(第1の実施形態)
図1〜図23を参照して、ウォークイン機構を備えた車両用シート装置について説明する。なお、以下の記載において、前後方向、幅方向及び上下方向は、車両における各々の該当方向と一致するものとする。また、幅方向両側に一対で配設される部材の一部に対しては、車両前方に向かって左右に配置される部材の該当符号にそれぞれ「L」及び「R」を付すこともある。
図1に示すように、車両フロア(図示略)上には、前後方向(図1において紙面に直交する方向)に延在する態様で幅方向に並設された一対のロアレール1が固定されるとともに、それら両ロアレール1には、一対のアッパレール2がそれぞれ前後方向に移動可能に支持されている。ロアレール1及びアッパレール2は、シートスライド機構を構成するもので、スライドロック装置(図示略)によってロアレール1に対するアッパレール2の前後方向への移動が選択的に許容されるように構成されている。
両アッパレール2には、シートクッションの骨格を成す略四角枠状のクッションフレーム3が載置されている。クッションフレーム3には、その幅方向両側部を構成する一対のクッションサイドフレーム3aの後端部の外側面において、板材からなる一対のロアプレート4L,4Rがそれぞれ溶接にて固着されている。そして、両ロアプレート4L,4Rには、一対のロック機構5L,5Rを介して、シートバックの骨格を成す略四角枠状のシートバックフレーム6が回動(傾動)可能に連結されている。
すなわち、シートバックフレーム6の幅方向両側部を構成する一対のバックサイドフレーム6aは、それらの下端部が両クッションサイドフレーム3aの後端部(ロアプレート4L,4R)の各々の幅方向内側に隣接配置されている。そして、図2に併せ示すように、両バックサイドフレーム6aの下端部には、幅方向に延びる軸線を有する一対の棒状のヒンジ軸91L,91Rが両ロアプレート4L,4R等と共にそれぞれ貫通している。両ヒンジ軸91L,91Rは、両ロック機構5L,5Rのバックサイドフレーム6a側の部材(第2部材20L,20R)をそれぞれ回動可能に支持する。
なお、両ヒンジ軸91L,91Rは、各々の幅方向内側端部において、それらと同軸に幅方向に延在する筒状の連結シャフト92に一体回動するように固着されている。つまり、両ヒンジ軸91L,91Rは、連結シャフト92を介して互いに連動して回動する。以上により、シートバックフレーム6は、両ロアプレート4L,4Rに対し両ロック機構5L,5Rを介して、連結シャフト92等の軸線を中心に回動可能に連結されている。これにより、シートクッションに対するシートバックの角度位置(傾斜角度)が調整可能となっている。
図1に示すように、ロアプレート4L,4Rには、ヒンジ軸91L,91Rの上側で幅方向外側に延出する固定フランジ7L,7Rが突設されるとともに、バックサイドフレーム6aの外側面には、ロアプレート4L,4R及び固定フランジ7L,7Rの上側で幅方向外側に延出する略L字状の可動フランジ8L,8Rが接合されている。そして、固定フランジ7L,7R及び可動フランジ8L,8Rには、渦巻きばね(図示略)の内端部及び外端部がそれぞれ係止されている。この渦巻きばねは、シートクッションに対してシートバックを前傾方向に回動付勢するためのものである。
図3に示すように、シートバック(シートバックフレーム6)は、前方へ大きく傾斜する「前倒し位置」から後方へ大きく傾斜する「大倒し位置」までの範囲で、ヒンジ軸91L,91Rの軸線を中心にシートクッション(シートクッションフレーム3)に対し傾動し得るように構成されている。
すなわち、図3に拡大して示すように、ロアプレート4L,4R上部には、ヒンジ軸91L,91Rの軸線を中心とする周方向両側部で可動フランジ8L,8Rの回動軌跡をそれぞれ遮るように略爪状の前側ストッパ4a及び後側ストッパ4bが径方向外側に突設されている。これにより、シートクッション(シートクッションフレーム3)に対するシートバック(シートバックフレーム6)の傾動範囲は、可動フランジ8L,8Rが前側ストッパ4a又は後側ストッパ4bに当接するまでの範囲に制限されている。つまり、可動フランジ8L,8Rが前側ストッパ4aに当接するときのシートバック(シートバックフレーム6)の角度位置が前倒し位置に相当し、可動フランジ8L,8Rが後側ストッパ4bに当接ときのシートバック(シートバックフレーム6)の角度位置が大倒し位置に相当する。可動フランジ8L,8R及び前側ストッパ4aは、前側ストッパ機構を構成する。
また、シートクッションに対するシートバックの傾動範囲は、大きくは前倒し位置寄りの「前倒れ領域」と、大倒し位置寄りの「調整領域」とに区分されている。そして、前倒れ領域及び調整領域の境界の角度位置である「アップライト位置」では、シートバックが起立状態になっている。前述のロック機構5L,5Rは、主としてこの調整領域でシートクッションに対するシートバックの角度位置を調整・保持するものである。
調整領域は、アップライト位置寄りの「着座領域」と、大倒し位置寄りの「非着座領域」とに更に区分されている。そして、着座領域及び非着座領域の境界の角度位置を「定点復帰位置」という。着座領域は、一般的な着座姿勢に適したシートバックの傾動範囲で、例えば当該着座領域の任意の角度位置からシートバックを前倒し位置まで傾動させた場合には、その後にシートバックを引き起こし前倒しを解消することで、前倒しした直前の元の角度位置に復帰できるようになっている(フルメモリ範囲)。
一方、非着座領域は、特殊な着座姿勢(例えば仮眠姿勢)に適したシートバックの傾動範囲で、例えば当該非着座領域の任意の角度位置からシートバックを前倒し位置まで傾動させた場合には、その後にシートバックを引き起こし前倒しを解消することで、定点復帰位置に設置できるようになっている(定点復帰範囲)。
なお、図中、実線で示されるシートバック(シートバックフレーム6)の所定角度位置は、一般的な着座者が着座したときに最も多く採られるシートバックの角度位置(以下「ニュートラル位置」という)である。
一方、前倒れ領域の前倒し位置は、当該シートの後席側のシートへの乗降性を向上させるためのシートバックの角度位置で、前倒し位置へのシートバックの傾動に伴って前述のスライドロック装置が解除等され、シートクッションが車両フロアに対し前方にスライド移動されるように構成されている(いわゆるウォークイン機能)。
次に、片側のロック機構5Lについて説明する。
図2に示すように、ロック機構5Lは、円盤状の第1部材10L及び第2部材20Lを備えている。第1部材10Lは、ヒンジ軸91L(連結シャフト92)と同心でロアプレート4Lの内側面(シートクッション側)に溶接にて固着されており、第2部材20Lは、同じくヒンジ軸91L(連結シャフト92)と同心でバックサイドフレーム6aの下端部の外側面(シートバック側)に溶接にて固着されている。これら第1部材10L及び第2部材20Lは、金属板からなるリング状のホルダ29Lにて軸線方向に抜け止めされている。
図4及び図5(a)、(b)に示すように、第1部材10Lは、例えば金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、第2部材20L側に開口する円形の凹部11を有している。凹部11は、ヒンジ軸91L(第1部材10L及び第2部材20L)の軸線を中心とする内周面11aを有している。
第1部材10Lの凹部11内には、3つの略扇状の凸部12が円周上に等角度間隔に配置されている。各凸部12は、その周方向両側にガイド壁13,14を形成する。各隣り合う凸部12の周方向で対向するガイド壁13,14同士は、軸線を中心とする径方向に互いに平行に延びており、凹部11の底面と協働して軸線を中心とする径方向に延びる略U字溝状のガイド溝15を円周上に等角度間隔に形成する。これらガイド溝15は、中央部で連通しており、全体として略Y字形状を呈している。
また、第1部材10Lの3つのガイド溝15が連通する中央部には、略円形の貫通孔16が形成されている。この貫通孔16は、所定角度位置で径方向外側に係止孔16aが形成されている。
図5(a)、(b)に示すように、第2部材20Lは、例えば金属板の半抜きにより成形されたもので、第1部材10Lの内周面11aの内径と同等の外径の外周面20aを有するとともに、第1部材10L側に開口する円形の凹部21を有している。凹部21のヒンジ軸91L(第1部材10L及び第2部材20L)の軸線を中心とする内周面21aには、内歯22が全周に亘って形成されている。また、凹部21の内周側には、該凹部21と同心円上に略円形の収容凹部23が形成されている。収容凹部23の内周面23aには、所定角度位置で中心に向かって突出する略円弧状の係合突部24Lが形成されている。第2部材20Lは、その外周面20aで、第1部材10Lの内周面11aと摺接するように嵌合されている。
図4に示すように、第1部材10L及び第2部材20Lの外周部には、第1部材10Lの内周面11aと第2部材20Lの外周面20aとが嵌合された状態で、前記ホルダ29Lが装着される。第1部材10L及び第2部材20Lは、このホルダ29Lによって相対回動が許容された状態で軸線方向に抜け止めされている。
また、第1部材10Lと第2部材20Lとの間には、3つの第1ポール31L,32L,33Lと、カム34Lと、付勢部材としての渦巻きばね35と、押圧部材36Lと、メモリリング60とが配設されている。
第1ポール31L〜33Lは、隣り合う2つのガイド壁13,14の間に装着されて、軸線を中心とする周方向に等角度間隔に配置されている。第1ポール31L〜33Lは、鋼材を鍛造加工するなどして作製され、軸線方向に互いに段違い形成された第1ブロック41及び第2ブロック42を備えている。第1ポール31L〜33Lは、径方向において第1ブロック41が第2部材20Lの内周面21a側に配置され、第2ブロック42が第2部材20Lの軸心側に配置されている。これら第1ブロック41及び第2ブロック42の両幅端部は一致するとともに、平行な直線となるように形成されている。
第1ブロック41の円弧状の外方端(第2部材20Lの内歯22と対向する端面)には、第2部材20Lの内歯22と噛合可能な外歯43が形成されており、第2ブロック42には、板厚方向に貫通する第1ポール側溝カム部44Lが幅方向の略中央部位に透設されている。
そして、図5(a)に示すように、第1ポール31L〜33Lは、その両幅端部を両ガイド壁13,14に摺接する態様で軸線を中心とする径方向への移動が案内されている。第1ポール31L〜33Lは、両ガイド壁13,14に沿って径方向に進退することで、その外歯43と内歯22とを噛合又は解除(係脱)する。
ここで、二つの第1ポール31L,33Lには、第1ブロック41の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)において、カム34Lの外周部に係合する内面カム部45Lが形成されている。第1ポール31L,33Lの段差部に形成された当該内面カム部45Lは、第1ポール31L,33Lの周方向の中央部と周方向の両側に、3つのポール側カム面45aL,45bL,45cLを備えている。これらポール側カム面45aL,45bL,45cLは、カム34Lの外周部(カム面51L)に対向している。ポール側カム面45aL,45bL,45cLは、カム34Lの図示反時計回転方向(以下、「ロック回転方向」ともいう)への回動に伴うロック作動時に該カム34Lの外周部に接近する傾斜面を有するカム面で構成されている。
また、第1ポール31L,33Lには、収容凹部23(内周面23a)に径方向で対向するように、第2ブロック42の径方向外側に円弧状の第1ポール側係合突部46Lが突設されている。第1ポール側係合突部46Lは、第1ポール31L,33Lの周方向中央部に配置されている。
