以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る電極は、金属酸化物を含む活物質粒子及び導電剤を含む活物質含有層を有する。活物質含有層の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析により得られた、導電剤に帰属される抵抗値1MΩ以下の領域に含まれる粒子の真円度の加重平均値は、0.05以上0.4以下である。真円度の加重平均値は、粒子の面積により重み付けられている。
第1の実施形態に係る二次電池は、正極と、負極と、電解質とを備えている。この正極は、金属酸化物を含む活物質粒子と、導電剤とを含む正極活物質含有層を有する。そして、正極活物質含有層の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析を行うことにより得られた面積で重み付けされた真円度の加重平均値は、0.05以上0.4以下である。この面積及び真円度は、上記画像について二値化解析を行うことにより得られた、導電剤に帰属される抵抗値1MΩ以下の領域に含まれる粒子のものである。
このような電池は、高い電極密度と優れたレート特性とを実現することができる。この理由について、以下に説明する。
先ず、正極活物質含有層の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析を行うことにより得られた抵抗値が1MΩ以下の領域に含まれる粒子の真円度Rは、下記式(1)で表されるように、粒子の面積Sと、粒子の周囲長Lとから求めることができる。
R=4π×S/L2 (1)
この真円度Rは、正極に含まれる導電剤粒子の断面形状の円形度を表す指標として用いることができる。この真円度Rが1に近いと、正極に含まれる導電剤粒子の断面形状が真円に近い形状であることを意味している。また、この真円度Rが0に近いと、正極に含まれる導電剤粒子の断面形状が、真円から遠い、すなわち、アスペクト比が高い形状であることを意味している。ここで、アスペクト比とは、長辺LOと短辺SHとの比率LO/SHを意味している。
次に、このようにして算出された、各導電剤粒子の面積S及び真円度Rから、下記式(2)に示すように、面積Sで重み付けられた粒子の真円度の加重平均値IAを算出する。
IA=Σ(S×R)/ΣS (2)
この真円度の加重平均値IAは、すべての導電剤粒子のうち、面積Sが大きく、かつ、真円度Rが高い断面形状を有する導電剤粒子が占める割合が高いと、大きい傾向にある。そして、この加重平均値IAが0.4よりも大きい正極は、電極密度が低く、正極内部における導電剤のネットワークの均一性が不十分な状態にある。
また、この真円度の加重平均値IAは、すべての導電剤粒子のうち、面積Sが小さいか、又は、真円度Rが小さい断面形状を有する導電剤粒子が占める割合が高いと、小さい傾向にある。そして、この加重平均値IAが0.05よりも小さい正極は、導電剤の含有量が少なすぎるために、導電剤のネットワークの形成が不十分であることを意味している。
第1の実施形態に係る電池において、この真円度の加重平均値IAは、0.05以上0.4以下の範囲内にある。真円度の加重平均値IAがこの範囲内にある正極は、導電剤が活物質粒子の表面を比較的均一に被覆した状態にある。このような正極は、高い電極密度と、十分な気孔率とを達成可能である。それゆえ、この正極を備えた第1の実施形態に係る電池は、高いエネルギー密度と、優れたレート特性とを実現することができる。
この真円度の加重平均値IAは、0.1以上0.4以下の範囲内にあることが好ましく、0.2以上0.4以下の範囲内にあることがより好ましく、0.25以上0.4以下の範囲内にあることが更に好ましい。
次に、この加重平均値IAの測定方法について説明する。
先ず、完全な放電状態とする。ここで、完全な放電状態とは、0.1Cの放電レートで、電池電圧が1.5Vに達するまで電池を放電した状態を意味している。次いで、この電池から、正極を取り出す。次いで、この正極を非水溶媒を用いて十分に洗浄して、正極から電解質(例えば非水電解質)を除去する。なお、非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネートを用いる。
次に、正極活物質含有層の一部を、例えば、イオンミリング法により除去して、正極活物質含有層の面内方向に水平面を露出させる。この面は、正極活物質含有層の面内方向の中央部と交わる面である。この面における長辺方向の中央部と短辺方向の中央部とが交差する点を、測定点とする。
次に、この正極活物質含有層の測定点について、走査型広がり抵抗顕微鏡(SSMR)を用いて、例えば、5000倍の倍率で観察する。次いで、このSEM像においてある領域を抽出し、この領域の抵抗値を測定する。この測定により、正極活物質含有層の抵抗分布画像を得る。走査型広がり抵抗顕微鏡としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社製E-sweepを用いることができる。抵抗値測定用の探針としては、例えば、曲率半径が100nmである導電性ダイヤモンドコーティング単結晶シリコンを用いることができる。
次に、この画像について、二値化解析を行う。この二値化解析は、抵抗値が1MΩ以下の領域と、抵抗値が1MΩより大きい領域とで異なる色となるように行う。例えば、色相が20以下の領域、すなわち、抵抗値が1MΩ以下の領域を黒色とし、色相が20より大きい領域、すなわち、抵抗値が1MΩより大きい領域を白色となるように閾値を設定して、二値化解析を行う。ここで、抵抗値が1MΩ以下の領域とは、正極において導電剤に帰属される領域である。また、抵抗値が1MΩより大きい領域とは、正極において導電剤以外の成分に帰属される領域、例えば、正極活物質粒子及び結着剤に帰属される領域である。
次に、二値化解析を行った画像における抵抗値が1MΩ以下の領域に含まれる粒子の各々について、面積S及び真円度Rを算出する。抵抗値が1MΩ以下の領域に含まれる粒子の数は、100以上10000以下とする。この抵抗値が1MΩ以下の領域に含まれる粒子とは、導電剤の粒子を意味している。なお、この面積S及び真円度Rの算出には、二値化解析後の画像について、画像処理ソフトウェアの粒子解析機能を用いる。
このようにして算出した面積S及び真円度Rから、加重平均値IAを算出する。この加重平均値IAにより、正極における導電剤の分散性を把握することができる。この理由について以下に説明する。
先ず、正極活物質含有層において正極活物質粒子同士の間には、複数の隙間が設けられている。この隙間、すなわち、正極において正極活物質粒子を除く領域の断面形状は、比較的アスペクト比の低い形状にあると考えられる。したがって、この正極における全ての正極活物質粒子を除く領域の断面形状を、面積で重み付けして平均値化した場合、その断面形状は、円形に近づくと考えられる。なお、正極活物質粒子の種類や、正極活物質粒子の平均粒径などが異なっていても、この傾向は見られると考えられる。
実際の正極活物質含有層では、正極活物質粒子の表面の少なくとも一部は、導電剤で被覆されている。したがって、正極活物質含有層における正極活物質粒子を除く領域に、導電剤が存在している。また、正極活物質含有層が結着剤を含んでいる場合、この正極活物質粒子を除く領域には、結着剤も存在している。
ここで、結着剤は、典型的には、正極活物質粒子を均一に被覆している。したがって、結着剤を含む正極活物質含有層における正極活物質粒子及び結着剤を除く領域の断面形状は、結着剤を含まない正極活物質含有層における正極活物質粒子を除く領域の断面形状と同じく、比較的アスペクト比が低いと考えられる。それゆえ、結着剤を含む正極活物質含有層における全ての正極活物質粒子及び結着剤を除く領域の断面形状を、面積で重み付けして平均値化した場合、その断面形状は、円形に近づくと考えられる。また、その円形度は、結着剤を含まない正極活物質含有層において正極活物質粒子を除く領域の円形度と同じ程度であると考えられる。
ここで、導電剤は、比表面積が大きな微粒子の形態にある。それゆえ、導電剤は、正極活物質粒子及び結着剤を除く領域において、凝集しやすい傾向にある。そして、導電剤の凝集体により、正極活物質粒子及び結着剤を除く領域が充填されると、この領域における導電剤の断面形状は、この領域の断面形状に近づくと考えられる。そして、上述したように、正極活物質粒子及び結着剤を除く領域の断面形状は、円形に近いと考えられる。したがって、正極におけるすべての正極活物質粒子及び結着剤を除く領域のうち、導電剤の凝集体により充填された領域の割合が高い場合、導電剤の断面形状について、面積で重み付けして平均値化すると、その断面形状は、円形に近づくと考えられる。
一方、正極活物質含有層内において導電剤が均一に分散し、正極活物質粒子の表面を比較的均一に被覆している場合、正極における導電剤の断面形状は、比較的アスペクト比が高いと考えられる。なお、この傾向は、導電剤として、グラフェンやカーボンナノチューブ(CNT)などを用いた場合に特にみられる。そして、導電剤が正極活物質粒子の表面を比較的均一に被覆している正極活物質含有層では、すべての正極活物質粒子及び結着剤を除く領域のうち、導電剤の凝集体により充填された領域の割合は、比較的低い傾向にある。したがって、正極活物質含有層において比較的均一に分散した導電剤の断面形状について、面積で重み付けして平均値化した場合、その断面形状は、比較的アスペクト比が高いと考えられる。
以上のことから、正極活物質含有層における導電剤の断面形状について得られた、面積Sで重み付けられた真円度Rの加重平均値IAと、正極におけるすべての細孔のうち、導電剤の凝集体により充填された細孔の割合とは、正の相関関係にあるということができる。したがって、この加重平均値IAが大きいということは、正極活物質含有層におけるすべての細孔のうち、導電剤の凝集体により充填された細孔が占める割合が高いということができる。また、この加重平均値IAが小さいということは、正極活物質含有層におけるすべての細孔のうち、導電剤の凝集体により充填された細孔が占める割合が低いということができる。したがって、正極活物質含有層について上述した加重平均値IAを求めることにより、正極における導電剤の分散性を把握することができる。
次に、第1の実施形態に係る二次電池として、例えば非水電解質電池の詳細を説明する。
