撮像装置5、表示装置6、通信装置7の少なくともいずれかを備えることができる。情報処理システムSYSにおいて、光電変換デバイス11は測距装置1に含まれる。撮像装置5は測距装置1の光電変換デバイス11とは別の光電変換デバイスを含む。ただし、光電変換デバイス11が測距装置1と撮像装置5の機能を兼ね備えることもできる。情報処理システムSYSの適用例は後述する。
測距装置1は受光ユニット10と発光ユニット20とを備える。受光ユニット10は、光電変換デバイス11と、光電変換デバイス11への入射光を制御する光学系12を含む。発光ユニット20は、光源としての発光デバイス21と発光デバイス21からの出射光を制御する光学系22を含む。発光デバイス21としては、高速に点滅を繰り返すことが可能であることから、発光ダイオードが好適である。また、発光デバイス21の発光波長としては、可視光線を主に含む環境光との混色を低減する上で、赤外線が好適である。赤外線であれば、ヒトに視認され難いため、快適に使用できるという利点もある。しかしながら、本例は赤外光に限定されるものではない。光学系12、22には、レンズ、絞り、機械的シャッター、散乱板、光学的ローパスフィルタや波長選択フィルタなどが含まれる。例えば光学系12は可視光よりも赤外光の透過率が高いフィルタを含みうる。図1(a)で示す測距装置1では光学系12、22を用いているが、少なくともいずれか一方の光学系を省略することもできる。尚、光源としてレーザー光を用いる場合には、発光ユニットから照射される光を所定の領域に向けて走査するための走査光学系を光学系22に含ませることができる。
発光ユニット20から発せられた光81は、対象物9に照射され、対象物9で反射して信号光82として受光ユニット10で受光される。発光ユニット20での発光時刻と受光ユニット10での受光時刻との間には、測距装置1から対象物9までの距離と光速(3×108m/s)に基づいた差異が生じる。この時刻の差異の大きさに対応する物理量を検出することにより、測距装置1から対象物9までの距離、あるいは、測距装置1から対象物9までの距離に基づいた情報を、例えば画像データとして得ることができる。このように、測距装置1は、TOF(Time Of Flight)法を用いた測距装置である。上述した時刻の差異の大きさは、周期的に変化する光の位相差、または、光のパルスの数を測定することで検出できる。発光ユニット20と受光ユニット10の間隔が大きいと測距アルゴリズムが複雑になるため、発光ユニット20と受光ユニット10の間隔は所望の測距精度よりも短く設定することが好ましい。発光ユニット20と受光ユニット10の間隔は例えば1m以下に設定する。
受光ユニット10には信号光82だけでなく、光源としての発光デバイス21から発光された光以外の光源に起因する環境光83も入射する。環境光83の光源は自然光や人工光である。測距を行う上では、この環境光83がノイズ成分となる。そのため、受光量に占める環境光83の割合が高いと、信号光82による信号のダイナミックレンジが小さくなったり、S/Nが低下したりして、信号光82から精度よく距離情報を得ることが難しくなる。本実施形態の光電変換デバイス11は、光電変換デバイス11での受光によって生成した信号から環境光83に起因した成分の少なくとも一部を除去することが可能である。そのため、測距精度を上げることが可能となる。詳しくは後述するが、本実施形態では、複数の光電変換部で生成された信号電荷の電荷量の差に応じた信号を用いることで、環境光83に起因した成分の少なくとも一部を除去する。そして、信号電荷として電子と正孔を用いることで、簡単な構造で精度よく電荷量の差を検出できるようにしている。これにより測距精度を上げることが可能となる。
図1(b)を用いて、本実施形態の一例の光電変換デバイス11の概要を説明する。光電変換デバイス11は、半導体基板100上に、セルアレイ110を備える。セルアレイ110には、複数の光電変換セル111が複数行と複数列に渡ってマトリックス状に配列されている。また、光電変換デバイス11は、半導体基板100上に、行配線120、列配線130、駆動部140、制御部150、信号処理部160、走査部170、出力部180を備えることができる。セルアレイ110における複数の光電変換セル111の各々は、その行毎に、半導体基板100上に配置された行配線120を介して駆動部140に接続されている。駆動部140は、複数の光電変換セル111のそれぞれに、或いは複数の光電変換セル111に同時に、転送信号やリセット信号などの駆動信号を選択的に入力する。セルアレイ110における複数の光電変換セル111の各々は、その列毎に、半導体基板100上に配置された列配線130を介して信号処理部160に接続されている。信号処理部160は、列配線130を介して光電変換セル111から出力された信号を処理する。信号処理部160は、セルアレイ110の列毎にCDS回路や増幅回路、AD変換回路を有することができる。走査部170は、列配線130の各々を介してセルアレイ110から信号処理部160に出力され、信号処理部160で処理された、各列に対応する信号を、信号処理部160から出力部180へ順次出力させる。出力部180は信号処理部160から出力された信号を光電変換デバイス11の外部に出力するもので、増幅回路や保護回路、光電変換デバイス11の外部の回路との接続用の電極を有することができる。制御部150は制御信号を生成し、この制御信号によって、駆動部140、信号処理部160、走査部170および出力部180の動作のタイミングを制御する。
半導体基板100の光入射面側にはオンチップレンズアレイ(マイクロレンズアレイ)や波長フィルタを設けることができる。半導体基板100に対して行配線120と列配線130が設けられた側(表面側)と同じ側を光入射面側とすることで表面照射型の光電変換デバイスが得られる。半導体基板100に対して行配線120と列配線130が設けられた側とは反対側(裏面側)を光入射面側とすることで裏面照射型の光電変換デバイスが得られる。
図2にはセルアレイ110が8行の光電変換セル111を有する場合における8行分の動作を示している。ここでは1行目R1から8行目R8までプログレッシブ走査を行う例を示すが、インターレース走査を行ってもよい。
1つの光電変換セル111の駆動期間Tdrは、リセット動作を行うリセット期間Trsと、信号光82に基づく電荷の蓄積動作を行う蓄積期間Tacと、蓄積された電荷に基づく信号の読み出し動作を行う読み出し期間Tsrとを含む。尚、読み出し期間Tsrは、光電変換セルから列配線への出力を行う期間ということもできる。駆動期間Tdrは他の所望の動作を行うための期間をさらに含むことができる。ここで示す例では、同じ行に属する複数の光電変換セル111が単一の駆動期間Tdr内に同時に駆動される。セルアレイ110の同じ行に属する複数の光電変換セル111から出力された信号は、図1(b)を用いて説明したように、信号処理部160で処理され、出力部180に出力される。
フレーム期間は、セルアレイ110を構成する全ての光電変換セル111の行でリセット動作、蓄積動作、読み出し動作が行われる期間である。例えば、第1フレーム期間F1の始点は、1行目R1のリセット動作を開始した時点であり、第1フレーム期間F1の終点は、8行目R8の光電変換セル111の読み出し動作を終了した時点である。また、第2フレーム期間F2の始点は、第1フレーム期間F1において1行目R1の読み出し動作が終了した後、最初に1行目R1のリセット動作が開始した時点である。第2フレーム期間F2の終点は、第1フレーム期間F1において8行目R8の読み出し動作が終了した後、最初に8行目R8の読み出し動作が終了した時点である。
図2のように、複数行(本例では3〜4行)の蓄積動作を並行して行うことで、蓄積期間の延長が可能となり、蓄積期間に得られる信号の出力を増大することができる。複数行の蓄積動作を並行して行っても、各行の読み出し動作のタイミングを異ならせることで、複数行の信号を分離することができる。
また、図2のように第1フレーム期間F1の一部と第2フレーム期間F2の一部とが重なるように、一連の動作を行うことで、フレームレートの向上あるいは1フレーム期間の延長が可能となる。すなわち、図2では、第1フレーム期間F1のうち、1〜4行目の読み出しが終わった時点で、1行目のリセット動作および蓄積動作を開始している。
本例に限らず、1行分のリセット動作、蓄積動作、読み出し動作が全て終わってから次の行のリセット動作、蓄積動作、読み出し動作を開始してもよい。また、最後の行(8行目)の読み出し動作が終わってから、最初の行(1行目)のリセット動作を開始してもよい。
次に、光電変換セル111の構造の一例を説明する。図3は光電変換セル111の等価回路を示している。図3においてマトリックス状の繰り返し単位としての光電変換セル111に含まれる要素を鎖線で囲んでいるが、点線で囲んだ要素については、セルアレイ110の外(例えば駆動部140)にその一部が配される。
光電変換セル111は、光電変換部301と、光電変換部302とを有する。光電変換部301は光電変換により信号電荷としての電子を生成し、光電変換部302は光電変換により信号電荷としての正孔を生成する。つまり、光電変換部301と光電変換部302では信号電荷の正負が逆である。ただし、光電変換部301では電子だけでなく正孔も生成されるし、光電変換部302では正孔だけでなく電子も生成される。本例の光電変換部301、302はそれぞれがPN型あるいはPIN型のフォトダイオードであり、暗電流を低減する上で埋め込み型のフォトダイオードを採用することが好ましい。光電変換部301、302として埋め込み型のフォトダイオードを用いることは、光電変換部301、302にフォトゲートを用いる場合に比べて暗電流を低減でき、微小な信号光の受光において重要となるS/Nを向上する上で有利である。光電変換部301としてのフォトダイオードは、電子を多数キャリアとするN型の半導体領域であるカソード201と、電子を少数キャリアとするP型の半導体領域であるアノード211を有する。光電変換部302としてのフォトダイオードは、正孔を多数キャリアとするP型の半導体領域であるアノード202と、正孔を少数キャリアとするN型の半導体領域であるカソード212とを有する。