一方、残りの一つの第1ポール32Lには、第1ブロック41の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)において、カム34Lの外周部に係合する内面カム部47Lが形成されている。第1ポール32Lの段差部に形成された当該内面カム部47Lは、ポール側カム面45aL,45bLと同様のポール側カム面47aL,47bLと、ポール側カム面45cLに代わるポール側カム面47cLを備えている。ポール側カム面47cLは、カム34Lの外周部(カム面51L)に対向しており、周方向で対向するガイド壁13との間で楔状の空間を形成するように成形されている。すなわち、ガイド壁13とポール側カム面47cLとの間隔は、径方向外方へ向かうに従って狭くなるように成形されている。
また、第1ポール32Lには、収容凹部23(内周面23a)に径方向で対向するように、第2ブロック42の径方向外側に円弧状の第1ポール側係合突部48Lが突設されている。この第1ポール側係合突部48Lは、第1ポール32Lの周方向において、図示時計回転方向に先行する側の部位に配置されている。
カム34Lは、第2部材20Lの凹部21内となる第1ポール31L〜33Lの内周側で、第2部材20L等の軸線周りに回動可能に配置されている。すなわち、カム34Lは、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、基本的に段差をもたない平板形状をなしている。そして、カム34Lの中央部には、軸線に沿って板厚方向に貫通する略小判形のカム嵌合孔34aが形成されている。カム34Lは、カム嵌合孔34aにヒンジ軸91Lの先端部が嵌挿されることで、第1ポール31L〜33L(第1ブロック41)の内周側で、ヒンジ軸91L等と一体回動可能となっている。
カム34Lは、その外周部に円周上に等角度間隔に3組のカム面51Lを有している。各カム面51Lは、その周方向の中央部と周方向の両側に、3つの押圧カム部51aL,51bL,51cLを備えている。これらのうちの2つの押圧カム部51aL,51bLは、第1ポール31L,33Lの対向する2つのポール側カム面45aL,45bL又は第1ポール32Lの対向する2つのポール側カム面47aL,47bLに当接可能である。それら2つの押圧カム部51aL,51bLは、カム34Lがロック回転方向に回動されたときに該当のポール側カム面45aL,45bL、47aL,47bLを押圧する。
一方、これらのうちの残りの1つの押圧カム部51cLは、第1ポール31L,33Lの対向する残りのポール側カム面45cLに当接可能であり、カム34Lがロック回転方向に回動されたときに該当のポール側カム面45cLを押圧する。あるいは、押圧カム部51cLは、第1ポール32Lのポール側カム面47cL及びガイド壁13との間に形成される前述の楔状の空間内に、球体状の押圧部材36Lを収容する。押圧部材36Lは、ポール側カム面47cL及びガイド壁13に摺接しつつ径方向に移動できるようになっている。当該押圧カム部51cLは、押圧部材36Lに外接可能であり、カム34Lがロック回転方向に回動されたときに押圧部材36Lを押圧する。
つまり、押圧カム部51aL〜51cLは、カム34Lがロック回転方向に回動されたときに、第1ポール31L,33Lのポール側カム面45aL〜45cL、並びに第1ポール32Lのポール側カム面47aL,47bL及び押圧部材36Lにそれぞれ当接(圧接)する角度位置に保持されている。
なお、押圧部材36Lは、カム34Lにより押圧されることでガイド壁13及びポール側カム面47cLにそれぞれ圧接する。このとき、押圧部材36Lの押圧力は、第1ポール32Lの移動方向成分(径方向成分)の分力及び該移動方向に直交する方向であるポールの幅方向成分(周方向成分)の分力に分解される。そして、この第1ポール32Lの幅方向成分の分力での押圧による楔作用によって、第1ポール32Lの幅端部とガイド壁13とが互いに離間する周方向の力を発生し、第1ポール32Lの幅端部とガイド壁14との隙間が埋まる。これにより、シートクッションに対するシートバックのがたつきが抑制される。
一方、カム34Lの図示時計回転方向(以下、「アンロック回転方向」ともいう)への回動に伴うアンロック作動時に、押圧カム部51aL,51bLは、第1ポール31L,33Lのポール側カム面45aL,45bL又は第1ポール32Lのポール側カム面47aL,47bLから離隔される。また、押圧カム部51cLは、第1ポール31L,33Lのポール側カム面45cLから離隔され、あるいは押圧部材36Lから離隔される。
図4に示すように、カム34Lの側面には、円周上に間隔をおいて複数(3つ)の係合突起52Lが突設されている。これら係合突起52Lは、第1ポール31L〜33Lの第1ポール側溝カム部44Lに挿入・係合されている。第1ポール側溝カム部44L及び係合突起52Lは、カム34Lのアンロック回転方向への回動によって第1ポール31L〜33Lを径方向内方へ移動させるように作用する。
すなわち、図5(a)に示すように、第1ポール側溝カム部44Lは、カム34Lのアンロック回転方向(図示時計回転方向)に向かうに従い、基本的に径方向外方に漸進するように成形されている。これにより、カム34Lのアンロック回転方向への回動に伴い、係合突起52Lに第1ポール側溝カム部44Lの押圧される第1ポール31L〜33Lが径方向内方に引き込まれる。
図4に示すように、渦巻きばね35は、第1ポール31L〜33Lを第2部材20Lに係合する径方向に移動させるべくカム34Lをロック回転方向に回動付勢するもので、第1部材10Lの貫通孔16内に収納されている。渦巻きばね35は、例えば略矩形の扁平な線材を所定の渦巻き形状に曲成することにより形成されており、第1部材10Lとカム34Lとの間に介装されている。すなわち、渦巻きばね35の外端部35aは、係止孔16aに係止され、内端部35bは、カム34Lの端面に突設された係止部(図示略)に係止されている。
そして、渦巻きばね35の付勢力によって、カム34Lは第1部材10Lに対してロック回転方向(図5(a)の反時計回転方向)に回動付勢され、そのカム面51Lによって第1ポール31L〜33Lを径方向外方に押圧し、各々の外歯43を第2部材20Lの内歯22に噛合させるようになっている。
図5(a)、(b)に示すように、メモリリング60は、一箇所において分断された円環状をなしており、径方向内側に向かって弾性変形することで縮径可能であるとともに、径方向外側に向かって弾性復帰することで拡径可能である。メモリリング60は、分断部分Sを隣接する第1ポール31L,32Lの第1ポール側係合突部46L,48L間に位置させ、かつ縮径された状態で、第2部材20Lの収容凹部23に対し周方向に摺動可能、即ち回動可能に収容されている。
メモリリング60は、分断部分Sを挟んで第1ポール31L側寄りの部位が相対的に縮径されており、当該部位の円弧状の外周面及び内周面は回動許容部61及び第1アンロック係合面62を形成する。また、メモリリング60は、第1アンロック係合面62の周方向中央部から径方向内側に突出する円弧状の定点復帰用突部63を有する。
さらに、メモリリング60は、分断部分Sを挟んで第1ポール32L(第1ポール側係合突部48L)側寄りの端部を径方向内側に突出させて被係合部64を形成する。この被係合部64は、ガイド溝15に沿って径方向に移動する第1ポール32Lの位置に関わらず、第1ポール側係合突部48Lと径方向の位置において常に重なるように設定されている。従って、メモリリング60は、被係合部64が第1ポール側係合突部48Lに隣接しているとき、第1ポール32Lに対する図示時計回転方向の回転、即ち第1部材10Lに対する図示時計回転方向の回転が常に規制されるようになっている。
メモリリング60の第1アンロック係合面62及び被係合部64間に挟まれる円弧状の内周面は、第1アンロック係合面62の内径よりも大きい内径の第1ロック係合面65を形成する。第1アンロック係合面62及び第1ロック係合面65の境界位置(段差)は、例えばガイド溝15に沿って第1ポール31Lが径方向外側に移動しているとき、即ち第1ポール31Lの外歯43が内歯22に噛合しているときに、第1ロック係合面65に位置する第1ポール側係合突部46Lと径方向の位置において常に重なるように設定されている。従って、このとき、メモリリング60は、第1ポール31Lに対する図示反時計回転方向の回転、即ち第1部材10Lに対する図示反時計回転方向の回転が常に規制されるようになっている。第1アンロック係合面62及び第1ロック係合面65の段差状の境界位置は、規制面66を形成する。
一方、図6に示すように、カム34Lのアンロック作動に伴いガイド溝15に沿って径方向内側に第1ポール31Lが移動しているとき、即ち第1ポール31Lの外歯43が内歯22との噛合を解除しているとき、規制面66は、第1ロック係合面65に位置する第1ポール側係合突部46Lと径方向の位置において常に一部が重なるように設定されている。従って、このときも、メモリリング60は、規制面66において第1ポール側係合突部46Lに対し径方向に半係合されることで、第1ポール31Lに対する図示反時計回転方向の回転、即ち第1部材10Lに対する図示反時計回転方向の回転が常に規制されるようになっている。このときのカム34Lのアンロック作動を第1のアンロック作動ともいう。
つまり、第1ポール31L〜33Lの外歯43及び内歯22の噛合状態や、カム34Lの第1のアンロック作動に伴い第1ポール31L〜33Lの外歯43及び内歯22の噛合が解除される状態では、メモリリング60は、第1部材10Lに対する回動が常に規制されている。
ここで、第2部材20Lに設けられた係合突部24Lは、周方向において回動許容部61に配置されている。従って、第1部材10Lに対するメモリリング60の回動が規制されているとき、係合突部24L(第2部材20L)は、回動許容部61の範囲内での回動が許容されている。なお、図5(a)及び図6では、シートバックがニュートラル位置にあるときの状態を描いている。
そして、図7に示すように、外歯43及び内歯22の噛合が解除される状態でメモリリング60(及び第1部材10L)に対して図示反時計回転方向に回動する第2部材20Lは、係合突部24Lが回動許容部61の終端に到達することでその回動が規制される。このときの第1部材10Lに対する第2部材20Lの回転は、シートクッションに対してシートバックを前傾させるもので、以下では、前方回転ともいう。従って、係合突部24Lが第2部材20Lの前方回転において回動許容部61の終端に到達する状態は、シートバックのアップライト位置に相当する。
また、図8に示すように、外歯43及び内歯22の噛合が解除される状態でメモリリング60(及び第1部材10L)に対して図示時計回転方向に回動する第2部材20Lは、係合突部24Lが回動許容部61の終端に到達することでその回動が規制される。このときの第1部材10Lに対する第2部材20Lの回転は、シートクッションに対してシートバックを後傾させるもので、以下では、後方回転ともいう。従って、係合突部24Lが第2部材20Lの後方回転において回動許容部61の終端に到達する状態は、シートバックの大倒し位置に相当する。
一方、図9に示すように、カム34Lのアンロック作動に伴いガイド溝15に沿って径方向内側に第1ポール31Lが更に移動しているとき、規制面66は、第1ポール側係合突部46Lと径方向の位置において重ならないように設定されている。従って、このとき、メモリリング60は、規制面66における第1ポール側係合突部46Lとの径方向の係合から解放されることで、第1ポール31Lに対する図示反時計回転方向の回転、即ち第1部材10Lに対する図示反時計回転方向の回転が許容されるようになっている。同時に、メモリリング60は、自身の弾性変形による第2部材20Lとの摩擦係合で該第2部材20Lと一体回動可能となる。