この非水電解質電池は、正極と、負極と、非水電解質とを含んでいる。第1の実施形態に係る非水電解質電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。正極、負極及びセパレータは、電極群を構成することができる。非水電解質は、電極群に保持され得る。
また、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、電極群及び非水電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
更に、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、正極に電気的に接続された正極端子及び負極に電気的に接続された負極端子を更に具備することができる。
以下、正極、負極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
1)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、金属酸化物からなる正極活物質粒子と、導電剤とを含んでいる。
正極活物質含有層の電極密度は、3.0g/cc以上であることが好ましく、3.4g/cc以上であることがより好ましい。電極密度が高い正極を備えた電池は、エネルギー密度が高い傾向にある。
この正極活物質含有層の電極密度は、例えば、以下の方法により求めることができる。
先ず、加重平均値IAの測定方法において説明したのと同様の方法で、完全な放電状態の電池から正極を取り出す。次いで、この正極を非水溶媒を用いて十分に洗浄して、正極から非水電解質を除去する。なお、非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネートを用いる。次いで、洗浄後の正極の一部を、一辺が5cmの正方形の形状に打ち抜いて、試料を得る。次いで、この試料の中央部及び端部の計5点の厚さを測定して、平均厚さLを得る。次いで、この平均厚さLから、正極集電体の厚さMを除き、正極活物質含有層の厚さL―Mを求める。次いで、この試料の質量Oを計測する。次いで、この試料の質量Oから、正極集電体の質量Pを除き、正極活物質含有層の質量O−Pを得る。この質量O−Pから、単位面積あたりの正極活物質含有層の質量Wを算出する。次いで、この単位面積当たりの正極活物質含有層の質量Wについて正極活物質含有層の厚さL−Mで除することにより、正極活物質含有層の電極密度を求めることができる。
正極活物質含有層の気孔率は、20%以上35%以下の範囲内にあることが好ましく、22%以上30%以下の範囲内にあることが好ましい。
この気孔率は、例えば、水銀圧入法により得ることができる。具体的には、先ず、加重平均値IAの測定方法において説明したのと同様の方法で、完全な放電状態の電池から正極を取り出す。次いで、この正極を非水溶媒を用いて十分に洗浄して、正極から非水電解質を除去する。なお、非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネートを用いる。次いで、この正極をおよそ1.25cm×2.5cmの大きさとなるように切断して、試料を得る。次いで、このようにして得た16枚の試料を5cc大片用標準セルにセットする。なお、セルのステム容積は0.4ccとする。次いで、試料に圧力を加えることにより、気孔率を測定する。なお、初期圧力はおよそ5kPaとする。この初期圧力は、およそ0.7psiaに相当し、また、250μmの細孔直径に相当する。この装置としては、例えば、島津オートポア9520(Autopore 9520 model manufactured by Shimadzu Corporation)を用いることができる。
正極活物質含有層は、1種類の正極活物質を含んでいてもよく、或いは2種類以上の正極活物質を含んでいてもよい。
金属酸化物を含む正極活物質粒子としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1-x-yCoxMnyO2;0<x<1、0<y<1、x+y<1)が含まれる。活物質として、これらの化合物を単独で用いてもよく、或いは、複数の化合物を組合せて用いてもよい。
より好ましい正極活物質の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1-x-yCoxMnyO2;0<x<1、0<y<1、x+y<1)が含まれる。これらの正極活物質を用いると、正極電圧を高めることができる。
更に好ましい正極活物質の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1、LiMn1-x-yFexAyPO4(0≦x≦1、0≦y≦0.1、A=Mg,Ca,Al,Ti,Zn,及びZrからなる群より選択される少なくとも一つの元素))及びリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-x-yCoxMnyO2;0<x<1、0<y<1、x+y<1、LiNixMnyCo1-x-yO2;0.3≦x≦0.8、0.1≦y≦0.4、x+y<1)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
正極活物質としては、Li又はLiイオンを吸蔵及び放出することができる硫化物を用いてもよい。このような硫化物としては、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)を挙げることができる。
電池の非水電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
正極活物質のタップ密度は、2.5g/cc以上であることが好ましい。正極活物質のタップ密度に上限値は特にないが、一例によると、3.2g/ccである。正極活物質のタップ密度が高いと、正極の電極密度が高い傾向にある。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、負極活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)のような炭素材料が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。
導電剤としては、アスペクト比が高い炭素材料を用いることが好ましい。アスペクト比が高い炭素材料は、正極活物質を均一に被覆しやすい傾向にある。上記アスペクト比を有するグラフェン、カーボンナノファイバー、及びカーボンナノチューブなどを導電剤として用いると、正極活物質含有層の電極密度及び気孔率を高めることができる。
導電剤のタップ密度は、正極活物質のタップ密度よりも小さいことが好ましい。
また、導電剤としては、分散性が高められたものを用いることが好ましい。導電剤の分散性を高める技術としては、炭素材料の表面に官能基を導入すること、及び炭素材料の表面に分散剤を吸着させることを挙げることができる。このように分散性が高められた導電剤を用いると、正極内での導電剤の凝集が抑制され、正極活物質を比較的均一に被覆することができる。
炭素材料の表面に導入される官能基の例としては、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基、フェニル基、アルキル基、及びアミノプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。炭素材料の表面に導入される官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、フェニル基、及びアミノプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
ここで、正極活物質含有層は、正極活物質と導電剤とその他の任意成分と溶媒とを含むスラリーを、正極集電体上に塗布することにより形成される。そして、この溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)などの有機溶媒が用いられている。したがって、導電剤と、この溶媒との親和性を高めることにより、正極における導電剤の分散性を高めることができる。NMPとの親和性を高めるという観点からは、炭素材料の表面に、疎水性の官能基及び親水性の官能基の少なくとも一方を導入することが好ましい。疎水性の官能基としては、フェニル基、アミノアルキル基、及びアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを導入することが好ましい。親水性の官能基としては、ヒドロキシル基を導入することが好ましい。
これらの官能基は、例えば、種々の化学反応、電気化学反応、熱処理又はこれらを組み合わせることにより、炭素材料の表面に導入することができる。複数の官能基を導入できるという点では、化学反応法により、炭素材料の表面に官能基を導入することが好ましい。以下に、各官能基の導入方法の一例について説明する。
カルボキシル基及びヒドロキシル基は、例えば、以下の方法により炭素材料に導入することができる。先ず、硝酸、硫酸、塩酸、及び過酸化水素水などを含む酸性水溶液と、炭素材料とを混合し、この混合液を撹拌する。次いで、この混合液から溶媒を蒸発させて、粉末を得る。この粉末を乾燥させることにより、カルボキシル基及びヒドロキシル基の少なくとも一方が導入された導電剤を得ることができる。
ニトロ基は、例えば、以下の方法により炭素材料に導入することができる。先ず、炭素材料に、ハロゲンガスを噴射して、ハロゲン化された炭素材料を得る。なお、ハロゲンガスとしては、例えば、フッ素ガスを用いることができる。次いで、このハロゲン化された炭素材料と発煙硝酸とを混合し、この混合液を還流して、ラジカル反応を生じさせる。次いで、この混合液から溶媒を蒸発させて、粉末を得る。この粉末を乾燥させることにより、ニトロ基が導入された導電剤を得ることができる。なお、炭素材料をハロゲン化する処理は、省略してもよい。
アミノ基は、例えば、以下の方法により炭素材料に導入することができる。先ず、上述した方法により得られた、ニトロ基が導入された導電剤を準備する。次いで、このニトロ基が導入された導電剤と、還元剤とを反応させて、ニトロ基をアミノ基で置換する。還元剤としては、例えば、ハイドロサルファイドナトリウム又は水素を挙げることができる。このようにして、アミノ基が導入された導電剤を得ることができる。