光電変換セル111は、光電変換部301で生成された信号電荷としての電子を保持可能な容量部307と、光電変換部302で生成された信号電荷としての正孔を保持可能な容量部310と、を有する。
容量部307は基準ノード217と収集ノード207を有する。収集ノード207には光電変換部301で生成された信号電荷としての電子が収集される。容量部307は、容量部307に保持された電荷の量に応じた電位差が収集ノード207と基準ノード217の間に現れるように構成されている。つまり、容量部307は電荷量を電圧に変換する電荷電圧変換部として機能する。容量部310は基準ノード200と収集ノード210を有する。収集ノード210には光電変換部302で生成された信号電荷としての正孔が収集される。容量部310は、容量部310に保持された電荷の量に応じた電位差が収集ノード210と基準ノード200の間に現れるように構成されている。つまり、容量部310は電荷量を電圧に変換する電荷電圧変換部として機能する。
容量部307、310はそれぞれ、PN接合型のダイオード構造を有する。基準ノード217と収集ノード210はP型の半導体領域であり、基準ノード200と収集ノード207はN型の半導体領域である。信号電荷を保持する収集ノード207、210は、それぞれ電気的に浮遊状態となった浮遊ノードであり、収集ノード207、210を構成する半導体領域は、浮遊状態の不純物拡散領域、すなわち、フローティングディフュージョンである。N型の半導体領域である収集ノード207に信号電荷としての電子が収集され、収集ノード207にこの電子が保持されうる。また、P型の半導体領域である収集ノード210に信号電荷としての正孔が収集され、収集ノード210にこの正孔が保持されうる。詳細は後述するが、光電変換デバイス11は収集ノード207と収集ノード210の一方に選択的に信号電荷が保持されるように動作することができる。
光電変換部301で生成された電子と正孔のうち、電子を容量部307の収集ノード207に効率的に収集するために、光電変換セル111は転送部303を有する。同様に、光電変換部301で生成された電子と正孔のうち、正孔を容量部310の収集ノード210に効率的に収集するために、光電変換セル111は転送部306を有する。したがって、収集ノード207、210はそれぞれ、光電変換部301、302から信号電荷が転送されるノードと言い換えることができる。収集ノード207、210では、光電変換部301、302から転送された電荷が保持可能であるので、収集ノード(容量部)は、電荷保持部と言い換えることもできる。
転送部303、転送部306はそれぞれMIS型のゲート構造を有している。つまり、転送部303は、半導体領域(チャネル領域)とゲート絶縁膜とゲート電極の積層構造を有する。そのため、転送部303、306を転送ゲートと称することもできる。転送部303はON状態(導通状態)では反転によって半導体領域にN型のチャネルが形成され、転送部306はON状態では反転によって半導体領域にP型のチャネルが形成される。このように転送部303と転送部306は互いに導電型が異なる。
本例では、転送部303のゲート電極と転送部306のゲート電極が、転送ノード218に共通に接続されている。また、転送ノード218には転送信号出力部428が接続されており、転送信号出力部428から転送ノード218に転送信号TX1が入力される。転送部303と転送部306は互いに導電型が異なり、相補的に動作するように構成されている。つまり、転送信号TX1によって転送部303がON状態である期間は転送部306がOFF状態(非導通状態)となり、転送信号TX1によって転送部303がOFF状態である期間は転送部306がON状態となる。
転送部303と転送部306は、転送ノード218を所定の電位にすることにより、両方ともOFF状態となるように閾値が設定されているとよい。この所定の電位は、転送部303がON状態となり転送部306がOFF状態となる電位と、転送部303がOFF状態となり転送部306がON状態となる電位の間の電位であるとよい。このような所定の電位は、MIS型のゲート構造における半導体領域の電位とMIS型のゲート構造の閾値に応じて決定される。転送部303がON状態となる電位レベルHighと転送部303がOFF状態となる電位レベルMidとの差は例えば1V〜5Vである。転送部306がON状態となる電位レベルLowと転送部303がOFF状態となる電位レベルMidとの差は例えば1V〜5Vである。電位レベルHighを接地電位GND(0V)よりも高い電位(正電位)、電位レベルLowを接地電位GNDよりも低い電位(負電位)に設定することが好適である。例えば電位レベルMidを接地電位GNDに設定することができる。電位レベルHighと電位レベルLowの両方を正電位にしたり、電位レベルHighと電位レベルLowの両方を負電位にしたりすることもで、回路規模を小さくすることも可能である。
なお、転送部303と転送部306とを別々の転送ノードに接続して、互いに独立した転送信号によって転送部303と転送部306のON/OFF状態を制御することもできる。しかし、転送部303と転送部306を共通の転送ノード218に接続して、転送部303と転送部306のゲート電極に同一の転送信号TX1を入力する様にすることが好ましい。このようにすることで、転送部303と転送部306のON/OFF状態のタイミング制御の精度を高めることができる。また、共通の駆動回路や配線で転送部303、306を駆動できるため、光電変換デバイス11の構成を簡略化できる。
このようにして、収集ノード207は、転送部303を介して、カソード201に接続されている。また、同様に、収集ノード210は、転送部306を介して、アノード202に接続されている。
なお、収集ノード207を転送部303のような能動素子を介さずに、カソード201に接続することもできる。また、同様に、収集ノード210を転送部306のような能動素子を介さずに、アノード202に接続することもできる。例えば、光電変換部301と容量部307の電位を適切な関係にしておくことで、転送部303を省略しても光電変換部301で生成された電子を収集ノード207に収集できる。同様に、光電変換部302と容量部310の電位を適切な関係にしておくことで、転送部306を省略しても、光電変換部302で生成された正孔を収集ノード210に収集することができる。さらに、光電変換部302自体がその接合容量に応じた容量を持った容量部307としても機能し、光電変換部302自体がその接合容量に応じた容量を持った容量部310としても機能するように構成してもよい。例えば、フォトダイオードのN型の半導体領域の一部に、N型の不純物濃度を他の部分よりも高くした高濃度部を設けておいて、当該高濃度部を収集ノードとして用いることもできる。また、転送部303、306によって光電変換部301、302からの電荷の転送と非転送を切替えることの代用として、光電変換部301、302に接続された排出部による光電変換部301、302からの電荷の非排出と排出とを切替えることもできる。しかし、転送部303、306を用いて電荷の転送と非転送を切替えることで、転送部303、306を用いない場合に比べて、電荷を精度よく制御することができる。
光電変換部301のアノード211と容量部307の基準ノード217には基準電位供給部411が接続されている。光電変換部301のアノード211と容量部307の基準ノード217には、基準電位供給部411から基準電位VF1が共通に供給されている。光電変換部302のカソード212と容量部310の基準ノード200には基準電位供給部412が接続されている。光電変換部302のカソード212と容量部310の基準ノード200には、基準電位供給部412から基準電位VF2が共通に供給されている。
上述したように光電変換部301では正孔も生成されるが、その正孔はアノード211側へ排出される。同様に、光電変換部302では電子も生成されるが、その電子はカソード212側へ排出される。
容量部307の収集ノード207および容量部310の収集ノード210は共に検出ノード220に接続されている。光電変換部301から容量部307に転送された電子の量と容量部310の容量に応じた電位が収集ノード207および検出ノード220に現れる。同様に、光電変換部302から容量部310に転送された正孔の量と容量部310の容量に応じた電位が収集ノード210および検出ノード220に現れる。その結果、検出ノード220には、収集ノード207に収集された電子によって検出ノード220に現れうる電位と、収集ノード210に収集された正孔によって検出ノード220に現れうる電位とを足し合わせた電位が現れることとなる。
また、収集ノード207と収集ノード210が互いに電気的に接続されている。収集ノード207と収集ノード210の電気的接続は、導電体(電気伝導体)によって成される。即ち、典型的には、収集ノード207と収集ノード210が、導電体によって直接接続されている。導電体は104S/m以上の導電率(10−4Ω・m以下の抵抗率)を有する。なお、絶縁体は10−7S/m以下の導電率(107Ω・m以上の抵抗率)を有する。また、半導体は10−7S/mと104S/mの間の導電率(10−4Ω・mと107Ω・mの間の抵抗率)を有する。導電体としては、金属、金属化合物、グラファイト、多結晶シリコンなどが挙げられる。また、高不純物濃度(1019/cm3以上)のシリコンも、導電体的な振る舞いをすると云える。収集ノード207と収集ノード210が導電体で接続されていることで、収集ノード207と収集ノード210の間での電荷の授受がスムーズである。そのため、収集ノード207と収集ノード210の電位が静定するまでの時間を短くすることができる。
過渡的には次のような現象が生じると考えられる。まず、収集ノード207で収集された電子と収集ノード210で収集された正孔の量の差が生じる。この差に応じて、収集ノード207と収集ノード210の間に電位差が生じる。この電位差を小さくするように、電子が導電体を介して収集ノード207と収集ノード210の間を移動する。そして、収集ノード210で電子と正孔が再結合(対消滅)する。そして、検出ノード220には、収集ノード207に収集された電子の量と収集ノード210に収集された正孔の量の差分の電荷の量に応じた電位が現れる。