従って、メモリリング60は、この状態で第1部材10Lに対して第2部材20Lが前方回転し始めると、該第2部材20Lとの相対位置を保持したまま一体回動し始める。そして、規制面66に位置していた第1ポール側係合突部46Lは、これに伴って第1ロック係合面65から第1アンロック係合面62へと乗り上げる。このとき、内歯22との噛合の解除状態にある第1ポール31Lは、第1ポール側係合突部46Lの乗り上げた第1アンロック係合面62によって径方向外側への移動が規制されることで、当該解除状態を保持する。カム34Lを介して連動するその他の第1ポール32L,33Lについても同様である。このときのカム34Lのアンロック作動を第2のアンロック作動ともいう。
ここで、図10に示すように、シートバックがニュートラル位置にあるときにメモリリング60と共に第2部材20Lが前方回転した場合には、シートバックの前倒し位置に相当する回転位置までの回転量が相対的に小さくなる。このため、第1アンロック係合面62に乗り上げた第1ポール側係合突部46Lが定点復帰用突部63に到達する段階では、シートバックが前倒し位置を通過して前傾していることになる。換言すれば、シートバックが前倒し位置に到達した状態では、第1ポール側係合突部46Lは、第1アンロック係合面62の定点復帰用突部63よりも規制面66側に位置している。
従って、シートバックを引き上げて前倒しを解消すると、メモリリング60と共に第2部材20Lが後方回転することで、第1ポール側係合突部46Lに第1ロック係合面65が到達した時点で、第1ポール31Lが内歯22と噛合可能となる。カム34Lを介して連動するその他の第1ポール32L.33Lについても同様である。そして、第1ポール31L〜33Lが内歯22に噛合することで、メモリリング60と共に第2部材20Lのそれ以上の後方回転が規制される。このときの第1部材10Lに対する第2部材20Lの回転位置は、カム34Lの第2のアンロック作動に伴いメモリリング60と共に第2部材20Lが回動し始めたときの回転位置に一致する。つまり、シートバックの後傾が規制される角度位置は、カム34Lの第2のアンロック作動に伴いシートバックが前傾し始めた当初の角度位置(以下、「メモリ位置」ともいう)に一致する。
一方、図11に示すように、シートバックが大倒し位置にあるときにメモリリング60と共に第2部材20Lが前方回転した場合には、シートバックの前倒し位置に相当する回転位置までの回転量が相対的に大きくなる。このため、第1アンロック係合面62に乗り上げた第1ポール側係合突部46Lが定点復帰用突部63に到達しても、シートバックは未だ前倒し位置に到達していない。このとき、メモリリング60は、定点復帰用突部63において第1ポール側係合突部46Lに径方向で係合されることで、第1ポール31Lに対する図示反時計回転方向の回転、即ち第1部材10Lに対する図示反時計回転方向の回動が再び規制される。つまり、メモリリング60は、第1部材10Lに対する回動が常に規制されて、第2部材20Lに対する回動が可能となる。換言すれば、シートバックが前倒し位置に到達した段階でも、メモリリング60は、依然として定点復帰用突部63及び第1ポール側係合突部46Lの当接状態を保持している。
従って、シートバックを引き上げて前倒しを解消すると、メモリリング60と共に第2部材20Lが後方回転することで、第1ポール側係合突部46Lに第1ロック係合面65が到達した時点で、第1ポール31Lが内歯22と噛合可能となる。カム34Lを介して連動するその他の第1ポール32L.33Lについても同様である。そして、第1ポール31L〜33Lが内歯22に噛合することで、メモリリング60と共に第2部材20Lのそれ以上の後方回転が規制される。
このときの第1部材10Lに対する第2部材20Lの回転量は、規制面66及び定点復帰用突部63間の角度に相当する所定角度に一致する。つまり、シートバックの後傾が規制される角度位置は、前倒し位置から前記所定角度だけ後傾させた角度位置に一致する。シートバックの前述の定点復帰位置は、このときに復帰する角度位置に相当するものである。換言すれば、シートバックを前倒し位置まで前傾したときの第1部材10Lに対する第2部材20Lの回転量が前記所定角度を超えていれば、即ちシートバックの前倒しを開始したときの角度位置が定点復帰位置から大倒し位置までの範囲にあって非着座領域に含まれる場合には、シートバックを引き上げて前倒しを解消する際に点復帰位置に設定される。これは、特殊な着座姿勢のための非着座領域から前倒しを始めた場合、前倒しの解消に伴いシートバックを着座領域に収めて操作性を高めるためである。
次に、反対側のロック機構5Rについて説明する。
図2に示すように、ロック機構5Rは、円盤状の第1部材10R及び第2部材20Rを備えている。第1部材10Rは、ヒンジ軸91R(連結シャフト92)と同心でロアプレート4Rの内側面(シートクッション側)に溶接にて固着されており、第2部材20Rは、同じくヒンジ軸91R(連結シャフト92)と同心でバックサイドフレーム6aの下端部の外側面(シートバック側)に溶接にて固着されている。これら第1部材10R及び第2部材20Rは、金属板からなるリング状のホルダ29Rにて軸線方向に抜け止めされている。
図12に示すように、第1部材10Rは、例えば金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、左右対称であることを除けば第1部材10Lと略同様の構造を有する。
第2部材20Rは、例えば金属板の半抜きにより成形されたもので、左右対称であることを除けば第2部材20Lと略同様の構造を有する。なお、収容凹部23の内周面23aには、等角度間隔に配置された複数(3つ)の略円弧状の係合突部24Rが中心に向かって突設されている。第2部材20Rは、係合突部24Rの内周面で第2アンロック係合面26を形成するとともに、隣り合う係合突部24R間の内周面23aで第2ロック係合面27を形成する。
また、第1部材10Rと第2部材20Rとの間には、3つの第2ポール31R,32R,33Rと、カム34R、押圧部材36Rと、前記渦巻きばね35とが配設されている。
第2ポール31R〜33Rは、鋼材を鍛造加工するなどして作製されたもので、左右対称であることを除けば第1ポール31L〜33Lとそれぞれ略同様の構造を有する。そして、第2ブロック42には、板厚方向に貫通する第2ポール側溝カム部44Rが幅方向の略中央部位に透設されている。
また、第2ポール31R〜33Rには、収容凹部23(内周面23a)に径方向で対向するように、第2ブロック42の径方向外側に円弧状の第2ポール側係合突部46Rが突設されている。第2ポール側係合突部46Rは、第2ポール31R〜33Rの周方向中央部に配置されている。
ここで、二つの第2ポール31R,33Rには、第1ブロック41の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)において、カム34Rの外周部に係合する内面カム部45Rが形成されている。第2ポール31R,33Rの段差部に形成された当該内面カム部45Rは、第2ポール31R,33Rの周方向の中央部と周方向の両側に、3つのポール側カム面45aR,45bR,45cRを備えている。これらポール側カム面45aR,45bR,45cRは、カム34Rの外周部(カム面51R)に対向している。ポール側カム面45aR,45bR,45cRは、カム34Rの図示反時計回転方向(以下、「ロック回転方向」ともいう)への回動に伴うロック作動時に該カム34Rの外周部に接近する傾斜面を有するカム面で構成されている。
一方、残りの一つの第2ポール32Rには、第1ブロック41の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)において、カム34Rの外周部に係合する内面カム部47Rが形成されている。第2ポール32Rの段差部に形成された当該内面カム部47Rは、ポール側カム面45aR,45bRと同様のポール側カム面47aR,47bRと、ポール側カム面45cRに代わるポール側カム面47cRを備えている。ポール側カム面47cRは、カム34Rの外周部(カム面51R)に対向しており、周方向で対向するガイド壁13との間で楔状の空間を形成するように成形されている。すなわち、ガイド壁13とポール側カム面47cRとの間隔は、径方向外方へ向かうに従って狭くなるように成形されている。
カム34Rは、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、左右対称であることを除けばカム34Lと略同様の構造を有する。カム34Rは、カム嵌合孔34aにヒンジ軸91Rの先端部が嵌挿されることで、第2ポール31R〜33Rの内周側で、ヒンジ軸91R等と一体回動可能となっている。つまり、左右のカム34L,34R(ロック機構5L,5R)は、ヒンジ軸91L,91R及び連結シャフト92を介して互いに同期して動作するように連結されている。
カム34Rは、その外周部に円周上に等角度間隔に3組のカム面51Rを有している。各カム面51Rは、その周方向の中央部と周方向の両側に、3つの押圧カム部51aR,51bR,51cRを備えている。これらのうちの2つの押圧カム部51aR,51bRは、第2ポール31R,33Rの対向する2つのポール側カム面45aR,45bR又は第2ポール32Rの対向する2つのポール側カム面47aR,47bRに当接可能である。それら2つの押圧カム部51aR,51bRは、カム34Rがロック回転方向に回動されたときに該当のポール側カム面45aR,45bR、47aR,47bRを押圧する。
一方、これらのうちの残りの1つの押圧カム部51cRは、第2ポール31R,33Rの対向する残りのポール側カム面45cRに当接可能であり、カム34Rがロック回転方向に回動されたときに該当のポール側カム面45cRを押圧する。あるいは、押圧カム部51cRは、第2ポール32Rのポール側カム面47cR及びガイド壁13との間に形成される前述の楔状の空間内に、球体状の押圧部材36Rを収容する。押圧部材36Rは、ポール側カム面47cR及びガイド壁13に摺接しつつ径方向に移動できるようになっている。当該押圧カム部51cRは、押圧部材36Rに外接可能であり、カム34Rがロック回転方向に回動されたときに押圧部材36Rを押圧する。
つまり、押圧カム部51aR〜51cRは、カム34Rがロック回転方向に回動されたときに、第2ポール31R,33Rのポール側カム面45aR〜45cR、並びに第2ポール32Rのポール側カム面47aR,47bR及び押圧部材36Rにそれぞれ当接(圧接)する角度位置に保持されている。
なお、押圧部材36Rは、カム34Rにより押圧されることでガイド壁13及びポール側カム面47cRにそれぞれ圧接する。このとき、押圧部材36Rの押圧力は、第2ポール32Rの移動方向成分(径方向成分)の分力及び該移動方向に直交する方向であるポールの幅方向成分(周方向成分)の分力に分解される。そして、この第2ポール32Rの幅方向成分の分力での押圧による楔作用によって、第2ポール32Rの幅端部とガイド壁13とが互いに離間する周方向の力を発生し、第2ポール32Rの幅端部とガイド壁14との隙間が埋まる。これは、シートクッションに対するシートバックのがたつきを抑制するためのものである。