アルキル基又はフェニル基は、例えば、以下の方法により炭素材料に導入することができる。先ず、上述した方法により得られたハロゲン化された炭素材料を準備する。次いで、このハロゲン化された炭素材料とグリニャール試薬とを、エーテル溶媒中で撹拌することにより反応させる。グリニャール試薬としては、例えば、臭化フェニルマグネシウム及び臭化アルキルマグネシウムなどを挙げることができる。次いで、この分散液から炭素材料をろ別し、乾燥させることにより、アルキル基又はフェニル基が導入された導電剤を得ることができる。
アミノアルキル基は、例えば、以下の方法により炭素材料に導入することができる。先ず、炭素材料と、ニトリル化合物溶液とを、アルゴン雰囲気下で混合して、混合液を得る。ニトリル化合物溶液としては、例えば、プロパンニトリルを用いることができる。次いで、この混合液に紫外線を照射して、ニトリル化合物溶液を蒸発させる。紫外線照射装置としては、例えば、キセノンランプを用いることができる。このようにして、アミノアルキル基が導入された導電剤を得ることができる。
炭素材料の表面に導入された官能基の量又は構造は、例えば、X線光電子分光分析(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)により確認することができる。
このような官能基が導入された導電剤において、構成元素に占める炭素以外の元素の原子濃度は、4原子数%以上6.5原子数%以下の範囲内にあることが好ましい。導電剤の構成元素に占める炭素以外の元素の原子濃度が、この範囲内にある導電剤は、正極において十分な分散性を有している。したがって、このような導電剤を用いると、正極の正極密度及び気孔率を高めることができる。
官能基が導入された導電剤において、構成元素に占める炭素以外の元素の原子濃度は、4.3原子数%以上6.2原子数%以下の範囲内にあることがより好ましく、4.3原子数%以上5原子数%以下の範囲内にあることが更に好ましい。
この導電剤の構成元素に占める炭素以外の元素の原子濃度は、XPS表面分析により算出することができる。
具体的には、先ず、インジウムなどの金属に導電剤を押し込み、測定用サンプルを作成する。次いで、この測定用サンプルについて、XPS分析を行い、XPSスペクトルを得る。次いで、このXPSスペクトルを解析して、導電剤の構成元素に占める炭素以外の元素の原子濃度(原子%)を得る。XPS装置としては、例えば、PHI社製;ESCA−5800を用いることができる。この分析に際しては、X線をAlKαとし、測定エリアの径を800μmとする。
正極活物質含有層における導電剤の量は、エネルギー密度及び正極の気孔率を高めるという観点からは、100質量部の正極活物質粒子に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが更に好ましい。正極活物質含有層における導電剤の量が少ないと、正極の電極密度と、単位質量当りの正極活物質の量と、正極の気孔率とを高めることができる。
正極活物質含有層における導電剤の量は、正極の内部抵抗を低減するという観点からは、100質量部の正極活物質粒子に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。正極活物質含有層における導電剤の量が多いと、正極内に良好な導電剤のネットワークを形成することができる。
正極活物質含有層における導電剤の含有量は、正極を分析することにより算出することができる。この方法としては、例えば、熱重量―示差熱同時分析計(TG−DTA:Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)と自動炭素分析装置とを併用する方法を挙げることができる。
具体的には、先ず、電池を完全な放電状態にする。ここで、完全な放電状態とは、0.1Cのレートで、電池電圧が1.5Vに達するまで電池を放電した状態を意味している。次いで、この電池から、正極を取り出して、正極活物質含有層の一部を削り取る。次いで、この削り取った試料を、100℃乃至130℃の範囲内の温度で乾燥させて、粉末試料を調製する。次いで、粉末試料を、TG−DTAにセットし、例えば、常温から300℃の温度に達するまで粉末試料を加熱して、加熱後の試料の質量を測定する。なお、空気流入量は、例えば、100ml/分とし、昇温速度は、例えば、10℃/分とする。次いで、加熱前の粉末試料の質量から、加熱後の粉末試料の質量を減じて、質量減少量Aを算出する。
ここで、この温度範囲内における質量減少量Aは、正極活物質に含まれる結着剤に由来のものであるということができる。すなわち、結着剤の熱分解温度は、典型的には、300℃以下である。これに対して、正極活物質及び導電剤の熱分解温度は、典型的には、300℃より高い。そして、正極活物質含有層は、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とからなる。したがって、TG−DTA分析により得られた質量減少量Aとは、正極活物質含有層に含まれる結着剤の質量A’ということができる。
次に、上述した方法で用いた粉末試料と同量の粉末試料を、自動炭素分析装置にセットして、粉末試料に含まれる炭素の質量を算出する。ここで、正極活物質の構成成分には、典型的には、炭素元素は含まれない。したがって、自動炭素分析装置により算出された粉末試料に含まれる炭素の質量とは、導電剤に含まれる炭素の質量Bと、結着剤に含まれる炭素の質量Cとの合計量(B+C)であるといえる。
ここで、結着剤は、典型的には、炭素骨格を含んでいる。したがって、TG−DTA分析により得られた結着剤の質量A’と、結着剤に含まれる炭素の質量Cとは、ほぼ同じ値を示すと考えられる。そして、上述したように、導電剤は、炭素材料からなる。したがって、導電剤に含まれる炭素の質量Bとは、導電剤の質量B’を意味するということができる。
以上のことから、自動炭素分析装置により算出された粉末試料に含まれる炭素の質量(B+C)から、TG−DTAによる分析により得られた粉末試料の質量減少量Aを減じることにより、粉末試料中の導電剤の質量B’を算出することができる。そして、この導電剤の質量B’から、正極活物質含有層における導電剤の質量の割合を算出することができる。
正極活物質含有層は、正極活物質粒子及び導電剤の他に、分散剤や、結着剤などを含んでいてもよい。
分散剤は、炭素材料の表面に吸着して、炭素材料の分散性を向上させる。したがって、正極に分散剤を加えることにより、正極に含まれる導電剤の分散性を向上させることができ、それゆえ、正極の電極密度と気孔率とを高めることができる。
分散剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン又はこれらの混合物を用いることができる。
正極活物質含有層における分散剤の量は、100質量部の正極活物質粒子に対して、0.005質量部以上0.03質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上0.02質量部以下の範囲内であることがより好ましい。
この分散剤は、正極活物質と、導電剤と、任意成分とを含む正極スラリーに添加することにより、正極活物質含有層に含有させることができる。ここで、導電剤とは、炭素材料の表面に官能基が導入されたものを用いてもよく、炭素材料を用いてもよい。また、この分散剤は、炭素材料と分散剤との混合液を用いて正極に含有させてもよい。すなわち、例えば、この混合液を正極スラリーに添加することにより、分散剤を正極に含有させてもよい。また、この混合液の溶媒を蒸発させることにより、表面に分散剤が吸着担持された導電剤を調製し、この導電剤を正極スラリーに添加することにより、分散剤を正極に含有させてもよい。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafuloro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、及びイミド化合物が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
電極強度を高めるという観点からは、正極活物質含有層における結着剤の量は、100質量部の正極活物質粒子に対して、0.2質量部以上の割合で配合することが好ましく、1質量部以上の割合で配合することがより好ましい。
また、絶縁体の量の減少させ、電極の内部抵抗を低下させるという観点からは、正極活物質含有層における結着剤の量は、100質量部の正極活物質粒子に対して、10質量部以下の割合で配合することが好ましく、5質量部以下の割合で配合することがより好ましい。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤などの任意成分を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、正極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、正極活物質含有層と正極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を作製する。或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤などの任意成分を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを正極集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
2)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
負極活物質の例には、チタン含有酸化物が挙げられる。チタン含有酸化物の例に、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブチタン酸化物、ナトリウムニオブチタン酸化物が含まれる。チタン含有酸化物のLi吸蔵電位は、1V(vs.Li/Li+)以上3V(vs.Li/Li+)以下の範囲内にあることが望ましい。負極活物質は、これらチタン含有酸化物を1種、または2種以上含むことができる。