本例では、収集ノード207と収集ノード210が、導電体によって直接接続されているので、収集ノード207、収集ノード210および検出ノード220は互いに同じ電位とみなすことができる。なお、例えば収集ノード207と検出ノード220との間、および/または、収集ノード210と検出ノード220との間にスイッチを設けることができる。これによって、一時的に、収集ノード207、収集ノード210および検出ノード220の少なくとも2つが互いに異なる電位となるように駆動することもできる。
検出ノード220の電位をVN、収集ノード207の電位をVN1、収集ノード210の電位をVN2とする。ここで、電位VN、VN1、VN2はそれぞれ可変の電位である。上述したように、本実施形態は検出ノード220に収集ノード207と収集ノード210が共通に接続されていることで、VN≒VN1≒VN2が成立する。ここで、光電変換部301のカソード201の電子を収集ノード207で収集することの容易さを考えると、VF1<VN1とすることが好ましい。また、光電変換部302のアノード202の正孔を収集ノード210で収集することの容易さを考えると、VN2<VF2とすることが好ましい。VF1<VN1、VN2<VF2に対して、VN1=VN2であるから、VF1<VF2となる。このように、基準電位VF2が基準電位VF1よりも高いこと(VF1<VF2)が、基準電位VF2が基準電位VF1以下であること(VF1≧VF2)に比べて、測距精度を高める上で有利である。このようにすることで、電荷の収集効率が高まり、高速な動作と精度の高い信号の取得が可能となるからである。実用的には、基準電位VF1と基準電位VF2の電位差は0.10V以上であることが好ましい。そのために、本例では基準電位供給部411と基準電位供給部412とを別々に設けている。基準電位VF1と基準電位VF2の電位差は典型的には1V以上5V以下である。基準電位VF1を接地電位GND(0V)よりも低く(VF1<GND)し、基準電位VF2を接地電位GND(0V)よりも高くする(GND<VF2)こともできる。つまり、基準電位VF1は負電位、基準電位VF2は正電位であってもよい。
検出ノード220は信号生成部315に接続されている。本例では、信号生成部315はゲート、ソース、ドレインを有するMOSトランジスタ(増幅トランジスタ)であり、検出ノード220は信号生成部315(増幅トランジスタ)のゲートに接続されている。
信号生成部315のドレインは電源供給部432に接続されており、電源供給部432から電源電位VDDが供給される。信号生成部315のソースはMOSトランジスタ(選択トランジスタ)316を介して定電流源430に接続されており、信号生成部315は定電流源430と共にソースフォロワ回路を構成している。読み出し動作時には、選択トランジスタ316のゲートに接続された選択信号供給部426から選択信号SLを出力して選択トランジスタ316をON状態にする。これにより、信号生成部315は、検出ノード220の電位に応じた画素信号を生成し、この画素信号を、図1(b)の列配線130の一部である出力線431に出力する。
本例では、検出ノード220と信号生成部315との間には電気的ローパスフィルタ433が設けられている。電気的ローパスフィルタ433を設けることで、検出ノード220の電位が振動しても信号生成部315からの出力を安定させ、測距精度を向上できる。電気的ローパスフィルタ433は増幅トランジスタのゲートに直列に接続した抵抗とゲートに並列に接続した容量で構成できるが、これに限ったものではない。また、電気的ローパスフィルタ433を省略することもできる。
収集ノード207および収集ノード210にはMOSトランジスタ(リセットトランジスタ)313を介してリセット電位供給部413が共通に接続されている。リセット電位供給部413はリセット電位VS1を出力する。リセット信号出力部423からリセットトランジスタのゲートに出力されたリセット信号RS1によってリセットトランジスタ313をON状態にする。これにより、リセット電位供給部413から収集ノード207にリセット電位VS1に応じた電位VS11が供給される。つまり、収集ノード207の電位VN1は電位VS11になる(VN1=VS11)。また、同様に、リセット電位供給部413から収集ノード210にリセット電位VS1に応じた電位VS12が供給される。つまり、収集ノード210の電位VN1は電位VS11になる(VN2=VS12)。
リセット動作時に、電位VS11を容量部307の収集ノード207に供給することで、容量部307に保持された電子はリセット電位供給部413へ排出される。電位VS12を容量部310の収集ノード210に供給することで、容量部310に保持された正孔はリセット電位供給部413へ排出される。
電位VS11と電位VS12の電位差は、0.10V未満であることが、電位VS11と電位VS12の電位差が0.10V以上であることに比べて、測距精度を高める上で有利である。検出ノード220に共通に接続された収集ノード207と収集ノード210に関して、電位VS11と電位VS12の電位差を0.10V未満とすることで、リセット期間Trs後の蓄積期間Tacの動作を安定化することができる。電位VS11と電位VS12の電位差を0.10V未満とするためには、高い導電率を有する導電体で収集ノード207と収集ノード210とを接続すればよい。また、電位VS11と電位VS12の電位差を0.10V未満とするためには、収集ノード207と収集ノード210との間に、電位VS11と電位VS12との差が0.10V以上となるような抵抗などを配置しなければよい。なお、不可避的に生じる抵抗や製造時の誤差などによる、0.10V未満のわずかな電位差は許容できる。
本例では、電位VS11が収集ノード207に与えられるのと同時に、電位VS12が収集ノード210に与えられる。リセット信号出力部423と収集ノード207との間と、リセット信号出力部423と収集ノード210との間にそれぞれスイッチを設けることもできる。その場合には、収集ノード207に電位VS11を与えるタイミングと収集ノード210に電位VS12を与えるタイミングとを異ならせることもできる。
電位VS11は基準電位VF1よりも高いこと(VF1<VS11)が好ましい。このようにすることで、リセット期間Trs後の収集ノード207での電子の収集効率を高めることができる。また、電位VS12は基準電位VF2よりも低いこと(VS12<VF2)が好ましい。このようにすることで、リセット期間Trs後の収集ノード210での正孔の収集効率を高めることができる。上述したようにVS11=VS12=VS1とするならば、VF1<VS11およびVS12<VF2とを両立する上では、リセット電位VS1は基準電位VF1と基準電位VF2の間の電位とすること(VF1<VS1<VF2)が好ましい。
電位VS11は例えば−5〜+5V、好適には−2〜+2Vの範囲から選択することができる。電位VS12も例えば−5〜+5V、好適には−2〜+2Vの範囲から選択することができる。電位VS11と電位VS12の差は0であることが好ましい。上述した基準電位VF1、VF2の好適な範囲内、および、電位VS11、VS12の好適な範囲内で、VF1<VS11およびVS12<VF2を満たすように回路を設計すればよい。
図3の例では、光電変換部301には、転送部303および容量部307と同様にして、転送部304および容量部308が接続されている。つまり、転送部303および容量部307と転送部304および容量部308とが、光電変換部301に対して並列に接続されている。同様に、光電変換部302には、転送部306および容量部310と同様にして、転送部305および容量部309が接続されている。つまり、転送部306および容量部310と転送部304および転送部305および容量部309とが、光電変換部301に対して並列に接続されている。なお、転送部304および容量部308は、転送部303および容量部307と同様の構成にすることができ、また、転送部305および容量部309は、転送部306および容量部310と同様の構成にすることができる。
そして、本例では、転送部304と転送部305がそれぞれ備えるMIS型のゲート構造の各ゲート電極が、転送ノード219に共通に接続されている。また、転送ノード219には転送信号出力部429が接続されている。そして、転送信号出力部429から転送ノード219に転送信号TX2が入力される。転送部304と転送部305は互いに導電型が異なり、相補的に設けられている。そのため、転送信号TX2によって転送部304がON状態(導通状態)である期間は転送部305がOFF状態(非導通状態)であり、転送信号TX2によって転送部304がOFF状態である期間は転送部305がON状態となる。なお、転送部304と転送部305は、転送ノード219を所定の電位にすることにより、両方ともOFF状態となるように閾値が設定されていることが望ましい。このような所定の電位は、MIS型のゲート構造における半導体領域の電位とMIS型のゲート構造の閾値に応じて決定される。転送部304がON状態となる電位レベルHighと転送部304がOFF状態となる電位レベルMidとの差は例えば1V〜5Vである。転送部305がON状態となる電位レベルLowと転送部305がOFF状態となる電位レベルMidとの差は例えば1V〜5Vである。電位レベルHighを接地電位GND(0V)よりも高い電位(正電位)、電位レベルLowを接地電位GNDよりも低い電位(負電位)に設定することが好適である。例えば電位レベルMidを接地電位GNDに設定することができる。電位レベルHighと電位レベルLowの両方を正電位にしたり、電位レベルHighと電位レベルLowの両方を負電位にしたりすることもで、回路規模を小さくすることも可能である。なお、転送部304と転送部305とを別々の転送ノードに接続して、互いに独立した転送信号によって転送部304と転送部305のON/OFF状態を制御することもできる。また、光電変換部301に接続された転送部303と転送部304は互いにON状態とOFF状態が逆になるように動作させること、つまり相補的に動作させることが好ましい。すなわち、転送信号TX1によって転送部303がON状態である期間は転送信号TX2によって転送部304がOFF状態である。また、転送信号TX1によって転送部303がOFF状態である期間は転送信号TX2によって転送部304がON状態となる。同様に、光電変換部302に接続された転送部305と転送部306は互いにON状態とOFF状態が逆になるように動作させること、つまり相補的に動作させることが好ましい。すなわち、転送信号TX1によって転送部306がON状態である期間は転送信号TX2によって転送部305がOFF状態である。また、転送信号TX1によって転送部306がOFF状態である期間は転送信号TX2によって転送部305がON状態となる。このようにすることで、1つの光電変換部からの信号電荷の転送を、その1つの光電変換部に接続された2つの転送部との間に交互に行うことができる。