一方、図13に示すように、カム34Rの図示時計回転方向(以下、「アンロック回転方向」ともいう)への回動に伴うアンロック作動時に、押圧カム部51aR,51bRは、第2ポール31R,33Rのポール側カム面45aR,45bR又は第2ポール32Rのポール側カム面47aR,47bRから離隔される。また、押圧カム部51cRは、第2ポール31R,33Rのポール側カム面45cRから離隔され、あるいは押圧部材36Rから離隔される。
図12に示すように、カム34Rの側面には、円周上に間隔をおいて複数(3つ)の係合突起52Rが突設されている。これら係合突起52Rは、第2ポール31R〜33Rの第2ポール側溝カム部44Rに挿入・係合されている。第2ポール側溝カム部44R及び係合突起52Rは、カム34Rのアンロック回転方向への回動によって第2ポール31R〜33Rを径方向内方へ移動させるように作用する。
すなわち、図13に示すように、第2ポール側溝カム部44Rは、カム34Rのアンロック回転方向(図示時計回転方向)に向かうに従い、基本的に径方向外方に漸進するように成形されている。これにより、カム34Rのアンロック回転方向への回動に伴い、係合突起52Rに第2ポール側溝カム部44Rの押圧される第2ポール31R〜33Rが径方向内方に引き込まれる。
なお、カム34Rは、渦巻きばね35の付勢力によって、第1部材10Rに対してロック回転方向(図12の反時計回転方向)に回動付勢され、そのカム面51Rによって第2ポール31R〜33Rを径方向外方に押圧し、各々の外歯43を第2部材20Rの内歯22に噛合させるようになっている。
ここで、ガイド溝15に沿って径方向外側に第2ポール31R〜33Rが移動しているとき、即ち第2ポール31R〜33Rの外歯43が内歯22に噛合しているとき、第2ポール側係合突部46Rは隣り合う係合突部24R間、即ち第2ロック係合面27に位置している。
そして、図13に示すように、カム34Rのアンロック作動に伴いガイド溝15に沿って径方向内側に第2ポール31R〜33Rが移動しているとき、即ち第2ポール31R〜33Rの外歯43が内歯22との噛合を解除しているとき、係合突部24Rは、第2ロック係合面27に位置する第2ポール側係合突部46Rと径方向の位置において常に一部が重なるように設定されている。
従って、第2ポール側係合突部46Rは、第2ロック係合面27の範囲で第2部材20Rに対する相対回動が許容されている。このときのカム34Rのアンロック作動を第1のアンロック作動ともいう。
外歯43及び内歯22の噛合が解除される状態で第1部材10Rに対して図示時計回転方向に回動する第2部材20Rは、係合突部24Rが第2ポール側係合突部46Rに到達することでその回動が規制される。このときの第1部材10Rに対する第2部材20Rの回転は、前方回転となる。
また、外歯43及び内歯22の噛合が解除される状態で第1部材10Rに対して図示反時計回転方向に回動する第2部材20Rは、係合突部24Rが第2ポール側係合突部46Rに到達することでその回動が規制される。このときの第1部材10Rに対する第2部材20Rの回転は、後方回転となる。
一方、図14に示すように、カム34Rのアンロック作動に伴いガイド溝15に沿って径方向内側に第2ポール31R〜33Rが更に移動しているとき、即ち第2ポール31R〜33Rの外歯43が内歯22との噛合を解除しているとき、係合突部24Rは、第2ロック係合面27に位置する第2ポール側係合突部46Rと径方向の位置において重ならないように設定されている。
従って、このとき、第2部材20Rは、係合突部24Rにおける第2ポール側係合突部46Rとの径方向の係合から解放されることで、例えば第2ポール31R〜33Rに対する図示時計回転方向の更なる回転、即ち第1部材10Rに対する図示時計回転方向の更なる回転が許容されるようになっている。
従って、この状態で第1部材10Rに対して第2部材20Rが前方回転し始めると、第2ロック係合面27に位置していた第2ポール側係合突部46Rは、これに伴って第2ロック係合面27から第2アンロック係合面26へと乗り上げる。このとき、内歯22との噛合の解除状態にある第2ポール31R〜33Rは、第2ポール側係合突部46Rの乗り上げた第2アンロック係合面26によって径方向外側への移動が規制されることで、当該解除状態を保持する。従って、このときの第2部材20Rの前方回転は、シートバックの前倒し位置に相当する回転位置に到達するまで許容される。このときのカム34Rのアンロック作動を第2のアンロック作動ともいう。
従って、シートバックを引き上げて前倒しを解消すると、第2部材20Rが後方回転することで、第2ポール側係合突部46Rに第2ロック係合面27が到達した時点で、第2ポール31R〜33Rが内歯22と噛合可能となる。しかしながら、第2ポール31R〜33Rが内歯22と噛合するためには、連結シャフト92等を介して連動する反対側の第1ポール31L〜33Lが内歯22と噛合可能となる必要がある。つまり、第2ポール31R〜33Rが内歯22と噛合する際の動作は、メモリ位置への復帰等に係る反対側の第1ポール31L〜33Lの動作によって制約されている。換言すれば、メモリ位置への復帰等に係る機能を片側のロック機構5Lのみに設置する構成であっても、装置全体としての機能が成立するようになっている。そして、第1ポール31L〜33Lと共に第2ポール31R〜33Rが内歯22に噛合することで、第2部材20Rのそれ以上の後方回転が規制される。このときの第1部材10Rに対する第2部材20Rの回転位置が、シートバックのメモリ位置又は定点復帰位置に相当する回転位置に一致することはいうまでもない。
ここで、図1に示すように、片側のロアプレート4Rから軸線方向に突出するヒンジ軸91Rの先端部は、例えば板材からなる第1の操作部材71に連係されており、該第1の操作部材71の先端部が引き上げ操作(以下、「第1のアンロック操作」ともいう)されたときにヒンジ軸91Rに連結されたカム34Rが第1のアンロック作動する側に回動するように構成されている。このとき、連結シャフト92及びヒンジ軸91Lを介して反対側のカム34Lも第1のアンロック作動する側に回動する。
一方、シートバックフレーム6の図示左上部の肩部には、その角部に広がる取付部材6bが設けられている。そして、この取付部材6bには、例えば板材からなるアーム状の第2の操作部材72が、軸73により上下方向に回動可能に支持されている。第2の操作部材72は、復帰ばね(図示略)により常に下方へ回動付勢されている。また、取付部材6bにおいて、第2の操作部材72の上側及び下側には、ストッパ74a,74bが設けられており、第2の操作部材72の操作範囲がこれらストッパ74a,74bによって規定されている。
また、片側のロアプレート4Lから軸線方向に突出するヒンジ軸91Lの先端部は、例えば板材からなる解除リンク100に連係されている。解除リンク100の先端部は、例えば可撓性のある二重管式ケーブルの外筒T内に案内されるケーブル75を介して第2の操作部材72の長手方向中間部に連結されている。そして、第2の操作部材72の先端部が引き上げ操作(以下、「第2のアンロック操作」ともいう)されたときにヒンジ軸91Lに連結されたカム34Lが第2のアンロック作動する側に回動するように構成されている。このとき、連結シャフト92及びヒンジ軸91Rを介して反対側のカム34Rも第2のアンロック作動する側に回動する。
なお、ケーブル75の外筒Tは、一方の端末が取付部材6bに形成されたケーブルホルダ6cに保持されるとともに、他方の端末がロアプレート4Lに固着されたケーブルホルダ104に保持されている。図1では、ケーブル75及び外筒Tの中間部分の図示が省略されている。
ここで、図15を参照して、渦巻きばね35の付勢力により第1ポール31L及び第2ポール31Rの外歯43と第2部材20L,20Rの内歯22とが噛合状態にあるときのカム34L,34Rの回転角度を原点とする該カム34L,34Rの回転角度θと、これに対応する第1ポール31L及び第2ポール31Rの内歯22から離隔する径方向への移動量であるスライド量SLとの関係について説明する。なお、その他の第1ポール32L,33L及び第2ポール32R,33Rについては、第1ポール31L及び第2ポール31Rにそれぞれ連動していることでその説明を割愛する。
図15において、回転角度θ1は、第1の操作部材71を第1のアンロック操作する際の最大操作量に相当する回転角度θを表しており、回転角度θ2(>θ1)は、第2の操作部材72を第2のアンロック操作する際の最大操作量に相当する回転角度θを表している。従って、回転角度θ2は、第2の操作部材72がストッパ74aに当接する操作量に対応するカム34Lの回転角度θに一致する。また、スライド量S1は、カム34L,34Rの第2のアンロック作動時の第1ポール31Lのスライド量SLの推移を表しており、スライド量S2は、カム34L,34Rの第2のアンロック作動時の第2ポール31Rのスライド量SLの推移を表している。
回転角度θ3は、カム34L,34Rのアンロック作動時、係合突起52L,52Rが空走区間を経て第1ポール側係合突部46L及び第2ポール側係合突部46Rに当接する際の回転角度θを表している。さらに、回転角度θ4は、第1ポール31L及び第2ポール31Rの外歯43と第2部材20L,20Rの内歯22とが歯先解除する際のスライド量Srに対応する回転角度θを表している。
一方、スライド量S3は、渦巻きばね35の付勢力により第1ポール31L及び第2ポール31Rの外歯43と第2部材20L,20Rの内歯22とが噛合する際のそれらのスライド量SLの推移を表している。つまり、第1ポール31L及び第2ポール31Rの外歯43と第2部材20L,20Rの内歯22とが噛合する際は、スライド量SLが互いに同等に推移するように設定されている。このときのスライド量SLの推移は、カム34L,34Rのカム面51L,51R、並びに第1ポール31L及び第2ポール31Rの内面カム部45L,45Rの形状によって調整・設定されている。
同図から明らかなように、スライド量S1,S2は、カム34L,34Rが第2のアンロック作動を開始して第1ポール31L及び第2ポール31Rの外歯43と第2部材20L,20Rの内歯22とが歯先解除を終了する当たりの当初は、スライド量SLが互いに同等に推移するように設定されている。
そして、第2ポール31Rの第2ポール側係合突部46Rが第2部材20Rの第2アンロック係合面26に乗り上げる付近で、互いに異なって推移するように設定されている。
すなわち、第1ポール31Lの第1ポール側係合突部46Lがメモリリング60の第1アンロック係合面62に乗り上げるときのスライド量St1は、第2ポール31Rの第2ポール側係合突部46Rが第2部材20Rの第2アンロック係合面26に乗り上げるときのスライド量St2よりも大きく設定されている。これは、例えば部品ばらつき等で第1ポール31Lの第1ポール側係合突部46Lがメモリリング60の第1アンロック係合面62に乗り上げるときの回転角度θ(第1の操作部材71の操作量)が、第2ポール31Rの第2ポール側係合突部46Rが第2部材20Rの第2アンロック係合面26に乗り上げるときの回転角度θ(第2の操作部材72の操作量)よりも小さくなる可能性を低減するためである。これにより、例えば第2のアンロック操作の状態で、メモリリング60が第2部材20Lと一体回動しているにも関わらず、即ちメモリ位置の設定等が行われているにも関わらず、シートバックの前記所定角度範囲を超える前倒れが不能になることが抑制される。