チタン酸化物の例に、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、アナターゼ構造のチタン酸化物が含まれる。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成をTiO2、充電後の組成をLixTiO2(xは0≦x≦1)で表すことができる。また、単斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO2(B)と表すことができる。
リチウムチタン酸化物の例に、スピネル構造のリチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi5O12(xは−1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi3O7(−1≦x≦3))、Li1+xTi2O4(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8O4(0≦x≦1)、Li1.07+xTi1.86O4(0≦x≦1)、LixTiO2(0<x≦1)などが含まれる。また、リチウムチタン酸化物は、例えばこれらスピネル構造またはラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物に異種元素が導入されているリチウムチタン複合酸化物を含む。
ニオブチタン酸化物の例に、LiaTiMbNb2±βO7±σ(0≦a≦5、0≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe,V,Mo及びTaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表されるものが含まれる。
ナトリウムニオブチタン酸化物の例に、一般式Li2+vNa2-wM1xTi6-y-zNbyM2zO14+δ(0≦v≦4、0<w<2、0≦x<2、0<y≦6、0≦z<3、y+z<6、−0.5≦δ≦0.5、M1はCs,K,Sr,Ba,Caよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、M2はZr,Sn,V,Ta,Mo,W,Fe,Co,Mn,Alよりなる群から選択される少なくとも1つを含む)で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物が含まれる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、負極活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素材料が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、上述した分散性を高めた導電剤を用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、負極活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋め、また、負極活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、及びスチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、及びイミド化合物が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
負極活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と負極集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
負極集電体は、負極活物質のリチウムイオンの吸蔵及び放出電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。負極集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。負極集電体の厚さは、5μm以上20μm以下の範囲内にあることが好ましい。このような厚さを有する負極集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と非水電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と負極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを負極集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
3)電解質
電解質としては、液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
電解質の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、及びスルホラン(SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
また、前記非水電解質に代えて水系電解質を使用することも可能である。
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100ppm以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に搭載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車、鉄道用車両等の車両に搭載される大型電池用外装部材であってもよい。
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のリチウムイオン吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成されることができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対する電位が3V以上4.5V以下の範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成される。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
次に、第1の実施形態に係る非水電解質電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る非水電解質電池の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す非水電解質電池のA部を拡大した断面図である。
図1及び図2に示す非水電解質電池100は、図1に示す袋状外装部材2と、図1及び図2に示す電極群1と、図示しない非水電解質とを具備する。電極群1及び非水電解質は、外装部材2内に収納されている。非水電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図1に示すように、電極群1は、扁平状の捲回電極群である。扁平状の捲回電極群1は、図2に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回電極群1の最外殻に位置する部分は、図2に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図1に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、最外殻に位置する負極3の負極集電体3aの一部に接続されている。また、正極端子7は、最外殻に位置する正極5の正極集電体5aに接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2は、その内面に配置された熱可塑性樹脂層により、熱融着されている。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、図1及び図2に示す構成の非水電解質電池に限らず、例えば図3及び図4に示す構成の電池であってもよい。
図3は、第1の実施形態に係る非水電解質電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図4は、図3に示す非水電解質電池のB部を拡大した断面図である。
図3及び図4に示す非水電解質電池100は、図3及び図4に示す電極群11と、図3に示す外装部材12と、図示しない非水電解質とを具備する。電極群11及び非水電解質は、外装部材12内に収納されている。非水電解質は、電極群11に保持されている。
外装部材12は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群11は、図4に示すように、積層型の電極群である。積層型電極群11は、正極13と負極14とをその間にセパレータ15を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群11は、複数の正極13を含んでいる。複数の正極13は、それぞれが、正極集電体13aと、正極集電体13aの両面に担持された正極活物質含有層13bとを備えている。また、電極群11は、複数の負極14を含んでいる。複数の負極14は、それぞれが、負極集電体14aと、負極集電体14aの両面に担持された負極活物質含有層14bとを備えている。各負極14の負極集電体14aは、その一辺が負極14から突出している。突出した負極集電体14aは、帯状の負極端子16に電気的に接続されている。帯状の負極端子16の先端は、外装部材12の外部に引き出されている。また、図示しないが、正極13の正極集電体13aにおいて、負極集電体14aの突出辺と反対側に位置する辺は、正極13から突出している。正極13から突出した正極集電体13aは、帯状の正極端子17に電気的に接続されている。帯状の正極端子17の先端は、負極端子16とは反対側に位置し、外装部材12の外部に引き出されている。
