図1に示す車両用シート1は、シートトラック2を介して車両の前後方向に移動可能に支持されている。シートトラック2は、床面に固定されるロアレール2aと、ロアレール2aに対して前後方向にスライド可能なアッパレール2bとを有する。アッパレール2bは、図1に概念的に示すスライドロック機構3によって、ロアレール2aに対するスライドが規制されるスライドロック状態と、ロアレール2aに対してスライド可能なスライド許容状態にさせることができる。スライドロック機構3は周知のものを適用可能であり、詳細な説明を省略する。車両用シート1は、図示しないスライド用ばねによって前方に向けて移動付勢されている。
車両用シート1は、座面部分であるシートクッション4と背もたれ部分であるシートバック5を有している。シートクッション4を構成するシートクッションフレーム4a(図1に部分的に示す)がアッパレール2b上に固定的に支持されている。シートクッション4の後端付近には、後述するシートリクライニング装置10を介して前後方向へ傾動可能にシートバック5が支持されている。図1ではシートバック5の傾動の中心である回転中心5xを模式的に示している。シートリクライニング装置10は、図1に示すリクライニング範囲(ロック範囲)Rでは、後述するリクライニングロック機構(リクライニング機構)14,71が作動してシートバック4を任意の角度位置に保持(リクライニングロック)することが可能である。リクライニング範囲Rのうちシートバック5のリクライニング角が最も小さい(起立した)位置が初段ロック位置5Aである。シートリクライニング装置10はシートバック5を前倒れ方向(図1の時計方向)に付勢しており、リクライニングロックを解除すると、シートバック5が初段ロック位置5Aよりも前方に倒れる。初段ロック位置5Aよりも前方のシートバック5の傾動範囲は、リクライニングロック機構14,71の非作動状態が維持される(リクライニングロックが行われない)アンロック範囲Uとなる。
図1に示すように、シートクッション4の側面には、シートバック5の回転中心5xの下方に位置する回転中心6xを中心として回転操作可能なレリーズハンドル6が設けられている。シートバック5にはウォークイン操作レバー7が設けられている。また、シートクッション4の側面には、レリーズハンドル6と異なる位置にフォールダウン操作レバー8が設けられている。レリーズハンドル6とウォークイン操作レバー7の操作により、リクライニングロックを解除してアンロック範囲Uの中間停止位置5Bまでシートバック5を前方に倒すことができる。さらにフォールダウン操作レバー8の操作により、背面が略水平になるフォールダウン位置5Cまでシートバック5を前方に倒すことができる。これらの各位置へのシートバック5の動作については後に詳述する。
図2以降を参照してシートリクライニング装置10について説明する。シートリクライニング装置は車両用シート1の幅方向の両側に1つずつ設けられており、図示しているシートリクライニング装置10はその片側(図1の車両用シート1における進行方向に向かって右側)のものである。以下のシートリクライニング装置10の説明における「シート内側」は、車両用シート1の幅方向の中心に近い側を意味し、「シート外側」は車両用シート1の幅方向の中心から遠い側(図1に表れている車両用シート1の右側面の方向)を意味する。図5、図7、図9及び図11はシートリクライニング装置10をシート外側から見た状態、図6、図8、図10及び図12はシートリクライニング装置10をシート内側から見た状態である。図14ないし図17、図19及び図20に示す各部材(オープンプレート20、第1レバー21、第2レバー30、キャンセルレバー31、支持ガイド板41、ハンドル締結部材42)はシート内側から平面視したものであり、シート外側から見ている図5、図7、図9及び図11とは表裏が逆になっている。
図2に示すように、シートリクライニング装置10は、シートクッション4側に固定的に支持されるロアブラケット(支持部材)11と、シートバック5側に固定的に支持されるアッパブラケット12を有する。ロアブラケット11は支持プレート13を介してシートクッションフレーム4a(図1)の後端付近に固定されている。ロアブラケット11とアッパブラケット12の間にリクライニングロック機構14が設けられている。リクライニングロック機構14はラウンドタイプのリクライニングロック機構であり、その構成は周知のものであるため簡略に説明する。それぞれが円盤状をなすベースプレート14aとラチェットプレート14bが相対回転可能に組み合わされており、ベースプレート14aはロアブラケット11の上端近くに位置する締結部11aに溶接で固定され、ラチェットプレート14bはアッパブラケット12の下端近くに位置する締結部12aに溶接で固定される。ベースプレート14aとラチェットプレート14bの相対回転の中心が、図1に示すシートバック5の回転中心5xである。ベースプレート14aとラチェットプレート14bの間に、回転中心5xを中心とする半径方向に移動可能な複数のロック部材(図示略)と、回転中心5xを中心として回転するカム部材(図示略)とが配置される。各ロック部材はベースプレート14aに対して回転方向の移動が規制されており、カム部材はベースプレート14aとラチェットプレート14bの中心(回転中心5x上)に挿入したヒンジピン15と一体的に回転する。カム部材の回転方向の位置変化によって各ロック部材の半径方向位置が変化する。各ロック部材が外径方向に移動すると、各ロック部材に形成した外歯がラチェットプレート14bに形成した内歯と噛み合い、ベースプレート14aとラチェットプレート14bの相対回転が規制される。リクライニングロック機構14に内蔵したロック付勢ばね(図示略)によって、カム部材はロック部材の外歯をラチェットプレート14bの内歯に噛合させるロック方向へ付勢されている。そのためリクライニングロック機構14は、外部から操作しない状態では、ロアブラケット11に対するアッパブラケット12の傾動を規制するロック状態を維持する。
アッパブラケット12は、図2に示す前倒れ付勢ばね16によって前倒れ方向(中間停止位置5Bやフォールダウン位置5C)に付勢されている。前倒れ付勢ばね16は、一端がアッパブラケット12に係合し、他端が支持ブラケット13に係合する渦巻きばねである。
ロアブラケット11のシート外側には、ヒンジピン15と一体的に回転するオープンプレート(動作部材)20が設けられる。図2や図14に示すように、オープンプレート20は、非円形穴20aを長手方向の中央付近に有し、長手方向の一端付近にケーブル接続穴(ケーブル接続部)20bと円弧穴20cを有し、長手方向の他端付近にケーブル接続穴(ケーブル接続部)20dを有している。非円形穴20aにヒンジピン15の非円形断面部が挿入されることによって、ヒンジピン15とオープンプレート20が一体的に回転するように結合される。円弧穴20cは、非円形穴20aに挿入したヒンジピン15の中心軸(回転中心5x)を中心とする円周方向に延びる長穴である。リクライニングロック機構14に内蔵した前述のロック付勢ばねの付勢力がヒンジピン15を介してオープンプレート20に作用しており、この付勢力は、図5、図7、図9及び図11における時計方向、図14における反時計方向に向けてオープンプレート20を付勢し、オープンプレート20をロック位置(図5、図9及び図11)に保持する。オープンプレート20は付勢力に抗してロック位置からロック解除位置(図7)へ回転することができる。
ロアブラケット11のシート外側には、オープンプレート20の下方の位置に、軸部材22を介して第1レバー(動作部材)21が回転可能に支持される。図2や図15に示すように、第1レバー21は一端付近に軸穴21aを有し、軸穴21aを中心とする半径方向に概ね並ぶ位置関係で、軸穴21aから近い順にピン支持穴21bとピン支持穴21cとケーブル接続部21dを有する。また、第1レバー21にはバネ掛け穴21eが形成されている。