また、第2ポール31Rの第2ポール側係合突部46Rが第2部材20Rの第2アンロック係合面26に乗り上げるときの回転角度θ付近からは、該回転角度θの増加量に対する第1ポール31Lのスライド量S1の増加量が、第2ポール31Rのスライド量S2の増加量よりも大きくなるように設定されている。すなわち、第1ポール31Lが内歯22から離隔する径方向への移動速度が、第2ポール31Rが内歯22から離隔する径方向への移動速度よりも大きくなるように設定されている。これは、第1ポール31Lの第1ポール側係合突部46Lがメモリリング60の第1アンロック係合面62に乗り上げるときのスライド量St1を、第2ポール31Rの第2ポール側係合突部46Rが第2部材20Rの第2アンロック係合面26に乗り上げるときのスライド量St2よりも大きく設定しているものの、第1ポール31L及び前記第2ポール31Rの両移動速度の差分でそれらのタイミングずれを抑えるためである。これにより、第2のアンロック操作の状態で、シートバックが前記所定角度範囲を超えて前倒れしているにも関わらず、メモリリング60が第2部材20Lと一体回動不能になること、即ちメモリ位置の設定等が不能になることが抑制される。
図16に示すように、第1ポール31Lの第1ポール側係合突部46Lがメモリリング60の第1アンロック係合面62に乗り上げるときのスライド量SLの推移及び第2ポール31Rの第2ポール側係合突部46Rが第2部材20Rの第2アンロック係合面26に乗り上げるときのスライド量SLの推移は、カム34L,34Rの係合突起52L,52Rが係入される第1ポール側溝カム部44L及び第2ポール側溝カム部44Rの形状によって調整・設定されている。すなわち、図16に実線にて描画する、第2ポール31Rの第2ポール側係合突部46Rが第2部材20Rの第2アンロック係合面26に乗り上げる付近の第1ポール31Lの引き込みに係る第1ポール側溝カム部44Lの内壁面44aLは、図16に2点鎖線にて描画する、同じく第2ポール31Rの引き込みに係る第2ポール側溝カム部44Rの内壁面44aRよりも径方向外側に嵩上げされている。これにより、第1ポール31Lが内歯22から離隔する径方向への移動速度の相対的な増加が実現されている。
次に、第1の操作部材71及びその周辺構造について説明する。
図17に示すように、第1の操作部材71は、略弓形状に成形されており、ヒンジ軸91Rの先端部に回動可能に支持されている。第1の操作部材71は、その基端部からヒンジ軸91Rを中心とする径方向に略沿って前上側へ突出する可動ストッパ71aを有する。この可動ストッパ71aは、前記固定フランジ7Rに対しヒンジ軸91Rを中心とする図示時計回転方向に先行する側に配置されており、その回動軌跡が固定フランジ7Rに遮られるように配置されている。また、第1の操作部材71は、ロアプレート4Rとの間に張設された復帰ばね76によって、所定の初期回動位置に付勢・保持されている(引っ張られている)。
従って、図18に示すように、第1の操作部材71の先端部を引き上げ操作(第1のアンロック操作)する際の最大回動範囲は、可動ストッパ71aが固定フランジ7Rに当接するまでの範囲に制限されている。このときの第1の操作部材71の操作量に対応する回転角度θが回転角度θ1に一致する。
また、図17に示すように、ヒンジ軸91Rの先端部は、固定フランジ7Rの下側となる第1の操作部材71の外側に隣接して、板材からなるリンク部材80に嵌挿・固着されている。リンク部材80の先端部には、ヒンジ軸91Rを中心とする円弧状の長孔81が形成されている。一方、第1の操作部材71には、長孔81に摺動自在に挿通されるピン77が固定されている。
既述のように、第1の操作部材71は、ヒンジ軸91Rの先端部に対し回動可能に支持されており、復帰ばね76によって所定の初期回動位置に付勢・保持されている。一方、リンク部材80は、ヒンジ軸91Rと一体のカム34Rが渦巻きばね35によりロック作動する側の回転方向(図17において時計回転方向)に常に回動付勢されていることで、通常は初期回動位置にある第1の操作部材71のピン77に長孔81の一方の端部(前端部)が係止される位置に配置されている。
従って、図18に示すように、第1の操作部材71の第1のアンロック操作の状態では、リンク部材80は、ピン77により長孔81の一方の端部(前端部)が押圧されることで、第1の操作部材71と一体となって図示反時計回転方向に回動する。そして、リンク部材80の回動に伴い、ヒンジ軸91Rが一体となって同方向へ回動する。このとき、ヒンジ軸91Rと一体のカム34Rが渦巻きばね35の付勢力に抗して第1のアンロック作動をする。
反対に、図17に示す状態で、リンク部材80が図示反時計回転方向に回動する際には、図19に示すように、長孔81内でのピン77の移動が許容されていることで、リンク部材80の回動が第1の操作部材71へと伝達されることはない。
次に、解除リンク105及びその周辺構造について説明する。
図20(a)、(b)に示すように、解除リンク105は、略I字状に成形されており、ヒンジ軸91Lの先端部が嵌挿・固着されている。つまり、解除リンク105は、ヒンジ軸91Lと一体のカム34Lが渦巻きばね35によりロック作動する側の回転方向(図20(a)において反時計回転方向)に常に回動付勢されていることで、それらと共に通常は所定の初期回動位置に保持されている。
また、解除リンク105の長手方向中間部下部には、外側(図20(a)において紙面に直交する手前側)に起立する略L字状のガイド片106が形成されている。このガイド片106には、略U字溝状のケーブル挿通溝106aが形成されている。ガイド片106は、ケーブル挿通溝106aを挟んでその両側部に略平面状の当接部106bを形成する。さらに、解除リンク105の先端部には、ヒンジ軸91Lの軸線と平行な軸線を有するプーリ107が軸支されている。
一方、ロアプレート4Lの後下部には、外側(図20(a)において紙面に直交する手前側)に起立する略L字状のケーブル端末保持ブラケット108が固着されている。そして、ロアプレート4Lの下端部に固着された前記ケーブルホルダ104から延びるケーブル75は、ケーブル挿通溝106aを通って後上方に延びるとともに、プーリ107に掛けられて下方に転向し、更にケーブル端末保持ブラケット108においてその端末75aが係止されている。また、ケーブル75には、ガイド片106及びプーリ107間でガイド片106側に凸となる円弧状の当接片109が固設されている。
このような構成にあって、解除リンク105が初期回動位置に保持されているとき、当接部106b及び当接片109は離隔されている。また、当接部106bは、ケーブル75の位置における当接片109の接線方向に対して傾いている。
従って、図21(a)から図21(b)への変化で示すように、第2の操作部材72の第2のアンロック操作に伴いケーブル75が引かれると、該ケーブル75は、プーリ107を介して解除リンク105を引き下げて図示時計回転方向に回動させつつ当接片109を当接部106bに近付けていく。このときの解除リンク105の回動量は、第2の操作部材72の第2のアンロック操作に伴うケーブル75の引き量を、プーリ107を挟んでその端末75a側と当接片109側とで二分したものに基づくため、解除リンク105の回動速度は相対的に遅くなっている。
そして、図21(b)から図21(c)への変化で示すように、第2の操作部材72の第2のアンロック操作に伴いケーブル75が更に引かれると、当接片109がその円弧形状の最頂部で当接部106bに当接する。
その後、図21(c)から図21(d)への変化で示すように、第2の操作部材72の第2のアンロック操作に伴いケーブル75が更に引かれると、該ケーブル75は、当接片109により解除リンク105のガイド片106(当接部106b)を直に押し下げて解除リンク105を図示時計回転方向に回動させる。このときの解除リンク105の回動量は、第2の操作部材72の第2のアンロック操作に伴うケーブル75の引き量に基づくため、解除リンク105の回動速度は相対的に速くなっている。
ケーブル75、当接部106b(ガイド片106)、プーリ107、ケーブル端末保持ブラケット108(ロアプレート4L)及び当接片109は、速度変更機構Mvを構成する。
なお、当接片109及び当接部106bは、当接片109の円弧形状による略線接触の状態で当接していることで、それらの間の力の伝達がより安定化されている。特に、図21(c)に示すように、当接片109が当接部106bに当接し始めた状態では、それらの当接箇所がケーブル75の中心線上(即ちケーブル75の引き方向)に合致していることで、当接片109に押圧される当接部106bの応答性、即ち解除リンク105の応答性が略最大化されている。
また、例えば図21(c)において、解除リンク105の軸心から当接片109及び当接部106bの当接部位までの距離をL1とし、解除リンク105の軸心からプーリ107の軸心までの距離をL2とすると、距離L1は距離L2よりも短く設定されている。これにより、例えば解除リンク105の軸心からプーリ107の軸心までの距離が、解除リンク105の軸心から当接片109及び当接部106bの当接部位までの距離と同等である場合に比べてそれらの比の値(=L2/L1>1)の乗数分だけ、第2の操作部材72の操作量に対する解除リンク105の回動量の変化率(回動速度)を大きくすることができ、ひいては解除リンク105の応答性を向上させることができる。
ここで、図22を参照して、第2の操作部材72がストッパ74bに当接する状態にあるときの第2の操作部材72の操作角(操作量)を原点とする該第2の操作部材72の操作角αと、これに対応する解除リンク105の移動量(回動量)及び第2の操作部材72の操作荷重との関係について説明する。解除リンク105の移動量がカム34Lの回転角度θや第1ポール31L〜33Lの移動量(ポールスライド量)に相関することはいうまでもない。
図22において、操作角α1は、第1ポール31L〜33Lの外歯43と第2部材20Lの内歯22とが歯先解除する際の前述の回転角度θ4及びスライド量Srに対応する操作角αを表している。また、操作角α2(>α1)は、第2の操作部材72がストッパ74aに当接する状態にあるときの第2の操作部材72の操作角α、即ち最大操作角α2を表している。なお、実線で描いたグラフが本実施形態に対応するもので、破線で描いたグラフは従来例に対応するものである。それらについては、最大操作角α2における解除リンク105の移動量及び第2の操作部材72の操作荷重が共通であるものとして比較している。
同図から明らかなように、本実施形態では、操作角α1において第2の操作部材72の操作角αに対する解除リンク105の回動量の変化率(回動速度)が2倍化されている。つまり、図21(c)に示す当接片109及び当接部106bの当接箇所がケーブル75の中心線上に合致している状態は、前述の歯先解除のタイミングに合わせて設定されている。
これは、第2の操作部材72の第2のアンロック操作の開始当初は第1ポール31L〜33Lの外歯43及び第2部材20Lの内歯22が噛合状態にあって、前記歯先解除のタイミングでそれらの引っ掛かり抵抗や周辺摩擦抵抗などの操作抵抗がピークに達することになり、当該操作期間は解除リンク105の移動速度を相対的に減少させて、操作荷重が過大になることを抑えるためである。
あるいは、操作荷重の急減のタイミングに合わせて解除リンク105の移動速度を相対的に増加させ、その後のロック機構5L等の動作(例えば第1ポール側係合突部46Lの第1ロック係合面65から第1アンロック係合面62への乗り上げ、即ちメモリ設定等)をより迅速に完了するためである。
ところで、図23に示すように、第1の操作部材71が第1のアンロック操作の状態になるときも、解除リンク105は図示時計回転方向に回動する。このとき、解除リンク105は、当接部106bを当接片109から離脱させるとともに、プーリ107をケーブル75の転向部から離脱させる。つまり、解除リンク105の回動が第2の操作部材72へと伝達されることはない。