容量部308は、転送部304を介して光電変換部301から転送された電子を収集ノード208に収集する。容量部309は、転送部305を介して光電変換部302から転送された正孔を収集ノード209に収集する。容量部308、309はそれぞれ、PN接合型のダイオード構造を有する。容量部308の収集ノード208はN型の半導体領域であり、容量部309の収集ノード209はP型の半導体領域である。容量部308の基準ノード228はP型の半導体領域であり、容量部309の基準ノード229はN型の半導体領域である。基準ノード228には基準電位供給部411が接続されて基準電位VF1が供給されている。基準ノード229には基準電位供給部412が接続されて基準電位VF2が供給されている。
収集ノード208および収集ノード209は、MOSトランジスタ(リセットトランジスタ)314を介してリセット電位供給部414が共通に接続されている。リセット電位供給部414はリセット電位VS2を出力する。リセット信号出力部424から出力されたリセット信号RS2によってリセットトランジスタ314をON状態にする。これにより、収集ノード208と収集ノード209の電位を所定のリセット電位に設定することができる。
図3の例では、容量部308、309において収集ノード208、209に光電変換部から転送された電荷は排出される。しかし、信号生成部315と同様に、容量部308、309にも信号生成部を接続して、容量部308、309の電荷に基づく信号を読み出す構成にすることもできる。そして、このような構成の場合には、容量部308、309の電荷に基づいて信号生成部で生成された信号と、容量部307、310の電荷に基づいて信号生成部で生成された信号を合成することもできる。このようにすることで、画素信号の強度を高めることが可能となる。
上述した回路に用いられる電位を例示する。なお、接地電位GNDを0Vとする。第1例としては、VS1,VS2=0V、VF1=−1V、VF2=+1V、High=+2V、Mid=0V、Low=−2Vである。第2例としては、VS1,VS2=+1V、VF1=0V、VF2=+2V、High=+3V、Mid=+1V、Low=−1Vである。第2例は第1例の各電位をS(V)だけシフトした例であり、S=−1の場合に相当する。第3例としては、VS1,VS2=+0V、VF1=−2V、VF2=+2V、High=+4V、Mid=+0V、Low=−4Vである。第3例は第1例の電位をT倍にした例であり、T=2の場合に相当する。上述した値Sは正の値でも負の値でもよく、上述した値Tは1未満でもよい。第2例と第2例を組み合わせて、第1例をS(V)シフトした上でT倍してもよい。上述した3例における各電位から把握される電位の大小関係、電位の差、電位の差の大小関係を維持しつつ、適宜に電位の実際の値を調整することができる。
次に、図4を用いて測距装置1の1つの光電変換セル111の駆動時間Tdrあたりの動作を説明する。なお、図4を用いた説明において、期間p1〜期間p10は、時刻t0から時刻t10までの期間である。
図4(a)は、発光デバイス21の発光レベルLeおよび光電変換デバイス11の受光レベルLr1、Lr2を示している。発光レベルLeが光量Loffである期間p1、p4、p5、p7、p9には発光デバイス21は消灯している。発光レベルLeがLonである期間p2、p3、p6、p8には発光デバイス21は点灯している。このように、発光デバイス21は時刻t1からt5までの時間Tcyを1周期として、点滅を繰り返す。ここでは、説明の簡略化のために3回の点滅を繰り返すものとしているが、現実的には、1回の測距につき、蓄積期間Tac内に例えば100〜10000回の点滅を繰り返すことで、十分な精度を確保することができる。
光速をc(m/s)として、測距装置1から対象物9までのd(m)の距離に基づく発光から受光までの遅延時間は2×d/c(s)である。1周期Tcy中に発光から受光までの遅延時間を検出できればよい。光速は3×108m/sすなわち0.3m/nsであるから、1周期Tcyは、例えば1ns〜1000ns、好適には10ns〜100nsに設定される。例えば、0.3mの距離差に相当する発光から受光までの遅延は2nsである。従って、1周期Tcyを10nsとすれば、この10ns中において、この遅延時間に対応する物理量を検出することで、0.3mの距離差を検出することができる。周期Tcyと点滅の繰り返し回数からすると、1回の測距は、せいぜい1μs〜10msの短時間で終了する。そのため、セルアレイ110を1秒間に10〜1000行程度、1〜1000フレーム程度読み込むことができる。例えば、1行分の駆動期間Tdrを1μsとすれば1秒間に1000行を1000フレーム読み出すことができるし、1行分の駆動期間Tdrを10msとすれば1秒間に100行を1フレーム読み出すことができる。
発光デバイス21の発光に対応して、光電変換デバイス11が受光する光量をLra、Lrbとする。受光レベルLr1が示す波形は、測距装置1から対象物までの距離に応じて、発光開始時刻t1から時間Tda後の時刻t2に受光を開始し、発光終了時刻t3から時間Tda後の時刻t4に受光を終了することを示している。受光レベルLr2が示す波形は、測距装置1から対象物までの距離に応じて、発光開始時刻t1から時間Tdb後の時刻t2’に受光を開始し、発光終了時刻t3から時間Tdb後の時刻t4’に受光を終了することを示している。本例では、Tda<Tdbであるため、受光レベルLr1で示される信号光は、受光レベルLr2で示される信号光よりも、測距装置1から近い位置の対象物で反射したものであることが分かる。また、本例では、Lrb<Lraであるため、受光レベルLr1で示される信号光は、受光レベルLr2で示される信号光よりも、反射率が高い可能性があることも分かる。
ここで、発光デバイス21の発光に対応して光電変換デバイス11が受光する期間において、光電変換デバイス11が受光する光量Lra、Lrbには、図1(a)で示した信号光82だけでなく、環境光83も含まれる。この環境光分の受光量をLamとする。受光量Lra、Lrbのうち、Lamを差し引いた光量が実際の距離情報を持った信号光となる。
図4(b)はリセット信号RS1、RS2(点線)、選択信号SL(実線)および転送信号TX1(一点鎖線)、転送信号TX2(二点鎖線)の時間的な変化を示している。なお、電位レベルHighは電位レベルLowよりも高い電位であり、電位レベルMidは電位レベルHighと電位レベルLowの間の電位である。電位レベルHigh、電位レベルMidおよび電位レベルLowは、それぞれある程度の範囲の電位を含むことができる。例えば電位レベルMidは接地電位(0V)を含む一定の範囲の電位である。図4(b)では、時刻を示す横軸が位置する部分の電位を電位レベルMidとしている。なお、図4(b)では、便宜的に、電位レベルMidと電位レベルHighの間の過渡的な電位(立上がり、立下りの電位)では、トランジスタは電位レベルHighと同じ動作をするものとみなして説明する。同様に、電位レベルMidと電位レベルHighの間の過渡的な電位(立上がり、立下りの電位)では電位レベルLowと電位レベルHighと同じ動作をするものとみなして説明する。なお、それぞれのトランジスタに対して、ON状態となる電位レベルとOFF状態となる電位レベルは共通の電位である必要はなく、互いに異なる電位であってもよい。
リセット信号RS1,RS2は同時に電位レベルHighになっているが、リセット信号RS1,RS2が電位レベルHighになる期間は異なっていてもよい。転送信号TX1と転送信号TX2は、典型的には正負が反転した同一周期の矩形波または正弦波である。転送信号TX1と転送信号TX2の周期は、発光デバイス21が発光する周期Tcyと一致することが好ましいが、測距精度が低くなることを厭わなければ、転送信号の周期と発光周期がわずかに異なっていてもよい。
リセット信号RS1、RS2が電位レベルMidより高い電位(典型的には電位レベルHigh)である期間p1は、リセットトランジスタ313、314はON状態である。リセット信号RS1、RS2が電位レベルMidである電位の期間である時刻t1〜t10には、リセットトランジスタ313、314はOFF状態である。なお、図4(a)では、リセット信号RS1とリセット信号RS2は同じであるものとして記載しているが、図示しない期間において、必要に応じて異ならせてもよい。
転送信号TX1が電位レベルMidより高い電位(典型的には電位レベルHigh)である、期間p2、p3、p6、p8には、転送部303がON状態、転送部306がOFF状態である。転送信号TX1が電位レベルMidより低い電位(典型的には電位レベルLow)である、期間p4、p5、p7、p9には転送部303がOFF状態、転送部306がON状態である。リセットトランジスタ313、314がON状態からOFF状態に変化してから、転送部303と転送部306の一方がON状態になるまでの時間は極力短い方が良い。
転送信号TX2が電位レベルMidより低い電位(典型的には電位レベルLowである期間p2、p3、p6、p8には、転送部305がON状態、転送部304がOFF状態である。転送信号TX2が電位レベルMidより高い電位(典型的には電位レベルHigh)である期間p4、p5、p7、p9には転送部305がOFF状態、転送部304がON状態である。リセットトランジスタ313、314がON状態からOFF状態に変化してから、転送部304と転送部305の一方がON状態になるまでの時間は極力短い方が良い。