第1レバー21の軸穴21aに対して軸部材22(図2)が挿通される。軸部材22は、ロアブラケット11の軸支持穴11b(図2)に挿入されて固定的に支持される。軸部材22の中心軸はシートバック5の回転中心5xと略平行であり、第1レバー21は軸部材22を中心として回転可能に支持される。なお、図15に示すように、軸部材22において軸穴21aに挿入されている部分は円形断面部22aであり、これに対して軸穴21aは軸部材22の円形断面部22aよりもわずかに横長の長穴形状になっている。軸穴21aの長手方向は、ピン支持穴21bとピン支持穴21cとケーブル接続部21dが並ぶ方向に向いている。より詳細には、軸穴21aの長手方向の延長上にピン支持穴21cが位置しており、この長手方向に沿ってロアブラケット11に対する第1レバー21の支持位置の誤差を吸収(調整)することができる。但し、軸穴21aと軸部材22の間のクリアランスは、第1レバー21のガタつきや異音を生じさせないごく小さいものである。
第1レバー21のピン支持穴21bにはシート外側へ向けて突出する連係ピン23が挿入支持され、ピン支持穴21cにはシート内側へ向けて突出するストッパピン24が挿入支持される。連係ピン23は円筒状の外周面を有する突起である。ストッパピン24は、ピン支持穴21cに挿入支持される軸部24aの外周面上に、連係ピン23よりも大径の円筒形状の外筒24bを回転可能に支持したものであり、ロアブラケット11に形成した円弧穴11cを通してロアブラケット11のシート内側に突出する(図6、図8、図10、図12)。第1レバー21に組み付けられた状態の連係ピン23とストッパピン24の外周面を、図15に一点鎖線で仮想的に示している。円弧穴11cは、軸支持穴11bに挿入支持された軸部材22の円形断面部22a(図15)を中心とする円周方向に延びる長穴である。
アッパブラケット12の下端付近には制御突起25が形成されている。図6、図8、図10及び図12に示すように、制御突起25はシートバック5の回転中心5xから偏心した位置にあり、回転中心5xを中心とする回転方向の一方を向く第1押圧面25aと、回転方向の他方を向く第2押圧面25bと、第1押圧面25aと第2押圧面25bを接続する周縁湾曲面25cとを有している。第1押圧面25aは概ね回転中心5xを中心とする半径方向に延びる平面である。第2押圧面25bは第1押圧面25aに対して一定の傾斜を有する平面であり、シートバック5の回転中心5xから離れて制御突起25の先端側に進むにつれて第2押圧面25bが第1押圧面25aとの間隔を小さくする傾斜方向になっている。周縁湾曲面25cは回転中心5xを中心とする円周方向に延びる湾曲面である。
第1レバー21は軸部材22を中心とする揺動(回転)によって、ストッパピン24がアッパブラケット12の制御突起25の移動軌跡(回転中心5xを中心とする制御突起25の回転軌跡)上に進出する前倒れ制限位置(図7)と、ストッパピン24が制御突起25の移動軌跡から下方に退避する制限解除位置(図5、図9、図11)とに移動する。第1レバー21は、一端がバネ掛け穴21eに係合し、他端がロアブラケット11上に固定されるばね掛け片27(図2、図3)に係合する引張ばね26(図15)によって前倒れ制限位置の方向(図5、図7、図9及び図11の時計方向、図15の反時計方向)へ付勢されている。図8に示すように、ストッパピン24(外筒24b)が円弧穴11cの上側の端部に当接することで引張ばね26の付勢方向への移動端(すなわち前倒れ制限位置)が決まる。
ロアブラケット11にはさらに、第1レバー21の下方の位置に、軸部材32を介して第2レバー(動作部材)30とキャンセルレバー31が回転可能に支持される。第2レバー30はロアブラケット11に対してシート外側に位置し、キャンセルレバー31はロアブラケット11に対してシート内側に位置する。
図2や図16に示すように、第2レバー30は、小判状の非円形穴30aが形成される中央部30bからそれぞれ異なる方向に、フック部30cとケーブル接続部30dとばね掛け部30eを突出させている。フック部30cは、基端が中央部30bに接続する片持ち状の突出部であり、基端から非円形穴30aを中心とする半径方向に向けて突出し、その途中で概ね軸部材32を中心とする回転方向に向けて屈曲する形状を有している。フック部30cと中央部30aの間に、第2レバー30の回転方向に向けて開口する凹部30fが形成され、フック部30cには、凹部30fの内縁部分を形成する直線(平面)状の当接縁部30gが形成される。ばね掛け部30eは、中央部30bに対して略垂直に曲げられてシート内側に向けて突出している(図2、図3)。
図2や図17に示すように、キャンセルレバー31は、小判状の非円形穴31aが形成される中央部31bと、中央部31bから半径方向に突出する被押圧突起31cを有している。被押圧突起31cは、中央部31bから離れて先端側に進むにつれて徐々に互いの間隔を狭くする一対の側面31d,31eを有する先細形状であり、被押圧突起31cの先端は滑らかな先端湾曲面31fになっている。
軸部材32は、円形断面部を挟んで2つの非円形断面部を同軸上に有しており、軸部材32の一方の非円形断面部が第2レバー30の非円形穴30aに挿入される。軸部材32の円形断面部は、ロアブラケット11に形成した略円形の軸穴11d(図2)に回転可能に挿入される。軸部材32の他方の非円形断面部はキャンセルレバー31の非円形穴31aに挿入される。それぞれが軸部材32の非円形断面部に支持された第2レバー30とキャンセルレバー31は、ロアブラケット11に対して軸部材32を中心として一体的に回転可能となる。ロアブラケット11には、第2レバー30のばね掛け部30eに沿う位置に、シート外側に向けて突出する切り起こし片11e(図3、図4)が形成され、切り起こし片11eの基部が逃げ穴11fの内縁部に接続している。ばね掛け部30eは逃げ穴11fに挿入され、第2レバー30が回転するとばね掛け部30eが逃げ穴11f内を移動する。
第2レバー30は軸部材32を中心とする揺動(回転)によって、第1レバー21に設けた連係ピン23の移動軌跡(軸部材22を中心とする回転軌跡)上にフック部30cを進退させる。第2レバー30の保持位置(図5、図9)では、フック部30cが連係ピン23の移動軌跡上に進出する(凹部30fに連係ピン23が進入する)。第1レバー21が制限解除位置にあり第2レバー30が保持位置にある状態では、フック部30cの当接縁部30gに対して連係ピン23が当接して、前倒れ制限位置への第1レバー21の回転を第2レバー30が規制する。第2レバー30の保持解除位置(図7)では、フック部30cが連係ピン23の移動軌跡から退避して(凹部30fから連係ピン23が離脱して)、前倒れ制限位置への第1レバー21の回転を許容する。第2レバー30はさらに、保持位置に対して保持解除位置と反対方向に進んだオーバー保持位置(図11)にも回転することができる。第2レバー30のオーバー保持位置では、保持位置と同様にフック部30cが連係ピン23の移動軌跡上に進出して、当接縁部30gと連係ピン23の当接によって前倒れ制限位置への第1レバー21の回転を規制する。すなわち第2レバー30は、中間の保持位置(図5、図9)と、その正逆の方向にある保持解除位置(図7)及びオーバー保持位置(図11)に回転可能であり、保持位置とオーバー保持位置ではフック部30cと連係ピン23の当接によって第1レバー21を制限解除位置に保持し、保持解除位置では第1レバー21への回転規制を解除する。図5や図7に示すように、第2レバー30の当接縁部30gは、連係ピン23が当接するときに、概ね軸部材22を中心とする半径方向に向く面となる。そのため、連係ピン23の移動軌跡に対して当接縁部30gが略正対する位置関係となり、第1レバー21から第2レバー30に対して不要な回転方向の分力を生じさせずに、効率的かつ確実に第1レバー21の回転規制を行うことができる。