一方、第2の操作部材72の第2のアンロック操作に伴い、解除リンク105と共にヒンジ軸91L、連結シャフト92及びヒンジ軸91Rが回動する際には、それらと一体でリンク部材80が回動する。このとき、前述のように長孔81内でのピン77の移動が許容されていることで、リンク部材80の回動が第1の操作部材71へと伝達されることはない。
以上により、第1及び第2の操作部材71,72の一方のアンロック操作によって、第1及び第2の操作部材71,72の他方が揺動することが抑制されている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、速度変更機構Mvにより、第2の操作部材72の操作量に対する解除リンク105(及びカム34L等)の移動量の変化率が、第2の操作部材72の操作位置に応じて変更されることで、該操作位置におけるロック機構5Lの動作に対してより最適な変化率で解除リンク105を移動させることができる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、速度変更機構Mvにより、第2の操作部材72の操作量に対する解除リンク105の回動量(移動量)の変化率が、第2の操作部材72の操作位置に応じて変更されることで、該操作位置におけるロック機構5L等の動作に対してより最適な変化率で解除リンク105を回動(移動)させることができる。
(2)本実施形態では、第2の操作部材72の操作開始時の前段階では、当接片109が解除リンク105の当接部106bから離隔していることで、解除リンク105は、プーリ107を介してケーブル75に引かれることでロアプレート4Lに対して回動(移動)する。従って、解除リンク105の回動量は、第2の操作部材72の操作量に相関するケーブル75の引き量を、プーリ107を挟んでその端末75a側と当接片109側とで二分したものに基づくため、解除リンク105の回動速度を相対的に遅くすることができる。
一方、当接片109が解除リンク105の当接部106bに当接する第2の操作部材72の操作の後段階では、解除リンク105は、当接部106bにおいてケーブル75に引かれることで回動(移動)する。従って、解除リンク105の回動量は、第2の操作部材72の操作量に相関するケーブル75の引き量に基づくため、解除リンク105の回動速度を相対的に速くすることができる。
このように、解除リンク105に配設されたプーリ107等による極めて簡易な構造で、第2の操作部材72の操作位置におけるロック機構5L等の動作に対してより最適な変化率(回動速度)で解除リンク105を移動(回動)させることができる。
(3)本実施形態では、当接片109は、当接部106bに向かって凸となる円弧状に成形されていることで、当接片109及び当接部106bが略線接触の状態で当接することになって、それらの間の力の伝達をより安定化することができる。
(4)本実施形態では、解除リンク105の軸心から当接片109及び当接部106bの当接部位までの距離L1を、解除リンク105の軸心からプーリ107の軸心までの距離L2よりも短く設定した。従って、解除リンク105の軸心からプーリ107の軸心までの距離が、解除リンク105の軸心から当接片109及び当接部106bの当接部位までの距離と同等である場合に比べてそれらの比の値(=L2/L1>1)の乗数分だけ、第2の操作部材72の操作量に対する解除リンク105の回動量(移動量)の変化率(回動速度)を大きくすることができる。
(5)本実施形態では、噛合状態にある第1ポール31L〜33Lの外歯43と第2部材20Lの内歯22とが歯先解除するまでは、解除リンク105の移動速度を相対的に減少させた。このため、操作荷重の急増を抑えることができる。あるいは、第2の操作部材72の誤操作によってロック機構5L等が直ちに誤作動する可能性を低減することができる。
また、前記歯先解除するタイミングに合わせて解除リンク105の移動速度を相対的に増加させた。このため、その後のロック機構5L等の動作(例えば第1ポール側係合突部46Lの第1ロック係合面65から第1アンロック係合面62への乗り上げ、即ちメモリ設定等)をより迅速に完了することができる。
(6)本実施形態では、解除リンク105(カム34L)の回動速度の変更にあたって、ロック機構5L自体を変更する必要がないため、設計負荷を軽減することができる。
(7)本実施形態では、例えば部品ばらつき等で第1ポール側係合突部46Lが第1ロック係合面65から第1アンロック係合面62に乗り上げるときの第2の操作部材72の操作量の方が、第2ポール側係合突部46Rが第2ロック係合面27から第2アンロック係合面26に乗り上げるときの第2の操作部材72の操作量よりも大きくなったとしても、第1ポール31L及び第2ポール31R〜33Rの前記両移動速度の差分でそれらのタイミングずれを抑えることができる。そして、第2の操作部材72による第2のアンロック操作の状態で、シートバックが調整領域を超えて前倒れしているにも関わらず、メモリリング60が第2部材20Lと一体回動不能になること、即ちメモリ位置の設定等が不能になることを抑制できる。
(8)本実施形態では、第2の操作部材72による第2のアンロック操作の状態で、第1ポール側係合突部46Lが第1ロック係合面65から第1アンロック係合面62に乗り上げるときの第1ポール31Lの径方向の移動量は、第2ポール側係合突部46Rが第2ロック係合面27から第2アンロック係合面26に乗り上げるときの第2ポール31R〜33Rの径方向の移動量よりも大きく設定されている。従って、例えば部品ばらつき等で第1ポール側係合突部46Lが第1ロック係合面65から第1アンロック係合面62に乗り上げるときの第2の操作部材72の操作量が、第2ポール側係合突部46Rが第2ロック係合面27から第2アンロック係合面26に乗り上げるときの第2の操作部材72よりも小さくなる可能性を低減できる。このため、例えば第2の操作部材72による第2のアンロック操作の状態で、メモリリング60が第2部材20Lと一体回動しているにも関わらず、即ちメモリ位置の設定等が行われているにも関わらず、シートバックの調整領域を超える前倒れが不能になることを抑制できる。
(9)本実施形態では、第2の操作部材72による第2のアンロック操作の状態での第1ポール31L(32L,33L)及び第2ポール31R〜33Rの動作の推移の設定を、第1ポール側溝カム部44L(内壁面44aL)及び第2ポール側溝カム部44R(内壁面44aR)の形状による極めて簡易な構造で行うことができる。
(10)図5(b)に示すように、本実施形態では、シートバックの調整領域の設定に係る第2部材20L(収容収容23)の係合突部24Lと、メモリ位置の設定等に係る第1ポール31Lの第1ポール側係合突部46Lとは、径方向で共にメモリリング60と係合可能なように該メモリリング60の軸線方向の位置に少なくとも一部が重なるように配置される。従って、例えば第2部材20Lの係合突部24Lをメモリリング60の軸線方向の位置からずらして、該メモリリング60とは独立でシートバックの調整領域の設定を行う場合に比べて、軸線方向への大型化を抑制することができる。
(11)本実施形態では、シートバックが所定の角度位置よりも後倒れの状態(被着座領域)から所定の前倒し位置まで前倒れする場合には、前倒れの解消に伴いシートバックの角度位置を定点復帰位置に設定することができる。従って、第2の操作部材72による第2のアンロック操作の状態で、シートバックが著しく後倒れしている状態から所定の前倒し位置まで前倒れした場合には、前倒れの解消に伴い当該状態、即ち一般的な使用状態には適さない状態に復帰することを回避できる。つまり、シートバックの角度位置を定点復帰位置に設定することで、一般的な使用状態に適した状態にするために改めて角度位置を調整するといった煩わしさを低減することができる。
(12)本実施形態では、第1の操作部材71及び第2の操作部材72により、第1のアンロック操作及び第2のアンロック操作を互いに独立で行うことができ、誤操作を抑制することができる。特に、第1の操作部材71の最大操作量は、第2のアンロック操作に要する操作量よりも小さく設定されていることで、第1の操作部材71が最大限に操作されたとしても、第2のアンロック操作が成立してしまう可能性を低減できる。
(13)本実施形態では、シートバックが着座領域にあるときに所定の前倒し位置まで前倒れした場合には、前倒れの解消に伴いシートバックをメモリ位置に復帰させることができる。
(14)本実施形態では、定点復帰用突部63をメモリリング60の先端(分断部分S)までの一部に配置したことで、例えばメモリリング60の先端まで延在させた場合に比べて縮径する弾性変形をしやすくすることができる。
(第2の実施形態)
図24〜図30を参照してウォークイン機構を備えた車両用シート装置の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、大きくは第1の実施形態の速度変更機構を第2の操作部材側に設置するように変更した構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
図24に示すように、解除リンク105に代わる解除リンク100は、略L字状に成形されており、ヒンジ軸91Lの先端部が嵌挿・固着されている。つまり、解除リンク100は、ヒンジ軸91Lと一体のカム34Lが渦巻きばね35によりロック作動する側の回転方向(図24において反時計回転方向)に常に回動付勢されていることで、それらと共に通常は所定の初期回動位置に保持されている。また、解除リンク100の先端部には、ヒンジ軸91Lを中心とする円弧状の長孔101が形成されている。
そして、ケーブルホルダ104(第2の操作部材)から延びるケーブル125の端末125bは、長孔101に摺動自在に挿通されている。解除リンク100が初期回動位置に保持される状態では、ケーブル125の端末125bは、長孔101の一方の端部(下端部)に位置している。従って、ケーブル125が引かれることで解除リンク100がヒンジ軸91Lと共に回動するようになっている。このとき、ヒンジ軸91Lと一体のカム34Lが渦巻きばね35の付勢力に抗して第2のアンロック作動することは既述のとおりである。
また、図25に示すように、解除リンク100が図示時計回転方向に回動する際には、長孔101内での端末125bの移動が許容されていることで、解除リンク100の回動がケーブル125等へと伝達されることはない。
図26に示すように、第2の操作部材72に代わる第2の操作部材121は、復帰ばね(図示略)によりストッパ74bに当接する初期回動位置(操作角)に付勢・保持されており、該第2の操作部材121側には速度変更機構Mv1が設けられている。すなわち、この第2の操作部材121の長手方向中間部下部には、外側(図26において紙面に直交する手前側)に起立する略L字状のガイド片122が形成されている。このガイド片122には、略U字溝状のケーブル挿通溝122aが形成されている。ガイド片122は、ケーブル挿通溝122aを挟んでその両側部に略平面状の当接部122bを形成する。さらに、第2の操作部材121のガイド片122よりも軸73寄りの中間部には、軸73の軸線と平行な軸線を有するプーリ123が軸支されている。