第1の実施形態に係る電極及び二次電池は、電極の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析を行うことにより得られた面積で重み付けされた真円度の加重平均値は、0.05以上0.4以下のである。したがって、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、高い電極密度を実現できるとともに、レート特性のような電池出力特性を優れたものとすることができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、組電池が提供される。第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る非水電解質電池を複数個具備している。
第2の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第2の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図5は、第2の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図5に示す組電池200は、5つの単電池100と、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100のそれぞれは、第1の実施形態に係る非水電解質電池である。
バスバー21は、1つの単電池100の負極端子6と、隣に位置する単電池100の正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図5の組電池200は、5直列の組電池である。
図5に示すように、5つの単電池100のうち、一方の列の左端に位置する単電池100の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100のうち、他方の列の右端に位置する単電池100の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る非水電解質電池を具備する。したがって、第2の実施形態に係る組電池は、高いエネルギー密度と、優れたレート特性とを実現可能である。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第1の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、非水電解質電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に非水電解質電池からの電流を出力するため、及び/又は非水電解質電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第3の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第3の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図7は、図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図6及び図7に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。組電池200は、1つの単電池100を備えていてもよい。
単電池100は、図3及び図4に示す構造を有している。複数の単電池100の少なくとも1つは、第1実施形態に係る非水電解質電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、図7に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。負極側リード23の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延びる面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と外部機器への通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
このような電池パック300は、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パック300は、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、車両の車載用電池又は鉄道車両用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パック300は、車載用電池として特に好適に用いられる。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子として用いてもよい。
第3の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る非水電解質電池又は第2の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、第3の実施形態に係る電池パックは、高いエネルギー密度と、優れたレート特性とを実現可能である。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第4の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第4の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車及び鉄道用車両が挙げられる。
第4の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
次に、第4の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第4の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図8に示す車両400は、車両本体40と、第3の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。
図8に示す車両400は、四輪の自動車である。車両400としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車及び鉄道用車両を用いることができる。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
電池パック300は、車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている。電池パック300の搭載位置は、特に限定されない。電池パック300は、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図9を参照しながら、第4の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図9は、第4の実施形態に係る車両の他の例を概略的に示した図である。図9に示す車両400は、電気自動車である。
図9に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図10に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
3つの電池パック300a、300b及び300cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)301aとを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a〜200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る非水電解質電池である。組電池200a〜200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置301a〜301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a〜200cに含まれる単電池100の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a〜301cとの間には、通信バス412が接続されている。通信バス412は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a〜301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a〜200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図10に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a〜200cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411、あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置411内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子に接続されている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置415を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子に接続されている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置411を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第4の実施形態に係る車両は、長い走行距離を実現可能である。
以下に、本実施形態の実施例について説明する。本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
<実施例1>
(導電剤C1の調製)
先ず、2gのカーボンナノチューブ(CNT)と、10mlのプロパンニトリルとを、アルゴン雰囲気下で混合し、この混合液を十分に撹拌した。次いで、この混合液にキセノンランプを用いて紫外線を照射して、プロパンニトリルを蒸発させた。このようにして、アミノプロピル基が導入されたCNTを得た。以下、このCNTを導電剤C1という。