転送信号TX1が電位レベルMidである期間(あるいは時刻)には、転送部303および転送部306がOFF状態であり、転送信号TX2が電位レベルMidである期間(あるいは時刻)には、転送部304および転送部304がOFF状態である。このような電位レベルMidは、上述したように、転送部303、304、305、306の特性に応じて決定される。
図4(c)には、検出ノード220の電位の変化を示している。電位変化S1は受光レベルLr1による電位の変化を、電位変化S2は受光レベルLr2による電位の変化を、示している。
期間p1では、リセット電位供給部413により、収集ノード207、210および検出ノード220はリセット電位VS1に応じた電位(電位VS11、VS12)に設定されている。
期間p2では、環境光83の光量Lamに応じて光電変換部301で生成された電子が容量部307へ転送される。光電変換部301で電子が生成されると、カソード201の電位がアノード211の電位より高くなる。アノード211の電位が例えばVF1=−2Vであれば、カソード201の電位は−1V程度になる。リセット電位VS1により収集ノード207の電位はアノード211の電位より高くなっている(VF1<VS1)。そのため、転送部303がON状態であれば、生成された電子は、カソード201の電位より電位の高い収集ノード207へ速やかに移動する。電子の転送に伴って、収集ノード207に接続された検出ノード220の電位は低下する。
期間p3では、環境光83の光量Lamよりも強い、信号光82を含んだ光量Lraに応じて光電変換部301で生成された電子が容量部307へ転送される。電子の転送に伴って、収集ノード207に接続された検出ノード220の電位は、期間p2に比べて大きい勾配で低下する。これは、信号光82の分だけ、単位時間当たりの受光量が増加するためである。
期間p4では、環境光83の光量Lamよりも強い、信号光82を含んだ光量Lraに応じて光電変換部302で生成された正孔が容量部310へ転送される。正孔の転送に伴って、収集ノード210に接続された検出ノード220の電位は上昇する。
ここで、期間p2、p3では転送部305がON状態である。そのため、期間p2、p3において光電変換部302で生成された正孔は、期間p2、p3の間、容量部309に転送される。そのため、時刻t3において転送部306がON状態に切り替わった後、例えば期間p4において容量部310へ転送される正孔は、期間p2、p3に光電変換部302で生成された正孔よりも、期間p4で生成された正孔の方が多くなる。理想的には期間p2、p3に光電変換部302で生成された正孔は期間p4において容量部310へ転送されない。
期間p5では、環境光83の光量Lamに応じて光電変換部302で生成された正孔が容量部310へ転送される。正孔の転送に伴って、収集ノード210に接続された検出ノード220の電位は上昇する。
同様のことが期間p6、p7、p8、p9と繰り返される。ここで、期間p4、p5では転送部304がON状態である。そのため、期間p4、p5において光電変換部301で生成された電子は、期間p4、p5の間、容量部308に転送される。そのため、時刻t5において転送部303がON状態に切り替わった後、例えば期間p6において容量部307へ転送される電子は、期間p4、p5に光電変換部301で生成された電子よりも、期間p6で生成された電子の方が多くなる。理想的には期間p4、p5に光電変換部301で生成された電子は期間p6において容量部307へ転送されない。
このような周期Tcyを多数回繰り返すことで、環境光83の成分が除去され、信号光82の成分が積算された、測距に適した信号を得ることができる。
受光レベルLr1は遅延時間Tdaが周期Tcyの1/4未満である(Tda<Tcy/4)。そのため、検出ノード220の電位は、期間p3に転送された電子によって実効的に支配され、検出ノード220の電位はリセット電位VS1よりも低くなる(絶対値が大きくなる)。受光レベルLr2のように、遅延時間Tdbが周期Tcyの1/4である(Tdb=Tcy/4)と、1周期Tcy内に収集ノード207、210に転送される電子と正孔の量が等しくなるため、検出ノード220の電位はリセット電位VS1に等しくなる。遅延時間Tda>T/cy4であれば、検出ノード220の電位は期間p4に転送された正孔によって実効的に支配され、検出ノード220の電位はリセット電位VS1よりも高くなる(絶対値が大きくなる)。
なお、ここでは1周期Tcy中の発光デバイス21の点灯期間と消灯期間を等しくしたが、点灯期間と消灯期間は異なっていてもよい。点灯期間と消灯期間は異なっている場合には、点灯期間と消灯期間の違いに基づいて、信号生成部315から出力された信号を補正すればよい。また、ここでは1周期Tcy中の転送ゲートのONとOFFの期間を等しくしたが、ON期間とOFF期間が異なっていても、ON期間とOFF期間の違いに基づいて、信号生成部315から出力された信号を補正すればよい。
検出ノード220に現れる電位について定量的に説明する。信号電荷としての電子の量のうち、環境光83に起因する成分を(−N)、信号光82に起因する成分を(−S)とし、信号電荷としての正孔の量のうち、環境光83に起因する成分を(+N)、信号光82に起因する成分を(+S)とする。期間p2の長さに比例する係数をa、期間p3の長さに比例する係数をb、期間p4の長さに比例する係数をc、期間p5の長さに比例する係数をdとする。
まず、検出ノード220での電子と正孔の再結合が生じないと仮定して収集ノード207、210の電荷量を計算する。期間p2における収集ノード207の電荷量の増分はa×(−N)であり、時刻t2における収集ノード207の電荷量はa×(−N)である。一方、期間p2における収集ノード210の電荷量の増分は0であり、時刻t2における収集ノード210の電荷量は0である。期間p3における収集ノード207の電荷量の増分はb×(−N−S)であり、時刻t3における収集ノード207の電荷量はa×(−N)+b×(−N−S)である。一方、期間p3における収集ノード210の電荷量の増分は0であり、時刻t3における収集ノード210の電荷量は0である。期間p4における収集ノード207の電荷量の増分は0であり、時刻t4における収集ノード207の電荷量はa×(−N)+b×(−N−S)である。期間p4における収集ノード210の電荷量の増分はc×(+N+S)であり、一方、時刻t4における収集ノード210の電荷量はc×(+N+S)である。期間p5における収集ノード207の電荷量の増分は0であり、時刻t5における収集ノード210の電荷量はa×(−N)+b×(−N−S)である。一方、期間p5における収集ノード210の電荷量の増分はd×(+N)であり、時刻t5における収集ノード210の電荷量はc×(+N+S)+d×(+N)である。
時刻t5における検出ノード220の実際の電荷量は電子と正孔を差し引いたものに相当する。つまり、a×(−N)+b×(−N−S)+c×(+N+S)+d×(+N)=(a+b)×(−N)+(c+d)×(+N)+b×(−S)+c×(+S)=((c+d)−(a+b))×N+(c−b)×Sとなる。ここで、時刻t1〜t5の期間において、環境光83は一定であり、転送部303と転送部306がそれぞれ相補的にON状態になっている時間が同じであるとするならば、(c+d)−(a+b)=0である。したがって、時刻t5の時点で検出ノード220に現れる電位は、環境光83の成分の少なくとも一部が除去され、信号光82の成分のみを示す(c−b)×Sが信号として得られることが分かる。
図5に光電変換セル111のレイアウトの一例を示す。図5[a]は光電変換セル111の平面模式図である。図5[b]は図5[a]の線A−A’における断面模式図、図5[c]は図5[a]の線B−B’における断面模式図、図5[d]は図5[a]の線C−C’における断面模式図である。
半導体基板100にはP型のウェルとしてのP型の半導体領域511とN型のウェルとしてのN型の半導体領域512が設けられている。例えばN型の半導体領域512はN型のエピタキシャル層であり、半導体領域511はN型のエピタキシャル層中にP型の不純物をイオン注入して形成されたP型の不純物拡散領域である。なお単一の半導体領域511、512を構成する複数の部分が同じ導電型であり、かつ、それらが互いに連続しているものである。ここでいう複数の部分とはX、Y、Z方向の少なくとも何れかにおける位置が互いに異なる部分である。単一の半導体領域511、512を構成する複数の部分の不純物濃度は互いに異なっていてもよい。例えば、P型の半導体領域511は半導体基板100の深さ方向(Z方向)において傾斜した不純物濃度を有していてもよい。
光電変換セル111には、半導体基板100の主たる表面1000に沿って光電変換部301と光電変換部302が並んで設けられている。光電変換部301と光電変換部302が並ぶ方向をX方向とし、表面1000に平行でX方向に垂直な方向をY方向とし、表面1000に垂直な方向をZ方向とする。
図5に示した構造とは異なる構造として、光電変換部301と光電変換部302をZ方向に沿って並べることもできる。つまり、光電変換部301と光電変換部302の一方を、他方よりも半導体基板100の深い位置に配置することもできる。例えば、表面1000からZ方向に光電変換部301のカソード(N型の半導体領域)と光電変換部302のアノード(P型の半導体領域)とを配置する。そして、これらの間に、光電変換部301のアノード(P型の半導体領域)と光電変換部302のカソード(N型の半導体領域)とをPN接合分離されるように配置する。光電変換部302のアノードに連続する電荷移動経路としてのP型の半導体領域を表面1000に向かって延在させることで、この電荷移動経路を介して深い位置に配された光電変換部302の信号電荷を収集することができる。しかし、このようにすると、浅い位置に配置された光電変換部と深い位置に配置された光電変換部とで光電変換される光量が異なり、生成される信号電荷量にも大きな差異が生じる。これは、半導体基板100内での光の吸収によって、光が減衰するためである。したがって、光電変換部301と光電変換部302の受光量の差異を小さくする上では、光電変換部301と光電変換部302は半導体基板100の主たる表面1000に沿って並べることが好ましい。