キャンセルレバー31は軸部材32を中心とする揺動(回転)によって、アッパブラケット12の制御突起25の移動軌跡(回転中心5xを中心とする制御突起25の回転軌跡)上に被押圧突起31cを進退させる。第2レバー30が保持位置(図5、図9)にあるときに、キャンセルレバー31は被押圧突起31cが制御突起25の移動軌跡上に進出する中立位置(図6、図10)にある。第2レバー30が保持解除位置(図7)にあるときに、キャンセルレバー31は被押圧突起31cが制御突起25の移動軌跡上から退避する第1の空振り位置(図8)にある。また、第2レバー30がオーバー保持位置(図11)にあるときに、キャンセルレバー31は被押圧突起31cが制御突起25の移動軌跡上から退避する第2の空振り位置(図12)にある。すなわちキャンセルレバー31は、中間の中立位置(図6、図10)と、その正逆の方向にある第1の空振り位置(図8)と第2の空振り位置(図12)に回転可能であり、アッパブラケット12の回転に伴う制御突起25の移動に応じて位置が制御される。
第1レバー21上のストッパピン24とキャンセルレバー31の被押圧突起31cは、アッパブラケット12の回転方向に位置を異ならせて配置されており、アッパブラケット12の動作に応じて制御突起25が異なるタイミングでストッパピン24とキャンセルレバー31に当接する。図6、図8及び図10に示すように、アッパブラケット12(シートバック5)が前方に向けて傾動するときには、キャンセルレバー31、ストッパピン24の順で制御突起25が当接する。
第2レバー30とキャンセルレバー31はそれぞれトーションばね33によって保持位置と中立位置に付勢されている。トーションばね33は、軸部材32の円形断面部を囲むコイル部と、コイル部から外径方向に延出する一対のばね端部を有しており、一対のばね端部が第2レバー30のばね掛け部30eとロアブラケット11の切り起こし片11eとを挟んでいる(図3、図4)。第2レバー30が保持位置から正逆に回転すると、一方のばね端部がばね掛け部30eに押圧されるのに対して、他方のばね端部が切り起こし片11eに係合して移動を規制されるため、一対のばね端部の間隔が広がってトーションばね33が撓む。この撓みを解消しようとする力が、第2レバー30を保持位置へ戻すと共にキャンセルレバー31を中立位置へ戻そうとする付勢力になる。前述のように、第2レバー30が保持位置とオーバー保持位置にあるときに、連係ピン23から当接縁部30gに対して回転方向の分力が伝わりにくい(当接縁部30gが連係ピン23の移動方向に対して正対する)関係であるため、トーションばね33に要求される負荷を抑えることができる。
ロアブラケット11のシート外側の面の下端付近には、第1ブラケット(ケーブル支持部材)40が固定されている。図18に示すように、第1ブラケット40は、平板状の支持板部40aと、支持板部40aからロアブラケット11側(シート内側)に向けて延設された2つの脚部40b,40cと、各脚部40b,40cの端部から支持板部40aと略平行に延設された平板状の台座部40d,40eを有している。支持板部40aには軸支持穴40fと締結穴40gが形成されている。支持板部40aや台座部40dに対して略垂直な平板状の側板40hが脚部40bから突出しており、側板40hには第1ブラケット40の高さ方向(シート幅方向)に位置を異ならせてケーブル支持溝(ケーブル支持部)40iとケーブル支持溝(ケーブル支持部)40jが形成されている。ケーブル支持溝40iとケーブル支持溝40jは互いに略平行な溝部であり、側板40hの一辺に開口している。第1ブラケット40をロアブラケット11に取り付けた状態で、ケーブル支持溝40iとケーブル支持溝40jの開口は概ね車両後方に向く。
第1ブラケット40の支持板部40a上には支持ガイド板41が固定される。図2や図19に示すように、支持ガイド板41の大部分は平板部41aによって構成されており、平板部41aの縁からシート外側に向けてばね掛け片41bが突出している。平板部41aは第1ブラケット40の支持板部40aよりも面積が大きく、平板部41aにおいて支持板部40aと重なる部分には軸支持穴41cと締結穴41dが形成され、支持板部40aと重ならない部分には円弧穴41eが形成されている。円弧穴41eは軸支持穴41cを中心とする円周方向に延びる長穴であり、長手方向の両方の端部41e-1,41e-2は軸支持穴41cを中心とする半径方向に延びる直線(平面)形状になっている。
支持ガイド板41の平板部41a上にハンドル締結部材42が支持される。図2や図20に示すように、ハンドル締結部材42は、略面一の関係となる2つの平板部42a,42bと、平板部42a及び平板部42bに対してシート外側にオフセットする2つの平板部42c,42dとを有しており、平板部42aと平板部42bが概ね対角の位置関係で、平板部42cと平板部42dが概ね対角の位置関係にある。平板部42aに軸穴42eが形成され、平板部42bにガイドピン取付穴42fが形成されている。また、平板部42cに2つのハンドル締結穴42gが形成され、平板部42dにロッド取付穴42hが形成されている。
図13に示すように、第1ブラケット40と支持ガイド板41とハンドル締結部材42は、軸支持穴40fと軸支持穴41cと軸穴42eが連通するように位置を合わせて重ねられる。また、支持ガイド板41とハンドル締結部材42は円弧穴41eとガイドピン取付穴42fが重なる位置関係とし(図13)、第1ブラケット40と支持ガイド板41は締結穴40gと締結穴41dが重なる位置関係とする(図9)。このように位置合わせして重ねた状態で、第1ブラケット40の支持板部40aが支持ガイド板41の平板部41aに対してシート内側から当接し、ハンドル締結部材42の平板部42a及び平板部42bが支持ガイド板41の平板部41aに対してシート外側から当接する。
図13に示すように、軸支持穴40fと軸支持穴41cと軸穴42eに対して軸部材43が挿入される。軸部材43は、それぞれが円筒状の外周面を有する大径部43aと中間径部43bと小径部43cが同軸上に並ぶ構成であり、小径部43cを先頭にしてシート外側からシート内側に向けて(すなわち軸穴42e側から軸支持穴40f側に向けて)挿入する。軸部材43は、大径部43aと中間径部43bの境界に位置する段部がハンドル締結部材42の平板部42aに当接することで、それ以上の挿入が規制される。この挿入規制状態で、中間径部43bが軸穴42e内に位置し、小径部43cが軸支持穴40fと軸支持穴41c内に位置し、小径部43cの先端が軸支持穴40f(支持板部40a)からシート内側に突出する。小径部43cの突出部分をかしめてかしめ部43dを形成することにより、大径部43aとかしめ部43dの間に支持板部40aと平板部41aと平板部42aが挟まれる状態になる。軸支持穴40fと軸支持穴41cは略同径の円形穴であり、小径部43cがほぼガタつきなく挿入される。軸穴42eは軸支持穴40f及び円弧穴41eよりも大径の円形穴であり、軸穴42eの内周面は中間径部43bの外周面に対して回転可能に接する。
図13に示すように、円弧穴41eとガイドピン取付穴42fに対してガイドピン44が挿入される。ガイドピン44は、それぞれが円筒状の外周面を有する頭部44aと中間径部44bと小径部44cが同軸上に並ぶ構成であり、小径部44cを先頭にしてシート内側からシート外側に向けて(すなわち円弧穴41e側からガイドピン取付穴42f側に向けて)挿入する。ガイドピン44は、頭部44aと中間径部44bの境界に位置する段部が支持ガイド板41の平板部41aに当接することで、それ以上の挿入が規制される。この挿入規制状態で、中間径部44bが円弧穴41e内に位置し、小径部44cがガイドピン取付穴42f内に位置し、小径部44cの先端がガイドピン取付穴42f(平板部42b)からシート内側に突出する。小径部44cの突出部分をかしめてかしめ部44dを形成することにより、頭部44aとかしめ部44dの間に平板部41aと平板部42bが挟まれる状態になる。小径部44cはガイドピン取付穴42f内にほぼガタつきなく挿入される。円弧穴41eの幅はガイドピン取付穴42fの直径よりも大きく、円弧穴41eの対向する一対の円弧面に沿って中間径部44bの外周面が移動可能となる。図3に示すように、第1ブラケット40の脚部40bは円弧穴41eに沿う湾曲した形状の壁面を有しており、円弧穴41eから突出するガイドピン44の頭部44aに対して脚部40bが干渉しない。また、この湾曲形状によって脚部40bの剛性が高くなっている。さらに第1ブラケット40の脚部40cも湾曲形状を有して剛性が高くなっている。