なお、上述した方法で、この導電剤C1の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、5.00原子数%であった。
(正極P1の作製)
先ず、100質量部のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2)粉末に対して、1.0質量部の導電剤C1と、1.0質量部のポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを加え、更に、N−メチルピロリドン(NMP)を加えて混合して、正極スラリーを調製した。なお、このリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の平均粒径は、10μmであった。この正極スラリーを、正極集電体の両面に塗布し、このスラリーの塗膜を130℃の温度で乾燥させて、正極活物質含有層を形成した。なお、正極集電体としては、厚さが15μmであるアルミニウム箔を用いた。また、この正極活物質含有層の厚さは、32μmであった。その後、正極活物質含有層を、30トンのプレス圧でプレスすることにより、正極P1を作製した。
(負極N1の作製)
先ず、100質量部のスピネル型リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)粉末に対して、5質量部のアセチレンブラックと、5質量部のPVdFとを加え、更に、N−メチルピロリドン(NMP)加えて混合して、負極スラリーを調製した。なお、リチウムチタン酸化物の表面には、炭素材料を含む相が形成されていた。この負極スラリーを、負極集電体の両面に塗布し、このスラリーの塗膜を130℃の温度で乾燥させて、負極活物質含有層を形成した。なお、負極集電体としては、厚さが15μmであるアルミニウム箔を用いた。その後、負極活物質含有層を、22トンのプレス圧でプレスすることにより、負極N1を作製した。
(ラミネートセルL1の作製)
正極P1、第1セパレータ、負極N1、第2セパレータをこの順序で積層した後、渦巻き状に捲回して、未プレスの電極群を得た。なお、第1及び第2セパレータとしては、厚さが25μmのポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。次いで、この未プレスの電極群を、90℃の温度で加熱プレスすることにより、偏平状電極群を作製した。この扁平状電極群の幅は30mmであり、厚さは3.0mmであった。次いで、この扁平状電極群を、ラミネートフィルムからなるパックに収納した後、80℃の温度で24時間にわたって真空乾燥を施した。ここで用いたラミネートフィルムは、厚さが40μmであるアルミニウム箔の両面にポリプロピレン層が形成されたものを用いた。また、このラミネートフィルムの厚さは、0.1mmであった。
次いで、このラミネートフィルムのパック内に、液状非水電解質を注入した。液状非水電解質としては、1.2モルのLiPF6塩を有機溶媒に溶解させたものを用いた。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを1:1の割合で混合したものを用いた。その後、このラミネートフィルムのパックをヒートシールにより完全密閉して、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL1という。ラミネートセルL1の幅は35mmでり、厚さは3.2mmであり、高さは65mmであった。
<実施例2>
(正極P2の作製)
導電剤C1の添加量を、1.0質量部から0.5質量部へと変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P2を作成した。
(ラミネートセルL2の作製)
正極P1の代わりに、正極P2を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL2という。
<実施例3>
(正極P3の作製)
導電剤C1の添加量を、1.0質量部から3.0質量部へと変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P3を作成した。
(ラミネートセルL3の作製)
正極P1の代わりに、正極P3を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL3という。
<実施例4>
(導電剤C2の調製)
2gのCNTを、2gのグラフェンに変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、アミノプロピル基が導入されたグラフェンを得た。以下、このグラフェンを導電剤C2という。
なお、上述した方法で、この導電剤C2の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、4.30原子数%であった。
(正極P4の作製)
1.0質量部の導電剤C1を用いる代わりに、0.5質量部の導電剤C2を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P4を作製した。
(ラミネートセルL4の作製)
正極P1の代わりに、正極P4を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL4という。
<実施例5>
(導電剤C3の調製)
先ず、2gのCNTに対して、400℃の温度下で、2時間にわたってフッ素ガスを噴射し続けて、フッ素化したCNTを得た。次いで、このフッ素化したCNTを、ジエチルエーテル溶液内に分散させて、分散液を得た。次いで、この分散液に、氷冷した臭化フェニルマグネシウムを含むジエチルエーテル溶液を徐々に滴下して、混合液を得た。なお、この滴下は、60℃の温度で分散液を加熱撹拌しながら行った。次いで、この混合液の温度が室温となるまで冷却し、この混合液に10質量%濃度の硫酸水溶液を添加して、水相と、エーテル相とを分離させた。次いで、この水相をすべて除去して、エーテル分散液を得た。次いで、このエーテル分散液からCNTをろ別して、加熱した。このようにして、フェニル基が導入されたCNTを得た。以下、このCNTを導電剤C3という。
なお、上述した方法で、この導電剤C3の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、4.87原子数%であった。
(正極P5の作製)
1.0質量部の導電剤C1を用いる代わりに、0.5質量部の導電剤C3を用いたこと、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の代わりに、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P5を作成した。
(ラミネートセルL5の作製)
正極P1の代わりに、正極P5を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL5という。
<実施例6>
(正極P6の作製)
1.0質量部の導電剤C1を用いる代わりに、2.0質量部の導電剤C3を用いたこと、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の代わりに、リチウムマンガン複合酸化物を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P6を作製した。
(ラミネートセルL6の作製)
正極P1の代わりに、正極P6を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL6という。
<実施例7>
(導電剤C4の調製)
先ず、2gのCNTに対して、400℃の温度下で、2時間にわたってフッ素ガスを噴射し続けて、フッ素化したCNTを得た。次いで、このフッ素化したCNTを、100mlの3M硝酸水溶液に分散させ、30分間にわたって撹拌して分散液を得た。なお、この撹拌の間、3M硝酸水溶液温度は、45℃に維持し続けた。次いで、この分散液から溶媒を蒸発させて、ニトロ基が導入されたCNTを得た。次いで、このCNTを水で洗浄した後、水素と反応させて、アミノ基が導入されたCNTを得た。以下、このCNTを導電剤C4という。
なお、上述した方法で、この導電剤C4の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、6.20原子数%であった。
(正極P7の作製)
導電剤C1を用いる代わりに、導電剤C4を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P7を作製した。
(ラミネートセルL7の作製)
正極P1の代わりに、正極P7を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL7という。
<実施例8>
(導電剤C5の調製)
2gのCNTを、2gのグラフェンに変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、アミノ基が導入されたグラフェンを得た。以下、このグラフェンを導電剤C5という。
なお、上述した方法で、この導電剤C1の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、4.90原子数%であった。
(正極P8の作製)
導電剤C1を用いる代わりに、導電剤C5を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P8を作製した。
(ラミネートセルL8の作製)
正極P1の代わりに、正極P8を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL8という。
<実施例9>
(導電剤C6の調製)
先ず、2gのCNTを、100mlの3M硝酸水溶液に分散させ、30分間にわたって撹拌して分散液を得た。なお、この撹拌の間、3M硝酸水溶液温度は、45℃に維持し続けた。次いで、この分散液から溶媒を蒸発させて、カルボキシル基及びヒドロキシル基が導入されたCNTを得た。以下、このCNTを導電剤C6という。