一方、取付部材6bには、軸73及びプーリ123間の下方で外側(図26において紙面に直交する手前側)に起立する略L字状のケーブル端末保持ブラケット124が固着されている。そして、ケーブルホルダ6cから延びるケーブル125は、ケーブル挿通溝122aを通って上方に延びるとともに、プーリ123に掛装可能にその上方で転向し、更にケーブル端末保持ブラケット124においてその端末125aが係止されている。また、ケーブル125には、ガイド片122及びプーリ123間でガイド片122側に凸となる円弧状の当接片126が固設されている。
このような構成にあって、第2の操作部材121が初期回動位置に保持されているとき、当接部122b及び当接片126は当接されている。従って、当接片126及び当接部122bは、当接片126の円弧形状による略線接触の状態で当接していることで、それらの間の力の伝達がより安定化されている。また、当接部122bは、ケーブル125における当接片126の接線方向に対して傾いている。
そして、図27(a)から図27(b)への変化で示すように、第2の操作部材121が第2のアンロック操作されると、当接部122bに当接片126が押圧されることでケーブル125が引かれる。これにより、解除リンク100は、端末125bにより長孔101の一方の端部(下端部)が押圧されることで、図示時計回転方向に回動する。解除リンク100が回動する。このとき、解除リンク100の回動量は、第2の操作部材121の操作角(操作量)に相関するケーブル125の引き量に基づくため、解除リンク100の回動速度は相対的に遅くなっている。
なお、図27(b)に示すように、当接片126が当接部106bから離脱し始める状態では、それらの当接箇所がケーブル125の中心線上に合致していることで、当接部122bに押圧される当接片126の応答性、即ち解除リンク100の応答性が最大化されている。またこのとき、ケーブル125の転向部にプーリ123が到達している。
従って、図27(b)から図27(c)への変化で示すように、第2の操作部材121の第2のアンロック操作が更に進行すると、ケーブル125は、プーリ123に巻き出されつつ該プーリ123に引かれる。このとき、ケーブル125の引き量は、第2の操作部材121の操作量をプーリ123を挟んでその端末125a側と当接片126側とで二倍したものに基づくため、解除リンク100の回動速度は相対的に速くなっている。
なお、第2の操作部材121の第2のアンロック操作に伴う解除リンク100の回動により、ヒンジ軸91Lと一体のカム34Lが渦巻きばね35の付勢力に抗して第2のアンロック作動することは既述のとおりである。
以上により、前記第1の実施形態に準じて、第2の操作部材121の操作角(操作量)αと、解除リンク105の移動量(回動量)及び第2の操作部材72の操作荷重との関係が得られる(図22参照)。
ところで、図25に示すように、第1の操作部材71の第1のアンロック操作に伴い、リンク部材80と共にヒンジ軸91R、連結シャフト92及びヒンジ軸91Lが回動する際には、それらと一体で解除リンク100が回動する。このとき、前述のように長孔101内での端末125bの移動が許容されていることで、解除リンク100の回動が第2の操作部材121へと伝達されることはない。
また、第2の操作部材121の第2のアンロック操作に伴い、解除リンク100と共にヒンジ軸91L、連結シャフト92及びヒンジ軸91Rが回動する際には、それらと一体でリンク部材80が回動する。このとき、前述のように長孔81内でのピン77の移動が許容されていることで、リンク部材80の回動が第1の操作部材71へと伝達されることはない。
以上により、第1及び第2の操作部材71,72の一方のアンロック操作によって、第1及び第2の操作部材71,72の他方が揺動することが抑制されている。
図24に示すように、解除リンク100の長手方向中間部には、上方に向かってヒンジ軸91Lを中心とする周方向に延出する略弓形の切替片102が形成されている。切替片102の基端部の外周面は、ヒンジ軸91Lを中心とする円形の第1カム面としての作動規制面102aを形成する。また、切替片102の先端部の外周面は、先端に向かうに従って作動規制面102aが沿う円形よりも内周側に向かう略直線状の作動許容面102bを形成する。この切替片102は、シートバックが着座領域にあるときに第2の操作部材72が第2のアンロック操作された場合に、シートバックの後倒れを定点復帰位置(所定の規制角度位置)で規制するストッパ機構110を構成する。
すなわち、図28に併せ示すように、ストッパ機構110は、前記可動フランジ8Lと、前記切替片102と、該切替片102の上方となるロアプレート4Lの後上部(即ち後側ストッパ4bの近傍)でピン111により回動自在に連結されたストッパリンク112と、ストッパリンク付勢部材113とを備えて構成される。
ストッパリンク112は、例えば板材からなり、ヒンジ軸91Lを中心とする周方向に略沿って可動フランジ8Lに向かって延びる略弓形のストッパ片112aを有するとともに、解除リンク100(切替片102)に向かって下方に延びる第2カム面としての略湾状の係合面112bを有する。ストッパリンク112は、基本的にはピン111周りに図示時計回転方向に回動するときに係合面112bが切替片102の外周面に当接することでそれ以上の回動が規制されるようになっている。
ストッパリンク付勢部材113は、例えば捩りコイルばねからなり、ロアプレート4Lに固着されたピン111に一方の端末が係止されるとともに、ストッパ片112aに他方の端末が係止されて、ストッパリンク112をピン111周りに図示時計回転方向に回動する側に付勢する。
ここで、ストッパ機構110の動作について説明する。
図29(a)に示すように、第2の操作部材72が非操作状態にあって、解除リンク100が初期回動位置に保持されているものとする。また、シートバックが着座領域にあって相対的に前傾側寄りにあるものとする。このとき、ストッパリンク付勢部材113により回動付勢されるストッパリンク112は、係合面112bにおいて切替片102の作動規制面102aに当接するようになっている。従って、ストッパリンク112は、係合面112bが作動規制面102aによりヒンジ軸91Lを中心とする径方向外側に相対的に押圧されることで、ストッパ片112aをヒンジ軸91L側に近付けている。そして、ストッパ片112aの外周面は、ヒンジ軸91Lを中心とする周方向に略沿って、可動フランジ8Lよりも内周側に配置されている。
さらに、可動フランジ8Lは、ストッパ片112aの前端よりもシート前方に先行して、該ストッパ片112aの上方を開放している。
そして、図29(b)に示すように、第2の操作部材72が第2のアンロック操作の状態にあると、解除リンク100の図示時計回転方向の回動に伴い、切替片102の作動許容面102bがストッパリンク112の係合面112bに到達することで、即ち切替片102の作動規制面102aがストッパリンク112の係合面112bを解放することで、ストッパリンク付勢部材113に回動付勢されるストッパリンク112のストッパ片112aが可動フランジ8Lの回動軌跡を遮るように突出する。
従って、図29(c)に示すように、この状態でシートバックが後倒れしようとしても、可動フランジ8Lがストッパ片112aに当接した時点でその傾動が規制される。このとき、シートバックは定点復帰位置に設定されるようになっている。
なお、第2の操作部材72の第2のアンロック操作に伴い可動フランジ8Lの回動軌跡を遮るように突出していたストッパ片112aは、第2の操作部材72の解放に伴い、解除リンク100が図示反時計回転方向に回動することで、ストッパ片112aに進入する作動規制面102aに再び押圧される。これにより、ストッパ片112aは、その外周面がヒンジ軸91Lを中心とする周方向に略沿って、可動フランジ8Lよりも内周側に配置されることになる。換言すれば、カム34Lをロック作動させる渦巻きばね35の付勢力は、ストッパリンク付勢部材113の付勢力よりも十分に大きく設定されている。
一方、 図30(a)に示すように、第2の操作部材72が非操作状態にあって、解除リンク100が初期回動位置に保持されているものとする。また、シートバックが非着座領域にあって相対的に後傾側寄りにあるものとする。このとき、可動フランジ8Lは、ストッパ片112aの上方に位置してストッパリンク112のピン111を中心とする図示時計回転方向への回動を規制する。
そして、図30(b)に示すように、第2の操作部材72が第2のアンロック操作の状態にあると、解除リンク100は、可動フランジ8Lにより回動規制されたストッパリンク112を残置したまま図示時計回転方向に回動する。
従って、図30(c)に示すように、ストッパ片112aは、可動フランジ8Lの回動軌跡を開放したままであり、シートバックは、可動フランジ8Lが後側ストッパ4bに当接するまで、即ち大倒し位置に到達するまで後倒れする。
ところで、図25に示すように、第1の操作部材71が第1のアンロック操作の状態になるときも、解除リンク100は図示時計回転方向に回動する。しかしながら、このときの第1の操作部材71の操作量は相対的に小さいことで、解除リンク100(切替片102)は作動規制面102aの範囲内でストッパリンク112の係合面112bに摺接する。従って、シートバックの状態(着座領域又は非着座領域)に関わらず、ストッパリンク112のストッパ片112aが可動フランジ8Lの回動軌跡を遮ることはない。つまり、第1の操作部材71の第1のアンロック操作の状態では、ストッパ機構110に阻害されることなく調整領域内でのシートバックの角度調整が可能となる。
なお、図28において、バックサイドフレーム6a及びロック機構5L間に回動可能に介設された中継リング115は、前上側の径方向に延出する被押圧片115aを有するとともに、後側の径方向に延出するケーブル連結部115bを有する。
被押圧片115aは、シートバックが前傾する際の可動フランジ8Lの回動軌跡上に配置されており、中継リング115は、シートバックの前倒しに伴い可動フランジ8Lに被押圧片115aが押圧されることで一体回動する。一方、ケーブル連結部115bは、ケーブル(図示略)を介して前述のスライドロック装置に連結されている。中継リング115は、前倒し位置へのシートバックの傾動に伴って回動することで、スライドロック装置を解除する。これにより、シートクッションが車両フロアに対し前方にスライド移動される。
また、図28において右下側の渦巻きばね116は、前述のシートクッションに対してシートバックを前傾方向に回動付勢するためのもので、その外端部116aが可動フランジ8Lに係止され、内端部116bが固定フランジ7Lに係止される。
なお、中継リング115及び渦巻きばね116は、シートの反対側にも配設されている。
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)、(3)、(5)〜(14)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、第2の操作部材121の操作開始時の前段階では、ケーブル125は、当接片126が当接部122bに押されることで引かれる。そして、解除リンク100は、ケーブル125に引かれることで回動(移動)する。従って、解除リンク100の回動量は、第2の操作部材121の操作量に相関するケーブル125の引き量に基づくため、解除リンク100の回動速度を相対的に遅くすることができる。
一方、ケーブル125がプーリ123に掛装される第2の操作部材121の操作の後段階では、ケーブル125は、プーリ123に巻き出されつつ該プーリ123に引かれる。そして、解除リンク100は、ケーブル125に引かれることで回動(移動)する。このとき、ケーブル125の引き量は、第2の操作部材121の操作量をプーリ123を挟んでその端末75a側と当接片126側とで二倍したものに基づくため、解除リンク100の回動速度を相対的に速くすることができる。