締結穴40gと締結穴41dに対してかしめピン45(図2、図5)が挿入される。かしめピン45は頭部と小径部を有し、締結穴40gと締結穴41dにガタつきなく挿入した小径部の先端をかしめてかしめ部を形成することで、支持板部40aと平板部41aを締結固定する。支持板部40aと平板部41aはさらに溶接によって固定される。
図13に示すように、第1ブラケット40の台座部40dと台座部40eがロアブラケット11のシート外側の面に当接し、台座部40dと台座部40eがそれぞれかしめピン46によってロアブラケット11と締結固定される。この固定状態で、支持板部40aと脚部40bと脚部40cとロアブラケット11によって囲まれる空間が形成され、支持板部40aはロアブラケット11のシート外側の面に離間して対向する。
以上の構成により、互いに固定された関係の第1ブラケット40と支持ガイド板41が、ロアブラケット11に対して固定的に支持される。ハンドル締結部材42は、平板部42aと平板部42bを支持ガイド板41の平板部41aに当接させた状態で、軸部材43を中心として回転可能に支持される。ハンドル締結部材42の回転に伴ってガイドピン44の中間径部44bが円弧穴41e内で移動し、中間径部44bが円弧穴41eの端部41e-1と端部41e-2に当接することでハンドル締結部材42の回転が規制される。つまり、ガイドピン44と円弧穴41eによってハンドル締結部材42が揺動(回転)する角度範囲が決められる。
ハンドル締結部材42に対してレリーズハンドル6が固定される。図2に示すように、レリーズハンドル6の一端には、ハンドル締結部材42の平板部42cに対して当接する平板部6aが形成され、平板部6aに2つの締結穴6bが形成されている。平板部6aからシート外側に向けてばね掛け片6cが突出している。2つの締結穴6bと2つのハンドル締結穴42gが重なる位置関係で平板部6aを平板部42cに当接させ、各締結穴6b及びハンドル締結穴42gに対してかしめピン47(図2、図5)を挿入してかしめを行うことにより、レリーズハンドル6とハンドル締結部材42が締結固定される。従って、レリーズハンドル6とハンドル締結部材42の結合体が、ロアブラケット11に固定的に支持される第1ブラケット40と支持ガイド板41に対して軸部材43を介して揺動(回転)可能に支持される。軸部材43の中心軸が図1に示すレリーズハンドル6の回転中心6x(図1)となる。
軸部材43の大径部43aの外側にトーションばね48のコイル部が支持される。トーションばね48はコイル部から突出する一対のばね端部を有し、一方のばね端部がレリーズハンドル6のばね掛け片6cに係合し、他方のばね端部が支持ガイド板41のばね掛け片41bに係合する。トーションばね48によってレリーズハンドル6を回転付勢する力が付与され、この付勢力はガイドピン44(中間径部44b)が円弧穴41eの端部41e-1に当接する方向(図5、図7、図9及び図11の時計方向、図6、図8、図10及び図12の反時計方向)に作用する。ガイドピン44が円弧穴41eの端部41e-1に当接する位置を、レリーズハンドル6の初期位置とする。
ロアブラケット11のシート外側の面には、オープンプレート20や第1レバー21や第2レバー30を支持する位置よりも下方に、第1ブラケット40と位置を異ならせて第2ブラケット(ケーブル支持部材)49が固定されている。第2ブラケット49は、平板状の台座部49aと、台座部49aからシート外側に向けて突出する立壁部49bを有しており、台座部49aがロアブラケット11のシート外側の面に当接して2つのかしめピン50(図2、図5)によってロアブラケット11と締結固定される。立壁部49bにはシート前後方向に位置を異ならせてケーブル支持溝(ケーブル支持部)49cとケーブル支持溝(ケーブル支持部)49dが形成されている。
レリーズハンドル6を操作すると、接続ロッド55を介してオープンプレート20に操作力が伝達される。レリーズハンドル6と固定関係にあるハンドル締結部材42の平板部42dに形成されたロッド取付穴42hに接続ロッド55の一方の端部55aが接続し、オープンプレート20の円弧穴20cに接続ロッド55の他方の端部55bが接続している。端部55bは円弧穴20c内を移動可能であり、レリーズハンドル6の初期位置では端部55bが円弧穴20cの下方の端部付近に位置する。そして、トーションばね48の付勢力に抗してレリーズハンドル6を初期位置から引き上げ方向(図5の反時計方向、図6の時計方向)に回転させると、端部55bが円弧穴20cの下方の端部に当接して力を伝え、オープンプレート20をロック位置からロック解除位置へ向けて回転(図5の反時計方向の回転)させる。なお、図5、図7、図9及び図11では、他の部材を見やすくするために、接続ロッド55の途中部分を省略して示している。
ウォークイン操作レバー7を操作すると、操作ケーブル56を介してオープンプレート20に操作力が伝達される。オープンプレート20のケーブル接続穴20bに操作ケーブル56の端部56aが接続している。操作ケーブル56はケーブル接続穴20bから下方に向けて延設され、管状のケーブルガイド57(図3、図4に一部を示す)内に進退可能に挿通される。ケーブルガイド57の端部に設けた嵌合部57aは、第2ブラケット49に設けたケーブル支持溝49cに嵌って操作ケーブル56の延設方向への移動が規制される。図示を省略しているが、操作ケーブル56は第2ブラケット49の下方で向きを変えて上方に延び、ウォークイン操作レバー7に接続している。ウォークイン操作レバー7を操作すると、操作ケーブル56を介してケーブル接続穴20b付近を下方に引く力が加わり、オープンプレート20をロック位置からロック解除位置へ向けて回転(図5の反時計方向の回転)させる。操作ケーブル56の牽引によってオープンプレート20をロック解除位置に回転させたときには、円弧穴20c内での接続ロッド55の端部55bの位置が相対的に変化してオープンプレート20から接続ロッド55に対して回転方向の力が伝わらず、レリーズハンドル6は初期位置を維持する。
オープンプレート20のケーブル接続穴20dに連係ケーブル58の端部58aが接続している。連係ケーブル58は、車両用シート1の片側に設けたシートリクライニング装置10と反対側(車両の進行方向に向かって左側)に設けたシートリクライニング装置を連動させるものであり、ケーブル接続穴20dから下方に向けて延設され、管状のケーブルガイド59(図3、図4に一部を示す)内に進退可能に挿通される。ケーブルガイド59の端部に設けた嵌合部59aは、第1ブラケット40に設けたケーブル支持溝40iに嵌って連係ケーブル58の延設方向への移動が規制される。車両用シート1の反対側に設けたリクライニング装置については全体的な図示を省略しているが、オープンプレート20に対応するオープンプレート(動作部材)70(図5中に示す)と、リクライニングロック機構14に対応するリクライニングロック機構71(図5中に示す)を有している。オープンプレート70はヒンジピン72を中心に回転して、リクライニングロック機構71をロック状態とロック解除状態にさせる。図5に示すように、連係ケーブル58はケーブルガイド59の他方の端部に設けた嵌合部59bから出て、連係ケーブル58の端部58bがオープンプレート70に設けたケーブル接続部70aに接続する。ケーブル接続部70aは連係ケーブル58の端部58bがケーブル延設方向に余裕をもって嵌るスリット形状であり、連係ケーブル58の撓みを吸収することができる。オープンプレート20がロック位置とロック解除位置に回転すると、連係ケーブル58を介してオープンプレート70が回転し、リクライニングロック機構14とリクライニングロック機構71が連動してロック状態とロック解除状態に切り替わる。なお、オープンプレート70を備える側のシートリクライニング装置はレリーズハンドル6を有していない。