なお、上述した方法で、この導電剤C1の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、カルボキシル基の割合は4.2原子数%であり、ヒドロキシル基の割合は2.3原子数%であった。
(正極P9の作製)
導電剤C1を用いる代わりに、導電剤C6を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P9を作製した。
(ラミネートセルL9の作製)
正極P1の代わりに、正極P9を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL9という。
<実施例10>
(導電剤C7の調製)
2gのCNTを、2gのアセチレンブラックに変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、アミノプロピル基が導入されたアセチレンブラックを得た。。以下、このアセチレンブラックを導電剤C7という。
(正極P10の作製)
1.0質量部の導電剤C1を用いる代わりに、0.5質量部の導電剤C7を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P10を作製した。
(ラミネートセルL10の作製)
正極P1の代わりに、正極P10を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL10という。
<実施例11>
(正極P11の作製)
導電剤C1の代わりに、CNTを用いたこと、及び、正極スラリーに、100質量部のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物に対して、0.2質量部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを更に添加したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P11を作製した。
(ラミネートセルL11の作製)
正極P1の代わりに、正極P11を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL11という。
<実施例12>
(正極P12の作製)
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の代わりに、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LiMn0.5Fe0.5PO4)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P12を作製した。
(負極N2の作製)
リチウムチタン酸化物の代わりに、ニオブチタン複合酸化物(TiNb2O7)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、負極N2を作製した。
(ラミネートセルL12の作製)
正極P1の代わりに、正極P12を用いたこと、及び負極N1の代わりに、負極N2を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL12という。
<実施例13>
(負極N3の作製)
リチウムチタン酸化物の代わりに、斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物(Li2NaTi6NbO14)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、負極N3を作製した。
(ラミネートセルL13の作製)
正極P1の代わりに、正極P12を用いたこと、及び負極N1の代わりに、負極N3を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL13という。
<比較例1>
(正極P13の作製)
1.0質量部の導電剤C1の代わりに、3.0質量部のアセチレンブラックを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P13を作製した。
(ラミネートセルL14の作製)
正極P1の代わりに、正極P13を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL14という。
<比較例2>
(正極P14の作製)
1.0質量部の導電剤C1の代わりに、5.0質量部のアセチレンブラックを用いたこと、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の代わりに、リチウムマンガン複合酸化物を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P14を作製した。
(ラミネートセルL15の作製)
正極P1の代わりに、正極P14を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL15という。
<比較例3>
(正極P15の作製)
導電剤C1の代わりに、CNTを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P15を作製した。
(ラミネートセルL16の作製)
正極P1の代わりに、正極P15を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL16という。
<比較例4>
(正極P16の作製)
導電剤C1の代わりに、グラフェンを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P16を作製した。
(ラミネートセルL17の作製)
正極P1の代わりに、正極P16を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL17という。
<比較例5>
(正極P17の作製)
1.0質量部の導電剤C1の代わりに、0.02質量部のグラフェンを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P17を作製した。
(ラミネートセルL18の作製)
正極P1の代わりに、正極P17を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL18という。
<比較例6>
(正極P18の作製)
1.0質量部の導電剤C1の代わりに、3.0質量部のCNTを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P18を作製した。
(ラミネートセルL19の作製)
正極P1の代わりに、正極P18を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL19という。
<比較例7>
(正極P19の作製)
1.0質量部の導電剤C1の代わりに、0.02質量部の導電剤C3を用いたこと、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の代わりに、リチウムマンガン複合酸化物を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P19を作製した。
(ラミネートセルL20の作製)
正極P1の代わりに、正極P19を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL20という。
<比較例8>
(正極P20の作製)
1.0質量部の導電剤C1の代わりに、5.0質量部の導電剤C3を用いたこと、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の代わりに、リチウムマンガン複合酸化物を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P20を作製した。
(ラミネートセルL21の作製)
正極P1の代わりに、正極P20を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL21という。
<比較例9>
(正極P21の作製)
導電剤C1の代わりに、CNTを用いたこと、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の代わりに、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LiMn0.5Fe0.5PO4)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P21を作製した。
(ラミネートセルL22の作製)
正極P1の代わりに、正極P21を用いたこと、及び負極N1の代わりに、負極N2を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL22という。
<比較例10>
(ラミネートセルL23の作製)
正極P1の代わりに、正極P21を用いたこと、及び負極N1の代わりに、負極N3を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL23という。
<実施例14>
(導電剤C8の調製)
CNTの代わりにグラフェンを用いたこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で、カルボキシル基とヒドロキシル基とを導入したグラフェンを得た。以下、このグラフェンを導電剤C8という。
なお、上述した方法で、導電剤C8の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、カルボキシル基の割合は7.6原子数%であり、ヒドロキシル基の割合は2.5原子数%であった。
(正極P22の作製)
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2)の代わりにリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2)を用いたこと、及び、導電剤C1を用いる代わりに導電剤C8を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極を作製した。次いで、この正極について減圧下、180℃の温度で20時間にわたって乾燥させる熱処理を行った。このようにして得られた乾燥後の正極を、以下正極P22という。