図5中、太線は光電変換セル111内に配されたローカル配線である。また、○印はローカル配線あるいは図1(b)で説明した行配線120や列配線130などのグローバル配線(不図示)と半導体基板100との接続を取るためのコンタクト部の位置を示している。典型的なコンタクト部ではコンタクトプラグと半導体基板100との接合がなされている。ここで、ローカル配線とは、光電変換セル111内の構成要素同士を電気的に接続するための配線である。一方、グローバル配線とは光電変換セル111同士あるいは光電変換セル111と、セルアレイ110外の回路とを接続するための配線である。図1(b)において説明した行配線120と列配線130は典型的なグローバル配線である。なお、配線とは、電気的接続のために導電体で構成された部材である。なお、半導体領域と接続するためのコンタクト部においては、半導体領域のうちのコンタクトプラグ等の導電体と接続する領域をその他の領域に比べて高濃度の不純物領域とすることで良好な電気的接続を確保することが好ましい。
図5[b]に示すように、Y方向において、線A−A’上では、N型の半導体領域507、転送ゲート電極503、N型の半導体領域501、転送ゲート電極504、N型の半導体領域508がこの順に配されている。
図5[c]に示すように、Y方向において、線B−B’上では、P型の半導体領域510、転送ゲート電極505、P型の半導体領域502、転送ゲート電極506、P型の半導体領域509がこの順に配されている。
図5[a]に示すように、X方向において、リセットトランジスタ313のゲート電極513、リセットトランジスタ314のゲート電極514、増幅トランジスタのゲート電極515、選択トランジスタ316のゲート電極516がこの順に配されている。信号生成部315を構成する増幅トランジスタのゲート電極515は信号生成部315の入力ノードであり、直接あるいは電気的ローパスフィルタ433を介して検出ノード220に接続される。
N型の半導体領域507は、容量部307の一部として、収集ノード207を構成する。即ち、N型の半導体領域507は第1フローティングディフュージョンである。半導体領域511は、半導体領域507とPN接合を成しており、半導体領域511は容量部307の基準ノード217を構成する。
P型の半導体領域510は、容量部310の一部として、収集ノード210を構成する。即ち、P型の半導体領域507は第2フローティングディフュージョンである。半導体領域512は、半導体領域510とPN接合を成しており、半導体領域512は容量部310の基準ノード200を構成する。
N型の半導体領域501は光電変換部301の一部として、フォトダイオードのカソード201を構成する。半導体領域501は、半導体領域511とPN接合を成しており、半導体領域511はフォトダイオードのアノード211を構成する。N型の半導体領域501の不純物濃度は、内蔵電位で空乏化する程度に低いことが好ましい。このようにすると、光電変換部301で生じた電子正孔対のうち信号電荷として生成された電子を光電変換部301に蓄積しにくい構成になる。このようにすることで、光電変換部301から半導体領域507への電子の転送効率が上がる。また、光により発生した電子を常に半導体領域507に完全転送することができ、転送効率が低いことに起因するノイズを低減することができる。なお、光電変換部301において信号電荷として用いない正孔はP型の半導体領域511を介して排出される。N型の半導体領域501と半導体基板100の表面1000との間にはP型の半導体領域である表面領域が設けられており、N型の半導体領域501が表面1000から離れて配置されている。これにより光電変換部301が埋め込み型のフォトダイオードとなっている。なお、図5では表面領域としてのP型の半導体領域をP型の半導体領域511として一体的に記載している。
P型の半導体領域502は光電変換部302の一部として、フォトダイオードのアノード202を構成する。半導体領域502は、半導体領域512とPN接合を成しており、半導体領域512はフォトダイオードのカソード212を構成する。P型の半導体領域502の不純物濃度は、内蔵電位で空乏化する程度に低いことが好ましい。このようにすると、光電変換部302で生じた電子正孔対のうち信号電荷として生成された正孔を光電変換部302に蓄積しにくい構成になる。このようにすることで、光電変換部302から半導体領域510への正孔の転送効率が上がる。また、光により発生した電子を常に半導体領域510に完全転送することができ、転送効率が低いことに起因するノイズを低減することができる。なお、光電変換部302において信号電荷として用いない正孔はP型の半導体領域511を介して排出される。P型の半導体領域502と半導体基板100の表面1000との間にはN型の半導体領域である表面領域が設けられており、P型の半導体領域502が表面1000から離れて配置されている。これにより光電変換部302が埋め込み型のフォトダイオードとなっている。なお、図5では表面領域としてのN型の半導体領域をN型の半導体領域512として一体的に記載している。
N型の半導体領域508は半導体領域511とPN接合を成しており、半導体領域508は容量部308の一部として、収集ノード208を構成する。P型の半導体領域509は半導体領域512とPN接合を成しており、半導体領域509は容量部309の一部として、収集ノード209を構成する。N型の半導体領域501とP型の半導体領域502は、表面1000に沿ってX方向に並んで設けられている。N型の半導体領域501とP型の半導体領域502は接していてもよいが、分離されていることが好ましい。本例では、N型の半導体領域501とP型の半導体領域502との間において、N型の半導体領域511とP型の半導体領域512がPN接合を成している。これによって半導体領域501と半導体領域502とが電気的に分離(PN接合分離)されている。
基準電位供給部411を構成するコンタクトプラグ611から半導体領域511に基準電位VF1が供給される。そして、基準電位供給部412を構成するコンタクトプラグ612から半導体領域512に基準電位VF2が供給される。基準電位VF1が基準電位VF2より低いことで、半導体領域511と半導体領域512との間には逆バイアス電圧が印加されることになる。そのため、半導体領域511と半導体領域512の間に発生する空乏層により、半導体領域511と半導体領域512が電気的に分離される。このようにすることで、N型の半導体領域501で生成された電子とP型の半導体領域502で生成された正孔を電気的に分離できる。そのため、適切なタイミングで対応する収集ノードで電荷を収集し、測距に必要な信号電荷を選択的に再結合させることができる。また、光電変換部301と光電変換部302との間の分離をPN接合分離で行うことで、光電変換部301と光電変換部302との間の間隔を小さくできる(例えば1μm未満)ため、光電変換部301と光電変換部302とで受光される光量の差を小さくできる。また、PN接合分離は絶縁体分離に比べて暗電流の発生を抑止することができる。
セルアレイ110においては、図5の[a]の構造がマトリックス状に配列される。P型の半導体領域512は共通ウェルとして、複数の光電変換セル111の間で連続に配される。一方、N型の半導体領域511は孤立ウェルとして、複数の光電変換セル111の間で不連続に配される。すなわち、或る光電変換セル111のN型の半導体領域511は、P型の半導体領域512とのPN接合分離等の分離手段によって、隣接する少なくとも1つの光電変換セル111のN型の半導体領域511と電気的に分離されうる。なお、上述した例とは逆に、P型の半導体領域512を孤立ウェルとし、N型の半導体領域511を共通ウェルとすることもできる。このように、P型の半導体領域512とN型の半導体領域511の一方を共通ウェルとすることで、光電変換セル111の構成を簡易にすることができる。
平面視において、N型の半導体領域501とN型の半導体領域507の間に配された部分を少なくとも有する転送ゲート電極503は、転送部303を構成する。なお、本例では、転送ゲート電極503は、半導体領域501の一部と半導体領域507の一部の上に位置している。平面視においてN型の半導体領域501とN型の半導体領域508の間に配された部分を少なくとも有する転送ゲート電極504は、転送部304を構成する。尚、本例では、転送ゲート電極504も、半導体領域502の一部と半導体領域508の一部の上に位置している。
一方、平面視においてP型の半導体領域502とP型の半導体領域510の間に配された部分を少なくとも有する転送ゲート電極505は、転送部305を構成する。尚、本例では、転送ゲート電極505は、半導体領域502の一部と半導体領域510の一部の上に位置している。平面視において、P型の半導体領域502とP型の半導体領域509の間に配された部分を少なくとも有する転送ゲート電極506は、転送部306を構成する。尚、本例では、転送ゲート電極506も、半導体領域502の一部と半導体領域509の一部の上に位置している。
転送ゲート電極503、504、505、506と半導体基板100との間には絶縁膜500が設けられている。絶縁膜500はゲート絶縁膜として機能する。
転送ゲート電極503と転送ゲート電極505には、同一の転送信号TX1が供給されるように、コンタクトプラグ603、605を介してローカル配線618が共通に接続される。ここでは、転送ゲート電極503と転送ゲート電極505とを別々のゲート電極として設けている。ゲート電極は駆動する度に電荷を充放電するため、スイッチングの度に、MOS容量に応じた電流が流れる。高速の駆動をする場合、トランジスタのゲート電極が小さいほど、MOS容量が小さくなるため、電流が少なく、省電力になる。そのため、転送ゲート電極503と転送ゲート電極505とを別々に設けることで、ゲート電極をなるべく小さくできる。
一方、転送部303を構成する部分と転送部305を構成する部分とを有する一体のゲート電極として設けることもできる。そのようにすることで、配線を減らし、配線容量や抵抗の低減をすることで、転送部303、305の相補的な制御の精度を高めることができる。また、配線を減らすことで開口率を上げ、感度を向上することもできる。転送ゲート電極503と転送ゲート電極505も同様である。