フォールダウン操作レバー8を操作すると、操作ケーブル60を介して第1レバー21に操作力が伝達される。第1レバー21のケーブル接続部21dに操作ケーブル60の端部60aが接続している。ケーブル接続部21dは操作ケーブル60の端部60aがケーブル延設方向に余裕をもって嵌るスリット形状であり、操作ケーブル60の撓みを吸収することができる。操作ケーブル60はケーブル接続部21dから下方に向けて延設され、管状のケーブルガイド61(図3に一部を示す)内に進退可能に挿通される。ケーブルガイド61の端部に設けた嵌合部61aは、第2ブラケット49に設けたケーブル支持溝49dに嵌って操作ケーブル60の延設方向への移動が規制される。図示を省略しているが、操作ケーブル60は第2ブラケット49の下方で向きを変えて上方に延び、フォールダウン操作レバー8に接続している。第1レバー21が図7に示す前倒れ制限位置にあるときにフォールダウン操作レバー8を操作すると、操作ケーブル60を介してケーブル接続部21d付近を下方に引く力が加わり、第1レバー21を制限解除位置へ向けて回転(図7の反時計方向の回転)させる。
スライドロック操作ケーブル62の端部62aが第2レバー30のケーブル接続部30dに接続している。ケーブル接続部30dはスライドロック操作ケーブル62の端部62aがケーブル延設方向に余裕をもって嵌るスリット形状であり、スライドロック操作ケーブル62の撓みを吸収することができる。スライドロック操作ケーブル62はケーブル接続部30dから下方に向けて延設され、管状のケーブルガイド63(図3、図4に一部を示す)内に進退可能に挿通される。ケーブルガイド63の端部に設けた嵌合部63aは、第1ブラケット40に設けたケーブル支持溝40jに嵌ってスライドロック操作ケーブル62の延設方向への移動が規制される。スライドロック操作ケーブル62はスライドロック機構3の構成要素であるロック解除部材(図示略)に接続する。第2レバー30が保持位置(図5、図9)やオーバー保持位置(図11)にあるときにはロック解除部材を操作せずにスライドロック状態を維持させ、第2レバー30が保持解除位置(図7)に回転するとスライドロック操作ケーブル62の牽引力がロック解除部材に伝達されて、ロック解除部材によるスライドロックの解除動作(スライド許容状態への移行)が行われる。
以上のように構成したシートリクライニング装置10の動作を説明する。図5と図6は、シートバック5がリクライニング範囲R(図1の初段ロック位置5Aに近い角度)にある着座状態のシートリクライニング装置10を示している。このとき、レリーズハンドル6はトーションばね48の付勢力によって初期位置に保持され、リクライニングロック機構14(71)がアッパブラケット12(シートバック5)の角度を固定する(傾動を規制する)ロック状態になっている。リクライニングロック機構14(71)のロック状態に応じて、オープンプレート20(70)はロック位置にある。第2レバー30とキャンセルレバー31はそれぞれ、トーションばね33の付勢力で保持位置と中立位置に保持される。トーションばね33の一対のばね端部に挟まれる第2レバー30のばね掛け部30eとロアブラケット11の切り起こし片11eが、互いに重なる位置関係にある。保持位置にある第2レバー30のフック部30cが連係ピン23の移動軌跡上に位置することによって、引張ばね26の付勢力に抗して第1レバー21が制限解除位置に保持される。第1レバー21を付勢する引張ばね26の付勢力よりも第2レバー30を付勢するトーションばね33の付勢力の方が強く設定されているため、第2レバー30による制限解除位置への第1レバー21の保持が維持される。また、第2レバー30が保持位置にあることにより、スライドロック操作ケーブル62を経由したスライドロック機構3のロック解除操作が行われていない。図6に示すように、アッパブラケット12に設けた制御突起25はキャンセルレバー31とストッパピン24から離れており、車両前方側から制御突起25、キャンセルレバー31、ストッパピン24の順に位置している。
図5と図6の着座状態で、レリーズハンドル6を初期位置からトーションばね48の付勢力に抗して引き上げ方向(図5の反時計方向、図6の時計方向)に回転操作すると、接続ロッド55を介してオープンプレート20がロック位置からロック解除位置へ回転(図5の反時計方向の回転)し、リクライニングロック機構14がロック解除状態になる。また、連係ケーブル58によってオープンプレート70が連動してリクライニングロック機構71がロック解除状態になる。レリーズハンドル6は、ガイドピン44の中間径部44bが円弧穴41eの端部41e-2に当接する位置(図7)まで引き上げ方向に回転させることができる。ここで、人力など外部の力によってリクライニング範囲R内でシートバック5の角度を変化させてからレリーズハンドル6の操作を解除すると、リクライニングロック機構14がロック状態に戻ってシートバック5を変更後の角度に維持させることができる。
オープンプレート20(70)がロック位置からロック解除位置に回転してリクライニングロック機構14(71)がロック解除状態になったときに、人力など外部の力によってシートバック5を保持していなければ、シートバック5が前倒れ付勢ばね16の付勢力によりリクライニング範囲Rよりも前方のアンロック範囲Uに倒れつつ、スライドロック機構3によるスライドロックが解除される、いわゆるウォークイン状態になる。
ウォークイン状態にするときのオープンプレート20のロック解除位置への回転は、レリーズハンドル6とウォークイン操作レバー7のいずれの操作で行わせることも可能である。レリーズハンドル6を操作した場合は、前述のように接続ロッド55を介してオープンプレート20に力が伝わる。ウォークイン操作レバー7を操作した場合は、操作ケーブル56を介してオープンプレート20に力が伝わる。いずれの場合も、オープンプレート20がロック位置からロック解除位置へ回転してリクライニングロック機構14がロック解除状態になり、前倒れ付勢ばね16の付勢力によってアッパブラケット12がロアブラケット11に対して前方へ向けて傾動する。
アッパブラケット12がアンロック範囲Uで前方に向けて所定量傾動すると、制御突起25がキャンセルレバー31の被押圧突起31cに接近して当接する。このとき制御突起25の第1押圧面25aが、キャンセルレバー31の側面31d(先端湾曲面31fに近い箇所)に当接して、アッパブラケット12の回転方向の力がキャンセルレバー31に伝わるようになる。トーションばね33がキャンセルレバー31を中立位置に付勢する力よりも、前倒れ付勢ばね16がアッパブラケット12に及ぼす前倒れ方向の付勢力の方が大きく設定されており、トーションばね33の付勢力に抗して制御突起25がキャンセルレバー31を押圧して、キャンセルレバー31を図6の中立位置から図8の第1の空振り位置へ向けて回転(図6の時計方向の回転)させる。
キャンセルレバー31が中立位置から第1の空振り位置に回転すると、キャンセルレバー31と一体的に回転する第2レバー30が、図5の保持位置から図7の保持解除位置へ回転(図5の反時計方向の回転)する。図7と図8に示すように、このとき第2レバー30のばね掛け部30eがトーションばね33の片方のばね端部を押圧移動させて、トーションばね33の付勢力がチャージされる。第2レバー30が保持解除位置に回転すると、フック部30cが連係ピン23の移動軌跡上から退避して(凹部30fから連係ピン23が離脱して)第1レバー21に対する回転規制が解除され、第1レバー21が引張ばね26の付勢力によって図5の制限解除位置から図7の前倒れ制限位置へ回転(図5の時計方向の回転)する。第1レバー21が前倒れ制限位置に達すると、図8に示すようにストッパピン24が制御突起25の移動軌跡上に位置し、ストッパピン24に対して制御突起25の第1押圧面25aが当接することで、アッパブラケット12の前方への傾動が規制される。このときのシートバック5の角度位置が図1に示す中間停止位置5Bである。