なお、この正極P22から導電剤を採取し、このサンプルについて上述した方法で、構成元素に占める炭素以外の元素の割合を算出したところ、カルボキシル基の割合は2.1原子数%であり、ヒドロキシル基の割合は1.0原子数%であった。
(ラミネートセルL24の作製)
正極P1の代わりに、正極P22を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL24という。
<実施例15>
(正極P23の作製)
正極について熱処理を行わなかったこと以外は、実施例14に記載したのと同様の方法で、正極P23を作製した。
(ラミネートセルL25の作製)
正極P1の代わりに、正極P23を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL25という。
<比較例11>
(正極P24の作製)
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2)の代わりにリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2)を用いたこと、及び、導電剤C1の代わりにグラフェンを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、正極P23を作製した。
(ラミネートセルL26の作製)
正極P1の代わりに、正極P24を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、ラミネートセル型の非水電解質電池を作製した。以下、このラミネートセル型の非水電解質電池をラミネートセルL26という。
<評価方法>
(面積で重み付けされた真円度の加重平均値)
作製した正極P1乃至P21について、上述した方法で、面積で重み付けされた真円度の加重平均値を算出した。なお、正極断面は、正極活物質含有層の厚さ方向の中央部、すなわち、正極集電体から16μmの高さの位置をイオンミリングで露出させることにより形成した。この結果を、表1に示す。
図10は、実施例1に係る正極の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析を行うことにより得られた画像である。また、図11は、比較例1に係る正極の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析を行うことにより得られた画像である。図10及び図11において、黒色の領域は、抵抗値1MΩ以下の導電剤に帰属される領域である。
(正極密度及び気孔率)
作製した正極P1乃至P24について、上述した方法で、正極密度及び気孔率を算出した。この結果を、表1に示す。
(レート特性)
作成したラミネートセルL1乃至L26のレート特性を示す指標として、10Cの放電レート時の放電容量W2と0.2Cの放電レート時の放電容量W1との比W2/W1を、以下の方法で算出した。
先ず、各ラミネートセルについて、25℃の温度で、電圧1.5Vから電圧2.7Vまで、1Cの充電レートで充電した。次いで、この充電したラミネートセルについて、電圧2.7Vから電圧1.5Vまで、0.2Cの放電レートで放電して、0.2Cの放電レート時の放電容量W1を得た。次いで、この放電したラミネートセルについて、再び、電圧1.5Vから電圧2.7Vまで、1Cの充電レートで充電した。次いで、この再充電したラミネートセルについて、電圧2.7Vから電圧1.5Vまで、10Cの放電レートで放電して、10Cの放電レート時の放電容量W2を得た。このようにして得られた0.2Cの放電レート時の放電容量W1及び10Cの放電レート時の放電容量W2から、比W2/W1を算出した。
この結果を表1に示す。
上記表1において、「導電剤」という見出しの下方の列のうち、「炭素材料」と表記した列には、導電剤に含まれる炭素材料の種類を記載している。「官能基」と表記した列には、導電剤に導入された官能基の種類を記載している。「官能基量(原子数%)」と表記した列には、上述したXPS測定により得られた導電剤の構成元素に占める炭素以外の元素の割合を記載している。
また、上記表1及び表2において、「正極材料」という見出しの下方の列のうち、「導電剤(質量部)」及び「分散剤(質量部)」と表記した列には、それぞれ、100質量部の正極活物質に対する導電剤の添加量及び分散剤の添加量を記載している。「正極活物質の種類」と表記した列には、正極活物質の構造式を記載している。
また、上記表1及び表2において、「正極」という見出しの下方の列のうち、「真円度の加重平均値」と表記した列には、各正極断面について上述した方法により得られた、面積で重み付けられた真円度の加重平均値を記載している。「正極密度(g/cc)」と表記した列には、上述した方法で得られた各正極の密度を記載している。「気孔率(%)」と表記し列には、上述した方法で得られた各正極の気孔率を記載している。
また、上記表1及び表2において、「負極」という見出しの下方の列であって「負極活物質の種類」と表記した列には、負極活物質の構造式を記載している。更に、「電池」という見出しの下方の列であって「レート特性」と表記した列には、上述した方法により得られた、10Cの放電レート時の放電容量W2と0.2Cの放電レート時の放電容量W1との比W2/W1を記載している。
表1及び表2に示すとおり、真円度の加重平均値が0.05以上0.4以下の範囲内にある正極は、高い正極密度と、高い気孔率とを両立することができた。そして、このような正極を備えた電池は、真円度の加重平均値が上記の範囲内にない正極を備えた電池と比較して、優れたレート特性を示した。これに対して、真円度の加重平均値が、0.05よりも小さいか、又は、0.4よりも大きい正極は、正極密度及び気孔率の少なくとも一方が低く、レート特性も低かった。
表1に示す実施例のうち、導電剤の添加量のみを変更した実施例1、2及び3から明らかなように、導電剤の添加量が少ないほど、高い正極密度を実現することができた。一方で、導電剤の添加量が最も多い実施例3に係るラミネートセルL3が、最も優れたレート特性を示した。
表1及び表2に示す実施例のうち、導電剤に含まれる炭素材料の種類のみを変更した実施例2、4及び10から明らかなように、炭素材料としてグラフェンを用いた実施例4に係る正極P4が最も高い正極密度を示し、ラミネートセルL4が最も優れたレート特性を示した。
表1に示す実施例のうち、導電剤に含まれる官能基の種類のみを変更した実施例1、7及び9から明らかなように、炭素材料に導入する官能基としてアミノプロピル基を用いた実施例1に係るラミネートセルL1は、最も優れたレート特性を示した。
実施例1乃至13について、導電剤の炭素材料の種類、導電剤に導入される官能基の種類、正極活物質の種類及び負極活物質の種類を表1に示すように変更しても、高い電極密度と優れたレート特性とを実現することができた。
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、電極の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析を行うことにより得られた、面積で重み付けされた真円度の加重平均値は、0.05以上0.4以下である。したがって、以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、高い電極密度を実現できるとともに、レート特性のような電池出力特性を優れたものとすることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 金属酸化物を含む活物質粒子及び導電剤を含む活物質含有層を有する電極であって、 前記活物質含有層の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析により得られた前記導電剤に帰属される抵抗値1MΩ以下の領域に含まれる粒子の真円度の加重平均値は、0.05以上0.4以下であり、前記真円度の加重平均値は、前記粒子の面積により重み付けられている電極。
[2] 金属酸化物を含む活物質粒子及び導電剤を含む正極活物質含有層を有する正極と、負極と、電解質とを備えた二次電池であって、
前記正極活物質含有層の断面の走査型広がり抵抗顕微鏡法による画像について、二値化解析により得られた前記導電剤に帰属される抵抗値1MΩ以下の領域に含まれる粒子の真円度の加重平均値は、0.05以上0.4以下であり、前記真円度の加重平均値は、前記粒子の面積により重み付けられている二次電池。
[3] 前記金属酸化物は、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物及びリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む[2]記載の二次電池。
[4] 前記負極は、酸化チタン、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物、ニオブチタン複合酸化物、及び斜方晶型ナトリウム含有ニオブチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む[2]又は[3]に記載の二次電池。
[5] 前記正極に含まれる前記導電剤の量は、100質量部の前記活物質粒子に対して、0.1質量部以上5質量部以下である[2]乃至[4]の何れかに記載の二次電池。
[6] 前記導電剤は、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、フェニル基、及びアミノプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含む[2]乃至[5]の何れかに記載の二次電池。
[7] [2]乃至[6]の何れかに記載の二次電池を含む電池パック。
[8] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[7]に記載の電池パック。
[9] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[7]又は[8]に記載の電池パック。
[10] [7]乃至[9]の何れかに記載の電池パックを搭載した車両。
[11] 前記電池パックは、前記車両の動力の回生エネルギーを回収するものである[10]に記載の車両。