半導体領域507と半導体領域510にはコンタクトプラグ607、610とローカル配線620およびコンタクトプラグ613を介して、ゲート電極513を有するリセットトランジスタが接続されている。本例では、ローカル配線620が検出ノード220を構成する。ゲート電極513はコンタクトプラグ、ローカル配線およびグローバル配線を介してセルアレイ外のリセット信号出力部423に接続されている。コンタクトプラグ613はリセットトランジスタの一方のソース・ドレイン領域である半導体領域523に接続されている。リセットトランジスタの他方のソース・ドレイン領域はグローバル配線を介してセルアレイ外のリセット電位供給部413に接続されている。同様に、半導体領域508と半導体領域509にはローカル配線およびコンタクトプラグを介して、ゲート電極514を有するリセットトランジスタが接続されている。
半導体領域507と半導体領域510にはローカル配線620およびコンタクトプラグ615を介して、ゲート電極513を有する増幅トランジスタが接続されている。コンタクトプラグ615は増幅トランジスタのゲート電極515に接続されている。増幅トランジスタのドレインはコンタクトプラグおよびグローバル配線を介して電源供給部432に接続されている。増幅トランジスタのソースは、ゲート電極516を有する選択トランジスタ316のドレインに接続されている。選択トランジスタ316のソースはコンタクトプラグを介してグローバル配線(列配線130)に接続されている。
半導体領域511にはコンタクトプラグ611が接続されている。コンタクトプラグ611はグローバル配線を介してセルアレイ110外の基準電位供給部411に接続されている。半導体領域512にはコンタクトプラグ612が接続されている。コンタクトプラグ612はグローバル配線を介してセルアレイ110外の基準電位供給部412に接続されている。このように、配線を介して半導体領域511、半導体領域512に基準電位を供給することで、セルアレイ110内の光電変換セル111の各々における基準電位のばらつきを低減することができる。なお、光電変換セル111にコンタクトプラグ611やコンタクトプラグ612を配置せずに基準電位を供給することも可能である。その場合には、セルアレイ110内からセルアレイ110外に延在する不純物拡散層を半導体基板100に設けて、セルアレイ110外で不純物拡散層に配線やコンタクトプラグを介して基準電位を供給すればよい。ただし、上述したように、N型の半導体領域511が孤立ウェルであると、N型の半導体領域511をセルアレイ110外に延在させることは困難である。したがって、少なくとも孤立ウェルについてはグローバル配線やローカル配線、コンタクトプラグなどの半導体基板100の上に配された導電体を介して、基準電位を供給するのがよい。P型の半導体領域512が孤立ウェルとなる場合も同様である。
半導体領域507と半導体領域510は導電体を介して相互に接続されている。本例では、半導体領域507と半導体領域510を相互に接続する導電体をローカル配線620、コンタクトプラグ607、610として示している。半導体領域507と半導体領域510を接続する導電体は、金属材料や金属化合物材料、多結晶シリコンなど、半導体基板100よりも電気伝導率の高い材料で構成される。金属材料や金属化合物材料は配線やコンタクトプラグに用いられる材料であり、多結晶シリコンはゲート電極に用いられる材料である。金属化合物材料としては、シリサイドなどの半導体−金属化合物材料であってもよい。これらの材料を単独あるいは組み合わせて、半導体領域507と半導体領域510が接続されている。このように、半導体領域507と半導体領域510が導電体を介して接続されているため、半導体領域507と半導体領域510とを、PN接合を介さずに接続することができる。典型的には半導体領域507と半導体領域510とをオーミック接合を介して接続することができる。半導体領域507と半導体領域510は導電体を介して接続することで、半導体領域507と半導体領域510が互いにPN接合を成していない構成となる。そのため電子と正孔を再結合させる際の、半導体領域507と半導体領域510との電位差の緩和時間を短縮できる。その結果、検出ノード220の出力を安定させ、精度の高い測距を実現することができる。
図6は半導体領域507と半導体領域510との電気的接続を得るための構造を例示している。図6(a)〜(d)は、図5(a)の転送ゲート電極503、505および半導体領域507、510を含む断面に対応している。図6(a)が図5における半導体領域507と半導体領域510との電気的接続を得るための構造を示している。図6(b)〜(d)は、半導体領域507と半導体領域510との電気的接続を得るための、図6(a)の形態とは異なる形態を示している。なお、図6(a)〜(d)において、転送ゲート電極503と転送ゲート電極505は、ローカル配線618によって電気的に接続されている。ローカル配線618は、転送ゲート電極503上のコンタクトプラグ603と、転送ゲート電極505上のコンタクトプラグ605と、コンタクトプラグ603とコンタクトプラグ605に接する。コンタクトプラグ603とコンタクトプラグ605は層間絶縁膜526を貫通し、ローカル配線618は層間絶縁膜526上に配されている。なお、ローカル配線618は、例えば、アルミニウムを主成分とする導電部と、チタン層および/または窒化チタン層を含むバリアメタル部とを有する、アルミニウム配線を用いることができる。あるいは、ローカル配線618は、銅を主成分とする導電部と、タンタル層および/または窒化タンタル層を含むバリアメタル部とを有する、銅配線を用いることができる。銅配線はシングルダマシン構造あるいはデュアルダマシン構造を有する。他のローカル配線も同様にアルミニウム配線または銅配線である。
図6(a)の形態では、コンタクトプラグ607と、コンタクトプラグ610と、コンタクトプラグ607とコンタクトプラグ610を接続するローカル配線620と、によって、半導体領域507と半導体領域510が接続されている。コンタクトプラグ607は層間絶縁膜526を通して半導体領域507に接続されており、コンタクトプラグ610は層間絶縁膜526を通して半導体領域510に接続されている。コンタクトプラグ607、610はタングステンを主成分とする導電部と、導電部と層間絶縁膜526との間に配された、チタン層および/または窒化チタン層を有するバリアメタル部とを有する。ローカル配線620は、アルミニウムを主成分とする導電部と、導電部と層間絶縁膜526との間に位置する、チタン層および/または窒化チタン層を含むバリアメタル部とを有するアルミニウム配線である。あるいは、ローカル配線620は、銅を主成分とする導電部と、導電部と層間絶縁膜526との間に位置する、タンタル層および/または窒化タンタル層を含むバリアメタル部とを有する銅配線である。
図6(b)の形態では、半導体領域507と半導体領域510の双方に接触する導電体であるコンタクトプラグ623を介して、半導体領域507と半導体領域510が接続されている。コンタクトプラグ623はタングステンを主成分とする導電部と、導電部と層間絶縁膜526との間に配された、チタン層および/または窒化チタン層を含むバリアメタル部とを有する。コンタクトプラグ623と半導体基板100との間には、絶縁膜527が絶縁膜500や層間絶縁膜526とは別に設けられている。絶縁膜527は、コンタクトプラグ623とN型の半導体領域511とを絶縁し、コンタクトプラグ623とP型の半導体領域512とを絶縁する。これにより、N型の半導体領域511とP型の半導体領域512とが導通することを抑制できる。
図6(c)の形態では、半導体領域507と半導体領域510の双方に接触する導電体であるローカル配線624を介して、半導体領域507と半導体領域510が接続されている。ローカル配線624はタングステン膜やシリサイド膜をパターニングして形成することができる。ローカル配線624は層間絶縁膜526と半導体基板100との間に位置している。転送ゲート電極503と転送ゲート電極505を形成した後に、ローカル配線624を形成し、その後に層間絶縁膜526およびコンタクトプラグ603、605を形成すればよい。ローカル配線624と半導体基板100との間には、絶縁膜528が絶縁膜500や層間絶縁膜526とは別に設けられている。絶縁膜528はローカル配線624とN型の半導体領域511を絶縁し、ローカル配線624とP型の半導体領域512とを絶縁する。これにより、N型の半導体領域511とP型の半導体領域512とが導通することを抑制できる。
図6(d)の形態では、半導体領域507と半導体領域510の双方に接触する導電体であるローカル配線625を介して、半導体領域507と半導体領域510が接続されている。ローカル配線625はポリシリコン膜をパターニングして形成することができ、転送ゲート電極503と転送ゲート電極505と同時に形成できる。ローカル配線625は層間絶縁膜526と半導体基板100との間に位置している。ローカル配線625と半導体基板100との間には、ローカル配線625とN型の半導体領域511の絶縁およびローカル配線625とP型の半導体領域512の絶縁を取るために、絶縁膜500が設けられている。
なお、上述した各ローカル配線およびグローバル配線は、半導体基板100の表面1000に垂直な方向に積層された複数の配線層を互いにビアプラグを介して接続して構成することができる。
次に、図7を用いて、図3を用いて説明した光電変換セル111の等価回路の変形例を示す。
容量部307の収集ノード207は、スイッチトランジスタ318を介して検出ノード220に接続されている。スイッチ信号出力部438から出力されたスイッチ信号SW1によってスイッチトランジスタ318をON状態にすることにより、収集ノード207の電位に応じた電位が検出ノード220に現れる。容量部310の収集ノード210は、スイッチトランジスタ319を介して検出ノード220に接続されている。スイッチ信号出力部439から出力されたスイッチ信号SW2によってスイッチトランジスタ319をON状態にすることにより、収集ノード207の電位に応じた電位が検出ノード220に現れる。このように本例では、収集ノード207と収集ノード210との電気的な接続のONとOFFを切替えることが可能となっている。換言すれば、収集ノード207と収集ノード210はスイッチトランジスタ318、319を介して電気的に接続されている。なお、スイッチトランジスタ318とスイッチトランジスタ319の一方を省略することも可能である。