ストッパピン24によってアッパブラケット12を図7及び図8に示す位置で確実に停止させるためには、制御突起25がロアブラケット11の円弧穴11cと重なる角度位置を通過する前に第1レバー21が前倒れ制限位置に達するように、動作のタイミングを設定する必要がある。図5に示すように、第1レバー21が制限解除位置にあり第2レバー30が保持位置にある状態で、連係ピン23が当接縁部30gに当接している箇所からフック部30cの先端まで所定の長さが確保されており、キャンセルレバー31が制御突起25による押圧を受けてからフック部30cによる連係ピン23の保持が解除されてストッパピン24が制御突起25の移動軌跡上に進出する(第1レバー21が前倒れ制限位置に達する)までに時間差がある。フック部30cの当該部分の長さを短くすると、第1レバー21が前倒れ制限位置に向けて回転を開始するまでのタイミングが早くなる。一方、フック部30cを短くし過ぎると、図5の保持状態において各部品間の精度誤差や外部からの衝撃などが原因で連係ピン23が外れるリスクが高くなる。本実施形態のフック部30cの長さと角度は、連係ピン23のイレギュラーな離脱を防ぎながら遅滞のない好適なタイミングで第1レバー21を前倒れ制限位置に回転させるものになっている。
また、第2レバー30が保持位置から保持解除位置に回転する際に、スライドロック操作ケーブル62が牽引されてスライドロック機構3のスライドロックが解除される。制御突起25の第1押圧面25aがストッパピン24に当接するアッパブラケット12の角度位置(シートバック5の中間停止位置5B)では、図8に示すように、制御突起25の周縁湾曲面25cに対して被押圧突起31cの先端付近(側面31dと先端湾曲面31fの境界付近)が当接して、キャンセルレバー31は中立位置への復帰が制限されて第1の空振り位置に保持される。そのため、第2レバー30が保持解除位置に保持され、スライドロック操作ケーブル62が牽引された状態が維持される。
このようにシートバック5がリクライニング範囲Rよりも前方のアンロック範囲Uに傾動すると共にスライドロックが解除されることにより、車両用シート1の後方スペース(後部座席)への乗降が容易なウォークイン状態となる。車両用シート1を前方に向けて付勢するスライド用ばねは、スライドロックの解除に伴って車両用シート1を自動的に前方へスライドさせる強さに設定してもよいし、車両用シート1を手動で前方へスライドさせる際のアシストとなる程度(スライド用ばねの付勢力だけでは車両用シート1が前方へスライドしない程度)の強さに設定してもよい。
レリーズハンドル6やウォークイン操作レバー7の操作を解除しても図7と図8のウォークイン状態は維持される。レリーズハンドル6の引き上げ操作を解除すると、トーションばね48の付勢力によってレリーズハンドル6が図5の初期位置に戻る。ウォークイン操作レバー7の操作を解除すると操作ケーブル56が弛緩した状態になる。これに応じてリクライニングロック機構14がオープンプレート20を図7の反時計方向に回転させながらロック状態に戻る方向に動作する。但し、リクライニングロック機構14には、シートバック5がアンロック範囲Uにあるときにロック部材の外歯とラチェットプレート14bの内歯の噛合を規制する噛合規制部(図示略)が設けられているため、ウォークイン状態ではリクライニングロック機構14によるロックは行われない。
図7と図8のウォークイン状態をキャンセルして着座状態に戻すときには、シートバック5を中間保持位置5Bから引き起こす。シートバック5の引き起こしに伴うアッパブラケット12の傾動によって制御突起25がキャンセルレバー31から離れる(当接関係が解除される)ので、トーションばね33の付勢力によって第2レバー30が保持解除位置(図7)から保持位置(図5)に戻ると共にキャンセルレバー31が第1の空振り位置(図8)から中立位置(図6)に戻る。第2レバー30が保持位置に戻る際にスライドロック操作ケーブル62の牽引が解除されて、スライドロック機構3がロック状態に戻る。また、第2レバー30が保持位置に戻る際にフック部30cの当接縁部30gが連係ピン23に当接して、連係ピン23を凹部30f内に引き込みながら第1レバー21を前倒れ制限位置(図7)から制限解除位置(図5)に回転させる。そして、シートバック5が初段ロック位置5Aまで引き起こされると、リクライニングロック機構14がロック状態に戻ってシートバック5の角度が固定され、シートリクライニング装置10が図5と図6に示す状態に戻る。
図7と図8に示すウォークイン状態でフォールダウン操作レバー8を操作すると、操作ケーブル60が牽引されて第1レバー21が前倒れ制限位置から制限解除位置へ回転(図7の反時計方向の回転)する。すると、第1レバー21上のストッパピン24がアッパブラケット12の制御突起25と当接する位置から下方に退避して、アッパブラケット12がストッパピン24に制限されずにさらに前方へ傾動可能になる。これにより、シートバック5を中間停止位置5Bよりも前倒れさせることができる。
シートバック5を図1のフォールダウン位置5Cまで倒すと、シートリクライニング装置10は図9と図10に示すフォールダウン状態になる。図10に示すように、中間停止位置5Bからシートバック5が前方に傾動した結果、アッパブラケット12の制御突起25がキャンセルレバー31の被押圧突起31cを押圧する位置を通り過ぎており、制御突起25による押圧が解除されたキャンセルレバー31がトーションばね33の付勢力によって第1の空振り位置から中立位置に戻っている。制御突起25がキャンセルレバー31の被押圧突起31cとの当接位置(図8)から図10の位置に移動する際に、制御突起25側の周縁湾曲面25cとキャンセルレバー31側の先端湾曲面31f付近が接するので、制御突起25がキャンセルレバー31をスムーズに乗り越えることができる。
また、図9に示すように、制御突起25の通過に伴って第2レバー30がトーションばね33の付勢力によって保持解除位置から保持位置に戻り、フック部30cによって第1レバー21を制限解除位置に保持する。さらに、第2レバー30が保持位置に戻ることによって、スライドロック操作ケーブル62の牽引状態が解除されてスライドロック機構3がスライドロック状態になる。従って、シートバック5をフォールダウン位置5Cにしたときには車両用シート1の前後方向の位置が固定される。
シートバック5をフォールダウン位置5Cから引き起こす際には、アッパブラケット12の制御突起25は、前倒し時とは逆に、ロアブラケット11の円弧穴11cと重なる位置を先に通過してからキャンセルレバー31に接近する。ここで、第1レバー21は制限解除位置に保持されているので、アッパブラケット12の制御突起25がストッパピン24によって妨げられることなく円弧穴11cと重なる位置を通過することができる。なお、図9と図10に示すように、連係ピン23がフック部30cの当接縁部30gに当接する状態でストッパピン24と円弧穴11cの下端との間には隙間があり、この隙間分の可動域が第1レバー21の制限解除位置に付与されている。そのため、制御突起25が円弧穴11cと重なる位置を通過するときに、周縁湾曲面25cがストッパピン24に当接して下方へ押圧しながら(第1レバー21を制限解除位置内でわずかに回転させながら)移動することが可能である。また、制御突起25の第2押圧面25bに一定の傾斜角が設けられていることにより、周縁湾曲面25cではなく第2押圧面25bがストッパピン24に当接した場合でも、制御突起25がストッパピン24を下方に押圧することが可能である。つまり、フォールダウン位置5Cからのシートバック5の引き起こし動作に際しては、ストッパピン24に対して制御突起25が当接してもシートバック5の傾動は妨げられない。