このように、第2の操作部材121側に配設されたプーリ123等による極めて簡易な構造で、第2の操作部材121の操作位置におけるロック機構5L等の動作により最適な変化率(回動速度)で解除リンク100を移動(回動)させることができる。
(2)本実施形態では、調整領域におけるシートクッションに対するシートバックの傾動、及び所定の前倒し位置までのシートクッションに対するシートバックの傾動を、その軸線周りに集約配置したロック機構5L,5Rで成立させたことで、構造をより簡素化することができる。
(3)本実施形態では、例えば第2の操作部材121の第2のアンロック操作の状態では、作動規制面102aから係合面112bの解放されたストッパリンク112は、ストッパリンク付勢部材113に付勢されてシートバックの後傾方向に相当する可動フランジ8Lの回動軌跡を遮るように回動する。従って、シートバックの後傾方向の傾動を、可動フランジ8Lがストッパリンク112に当接する角度位置(所定の規制角度位置)で規制することができる。
(4)本実施形態では、シートバックが非着座領域(所定角度位置よりも後傾方向に傾動している状態)にあるとき、即ちシートバックが既にある程度の後傾姿勢にあって更に後傾させても支障ないと考えられるときには、ストッパリンク112が可動フランジ8Lの回動軌跡を徒に遮ることを該可動フランジ8Lによって阻止することができる。
(5)本実施形態では、係合面112bは、第1の操作部材71の第1のアンロック操作の状態でも作動規制面102aに当接される。このため、第1の操作部材71の第1のアンロック操作の状態では、係合面112bにおいて作動規制面102aを摺接するストッパリンク112は、可動フランジ8Lの回動軌跡を開放する。従って、シートバックの傾動が、ストッパリンク112により規制されることはなく、調整領域でのシートバックの角度位置の調整を阻害することはない。
(6)本実施形態では、リンク部材80に切替片(102)を形成しても、同様のストッパ機構(110)を構成することができる。つまり、ロック機構のメモリ機能の有無に関わらず、ストッパリンク112等を共用してストッパ機構を構成することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図31に示すように、定点復帰用突部63の割愛された第1アンロック係合面151を有するメモリリング150であってもよい。この場合、シートバックを前倒しするときの角度位置に関わらず、前倒し位置に到達するまで第1アンロック係合面151が第1ポール側係合突部46Lに対して移動し続けることになる。そして、シートバックを引き上げて前倒しを解消すると、メモリリング150と共に第2部材20Lが後方回転することで、第1ポール側係合突部46Lに第1ロック係合面65が到達した時点で、メモリリング150と共に第2部材20Lのそれ以上の後方回転が規制される。つまり、シートバックを前倒しするときの角度位置に関わらず、前倒しを解消することでシートバックをメモリ位置に復帰させることができる。
・前記第1の実施形態において、当接片109及び当接部106bが当接してそれらの当接箇所がケーブル75の中心線上に合致するタイミング(図21(c)に示す状態)は、第1ポール31L〜33Lの外歯43と第2部材20Lの内歯22とが歯先解除するタイミングとずれていてもよい。例えば、当接片109及び当接部106bの当接箇所がケーブル75の中心線上に合致するタイミングに先行するタイミング(例えば図21(b)に示す状態)で、前記歯先解除するように設定してもよい。
・前記第1の実施形態において、解除リンク105の軸心から当接片109及び当接部106bの当接部位までの距離(L1)は、解除リンク105の軸心からプーリ107の軸心までの距離(L2)と同等、若しくはそれよりも長く設定されていてもよい。
・前記第1の実施形態において、解除リンク105の速度変更のために該解除リンク105に軸支するプーリの個数は任意である。
・前記第2の実施形態において、第2の操作部材121の軸心から当接片126及び当接部122bの当接部位までの距離を、第2の操作部材121の軸心からプーリ123の軸心までの距離よりも短く設定してもよい。これにより、例えば第2の操作部材121の軸心からプーリ123の軸心までの距離が、第2の操作部材121の軸心から当接片126及び当接部122bの当接部位までの距離と同等である場合に比べてそれらの比の値の乗数分だけ、第2の操作部材121の操作量に対する解除リンク100の回動量の変化率(回動速度)を大きくすることができ、ひいては解除リンク100の応答性を向上させることができる。
あるいは、第2の操作部材121の軸心から当接片126及び当接部122bの当接部位までの距離は、第2の操作部材121の軸心からプーリ123の軸心までの距離と同等、若しくはそれよりも長く設定されていてもよい。
・前記第2の実施形態において、解除リンク105の速度変更のために第2の操作部材121に軸支するプーリの個数は任意である。
・前記第2の実施形態において、第2の操作部材121及びヒンジ軸91Lの連結構造は一例であって、例えば第2の操作部材121から延びるケーブル125の端末125bをヒンジ軸91Lに直結してもよい。
・前記第2の実施形態において、ストッパ機構110を割愛してもよい。
・前記各実施形態においては、第2の操作部材72,121の最大操作角(α2)が従来例と共通であることを前提に、解除リンク100,105の回動速度を変更した。これに対し、例えば第2の操作部材72,121の最大操作角を従来例よりも縮小するために、解除リンク100,105の回動速度を変更してもよい。
・前記各実施形態において、当接片109,126を平面状に成形するとともに、当接部106b,122bを当接片109,126に向かって凸となる円弧状に成形してもよい。あるいは、当接片109,126及び当接部106b,122bを共に平面状に成形してもよい。
・前記各実施形態において、ケーブル75,125は、第2の操作部材72,121及び解除リンク100,105間の撓みを吸収できるのであれば、外筒Tに収容されていなくてもよい。
・前記各実施形態においては、第2の操作部材72,121の操作量(操作角α)に応じて前段階及び後段階の2段階で解除リンク100,105の回動速度(移動速度)を変更したが、3段階以上で解除リンク100,105の回動速度(移動速度)を変更してもよい。
・前記各実施形態において、速度変更機構は、ギヤ機構やカム機構、リンク機構、あるいはそれらの組み合わせで構成してもよい。
・前記各実施形態において、メモリリング60の定点復帰用突部63による定点復帰位置は、その配置変更によって任意に設定することができる。ただし、シートバックの角度位置が定点復帰位置よりも後傾側にあるとメモリ位置の設定等が機能しなくなることから、例えばニュートラル位置よりも後傾側に設定することがより好ましい。
・前記各実施形態において、メモリリング60の定点復帰用突部(63)は、メモリリング60の先端(分断部分S)まで延在していてもよい。
・前記各実施形態において、メモリリング60,150は、縮径するように弾性変形可能であれば、分断部分Sを有しない繋がった円環状であってもよい。
・前記各実施形態において、第1の操作部材71及びヒンジ軸91Rの連結構造は一例であって、例えば第1の操作部材71をヒンジ軸91Rに直結してもよい。
・前記各実施形態において、第1の操作部材71及び第2の操作部材72,121と、ヒンジ軸91R,91Lとの連結関係は逆であってもよい。
・前記各実施形態において、第2部材20L(収容収容23)の係合突部24Lを、第1ポール31L〜33Lの第1ポール側係合突部46Lと係合させてシートバックの調整領域を設定してもよい。つまり、シートバックの調整領域の設定に係る第2部材20L(収容収容23)の係合突部24Lと、メモリ位置の設定等に係る第1ポール31Lの第1ポール側係合突部46Lとが、メモリリング60の軸線方向の位置に重ならないように配置されていてもよい。
あるいは、メモリ機能付きのロック機構(5L)は、シートバックの調整領域の設定機能(係合突部24L及び回動許容部61)を有していなくてもよい。
・前記各実施形態において、ロック機構5Lに代えて、ロック機構5Rの左右対称構造を有するものを設けてもよい。つまり、メモリ機能を搭載しないロック機構を採用してもよい。
・前記各実施形態において、ロック機構5Rに代えて、ロック機構5Lの左右対称構造を有するものを設けてもよい。つまり、左右のロック機構として、共にシートバックの調整領域の設定機能(係合突部24L及び回動許容部61)及びメモリ機能を有する付きロック機構(5L)を採用してもよい。
・前記各実施形態において、ロック機構5Lのポールの個数は、複数であれば任意であり、要求されるロック強度やフルメモリ範囲等に応じて適宜の個数を採用すればよい。また、複数のポールは、全てが互いに同一形状を有していてもよいし、全てが互いに異なる形状を有していてもよい。さらに、複数のポールは等角度間隔に配置されていなくてもよいし、それらの移動方向もヒンジ軸91Lの径方向に完全に一致していなくてもよい。
・前記各実施形態において、ロック機構5Rのポールの個数は任意であり、要求されるロック強度等に応じて適宜の個数を採用すればよい。また、複数のポールは、全てが互いに同一形状を有していてもよいし、全てが互いに異なる形状を有していてもよい。さらに、複数のポールは等角度間隔に配置されていなくてもよいし、それらの移動方向もヒンジ軸91Rの径方向に完全に一致していなくてもよい。
また、複数のポールのうちの一つをカム34Rに連結してそのアンロック作動に連動させ、それ以外のポールを適宜の連結部材を介してカム34Rのアンロック作動に連動させるようにしてもよい。
・前記各実施形態において、ロック機構5R単独でのシートバックの調整領域は、少なくともロック機構5L単独でのシートバックの調整領域を含むのであればそれと異なっていてもよい。この場合であっても、ロック機構5Rがロック機構5Lに追従して動作することで、装置全体としてはメモリ位置の設定や調整領域の設定が同様に可能である。ただし、調整領域の設定には、ロック機構5L,5R(係合突部24L,24R)が協働することが強度的にはより好ましい。
・前記各実施形態において、ロアプレート4L,4Rは、第1部材10L,10Rにそれぞれ一体形成されていてもよい。同様に、両バックサイドフレーム6aは、第2部材20L,20Rにそれぞれ一体形成されていてもよい。
・前記各実施形態において、ロック機構5Lの第1部材10L及び第2部材20Lと、シートクッション側(ロアプレート4L)及びシートクッション側(バックサイドフレーム6a)の固定関係は逆であってもよい。同様に、ロック機構5Rの第1部材10R及び第2部材20Rと、シートクッション側(ロアプレート4R)及びシートクッション側(バックサイドフレーム6a)の固定関係は逆であってもよい。
・前記各実施形態において、両ヒンジ軸91L,91Rの少なくとも一方と、連結シャフト92とを一体形成してもよい。
・前記各実施形態において、第1の操作部材71を割愛して、第2の操作部材72,121の操作量を切り替えて、第1及び第2のアンロック操作を行うようにしてもよい。
・前記各実施形態において、第2の操作部材72,121は、シートクッション後部(後席側の足元)に配置されていてもよい。
・本発明は、ウォークイン機構を備えない車両用シート装置に具体化してもよい。
・本発明は、車両用シートスライド装置やリフタ装置等、その他のシート調整機構に適用してもよい。