容量部307の収集ノード207には、リセットトランジスタ313を介してリセット電位供給部413が接続されている。リセット信号出力部423から出力されたリセット信号RS1によってリセットトランジスタ313をON状態にする。これにより、リセット電位供給部413から容量部307の収集ノード207にリセット電位VS1が供給される。容量部310の収集ノード210には、リセットトランジスタ317を介してリセット電位供給部417が接続されている。リセット信号出力部427から出力されたリセット信号RS3によってリセットトランジスタ317をON状態にする。これにより、リセット電位供給部417から容量部310の収集ノード210にリセット電位VS3が供給される。
リセット電位VS1とリセット電位VS3の電位差が0.10V未満であることが好ましい。リセット電位VS1とリセット電位VS3の電位差は0Vであることが望ましいが、不可避的に生じる抵抗や製造時の誤差などによる、0.10V未満のわずかな電位差はあってもよい。リセット電位VS3とリセット電位VS3は基準電位VF1と基準電位VF2の間の電位とすることが好ましい。例えば、リセット電位VS1は基準電位VF1よりも高くすること(VF1<VS1)ができる。また、リセット電位VS3は基準電位VF2よりも低くすること(VS3<VF2)ができる。リセット電位VS1は例えば−1〜+1V、好適には−0.5〜+0.5Vである。リセット電位VS3も例えば−1〜+1V、好適には−0.5〜+0.5Vである。
リセット電位VS1を容量部307に供給することで、容量部307に保持された電子はリセット電位供給部413へ排出される。リセット電位VS3を容量部310に供給することで、容量部310に保持された正孔はリセット電位供給部417へ排出される。本例によれば、検出ノード220から光電変換部301で光電変換された電荷(電子)に基づく信号と、光電変換部302で光電変換された電荷(正孔)に基づく信号と、の一方を選択的に読み出すことができる。このような動作モードを実現することで、撮像と測距の両方を実行できる光電変換デバイス11を得ることができる。
また、本例では、容量部308、309を省略して、転送部304、305のON/OFFにより速やかに不要な電荷を排出できる構成とすることもできる。このようにすることで、配線による開口率や光電変換部の面積を高めて、感度を向上することが可能となる。
図8は、図7に示した回路の動作の一例を示している。図3、図4に示した蓄積期間Tacと読み出し期間Tsrとの間に、環境光83を読み出す読み出し期間Tnrと、環境光83の成分を除去する除去期間Tclを有する。リセット期間Trsの後、蓄積期間Tac中は、スイッチトランジスタ318をON状態とし、スイッチトランジスタ319をOFF状態とする。読み出し期間Tnrには、スイッチトランジスタ318をON状態とし、スイッチトランジスタ319をOFF状態としたまま、選択トランジスタ316をON状態にする。これにより、収集ノード207の電位に対応した電位が現れた検出ノード220の信号を読み出す。読み出し期間Tnrの後に、環境光83の成分の少なくとも一部を除去する除去期間Tclを有する。除去期間Tclでは選択トランジスタ316をOFF状態にして、図7におけるスイッチトランジスタ318とスイッチトランジスタ319をON状態にする。これにより、電子と正孔の再結合によって環境光83の成分が電子と正孔によって相殺される。そして、環境光83の成分が除去された電位が検出ノード220に現れる。読み出し期間Tsrでは選択トランジスタ316をON状態にして、環境光83の成分が除去された信号を読み出す。このように環境光83を読み出すことにより、距離情報を含む画像だけでなく、環境光83に基づく画像をも得ることができる。
図1(a)を用いて情報処理システムSYSの適用例を説明する。
情報処理システムSYSの第1の適用例は、撮像装置を備えるカメラに適用した例である。まず、フォーカス制御部(例えばフォーカスボタン)などの入力部を含む制御装置3から情報処理装置2に測距を指示する信号が送られると、情報処理装置2は測距装置1を動作させる。そして、測距装置1は被写体である対象物9までの距離情報を含む信号を情報処理装置2へ出力する。情報処理装置2は当該信号を処理して、対象物9の撮影に適した条件となるようにレンズや絞り、シャッターなどの機械部品を駆動するための駆動信号を生成する。そして、この駆動信号をレンズや絞り、シャッターなどを駆動するモーター等の駆動装置4に出力する。駆動装置4は駆動信号に基づいて上述した機械部品を駆動する。制御装置3から情報処理装置2に撮影を指示する信号が送られると、情報処理装置2は撮像装置5に撮像を指示し、撮像装置5は対象物9の撮像を行う。情報処理装置2は撮像装置5から得られた画像を表示装置6に表示する。情報処理装置2は、得られた画像に、距離情報を付加して表示装置6に表示することもできる。また、通信装置7は記憶装置やネットワークとの通信を行って、画像を記憶装置やネットワーク上のストレージに保存する。
情報処理システムSYSの第2の適用例は、ユーザーに複合現実感を提供する映像情報処理システムに適用した例である。情報処理装置2が測距装置1と撮像装置5を動作させると、撮像装置5は被写体である対象物9を撮影して現実画像を出力する。一方、測距装置1は対象物9である被写体までの距離情報を含む信号を出力する。情報処理装置2は当該信号を処理して、コンピュータグラフィックス等による仮想画像と、撮像装置5の撮影によって得られた現実画像とを、距離情報に基づいて合成し、合成画像を生成する。情報処理装置2は合成画像をヘッドマウントディスプレイなどの表示装置6に表示する。
情報処理システムSYSの第3の適用例は、動力を備える輸送機器(例えば自動車や電車など)に適用した例である。エンジンを始動させるための信号を発生させる装置(例えば始動ボタン)やハンドルやアクセルなどの入力部を含む制御装置3から情報処理装置2に輸送機器の移動や移動準備を指示する信号が送られると、情報処理装置2は測距装置1を動作させる。そして、測距装置1は対象物9である被写体までの距離情報を含む信号を出力する。情報処理装置2は当該信号を処理して、例えば対象物9との距離が短くなると、表示装置6に警告を表示する。情報処理装置2は表示装置6に対象物9との距離を示す情報を表示させることもできる。また、情報処理装置2は、距離情報に基づいてブレーキやエンジンなどの駆動装置4を駆動して、輸送機器の速度を減速させたり加速させたりすることもできる。また、情報処理装置2は、距離情報に基づいてブレーキやエンジンなどの駆動装置4を駆動して、前方を走行する輸送機器との相対距離を調整することもできる。
情報処理システムSYSの第4の適用例は、ゲームシステムに適用した例である。ユーザーがコントローラーなどの入力部を含む制御装置3を用いて、ゲーム機本体にジェスチャーモードを使用することを指示する。ユーザーからーの指示を受けて、情報処理装置2は測距装置1を動作させると、測距装置1はユーザーの動作(ジェスチャー)を距離情報として検出する。情報処理装置2は得られた距離情報に基づいて、ゲーム内の仮想的なキャラクターをユーザーの動作に合わせて操作した映像を作成する。情報処理装置2は、この映像をゲーム機本体(情報処理装置2)に接続された表示装置6に表示する。
以上説明したように、本実施形態に係る光電変換デバイス11は、電子を生成する第1フォトダイオード(光電変換部301)と、正孔を生成する第2フォトダイオード(光電変換部301)と、を備える。さらに、第1フォトダイオード(光電変換部301)で生成された電子を収集するN型の第1半導体領域507と、第2フォトダイオード(光電変換部302)で生成された正孔を収集するP型の第2半導体領域510と、を備える。さらに、第1半導体領域507と第2半導体領域510が共通に接続された信号生成部315を備える。さらに、第1フォトダイオード(光電変換部301)のアノード211に基準電位VF1を供給する基準電位供給部411と、第2フォトダイオード(光電変換部302)のカソード212に基準電位VF2を供給する基準電位供給部412と、を備える。そして、基準電位VF2が基準電位VF1よりも高い。このような光電変換デバイスは、電子と正孔に基づく信号を精度よく得ることができる。
光電変換デバイスは上述した例に限らず、様々な情報処理システムSYSに適用することができる。また、上述の実施形態では、測距のための駆動を行うために最適化した光電変換デバイスおよびそれを備えた測距装置、撮像システムの例を説明したが、光電変換デバイスを測距のための駆動に限らず、測距以外を目的とする駆動を行ってもよい。例えば、複数の光電変換部の信号電荷の差に対応する信号を用いて、人間の顔など物体の輪郭を検出するエッジ検出や位相差検出方式による焦点検出や測距を行うこともできる。信号電荷の差に応じて信号生成部から出力される信号の大小によって、複数の光電電変換部で受光される光量の違いを検出することができるからである。一般的に、信号電荷をソースフォロワ回路のような信号生成部によって電気信号に変換してから電気信号の差分を得るには差動回路等の複雑な構造が必要である。しかし、本実施形態の光電変換デバイスは、電子と正孔の再結合によって簡単に複数の光電変換部の信号電荷の差分を得ることができる。そして、信号電荷の差分を、単純な構造を有する信号生成部、例えばソースフォロワ回路によって電気信号に変換ることで、複数の光電変換部の信号電荷の差分に相当する信号を得ることができる。なお、図7で示した形態のように収集ノードと検出ノードとの間にスイッチトランジスタを設けることで、複数の光電変換部の各々の、差に応じた信号ではない本来の信号電荷に相当する信号を、差に応じた信号とは別に読み出すことも可能である。これによって、撮像動作を行うことができる。