図10に示すように、シートバック5のフォールダウン位置5Cではキャンセルレバー31が中立位置にあるため、フォールダウン位置5Cからのシートバック5の引き起こし動作によってアッパブラケット12が傾動すると、制御突起25が被押圧突起31cに当接する。より詳しくは、制御突起25の第2押圧面25bがキャンセルレバー31の被押圧突起31cの側面31eに当接する。この状態でアッパブラケット12の引き起こし方向の傾動を継続すると、トーションばね33の付勢力に抗してキャンセルレバー31が中立位置から図10の反時計方向に押圧されて、図12に示す第2の空振り位置に回転する。
キャンセルレバー31の第2の空振り位置への回転に伴って、第2レバー30が保持位置から図11に示すオーバー保持位置に回転する。前述のように、第1レバー21が制限解除位置にあり第2レバー30が保持位置にある状態(図5、図9)で、連係ピン23が当接縁部30gに当接している箇所からフック部30cの先端まで所定の長さが確保されているが、この状態ではさらに、連係ピン23が当接縁部30gに当接している箇所からフック部30cの基端(凹部30fの最奥部)まで所定の長さが確保されている。別言すれば、連係ピン23がフック部30c(当接縁部30g)の長手方向の中央付近に当接している。そして、第2レバー30が保持位置(図5、図9)からオーバー保持位置(図11)に回転すると、連係ピン23が当接縁部30gに当接する状態を維持しながら、凹部30fの最奥部付近に位置を変化させる。このように第2レバー30は、保持位置(図5、図9)からオーバー保持位置(図11)まで回転する間に当接縁部30gと連係ピン23の当接を維持する形状に設定されており、第2レバー30のオーバー保持位置で第1レバー21は引き続き制限解除位置に保持される。また、第2レバー30のオーバー保持位置への回転ではスライドロック操作ケーブル62の牽引が行われないため、スライドロック機構3のスライドロック状態が維持される。図11と図12に示すように、第2レバー30がオーバー保持位置に回転すると、ばね掛け部30eがトーションばね33の片方のばね端部を押圧移動させて、トーションばね33の付勢力がチャージされる。
図12は、第2の空振り位置にあるキャンセルレバー31の被押圧突起31cの先端湾曲面31fに対して制御突起25の第1押圧面25aと周縁湾曲面25cの境界付近が当接した状態を示しており、この状態よりもアッパブラケット12が引き起こし方向に傾動すると、制御突起25が被押圧突起31cを乗り越えてキャンセルレバー31から離れる。すると、トーションばね33の付勢力によってキャンセルレバー31が中立位置に戻り、第2レバー30が保持位置に戻る。さらにシートバック5が初段ロック位置5Aまで引き起こされると、リクライニングロック機構14がロック状態に戻ってシートバック5の角度が固定され、シートリクライニング装置10が図5と図6に示す状態に戻る。
以上のようにシートリクライニング装置10では、図5と図6に示す着座状態から、図7と図8に示すウォークイン状態と、図9と図10に示すフォールダウン状態にすることができる。第2レバー30は、シートバック5がリクライニング範囲Rからアンロック範囲Uの中間停止位置5Bに達する直前で制限解除位置からの前倒れ制限位置への第1レバー21の回転を許し、それ以外の状態では第1レバー21を制限解除位置に保持する。そのため、第1レバー21を前倒れ制限位置から制限解除位置へ回転させてウォークイン状態における中間停止位置5Bよりも前方(例えばフォールダウン位置5C)にシートバック5を倒した後は、シートバック5の引き起こし動作中に第1レバー21が前倒れ制限位置に戻ることがない。例えば、フォールダウン位置5Cから初段ロック位置5Aまで引き起こす途中でシートバック5から手を離した場合には、シートバック5はストッパピン24によって中間停止位置5Bに停止されることなくフォールダウン位置5Cに戻ることができる。従って、フォールダウン操作レバー8を操作してウォークイン状態(図7、図8)からフォールダウン状態(図9、図10)へ移行させる際に、シートクッション4とシートバック5の間の異物挟み込みなどに対応するべくシートバック5を途中まで一旦引き起こす動作を行った場合、その後にシートバック5を中間停止位置5Bに停めることなく(フォールダウン操作レバー8を再度操作することなく)フォールダウン位置5Cにさせることができ、操作の煩雑さを防ぐことができる。
シートリクライニング装置10には、オープンプレート20に接続する操作ケーブル56と連係ケーブル58、第1レバー21に接続する操作ケーブル60、第2レバー30に接続するスライドロック操作ケーブル62の計4本のケーブルが設けられている。このうち連係ケーブル58とスライドロック操作ケーブル62は、ケーブル支持溝40iとケーブル支持溝40jを介して第1ブラケット40により支持され、操作ケーブル56と操作ケーブル60は、ケーブル支持溝49cとケーブル支持溝49dを介して第2ブラケット49により支持されている。このように各ブラケット40,49によって各ケーブルを支持する構成は、大型の部材であるロアブラケット11にケーブル支持部を直接に形成する構成に比して、ケーブル支持箇所の生産性と配置の自由度に優れている。そして、各ブラケット40,49が複数本のケーブルを支持することにより、ケーブル支持に関わる部品点数を少なくして構成の簡略化を図ることができる。また、4本のケーブル56,58,60及び62のうち、互いに近く配されている2本ずつのケーブルに分けて第1ブラケット40と第2ブラケット49が支持するので、個々のブラケット40,49におけるケーブル支持部分(側板40hと立壁部49b)をコンパクトに構成して省スペース化を図ることができる。
図3と図4に示すように、オープンプレート20においてケーブル接続穴20bを有する部分と、第1レバー21のケーブル接続部21dは、ロアブラケット11に対する高さ方向(車両用シート1の幅方向)の位置が互いに異なっており、ケーブル接続穴20bがロアブラケット11のベース面から遠い位置(高い位置)にあり、ケーブル接続部21dがロアブラケット11のベース面に近い位置(低い位置)にある。これに応じて操作ケーブル56の端部56aと操作ケーブル60の端部60aは互いに高さ方向の位置が異なる。
図3と図21に示すように、第2ブラケット49のケーブル支持溝49cとケーブル支持溝49dはそれぞれ高さ方向に延びる溝であり、台座部49aに近い立壁部49bの基端側(高さ方向の低い側)の端部が塞がれて底部となり、台座部49aから遠い立壁部49bの先端側(高さ方向の高い側)の端部が開放されている。ケーブル支持溝49cとケーブル支持溝49dは、高さ方向の位置を異ならせて立壁部49b上に並んでおり、ケーブル支持溝49cが台座部49aから遠い位置(高い位置)にあり、ケーブル接続部21dが台座部49aに近い位置(低い位置)にある。
従って、ケーブル接続穴20bからケーブル支持溝49c(ケーブル支持溝49cに嵌る嵌合部57a)に延びる操作ケーブル56と、ケーブル接続部21dからケーブル支持溝49d(ケーブル支持溝49dに嵌る嵌合部61a)に延びる操作ケーブル60は、ケーブル接続穴20bとケーブル接続部21dでの高さ方向の位置関係(高低関係)を保ったまま第2ブラケット49に導かれ、高さ方向において互いに交差せずに配設される。この構成によると、操作ケーブル56と操作ケーブル60が、図5、図7、図9及び図11のように平面視した状態で交差あるいは近接する関係であっても互いに干渉せず、ケーブル配置の自由度を高めることができる。特に、ケーブル接続穴20bを有するオープンプレート20と、ケーブル接続部21dを有する第1レバー21は、平面視した状態で互いの回転軌跡が一部重なる関係にあるため(図7参照)、高さ方向に交差しない関係で2つのケーブル56,60を設けることが有効である。また、交差せずに高さ方向に離間する関係の各ケーブル56,60は、組み付ける際の識別が容易であり、作業性の向上に寄与する。
また、図3と図4に示すように、オープンプレート20においてケーブル接続穴20dを有する部分と、第2レバー30のケーブル接続部30dは、ロアブラケット11に対する高さ方向の位置が互いに異なっており、ケーブル接続穴20dがロアブラケット11のベース面から遠い位置(高い位置)にあり、ケーブル接続部30dがロアブラケット11のベース面に近い位置(低い位置)にある。これに応じて連係ケーブル58の端部58aとスライドロック操作ケーブル62の端部62aは互いに高さ方向の位置が異なる。
図3と図18に示すように、第1ブラケット40のケーブル支持溝40iとケーブル支持溝40jはそれぞれ高さ方向に対して略垂直な方向に延びる溝であり、脚部40bに近い側板40hの基端側の端部が塞がれて底部となり、脚部40bから遠い側板40hの先端側の端部が開放されている。ケーブル支持溝40iとケーブル支持溝40jは、高さ方向の位置を異ならせて側板40h上に並んでおり、ケーブル支持溝40iが台座部40dから遠い位置(高い位置)にあり、ケーブル支持溝40jが台座部40dに近い位置(低い位置)にある。
従って、ケーブル接続穴20dからケーブル支持溝40i(ケーブル支持溝40iに嵌る嵌合部59a)に延びる連係ケーブル58と、ケーブル接続部30dからケーブル支持溝40j(ケーブル支持溝40jに嵌る嵌合部63a)に延びるスライドロック操作ケーブル62は、ケーブル接続穴20dとケーブル接続部30dでの高さ方向の位置関係(高低関係)を保ったまま第1ブラケット40に導かれ、高さ方向において互いに交差せずに配設される。この構成によると、連係ケーブル58とスライドロック操作ケーブル62が、図5、図7、図9及び図11のように平面視した状態で交差あるいは近接する関係であっても互いに干渉せず、ケーブル配置の自由度を高めることができる。また、交差せずに高さ方向に離間する関係の各ケーブル58,62は、組み付ける際の識別が容易であり、作業性の向上に寄与する。
第1ブラケット40と第2ブラケット49による支持を受ける各2本のケーブルの高さ方向の位置関係を図22に模式的に示した。操作ケーブル56と操作ケーブル60については、ケーブル接続穴20bとケーブル接続部21dに支持される端部56aと端部60aの高さ方向の間隔よりも、ケーブル支持溝49cとケーブル支持溝49dに支持される嵌合部57aと嵌合部61aの高さ方向の間隔の方が大きい。そのため操作ケーブル56と操作ケーブル60は、ケーブル接続穴20bとケーブル接続部21dの側からケーブル支持溝49cとケーブル支持溝49dの側に進むにつれて高さ方向の間隔を徐々に大きくしている。連係ケーブル58とスライドロック操作ケーブル62についても同様に、ケーブル接続穴20dとケーブル接続部30dに支持される端部58aと端部62aの高さ方向の間隔よりも、ケーブル支持溝40iとケーブル支持溝40jに支持される嵌合部59aと嵌合部63aの高さ方向の間隔の方が大きい。そのため連係ケーブル58とスライドロック操作ケーブル62は、ケーブル接続穴20dとケーブル接続部30dの側からケーブル支持溝40iとケーブル支持溝40jの側に進むにつれて高さ方向の間隔を徐々に大きくしている。
2本のケーブルの高さ方向の位置関係は、図22とは異なり図23や図24のように設定することも可能である。図23は、操作ケーブル56(連係ケーブル58)と操作ケーブル60(スライドロック操作ケーブル62)が、ケーブル接続穴20b(ケーブル接続穴20d)とケーブル接続部21d(ケーブル接続部30d)の側からケーブル支持溝49c(ケーブル支持溝40i)とケーブル支持溝49d(ケーブル支持溝40j)の側に進むにつれて、高さ方向の間隔を徐々に小さくする形態である。図24は、操作ケーブル56(連係ケーブル58)と操作ケーブル60(スライドロック操作ケーブル62)が、ケーブル接続穴20b(ケーブル接続穴20d)とケーブル接続部21d(ケーブル接続部30d)からケーブル支持溝49c(ケーブル支持溝40i)とケーブル支持溝49d(ケーブル支持溝40j)に至るまで、高さ方向の間隔を略一定としている形態である。
図22に示す形態は、共通のブラケットに固定される2つのケーブルガイド(ケーブルガイド57とケーブルガイド61、ケーブルガイド59とケーブルガイド63)の間隔を大きくする関係にしやすいので、第1ブラケット40や第2ブラケット49に対する各ケーブル56,58,60及び62(嵌合部57a,59a,61a及び63a)の組み付けを行いやすいという利点がある。図23に示す形態は、オープンプレート20や第1レバー21や第2レバー30が回転する際に、端部56a,58a,60a及び62aに近い位置での各ケーブル56,58,60及び62の干渉が生じにくいという利点がある。図24に示す形態は、オープンプレート20や第1レバー21や第2レバー30の回転中心と略垂直な方向に各ケーブル56,58,60及び62を延設させることで、ケーブルで力を伝える際のロスを抑えて効率のよい駆動を実現できる。いずれの形態も、オープンプレート20や第1レバー21や第2レバー30におけるケーブル接続箇所の高さ方向の位置関係に応じて、第1ブラケット40のケーブル支持溝40i,40jや第2ブラケット49のケーブル支持溝49c,49dの位置関係を適宜設定することで実現することができる。
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて改良や改変が可能である。
実施形態では、リクライニングロック機構14の動作に関与するオープンプレート20を操作するための操作ケーブル56と、シートバック5を中間保持位置5Bで保持するストッパピン24の動作に関与する第1レバー21を操作するための操作ケーブル60を、第2ブラケット49により支持している。また、シート両側のオープンプレート20とオープンプレート70を連動させる連係ケーブル58と、シートバック5の前倒れに応じてスライドロック機構3を操作するスライドロック操作ケーブル62を、第1ブラケット40によって支持している。本発明の車両用シートの駆動装置において、各ブラケット40,41に相当するケーブル支持部材が支持する複数のケーブルの役割は、この実施形態に限定されるものではなく、シートバック動作機構とスライドロック機構の動作に関わるものであれば任意のケーブルの支持に適用が可能である。
実施形態の第1ブラケット40と第2ブラケット49はそれぞれ2本のケーブルを支持しているが、一つのケーブル支持部材が3本以上のケーブルを支持する構成にしてもよい。例えば、実施形態とは異なり、第2レバー30のケーブル接続部30dが、第1レバー21のケーブル接続部21dに近い位置にある場合に、操作ケーブル56と操作ケーブル60に加えて連係ケーブル58を第2ブラケット49が支持するようにすることも可能である。この場合、3本の操作ケーブル56,58及び60が、互いの高さ方向の位置を異ならせ、かつ高さ方向で交差しない位置関係で支持する。
実施形態の第1ブラケット40はケーブル支持溝40i,40jを有し、第2ブラケット49はケーブル支持溝49c,49dを有している。このような溝形状は、対応するケーブル(ケーブルガイドの嵌合部)を支持するときの挿入作業を容易に行うことができると共に、各ブラケットに形成する際の生産性やコスト性にも優れているので好ましい。但し、本発明のケーブル支持部として、溝形状以外の構成(例えば、ブラケットの一部を立ち上げたフック状の形状や、ブラケットに貫通形成した貫通穴など)を採用することも可能である。
実施形態では複数のケーブルを支持するケーブル支持部材として第1ブラケット40と第2ブラケット49を有しているが、本発明は少なくとも一つのケーブル支持部材を備える車両用シートの駆動装置であれば適用可能である。すなわち、少なくとも2本のケーブルを備える車両用シートの駆動装置であれば本発明の適用対象となる。